説明

ワイヤハーネス及びワイヤハーネスの製造方法

【課題】導電路の外装部材として柔軟な管体を単に備えるだけでなく、管体を所望の形状に保持することが可能であり、また、プロテクタを不要にすることも可能な、ワイヤハーネス及びワイヤハーネスの製造方法を提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス9は、導電路を含む導電路集合体15と、この導電路集合体15の外装部材となる柔軟性を有する管体16とを備えている。管体16には、水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材21が設けられており、この水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材21を硬化させると、形状保持部22が形成されるようになっている。ワイヤハーネス9は、管体16の形状保持部22により所望の形状に保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電路の外装部材として柔軟な管体を備えるワイヤハーネス、及び、このワイヤハーネスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されたワイヤハーネスは、三本の高圧電線と、この三本の高圧電線を一本ずつ収容して保護するための三本の金属保護パイプとを備えて構成されている。高圧電線は、車両の前側に搭載されるモータと、車両の中間又は後側に搭載されるインバータとを接続するものとして備えられている。
【0003】
ワイヤハーネスは、車体フレームの外側となる車体床下を通って配索されるようになっている。このため、金属保護パイプは石跳ねや水跳ねから高圧電線を保護することができるように形成されている。金属保護パイプは、石跳ねや水跳ねから高圧電線を保護し且つ高圧電線の撓みを防止する剛性を有するとともに、金属製であることから電磁シールド機能も有している。
【0004】
ワイヤハーネスは、真っ直ぐな状態の金属保護パイプに高圧電線を挿通し、これを三本分行った後に、車体床下におけるワイヤハーネスの配索経路に沿って金属保護パイプに曲げを施すことにより製造されている。ワイヤハーネスは、ハーネスメーカーの工場で上記の如く製造された後に、自動車メーカーの組み立て工場へと搬送されて車両の所定位置に組み付けられ、これにより配索が完了するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−224156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来技術にあっては、ワイヤハーネスの搬送の際に、金属保護パイプ同士が接触したり変形したりしてしまわないようにするため、金属保護パイプ毎、及びワイヤハーネス毎に十分なスペースを確保する必要があるという問題点を有している。また、金属保護パイプを三次元的に曲げ加工していることから、立体的なスペースを確保する必要もあるという問題点を有している。
【0007】
上記問題点を解消するためとして、柔軟性を有する管体を金属保護パイプの代替部材とすることが考えられる。しかしながら上記管体を単に代替部材とするだけでは、次のような幾つかの問題点を解消することは困難である。
【0008】
すなわち、柔軟性を有するだけの管体であると、ワイヤハーネスの組み付け・配索時及び配索後において、所望の形状を保持することが困難であるという問題点を有している。また、柔軟性を有するだけの管体であると、この管体を車両の所定位置に組み付けるために例えばプロテクタが必要になるが、このプロテクタは配索経路に合わせて樹脂成形される部材であることから、車両毎に専用設計・専用部材になってしまうという問題点、さらには汎用性が低くコスト高になってしまうという問題点を有している。
【0009】
プロテクタに関しては、開発段階で何度も試作金型を起こす場合があることから、設計費用、金型費用、設計時間等が掛かってしまうという問題点を有している。また、プロテクタに関しては、管体への組み付け部分が大型化することから、地面に近づき不具合が生じてしまうという問題点を有している。
【0010】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、導電路の外装部材として柔軟な管体を単に備えるだけでなく、管体を所望の形状に保持することが可能であり、また、プロテクタを不要にすることも可能な、ワイヤハーネス及びワイヤハーネスの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明のワイヤハーネスは、一又は複数本の導電路の外装部材となる柔軟性を有する管体を備えるとともに、該管体の一又は複数箇所の所定部分に水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を設け、さらに、該水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を硬化させて前記管体の形状保持部を形成することを特徴とする。
【0012】
このような特徴を有する本発明によれば、柔軟性を有する管体に対しプロテクタではなく水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を設け、この水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を硬化させることにより、管体を所望の形状に保持する。
【0013】
請求項2記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項1に記載のワイヤハーネスにおいて、前記管体を、この外周面が凹凸な部材とすることを特徴とする。
【0014】
このような特徴を有する本発明によれば、水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を硬化させると、水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材が管体の外周面における凹部に入り込み、また、凸部にも引っ掛かる。
【0015】
請求項3記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項1又は請求項2に記載のワイヤハーネスにおいて、前記管体を、この外周面が水密な部材とすることを特徴とする。
【0016】
このような特徴を有する本発明によれば、管体に対し水硬化性固定部材を設けてこれを硬化させる際、水分が管体内部の導電路にまで到達することはない。また、例えば車体床下にワイヤハーネスを配索した場合、水跳ねが管体内部の導電路にまで到達することもない。
【0017】
請求項4記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項1ないし請求項3いずれか記載のワイヤハーネスにおいて、前記水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を、巻き付け式の部材とすることを特徴とする。
【0018】
このような特徴を有する本発明によれば、管体の外周面に巻き付けをするだけで水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を管体に設けることが可能になる。
【0019】
また、上記課題を解決するためになされた請求項5記載の本発明のワイヤハーネスの製造方法は、一又は複数本の導電路の外装部材として機能する柔軟性を有する管体に対し、該管体の一又は複数箇所の所定部分に水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を設ける第一工程と、少なくとも前記所定部分を所望の形状にした状態に前記水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を硬化させる第二工程と、を含むことを特徴とする。
【0020】
このような特徴を有する本発明によれば、管体に外装された導電路と、水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材の硬化により所望の形状に保持された管体とを含むワイヤハーネスを製造するにあたり、第一工程及び第二工程を経る。
【0021】
請求項6記載の本発明のワイヤハーネスの製造方法は、請求項5に記載のワイヤハーネスの製造方法において、前記水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材として巻き付け式の部材を用いるとともに、予め所望の厚みに形成した部材を用いる、又は、巻き付けにより所望の厚みに形成することが可能な部材を用いることを特徴とする。
【0022】
このような特徴を有する本発明によれば、形状保持部の強度を高めるため、水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材の厚みを調節する。
【0023】
請求項7記載の本発明のワイヤハーネスの製造方法は、請求項5又は請求項6に記載のワイヤハーネスの製造方法において、前記第二工程をワイヤハーネス搬送後のワイヤハーネス配索作業時に行うことを特徴とする。
【0024】
このような特徴を有する本発明によれば、例えば自動車メーカーの組み立て工場へと搬送される際に好適な形態、また、車両の所定位置に組み付けられる際に好適な形態として配慮されたワイヤハーネスの製造になる。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に記載された本発明によれば、導電路の外装部材としての柔軟な管体を所望の形状に保持することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、プロテクタを不要にして汎用性を高めることができるとともに、コスト低減を図ることもできるという効果を奏する。さらに、本発明によれば、導電路の外装部材として柔軟な管体を備えることから、ワイヤハーネスの搬送の際に大きなスペース等を確保したりする必要がなく、搬送面で省スペース化や低コスト化を図ることができるという効果を奏する。
【0026】
請求項2に記載された本発明によれば、水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を硬化させる際、管体の外周面における凹部に入り込ませ、また、凸部にも引っ掛けることができるという効果を奏する。これにより、形状保持部の形成及び配置を安定させることができるという効果を奏する。
【0027】
請求項3に記載された本発明によれば、管体内部の導電路を水分から保護することができるという効果を奏する。
【0028】
請求項4に記載された本発明によれば、管体の外周面に水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を簡単に設けることができるという効果を奏する。
【0029】
請求項5に記載された本発明によれば、本発明に係るワイヤハーネスをより良く製造するための方法を提供することができるという効果を奏する。
【0030】
請求項6に記載された本発明によれば、形状保持部の強度を高めたワイヤハーネスを製造することができるという効果を奏する。
【0031】
請求項7に記載された本発明によれば、ワイヤハーネスの搬送及び組み付けに配慮した製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のワイヤハーネスに係る図であり、(a)はワイヤハーネスの配索状態を示す概略図、(b)はワイヤハーネスの構成及び形状保持部を示す斜視図である。
【図2】管体に対し水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を設けることに係る図であり、(a)はテープ巻きの要領で巻き付ける図、(b)は海苔巻き状に巻き付ける図、(c)はクランプを一緒にして巻き付ける図である。
【図3】本発明のワイヤハーネスの製造方法に係る図であり、(a)は管体に対し水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を設けるまでの工程説明図、(b)は搬送に係る工程説明図、(c)は形状保持部の形成に係る工程説明図、(d)組み付けに係る工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
ワイヤハーネスは、導電路と、この導電路の外装部材となる柔軟性を有する管体とを備えている。管体には、水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材が設けられており、この水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を硬化させると、形状保持部が形成されるようになっている。ワイヤハーネスは、管体の形状保持部により所望の形状に保持されている。
【実施例】
【0034】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。図1は本発明のワイヤハーネスに係る図である。また、図2は管体に対し水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を設けることに係る図、図3は本発明のワイヤハーネスの製造方法に係る図である。本実施例においては、ハイブリッド自動車(電気自動車であってもよいものとする)に本発明のワイヤハーネスを採用する例を挙げて説明するものとする。
【0035】
図1において、引用符号1はハイブリッド自動車を示している。ハイブリッド自動車1は、エンジン2及びモータユニット3の二つの動力をミックスして駆動する車両であって、モータユニット3にはインバータユニット4を介してバッテリー5(電池パック)からの電力が供給されるようになっている。エンジン2、モータユニット3、及びインバータユニット4は、本実施例において前輪等がある位置のエンジンルーム6に搭載されている。また、バッテリー5は、後輪等がある自動車後部7に搭載されている(エンジンルーム6の後方に存在する自動車室内に搭載してもよいものとする)。
【0036】
モータユニット3とインバインバータユニット4は、公知の高圧ワイヤハーネス8により接続されている。また、バッテリー5とインバータユニット4は、本発明のワイヤハーネス9により接続されている。ワイヤハーネス9は、高圧用のものとして構成されている。ワイヤハーネス9は、この中間部10が車体床下11の地面側に配索されている。車体床下11は、公知のボディであるとともに所謂パネル部材であって、所定位置には貫通孔(符号省略)が貫通形成されている。
【0037】
ワイヤハーネス9とバッテリー5は、このバッテリー5に設けられるジャンクションブロック12を介して接続されている。ジャンクションブロック12には、ワイヤハーネス9の後端13がコネクタ接続されている。ワイヤハーネス9の後端13側は、自動車室内側となる床上に配索されている。床上には、ワイヤハーネス9の前端14側も配索されている。ワイヤハーネス9の前端14側は、インバータユニット4にコネクタ接続されている。
【0038】
ここで本実施例での補足説明をすると、モータユニット3はモータ及びジェネレータを構成に含んでいるものとする。また、インバータユニット4は、インバータ及びコンバータを構成に含んでいるものとする。モータユニット3は、シールドケースを含むモータアッセンブリとして形成されるものとする。また、インバータユニット4もシールドケースを含むインバータアッセンブリとして形成されるものとする。バッテリー5は、Ni−MH系やLi−ion系のものであって、モジュール化してなるものとする。尚、例えばキャパシタのような蓄電装置を使用することも可能であるものとする。バッテリー5は、ハイブリッド自動車1や電気自動車に使用可能であれば特に限定されないものとする。
【0039】
ワイヤハーネス9は、この中間部10が車体床下11に沿って略平行に配索されている。すなわち、ワイヤハーネス9は、この中間部10が地面からの距離を稼ぐことができるように配索されている。ワイヤハーネス9は、地面からの距離を稼ぐためとして低背化となる構造にて製造されている(低背化に有効な構造は後述する)。
【0040】
ワイヤハーネス9は、導電路集合体15と、この導電路集合体15の外装部材となる管体16とを備えて構成されている。
【0041】
導電路集合体15は、二本の高圧電線17及び低圧電線18と、この二本の高圧電線17及び低圧電線18を一括してシールドする電磁シールド部材19とを備えて構成されている。高圧電線17は、導体及び絶縁体(被覆)を含む導電路であって、電気的な接続に必要な長さを有するように形成されている。導体は、銅や銅合金やアルミニウムやアルミニウム合金により製造されている。導体に関しては、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面矩形又は丸形となる棒状の導体構造(例えば平角単心や丸単心となる導体構造であり、この場合、電線自体も棒状となる)のもののいずれであってもよいものとする。高圧電線17は、非シールド電線となる構成を有している。高圧電線17の端末には、コネクタ20(図3参照)が設けられている(低圧電線18側のコネクタの図示は省略する)。
【0042】
尚、本実施例においては高圧電線17を用いているが、この限りでないものとする。すなわち、公知のバスバーに絶縁体を設けたもの等を用いてもよいものとする。
【0043】
低圧電線18は、公知のものであって、本実施例においては導電路集合体15の構成に含まれているが、この限りでないものとする。すなわち、低圧電線18を備えるか否かは任意であるものとする。
【0044】
電磁シールド部材19は、二本の高圧電線17を覆う電磁シールド用の部材(電磁波対策用の部材)であって、導電性の金属箔を含むシールド部材、或いは金属箔単体などにて筒状に形成されている。電磁シールド部材19は、二本の高圧電線17の全長とほぼ同じ長さに形成されている。電磁シールド部材19は、上記コネクタ20を介して、又は直接インバータユニット4のシールドケース等に接続されている。
【0045】
尚、電磁シールド部材19は、本実施例において金属箔を含んでいるが、この限りでないものとする。すなわち、電磁波対策をすることが可能であれば、例えば極細の素線を多数有する編組を用いてもよいものとする。編組は、導電性を有して筒状に形成されるものとする。
【0046】
電磁シールド部材19は、高圧電線17が上記の如く非シールド電線となる構成であることから備えられている。高圧電線17が公知のシールド電線である場合にはこの限りでないものとする。
【0047】
管体16は、柔軟性を有する管状部材であって、外周面に凹凸を有する樹脂製のコルゲートチューブ(蛇腹管)、外周面に凹凸なしの樹脂製やゴム製等のチューブ、外周面に凹凸を有する金属性のチューブ(蛇腹管)など各種が挙げられるものとする。また、管体16は、断面円形状に限らず、断面横長形状や、断面四角形状などの形状のものも挙げられるものとする。本実施例においては、断面横長形状で樹脂製のコルゲートチューブ(平型のコルゲートチューブ)を管体16として用いるものとする。
【0048】
管体16において、断面横長形状で樹脂製のコルゲートチューブは、軽量化に有効な構造になるのは勿論のこと、上記低背化となる構造、すなわち地面からの距離を稼げる有効な構造にもなっている。従って、上記のコルゲートチューブが本実施例に採用される理由となっている。コルゲートチューブは、スリットなしのものであって、外周面が水密に形成されるものが好ましいものとする。
【0049】
管体16の外周面には、光硬化性固定部材21(又は水硬化性固定部材)が複数設けられている。光硬化性固定部材21(又は水硬化性固定部材)は、管体16の複数の所定部分に設けられている。光硬化性固定部材21(又は水硬化性固定部材)は、図1(a)中の矢印AやBで示す所定部分、すなわち柔軟性を有する管体16であることからワイヤハーネス9の屈曲部分や組み付け固定部分などの例えば形状保持の必要な部分等に設けられている。
【0050】
光硬化性固定部材21(又は水硬化性固定部材)は、これを硬化させると管体16に形状保持部22を形成することができる部材にて構成されている。具体的には、光や水分により硬化する部分と、この部分が一体化する基材とを含んで構成されている。
【0051】
光硬化性固定部材21の場合には、光照射面を有する硬化部と、基材とを含んで構成されている。光硬化性固定部材21は、可視光23や専用の照明等で硬化する部材になっている。上記硬化部は、光硬化性樹脂組成物からなり、これが上記基材に対し含浸等で保持されるようになっている。光硬化性固定部材21は、この硬化時間が即時硬化、ゆっくり硬化などの調整可能な部材になることが好ましいものとする。光硬化性固定部材21は、水分を嫌う作業環境下の場合等に有効であるものとする(使用環境下での水分は問題ないものとする)。
【0052】
水硬化性固定部材の場合には、吸水面を有する硬化部と、基材とを含んで構成されている。水硬化性固定部材は、水分24の噴射・滴下等や、水中への浸漬等で硬化する部材になっている。上記硬化部は、水硬化性樹脂組成物からなり、これが上記基材に対し含浸等で保持されるようになっている。基材としては、ガラスウール、ガラスクロス、ポリエステルクロス、不織布などが挙げられるものとする(水硬化性固定部材に限らず光硬化性固定部材21も同様であるものとする。尚、ガラスクロス、ポリエステルクロスはニット織りが含浸に適しており、ムラなく均一に含浸させることが可能になるという利点を有する)。また、硬化部としては、水硬化性ウレタン樹脂などが挙げられるものとする。水硬化性固定部材は、光硬化性固定部材21と同様に硬化時間を調整することが可能になることが好ましいものとする。
【0053】
以上のような光硬化性固定部材21(又は水硬化性固定部材)は、管体16の外周面に対し巻き付けにより設けることができるようなものになっている。すなわち、テープ状であれば、図2(a)に示す如くテープ巻きの要領となる巻き付けにより設けることができるようになっている。また、シート状であれば、図2(b)に示す如くの海苔巻き状の巻き付けにより設けることができるようになっている。
【0054】
光硬化性固定部材21(又は水硬化性固定部材)は、予め所望の厚みに形成しておくことや、所望の厚みになるまで巻き付けることで、形状保持部22の形成後における強度を確保することができるようになっている。また、強度確保により形状保持状態の維持もできるようになっている。さらに、強度確保により例えば石跳ね等に強い部分にすることもできるようになっている。
【0055】
尚、テープ巻きの要領で巻き付けて光硬化性固定部材21(又は水硬化性固定部材)を設ける場合は、図2(c)に示す如く組み付け固定用のクランプ25を一体化させてもよいものとする(クランプ25の形状は一例であるものとする。クランプに限らず、例えばブラケット等を一体化させてもよいものとする)。
【0056】
光硬化性固定部材21(又は水硬化性固定部材)を硬化させて形状保持部22を形成するための可視光23や専用の照明等や水分24(図1(b)参照)を供給する供給手段26は、形状保持部22の形成範囲に合わせて製造現場に設置されるものとする。
【0057】
上記製造現場において、形状保持部22を所望の形状に硬化させるにあたり、治具や金型を用いると作業性が良好になるのは勿論である。図1(b)では曲げた形状にて保持された状態を示しているが、捻りを加えた形状に保持してもよいものとする。また、平面視略S字状やクランク形状に曲げてこの形状を保持してもよいものとする。
【0058】
光硬化性固定部材21(又は水硬化性固定部材)は、これを硬化させると、管体16の外周面における凹部に入り込み、また、凸部にも引っ掛かることから、形状保持部22の形成及び配置が安定するようになっている。
【0059】
尚、光硬化性固定部材21(又は水硬化性固定部材)の密着相手が仮に接着力の弱くなる例えばオレフィン系樹脂からなる場合、上記凹凸はズレ防止に有効であるという利点を有している。
【0060】
図3(a)において、全長が所望の長さとなる管体16及び導電路集合体15を準備し、この後に導電路集合体15を管体16に挿通し、そして、導電路集合体15を構成する例えば高圧電線17の端末にコネクタ20を設け、さらに、管体16の外周面の所定位置に光硬化性固定部材21(又は水硬化性固定部材)を巻き付けにより設けると、搬送前のワイヤハーネス9の製造が完了する。尚、管体16に対し予め光硬化性固定部材21(又は水硬化性固定部材)を設けておき、この後に導電路集合体15を挿通するようにしてもよいものとする。
【0061】
図3(b)において、上記の如く製造されたワイヤハーネス9を例えば図示のように丸めて搬送し易い状態にし、図示しない通箱等に収納して例えば自動車メーカーの組み立て工場へと搬送する。
【0062】
図3(c)において、上記組み立て工場へ搬送された後は、図示しない通箱から取り出し、製造現場で取り回しし易い状態にする。そして、光硬化性固定部材21(又は水硬化性固定部材)を設けた部分を所望の形状にした上で可視光23や専用の照明等や水分24(図1(b)参照)を供給する。
【0063】
図3(d)において、光硬化性固定部材21(又は水硬化性固定部材)を硬化させて形状保持部22を形成すると、ワイヤハーネス9の製造が完了する。そして、ワイヤハーネス9は、車体床下11(図1(a)参照)などに組み付けられて固定されると、また、電気的な接続等がなされると、配索が完了する。
【0064】
以上、図1ないし図3を参照しながら説明してきたように、ワイヤハーネス9は、柔軟性を有する管体16に対し従来のようなプロテクタではなく、光硬化性固定部材21(又は水硬化性固定部材)を設け、この光硬化性固定部材21(又は水硬化性固定部材)を硬化させて形状保持部22を形成することにより、管体16を所望の形状に保持することができる。また、ワイヤハーネス9は、柔軟な管体16を備えることから、ワイヤハーネス9の搬送の際に大きなスペース等を確保したりする必要がなく、搬送面で省スペース化や低コスト化を図ることができる。
【0065】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【0066】
上記説明では、分岐部分のないワイヤハーネス9の説明であったが、管体16を分割し、この分割部分から分岐部分を引き出しすることも可能であるものとする。そして、この引き出しの際、分岐部分の露出部及び管体16の端部を覆い隠すように光硬化性固定部材21(又は水硬化性固定部材)を設け、これを硬化させるようにしてもよいものとする。
【符号の説明】
【0067】
1…ハイブリッド自動車
2…エンジン
3…モータユニット
4…インバータユニット
5…バッテリー
6…エンジンルーム
7…自動車後部
8…高圧ワイヤハーネス
9…ワイヤハーネス
10…中間部
11…車体床下
12…ジャンクションブロック
13…後端
14…前端
15…導電路集合体
16…管体
17…高圧電線(導電路)
18…低圧電線(導電路)
19…電磁シールド部材
20…コネクタ
21…光硬化性固定部材
22…形状保持部
23…可視光
24…水分
25…クランプ
26…供給手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一又は複数本の導電路の外装部材となる柔軟性を有する管体を備えるとともに、該管体の一又は複数箇所の所定部分に水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を設け、さらに、該水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を硬化させて前記管体の形状保持部を形成する
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記管体を、この外周面が凹凸な部材とする
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記管体を、この外周面が水密な部材とする
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3いずれか記載のワイヤハーネスにおいて、
前記水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を、巻き付け式の部材とする
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項5】
一又は複数本の導電路の外装部材として機能する柔軟性を有する管体に対し、該管体の一又は複数箇所の所定部分に水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を設ける第一工程と、
少なくとも前記所定部分を所望の形状にした状態に前記水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を硬化させる第二工程と、
を含む
ことを特徴とするワイヤハーネスの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のワイヤハーネスの製造方法において、
前記水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材として巻き付け式の部材を用いるとともに、予め所望の厚みに形成した部材を用いる、又は、巻き付けにより所望の厚みに形成することが可能な部材を用いる
ことを特徴とするワイヤハーネスの製造方法。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載のワイヤハーネスの製造方法において、
前記第二工程をワイヤハーネス搬送後のワイヤハーネス配索作業時に行う
ことを特徴とするワイヤハーネスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−124080(P2012−124080A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275309(P2010−275309)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】