説明

ワイヤハーネスプロテクタ

【課題】ワイヤハーネスの接続先となる補機の装備位置が2通りに設定される車載部材上において、ワイヤハーネスの接続先が2通りの補機の装備位置の内の何れであっても、同一種類のワイヤハーネスを共用して、ワイヤハーネスの種類の増加を防止することができ、しかも、ワイヤハーネスの余長吸収作業等のために作業性が低下することを防止することができるワイヤハーネスプロテクタを提供すること。
【解決手段】ワイヤハーネス10の接続先となる補機の装備位置P1,P2が2通りに設定される車載部材上に固定されて、ワイヤハーネス10を収容保持するワイヤハーネスプロテクタ31において、補機に接続されるワイヤハーネス10の端部が引き出されるプロテクタの出口側端部31aには、車載部材上で2通りの補機の装備位置P1,P2に対して等距離となる位置にワイヤハーネス10を位置決めする配置調整部32を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスの接続先となる補機の装備位置が2通りに設定される車載部材上に固定されて、前記ワイヤハーネスを収容保持するワイヤハーネスプロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のシート(座席)やドア等に装備される補機(電装品のコネクタなど)に接続されるワイヤハーネスを前記シートやドア等に配索する際、ワイヤハーネスを略筒状のワイヤハーネスプロテクタに収容して、前記シートやドア等の構造部材に固定するワイヤハーネスの配索構造が各種提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
ところで、例えば、車両用のシートの場合、車両の左右の何れかに配置されるかによって、補機の装備位置が勝手反対になる2通りに設定される場合がある。このように補機の装備位置が2通りに設定されるシートのような車載部材上に配索されるワイヤハーネスは、ワイヤハーネスプロテクタの固定位置によっては、プロテクタの出口側端部からそれぞれの補機の装備位置までの配索経路長に差異が生じてしまう。
【0004】
そこで、従来では、配索経路長の差異に対する対応として、以下に示す2つの方法の何れかが選択されてきた。
【0005】
1つの方法は、予め、電線束の長さをそれぞれの配索経路長に適合させた2種類のワイヤハーネスを用意しておき、補機の装備位置によって、使用するワイヤハーネスを選択する方法である。
【0006】
他の1つの方法は、予め、配索経路長の長い方に合わせて製造された1種類のワイヤハーネスを共用する方法で、配索経路長の短い補機の装備位置にワイヤハーネスを接続する場合には、配索経路付近に追加装備した補助クランプ等への引き回しによりワイヤハーネスの余長を吸収させる方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−283833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、前述のように配索経路長の差異に対応して2種類のワイヤハーネスを用意する方法においては、用意するワイヤハーネスの種類(品番)が増えてしまうという問題が生じる。
【0009】
一方、1種類のワイヤハーネスの共用する方法においては、ワイヤハーネスの接続先が配索経路長の短い側の補機となる場合に、ハーネスの余長を吸収するための補助クランプの装備作業や、補助クランプ等へのケーブルの引き回し作業が必要となり、作業性の低下を招くという問題が生じる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、ワイヤハーネスの接続先となる補機の装備位置が2通りに設定される車載部材上において、ワイヤハーネスの接続先が2通りの補機の装備位置の内の何れであっても、同一種類のワイヤハーネスを共用して、ワイヤハーネスの種類の増加を防止することができ、しかも、ワイヤハーネスの余長吸収作業等のために作業性が低下することを防止することができるワイヤハーネスプロテクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1)ワイヤハーネスの接続先となる補機の装備位置が2通りに設定される車載部材上に固定されて、前記ワイヤハーネスを収容保持するワイヤハーネスプロテクタであって、
前記補機に接続されるワイヤハーネスの端部が引き出されるプロテクタの出口側端部には、前記車載部材上で前記2通りの補機の装備位置に対して等距離となる位置にワイヤハーネスを位置決めする配置調整部を備えたことを特徴とするワイヤハーネスプロテクタ。
【0012】
(2)前記ワイヤハーネスは、車両のシートの両側部に設定される2通りの装備位置の内の一方が接続先となるワイヤハーネスであり、
前記車載部材は、車両のシートの下面に装備されるシート下部構造部材であり、
前記配置調整部は、前記シート下部構造部材上で、シートの幅寸法の中心軸の直下となる位置にワイヤハーネスを位置決めすることを特徴とする上記(1)に記載のワイヤハーネスプロテクタ。
【0013】
上記(1)の構成によれば、車載部材上に固定されるワイヤハーネスプロテクタには、車載部材上に設定される2通りの補機の装備位置に対して等距離となる位置にワイヤハーネスを位置決めする配置調整部を備えているため、車載部材に対するワイヤハーネスプロテクタの固定位置に拘わらず、プロテクタの出口側端部からそれぞれの補機の装備位置までの配索経路長が同一になる。
【0014】
従って、ワイヤハーネスの接続先が2通りの補機の装備位置の内の何れであっても、同一種類のワイヤハーネスを共用して、ワイヤハーネスの種類の増加を防止することができる。
【0015】
しかも、上記(1)の構成によれば、プロテクタの出口側端部からそれぞれの補機の装備位置までの配索経路長が同一になるため、ワイヤハーネスの接続先が2通りの補機の装備位置の内の何れであっても、ワイヤハーネスの余長を吸収するための補助クランプの装備作業や、補助クランプ等へのケーブルの引き回し作業が不要となり、ワイヤハーネスの余長吸収作業等のために作業性が低下することを防止することができる。
【0016】
上記(2)の構成によれば、車両のシートに配索されるワイヤハーネスの種類の増加を防止することができ、また、車両のシートにワイヤハーネスを配索する際に、ワイヤハーネスの余長吸収作業等のために作業性が低下することを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるワイヤハーネスプロテクタによれば、車載部材に対するワイヤハーネスプロテクタの固定位置に拘わらず、プロテクタの出口側端部からそれぞれの補機の装備位置までの配索経路長が同一になる。
【0018】
従って、ワイヤハーネスの接続先が2通りの補機の装備位置の内の何れであっても、同一種類のワイヤハーネスを共用して、ワイヤハーネスの種類の増加を防止することができ、しかも、ワイヤハーネスの余長を吸収するための補助クランプの装備作業や、補助クランプ等へのケーブルの引き回し作業が不要となり、ワイヤハーネスの余長吸収作業等のために作業性が低下することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るワイヤハーネスプロテクタの一実施形態が装備される車両のシートの側面図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】図2に示したシート側ワイヤハーネスプロテクタの拡大図である。
【図4】図1に示したシート側ワイヤハーネスプロテクタのB矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るワイヤハーネスプロテクタの好適な実施形態について、図1〜図4を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1は本発明に係るワイヤハーネスプロテクタの一実施形態が装備される車両の車載部材としてのシートの側面図、図2は図1のA矢視図、図3は図2に示したシート側ワイヤハーネスプロテクタの拡大図、図4は図1に示したシート側ワイヤハーネスプロテクタのB矢視図である。
【0022】
図1に示した車両の車載部材としてのシート1は、搭乗者が座る座部1aと、搭乗者の背中を支える背板部1bとを備えている。このシート1は、図示はしていないが、図1に矢印X1で示す車両前後方向に位置調整可能なスライド機構と、図1に矢印Y1で示す車両上下方向に位置調整可能な高さ調整機構を備える。
【0023】
このシート1には、例えば、シートベルトの着脱状態を検知するための電装品等が搭載される。更に、シート1には、シート1に搭載される電装品等に給電用の電線や制御用の電線を接続するためのコネクタが、補機として装備される。
【0024】
本実施形態のシート1に装備される補機は、車両の左側に配置されるシートの場合と、車両の右側に配置されるシートの場合とで、勝手反対の配置となる。
【0025】
更に詳しく説明すると、座部1aには、ワイヤハーネスの接続先となる補機の装備位置が、図2に示すように、第1の装備位置P1と第2の装備位置P2との2通りに設定される。
【0026】
図2において、第1の装備位置P1は、例えば、車両の左側に搭載されるシートに設定される補機の装備位置である。また、第2の装備位置P2は、車両の左側に搭載されるシートに設定される補機の装備位置である。
【0027】
シート1上の補機に接続されるワイヤハーネス10は、図1に示すように、電線束11の一端側に接続されたバッテリ側コネクタ12と、電線束11の他端側に接続された補機側コネクタ13とを備えている。バッテリ側コネクタ12は、図示せぬ他のワイヤハーネス又は装置を介して、バッテリ又は制御装置に接続されるコネクタである。補機側コネクタ13は、シート1に組み込まれた図示せぬ補機に接続されるコネクタである。補機側コネクタ13は、補機に接続されるワイヤハーネス10の端部である。
【0028】
ワイヤハーネス10において、バッテリ側コネクタ12側の電線束11は、図1に示すように、床側ワイヤハーネスプロテクタ21に収容される。床側ワイヤハーネスプロテクタ21は、不図示の締結手段により、車両の床3に固定される。
【0029】
また、ワイヤハーネス10において、補機側コネクタ13側の電線束11は、図1に示すように、シート側ワイヤハーネスプロテクタ31に収容される。シート側ワイヤハーネスプロテクタ31は、不図示の締結手段により、クッションパン1c(図2参照)に固定される。クッションパン1cは、シート1の座部1aの下面に配置される薄皿状のシート下部構造部材である。
【0030】
シート1の下部におけるワイヤハーネス10の配索構造は、バッテリ側コネクタ12が接続された一端側は床側ワイヤハーネスプロテクタ21を介して車両の床3に固定され、補機側コネクタ13が接続された他端側はシート側ワイヤハーネスプロテクタ31を介して座部1aのクッションパン1cに固定される。また、ワイヤハーネス10の中間部の電線束11は、図1に示すように、床側ワイヤハーネスプロテクタ21とシート側ワイヤハーネスプロテクタ31との間にU字状に撓ませた形状に保持されて、シート1の車両前後方向の移動及び上下方向の移動のそれぞれを許容する。
【0031】
ワイヤハーネス10の他端に装備された補機側コネクタ13は、図2に示すようにシート1の両側部に設定される2通りの装備位置P1,P2の内の一方が接続先となる。
【0032】
以上に説明したシート側ワイヤハーネスプロテクタ31は、ワイヤハーネス10の接続先となる補機の装備位置が2通りに設定される車載部材としてのシート1上(詳しくは、座部1aの下面)に固定されて、ワイヤハーネス10の補機側コネクタ13側の電線束11を収容保持するワイヤハーネスプロテクタである。
【0033】
本実施形態のシート側ワイヤハーネスプロテクタ31は、図3及び図4に示すように、補機に接続されるワイヤハーネス10の端部である補機側コネクタ13が引き出される出口側端部31aに、配置調整部32を備える。
【0034】
配置調整部32は、出口側端部31aから引き出される電線束11を、図2に示した2通りの補機の装備位置P1,P2に対して等距離L1となる2位置P1,P2の中間位置P3に、位置決めする部位である。
【0035】
本実施形態の場合、配置調整部32は、図4に示すように、補機側コネクタ13に続く端部側の電線束11aを収容する溝構造33によって、電線束11aがシート側ワイヤハーネスプロテクタ31から引き出される位置を、中間位置P3に位置決めする。
【0036】
本実施形態の場合、図2に示した2通りの補機の装備位置P1,P2は、シート1の幅寸法の中心軸J1(図2参照)に対して、対称に配置される。従って、中間位置P3は、シート1の幅寸法の中心軸J1の直下に位置する。
【0037】
即ち、本実施形態の配置調整部32は、クッションパン1c上で、シート1の幅寸法の中心軸J1の直下となる位置に、出口側端部31aから出るワイヤハーネス10を位置決めする。
【0038】
本実施形態のシート側ワイヤハーネスプロテクタ31において、出口側端部31aとは逆側に位置して、ワイヤハーネス10のU字状に撓んだ中間部の電線束11を収容するプロテクタ本体部31bは、図3及び図4に示すように、中心軸J2が中間位置P3からシート幅方向に距離L2だけ離れた溝構造に形成されている。言い換えると、プロテクタ本体部31bの取り付け位置は、シート1の幅寸法の中心軸J1から距離L2だけシート幅方向に位置をずらした位置になっている。
【0039】
以上に説明した一実施形態のシート側ワイヤハーネスプロテクタ31は、車載部材であるシート1上に設定される2通りの補機の装備位置P1,P2に対して等距離となる位置P3にワイヤハーネス10を位置決めする配置調整部32を備えているため、シート1に対するシート側ワイヤハーネスプロテクタ31の固定位置に拘わらず、プロテクタの出口側端部31aからそれぞれの補機の装備位置P1,P2までの配索経路長が同一の距離L1になる。
【0040】
従って、ワイヤハーネス10の接続先が2通りの補機の装備位置P1,P2の内の何れであっても、同一種類のワイヤハーネス10を共用して、ワイヤハーネス10の種類の増加を防止することができる。
【0041】
しかも、以上に説明した一実施形態のシート側ワイヤハーネスプロテクタ31は、プロテクタの出口側端部31aからそれぞれの補機の装備位置P1,P2までの配索経路長が同一になるため、ワイヤハーネス10の接続先が2通りの補機の装備位置P1,P2の内の何れであっても、ワイヤハーネス10の余長を吸収するための補助クランプの装備作業や、補助クランプ等へのケーブルの引き回し作業が不要となり、ワイヤハーネス10の余長吸収作業等のために作業性が低下することを防止することができる。
【0042】
更に、以上に説明した一実施形態のシート側ワイヤハーネスプロテクタ31は車両のシート用であり、車両のシート1に配索されるワイヤハーネス10の種類の増加を防止することができ、また、車両のシート1にワイヤハーネス10を配索する際に、ワイヤハーネス10の余長吸収作業等のために作業性が低下することを防止することができる。
【0043】
なお、本発明のワイヤハーネスプロテクタは、前述した各実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形、改良等が可能である。
【0044】
例えば、ワイヤハーネスプロテクタが固定されるシート下部構造部材は、上記実施形態に示したクッションパンに限定するものではなく、車両の床に対してシートと一体にスライド移動するスライド部材等であっても良い。
【0045】
更に、本発明に係るワイヤハーネスプロテクタが固定される車載部材は、上記実施形態に示したシートに限るものではなく、車両のドアやルーフ部等であっても良い。
【0046】
また、上記実施形態では、配置調整部は、補機への接続のために電線束がワイヤハーネスプロテクタから引き出される位置を、2通りの補機の装備位置に対して等距離となる位置に溝構造により位置決めしているが、検束バンド等を利用した位置決め機構であっても良い。
【符号の説明】
【0047】
1 シート(車載部材)
1a 座部
1c クッションパン
10 ワイヤハーネス
11 電線束
11a 端部側の電線束
13 補機側コネクタ
31 シート側ワイヤハーネスプロテクタ(ワイヤハーネスプロテクタ)
31a 出口側端部
32 配置調整部
33 溝構造
P1 補機の装備位置
P2 補機の装備位置
P3 中間位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスの接続先となる補機の装備位置が2通りに設定される車載部材上に固定されて、前記ワイヤハーネスを収容保持するワイヤハーネスプロテクタであって、
前記補機に接続されるワイヤハーネスの端部が引き出されるプロテクタの出口側端部には、前記車載部材上で前記2通りの補機の装備位置に対して等距離となる位置にワイヤハーネスを位置決めする配置調整部を備えたことを特徴とするワイヤハーネスプロテクタ。
【請求項2】
前記ワイヤハーネスは、車両のシートの両側部に設定される2通りの装備位置の内の一方が接続先となるワイヤハーネスであり、
前記車載部材は、車両のシートの下面に装備されるシート下部構造部材であり、
前記配置調整部は、前記シート下部構造部材上で、シートの幅寸法の中心軸の直下となる位置にワイヤハーネスを位置決めすることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネスプロテクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−224114(P2012−224114A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90941(P2011−90941)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】