説明

ワイピングローラの研削装置及び研削方法

【課題】 凹版印刷機におけるワイピングローラの研削装置に関して、印刷中におけるワイピングローラ表面の局所的磨耗を瞬時に検出し、磨耗箇所の研削を自動的に行うワイピングローラの研削装置を提供する。
【解決手段】 軸芯の軸回りに弾性層が設けられたワイピングローラの外周面を研削するワイピングローラの研削装置であって、弾性層の外周面に対して、研磨部材を押圧させて研削する研磨冶具と、研磨冶具の後方に位置し研磨冶具にて研削した研削屑に接触して除去する研削屑除去冶具と、ローラに対向して設置されワイピングローラの表面状態を観察する表面検出装置とを備えるワイピングローラの研削装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹版印刷機におけるワイピングローラの研削装置に関し、特に印刷中におけるワイピングローラ表面の局所的磨耗を瞬時に検出し、磨耗箇所の研削を自動的に行う技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な凹版印刷機の概略構成図を図8に示す。凹版胴(20)の周面には非画線部としての平面と画線部としての凹部とで形成された凹版版面(21)が装着されており、凹版版面(21)には余剰インキの拭き取りを行うワイピングローラ(4)が対接されている。また、凹版版面(21)には、図示しないインキ壺からのインキを転移させる着肉ローラ(22)が凹版版面(21)の円周方向にわたり所定の間隔にて複数対設されている。
【0003】
凹版印刷作業は、図示しない各インキ壺のインキが着肉ローラ(22)を経由し、最終的に凹版胴上の凹版版面(21)に転移する。この転移したインキのうち、絵柄部分以外の箇所に付着したインキを凹版版面(21)に圧接して逆回転するワイピングローラ(4)にて拭き取った後、凹版胴(20)と圧胴(19)との間を通過する紙に残った絵柄部分のインキを転写させて印刷を施すものである。
【0004】
連続的に凹版印刷を実施すると、時にワイピングローラ(4)の表面にキズやザラツキといった凹凸不良が発生する場合がある。ローラ表面へのキズの発生は、接触回転している凹版版面(21)における画線部の縁部分との接触抵抗にて発生するもの、あるいはワイピングローラ(4)にて拭き取られたインキが洗浄部材(5)である不織布に堆積し、やがて固化してローラ(4)との接触時に接触抵抗となって発生するものと推量できる。また、ローラ表面へのザラツキの発生は、ワイピングローラ作製時に僅かに入り込んだ気泡群、水泡群により発生するものと推量できる。
【0005】
一般にワイピングローラ(4)にて拭き取ったインキは、図9に示すように、ワイピングローラ(4)を懸架しているワイピング槽(25)に滞留させた洗浄液に内在させた洗浄部材(5;例えば、不織布)にて洗浄し、ローラ上に残留した洗浄液は、ローラ(4)の下流に位置する仕上げブレード(6)にて除去し、次の版面(21)の洗浄に備える。一旦、ワイピングローラ表面が凹凸状態となると、ワイピングローラ(4)と仕上げブレード(6)との間に隙間が生じることになり、ワイピングローラ(4)と共に連れ回ってくる洗浄液を掻き落とすことができなくなる箇所が発生するため、当該箇所からの洗浄液が凹版版面(21)に付着し、最終的に用紙に付着することになり、印刷物品質を著しく阻害する。
【0006】
ワイピングローラ(4)の表面状態が顕著に凹凸となった場合、不具合が発生することになることから、その都度、印刷機械を停止させて、ワイピングローラ表面上の凹凸箇所を研磨部材等により研削するなどの凹凸修正の措置を施しているが、稼動効率が著しく低下することから、時にオペレータは印刷機械稼動中(ワイピングローラ回転中)に研磨紙又は研磨布を直接ワイピングローラ(4)の当該箇所に押し当て、凹凸修正を行う場合があり、この作業が厄介かつ危険な作業となっている。
【0007】
この問題点を解消する方策として、研削したゴムロールの外径振れ寸法を長期間高精度に維持し、研削加工時間を短縮させるとともにゴムロールの外周面の表面性を向上するためのゴムロールの研削方法およびゴムロールとして、芯金軸の軸回りにゴム材からなる弾性層が設けられたゴムロールの弾性層の外周面を砥石で研削するゴムロールの研削方法であって、ゴムロールに固定された芯金軸の両端部の外周面を一組のダイヤフラム式チャックでそれぞれ保持固定し、各ダイヤフラム式チャックを同期させて回転駆動させた状態にて弾性層における外周面の軸方向の長さよりも幅広に設定した砥石をこの外周面に亘って押圧させて研削するゴムロールの研削方法およびゴムロールがある(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2007−015044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した先行技術である特許文献1を用いた場合、研削したゴムローラの外径振れ寸法を長期間高精度に維持し、研削加工時間を短縮させるとともにゴムローラの外周面の表面性を向上することが可能である。しかしながら、特許文献1のゴムローラの研削方法は、ゴムローラ製造においてのローラ研削には有用であるが、凹版印刷に用いるワイピングローラを対象として、印刷機械稼動中に用いた場合、研削部材を用いて磨耗箇所を研削したときに出現するローラ研削屑の除去ができなく、残留したローラ研削屑が凹版版面に付着することから、凹版版面の磨耗に繋がり、このことが印刷物品質に直接影響し著しく品質を損なう場合がある。また、ローラ研削屑は、ローラの磨耗にも繋がることから有用でなく、必ずしも利用できる技術ではなかった。
【0010】
また、従前技術では、ワイピングローラの表面に局所的に発生する凹凸箇所の研磨については行うことが可能であるが、その際、発生する研削屑を除去することができないことから、凹版版面やワイピングローラが磨耗することになる。このことで、それぞれの部材の交換頻度が増加するとともに、部材交換に費やす作業負荷やそれに掛かる費用も多大となっていた。また、ワイピングローラの表面に発生する局所的な磨耗を確認する術として、専らオペレータによる目視に頼っていたことから、異常の発見が迅速に行えず、印刷物製品の異常製品を大量に発生させる場合があり課題となっていた。
【0011】
さらに、ワイピングローラの表面が不均一な状態になって印刷物製品の品質に影響が及ぶ場合について、仕上げブレードの撓み量を適宜変化させることで対処することやワイピングローラにコバルトやカーボンといった金属酸化物を添加することでローラの硬度を高く設定し磨耗を抑制すること、あるいは使用するインキの粘性を極端に小さくしてインキの滓化を抑制することも行われているが、これらの技術は発生した問題の暫定的処置であり、抜本的な解決となる技術ではない。近年、証券印刷などに用いられる凹版印刷製品は精巧な品質が求められていることから、品質面における分野の改善が強く求められており、少なからず改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、軸芯の軸回りにゴム材及び/又は樹脂材からなる弾性層が設けられたワイピングローラの弾性層の外周面を研削するワイピングローラの研削装置であって、弾性層の外周面に対して、研磨部材を該外周面に亘って押圧させて研削する研磨冶具と、研磨冶具の後方に位置し研磨冶具にて研削した研削屑に接触して除去する研削屑除去冶具と、ワイピングローラに対向して設置されワイピングローラの表面の凹凸状態を検出する表面検出装置とを備えたワイピングローラの研削装置である。
【0013】
また、研磨冶具は、基台とその基台の表層にある研磨部材から構成されており、研磨部材は、表面粗さRa30μm及至Ra60μmの研磨紙又は研磨布であるワイピングローラの研削装置である。
【0014】
また、研磨冶具は、基軸を軸芯としたロール形状とした態様であるワイピングローラの研削装置である。
【0015】
また、研磨冶具は、ワイピングローラ軸芯に平行するように配設された軸に設置され、ローラに対向して移動することが可能であるワイピングローラの研削装置である。
【0016】
また、研磨冶具は、ワイピングローラに対して0.5MPa乃至2.0MPaの圧力で押圧することが可能であるワイピングローラの研削装置である。
【0017】
また、研削屑除去冶具は、基台とその基台の表層にある屑除去部材から構成されており、屑除去部材は、硬さがショア硬度30度乃至60度の粘着部材であるワイピングローラの研削装置である。
【0018】
また、研削屑除去冶具は、基軸を軸芯としたロール形状とした態様であるワイピングローラの研削装置である。
【0019】
また、研削屑除去冶具は、ワイピングローラ軸芯に平行するように配設された軸に設置され、ローラに対向して移動することが可能であるワイピングローラの研削装置である。
【0020】
また、研削屑除去冶具は、ワイピングローラに対して0.1MPa乃至1.0MPaの圧力で押圧することが可能であるワイピングローラの研削装置である。
【0021】
また、表面検出装置は、ワイピングローラ軸芯に平行するように配設された軸に設置され、ローラに対向して移動することが可能であるワイピングローラの研削装置である。
【0022】
また、軸芯の軸回りにゴム材及び/又は樹脂材からなる弾性層が設けられたワイピングローラの弾性層の外周面を研削するワイピングローラの研削方法であって、弾性層の外周面に対して、研磨部材を該外周面に押圧させて研削する研磨手段と、研磨手段にて研削した研削屑に接触して除去する研削屑除去手段と、ワイピングローラに対向して設置されワイピングローラの表面の凹凸状態を検出する表面検出手段とを備えるワイピングローラの研削方法である。
【0023】
さらに、軸芯の軸回りにゴム材及び/又は樹脂材からなる弾性層が設けられたワイピングローラの弾性層の外周面を研削するワイピングローラの研削方法であって、ワイピングローラに対向して設置されワイピングローラの表面の凹凸状態を検出する表面検出手段と、表面検出手段に接続され、表面検出手段により検出した検出値を記憶する検出値記憶手段と、基準値をあらかじめ設定し記憶する基準値記憶手段と、検出値記憶手段の検出値と基準値記憶手段の基準値とを比較する比較手段を備える解析手段と、解析手段の解析した結果をもとに、研磨手段と研削屑除去手段をワイピングローラへ段階的に押圧接触させることを制御する制御手段とを備えるワイピングローラの研削方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明のワイピングローラの研削装置は、ローラ表面に出現する凹凸異常を瞬時に検出するとともに、当該箇所の研磨による修正が迅速に行われることから、凹版印刷物として良品質な製品を連続的に得ることが可能になるという効果を奏する。
【0025】
また、本発明のワイピングローラの研削装置は、ローラ表面の研磨後の研削屑を適宜除去することが可能であることから、印刷機械の停止を必要とすることなく、ローラ表面の凹凸状態の修正が可能となり、機械停止による不稼働時間が大幅に低下し、生産性の向上が図れるという効果を奏する。
【0026】
さらに、本発明のワイピングローラの研削装置は、ローラ表面の凹凸修正が自動化できることから、従前まで実施されていたオペレータによる研磨部材を用いて、直接ローラ表面を修正するという危険な作業を実施しなくても良くなり、ローラ表面修正作業における安全性が改善されるとともに、オペレータの負荷軽減が図れるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1乃至図6に基づき、この発明の実施形態を説明する。図1は本発明のワイピングローラ研削装置の断面模式図である。また、図2は研磨冶具の断面模式図であり、図3は研磨冶具の設置状態を示す概略図である。また、図4は表面検出装置の設置状態を示す概略図である。さらに、図5は研削屑除去冶具の断面模式図であり、図6は研削屑除去冶具の設置状態をそれぞれ示している。
【0028】
図1に基づき詳説する。洗浄部材(5)に付着したインキ滓等により、ワイピングローラ(4)の表面にキズ等の凹凸異常が発現した場合、ローラ(4)の近傍に配設したスライダーレール(16)に付設された表面検出装置(3)により当該個所を検出し、その検出データを表面検出装置(3)に連結された検出値記憶装置(10)に格納し、あらかじめ設定した基準値記憶装置(9)にある基準値と比較装置(11)により比較し、その比較結果を比較装置(11)に連結された解析装置(8)により解析する。この解析結果をもとに、ローラ(4)の表面状態の異常度合いを判断し、必要に応じて、解析装置(8)に連結された制御装置(7)により指示が伝播し、それぞれのスライダーレール(16)に付設された研磨冶具(1)及び研削屑除去冶具(2)について、押圧部材(15)を介して、ローラ(4)に対する押圧を順次制御し、ローラ表面に出現する凹凸を研磨するとともに、研磨屑を除去することでローラ(4)の凹凸異常を修正する機構である。
【0029】
次に、図2、図3に基づき、研磨冶具(1)の構成及び動作について詳説する。図2に示すように、研磨冶具(1)は、例えば、金属製の基台(12)に、表面粗さRa30μm乃至Ra60μmの研磨紙又は研磨布である研磨部材(14)を接合させた構成である。ここで、研磨冶具(1)として、図2(a)に示すように基台(12)、研磨部材(14)ともに矩形状とする場合や、図2(b)に示すように基軸(26)、研磨部材(14)からなるロール形状とする場合がある。
【0030】
また、金属製の基台(12)又は基軸(26)に研磨部材(14)を接合し構成された研磨冶具(1)は、図3に示すように、ローラ(4)の近傍に配設された両端を機械フレーム(24)に固着したスライダーレール(16)に取設された固定冶具(23)にて、ローラ(4)に対向する位置に配設されている態様である。また、固定冶具(23)に固定された研磨冶具(1)の上部には、押圧部材(15)が存しており、研磨冶具(1)をワイピングローラ(4)に対して0.5MPa乃至2.0MPaの圧力にて押圧できる機構である。また、研磨冶具(1)は、スライダーレール(16)の端部に配設した駆動装置(17)により、ローラ(4)の表面上をローラ軸芯に平行して自在に移動することが可能な態様である。なお、研磨冶具(1)は 解析装置(8)にて解析されたデータに従い、制御装置(7)からの指示が押圧部材(15)に伝播することにより、ローラ(4)への接触が適宜制御される。
【0031】
次に、図4に基づき、表面検出装置(3)について詳説する。図4に示すように表面検出装置(3)は、少なくとも一つ以上の電子カメラ、光学式センサなどの検出装置(18)と検出装置(18)を固定する固定冶具(23)とをローラ(4)の近傍に配設した両端を機械フレーム(24)に固着させたスライダーレール(16)に接続しており、ローラ(4)に対向する位置に配設されている態様である。また、表面検出装置(3)は、スライダーレール(16)の端部に配設した駆動装置(17)により、ローラ(4)の表面上をローラ軸芯に平行して自在に移動することが可能な態様である。
【0032】
次に、図5、図6に基づき、研削屑除去冶具(2)の構成及び動作について詳説する。図5に示すように、研削屑除去冶具(2)は、例えば、金属製の基台(12)又は基軸(26)に、硬さがショア硬度30度乃至60度の粘着部材である屑除去部材(13)を接合させた構成である。ここで研削屑除去冶具(2)として、図5(a)に示すように基台(12)、屑除去部材(13)ともに矩形状とする場合や、図5(b)に示すように基軸(26)、研磨部材(14)からなるロール形状とする場合がある。
【0033】
また、金属製の基台(12)又は基軸(26)に屑除去部材(13)を接合し構成された研削屑除去冶具(2)は、図6に示すように、ローラ(4)の近傍に配設された両端を機械フレーム(24)に固着したスライダーレール(16)に取設された固定冶具(23)にて、ローラ(4)に対向する位置に配設されている態様である。また、固定冶具(23)に固定された研削屑除去冶具(2)の上部には、押圧部材(15)が存しており、研削屑除去冶具(2)をワイピングローラ(4)に対して0.1MPa乃至1.0MPaの圧力にて押圧できる機構である。また、研削屑除去冶具(2)は、スライダーレール(16)の端部に配設した駆動装置(17)により、ローラ(4)の表面上をローラ軸芯に平行して自在に移動することが可能な態様である。なお、研削屑除去冶具(2)は 解析装置(8)にて解析されたデータに従い、制御装置(7)からの指示が押圧部材(15)に伝播することにより、ローラ(4)への接触が適宜制御される。
【0034】
以下、本実施の形態の実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【実施例】
【0035】
本発明のワイピングローラの研削装置は、表面検出装置(3)にレーザ変位計(例えば、岩崎計測株式会社製ST−3761)を用いて、また、基準値記憶装置(9)、検出値記憶装置(10)及び比較装置(11)とを有する解析装置(8)と、制御装置(7)にはシーケンサー(例えば、株式会社キーエンス製KV−1000)を用いて、また、押圧部材(15)には、エアシリンダ(例えば、甲南電気株式会社製CP61)を用いて、また、基軸(26)をロール形状のアルミニウム材として、また、研磨部材(14)を表面粗さRa40μmのジルコニア研磨布を用いて、また、屑除去部材(13)には、ニトリルゴム及び塩化ビニルの含有材にフタル酸ジブチルを加え、ショア硬度40度に加工した粘着部材を用いて、さらに、駆動装置(17)には駆動モーターをそれぞれ用いて、印刷機械稼動中におけるワイピングローラ表面の局所的磨耗を瞬時に検出し、磨耗箇所の研削及び研削屑の除去を自動的に行い、ワイピングローラ表面の凹凸異常を修正した。
【0036】
本発明のワイピングローラの研削における一連の流れについて、図7に示す工程図を用いて説明する。まず、あらかじめワイピングローラ(4)の軸芯に対する平行度合い、軸芯方向に対する表面粗さ、表面形状の基準値の入力及びレーザ変位計の走査頻度を設定する。なお、レーザ変位計の走査頻度については、任意に設定することができるが、本実施例では、枚葉紙印刷枚数2,000枚毎に設定した。
【0037】
実際に印刷を開始すると、印刷枚数2,000枚毎に表面検出装置(3)であるレーザ変位計は、ローラ表面上を走査し、その都度、ワイピングローラ(4)の表面状態を検出する(STEP1)。
【0038】
次に、検出したデータは検出値記憶装置(10)に格納され、シーケンサーにおいて、基準値記憶装置(9)に設定した基準値と比較装置(11)にて比較し、解析装置(8)により解析が行われる。なお、解析する項目については、異常発生個所の特定、発生した異常を解消するための必要な押圧力と押圧を付与する時間である(STEP2)。
【0039】
解析結果により異常発生個所があったと判断された場合は、解析装置(8)に連結されている制御装置(7)から指示が伝播され、駆動装置(17)の駆動モーターを稼動し、研磨冶具(1)及び研削屑除去冶具(2)を異常発生個所までスライダーレール(16)を介して移動させ、押圧部材(15)であるエアシリンダの押圧力によりワイピングローラ(4)表面に接触させることで、異常発生個所を研削する。このとき、研磨冶具(1)は、ワイピングローラ(4)の回転方向と逆回転して接触している。また、本実施例では、研磨冶具(1)の研磨部材であるジルコニア研磨布(14)を押圧力1.0MPaにて、およそ1秒間ワイピングローラ(4)に接触させている。なお、その時の押圧力及び押圧を付与する時間については、解析装置(8)における解析結果が反映される。(STEP3)。
【0040】
また、ワイピングローラ(4)を研削した際に発生する研削屑については、研磨冶具(1)より後方に設けてあり、当該研削屑が凹版版面(21)と接触する前に除去できる位置に配置した研削屑除去冶具(2)の屑除去部材(13)を押圧力0.6MPaにてワイピングローラ(4)に接触させ、研削屑を屑除去部材(13)に付着させることで除去する。なお、本実施例では、屑除去部材(13)として、ニトリルゴム及び塩化ビニルの含有材にフタル酸ジブチルを加え、ショア硬度40度に加工した粘着部材を用いている(STEP4)。
【0041】
以上のステップを印刷機械稼働中において枚葉紙印刷枚数2,000枚毎に繰り返し、ワイピングローラ(4)表面に凹凸が出現する都度、研磨及び研削屑除去がなされる。
【0042】
上述した実施例は代表的な例示の一例に過ぎず、特許請求の範囲に記載されている範囲において、あらゆる実施の形態が存在することは言うまでもない。
【0043】
なお、実施例では、研磨部材(14)として研磨布を使用した場合を例示としているが、当然、取り付け、取り外しが容易であるサンドペーパといった研削紙を取り付けて使用する場合やロール母材に粗面加工を施した研磨用砥石を用いる場合も容易に推量できるものである。また、研削屑が付着した粘着部材は図示しないクリーニング機構により、洗浄を行い、繰り返し使用することや屑除去部材(13)として粘着シートを取り付けて使用毎に交換する場合も容易に推量できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のワイピングローラ研削装置の断面模式図である。
【図2】本発明の研磨冶具の断面模式図である。
【図3】本発明の研磨冶具の設置状態を示す概略図である。
【図4】本発明の表面検出装置の設置状態を示す概略図である。
【図5】本発明の研削屑除去冶具の断面模式図である。
【図6】本発明の研削屑除去冶具の設置状態を示す概略図である。
【図7】本発明のワイピングローラ研削方法の工程図である。
【図8】一般的な凹版印刷機の一例を示す概略図である。
【図9】一般的なワイピング装置の断面模式図である。
【符号の説明】
【0045】
1 研磨冶具
2 研削屑除去冶具
3 表面検出装置
4 ワイピングローラ
5 洗浄部材
6 仕上げブレード
7 制御装置
8 解析装置
9 基準値記憶装置
10 検出値記憶装置
11 比較装置
12 基台
13 屑除去部材
14 研磨部材
15 押圧部材
16 スライダーレール
17 駆動装置
18 検出装置
19 圧胴
20 凹版胴
21 凹版版面
22 着肉ローラ
23 固定冶具
24 機械フレーム
25 ワイピング槽
26 基軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯の軸回りにゴム材及び/又は樹脂材からなる弾性層が設けられたワイピングローラの前記弾性層の外周面を研削するワイピングローラの研削装置であって、前記弾性層の外周面に対して、研磨部材を該外周面に押圧させて研削する研磨冶具と、前記研磨冶具の後方に位置し前記研磨冶具にて研削した研削屑に接触して除去する研削屑除去冶具と、前記ワイピングローラに対向して設置され前記ワイピングローラの表面の凹凸状態を検出する表面検出装置とを備えることを特徴とするワイピングローラの研削装置。
【請求項2】
前記研磨冶具は、基台とその基台の表層にある研磨部材から構成されており、前記研磨部材は、表面粗さRa30μm乃至Ra60μmの研磨紙又は研磨布であることを特徴とする請求項1記載のワイピングローラの研削装置。
【請求項3】
前記研磨冶具は、基軸を軸芯としたロール形状とした態様であることを特徴とする請求項1及び2記載のワイピングローラの研削装置。
【請求項4】
前記研磨冶具は、ワイピングローラ軸芯に平行するように配設された軸に設置され、ローラに対向して移動することが可能であることを特徴とする請求項1乃至3記載のワイピングローラの研削装置。
【請求項5】
前記研磨冶具は、ワイピングローラに対して0.5MPa乃至2.0MPaの圧力で押圧することが可能であることを特徴とする請求項1乃至4記載のワイピングローラの研削装置。
【請求項6】
前記研削屑除去冶具は、基台とその基台の表層にある屑除去部材から構成されており、前記屑除去部材は、硬さがショア硬度30度乃至60度の粘着部材であることを特徴とする請求項1記載のワイピングローラの研削装置。
【請求項7】
前記研削屑除去冶具は、基軸を軸芯としたロール形状とした態様であることを特徴とする請求項1及び6記載のワイピングローラの研削装置。
【請求項8】
前記研削屑除去冶具は、ワイピングローラ軸芯に平行するように配設された軸に設置され、ローラに対向して移動することが可能であることを特徴とする請求項1、6及び7記載のワイピングローラの研削装置。
【請求項9】
前記研削屑除去冶具は、ワイピングローラに対して0.1MPa乃至1.0MPaの圧力で押圧することが可能であることを特徴とする請求項1、6、7及び8記載のワイピングローラの研削装置。
【請求項10】
前記表面検出装置は、ワイピングローラ軸芯に平行するように配設された軸に設置され、ローラに対向して移動することが可能であることを特徴とする請求項1記載のワイピングローラの研削装置。
【請求項11】
軸芯の軸回りにゴム材及び/又は樹脂材からなる弾性層が設けられたワイピングローラの前記弾性層の外周面を研削するワイピングローラの研削方法であって、前記弾性層の外周面に対して、研磨部材を該外周面に押圧させて研削する研磨手段と、前記研磨手段にて研削した研削屑に接触して除去する研削屑除去手段と、前記ワイピングローラに対向して設置され前記ワイピングローラの表面の凹凸状態を検出する表面検出手段とを備えることを特徴とするワイピングローラの研削方法。
【請求項12】
軸芯の軸回りにゴム材及び/又は樹脂材からなる弾性層が設けられたワイピングローラの前記弾性層の外周面を研削するワイピングローラの研削方法であって、前記ワイピングローラに対向して設置され前記ワイピングローラの表面の凹凸状態を検出する表面検出手段と、前記表面検出手段に接続され、前記表面検出手段により検出した検出値を記憶する検出値記憶手段と、基準値をあらかじめ設定し記憶する基準値記憶手段と、前記検出値記憶手段の検出値と前記基準値記憶手段の基準値とを比較する比較手段を備える解析手段と、前記解析手段の解析した結果をもとに、前記研磨手段と前記研削屑除去手段をワイピングローラへ段階的に押圧接触させることを制御する制御手段とを備えることを特徴とする請求項11記載のワイピングローラの研削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−160810(P2009−160810A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229(P2008−229)
【出願日】平成20年1月7日(2008.1.7)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】