説明

ワイヤハーネスの線間止水部の形成方法

【課題】ワイヤハーネスの電線群への止水剤の充填を確実に行えるようにする。
【解決手段】集束される電線群の長さ方向の一部に止水剤を充填して線間止水部を形成する方法であって、ワイヤハーネス組立作業台上において、布線治具で保持して配線した電線群のうち、前記線間止水部を形成する止水領域となる電線群の長さ方向の両端をテープ巻き結束すると共に、該止水領域の電線群を下面から両側面にかけて防水シートで覆い、前記止水領域の電線群の上面に止水剤を滴下した後、該止水領域の電線群を加圧容器内に挿入し、前記加圧容器に圧力空気を導入して前記止水剤を電線群の隙間に加圧充填し、かつ、前記加圧容器内の圧力を検出する圧力センサを取り付け、前記止水剤の加圧充填作業と同時に該圧力センサで検出される圧力値により止水精度を検査している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に配索するワイヤハーネスの線間止水部の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に配索されるワイヤハーネスとして、エンジンルームから車体パネルの貫通孔を通して室内側へ配索される、所謂、フロントハーネスと称されるワイヤハーネスがある。
該ワイヤハーネスは被水領域のエンジンルーム側の配索領域でワイヤハーネスを構成する電線群の隙間に水が浸水し、該水が電線群の隙間を伝って車室内に達し、車室側のワイヤハーネスとのコネクタ接続部に侵入し、コネクタ内の端子に腐食を発生させる虞れがある。
前記ワイヤハーネスには、エンジンルームと車室とを仕切る車体パネルに設けた貫通孔への挿通部分にグロメットを取り付け、エンジンルーム側から車室への浸水、埃、騒音等の侵入を防止している。このグロメット内に止水剤を供給し、ワイヤハーネスの電線群の隙間を止水する方法が、従来一般的に用いられている。
【0003】
しかしながら、グロメット内に止水剤を供給する場合、ワイヤハーネスの組立作業台上で行うことは困難であるため、ワイヤハーネスの生産性が悪くなる問題がある。よって、ワイヤハーネスの組立作業台上で、集束した電線群の線間に止水剤を供給する線間止水方法を本出願人は特開2005−51835号公報(特許文献1)等で提供している。
【0004】
また、特開2005−80483号公報(特許文献2)に開示された止水処理方法では、電線群の表面に止水剤を塗布した後に、該電線群の全周にシートを巻回し、該シートの外側から該シートに荷重を加えて加圧し、該加圧箇所を順次移動させて電線群の隙間に止水剤を浸透させている。
第一実施形態では、前記外側から加える加圧をどのように与えるかについては具体的に記載されていない。第二実施形態では図8(A)(B)に示すように袋状シート100を前記シート101の外周面に巻き付け、袋状シート100に気体または液体を供給する配管102を取り付け、袋状シート100を膨張させることで、シート101を加圧している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−51835号公報
【特許文献2】特開2005−80483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1では、布線治具の間で電線を整列させて、その外面に止水剤を塗布しているため、各電線の外周面には確実に止水剤を塗布でき、かつ、電線間の隙間にも止水剤を浸透させることができる。しかしながら、止水剤が高粘度であると電線間の隙間に止水剤が浸透しにくく、低粘度であると止水剤が垂れ落ちやすく、電線間の隙間にも確実に止水剤を塗布するためには改善の余地がある。
【0007】
前記特許文献2では、止水剤を塗布した電線群の外周全面にシートを巻き付け、該シートの外周に長さ方向の一端側から他端側へかけて加圧を順次負荷していくことで、止水剤を電線群の隙間に浸透させるとしている。このように、シートの外側から加圧するとシートで囲まれた領域内で止水剤を移動させることはできるが、移動させた止水剤が電線間の隙間に確実に浸透しているか否かはシートの外側から確認することはできない。また、シートを加圧するためには、前記のように液体または気体を供給する袋状シートを前記シートに巻き付ける必要がある。さらに、特許文献2の止水処理方法がワイヤハーネス組立作業台上で行えるか否かも不明である。
【0008】
本発明は前記した問題を解消せんとするもので、ワイヤハーネス組立作業台上で線間止水処理が行え、かつ、電線群の隙間に止水剤を確実に浸透させ、止水性能の信頼性を高めることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、集束される電線群の長さ方向の一部に止水剤を充填して線間止水部を形成する方法であって、
ワイヤハーネス組立作業台上において、布線治具で保持して配線した電線群のうち、前記線間止水部を形成する止水領域となる電線群の長さ方向の両端をテープ巻き結束すると共に、該止水領域の電線群を下面から両側面にかけて防水シートで覆い、
前記止水領域の電線群の上面に止水剤を滴下した後、該止水領域の電線群を加圧容器内に挿入し、
前記加圧容器に圧力空気を導入して前記止水剤を電線群の隙間に加圧充填し、かつ、前記加圧容器内の圧力を検出する圧力センサを取り付け、前記止水剤の加圧充填作業と同時に該圧力センサで検出される圧力値により止水精度を検査していることを特徴とするワイヤハーネスの線間止水部の形成方法を提供している。
【0010】
前記のように、本発明のワイヤハーネスの電線群の線間止水部の形成方法では、布線治具に保持された状態で、止水領域の長さ方向の両端をテープ巻きで結束すると共に底面から両側面にかけて防水シートで覆い、開口した上面から止水剤を塗布し、この状態で加圧容器内に挿入している。このように、防止シートは上面を開口しているため、この開口した上面から圧力空気を止水剤に直接負荷できるため、電線群の隙間へ止水剤を確実に充填していくことができる。
【0011】
かつ、該加圧容器内の圧力をセンサで検出しているため、検出した圧力値が下降後に略一定に保持された状態に達したことが検出されると、止水剤が電線群の隙間に漏れなく浸透されたことと判定することができる。このように、本発明では加圧容器内に挿入することで、止水処理と同時に止水性能の検査を行うことができる。かつ、該検査は圧力センサで圧力を測定して行うものであるため、目視検査等と比較して精度の高い検査となる。
従来の一般的な止水性能の検査は、内部を止水処理したグロメットを加圧容器と水を貯留した容器との境界壁に取り付け、水を貯留した容器内ではグロメットとワイヤハーネスとを水没させ、他方から加圧を負荷した時に前記水を貯留した容器内に気泡が発生するか否かで止水性能を検査している。よって、該止水性能の検査はワイヤハーネス組立作業台上のラインで行うことができず、オフラインで検査しなければならず、作業性が悪い問題がある。
これに対して、本発明では、ワイヤハーネス組立作業台のライン上で止水処理と同時に止水性能の検査を行うことができ、オフラインで行う水没による検査と比較して、作業性が良く、かつ、検査専用の設備も不要となり、かつ、水没検査では必要な水の後処理も不要となる。
また、前記特許文献2のように圧力流体供給用の配管を接続した袋状シートを巻き付ける必要はない。
【0012】
前記ワイヤハーネス組立作業台上で前記止水領域にあたる位置には、その長さ方向の両側にU字状の電線受け部を設けた第一、第二布線治具を立設すると共に、その中間部に電線を区分けして挿通する櫛歯状区分棒を受け部から突設した第三布線治具を立設しておき、
前記第一、第三、第二布線治具に電線群を挿通保持した後に、前記第一、第二布線治具の外側で電線群をテープ巻き結束し、
ついで、前記第三布線治具を下降させて、前記線間止水部の形成領域の底面から両側面にかけて防水シートをかぶせた状態で、電線群の上面に止水剤を充填した後に、
前記ワイヤハーネス組立作業台上で前記第一〜第三布線治具の側方に搭載している前記加圧容器内に前記第一、第二布線治具から取り出して移し代えて挿入している。
【0013】
前記第三布線治具の複数本の櫛歯状区分棒の隣接する各隙間に電線を直列に挿入し、
両側の前記第一、第二布線治具の外方で透明テープからなるテープを巻き付けて結束し、前記第一〜第三布線治具から電線群を取り出した状態で、電線群に前記櫛歯状区分部の大きさに相当する空隙を形成している。
【0014】
前記のように、櫛歯状の第三布線治具を用いると、止水剤を供給する電線群に、止水剤が浸透しやすい縦列の空間を前記第三布線治具で強制的に形成することができる。これにより、電線の隙間への止水剤の浸透性を高めることができる。
【0015】
前記線間止水部を設けたワイヤハーネスには、車体パネルの貫通孔に係止する車体係止凹部を大径筒部と、該大径筒部の一端に連続した小径筒部を備えたグロメットを外嵌し、
前記線間止水部を前記グロメットの小径筒部内に密着して挿通している。
【発明の効果】
【0016】
前記のように、本発明のワイヤハーネスの線間止水部の形成方法では、止水領域の電線群を防水シートで下面から両側面を囲んだ状態で上面開口から止水剤を塗布し、この状態で加圧容器内に挿入し、止水剤に直接的に加圧を負荷して電線群の隙間に充填しているため、隙間へは確実に止水剤を浸透させることができる。かつ、該加圧による止水剤の充填時に、加圧容器内の圧力を圧力センサで検出しているため、隙間にもれなく止水剤が充填されると加圧容器内の圧力低下が止まり、検出圧力は略一定に保持できることで、止水性能の検査も同時に行うことができる。これにより、線間止水部にグロメットを取り付けた後に行う水没検査装置を不要とできる等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態を示し、(A)は線間止水部にグロメットを取り付けたワイヤハーネスを自動車に配索している状態を示す正面図、(B)は断面図である。
【図2】(A)は線間止水部の形成装置を示す概略斜視図、(B)は第三布線治具の側面図である
【図3】加圧容器を示し、(A)は容器本体と蓋の分解斜視図、(B)は加圧容器に電線群の止水領域を挿入した状態の断面図である。
【図4】(A)〜(E)は線間止水部の形成工程を示す図面である。
【図5】加圧容器内での加圧充填状態を示す断面図である。
【図6】止水処理時における加圧容器内の圧力から止水性能の検査をするための検出圧力値と時間との関係を示すグラフである。
【図7】変形例を示す図面である。
【図8】従来例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図6に第一実施形態を示す。
実施形態の線間止水部を設けたワイヤハーネス1は、自動車のエンジンルームから車室側へと配索するもので、図1(A)に示すように、エンジンルーム(X)と車室(Y)とを仕切る車体パネルPの貫通孔Hを貫通させている。図1(B)に示すように、貫通孔Hを貫通する部分のワイヤハーネス1には線間止水部2を設け、該線間止水部2をゴム等からなるグロメット3に貫通し、該グロメット3の小径筒部3aの内周面に線間止水部2の外周面を密着している。該グロメット3から引き出された電線群6とグロメット3の小径筒部3aの端部にかけて粘着テープTを巻き付けている。グロメット3は前記小径筒部3aに連続して貫通孔Hの内周面に密着させる車体係止凹部3bを外周面に設けた大径筒部3cを備えた形状である。
【0019】
前記ワイヤハーネス1の線間止水部2では、止水剤5が隙間に充填されたワイヤハーネスの電線群6の外周を防水シート9で覆い、該防水シート9の長さ方向の両端から電線群6にかけてそれぞれ透明粘着テープ8A、8Bを巻き付けて結束している。
前記構成とした線間止水部2は前記グロメット3の小径筒部3aを拡げ治具(図示せず)で拡げて挿入し、防水シート9の外周面を小径筒部3aの内周面に水密で密着している。
【0020】
次に、前記ワイヤハーネス1の線間止水部2の形成装置について、図2及び図3を参照して説明する。
ワイヤハーネス組立作業台10上に布線治具11〜13を下降自在あるいは倒伏自在に立設しており、該布線治具11〜13にワイヤハーネス1を構成する電線群6を順次通して布線している。
前記ワイヤハーネス1に線間止水部2を設ける止水領域Sの部分では、該止水領域Sの長さ方向の両端に、U形状の電線受け部12aを支柱12bの上端に設けた第一布線治具12A、第二布線治具12Bを立設している。該第一、第二布線治具12Aと12Bに挟まれた中央部に、支柱13bの上端の水平棒13cより櫛歯状区分け棒13a1、13a2、13a3を突出した第三布線治具13を立設している。
図2(B)に示すように、前記櫛歯状区分け棒13a1と13a2、13a2と13a3の隙間寸法は1本の電線6aを挿通できる寸法に設定している。
【0021】
また、ワイヤハーネス組立作業台10上には、前記止水領域Sに配置した前記第一〜第三布線治具12、13の側方に止水剤供給装置14を設置し、止水剤供給装置14に回転自在に設けた止水剤滴下ノズル14aを前記第三布線治具13の上方に配置できるようにしている。
【0022】
また、前記第一〜第三布線治具12、13の側方に図3(A)(B)に示す加圧容器20を搭載している。該加圧容器20は、断面U形状とした保持台23を底面より突設した容器本体21と蓋22とを備え、容器本体21と蓋22の当接させる周壁21aと22aとにワイヤハーネス貫通用の半円溝21b、22bを備え、その内面にシール材21c、22cを取り付けて、止水領域Sの両外側の電線群6をシール状態で貫通させるようにしている。
上記蓋22の上壁22dに圧縮空気供給管24を接続し、かつ、上壁22dに圧力センサ25を取り付けて、加圧容器20内の圧力を検出している。該圧力センサ25の検出値は蓋22の外面に取り付けた表示器26で表示している。
【0023】
ワイヤハーネス1の線間止水部の形成方法について、図4を参照して説明する。
まず、図4(A)に示すように、ワイヤハーネス組立作業台10上の布線治具11、第一布線治具12A、第三布線治具13、第二布線治具12Bを通して電線群6を布線していく。
止水領域Sの中央部では、前記図2(B)に示すように、電線群6は櫛歯状区分棒13a1の外側、13a1と13a2の間、13a2と13a3の間、13a3の外側に通し、それぞれ上下方向に直列に通している。
【0024】
前記布線治具11〜13にすべての電線を通して布線が終了した後に、図4(B)に示すように、止水領域Sの両側の第一、第二布線治具12A、12Bの外側部分に透明粘着テープ8A、8Bを強く巻き付けて電線群6を結束する。
【0025】
ついで、図4(C)に示すように、第三布線治具13を下降させる。この状態で、止水領域Sの電線群6の長さ方向の中央には、櫛歯状区分け棒13a1〜13a3で形成された上下方向の空隙Cが形成される。
【0026】
その後、止水領域Sの電線群6の下面から両側面にかけて、図4(D)に示されているように、周縁に沿って粘着剤を塗布している塩化ビニールシート等からなる防水シート9をU形状として電線群6の外周面に固着する。
【0027】
ついで、図4(E)に示すように、防水シート9で覆われていない電線群6の上面にシリコーンからなる止水剤5を上方から滴下する。該止水剤は比較的低粘度でチクソ性を有するものとし、防水シート9で覆われた部分から外部へ流出しないものとしている。
【0028】
その後、図5に示すように、止水領域Sの電線群6をワイヤハーネス組立作業台10上において、止水領域Sの側方に配置した加圧容器20の容器本体21内に挿入し、電線群6を覆う防水シート9を保持台23に乗せ、防水シート9で覆われた電線群6の下面から両側面を保持台23で囲んで保持する。かつ、止水領域Sの両外側の電線群6の透明粘着テープ8A、8Bで結束した部分を半円溝21bから引き出す。
ついで、蓋22を容器本体21に被せ、蓋22の半円溝22bと半円溝21bとの間から電線群6をシール状態で引き出している。
【0029】
前記のように、加圧容器20内に止水領域Sの電線群を密閉状態で収容後、圧縮空気供給管24より加圧容器20内に圧縮空気を供給し加圧容器20内を加圧する。
この加圧により、図5に示すように、電線群6の上面に供給された止水剤5は、まず、電線群6内に縦方向に形成されて複数個の前記空隙Cに押し込まれ、さらに加圧されることにより、縦方向に直列に整列する電線の隙間にも押し込まれて浸透していく。該止水剤5の浸透状態は、加圧容器20より引き出されている透明粘着テープ8A、8Bで結束している部分を外部から見ることができる。
【0030】
加圧容器20内に圧縮空気を供給して、止水剤5を電線群6内に押し込んでいる止水処理作業時に、該加圧容器20内の圧力Ptを圧力センサ25で検出している。圧縮空気により止水剤5が電線群6の空隙に充填および浸透している間は、加圧容器20内の圧力はゆるやかに下降するが、止水剤5により隙間が完全に無くなると、加圧容器20内の圧力は略一定に保持できる。止水剤5が充填されていない隙間が存在すると、加圧容器20内に供給した圧縮空気は電線の隙間を通して加圧容器20の外部に漏れていくため、加圧容器20内の圧力は下降を続けることになる。
【0031】
前記圧力センサ25で検出される圧力値P(t)の時間変化は図5に示す状態となり、曲線を閾値とし、所要時間経過後に、閾値Lよりも圧力値P(t)が高い場合には、電線群6に隙間が無くなり、止水が完全になされたことが確認できる。閾値Lよりも圧力値Ptが低い場合には電線群中に隙間が存在し止水がまだ完全になされていない不良であることが分かる。
【0032】
前記圧力センサ25の検出値は表示器26で表示しているため、止水が完全になされた良品であることが確認でき、線間止水部2が形成できてから、加圧容器20より取り出し、前記防水シート9の両側部の上部を電線群6の上面に被せ、防水シート9の粘着剤で電線群6に粘着して、電線群6の全周を防水シート9で覆う。
【0033】
その後、図1に示すように、グロメット3の小径筒部3aを拡げ治具で押し開いて、ワイヤハーネス1の線間止水部2を挿入し、グロメット3の小径筒部3aの内周面に線間止水部2を密着させて貫通している。
【0034】
前記のように、本発明のワイヤハーネスの線間止水部の形成方法では、ワイヤハーネス組立作業台上で布線治具に電線群を布線していくライン上で止水処理を行うことができる。また、電線群に対して止水剤を加圧充填するため、止水剤は電線群の上面に滴下するだけでよく、電線群の各電線に塗布していく必要はなく、前記特許文献1と比較して作業性がよい。
【0035】
特に、加圧容器内で止水剤を電線群に加圧充填していく作業時に、加圧容器内の圧力を圧力センサで検出している。この圧力センサで検出される加圧容器内の圧力が下降し続けると、電線群中に隙間があり、加圧容器内の圧縮空気が電線群の隙間を通して外部に漏れていることがわかり、逆に、圧力低下が略無くなると電線群中に隙間がなくなり、止水が完全になされたことを確認することができる。このように、止水剤を電線群に加圧充填する作業時に同時に検査を行うことができる。
よって、従来の止水検査でなされていた水没検査等を不要とでき、該検査装置および検査工程を無くすことができる。
【0036】
図7にワイヤハーネス組立作業台に立設する布線治具の変形例を示す。
布線治具はワイヤハーネス組立作業台から立設する支軸30aの上端に、止水領域Sの長さを有する断面U形状の長尺な電線受け部30bを設けている。該電線受け部30bの内面に沿わせて予め防水シート9を取り付けている。
電線群の布線時に、止水領域Sの電線群6を布線治具30の電線受け部30bに通している。
【0037】
前記布線治具30を用いると、第一実施形態の櫛歯状区分棒を設けた前記第三布線治具13と比較して電線群6の間に強制的に隙間を設けることはできないが、第三布線治具を下降させた後に防水シート9を電線群に取り付ける手数を省くことができる。
他の構成は前記実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【符号の説明】
【0038】
1 ワイヤハーネス
2 線間止水部
3 グロメット
5 止水剤
6 電線群
8A、8B 透明粘着テープ
9 防水シート
10 ワイヤハーネス組立作業台
11 布線治具
12A 第一布線治具
12B 第二布線治具
13 第三布線治具
20 加圧容器
24 圧縮空気供給管
25 圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集束される電線群の長さ方向の一部に止水剤を充填して線間止水部を形成する方法であって、
ワイヤハーネス組立作業台上において、布線治具で保持して配線した電線群のうち、前記線間止水部を形成する止水領域となる電線群の長さ方向の両端をテープ巻き結束すると共に、該止水領域の電線群を下面から両側面にかけて防水シートで覆い、
前記止水領域の電線群の上面に止水剤を滴下した後、該止水領域の電線群を加圧容器内に挿入し、
前記加圧容器に圧力空気を導入して前記止水剤を電線群の隙間に加圧充填し、かつ、前記加圧容器内の圧力を検出する圧力センサを取り付け、前記止水剤の加圧充填作業と同時に該圧力センサで検出される圧力値により止水精度を検査していることを特徴とするワイヤハーネスの線間止水部の形成方法。
【請求項2】
前記ワイヤハーネス組立作業台上で前記止水領域にあたる位置には、その長さ方向の両側にU字状の電線受け部を設けた第一、第二布線治具を立設すると共に、その中間部に電線を区分けして挿通する櫛歯状区分棒を受け部から突設した第三布線治具を立設しておき、
前記第一、第三、第二布線治具に電線群を挿通保持した後に、前記第一、第二布線治具の外側で電線群をテープ巻き結束し、
ついで、前記第三布線治具を下降させて、前記線間止水部の形成領域の底面から両側面にかけて防水シートをかぶせた状態で、電線群の上面に止水剤を充填した後に、
前記ワイヤハーネス組立作業台上で前記第一〜第三布線治具の側方に搭載している前記加圧容器内に前記第一、第二布線治具から取り出して移し代えて挿入している請求項1に記載のワイヤハーネスの線間止水部の形成方法。
【請求項3】
前記第三布線治具の複数本の櫛歯状区分棒の隣接する各隙間に電線を直列に挿入し、
両側の前記第一、第二布線治具の外方で透明テープからなるテープを巻き付けて結束した後に、第一〜第三布線治具から電線群を取り出した状態で、電線群に前記櫛歯状区分部の大きさに相当する空隙を形成している請求項2に記載のワイヤハーネスの線間止水部の形成方法。
【請求項4】
前記線間止水部を設けたワイヤハーネスには、車体パネルの貫通孔に係止する車体係止凹部を大径筒部と、該大径筒部の一端に連続した小径筒部を備えたグロメットを外嵌し、
前記線間止水部を前記グロメットの小径筒部内に密着して挿通している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のワイヤハーネスの線間止水部の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−226860(P2010−226860A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70875(P2009−70875)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】