説明

ワイヤハーネス、ワイヤハーネスと機器との搬送方法、及びワイヤハーネスによる機器間の接続方法

【課題】搬送や接続の際の作業工数を低減することが可能なワイヤハーネス、ワイヤハーネスと機器との搬送方法、及びワイヤハーネスによる機器間の接続方法を提供する。
【解決手段】被覆部42にてバスバー41を被覆して高圧導電路24を形成し、さらに高圧導電路24の端部にモータ側コネクタ22及びインバータ側コネクタ23を設けると、ワイヤハーネス21の形成が完了する。ワイヤハーネス21は、形状保持部43を有することから、バスバー41全体が剛体ではなくなる。ワイヤハーネス21は、腰のあるものになる。形状保持部43は、曲げを止めた時点での形状を保持することから、ワイヤハーネス21は所望の曲げ形状に形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバーを導体として用いるワイヤハーネスに関する。また、このワイヤハーネスと機器とを搬送する方法に関する。さらには、ワイヤハーネスによる機器間の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車は、動力源となるモーターと、このモーターの駆動に必要な3相交流を発生させるインバータと、これらモーター及びインバータを接続するワイヤハーネスとを備えている。
【0003】
下記特許文献1に開示されたワイヤハーネスは、複数本の高圧電線を含むハーネス本体と、このハーネス本体の一端に設けられてモーターの接続部分となるモーター側接続部と、ハーネス本体の他端に設けられてインバータの接続部分となるインバータ側接続部とを備えて構成されている。また、下記特許文献1に開示されたワイヤハーネスは、ハーネス本体が比較的長く形成されている。
【0004】
ところで、ワイヤハーネスの製造後からモーター及びインバータにワイヤハーネスが接続されるまでの過程を簡単に説明すると、ワイヤハーネスは先ずモーター製造工程へ搬送される。搬送されたワイヤハーネスは、次にモーター製造工程にてモーターに接続される。モーターに接続されたワイヤハーネスは、次にモーターと共に車両組立工程へ搬送される。搬送されたモーター及びワイヤハーネスは、車両組立工程にて先ずモーターが所定位置に固定され、次にインバータがモーターに対応する所定位置に固定される。そして最後にインバータに対しワイヤハーネスが接続されると、モーター及びインバータはワイヤハーネスにより接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−253017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
モーターに接続されたワイヤハーネスは、搬送の際に邪魔にならないようにするために、また、搬送の際のスペース確保に影響を来さないようにするために、さらには、搬送の際にワイヤハーネスの他端(後にインバータに接続されるインバータ側接続部)が何かに当たって損傷することのないようにこれを保護するために、モーターに固定されて容易に動かない状態で搬送されることがある。この場合、モーター製造工程側にあっては、ワイヤハーネスの固定に係る作業工数が掛かってしまうという問題点を有している。また、車両組立工程側にあっても、ワイヤハーネスをインバータに接続する前にワイヤハーネスの固定解除に係る作業工数が掛かってしまうという問題点を有している。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、搬送や接続の際の作業工数を低減することが可能なワイヤハーネス、ワイヤハーネスと機器との搬送方法、及びワイヤハーネスによる機器間の接続方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明のワイヤハーネスは、曲げ可能な柔軟性を有し且つ任意の曲げ状態での形状保持が可能な形状保持部を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項1に記載のワイヤハーネスにおいて、前記形状保持部を導電路における導体に一体形成する、又は、前記形状保持部を導電路に沿わせるように配設することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項1又は請求項2に記載のワイヤハーネスにおいて、前記形状保持部の材質をアルミニウム又はアルミニウム合金とすることを特徴とする。
【0011】
また、上記課題を解決するためになされた請求項4記載の本発明のワイヤハーネスと機器との搬送方法は、曲げ可能な柔軟性を有し且つ任意の曲げ状態での形状保持が可能な形状保持部を有するワイヤハーネスと、該ワイヤハーネスの一端を接続した機器とを搬送するにあたり、前記形状保持部の位置で前記ワイヤハーネスに曲げを施して前記機器に沿わせる工程を含むことを特徴とする。
【0012】
また、上記課題を解決するためになされた請求項5記載の本発明のワイヤハーネスによる機器間の接続方法は、曲げ可能な柔軟性を有し且つ任意の曲げ状態での形状保持が可能な形状保持部を有するワイヤハーネスを準備し、該ワイヤハーネスの一端を第一機器に接続する第一工程と、前記形状保持部の位置で前記ワイヤハーネスに曲げを施し、該ワイヤハーネスの他端を所望の退避位置に移動させる第二工程と、前記第一機器に対応する位置に第二機器を設置した後、前記形状保持部の位置で前記ワイヤハーネスに曲げを施して該ワイヤハーネスの前記他端を前記第二機器に向けて移動させるとともに、該第二機器に前記他端を接続する第三工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項5に記載のワイヤハーネスによる機器間の接続方法において、前記第一工程と前記第二工程との間に請求項5に記載のワイヤハーネスと機器との搬送方法を採用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載された本発明によれば、形状保持部を有することから、この形状保持部の位置でワイヤハーネスの曲げを行うことができる。形状保持部は曲げを止めた時点での形状を保持できることから、所望の曲げ形状となるワイヤハーネスを形成することができる。本発明によれば、形状保持部を有するワイヤハーネスにすることにより、腰のあるワイヤハーネスにすることができる。従って、本発明によれば、搬送や接続の際の作業工数を低減することが可能なワイヤハーネスを提供することができるという効果を奏する。
【0015】
請求項2に記載された本発明によれば、ワイヤハーネスを構成する導電路の導体に形状保持部を形成することから、形状保持部の位置で導電路自体の曲げを行うことができる。従って良好なワイヤハーネスを提供することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、ワイヤハーネスを構成する導電路に沿わせるように形状保持部を配設することから、形状保持部の位置で曲げを行うことができる。従って良好なワイヤハーネスを提供することができるという効果を奏する。
【0016】
請求項3に記載された本発明によれば、形状保持部の好適な材料の一例としてアルミニウム又はアルミニウム合金を挙げることができる。アルミニウム又はアルミニウム合金は銅等の一般的な導電材料よりも柔らかいことから、曲げ易くすることができるとともに、軽量化を図ることもできるという効果を奏する。
【0017】
請求項4に記載された本発明によれば、機器に接続して機器と共に搬送するワイヤハーネスを、形状保持部を有するものとすることから、搬送の際に形状保持部の位置で曲げを施してワイヤハーネスを機器に沿わせるようにすればよく、特別な固定部材を設けなくてもワイヤハーネスの配置を安定させることができるという効果を奏する。本発明によれば、搬送の際の作業工数を低減することができるという効果を奏する。
【0018】
請求項5に記載された本発明によれば、第一機器と第二機器との接続に用いるワイヤハーネスを、形状保持部を有するものとすることから、形状保持部の位置でワイヤハーネス自体の曲げを行うことができる。形状保持部は曲げを止めた時点での形状を保持することから、所望の曲げ形状にワイヤハーネスを形成することができる。本発明によれば、例えば第一機器への接続をした後にワイヤハーネスを第二機器の設置に支障のない位置に曲げることができる。ワイヤハーネスは腰のあるものであることから、仮保持のために固定をしたり、作業者が手で持ち続けて作業をしたりする必要はなく、また、専用の保持治具を用いたりする必要もない。従って、本発明によれば、接続の際の作業工数を低減することができるという効果を奏する。
【0019】
請求項6に記載された本発明によれば、第一工程で第一機器にワイヤハーネスの一端を接続した後に、第一機器と共にワイヤハーネスを搬送することができ、搬送先では第二工程以降を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のワイヤハーネスの配索例を示す模式図である。
【図2】ワイヤハーネスをシールドカバーで覆った状態を示す斜視図(ワイヤハーネス側からの斜視図)である。
【図3】ワイヤハーネスをシールドカバーで覆った状態を示す斜視図(シールドカバー側からの斜視図)である。
【図4】ワイヤハーネスをシールドカバーで覆った状態を示す断面図である。
【図5】図4のモータ側コネクタ部分の拡大断面図である。
【図6】図4のインバータ側コネクタ部分の拡大断面図である。
【図7】導体としてのバスバーの斜視図である。
【図8】ワイヤハーネスの斜視図である。
【図9】本発明のワイヤハーネスと機器との搬送方法、及びワイヤハーネスによる機器間の接続方法(第一工程)に係る工程説明図である。
【図10】本発明のワイヤハーネスによる機器間の接続方法(第二工程)に係る工程説明図である。
【図11】本発明のワイヤハーネスによる機器間の接続方法(第三工程)に係る工程説明図である。
【図12】本発明のワイヤハーネスによる機器間の接続方法(第三工程)に係る工程説明図である。
【図13】図12の第三工程の後にワイヤハーネスをシールドカバーで覆う直前の斜視図である。
【図14】ワイヤハーネスをシールドカバーで完全に覆った直後の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ワイヤハーネスの導電路を構成する導体をバスバーにて形成する。このバスバーには、曲げ可能な柔軟性を有し且つ任意の曲げ状態での形状保持が可能な形状保持部を形成する。
【実施例】
【0022】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。図1は本発明のワイヤハーネスの配索例を示す模式図である。また、図2及び図3はワイヤハーネスをシールドカバーで覆った状態を示す斜視図、図4はワイヤハーネスをシールドカバーで覆った状態を示す断面図、図5は図4のモータ側コネクタ部分の拡大断面図、図6は図4のインバータ側コネクタ部分の拡大断面図、図7は導体としてのバスバーの斜視図、図8はワイヤハーネスの斜視図である。また、図9は本発明のワイヤハーネスと機器との搬送方法、及びワイヤハーネスによる機器間の接続方法(第一工程)に係る工程説明図、図11〜図12は本発明のワイヤハーネスによる機器間の接続方法に係る工程説明図、図13及び図14はワイヤハーネスをシールドカバーで覆う直前・直後の斜視図である。
【0023】
本実施例のワイヤハーネスは、ハイブリッド自動車又は電気自動車に配索されるものを対象にしている。以下では、ハイブリッド自動車での例を挙げて説明するものとする(電気自動車の場合でも本発明のワイヤハーネスの構成、構造、及び効果は基本的に同じであるものとする。尚、ハイブリッド自動車又は電気自動車に限らず、通常の自動車等でも本発明を適用することができるものとする)。
【0024】
図1において、引用符号1はハイブリッド自動車を示している。ハイブリッド自動車1は、エンジン2及びモータユニット3の二つの動力をミックスして駆動する車両であって、モータユニット3にはインバータユニット4を介して図示しないバッテリー(電池パック)からの電力が供給されるようになっている。エンジン2、モータユニット3、及びインバータユニット4は、本実施例において前輪等がある位置のエンジンルーム5に搭載されている。また、図示しないバッテリーは、エンジンルーム5の後方に存在する自動車室内、又は後輪等がある自動車後部に搭載されている。
【0025】
モータユニット3とインバインバータユニット4は、高圧用となる本発明のワイヤハーネス21により接続されている。また、図示しないバッテリーとインバータユニット4は、高圧用のワイヤハーネス6により接続されている。ワイヤハーネス6は、エンジンルーム5から例えばフロアパネルの地面側となる床下にわたって配索されている。
【0026】
ここで本実施例での補足説明をすると、モータユニット3はモータ及びジェネレータを構成に含んでいるものとする。また、インバータユニット4は、インバータ及びコンバータを構成に含んでいるものとする。モータユニット3は、シールドケース7を含むモータアッセンブリとして形成されるものとする。また、インバータユニット4もシールドケース8を含むインバータアッセンブリとして形成されるものとする。図示しないバッテリーは、Ni−MH系やLi−ion系のものであって、モジュール化してなるものとする。尚、例えばキャパシタのような蓄電装置を使用することも可能であるものとする。図示しないバッテリーは、ハイブリッド自動車1や電気自動車に使用可能であれば特に限定されないものとする。
【0027】
モータユニット3は、特許請求の範囲に記載した機器及び第一機器に相当するものとする。また、インバータユニット4は、特許請求の範囲に記載した第二機器に相当するものとする。インバータユニット4は、本実施例においてモータユニット3の直上に配置固定されている。引用符号9は直上に配置固定するための固定脚部を示している。
【0028】
本発明のワイヤハーネス21は、モータユニット3とインバータユニット4とを電気的に接続した状態でこのほぼ全体が導電性のシールドカバー101により覆われている(図1ないし図4参照)。シールドカバー101は、モータユニット3のシールドケース7及びインバータユニット4のシールドケース8に跨るように固定されてワイヤハーネス21に対し電磁シールド機能を発揮することができるように形成されている。尚、シールドカバー101を用いることは一例であるものとする。すなわち、電磁シールド機能を発揮することができれば、編組で構成されるシールド部材や、金属箔で構成されるシールド部材(又は金属箔を含むシールド部材)を用いてもよいものとする。
【0029】
先ず、ワイヤハーネス21の構成、構造、及び形成について説明をする。
【0030】
図2及び図4において、ワイヤハーネス21は、モータ側コネクタ22と、インバータ側コネクタ23と、これらを繋ぐ三本の高圧導電路24(導電路)とを備えて構成されている。ワイヤハーネス21は、高圧導電路24の後述する構成及び構造により、所望の曲げ形状に形成することができるようになっている。以下、上記の各構成について説明をする。
【0031】
図4ないし図6において、モータ側コネクタ22は、三本の高圧導電路24の各一端を横一列に並べるような格好で、この端部位置に一体に設けられている。モータ側コネクタ22は、モータユニット3のシールドケース7(図1参照)を貫通し、このシールドケース7の内部において電気的な接続をする接続部として機能するように形成されている。モータ側コネクタ22は、導電性を有する三本の端子部25と、絶縁性を有するハウジング部26と、弾性を有するパッキン部材27とを備えて構成されている。
【0032】
端子部25は、銅又は銅合金製の金属板をプレス加工してなるバスバー形状のものであって、端子本体28と、折曲部29と、この折曲部29に連続する導体連結部30とを有している。端子部25は、端子本体28と導体連結部30とが略直交する配置の略L字形状に形成されている。端子本体28は、モータユニット3(図1参照)との電気的接続形態に合うように形成されている。尚、端子部25の材質は、端子としての機能を発揮することができれば銅等に限定されないものとする。また、端子部25は、後述するバスバー41と一体で形成してもよいものとする。すなわち、バスバー41の端部(一端)に端子部25が連続する構造であってもよいものとする。
【0033】
ハウジング部26は、絶縁性を有する合成樹脂材料を用いて成形されている。本実施例においては、端子部25の一部をモールド成形するようにして、また、三本の高圧導電路24の各一端をモールド成形するようにして、図示の形状に形成されている(モールド成形は一例であるものとする)。ハウジング部26は、モータユニット3のシールドケース7(図1参照)に組み付け可能なハウジング本体31と、このハウジング本体31に連続して導体連結部30を一括被覆する本体連続部32とを有している。ハウジング本体31の所定位置には、パッキン部材27が組み付けられている。
【0034】
インバータ側コネクタ23は、三本の高圧導電路24の各他端を纏めるような格好で、この端部位置に一体に設けられている。インバータ側コネクタ23は、インバータユニット4のシールドケース8(図1参照)を貫通し、このシールドケース8の内部において電気的な接続をする接続部として機能するように形成されている。インバータ側コネクタ23は、導電性を有する三本の端子部33と、絶縁性を有するハウジング部34と、弾性を有するパッキン部材35とを備えて構成されている。
【0035】
端子部33は、上記端子部25と同様に銅又は銅合金製の金属板をプレス加工してなるバスバー形状のものであって、端子本体36と、折曲部37と、この折曲部37に連続する導体連結部38とを有している。端子部33は、端子本体36と導体連結部38とが略直交する配置の略L字形状に形成されている。端子本体36は、インバータユニット4(図1参照)との電気的接続形態に合うように形成されている。尚、端子部33の材質は、端子としての機能を発揮することができれば銅等に限定されないものとする。また、端子部33は、後述するバスバー41と一体で形成してもよいものとする。すなわち、バスバー41の端部(他端)に端子部33が連続する構造であってもよいものとする。
【0036】
ハウジング部34は、上記ハウジング部26と同様に絶縁性を有する合成樹脂材料を用いて成形されている。本実施例においては、端子部33の一部をモールド成形するようにして、また、三本の高圧導電路24の各他端をモールド成形するようにして、図示の形状に形成されている(モールド成形は一例であるものとする)。ハウジング部34は、インバータユニット4のシールドケース8(図1参照)に組み付け可能なハウジング本体39と、このハウジング本体39に連続して各導体連結部32を各々被覆する本体連続部40とを有している。ハウジング本体39の所定位置には、パッキン部材35が組み付けられている。
【0037】
高圧導電路24は、導体としてのバスバー41と、このバスバー41を被覆する被覆部42(被覆)とを備えて構成されている。高圧導電路24は、バスバー41に、曲げ可能な柔軟性を有し且つ任意の曲げ状態での形状保持が可能な形状保持部43を形成している点が特徴になっている。尚、高圧導電路24は、形状保持部43を有することができるのであれば、上記導体がバスバー41に限定されないものとする。導体としては、銅や銅合金やアルミニウム製のいずれであってもよく、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面矩形又は丸形となる棒状の導体構造(例えば平角単心や丸単心となる導体構造)のいずれであってもよいものとする。
【0038】
本実施例の高圧導電路24には、半円弧形状に湾曲する湾曲部44が形成されている。湾曲部44は、高圧導電路24の長手方向中間に配置形成されている。湾曲部44は、モータユニット3とインバータユニット4(図1参照)との電気的な接続に係る長手方向の寸法誤差や位置ズレを吸収する部分として、また、シールドカバー101に接触して放熱効果を高める部分として形成されている。
【0039】
図7において、バスバー41は、この全体が形状保持部43となるように形成されている。すなわち、バスバー41は、この全体が曲げ可能な柔軟性を有し且つ任意の曲げ状態で形状を保持することが可能なものに形成されている。尚、バスバー41は、この一部が形状保持部43として形成され、残りの部分が剛性のある部分として形成される形態であってもよいものとする。
【0040】
形状保持部43の好適な材質としては、アルミニウム又はアルミニウム合金が一例として挙げられるものとする。従って、本実施例のバスバー41は、アルミニウム又はアルミニウム合金製の金属板をバスバー形状にプレス加工することにより形成されている(材質は一例であるものとする。曲げ可能な柔軟性を有し且つ任意の曲げ状態で形状を保持することが可能であれば、また、高圧用の導体として適するのであれば、材質は特に限定されないものとする)。
【0041】
バスバー41の一端は、端子部25における導体連結部30に接続固定されている。また、バスバー41の他端は、端子部33における導体連結部38に接続固定されている。接続固定に係る好適な一例としては、溶接が挙げられるものとする(この限りでないものとする。電気的な接続がなされ、また、通常の使用において分離しなければよいものとする)。図7中の引用符号45は溶接部分を示している。
【0042】
上記構成及び構造において、図7に示す如くバスバー41の一端に端子部25を設けるとともに、バスバー41の他端に端子部33を設け、このような導体46を三本、略同一平面上に並べるように配置した後、図8に示す如く被覆部42にて被覆をし、これにより高圧導電路24を形成し、さらに高圧導電路24の各端部にモータ側コネクタ22及びインバータ側コネクタ23を設けると、ワイヤハーネス21の形成が完了する。或いは、バスバー41を被覆部42にて被覆するとともに所定の曲げ加工を施し、この後に両端にモールド成形等を行ってモータ側コネクタ22及びインバータ側コネクタ23を設けると、ワイヤハーネス21の形成が完了する。
【0043】
ワイヤハーネス21は、形状保持部43を有することから、導体としてのバスバー41全体が剛体でないことになる。ワイヤハーネス21は、腰のあるものになる。形状保持部43は、曲げを止めた時点での形状を保持することから、ワイヤハーネス21は所望の曲げ形状に形成することができるようになる。
【0044】
次に、図2ないし図4を参照しながら、シールドカバー101の構成、構造、及び形成について説明をする。
【0045】
シールドカバー101は、ワイヤハーネス21に対し電磁シールド機能を発揮することができる導電性の部材であって、本実施例においては、天井壁102と、この天井壁102の周縁に連成される側壁103と、側壁103の所定位置に連成される複数の固定部104とを有して、図示のような箱形の形状に形成されている。
【0046】
天井壁102には、凸部105が形成されている。この凸部105は、外側から見ると天井壁102が一部突出するように形成されている(内側から見ると凹部となるように形成されている)。凸部105は、この内面がワイヤハーネス21の湾曲部44に対する接触部分として形成されている。凸部105は、この内面に湾曲部44が接触すると、ワイヤハーネス21に生じる熱を吸収することができるようになっている。凸部105を介して吸収された熱は、シールドカバー101の略全体で放熱されるようになっている。
【0047】
固定部104は、モータユニット3のシールドケース7やインバータユニット4のシールドケース8(図1参照)にネジ止め固定される部分であって、ネジ穴106を有する舌片形状に形成されている。
【0048】
シールドカバー101は、導電性を有する金属板を絞り加工することにより、或いは金属板を打ち抜き折り曲げ加工をすることにより形成されている。尚、本実施例のシールドカバー101は一部品構成となる構造であるが、これに限らず二部品構成となる分割構造等であってもよいものとする。
【0049】
本実施例のシールドカバー101は、ワイヤハーネス21に対して別体に形成される部品、また、所定位置に配索された後のワイヤハーネス21に対しこれを覆うことができるように形成される部品であるが、前述の如く、編組で構成されるシールド部材や、金属箔で構成されるシールド部材(又は金属箔を含むシールド部材)に変更する場合、シールド部材はワイヤハーネス21の構成部品に含まれるものとする。
【0050】
続いて、図9ないし図14を参照しながら、ワイヤハーネス21によるモータユニット3とインバータユニット4との接続等について説明をする。尚、ここでの説明においては、ワイヤハーネス21とモータユニット3との搬送についてもふれるものとする。
【0051】
図9において、ワイヤハーネス21の製造後、このワイヤハーネス21をモーター製造工程へ搬送する。モーター製造工程においては、組み付けラインにてワイヤハーネス21を準備し、このワイヤハーネス21のモータ側コネクタ22をモータユニット3に接続する作業を行う。この時、モータ側コネクタ22はシールドケース7を貫通し、シールドケース7の内部において電気的な接続がなされる。
【0052】
モータユニット3にワイヤハーネス21を接続した後、これらを一緒に車両組立工程へ搬送する場合には、ワイヤハーネス21を仮想線で示す如く曲げてモータユニット3に沿わせる作業を行う。具体的には、形状保持部43の所望位置でワイヤハーネス21に曲げを施してモータユニット3に沿わせる作業を行う。
【0053】
ワイヤハーネス21は腰のあるものであることから、作業者が手でワイヤハーネス21を持ち続けてこの後の作業を続ける必要がなく、また、専用の保持治具を用いてワイヤハーネス21を保持する必要もない。この他、ワイヤハーネス21をモータユニット3に沿わせる際に、インバータ側コネクタ23の端子部33をモータユニット3側に向ければ、端子部33に対する簡易的な保護をすることができる。従って、専用の端子保護部材を設ける必要もない。
【0054】
モータユニット3と共に車両組立工程へワイヤハーネス21を搬送した後、車両組立工程においては、モータユニット3を車両に設置固定する作業を行うとともに、ワイヤハーネス21を仮想線で示す如くの状態から実線の状態へと起こす作業を行う。そして、このワイヤハーネス21に関する作業と同時に、或いは作業の後に、ワイヤハーネス21のインバータ側コネクタ23を図10に示す如くの所望の退避位置に移動させる作業を行う。尚、所望の退避位置に移動させるのは、モータユニット3に対応する位置にインバータユニット4を設置固定するためである(邪魔にならないようにする)。
【0055】
インバータユニット4を設置した後は、ワイヤハーネス21に曲げを施して、このワイヤハーネス21のインバータ側コネクタ23を図11及び図12に示す如くインバータユニット4に向けて移動させる作業を行う。そして、図12及び図13に示す如くシールドケース8を貫通するようにインバータ側コネクタ23を組み付け、シールドケース8の内部において電気的な接続をする作業を行うと、ワイヤハーネス21の接続、搬送、及び配索に係る一連の作業が完了する。
【0056】
最後に、図13及び図14に示す如くワイヤハーネス21に対してシールドカバー101を被せ、これをネジ止め固定する作業を行う。これにより、ワイヤハーネス21は電磁シールドが施されてノイズによる影響を受けないような状態になる。
【0057】
以上、図1ないし図14を参照しながら説明してきたように、本発明によれば、ワイヤハーネス21の導体をバスバー41にて構成する。このバスバー41には形状保持部43を形成することから、形状保持部43の位置でバスバー41自体の曲げを行うことができる。形状保持部43は曲げを止めた時点での形状を保持することから、所望の曲げ形状にワイヤハーネス21を形成することができる。本発明によれば、バスバー41に形状保持部43を形成することにより、腰のあるワイヤハーネス21にすることができる。従って、このようなワイヤハーネス21により、搬送や接続の際の作業工数を低減することができるという効果を奏する。
【0058】
また、本発明によれば、モータユニット3に接続してこのモータユニット3と共に搬送するワイヤハーネス21の導体をバスバー41にて構成する。このバスバー41には形状保持部43を形成することから、腰のあるワイヤハーネス21にすることができる。従って、搬送の際に形状保持部43の位置で曲げを施してモータユニット3に沿わせるようにすればよく、特別な固定部材を設けなくてもワイヤハーネス21の配置を安定させることができるという効果を奏する。本発明によれば、搬送の際の作業工数を低減することができるという効果を奏する。
【0059】
また、本発明によれば、モータユニット3とインバータユニット4との接続に用いるワイヤハーネス21の導体をバスバー41にて構成する。このバスバー41には形状保持部43を形成することから、形状保持部43の位置でバスバー41自体の曲げを行うことができる。形状保持部43は曲げを止めた時点での形状を保持することから、所望の曲げ形状にワイヤハーネス21を形成することができる。従って、本発明によれば、モータユニット3への接続をした後にワイヤハーネス21をインバータユニット4の設置に支障のない位置に曲げることができる。ワイヤハーネス21は腰のあるものであることから、仮保持のために固定をしたり、作業者が手で持ち続けて作業をしたりする必要はなく、また、専用の保持治具を用いたりする必要もない。従って、本発明によれば、接続の際の作業工数を低減することができるという効果を奏する。
【0060】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【0061】
以上の説明では、ワイヤハーネス21にてモータユニット3とインバータユニット4とを接続するようにしていたが、これに限らず、インバータユニット4とバッテリー、インバータユニット4とジャンクションブロック等の電気接続箱、電気接続箱同士を接続するようにしてもよいものとする。
【0062】
また、以上の説明では、高圧導電路24の導体としてバスバー41を備えるとともに、このバスバー41の全体(又は一部でも可)を形状保持部43とする構成及び構造であったが、これに限らないものとする。すなわち、上記とは異なる形態の形状保持部を、例えば別体の部品として備え、この形状保持部を導電路に沿わせるように配設するとともに、配設した形状保持部により任意の曲げ状態でワイヤハーネスとしての形状保持をするようにしてもよいものとする。具体的な使用例としては、例えば導体構造が撚り線となる高圧電線を一又は複数備え、この高圧電線に対して例えばアルミ製の線状部品となる形状保持部を沿わせ、そして、この形状保持部により任意の曲げ状態で形状保持をするようにしてもよいものとする(導体構造が例えば撚り線となる高圧電線を、形状保持のために、線状の形状保持部を補助的に用いる)。尚、上記の形状保持部を沿わせることに関しては、例えばテープ巻きにより高圧電線に固定したり、例えば心棒となるように適宜配設(両端をモータ側コネクタ及びインバータ側コネクタにモールド成形する等)したりする方法が挙げられるものとする。
【符号の説明】
【0063】
1…ハイブリッド自動車
2…エンジン
3…モータユニット(機器、第一機器)
4…インバータユニット(第二機器)
5…エンジンルーム
6…ワイヤハーネス
7、8…シールドケース
9…固定脚部
21…ワイヤハーネス
22…モータ側コネクタ(接続部)
23…インバータ側コネクタ(接続部)
24…高圧導電路(導電路)
25、33…端子部
26、34…ハウジング部
27、35…パッキン部材
28、36…端子本体
29、37…折曲部
30、38…導体連結部
31、39…ハウジング本体
32、40…本体連続部
41…バスバー(導体)
42…被覆部(被覆)
43…形状保持部
44…湾曲部
45…溶接部分
46…導体
101…シールドカバー
102…天井壁
103…側壁
104…固定部
105…凸部
106…ネジ穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ可能な柔軟性を有し且つ任意の曲げ状態での形状保持が可能な形状保持部を有する
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記形状保持部を導電路における導体に一体形成する、又は、前記形状保持部を導電路に沿わせるように配設する
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記形状保持部の材質をアルミニウム又はアルミニウム合金とする
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項4】
曲げ可能な柔軟性を有し且つ任意の曲げ状態での形状保持が可能な形状保持部を有するワイヤハーネスと、該ワイヤハーネスの一端を接続した機器とを搬送するにあたり、前記形状保持部の位置で前記ワイヤハーネスに曲げを施して前記機器に沿わせる工程を含む
ことを特徴とするワイヤハーネスと機器との搬送方法。
【請求項5】
曲げ可能な柔軟性を有し且つ任意の曲げ状態での形状保持が可能な形状保持部を有するワイヤハーネスを準備し、該ワイヤハーネスの一端を第一機器に接続する第一工程と、
前記形状保持部の位置で前記ワイヤハーネスに曲げを施し、該ワイヤハーネスの他端を所望の退避位置に移動させる第二工程と、
前記第一機器に対応する位置に第二機器を設置した後、前記形状保持部の位置で前記ワイヤハーネスに曲げを施して該ワイヤハーネスの前記他端を前記第二機器に向けて移動させるとともに、該第二機器に前記他端を接続する第三工程と、
を含む
ことを特徴とするワイヤハーネスによる機器間の接続方法。
【請求項6】
請求項5に記載のワイヤハーネスによる機器間の接続方法において、
前記第一工程と前記第二工程との間に請求項5に記載のワイヤハーネスと機器との搬送方法を採用する
ことを特徴とするワイヤハーネスによる機器間の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−22777(P2012−22777A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157450(P2010−157450)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】