説明

ワイヤグリッドウェーブガイド及び方法

ウェーブガイドが提供される。ウェーブガイドは、ある屈折率を有し、第1及び第2の光反射平坦構造の間に設けられたウェーブガイド媒体を有し、少なくとも第1の平坦構造は、該第1の平坦構造の長さ方向軸に沿う複数のスリット開口を有し、スリット開口は、長さ方向軸に平行な放射光のR偏光成分を反射するように構築及び形成されており、第1及び第2の平坦構造は、ウェーブガイド媒体及び隣接媒体の間に設けられ、隣接媒体は、ウェーブガイド媒体のもの以上の屈折率を有する。本発明の他の形態では、ウェーブガイドは、発光団が励起させられる励起領域を限定し、ウェーブガイドを包囲する媒体と実質的に独立している。好ましくは、ウェーブガイドは発光センサの中で使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射された偏光波をウェーブガイド媒体の中で伝搬させる方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーブガイド(導波管)は様々な用途に使用される。基本的には、ウェーブガイドは、実質的にウェーブガイドに沿って伝搬するように放射光を閉じこめ、放射光が存在する境界領域が得られるようにする。非特許文献1等によれば、ウェーブガイドコア、上位及び下位クラッディング層を有するウェーブガイド構造が提案されている。ワイヤグリッドがコアに取り付けられる。クラッディング層は、ウェーブガイドコアのものより低い屈折率の媒体で形成され、全反射により、放射光の通常の伝搬モードが得られるようにする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“Fabrication of a new broadband waveguide polarizer with a double-layer 190 nm period metal-gratings using nanoimprint lithography”; Jian Wang; Schablitsky S; Zhaon-ing Yu; Yu Wei; Chou S Y, Journal of Vacuum Science & Technology B (Microelectronics and Nanometer Structures), VOL 17, NR6, PG2957-2960, ISSN 0734-211X
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
あるウェーブガイドが望まれている。そのウェーブガイドにおけるクラッディング層(以下、「隣接媒体(adjacent media)」と言及される)は、全反射の原理を利用する際、ウェーブガイドコアのものより小さい屈折率を有する材料に限定されず、例えば、液状媒体の中でウェーブガイドを提供し、バイオセンシングの用に供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一形態によればウェーブガイドが使用され、該ウェーブガイドは、ある屈折率を有し、第1及び第2の光反射平坦構造の間に設けられたウェーブガイド媒体を有し、前記ウェーブガイド媒体は、該ウェーブガイド媒体内で案内される光の回折限界を規定し、少なくとも第1の光反射平坦構造は複数の開口を形成しており、該開口は、前記回折限界より小さい面内の最小開口寸法を有し、前記第1の光平坦構造は、前記ウェーブガイド媒体及び隣接媒体の間に設けられ、前記隣接媒体は、前記ウェーブガイド媒体のもの以上の屈折率を有する、ウェーブガイドである。
【0006】
本発明の別の形態によれば、ウェーブガイド内の発光団の存在を検出する方法が使用され、本方法は、ウェーブガイド媒体を有するウェーブガイド内で励起光を伝搬させるステップと、前記ウェーブガイド媒体内に、前記励起光により励起して光を発光する発光団を提供するステップと、検出器により前記の発光を検出するステップとを有し、前記ウェーブガイド媒体は、前記ウェーブガイド内で案内される励起光の回折限界を規定し、ある屈折率を有し、前記ウェーブガイド内の光を反射するように構築及び形成された第1及び第2の反射平坦構造の間に設けられ、少なくとも一方の前記反射平坦構造は、前記回折限界より小さい面内の最小開口寸法を規定する、方法である。
【0007】
本発明の一形態によれば、ウェーブガイドは、発光団が励起させられる励起領域を制限し、ウェーブガイドを包囲する媒体と実質的に独立している。好ましくは、ウェーブガイドは、発光センサで使用され、ウェーブガイドは、前記光反射平坦構造を横切って流れる媒体に対して透過性を有し、前記媒体は発光団を有し、前記検出器は、前記光反射平坦構造を横切る方向からの前記発光団からの光を受信する。本発明に関するこれら及び他の形態は、以下の実施形態の説明によりさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一形態によるウェーブガイドの基礎的な断面図を示す。
【図2A】図1のウェーブガイドが水で囲まれていた場合における入射角度に対する反射強度を示すグラフ。
【図2B】図1のウェーブガイドが水で囲まれていた場合における入射角度に対する位相シフトを示すグラフ。
【図3】図1のウェーブガイドのモード強度分布を示す図。
【図4】基本モードの減衰長がウェーブガイド幅に依存する様子を示す図。
【図5】本発明の一形態による発光センサの第1実施例を示す概略図。
【図6】本発明の一形態による発光センサの第2実施例を示す概略図。
【図7】本発明の一形態による発光センサの第3実施例を示す概略図。
【図8】本発明の一形態による発光センサの第4実施例を示す概略図。
【図9】閉じこめ構造を有するウェーブガイドの概略的な平面図及び断面図。
【図10】ウェーブガイドの支持構造の概略側面図。
【図11】図10の支持構造を有するウェーブガイドの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明はウェーブガイドを有用な手段として提供し、発光団(luminophores)の励起を局在化し、励起輻射(excitation radiation)及び輻射放出(emission radiation)の自然分離をもたらし、後者の輻射放出は「発光」(luminescence)としても言及される。輻射又は放射(radiation)は、一般的には、電磁スペクトルの可視領域又は赤外領域付近の光である。一例として、励起輻射及び発光(例えば、蛍光)は、約300ないし1000nmの波長で与えられる。一実施例では、ウェーブガイドは、スリットが付いた1対の平坦な構造により形成され、ワイヤグリッド(wiregrids)とも言及され、一般的には100nmないし数ミクロンに及ぶ間隔を有する。したがって、偏光選択のウェーブガイドの概念が利用可能である。この概念は、光を或る材料に閉じ込める必要がある他の用途にも適用可能であり、その材料は、例えば液体のように、周囲環境より低い屈折率を有する。
【0010】
この概念の利点は以下のものを含む:
1) 本発明によるウェーブガイドは、好適実施例の場合、励起放射のTE偏光成分を伝送しないワイヤグリッドを有し、TE偏光成分は、ワイヤグリッドの長さ方向軸に平行な方向を向く成分であり、以後単に「R偏光励起放射」(R-polarized excitation radiation)と言及される。
【0011】
2) 一実施例では、生じた発光/放出の内、TM偏光成分(すなわち、R偏光成分に垂直な成分であり、以後「T偏光放射」(T-polarized luminescence)と言及される)は、ワイヤグリッドを介してウェーブガイドから逸脱できる。なぜなら、そのような偏光成分に対してワイヤグリッドは実質的に透明だからである:励起及び放出の優れた空間分離機能を発揮できる。
【0012】
3) 一実施例では、ウェーブガイドシステムは、上下のワイヤグリッドを介して流れる流体に対して開放的(オープン)であり、本概念を、垂直の貫流(flow-through)方式に相応しくする。
【0013】
4) 一実施例では、平坦な構造同士の間の間隔は、その間隔によって流路を形成し、平坦な構造同士の間に流体の流れを閉じこめる。
【0014】
5) 一実施例では、ウェーブガイドは1対の鏡の間に積み重ねられ、一対の鏡は、励起フィールドをさらに強化する。
【0015】
6) 一実施例では、流体より低い屈折率の層を使用して、流体とその媒体の界面において全反射をもたらし、こうして、ウェーブグリッドに平行な方向におけるウェーブガイドの閉込モードをもたらす(例えば、テフロン(登録商標)AF(TEFLON AF)又はメソ多孔性シリカ(meso-porous silica)は、水より低い屈折率を有する。)。
【0016】
発明原理によるさらなる利点は以下を含む:
1. 上下の双方向における励起及び発光の間の自動的な分離は、ウェーブガイドの平坦な構造により規定される面に関して生じ;励起放射により生じた背景の放射を抑制することになる。
【0017】
2. 発光団の励起は局在化させられ、典型的にはウェーブガイド構造内に局在化させられる。
【0018】
3. 開放的な構造が用意され、この構造は、貫流式の用途や、特殊な保持構造を付加するのに相応しい。
【実施例1】
【0019】
図1では、ウェーブガイド構造1の断面図が示されており、ウェーブガイド構造1の長さ方向軸に実質的に沿う向きのTE成分を有するR偏光励起放射101を示し、「漏洩(leaky)」光ウェーブガイドシステムが用意され、平坦構造1の間に励起放射101を閉じ込める(漏洩とは、非常に少ない割合(典型的には、0.1%又はそれより少ない)が、反射する平坦構造1により伝送されることを意味する。)。好ましくは、ウェーブガイド構造1は、流体に対して解放構造(すなわち、貫流分離に適した構造)であり、上下の双方向で発光を検出するのに適している(図5ないし図8参照)。
【0020】
特に、ウェーブガイド構造1はウェーブガイド媒体12により囲まれ、ウェーブガイド媒体12内で導かれる波101に対する回折限界を規定する。ウェーブガイド構造1は上位及び下位の光反射平坦構造14,15を備え、ワイヤ11による格子(grid)を形成し、光線102を反射するように概略的に描かれている。図示の例の場合、ワイヤ11は、紙面に垂直な長さ方向に立つように設けられる。ワイヤグリッドは周期Λ及び厚みTを有する。平行で平坦な構造は、同じ向きを有し、相互間の距離Wを有し、この距離は「ウェーブガイド幅」と言及される。
【0021】
平坦構造14,15は複数の開口を形成している。面内の最小開口寸法は、ワイヤグリッド11間の間隔として定義され、これは回折限界より小さい。良好な反射のためには、材料部分間の隔たりは、回折限界の隔たりの80%より小さいことが好ましい。
【0022】
図示の例はウェーブガイド構造1の内側及び外側に1つの包囲媒体12を示しているが、本発明の一実施例では、内側に設けられるウェーブガイド媒体と、そのウェーブガイド媒体に隣接して設けられる隣接媒体とが使用されてもよく、特に、隣接媒体はウェーブガイド媒体のもの以上の屈折率を有する。
【0023】
ワイヤグリッドウェーブガイドの動作原理を説明するため、先ず、R偏光光線が照射されたワイヤグリッドの反射特性を考察する。総ての入射角度について、ゼロ次以外の総ての次数の回折はエバネセント(evanescent)であることが、適切な動作に必要である。これは、格子間隔(Λ)を適切に選択することで達成可能である:
【0024】
【数1】

ここで、λは真空における波長を表し、nmediumはワイヤグリッド前方の媒体の屈折率を表す。Λminは回折限界として定義され、これは典型的には、格子間隔が2倍の媒体における波長として定義される。
【0025】
一例として、図2Aは、図1の構成例において、入射角度を変化させた場合の反射効率を示し、紙面に対して立っているワイヤグリッド1は水12により包囲され、水は屈折率nmedium=1.3を有する。他の条件は次のとおりである。
【0026】
ワイヤの材料: 屈折率が、n〜0.162-j7.73 であるアルミニウム
周期(Λ): 200nm<Λmin=250nm
デューティサイクル: 0.5(100nmの開口)
厚さ(T): 100nm
波長: 650nm。
【0027】
概して、ゼロ度の入射角に対する0.98と、90度の入射角に対するほぼ1との間で、効率が変化している(入射角度は、紙面垂直方向に対するものである)。
【0028】
さらに、図2A及び2Bは、上記のワイヤグリッドにおけるR偏光波は反射に関し、計算された強度反射率及び位相シフトを示す。総ての入射角について、R偏光波の高い反射特性が示され、反射率はすれすれの入射角になるほど増えている。R偏光波の送出は、0.002%より少ないことが分かる。
【0029】
図3は、W=500nmのワイヤグリッドウェーブガイドにおける基本R偏光モードでのモード強度分布(modal intensity distribution)を示す。この場合、ゼロ次の回折のみが生じるので、平坦構造は或る一様な層で置換可能であり、その層は、水及びアルミニウムの平均誘電率に等しい誘電率を有し(デューティサイクルは50%)、ncladding=0.117-j*5.30 である。近似を行うため、スラブ構造が5つの層を有するものとし、ウェーブガイドモードが計算された。モード強度分布は、(全反射による)通常の光ウェーブガイドのモード分布に似ている。
【0030】
図4は、ウェーブガイド幅Wを変化させながら、基本モードの減衰長を計算することで推定された維持可能な伝搬長を示す(減衰長は、入射パワーの(1/e)2に相当する)。ある縦の線が、回折限界のウェーブガイド幅(250nm)を示している。概して、減衰長は、その回折限界より大きなウェーブガイド幅の場合、対数目盛上で線形に変化し、その回折限界幅より小さくなると急激に落ち込んでいる。例えば、小さなウェーブガイド幅における100μmの減衰長から(例えば、蛍光体の局所的な励起の用途)、チップから光を放出するための1cmの減衰長に至るまで、用途に依存してユーザは様々な減衰長を必要とする。図4は、何れの場合についても、ウェーブガイド幅の適切な選択が解決手段をもたらすことを示す。
【0031】
1. 0.4マイクロメートルのウェーブガイド幅は、100μmの減衰長になる。
【0032】
2. 2マイクロメートルより大きなウェーブガイド幅は、1cmより大きな減衰長になる。
【0033】
図1は、本発明の一実施例として2つのワイヤグリッド14,15と共に形成されたウェーブガイド1を示す。本発明は多くの用途に広く使用可能であるが、図5ないし図8に関する実施例では、バイオセンサの用途に対する実施例が説明される。そして、図1に示されるウェーブガイド1が、発光センサ500に設けられる。代替例も可能であるが、好適実施例の場合、このセンサ500は、上部から下部へ又はその逆に流れる流体を有するように形成される(垂直貫流方式が使用される)。
【0034】
図5は、蛍光励起201,202用のワイヤグリッドウェーブガイドを有するセンサシステム500を示す。センサシステム500は、液体(例えば、水)で満たされたコンテナ/キュベット/容器(30)内に組み込まれる。ワイヤグリッドウェーブガイドは、平坦構造14,152より規定された面を横切る水に対して透過性である。検出器(ディテクタ)21,22は、発光団(luminophore)10bからの放射光202であって、平坦構造14,15を横切る方向からの放射光202を受信するように配置されている。
【0035】
流体は発光ビーズ(10a-c)も含み、これらは例えばDNAの証拠になる。本実施例の場合、(平坦構造に対して)放射源(図示せず)からのR偏光励起放射(101)が、容器(30)の左側から与えられ、ワイヤグリッドウェーブガイドにおける1つ以上のモード(102)を励起する。R偏光励起放射は、平坦構造(1)同士の間に閉じ込められる。ワイヤグリッドより下及び上の励起放射の量は非常に少ない。なぜなら、R偏光波の通過に対する反射は0.002%にすぎないからである。これは、ワイヤグリッドウェーブガイドが上側のビーズ(10a)及び下側のビーズ(10c)を実質的に励起せず、したがって、これらのビーズは検出される発光にほとんど寄与しないことを意味する。平坦構造(1)同士の間のビーズ(10b)は、ウェーブガイドモードにより検知され、発光信号をもたらす。流体12内のビーズの遷移双極子の向きは一般に時間及び空間の双方においてランダム的であり、これは、発光信号の約50%がR偏光(201)であり、発光信号の50%がT偏光(202)であることを意味し;ランダムな遷移双極子を伴い、偏光解消(depolarization)は無いビーズの集まりに関し、生じた蛍光の内3/5の割合は励起光と同じ偏光を有することが立証可能であるが、本願の以下の議論では、発光信号の50%が励起光と同じ偏光を有するものと仮定する。R偏光波は、ワイヤグリッドウェーブガイドから逃れることはできず、ワイヤグリッドウェーブガイドのモードに関連付けられる。ワイヤグリッドウェーブガイドより上位(21)及び下位(22)のディテクタ(PMT、APD、CCDアレイ等)を用いて、ワイヤグリッド構造14,15の開口を介して伝搬するT偏光の蛍光(202)が、ディテクタ21,22によりそれぞれ検出される。残りの励起放出(103)は、ワイヤグリッドウェーブガイドの出力に結び付けられる(図6に示されるように、これが追加的に又は代替的に検出されてもよい。)。
【0036】
上位又は下位のディテクタ21,22を鏡(ミラー)で置換し、ディテクタの数を減らしてもよい。鏡は発光光線をワイヤグリッドウェーブガイドに向けて反射する。ワイヤグリッドウェーブガイドは、T偏光に対して透過的なので、それはワイヤグリッドを横切り、他方のディテクタに到達する。代替的に、一方のディテクタを鏡で置換せずに完全に取り去ってもよい。
【0037】
図6は、T偏光の発光を検出することに加えて、R偏光の発光がディテクタ24により検出される例を示す。
【0038】
R偏光の発光は、ワイヤグリッドウェーブガイドの平坦構造14,15の間に閉じ込められ、ワイヤグリッドウェーブガイドの動作モードに関連付けられる。ワイヤグリッドウェーブガイドの出力側にディテクタ(24)及び(励起放出光(103)を抑制する)波長フィルタ(25)を設けることで、ウェーブガイドに関連するR偏光の発光(203)を(少なくとも部分的に)検出できる。
【0039】
代替例として、平坦構造14,15の一方は、二次元(2D)の副次的な回折限界開口の配列により置換され、その配列はピンホール構造150と言及される。特にこの例の場合、開口は、最大開口寸法は回折限界より小さい面内の最大開口寸法を規定し、2つの平坦な面内で蛍光202を閉じ込める。したがって、一方(又は双方)の平坦構造を、2Dサブ回折限界開口のアレイで置換することができ;それらのアレイは、双方の偏光に対して高い反射特性(及び開口内部でエバネセントフィールド)を有する。図6に示される例の場合、ワイヤグリッド15は、2Dサブ回折限界開口のアレイで置換されている。この場合、1つのディテクタのみが必要とされる。その場合、ウェーブガイド1(ワイヤグリッド14及び2Dサブ回折限界開口のアレイ15をミラーとして伴っている)はそれでもR偏光201のみを閉じ込める。T偏光202は、それでもワイヤグリッド14を介してウェーブガイドから逃れることができる。この形態の利点は、2Dサブ回折限界開口のアレイがR偏光の蛍光202に対してミラーとして機能することであり、これは、ウェーブガイド1において、ワイヤグリッド14を介してのみ発光が存在することを意味し、その結果、R偏光の発光を検出するのに1つのディテクタで充分である。
【0040】
代替的に、双方のワイヤグリッドが2Dサブ回折限界開口のアレイで置換され、双方の偏光に対するウェーブガイドとして機能するようにしてもよい。この場合、ウェーブガイドの蛍光201,202は、例4の構成例と同様にして検出可能である。この形態の利点は、R及びT偏光の発光放射が、同じディテクタにより検出できることである。
【0041】
図7は、平坦構造14,15が基板13上に用意されている例を示す。特に、平坦構造14及び/又はサブ回折限界ピンホールのアレイ15は、流体に対してもはや透過的でない基板(ガラス基板)13上に設けられる。この例の場合、基板に追加的な穴を空けなかった場合、垂直方向の流体の流れは妨げられ、励起放出と同じ向きに(左から右へ又はその逆に)流体をポンピングする必要がある。この改善例は、独立して立っている平坦構造の場合と比較して、基板上に平坦構造を物理的に強固に設けることができる。励起放射101に対して低い反射特性のミラーを置き(図示せず)、蛍光201に対して高い反射特性のミラーをおくことで(図示せず)、検出光における励起放射101を抑制し、且つ伝搬するR偏光発光201を入力側に向け直し、ディテクタ21,22により検出できるようにする。
【0042】
図8は、励起放射が促進される例を示す。この目的のため、ウェーブガイドはリフレクタ(41,42)を有し、ウェーブガイド1内で或る伝搬方向に伝搬する光を反射する。一実施例の場合、リフレクタ(41,42)の(一方)は、伝搬光とは異なる波長の放射に対して選択的に透過的である。これは、ミラーを介して発光を検出するのに使用可能である。特に、ウェーブガイドシステムの入力及び出力の側に、励起放射101に対して高い反射率(典型的には、90%より大きい)を有するミラーを設けることで、励起放射に対するファブリペロー共振器(FabryPerot cavity)を構築できる。これは、励起放射を促進することになる。励起光及び発光の双方がおそらくは反射される広帯域ミラーを使用することができるが、R偏光の蛍光の検出が共振器に起因して劣化する欠点がある。代替例として、励起放射についてはかなり高反射率であり、発光については低反射率の狭帯域ミラー(例えば、多層ミラー)を使用することが考えられる。
【0043】
別の代替例は、励起放射については高反射率であるが発光については高反射率でない特性と共に、入力側ではブロードバンドミラーを、出力側ではナローバンドミラーを利用することである。その結果、促進効果を得ることができ、且つ左側に発せられたR偏光発光は、ウェーブガイド1の右側へ向け直される。この形態の利点は、1つのディテクタを使ってR偏光を検出でき(出力側において、ディテクタはここでは示されていない)、且つ歴フィールドを促すことができることである。別の代替例は、ウェーブガイドの出力側に設けられた1つのミラーだけを使用する。この形態の利点は、通常ならウェーブガイドから出て行く励起放出が、ウェーブガイドに仕向けられ、励起放射のエネルギを実質的に2倍にできることである。この形態は、2つのミラーの場合ほど効率的ではないが、それでも或る程度の改善効果を奏し、且つ調整や使用が大幅に簡易である。
【0044】
図9は、閉じ込める媒体32が平坦構造14,15の間に用意される例を示し、或る方向に伝搬する光101を或る領域に閉じ込め、或る方向とはウェーブガイドにおける伝搬方向を横切る方向であり、光は図9のA-A方向において閉じ込められる。好ましくは、スペーサ材料32が用意され、次にそれらは2つの平坦構造14,15間のチャネル内で何らかのパターンで設けられる。スペーサ材料32の屈折率が流体12の屈折率より小さかった場合、光は、流体12及びスペーサ材料32間の界面で全反射し、コヒーレント光が方向A-Aにおいて閉じ込められる。適切なスペーサ材料の一例として、テフロン(登録商標)(TEFLON)が使用されてもよい。
【0045】
図10は、本発明の一実施例によるフリースタンディングワイヤを有するワイヤグリッド装置例を示し、支持構造51により支持されているフリースタンディングワイヤ11の応力依存性を示す。フリースタンディングワイヤのワイヤグリッド装置のこの構成例は、フリースタンディングワイヤのストライプ11が曲がるおそれを減らし、丈夫にする。
【0046】
フリースタンディングワイヤ格子1を介して流体を流す場合(図5)又はフリースタンディングワイヤ格子構造を取り扱う場合、ある圧力又は応力(及び力)がワイヤグリッド1にかかる。この応力の差は、ワイヤグリッド1のストライプ11を曲げることになる。図10の場合、ある円筒の穴を介した層流が想定されており、その穴の直径は2R=100nmであり、深さはT=100nmである。ずれ応力及び所与の圧力差(ΔP)を考慮すると、速度分布(ν)及び1つの穴を介する流れ(φ)は、次のように解析的に表現できる:
【0047】
【数2】

上記の穴の場合、単位圧力差当たりの流れは、(粘性率η=0.008904ポアズイユを有する水の場合)次のようになる:φ/ΔP=2.76×10-21m3/(Pa×s)。一例として、1つのビーズが1つの穴の中に1秒間留まるとすると、体積フローは、φ=7.9×10-22m3/sとなり、僅か0.3Paの圧力差で充分である。(ビーズ当たり)1msの測定時間の場合、好ましくは、300Paの圧力差が印加される。
【0048】
ワイヤグリッドの曲がりを計算する際、図10は長さL、深さT=100nm及びストライプ幅W=100nmのワイヤグリッドを示し、一様な応力差を受けているものとする。ストライプ11の材料は、弾性係数がE=7×1010N/m2であるアルミニウムである。
【0049】
図11は、フリースタンディングワイヤ格子の力学的安定性を得ることができ且つ貫流式の受入領域を有する例を示す。特に、ワイヤグリッド11は、平坦構造51内でスリット開口を規定し、グリッド11は基板51上で支持され、スロット61が設けられている。スロット61は、ワイヤグリッド11を横切る方向を向いており、好ましくはワイヤグリッドに対して直角である。
【0050】
したがって、ワイヤグリッド11は透過型の構造上で支持され、それにより流体圧力に耐えることができる。スロット61は支持構造51内に設けられ、スロットは細長い開口を形成する。スロットは100ミクロン又はそれより大きくてもよく、典型的には、数ミクロンの幅で支持構造(51)上に設けられる。
【0051】
代替的に、スロットは、平坦構造の双方で数ミクロン長でもよい。スロットを密に集めることで、膜構造(membrane structure)がミクロンサイズの微細孔と共に用意される。
【0052】
以上、本発明は図面及び詳細な説明により図示及び記述されてきたが、そのような図示及び記述は、説明的又は例示的であり、限定的ではなく、本発明は説明された実施例に限定されない。
【0053】
一例として、他の隣接媒体が使用されてもよく、特に、媒体12のものより小さな屈折率を有する隣接媒体が使用されてもよい。
【0054】
例えば、蛍光体が生体医学用のマーカー又はトレーサとして使用される態様で本発明が使用されてもよい。
【0055】
上記の実施例は、発光粒子(luminescent particle)を取り扱っていた。しかしながら、励起光に対して吸収及び/又は散乱を起こすように励起光と相互作用する他の種類の粒子が、使用されてもよい。例えば、ウェーブガイド媒体内の粒子(1ないし100nmの直径のメタルナノ粒子)による散乱が、測定されてもよい。この場合、ウェーブガイド内を伝搬するR偏光励起光は、その粒子によって散乱する。散乱放射光のT偏光成分は、例えば、平坦構造14,15の開口を通じて検出可能である。ウェーブガイド内の粒子による吸収は、ウェーブガイド構造を介して伝搬する励起光のパワーの減衰になる。このパワーの減衰は、ウェーブガイドを介して伝搬する光のパワーを測定することで判別できる。
【0056】
説明された実施例に対する他の変形例は、明細書、図面及び特許請求の範囲を理解することで、本発明の技術分野における当業者に効果的に認識可能である。特許請求の範囲において、「有する」という用語は、他の要素やステップを排除するものではなく、「ある」又は「或る」は複数個有ることを排除しない。1つのプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲で言及されているいくつかの事項の機能を果たしてもよい。ある複数の手段が互いに異なる従属項で引用されているという唯それだけの事実によって、それらの手段の組み合わせが有利に使用できないと解釈されるべきでない。他のハードウエアと共に又は一部として提供される光ストレージ媒体や半導体記憶媒体のような適切な媒体に、コンピュータプログラムが保存/分散されてもよいし、或いはコンピュータプログラムは、インターネット、他の有線又は無線の電気通信システムを介するような他の形態で分散されていてもよい。特許請求の範囲における如何なる参照符号も(存在した場合)、本発明の範囲を限定するように解釈されるべきでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある屈折率を有し、第1及び第2の光反射平坦構造の間に設けられたウェーブガイド媒体を有するウェーブガイドであって、
前記ウェーブガイド媒体は、該ウェーブガイド媒体内で案内される光の回折限界を規定し、
少なくとも第1の光反射平坦構造は複数の開口を形成しており、該開口は、前記回折限界より小さい面内の最小開口寸法を有し、
前記第1の光平坦構造は、前記ウェーブガイド媒体及び隣接媒体の間に設けられ、
前記隣接媒体は、前記ウェーブガイド媒体のもの以上の屈折率を有する、ウェーブガイド。
【請求項2】
前記開口は、面内の最大開口寸法を規定し、
前記面内の最大開口寸法は、前記回折限界より小さい、請求項1記載のウェーブガイド。
【請求項3】
前記開口は、面内の最大開口寸法を規定し、
前記面内の最大開口寸法は、前記回折限界より大きい、請求項1記載のウェーブガイド。
【請求項4】
前記第2の光反射平坦構造が、複数の第2の開口を形成しており、該開口は、面内の第2の最小開口寸法を規定し、
前記面内の第2の最小開口寸法は、前記回折限界より小さい、請求項3記載のウェーブガイド。
【請求項5】
前記第2の開口が、面内の第2の最大開口寸法を規定し、
前記面内の第2の最大開口寸法は、前記回折限界より大きく、前記面内の第1の最小開口寸法と平行に設けられる、請求項4記載のウェーブガイド。
【請求項6】
前記開口を形成している前記光反射平坦構造が、基板上に不透過性の媒体を有する、請求項1記載のウェーブガイド。
【請求項7】
前記ウェーブガイド媒体は前記隣接媒体と等しく、包囲する媒体を形成し、
前記基板は、前記包囲する媒体に対して透過性を有し、
前記基板により支持された拘束されていない光反射平坦構造が用意される、請求項6記載のウェーブガイド。
【請求項8】
前記光反射平坦構造の前記開口が、面内の最大開口寸法を規定し、
前記基板にスロットが設けられ、前記基板は、前記最大開口寸法の方向を横切る向きの最大スロット寸法を規定し且つ前記光反射平坦構造を支持する、請求項7記載のウェーブガイド。
【請求項9】
前記光反射平坦構造を横切る向きに媒体を供給する媒体供給部が設けられている、請求項7記載のウェーブガイド。
【請求項10】
当該ウェーブガイドは閉じ込め媒体をさらに有し、該閉じ込め媒体は、前記ウェーブガイドの伝搬方向を横切る向きに拘束された領域に、伝搬する光を閉じ込める、請求項1記載のウェーブガイド。
【請求項11】
伝搬する光を前記ウェーブガイドの伝搬方向に反射させるリフレクタをさらに有する、請求項1記載のウェーブガイド。
【請求項12】
前記リフレクタは、前記伝搬する光とことなる波長の放射光に対して、選択的に透過性を有する、請求項11記載のウェーブガイド。
【請求項13】
請求項1記載のウェーブガイドを有するセンサであって、
前記ウェーブガイドを介して伝搬する励起光を放射する放射ソースと、
前記ウェーブガイド内の励起光と相互作用する粒子からの光を受信する検出器と
を有するセンサ。
【請求項14】
請求項13記載のセンサを有する発光センサ。
【請求項15】
請求項14記載の発光センサであって、
前記ウェーブガイドは、前記光反射平坦構造を横切って流れる媒体に対して透過性を有し、
前記媒体は発光団を有し、
前記検出器は、前記光反射平坦構造を横切る方向からの前記発光団からの光を受信する、発光センサ。
【請求項16】
当該発光センサは、前記光反射平坦構造に平行に流れる流体を提供するよう構築され、
前記媒体は発光団を有し、
前記検出器は、前記光反射平坦構造に平行な方向における前記発光団からの光を受信する、請求項14記載の発光センサ。
【請求項17】
前記検出器が、励起放出をブロックするものと共に設けられている、請求項16記載の発光センサ。
【請求項18】
ウェーブガイド内の発光団の存在を検出する方法であって、
ウェーブガイド媒体を有するウェーブガイド内で励起光を伝搬させるステップと、
前記ウェーブガイド媒体内に、前記励起光により励起して光を発光する発光団を提供するステップと、
検出器により前記の発光を検出するステップと
を有し、前記ウェーブガイド媒体は、前記ウェーブガイド内で案内される励起光の回折限界を規定し、ある屈折率を有し、前記ウェーブガイド内の光を反射するように構築及び形成された第1及び第2の反射平坦構造の間に設けられ、
少なくとも一方の前記反射平坦構造は、前記回折限界より小さい面内の最小開口寸法を規定する開口を有する、方法。
【請求項19】
前記の発光は、前記反射平坦構造の前記開口を介して検出される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記開口は、面内の最大開口寸法を規定し、
前記面内の最大開口寸法は、前記回折限界より小さい、請求項18記載の方法。
【請求項21】
検出された光の内励起光を抑制するステップをさらに有する、請求項18記載の方法。
【請求項22】
前記発光団が液体の媒体の中に用意され、
前記反射平坦構造は、前記液体の媒体に対して透過性を有し、
当該方法は、前記反射平坦構造を介して流れる前記流体の媒体を提供するステップと、前記反射平坦構造を横切る向きからの前記発光団からの光を検出するステップとを有する、請求項18記載の方法。
【請求項23】
前記発光団が液体の媒体の中に用意され、
前記反射平坦構造は、前記液体の媒体に対して透過性を有し、
当該方法は、前記反射平坦構造に対して平行に流れる前記流体の媒体を提供するステップと、前記反射平坦構造に平行な向きからの前記発光団からの光を検出するステップとを有する、請求項18記載の方法。
【請求項24】
前記発光団が、生体分子と共に結合される、請求項18記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−513910(P2010−513910A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542340(P2009−542340)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【国際出願番号】PCT/IB2007/055160
【国際公開番号】WO2008/078264
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】