説明

ワイヤハーネス及びワイヤハーネスの製造方法

【課題】曲げ可能であるとともに所望の形状に保持することが可能な、また、プロテクタほど構造を複雑化せずにコストを抑えることも可能な、ワイヤハーネス及びワイヤハーネスの製造方法を提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス9は、一又は複数本の導電路を備えるとともに、直管状の先付外装部材20と管状の後付外装部材21とを含む外装部材16を備える。ワイヤハーネス9は、後付外装部材21を設ける前の状態において、隣り合う先付外装部材20同士の間で導電路を曲げ可能にする。後付外装部材21は、これを設けた後にワイヤハーネス9を所望の形状に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一又は複数本の導電路とこれを覆う外装部材とを含むワイヤハーネス、及びワイヤハーネスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されたワイヤハーネスは、三本の高圧電線と、この三本の高圧電線を一本ずつ収容して保護するための三本の金属保護パイプとを備えて構成されている。高圧電線は、車両の前側に搭載されるモータと、車両の中間又は後側に搭載されるインバータとを接続するものとして備えられている。
【0003】
ワイヤハーネスは、車体フレームの外側となる車体床下を通って配索されるようになっている。このため、金属保護パイプは石跳ねや水跳ねから高圧電線を保護することができるように形成されている。金属保護パイプは、石跳ねや水跳ねから高圧電線を保護し且つ高圧電線の撓みを防止する剛性を有するとともに、金属製であることから電磁シールド機能も有している。
【0004】
ワイヤハーネスは、真っ直ぐな状態の金属保護パイプに高圧電線を挿通し、これを三本分行った後に、車体床下におけるワイヤハーネスの配索経路に沿って金属保護パイプに曲げを施すことにより製造されている。ワイヤハーネスは、ハーネスメーカーの工場で上記の如く製造された後に、自動車メーカーの組み立て工場へと搬送されて車両の所定位置に組み付けられ、これにより配索が完了するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−224156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来技術にあっては、ワイヤハーネスの搬送の際に、金属保護パイプ同士が接触したり変形したりしてしまわないようにするため、金属保護パイプ毎、及びワイヤハーネス毎に十分なスペースを確保する必要があるという問題点を有している。また、金属保護パイプを三次元的に曲げ加工していることから、立体的なスペースを確保する必要もあるという問題点を有している。
【0007】
上記問題点を解消するためとして、曲げ可能な管体を金属保護パイプの代替部材とすることが考えられる。しかしながら上記曲げ可能な管体を単に代替部材とするだけでは、次のような幾つかの問題点を解消することは困難である。
【0008】
すなわち、曲げ可能であるだけの管体では、ワイヤハーネスの組み付け・配索時及び配索後において、所望の形状を保持することが困難であるという問題点を有している。また、所望の形状を保持することが困難であれば、このような管体を車両の所定位置に組み付けるにあたり例えばプロテクタを追加する必要があるが、プロテクタは配索経路に合わせて樹脂成形される部材であることから、車両毎に専用設計・専用部材になってしまうという問題点、さらには汎用性が低くコスト高になってしまうという問題点を有している。
【0009】
プロテクタに関しては、開発段階で何度も試作金型を起こす場合があることから、設計費用、金型費用、設計時間等が掛かってしまうという問題点を有している。また、プロテクタに関しては、管体への組み付け部分が大型化することから、地面に近づき不具合が生じてしまうという問題点を有している。
【0010】
尚、従来技術の金属保護パイプは、防食処理や塗装、さらには高圧であることを示す所定の色付け等の各種工程を行わなければならないことから、これらの面でもコスト高になってしまうという問題点を有している。
【0011】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、曲げ可能であるとともに所望の形状に保持することが可能な、また、プロテクタほど構造を複雑化せずにコストを抑えることも可能な、ワイヤハーネス及びワイヤハーネスの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明のワイヤハーネスは、一又は複数本の導電路の外装部材として、前記導電路に先通しする複数本の直管状の先付外装部材と、隣り合う前記先付外装部材同士を後付にて繋ぐ管状の後付外装部材とを含むことを特徴とする。
【0013】
このような特徴を有する本発明によれば、一又は複数本の導電路と、外装部材とを備えるワイヤハーネスになる。外装部材は、直管状の先付外装部材と管状の後付外装部材とを含み、先付外装部材は、導電路に対し先通しされる。後付外装部材を設ける前の状態において、隣り合う先付外装部材同士は、この間で導電路の曲げを許容する。外装部材は、隣り合う先付外装部材同士を後付外装部材にて繋ぐと、連続した管体になる。本発明によれば、先付外装部材と後付外装部材とを含み連続した管体となる外装部材により、ワイヤハーネスは所望の形状に保持される。
【0014】
請求項2記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項1に記載のワイヤハーネスにおいて、前記後付外装部材を曲管状に形成することを特徴とする。
【0015】
このような特徴を有する本発明によれば、曲管状の後付外装部材にて隣り合う先付外装部材同士を繋ぐことにより、ワイヤハーネスは曲げ形状を含む所望の形状に保持される。
【0016】
請求項2記載の本発明に関し、本発明は次のような問題点の解消にも有効である。すなわち、ベンダー機などにより金属パイプに曲げ加工を施すと、この際パイプに潰れが生じてしまうという虞があり、仮に潰れが生じた場合には、圧迫によって内部の導電路が損傷してしまうという問題点が考えられる。しかしながら、本発明によれば、後付外装部材を曲管状に形成しておくことにより、例えばベンダー機を用いての曲げ加工をする必要がなくなることから、曲げ加工による導電路の圧迫は生じなくなる。
【0017】
この他、金属パイプの断面形状は、曲げ加工の際に潰れ難い形状(円形状)にする必要があったが、本発明はこのような問題点の解消にも有効である。すなわち、本発明は後付外装部材を曲管状に形成しておくことにより、ベンダー機を用いての曲げ加工をする必要がなくなることから、後付外装部材を角形状や楕円形状や長円形状等の任意の断面形状に形成することが可能になる。任意の断面形状に形成できれば、ワイヤハーネスの小型化や低背化を図ることが可能になる。
【0018】
請求項3記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項1又は請求項2に記載のワイヤハーネスにおいて、前記後付外装部材を、二分割構造にて形成する、又は、ヒンジを介して開閉自在な分割構造にて形成することを特徴とする。
【0019】
このような特徴を有する本発明によれば、二分割構造の後付外装部材にて隣り合う先付外装部材同士を繋ぐことにより、又は、ヒンジを介して開閉自在な分割構造の後付外装部材にて隣り合う先付外装部材同士を繋ぐことにより、ワイヤハーネスは後付外装部材の形状に合わせた所望の形状に保持される。後付外装部材は、上記の二分割構造又は分割構造にすることにより、隣り合う先付外装部材同士の繋ぎ作業をし易くすることが可能になる。
【0020】
請求項4記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項1又は請求項2に記載のワイヤハーネスにおいて、前記後付外装部材を水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を含んで構成することを特徴とする。
【0021】
このような特徴を有する本発明によれば、水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を含む後付外装部材にて隣り合う先付外装部材同士を繋ぐことにより、ワイヤハーネスは後付外装部材の形状に合わせた所望の形状に保持される。後付外装部材は、水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を硬化させることにより、隣り合う先付外装部材同士を繋ぐことが可能になる。
【0022】
請求項5記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項1ないし請求項4いずれか記載のワイヤハーネスにおいて、前記先付外装部材を樹脂材の押し出しにより形成することを特徴とする。
【0023】
このような特徴を有する本発明によれば、樹脂製の先付外装部材であることから、金属製では必要になる防食処理や塗装の工程を不要にすることが可能になる。また、高圧であることを示す所定の色付けを成形時にすることが可能になる。本発明によれば、樹脂材の押し出しにより形成することから、コストをかけずに先付外装部材の形成をすることが可能になる。
【0024】
また、上記課題を解決するためになされた請求項6記載の本発明のワイヤハーネスの製造方法は、複数本の直管状の先付外装部材に一又は複数本の導電路を先通しする第一工程と、隣り合う前記先付外装部材同士を管状の後付外装部材にて繋ぐ第二工程とを含むことを特徴とする。
【0025】
このような特徴を有する本発明によれば、一又は複数本の導電路と、外装部材とを備えるワイヤハーネスを製造するにあたり、第一工程及び第二工程を経る。
【0026】
請求項7記載の本発明のワイヤハーネスの製造方法は、請求項6に記載のワイヤハーネスの製造方法において、前記第二工程をワイヤハーネス搬送後のワイヤハーネス配索作業時に行うことを特徴とする。
【0027】
このような特徴を有する本発明によれば、例えば自動車メーカーの組み立て工場へと搬送される際に好適な形態、また、車両の所定位置に組み付けられる際に好適な形態として配慮されたワイヤハーネスの製造になる。
【発明の効果】
【0028】
請求項1に記載された本発明によれば、直管状の先付外装部材と管状の後付外装部材とを含む外装部材を用い、後付外装部材を設ける前の状態においては、隣り合う先付外装部材同士の間で導電路を曲げ可能にすることができるとともに、後付外装部材を設けた後にはワイヤハーネスを所望の形状に保持することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、外装部材を管体にて構成することから、プロテクタほど構造を複雑化せずに導電路を保護し、以てコストを抑えることもできるという効果を奏する。
【0029】
請求項2に記載された本発明によれば、後付外装部材を曲管状に形成することにより、曲げ形状を含む所望の形状にてワイヤハーネスを保持することができるという効果を奏する。
【0030】
請求項3に記載された本発明によれば、二分割構造又はヒンジを介して開閉自在な分割構造の後付外装部材により、この後付外装部材の形状に合わせた所望の形状にてワイヤハーネスを保持することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、構造的に見ると、隣り合う先付外装部材同士の繋ぎ作業をし易くすることができるという効果を奏する。
【0031】
請求項4に記載された本発明によれば、後付外装部材における水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を硬化させることにより、隣り合う先付外装部材同士を繋ぐことができるという効果を奏する。
【0032】
請求項5に記載された本発明によれば、防食処理や塗装の工程等を不要にすることができるという効果を奏する。また、高圧であることを示す所定の色付けをし易くすることができるという効果を奏する。さらに、コストをかけずに先付外装部材を形成することができるという効果を奏する。従って、本発明によれば、コスト低減を図ることができるという効果を奏する。
【0033】
請求項6に記載された本発明によれば、本発明に係るワイヤハーネスをより良く製造するための方法を提供することができるという効果を奏する。
【0034】
請求項7に記載された本発明によれば、ワイヤハーネスの搬送及び組み付けに配慮した製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のワイヤハーネスに係る図であり、(a)はワイヤハーネスの配索状態を示す概略図、(b)は直管状の先付外装部材を導電路に先通しした状態を示す斜視図、(c)は隣り合う先付外装部材同士を後付外装部材にて繋いだ状態を示す斜視図である。
【図2】後付外装部材に係る図であり、(a)は二分割構造となる後付外装部材の断面図、(b)はヒンジを介して開閉自在な分割構造となる後付外装部材の断面図、(c)は水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材からなる後付外装部材をテープ巻きの要領で巻き付けて繋いだ状態を示す斜視図、(d)は海苔巻き状に巻き付けて繋いだ状態を示す斜視図、(e)は水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を硬化させる際の状態を示す斜視図である。
【図3】先付外装部材及び後付外装部材の他の例に係る図であり、(a)は断面横長形状のものを用いた場合の斜視図、(b)は筒状且つ伸縮性のある後付外装部材を用いた場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
ワイヤハーネスは、一又は複数本の導電路を備えるとともに、直管状の先付外装部材と管状の後付外装部材とを含む外装部材を備える。ワイヤハーネスは、後付外装部材を設ける前の状態において、隣り合う先付外装部材同士の間で導電路を曲げ可能にする。後付外装部材は、これを設けた後にワイヤハーネスを所望の形状に保持する。
【実施例】
【0037】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。図1は本発明のワイヤハーネスに係る図である。また、図2は後付外装部材に係る図、図3は先付外装部材及び後付外装部材の他の例に係る図である。本実施例においては、ハイブリッド自動車(電気自動車であってもよいものとする)に本発明のワイヤハーネスを採用する例を挙げて説明するものとする。
【0038】
図1において、引用符号1はハイブリッド自動車を示している。ハイブリッド自動車1は、エンジン2及びモータユニット3の二つの動力をミックスして駆動する車両であって、モータユニット3にはインバータユニット4を介してバッテリー5(電池パック)からの電力が供給されるようになっている。エンジン2、モータユニット3、及びインバータユニット4は、本実施例において前輪等がある位置のエンジンルーム6に搭載されている。また、バッテリー5は、後輪等がある自動車後部7に搭載されている(エンジンルーム6の後方に存在する自動車室内に搭載してもよいものとする)。
【0039】
モータユニット3とインバータユニット4は、公知の高圧ワイヤハーネス8により接続されている。また、バッテリー5とインバータユニット4は、本発明のワイヤハーネス9により接続されている。ワイヤハーネス9は、高圧用のものとして構成されている。ワイヤハーネス9は、この中間部10が車体床下11の地面側に配索されている。車体床下11は、公知のボディであるとともに所謂パネル部材であって、所定位置には貫通孔(符号省略)が貫通形成されている。
【0040】
ワイヤハーネス9とバッテリー5は、このバッテリー5に設けられるジャンクションブロック12を介して接続されている。ジャンクションブロック12には、ワイヤハーネス9の後端13がコネクタ接続されている。ワイヤハーネス9の後端13側は、自動車室内側となる床上に配索されている。床上には、ワイヤハーネス9の前端14側も配索されている。ワイヤハーネス9の前端14側は、インバータユニット4にコネクタ接続されている。
【0041】
ここで本実施例での補足説明をすると、モータユニット3はモータ及びジェネレータを構成に含んでいるものとする。また、インバータユニット4は、インバータ及びコンバータを構成に含んでいるものとする。モータユニット3は、シールドケースを含むモータアッセンブリとして形成されるものとする。また、インバータユニット4もシールドケースを含むインバータアッセンブリとして形成されるものとする。バッテリー5は、Ni−MH系やLi−ion系のものであって、モジュール化してなるものとする。尚、例えばキャパシタのような蓄電装置を使用することも可能であるものとする。バッテリー5は、ハイブリッド自動車1や電気自動車に使用可能であれば特に限定されないものとする。
【0042】
ワイヤハーネス9は、この中間部10が車体床下11に沿って略平行に配索されている。ワイヤハーネス9は、地面からの距離を稼ぐためとして中間部10の構造を後述する図3の構造にすることができるものとする。ワイヤハーネス9は、地面からの距離を稼ぐことにより、低背化を図ることができるようになっている。
【0043】
先ず、ワイヤハーネス9の構成及び構造について説明をする。ワイヤハーネス9は、導電路集合体15と、この導電路集合体15の外側に設けられる外装部材16とを備えて構成されている。
【0044】
導電路集合体15は、二本の高圧電線17と、この二本の高圧電線17を一括してシールドする電磁シールド部材18とを備えて構成されている。高圧電線17は、導体及び絶縁体(被覆)を含む導電路であって、電気的な接続に必要な長さを有するように形成されている。導体は、銅や銅合金やアルミニウムやアルミニウム合金により製造されている。導体に関しては、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面矩形又は丸形となる棒状の導体構造(例えば平角単心や丸単心となる導体構造であり、この場合、電線自体も棒状となる)のもののいずれであってもよいものとする。高圧電線17は、非シールド電線となる構成を有している。高圧電線17の端末には、コネクタ19が設けられている。
【0045】
尚、本実施例においては高圧電線17を用いているが、この限りでないものとする。すなわち、公知のバスバーに絶縁体を設けたもの等を用いてもよいものとする。
【0046】
電磁シールド部材18は、二本の高圧電線17を覆う電磁シールド用の部材(電磁波対策用の部材)であって、導電性の金属箔を含むシールド部材、或いは金属箔単体などにて筒状に形成されている。電磁シールド部材18は、二本の高圧電線17の全長とほぼ同じ長さに形成されている。電磁シールド部材18は、コネクタ19を介して、又は直接インバータユニット4のシールドケース等に接続されている。
【0047】
尚、電磁シールド部材18は、本実施例において金属箔を含んでいるが、この限りでないものとする。すなわち、電磁波対策をすることが可能であれば、例えば極細の素線を多数有する編組を用いてもよいものとする。編組は、導電性を有して筒状に形成されるものとする。
【0048】
電磁シールド部材18は、高圧電線17が上記の如く非シールド電線となる構成であることから備えられている。高圧電線17が公知のシールド電線である場合にはこの限りでないものとする。
【0049】
外装部材16は、複数の先付外装部材20(20a、20b、20c…)と、隣り合う先付外装部材20を繋ぐ複数の後付外装部材21(21a、21b…)とを含んで構成されている。
【0050】
先付外装部材20は、直管状となる管体であって、導電路集合体15に対し先通しすることができるように形成されている。すなわち、導電路集合体15は、導電路としての高圧電線17と電磁シールド部材18とを含んで構成されることから、これらに対し先通しすることができるように先付外装部材20は形成されている。
【0051】
先付外装部材20を先通しした後、隣り合う先付外装部材20同士は、この間となる矢印Cの部分で導電路集合体15の曲げを許容することができるようになっている。先付外装部材20は、この長さ寸法を調整することにより、所望の位置での曲げを許容することができるようになっている。
【0052】
先付外装部材20は、導電路集合体15を先通しすることができる形状であればよく、多少曲がりのある管体であっても、上記「直管」の一形態に含めてよいものとする。
【0053】
先付外装部材20は、金属製及び樹脂製のいずれからなるものでもよく、本実施例においては樹脂材の押し出し成形により形成されている。尚、先付外装部材20を樹脂製としたのは、押し出し成形であれば所望の長さに形成することが容易であるのは勿論のこと、金属製の場合に必要となる防食処理や塗装の工程等を不要にすることができるという理由からである。また、成形時において樹脂材料に色付けをすることで、高圧であることを示す所定の色付けを容易に行えるという理由からである。
【0054】
後付外装部材21は、最初から管体となる部材、又は最終的に管体となる部材であって、上記の如く隣り合う先付外装部材20を後付により繋ぐことができるようになっている。後付外装部材21は、直管状や曲管状など、ワイヤハーネス9の配索経路に合わせた形状に形成されている。後付外装部材21は、これを後付して隣り合う先付外装部材20を繋ぐと、外装部材16を連続した管体として形成することができるようになっている。後付外装部材21は、例えば図1(a)中の矢印AやBで示す所定部分に設けられている。
【0055】
後付外装部材21の具体的な例としては、図2(a)に示す如くの二分割構造となる後付外装部材21が挙げられるものとする。この例においては、半円筒形状の上側半筒部22と、同じく半円筒形状の下側半筒部23とを備えて構成されており、それぞれには係合部分としてのロック部24が形成されている(ロック部24は係止突起と係止枠部のような公知の構造を例えば採用するものとする)。
【0056】
また、後付外装部材21の具体的な例としては、図2(b)に示す如くのヒンジを介して開閉自在な分割構造となる後付外装部材21が挙げられるものとする。この例においては、半円筒形状の上側半筒部25と、同じく半円筒形状の下側半筒部26と、これらを繋ぐヒンジ27とを備えて構成されており、上側半筒部25及び下側半筒部26には係合部分としてのロック部28が形成されている(ロック部28は係止突起と係止枠部のような公知の構造を例えば採用するものとする)。
【0057】
また、後付外装部材21の具体的な例としては、図2(c)及び(d)に示す如くの水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材からなる後付外装部材21が挙げられるものとする。これらの例においては、光硬化性固定部材29(又は水硬化性固定部材)が用いられており、光硬化性固定部材29(又は水硬化性固定部材)を硬化させると所望の形状の後付外装部材21にすることができるようになっている。光硬化性固定部材29(又は水硬化性固定部材)は、光や水分により硬化する部分と、この部分が一体化する基材とを含んで構成されている。
【0058】
上記の光硬化性固定部材29の場合、光硬化性固定部材29は光照射面を有する硬化部と、基材とを含んで構成されている。光硬化性固定部材29は、可視光30や専用の照明等で硬化する部材になっている。上記硬化部は、光硬化性樹脂組成物からなり、これが上記基材に対し含浸等で保持されるようになっている。光硬化性固定部材29は、この硬化時間が即時硬化、ゆっくり硬化などの調整可能な部材になることが好ましいものとする。光硬化性固定部材29は、水分を嫌う作業環境下の場合等に有効であるものとする(使用環境下での水分は問題ないものとする)。
【0059】
上記の水硬化性固定部材の場合、この水硬化性固定部材は吸水面を有する硬化部と、基材とを含んで構成されている。水硬化性固定部材は、水分31の噴射・滴下等や、水中への浸漬等で硬化する部材になっている。上記硬化部は、水硬化性樹脂組成物からなり、これが上記基材に対し含浸等で保持されるようになっている。基材としては、ガラスウール、ガラスクロス、ポリエステルクロス、不織布などが挙げられるものとする(水硬化性固定部材に限らず光硬化性固定部材29も同様であるものとする。尚、ガラスクロス、ポリエステルクロスはニット織りが含浸に適しており、ムラなく均一に含浸させることが可能になるという利点を有する)。また、硬化部としては、水硬化性ウレタン樹脂などが挙げられるものとする。水硬化性固定部材は、光硬化性固定部材29と同様に硬化時間を調整することが可能になることが好ましいものとする。
【0060】
以上のような光硬化性固定部材29(又は水硬化性固定部材)は、巻き付けにより隣り合う先付外装部材20を繋ぐことができるようになっている。すなわち、テープ状であれば、図2(c)に示す如くテープ巻きの要領となる巻き付けにより繋ぐことができるようになっている。また、シート状であれば、図2(d)に示す如くの海苔巻き状の巻き付けにより繋ぐことができるようになっている。
【0061】
光硬化性固定部材29(又は水硬化性固定部材)は、予め所望の厚みに形成しておくことや、所望の厚みになるまで巻き付けをすることで、後付外装部材21の強度を確保することができるようになっている。また、強度確保により形状保持状態の維持もできるようになっている。さらに、強度確保により例えば石跳ね等に強い部分にすることもできるようになっている。
【0062】
光硬化性固定部材29(又は水硬化性固定部材)を硬化させて後付外装部材21を形成するための可視光30や専用の照明等や水分31を供給する供給手段32(図2(e)参照)は、後付外装部材21を後付けする位置に合わせて製造現場に設置されるものとする。上記製造現場において、後付外装部材21を光硬化性固定部材29(又は水硬化性固定部材)の状態から所望の形状に硬化させるにあたっては、治具や金型を用いると作業性が良好になるのは勿論である。
【0063】
次に、上記構成及び構造に基づきながらワイヤハーネス9の製造について説明をする(図1及び図2参照)。
【0064】
先ず、図2(a)、(b)の後付外装部材21を用いた場合の製造について説明をする。全長が所望の長さとなる先付外装部材20を必要数準備し、この後に先付外装部材20を導電路集合体15に先通しする(挿通する)。そして、導電路集合体15を構成する高圧電線17の端末にコネクタ19を設けると、搬送前のワイヤハーネス9の製造が完了する。先付外装部材20を先通しした後、隣り合う先付外装部材20同士は、この間となる矢印Cの部分で導電路集合体15の曲げを許容することから、上記の如く製造されたワイヤハーネス9は、例えば丸めたりして搬送し易い状態にすることができる。
【0065】
ワイヤハーネス9は、図示しない通箱等に収納されて例えば自動車メーカーの組み立て工場へと搬送されると、この後に通箱から取り出され、製造現場で取り回しし易い状態にされる。そして、隣り合う先付外装部材20同士を二分割構造となる後付外装部材21を用いて繋ぐと、又は、ヒンジ27を介して開閉自在な分割構造となる後付外装部材21を用いて繋ぐと、連続した管体となる外装部材16が形成されてワイヤハーネス9の製造が完了する。この後、ワイヤハーネス9は車体床下11などに組み付けられて固定がなされると、また、電気的な接続等がなされると、配索が完了する。
【0066】
次に、図2(c)〜(e)の後付外装部材21を用いた場合の製造について説明をする。全長が所望の長さとなる先付外装部材20を必要数準備し、この後に先付外装部材20を導電路集合体15に先通しする(挿通する)。そして、導電路集合体15を構成する高圧電線17の端末にコネクタ19を設けると、搬送前のワイヤハーネス9の製造が完了する。先付外装部材20を先通しした後、隣り合う先付外装部材20同士は、この間となる矢印Cの部分で導電路集合体15の曲げを許容することから、上記の如く製造されたワイヤハーネス9は、例えば丸めたりして搬送し易い状態にすることができる。
【0067】
ワイヤハーネス9は、図示しない通箱等に収納されて例えば自動車メーカーの組み立て工場へと搬送されると、この後に通箱から取り出され、製造現場で取り回しし易い状態にされる。そして、隣り合う先付外装部材20同士を光硬化性固定部材29(又は水硬化性固定部材)にて繋ぐとともに、光硬化性固定部材29(又は水硬化性固定部材)を設けた部分を所望の形状にした上で可視光30や専用の照明等や水分31を供給すると、光硬化性固定部材29(又は水硬化性固定部材)は硬化して連続した管体となる外装部材16が形成され、これによりワイヤハーネス9の製造が完了する。この後、ワイヤハーネス9は車体床下11などに組み付けられて固定がなされると、また、電気的な接続等がなされると、配索が完了する。
【0068】
尚、搬送前に光硬化性固定部材29(又は水硬化性固定部材)を巻き付けて隣り合う先付外装部材20同士を繋ぐようにしてもよいものとする。なぜならば、光硬化性固定部材29(又は水硬化性固定部材)は、これを硬化させる前であればこの部分での曲げを許容することができるからである。
【0069】
上記実施例の説明においては、外装部材16を円筒形状のものに形成していたが、図3に示す如く断面横長形状のものに形成してもよいものとする(長円、楕円、長方形などの断面横長形状)。図3(a)において、外装部材16′は断面横長形状の複数の先付外装部材20′(20a′、20b′…)と、隣り合う先付外装部材20′を繋ぐ複数の後付外装部材21′(21a′…)とを含んで構成されている。ここでは後付外装部材21′は光硬化性固定部材29′(又は水硬化性固定部材)を硬化させてなるものになっている。
【0070】
外装部材16′にて保護される導電路集合体15′は、二本の高圧電線17及び低圧電線33と、この二本の高圧電線17及び低圧電線33を一括してシールドする電磁シールド部材18′とを備えて構成されている。後付外装部材21′となる光硬化性固定部材29′(又は水硬化性固定部材)は、図3(b)に示す如く、筒状且つ少なくとも径方向に伸縮性を有するようになっている。光硬化性固定部材29′(又は水硬化性固定部材)は、これを径方向に拡径させ、拡径状態で挿通することにより、繋ぎに係る取り付けをすることができるようになっている。
【0071】
この他、上記実施例の説明においては、分岐部分のないワイヤハーネス9に形成していたが、所望の位置で分岐部分を引き出しすることができるように形成してもよいものとする。そして、この引き出しの際に分岐部分の露出部等を覆い隠すように、例えば光硬化性固定部材29(又は水硬化性固定部材)を設け、これを硬化させるようにしてもよいものとする。
【0072】
以上、図1ないし図3を参照しながら説明してきたように、本発明によれば、直管状の先付外装部材20と管状の後付外装部材21とを含む外装部材16を用い、後付外装部材21を設ける前の状態においては、隣り合う先付外装部材20同士の間で導電路集合体15を曲げ可能にすることができることから、ワイヤハーネス9の搬送の際に大きなスペース等を確保したりする必要がなく、結果、搬送面での省スペース化や低コスト化を図ることができるという効果を奏する。
【0073】
また、本発明によれば、後付外装部材21を設けることで所望の形状にワイヤハーネス9を保持できることから、プロテクタを用いなくとも形状保持をすることができるという効果を奏する。さらに、本発明によれば、外装部材16を先付外装部材20及び後付外装部材21にて構成することから、プロテクタほど構造を複雑化せずに導電路集合体15を保護し、以てコストを抑えることもできるという効果を奏する。
【0074】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0075】
1…ハイブリッド自動車
2…エンジン
3…モータユニット
4…インバータユニット
5…バッテリー
6…エンジンルーム
7…自動車後部
8…高圧ワイヤハーネス
9…ワイヤハーネス
10…中間部
11…車体床下
12…ジャンクションブロック
13…後端
14…前端
15…導電路集合体
16…外装部材
17…高圧電線(導電路)
18…電磁シールド部材
19…コネクタ
20…先付外装部材
21…後付外装部材
22、25…上側半筒部
23、26…下側半筒部
24、28…ロック部
27…ヒンジ
29…光硬化性固定部材(又は水硬化性固定部材)
30…可視光
31…水分
32…供給手段
33…低圧電線(導電路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一又は複数本の導電路の外装部材として、前記導電路に先通しする複数本の直管状の先付外装部材と、隣り合う前記先付外装部材同士を後付にて繋ぐ管状の後付外装部材とを含む
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記後付外装部材を曲管状に形成する
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記後付外装部材を、二分割構造にて形成する、又は、ヒンジを介して開閉自在な分割構造にて形成する
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記後付外装部材を水硬化性固定部材又は光硬化性固定部材を含んで構成する
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4いずれか記載のワイヤハーネスにおいて、
前記先付外装部材を樹脂材の押し出しにより形成する
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項6】
複数本の直管状の先付外装部材に一又は複数本の導電路を先通しする第一工程と、隣り合う前記先付外装部材同士を管状の後付外装部材にて繋ぐ第二工程とを含む
ことを特徴とするワイヤハーネスの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のワイヤハーネスの製造方法において、
前記第二工程をワイヤハーネス搬送後のワイヤハーネス配索作業時に行う
ことを特徴とするワイヤハーネスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−142105(P2012−142105A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292296(P2010−292296)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】