説明

ワイパ装置

【課題】洗浄液を噴射するノズルをワイパシャフトに備えたワイパ装置のコストを低減する。
【解決手段】ワイパシャフト16に軸方向に開設された挿通孔17にワイパアーム側端部にノズル19をインサートモールディングした洗浄液供給管18を嵌入し、洗浄液供給管18の他端部にはゴムまたは樹脂によって一体成形された洗浄液供給接続部材22を嵌合する。洗浄液供給接続部材22の一端部にはカバー14の取付孔21に嵌着されるジョイント部24を形成し、洗浄液供給接続部材22の他端部に一体的に形成した接続部23にはチェックバルブ26を嵌着する。ワイパシャフト16の一端部にはカバー14に摺接するスラスト軸受15を設ける。部品点数および組付工数を低減できるので、コストを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイパ装置に関し、特に、ワイパシャフトから洗浄液を噴射するものに係り、例えば、自動車のリアウインドシールドガラスを払拭するリアワイパ装置に利用して有効なものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のリアワイパ装置としては、ワイパシャフトに開設した挿通孔にノズルを嵌入し、ワイパアームで払拭しながらワイパシャフトと共に回動するノズルから洗浄液を噴射させてリアウインドシールドガラスを洗浄するように構成されているもの、がある(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
このような洗浄液を噴射するノズルを備えたリアワイパ装置においては、噴射口からの洗浄液の漏洩を防止するために、チェックバルブがウォッシャタンクとノズルとの間に介設されている。
【特許文献1】特表平6−500060号公報
【特許文献2】特表平11−508850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の洗浄液噴射ノズルを備えたリアワイパ装置においては、チェックバルブが洗浄液供給経路の途中にチューブを介して設けられるために、部品点数や組付工数が多くなるという問題点がある。
また、ノズルへの洗浄液の供給管がワイパシャフト内に組み込まれるために、ワイパモータのギヤケースにおける洗浄液の供給管に対するシール構造が複雑になるという問題点もある。
【0004】
本発明の目的は、前記問題点を解決して製造コストを低減することができるワイパ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記した課題を解決するための手段のうち代表的なものは、次の通りである。
(1)モータの回転力を出力軸に伝達する動力伝達部が収納された有底状のギヤケースと、このギヤケースの開口を被覆するカバーと、前記出力軸の一端に取り付けられたワイパアームとを備えているワイパ装置であって、
前記出力軸に軸方向に開設された挿通孔に洗浄液供給管が嵌入されており、この洗浄液供給管の前記ワイパアーム側の一端部には噴射口を有するノズルが設けられており、
前記洗浄液供給管の他端部には洗浄液供給接続部材が嵌合されており、
この洗浄液供給接続部材の一端部には前記カバーに形成された取付孔に嵌着されるジョイント部が形成されており、
前記洗浄液供給接続部材の他端部には洗浄液供給部と接続可能な接続部が一体に形成されていることを特徴とするワイパ装置。
(2)前記洗浄液供給部材の前記接続部には、チェックバルブが嵌着されていることを特徴とする前記(1)に記載のワイパ装置。
(3)前記出力軸の一端部には、前記カバーに摺接するスラスト軸受が設けられていることを特徴とする前記(1)(2)に記載のワイパ装置。
(4)前記ジョイント部は前記取付孔に嵌着するゴムブッシュ形状に形成されていることを特徴とする前記(1)〜(3)に記載のワイパ装置。
(5)前記ジョイント部の中空部内周には、前記洗浄液供給管の外周面に摺接する環状リップが突設されていることを特徴とする前記(1)〜(4)に記載のワイパ装置。
(6)前記ノズルと前記洗浄液供給管とはインサートモールディングされていることを特徴とする前記(1)〜(5)に記載のワイパ装置。
(7)前記洗浄液供給接続部材は、ゴムまたは樹脂によって一体成形されていることを特徴とする前記(1)〜(6)に記載のワイパ装置。
【発明の効果】
【0006】
前記(1)によれば、部品点数や組付工数が少なくなり、かつまた、ワイパモータのギヤケースにおけるノズルの洗浄液の供給管のシール構造が簡単になるので、ワイパ装置の製造コストをきわめて低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の一実施の形態を図面に即して説明する。
【0008】
本実施の形態において、本発明に係るワイパ装置は、自動車のリアワイパ装置に適用するのに好適なものとして構成されている。
本実施の形態に係るリアワイパ装置は、図1に示されたワイパモータ10を備えている。ワイパモータ10は自動車のリアウインドシールドガラスの近傍のリアパネル(図示せず)に設置することができるように構成されている。
【0009】
図1および図2に示されているように、ワイパモータ10は電動モータ11と、電動モータ11の回転力をワイパシャフトに伝達する動力伝達部(その最終段であるピニオンギヤ12が図2に示されている。)が収納されたギヤケース13と、ギヤケース13を被覆するカバー14(図2参照)とを備えている。
【0010】
ワイパモータ10の出力軸であるワイパシャフト16は、ギヤケース13の片方の主面(以下、上面とする。)に挿入されて回転自在に支承されており、ギヤケース13内の端部にはピニオンギヤ12が直交するように嵌合されて固定されている。
ワイパシャフト16とピニオンギヤ12との固定部の下面には、鍔部を有する円筒形状に形成されたスラスト軸受15が嵌着されており、スラスト軸受15の下面がカバー14の内面に摺接することにより、スラスト軸受15はワイパシャフト16のスラスト力を支承するように構成されている。
また、ワイパシャフト16のギヤケース13からの突出端部は、ワイパアーム(図示せず)を固定することができるように構成されている。
【0011】
図2および図3に示されているように、ワイパシャフト16の中心線上には挿通孔17が全長にわたって開設されている。挿通孔17には洗浄液供給管18が一体的に回転するように嵌入されている。
洗浄液供給管18は真鍮等の金属パイプが使用されてワイパシャフト16よりも細長い円筒形状に形成されており、そのワイパアーム側の端部である上端部にはノズル19が樹脂成形されている。ノズル19には洗浄液を噴射する噴射口20が開設されており、噴射口20はワイパシャフト16から突出している。これにより、洗浄液供給管18の内部を通った洗浄液が噴射口20からリアウインドシールドガラスに噴射する構成となっている。
なお、噴射口20は用途によって別体の噴射チップを圧入することで、噴射液の粒度を細かくすることも可能である。
【0012】
図2および図3に示されているように、カバー14におけるワイパシャフト16の中心線上には、円形の取付孔21が開設されている。取付孔21の口径はスラスト軸受15の円筒中空部の内径よりも小径で、洗浄液供給管18よりも大径に設定されている。
取付孔21には洗浄液供給接続部材22が取り付けられている。
【0013】
洗浄液供給接続部材22はゴムまたは樹脂が使用されて、エルボ管形状に一体成形されている。洗浄液供給接続部材22の一端部は外部の洗浄液供給部と接続するための接続部23を構成している。洗浄液供給接続部材22の他端部には取付孔21に洗浄液供給接続部材22を取り付けるためのジョイント部24が形成されている。
【0014】
洗浄液供給接続部材22のジョイント部24は軸方向両側に鍔部を有するゴムブッシュ(グロメット)形状に形成されており、カバー14の取付孔21にカバー14の外側から押し込まれて嵌着されている。
この状態で、ジョイント部24はカバー14の取付孔21の開口縁辺部を洗浄液供給接続部材22の弾性力によって緊締しているので、ジョイント部24は取付孔21を気密および液密にシールしている。
【0015】
また、ジョイント部24の中空部内には洗浄液供給管18の下端部が回転自在に嵌入されている。
図3に示されているように、ジョイント部24の中空部内周面断には全周に亘って断面三角形の内側環状リップ25が複数条、軸方向に平行に並べられてそれぞれ突設されており、内側環状リップ25は先端が洗浄液供給管18の外周面に摺接するように構成されている。
すなわち、内側環状リップ25の先端面と洗浄液供給管18の外周面とは、洗浄液供給管18の回転に伴って相対的に擦れ回りするようになっており、この状態で、内側環状リップ25は洗浄液供給管18の外周面との間のシールを維持するようになっている。
また、洗浄液供給管18をワイパシャフト16の挿通孔17に挿通し、洗浄液供給接続部材22の内側環状リップ25の位置まで差込めばよいため、組付けも容易となる。
さらに、洗浄液供給管18をカバー14の取付孔21を越える位置まで差込むことにより、洗浄液供給接続部材22を外れ難くすることもできる。
【0016】
洗浄液供給接続部材22の接続部23には、ノズル19への方向だけの流通を許容するチェックバルブ26の下流側端部が嵌入されており、チェックバルブ26は洗浄液供給接続部材22の弾性力によって緊締されることによって接続部23に固定されている。
チェックバルブ26の上流側端部にはチューブ27の下流側端部が嵌入されるようになっており、図示は省略するが、チューブ27の上流側端は洗浄液供給装置であるポンプを介して洗浄液供給源であるウォッシャタンクに接続されている。
【0017】
以上の構成に係るリアワイパ装置の作用を説明する。
【0018】
電動モータ11の駆動によるピニオンギヤ12の正逆回動によってワイパシャフト16が往復回動され、このワイパシャフトに連結されたワイパアームによってリアウインドシールドガラスを払拭しながら、ポンプによって洗浄液がチューブ27に供給されると、洗浄液はチェックバルブ26を通って洗浄液供給接続部材22から洗浄液供給管18に供給されるために、ノズル19は噴射口20から洗浄液をリアウインドシールドガラスにスプリンクラーで散水するように噴射する。
洗浄液がワイパアームの払拭と共に散水するように噴射されるために、リアウインドシールドガラスに対する洗浄効果はきわめて良好になる。
【0019】
前記実施の形態によれば、次の効果が得られる。
【0020】
1) 洗浄液供給接続部材をゴムまたは樹脂を使用して一体成形し、その一端部が構成した接続部自体にチェックバルブを嵌着することにより、従来、チェックバルブの装着に必要なチューブを省略することができるので、部品点数および組付工数を低減することができる。
【0021】
2) 洗浄液供給接続部材をゴムまたは樹脂を使用して一体成形するとともに、その一端部に取付孔に洗浄液供給接続部材を取り付けるためのジョイント部を一体的に形成することにより、部品点数および組付工数を低減することができる。
【0022】
3) 洗浄液供給接続部材のジョイント部をカバーの取付孔に嵌着して、ジョイント部によってカバーの取付孔の開口縁辺部を緊締することにより、ジョイント部によって取付孔を気密および液密にシールすることができるので、ギヤケース内の気密を維持することができるとともに、ギヤケース内のグリースの漏洩を確実に防止することができる。
【0023】
4) ジョイント部の中空部内周に内側環状リップを突設し、内側環状リップの先端を洗浄液供給管の外周面に摺接させることにより、内側環状リップによって洗浄液供給管の外周面との間のシールを確実に維持することができるので、洗浄液供給管の回動を確保しつつ洗浄液供給管からの洗浄液の漏洩を確実に防止することができる。
【0024】
5) 前記1)〜4)により、洗浄液を噴射するノズルをワイパシャフトに備えたリアワイパ装置の製造コストを大幅に低減することができる。
【0025】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0026】
例えば、洗浄液供給接続部材はエルボ管形状に形成するに限らず、直管形状等に形成してもよい。
【0027】
ジョイント部の中空部の内周面の環状リップは複数条突設するに限らず、一条でもよいし、省略してもよい。
【0028】
なお、洗浄液供給接続部材22の接続部23とチューブ27とを連結するものは、チェックバルブ26の他のどのようなものであってもよい。
【0029】
前記実施の形態においては、リアワイパ装置について説明したが、本発明はフロントワイパ装置等のワイパ装置全般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施の形態であるワイパ装置を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】主要部品を分解して示す一部切断正面図である。
【符号の説明】
【0031】
10…ワイパモータ、11…電動モータ、12…ピニオンギヤ(動力伝達部)、13…ギヤケース、14…カバー、15…スラスト軸受、16…ワイパシャフト(出力軸)、17…挿通孔、18…洗浄液供給管、19…ノズル、20…噴射口、21…取付孔、22…洗浄液供給接続部材、23…接続部、24…ジョイント部、25…内側環状リップ、26…チェックバルブ、27…チューブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転力を出力軸に伝達する動力伝達部が収納された有底状のギヤケースと、このギヤケースの開口を被覆するカバーと、前記出力軸の一端に取り付けられたワイパアームとを備えているワイパ装置であって、
前記出力軸に軸方向に開設された挿通孔に洗浄液供給管が嵌入されており、この洗浄液供給管の前記ワイパアーム側の一端部には噴射口を有するノズルが設けられており、
前記洗浄液供給管の他端部には洗浄液供給接続部材が嵌合されており、
この洗浄液供給接続部材の一端部には前記カバーに形成された取付孔に嵌着されるジョイント部が形成されており、
前記洗浄液供給接続部材の他端部には洗浄液供給部と接続可能な接続部が一体に形成されていることを特徴とするワイパ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−253645(P2007−253645A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77004(P2006−77004)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】