説明

ワイヤハーネス及び電線保護具

【課題】電線束の分岐部に取り付けられた電線保護具を備えるワイヤハーネスにおいて、電線束の枝線部を電線保護具内に位置決めする作業を大幅に軽減できること。
【解決手段】電線保護具1の枝線保護部20は、枝線部92の一部が挿入される溝23を形成する部分である。枝線保護部20には、溝23内で枝線保護部20側から起立して第一の側へ傾斜する板状の第一傾斜板部511を有し、弾性変形する第一弾性板部51が形成されている。溝23を塞ぐ枝線用蓋部32には、溝23内で枝線用蓋部32側から起立して第二の側へ傾斜して第一傾斜板部511に対向する板状の第二傾斜板部611を有し、弾性変形する第二弾性板部61が形成されている。2つの傾斜板部511,522は、枝線部92を2箇所で押し曲げつつそれら2箇所の間の部分を挟み込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線束の分岐部を保護する電線保護具及びそれを備えたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載されるワイヤーハーネスは、幹線部から1つ又は複数の枝線部へ枝分かれした分岐構造を有する電線束を備えることが多い。さらに、ワイヤーハーネスは、電線束の分岐部に取り付けられた電線保護具を備えることが多い。分岐部用の電線保護具は、周辺の部材から電線を保護し、電線束の分岐形状を所望の形状に維持するための部材であり、通常、樹脂の成形部材である。
【0003】
分岐部用の電線保護具は、幹線部が挿入される溝を形成する幹線保護部と、枝線部が挿入される溝を形成する枝線保護部とを有する。そして、電線束の枝線部は、電線保護具の枝線保護部に位置決めされる。従来、電線束の枝線部を電線保護具の枝線保護部に位置決めするためにいくつかの手段が採用されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、電線束の枝線部が、電線保護具における枝線保護部の先端部分に粘着テープにより固定されることが示されている。
【0005】
また、特許文献2には、電線束の枝線部が、電線保護具における枝線保護部の先端部分に結束用ベルトにより固定されることが示されている。さらに、特許文献2には、電線束の枝線部が、電線保護具の溝内に設けられた壁に沿って折り返された上で枝線の出口まで配線されることにより、枝線部が電線保護具内で位置決めされることが示されている。
【0006】
また、特許文献3には、電線束の枝線部が、電線保護具における枝線保護部の側壁に設けられた複数の壁の間に曲げて挿入されることにより、枝線部が枝線保護部内で位置決めされる構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−162262号公報
【特許文献2】特開2007−330005号公報
【特許文献3】特開2004−166454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、電線束の枝線部が、電線保護具の一部に粘着テープ又は結束用ベルトにより固定される場合、枝線部の固定に要する作業工数及び部品管理の工数が大きくなる。また、ワイヤハーネスの製造工数の低減のため、電線束の枝線部を曲げながら電線保護具の溝内の壁の間に配線する作業についても、さらなる作業工数の低減が求められている。
【0009】
本発明は、電線束の分岐部に取り付けられた電線保護具を備えるワイヤハーネスにおいて、電線束の枝線部を電線保護具内に位置決めする作業を大幅に軽減できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係るワイヤハーネスは、幹線部とその幹線部から分岐した枝線部とを有する電線束と、前記電線束の分岐部を覆う電線保護具と、を備える。さらに、第1発明に係るワイヤハーネスにおいて、前記電線保護具は、以下に示される各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、前記電線束における前記幹線部の一部が挿入された第一の溝を形成する幹線保護部である。
(2)第2の構成要素は、前記幹線保護部と一体に形成され、前記電線束における前記枝線部の一部が挿入された第二の溝を形成する枝線保護部である。
(3)第3の構成要素は、前記幹線保護部及び前記枝線保護部と組み合わされて前記第一の溝及び前記第二の溝を塞ぐ蓋部である。
(4)第4の構成要素は、前記第二の溝内で前記第二の溝の深さ方向における前記枝線保護部側から起立するとともに前記第二の溝に沿う枝線方向における第一の側へ傾斜する板状の第一傾斜板部を有し、根元部が前記枝線保護部によって支持され、弾性変形することにより前記第一傾斜板部が前記第二の溝の深さ方向において変位可能に構成された第一弾性板部である。
(5)第5の構成要素は、前記第二の溝内で前記第二の溝の深さ方向における前記蓋部側から起立するとともに前記枝線方向における前記第一の側に対し反対の第二の側へ傾斜する板状に形成され、かつ、前記第一傾斜板部に対向する第二傾斜板部を有し、根元部が前記蓋部によって支持され、弾性変形することにより前記第二傾斜板部が前記第二の溝の深さ方向において変位可能に構成された第二弾性板部である。さらに、第1発明に係るワイヤハーネスにおいて、前記第一傾斜板部及び前記第二傾斜板部が、それぞれの先端部において前記電線束の前記枝線部における2箇所を前記第一弾性板部及び前記第二弾性板部の弾性力により押し曲げつつ前記枝線部における前記2箇所の間の部分を挟み込んでいる。
【0011】
第2発明に係るワイヤハーネスは、第1発明に係るワイヤハーネスの一例である。第2発明に係るワイヤハーネスの前記電線保護具は、前記枝線保護部における、前記第一弾性板部の位置よりも前記枝線方向の前記第二の側の位置に形成され、前記第二の溝内で前記蓋部へ向かって突起するとともに前記第二の溝に沿う方向に交差する方向の稜線をなす頭頂部を有する第一突起部をさらに有する。そして、前記第一突起部は、その頭頂部において前記枝線部を押し曲げている。
【0012】
第3発明に係るワイヤハーネスは、第2発明に係るワイヤハーネスの一例である。第3発明に係るワイヤハーネスの前記電線保護具において、前記第一弾性板部は、根元部において前記第一突起部と繋がり、前記第一突起部を介して前記枝線保護部により支持されている。即ち、前記第一突起部と前記第一弾性板部とは一連に形成されている。
【0013】
第4発明に係るワイヤハーネスは、第1発明から第3発明のいずれかに係るワイヤハーネスの一例である。第4発明に係るワイヤハーネスの前記電線保護具は、前記第二弾性板部の位置よりも前記枝線方向の前記第一の側の位置に形成され、前記第二の溝内で前記枝線保護部へ向かって突起するとともに前記第二の溝に沿う方向に交差する方向の稜線をなす頭頂部を有する第二突起部をさらに有する。そして、前記第二突起部は、その頭頂部において前記枝線部を押し曲げている。
【0014】
第5発明に係るワイヤハーネスは、第4発明に係るワイヤハーネスの一例である。第5発明に係るワイヤハーネスの前記電線保護具において、前記第二弾性板部は、根元部において前記第二突起部と繋がり、前記第二突起部を介して前記蓋部により支持されている。即ち、前記第二突起部と前記第二弾性板部とは一連に形成されている。
【0015】
第6発明に係るワイヤハーネスは、第1発明から第5発明のいずれかに係るワイヤハーネスの一例である。第6発明に係るワイヤハーネスの前記電線保護具において、前記第一弾性板部における前記第二弾性板部に対向する側の面、及び前記第二弾性板部における前記第一弾性板部に対向する側の面に、凹凸が形成されている。
【0016】
第7発明に係るワイヤハーネスは、第1発明から第6発明のいずれかに係るワイヤハーネスの一例である。第7発明に係るワイヤハーネスにおいて、前記電線束の前記枝線部は、前記幹線部から分岐した電線を覆う可撓性を有する筒状の部材である保護チューブを備える。この保護チューブにおける、前記第一傾斜板部及び前記第二傾斜板部の各々の先端部により押し曲げられた部分の前記第一傾斜板部及び前記第二傾斜板部の各々の先端部に対向する外側面には、周方向に沿う複数の切り目が形成されている。
【0017】
また、本発明は、第1発明から第6発明に係るワイヤハーネスが備える電線保護具の発明として捉えられてもよい。
【発明の効果】
【0018】
第1発明において、電線束の枝線部は、枝線保護部の溝内で、傾斜して相互に対向する2つの傾斜板部によって2箇所で押し曲げられるとともに、押し曲げられた2箇所の間の部分において2つの傾斜板部の間に挟み込まれる。これにより、枝線部は、枝線保護部の溝内で蛇行した状態で保持される。そのため、枝線部に引っ張り力が加わった場合でも、蛇行した状態の枝線部は、2つの傾斜板部に引っ掛かって位置がずれず、枝線保護部の溝内に安定的に位置決めされる。
【0019】
また、第1発明において、2つの傾斜板部各々を含む2つの弾性板部は、枝線保護部側と枝線保護部の溝を塞ぐ蓋部側とに分かれて形成されている。そのため、電線束の枝線部が、枝線保護部の溝内に真っ直ぐな状態で挿入された後、枝線保護部の溝が、蓋部によって塞がれるだけで、枝線部は、2つの傾斜板部により押し曲げられて蛇行した状態で保持される。即ち、第1発明によれば、電線束の枝線部を曲げながら枝線保護部の溝内に配線する作業は不要であり、電線束の枝線部を電線保護具内に位置決めする作業が大幅に軽減される。
【0020】
さらに、第2発明に係るワイヤハーネスにおいては、枝線部は、2つの傾斜板部により挟まれつつ押し曲げられた部分と異なる位置において、枝線保護部に形成された第一突起部によってさらに押し曲げられる。これにより、枝線部は、枝線保護部の溝内でさらに多く曲がって蛇行した状態で保持される。このように蛇行した状態の枝線部は、2つの傾斜板部及び第一突起部の両方に引っ掛かり、引っ張り力に抗してより強固に位置が保持される。
【0021】
また、第3発明に係るワイヤハーネスにおいては、第一弾性板部と第一突起部とが一連に形成されている。そのため、第一弾性板部における、第一傾斜板部とそれよりも根元側の部分との両方が枝線部に接触する構造を実現できる。これにより、枝線部に対する第一弾性板部の接触面性が大きくなり、枝線部が第一弾性部に対して滑って位置ずれする不都合は生じにくくなる。従って、第3発明によれば、第一弾性板部及び第二弾性板部による枝線部の保持力がより高まる。
【0022】
また、第4発明に係るワイヤハーネスが採用された場合、第2発明に係るワイヤハーネスが採用される場合と同様の効果が得られる。同様に、第5発明に係るワイヤハーネスが採用された場合、第3発明に係るワイヤハーネスが採用される場合と同様の効果が得られる。
【0023】
さらに、第6発明によれば、第一弾性板部及び第二弾性板部各々の表面の凹凸が、枝線部に対する摩擦抵抗を高めるため、枝線部が第一弾性板部及び第二弾性板部に対して滑って位置ずれする不都合は生じにくくなる。従って、第6発明によれば、第一弾性板部及び第二弾性板部による枝線部の保持力がより高まる。
【0024】
さらに、第7発明によれば、2つの傾斜板部の先端部が、枝線部における保護チューブの切り目に引っ掛かることにより、枝線部が2つの傾斜板部に対して滑って位置ずれする不都合はさらに生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電線保護具1の斜視図である。
【図2】電線保護具2における枝線保護部の部分の断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス2の斜視図である。
【図4】ワイヤハーネス2における枝線部の部分の断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネス2Aにおける枝線部の部分の断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネス2Bにおける枝線部の部分の断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係るワイヤハーネス2Cにおける枝線部の部分の断面図である。
【図8】本発明の第5実施形態に係るワイヤハーネス2Dにおける枝線部の部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0027】
<第1実施形態>
まず、図1から図4を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る電線保護具1及びそれを備えたワイヤハーネス2の構成について説明する。ワイヤハーネス2は、自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスである。また、電線保護具1は、ワイヤハーネス2が備える電線束9の分岐部に取り付けられる保護具である。
【0028】
<電線保護具>
図1及び図2に示されるように、電線保護具1は、幹線部91と幹線部91から分岐した枝線部92とを有する電線束9における分岐部を覆う保護具である。電線保護具1は、幹線保護部10と、枝線保護部20と、蓋部30と、ロック機構41,42と、第一枝線支持部50と、第二枝線支持部60とを有している。なお、図1において、電線束9は仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0029】
電線保護具1は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はABS樹脂などの絶縁性の樹脂からなる部材である。
【0030】
<幹線保護部>
幹線保護部10は、電線束9における幹線部91の一部が挿入される幹線用溝13を形成する部分である。より具体的には、幹線保護部10は、樋状に形成された部分であり、幹線用溝13の底面を形成する底板部11と、幹線用溝13の両側面を形成する一対の側壁部12とにより構成されている。一対の側壁部12のうちの一方における枝線保護部20と連なる部分には、開口が形成されている。
【0031】
<枝線保護部>
枝線保護部20は、幹線保護部10と一体に形成され、電線束9における枝線部92の一部が挿入される枝線用溝23を形成する部分である。より具体的には、枝線保護部20は、樋状に形成された部分であり、枝線用溝23の底面を形成する底板部21と、枝線用溝23の両側面を形成する一対の側壁部22により構成されている。枝線用溝23の一端は、幹線保護部10の一方の側壁部12に形成された開口を通じて幹線用溝13と連通している。
【0032】
枝線保護部20における幹線保護部10に対して反対側の開放端が、枝線出口24である。以下の説明において、枝線保護部20における幹線保護部10側を根元側、枝線保護部20における枝線出口24側を先端側と称する。
【0033】
各図に示される座標軸において、X軸方向は、枝線用溝23に沿う方向を表し、Y軸方向は、枝線用溝23の幅方向、即ち、枝線用溝23に沿う方向に直交する方向を表し、Z軸方向は、枝線用溝23の深さ方向を表す。図1及び図2に示される例では、枝線保護部20は、幹線用溝13に対して直交する方向に沿う枝線用溝23を形成している。以下の説明において、枝線用溝23に沿う方向のことを枝線方向と称する。
【0034】
<蓋部>
蓋部30は、幹線保護部10及び枝線保護部20と組み合わされて幹線用溝13及び枝線用溝23を塞ぐ部分である。より具体的には、蓋部30は、板状に形成され、幹線用溝13の開口を塞ぐ幹線用蓋部31と、枝線用溝23の開口を塞ぐ枝線用蓋部32とにより構成されている。組み合わされた幹線保護部10及び枝線保護部20は、分岐した筒を形成する。
【0035】
本実施形態では、幹線保護部10と蓋部30とは、柔軟性を有する連結部40を介して繋がっている。連結部40は、幹線保護部10に対して蓋部30を回動可能に支持するヒンジである。なお、幹線保護部10及び枝線保護部20からなる本体部と蓋部30とは、それぞれ個別の部材であることも考えられる。以下の説明において、電線保護具1における幹線保護部10及び枝線保護部20の部分のことを本体部10,20と称する。
【0036】
<ロック機構>
また、本体部10,20及び蓋部30には、蓋部30が本体部10,20における幹線用溝13及び枝線用溝23を塞ぐ状態で、蓋部30を本体部10,20に固定するロック機構41,42が設けられている。
【0037】
図1及び図2に示されるロック機構41,42は、蓋部30の外縁から本体部10,20側へ突出して形成された爪部42と、本体部10,20の外縁に形成された枠部41とにより構成されている。爪部42が枠部41の中空部に挿入されることにより、爪部42の一部が枠部41に引っ掛かり、蓋部30が本体部10,20に固定される。これにより、蓋部30は、本体部10,20と組み合わされた状態、即ち、本体部10,20における幹線用溝13及び枝線用溝23を塞ぐ状態で保持される。
【0038】
<枝線支持部>
また、電線保護具1は、枝線保護部20に形成された第一枝線支持部50と、枝線用蓋部32に形成された第二枝線支持部60とを備える。第一枝線支持部50は、第一弾性板部51と第一突起部52とにより構成されている。また、第二枝線支持部60は、第一弾性板部61と第二突起部62とにより構成されている。
【0039】
図2に示されるように、第一枝線支持部50の第一弾性板部51は、第一傾斜板部511とこれに連なって形成された第一根元側板部512とにより構成されている。
【0040】
第一傾斜板部511は、枝線用溝23内でその深さ方向(Z軸方向)における枝線保護部20の底板部21側から起立するとともに枝線方向における一方の側へ傾斜する板状の部分である。本実施形態においては、第一傾斜板部511は、枝線保護部20側から起立して枝線方向の先端側(X軸の正方向側)へ傾斜している。なお、本実施形態において、枝線方向の先端側は、枝線方向の第一の側の一例である。
【0041】
第一根元側板部512は、第一弾性板部51の根元側の部分において、第一傾斜板部511と第一突起部52とに繋がった部分である。第一突起部52は、枝線保護部20の一部に形成された部分であるため、第一弾性板部51の第一根元側板部512は、第一突起部52を介して枝線保護部20により片持ち梁状に支持された構造を有している。
【0042】
また、片持ち梁状に支持された第一弾性板部51は、枝線用溝23の深さ方向(Z軸方向)の力が加わった場合、その可撓性によって弾性変形する。第一弾性板部51が弾性変形することにより、第一弾性板部51の第一傾斜板部511は、枝線用溝23の深さ方向において変位する。
【0043】
また、第一枝線支持部50の第一突起部52は、枝線保護部20における、第一弾性板部51の位置よりも枝線方向の根元側(X軸の負方向側)の位置に形成され、枝線用溝23内で蓋部30へ向かって突起する部分である。なお、本実施形態において、枝線方向の根元側は、枝線方向の第二の側の一例である。
【0044】
さらに、第一突起部52は、枝線方向に交差する方向の稜線をなす頭頂部521を有する。即ち、第一突起部52は、枝線用溝23を横断する壁状に形成されている。本実施形態では、第一突起部52は、枝線用溝23の幅方向(Y軸方向)の稜線をなす頭頂部521を有する。
【0045】
一方、第二枝線支持部60も、第一枝線支持部50と比較して、向きが異なるだけで同様の構成を有している。即ち、図2に示されるように、第二枝線支持部60の第二弾性板部61は、第二傾斜板部611とこれに連なって形成された第二根元側板部612とにより構成されている。
【0046】
第二傾斜板部611は、枝線用溝23内でその深さ方向(Z軸方向)における枝線用蓋部32側から起立するとともに枝線方向における根元側(X軸の負方向側)へ傾斜する板状の部分である。
【0047】
第二根元側板部612は、第二弾性板部61の根元側の部分において、第二傾斜板部611と第二突起部62とに繋がった部分である。第二突起部62は、枝線用蓋部32の一部に形成された部分であるため、第二弾性板部61の第二根元側板部612は、第二突起部62を介して枝線用蓋部32により片持ち梁状に支持された構造を有している。
【0048】
また、片持ち梁状に支持された第二弾性板部61は、枝線用溝23の深さ方向の力が加わった場合、その可撓性によって弾性変形する。第二弾性板部61が弾性変形することにより、第二弾性板部61の第二傾斜板部611は、枝線用溝23の深さ方向において変位する。
【0049】
また、第二枝線支持部60の第二突起部62は、枝線用蓋部32における、第二弾性板部61の位置よりも枝線方向の先端側の位置に形成され、枝線用溝23内で枝線保護部20の底板部21へ向かって突起する部分である。
【0050】
さらに、第二突起部62は、枝線方向に交差する方向の稜線をなす頭頂部621を有する。即ち、第二突起部62は、枝線用溝23を横断する壁状に形成されている。本実施形態では、第二突起部62は、枝線用溝23の幅方向(Y軸方向)の稜線をなす頭頂部621を有する。
【0051】
蓋部30が本体部10,20に組み合わされた状態において、第一枝線支持部50の第一傾斜板部511と、第二枝線支持部60の第二傾斜板部611とは、それぞれ傾斜した状態のまま相互に対向する。従って、第一傾斜板部511と第二傾斜板部611との間に形成される枝線部92の経路は、枝線用溝23の深さ方向において傾斜した経路となっている。また、第一弾性板部51及び第二弾性板部61が弾性変形することにより、第一傾斜板部511と第二傾斜板部611との間隔は変化する。
【0052】
また、電線保護具1において、第一弾性板部51における第二弾性板部61に対向する側の面、及び第二弾性板部61における第一弾性板部51に対向する側の面の各々の少なくとも一部に、滑り止め用の凹凸が形成されていることが望ましい。本実施形態においては、第一弾性板部51の第一傾斜板部511における先端部5111の上面と、第二弾性板部61の第二傾斜板部611における先端部6111の下面とに、凹凸が形成されている。
【0053】
同様に、電線保護具1において、第一突起部52の頭頂部521及び第二突起部62の頭頂部621の各々にも、滑り止め用の凹凸が形成されていることが望ましい。
【0054】
本実施形態では、第一傾斜板部511及び第二傾斜板部611は、相互に対向する面、即ち、枝線部92に対向する面が湾曲して凹んだ板状に形成されている。同様に、第一根元側板部512における枝線用蓋部32側の面及び第二根元側板部における枝線保護部20側の面も、湾曲して凹んだ形状で形成されている。さらに、第一突起部52及び第二突起部62は、湾曲して凹んだ稜線をなす頭頂部521,621を有する。これにより、第一枝線支持部50及び第二枝線支持部60は、枝線部92の湾曲した周面に対してより広い範囲で接する。
【0055】
なお、第一突起部52の頭頂部521及び第二突起部62の頭頂部621のうちの一方又は両方が、枝線方向に対して斜めに交差する稜線をなすことも一応考えられる。
【0056】
第一突起部52及び第二突起部62は、枝線用溝23の深さに満たない高さで形成されている。そのため、蓋部30が本体部10,20に組み合わされた状態において、第一突起部52と枝線用蓋部32との間、及び、第二突起部62と枝線保護部20の底板部21との間、の各々に、枝線部92を敷設可能な空間が形成されている。
【0057】
<ワイヤハーネス>
続いて、本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス2について説明する。図3は、ワイヤハーネス2の斜視図、図4はワイヤハーネス2における枝線部92の部分の断面図である。
【0058】
ワイヤハーネス2は、電線束9と、電線束9の分岐部を覆う電線保護具1とを備える。ワイヤハーネス2において、電線束9における幹線部91の一部が、電線保護具1の幹線保護部10における幹線用溝13に挿入されている。さらに、電線束9における枝線部92の一部が、電線保護具1の枝線保護部20における枝線用溝23に挿入されている。
【0059】
本実施形態では、電線束9の枝線部92は、幹線部91から分岐した電線である1本又は複数本の枝線921と、枝線921を覆う可撓性を有する筒状の部材である保護チューブ922とを有する。保護チューブ922は、例えば、ポリアミド、シリコン、ポリプロピレン又はポリエチレンなどの樹脂材料からなる。
【0060】
また、保護チューブ922は、不図示の粘着テープなどによって枝線921に固定されている。枝線部92の末端には、コネクタ93が設けられている。
【0061】
図4に示されるように、第一枝線支持部50の第一傾斜板部511及び第二枝線支持部60の第二傾斜板部611は、それぞれの先端部5111,6111において、電線束9の枝線部92における2箇所P1,P2を第一弾性板部51及び第二弾性板部61の弾性力により押し曲げつつ枝線部92における2箇所P1,P2の間の部分を挟み込んでいる。
【0062】
さらに、第一突起部52は、その頭頂部521において枝線部92における第二傾斜板部611で押し曲げられた箇所P2よりも根元側の箇所P3を押し曲げている。同様に、第二突起部62は、その頭頂部621において枝線部92における第一傾斜板部511で押し曲げられた箇所P1よりも先端側の箇所P4を押し曲げている。
【0063】
<効果>
図4に示されるように、電線束9の枝線部92は、枝線保護部20の枝線用溝23内において、2つの傾斜板部511,611によって挟み込まれつつ上下から交互に押し曲げられ、蛇行した状態で保持されている。そのため、枝線部92に引っ張り力が加わった場合でも、蛇行した状態の枝線部92は、2つの傾斜板部511,611に引っ掛かって位置がずれず、枝線保護部20の枝線用溝23内に安定的に位置決めされる。
【0064】
さらに、ワイヤハーネス2においては、枝線部92は、2つの傾斜板部511,611により挟まれつつ押し曲げられた部分と異なる箇所P3,P4において、枝線保護部20に形成された第一突起部52及び第二突起部62によってさらに押し曲げられている。これにより、枝線部92は、枝線保護部20の溝内でさらに多く曲がって蛇行した状態で保持される。このように蛇行した状態の枝線部92は、2つの傾斜板部511,611及び2つの突起部52,62のそれぞれに引っ掛かり、引っ張り力に抗してより強固に位置が保持される。
【0065】
また、電線保護具1において、2つの傾斜板部511,611各々を含む2つの弾性板部51,61は、枝線保護部20側と枝線用溝23を塞ぐ枝線用蓋部32側とに分かれて形成されている。そのため、枝線部92が、枝線保護部20の枝線用溝23内に真っ直ぐな状態で挿入された後、枝線用溝23が、蓋部30によって塞がれるだけで、枝線部92は、2つの傾斜板部511,611と2つの突起部52,62とにより押し曲げられて蛇行した状態で保持される。
【0066】
即ち、電線保護具1が採用されることにより、枝線部92を曲げながら枝線用溝23内に配線する作業は不要であり、枝線部92を電線保護具1内に位置決めする作業が大幅に軽減される。
【0067】
さらに、電線保護具1が採用されることにより、2つの傾斜板部511,611及び2つの突起部52,62の凹凸が、枝線部92とそれに接する、2つの傾斜板部511,611及び2つの突起部52,62との摩擦抵抗を高めるため、枝線部92が、2つの傾斜板部511,611及び2つの突起部52,62に対して滑って位置ずれする不都合は生じにくくなる。従って、第一枝線支持部50及び第二枝線支持部60による枝線部92の保持力がより高まる。
【0068】
<第2実施形態>
次に、図5を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係る電線保護具1A及びそれを備えるワイヤハーネス2Aについて説明する。図5は、ワイヤハーネス2Aにおける枝線部92の部分の断面図である。
【0069】
ワイヤハーネス2Aは、図1から図4に示されたワイヤハーネス2と比較して、電線保護具における2つの傾斜板部各々と2つの突起部各々とが独立して形成されている点のみが異なる。図5において、図1から図4に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電線保護具1Aにおける電線保護具1と異なる点についてのみ説明する。
【0070】
電線保護具1Aは、枝線保護部20に形成された第一弾性板部51A及び第一突起部52と、枝線用蓋部32に形成された第二弾性板部61A及び第二突起部62とを備えている。さらに、第一弾性板部51Aは、第一傾斜板部511とこれに連なって形成された第一支柱部512Aとにより構成されている。同様に、第二弾性板部61Aは、第二傾斜板部611とこれに連なって形成された第二支柱部612Aとにより構成されている。
【0071】
第一支柱部512Aは、第一弾性板部51Aの根元側の部分において、第一傾斜板部511と枝線保護部20の底板部21とに繋がった部分である。従って、第一弾性板部51Aは、枝線保護部20によって片持ち梁状に直接支持された構造を有している。
【0072】
また、片持ち梁状に支持された第一弾性板部51Aは、枝線用溝23の深さ方向(Z軸方向)の力が加わった場合、その可撓性によって弾性変形する。第一弾性板部51Aが弾性変形することにより、第一弾性板部51Aの第一傾斜板部511は、枝線用溝23の深さ方向において変位する。
【0073】
一方、第二支柱部612Aは、第二弾性板部61Aの根元側の部分において、第二傾斜板部611と枝線用蓋部32とに繋がった部分である。従って、第二弾性板部61Aは、枝線用蓋部32によって片持ち梁状に直接支持された構造を有している。
【0074】
また、片持ち梁状に支持された第二弾性板部61Aは、枝線用溝23の深さ方向(Z軸方向)の力が加わった場合、その可撓性によって弾性変形する。第二弾性板部61Aが弾性変形することにより、第二弾性板部61Aの第二傾斜板部611は、枝線用溝23の深さ方向において変位する。
【0075】
以上に示したように、電線保護具1Aにおいては、第一弾性板部51Aと第一突起部52とが、分離した状態で枝線保護部20に設けられている。さらに、第二弾性板部61Aと第二突起部62とが、分離した状態で枝線用蓋部32に設けられている。
【0076】
図5に示されるワイヤハーネス2Aが採用された場合も、ワイヤハーネス2が採用される場合と同様の作用及び効果が得られる。
【0077】
<第3実施形態>
次に、図6を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係る電線保護具1B及びそれを備えるワイヤハーネス2Bについて説明する。図6は、ワイヤハーネス2Bにおける枝線部92の部分の断面図である。
【0078】
ワイヤハーネス2Bは、図5に示されたワイヤハーネス2Aと比較して、電線保護具における第二突起部62が省略された構成を有する。図6において、図1から図5に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電線保護具1Bにおける電線保護具1Aと異なる点についてのみ説明する。
【0079】
電線保護具1Bは、枝線保護部20に形成された第一弾性板部51A及び第一突起部52と、枝線用蓋部32に形成された第二弾性板部61Aとを備えている。しかしながら、電線保護具1Bは、電線保護具1Aと異なり、第二突起部62を備えていない。
【0080】
図6に示されるように、ワイヤハーネス2Bにおいては、枝線部92が、2つの傾斜板部511,611及び1つの突起部52によって3箇所P1,P2,P3において交互に異なる方向へ押し曲げられ、蛇行した状態で保持される。
【0081】
図6に示されるワイヤハーネス2Bが採用された場合も、ワイヤハーネス2,2Aが採用される場合とほぼ同様の作用及び効果が得られる。
【0082】
<第4実施形態>
次に、図7を参照しつつ、本発明の第4実施形態に係る電線保護具1C及びそれを備えるワイヤハーネス2Cについて説明する。図7は、ワイヤハーネス2Cにおける枝線部92の部分の断面図である。
【0083】
ワイヤハーネス2Cは、図1から図4に示されたワイヤハーネス2と比較して、電線保護具における2つの枝線支持部50,60の配置の順序及び向きのみが異なる構成を有する。図7において、図1から図4に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電線保護具1Cにおける電線保護具1と異なる点についてのみ説明する。
【0084】
電線保護具1Cにおいて、第一枝線支持部50の第一傾斜板部511は、枝線用溝23内でその深さ方向(Z軸方向)における枝線保護部20の底板部21側から起立するとともに枝線方向における一方の側へ傾斜している。本実施形態においては、第一傾斜板部511は、枝線保護部20側から起立して枝線方向の根元側(X軸の負方向側)へ傾斜している。なお、本実施形態において、枝線方向の根元側は、枝線方向の第一の側の一例である。
【0085】
また、電線保護具1Cにおいて、第一枝線支持部50の第一突起部52は、枝線保護部20における、第一弾性板部51の位置よりも枝線方向の先端側(X軸の正方向側)の位置に形成され、枝線用溝23内で蓋部30へ向かって突起している。なお、本実施形態において、枝線方向の先端側は、枝線方向の第二の側の一例である。
【0086】
一方、第二枝線支持部60も、第一枝線支持部50と比較して、向きが異なるだけで同様の構成を有している。
【0087】
電線保護具1Cにおいて、第二枝線支持部60の第二傾斜板部611は、枝線用溝23内でその深さ方向(Z軸方向)における枝線用蓋部32側から起立するとともに枝線方向における先端側(X軸の正方向側)へ傾斜している。
【0088】
また、電線保護具1Cにおいて、第二枝線支持部60の第二突起部62は、枝線用蓋部32における、第二弾性板部61の位置よりも枝線方向の根元側の位置に形成され、枝線用溝23内で枝線保護部20の底板部21へ向かって突起している。
【0089】
図7に示されるワイヤハーネス2Cが採用された場合も、ワイヤハーネス2が採用される場合と同様の作用及び効果が得られる。
【0090】
<第5実施形態>
次に、図8を参照しつつ、本発明の第5実施形態に係るワイヤハーネス2Dについて説明する。ワイヤハーネス2Dは、図1から図3に示されたワイヤハーネス2と比較して、枝線部92における保護チューブの構造のみが若干異なる構成を有している。図8において、図1から図3に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ワイヤハーネス2Dにおけるワイヤハーネス2と異なる点についてのみ説明する。
【0091】
ワイヤハーネス2Dは、ワイヤハーネス2と同様に、枝線921を覆う可撓性を有する筒状の部材である保護チューブ922Aを有する。但し、ワイヤハーネス2Dの保護チューブ922Aにおける、第一傾斜板部511及び第二傾斜板部611の各々の先端部5111,6111により押し曲げられた部分の第一傾斜板部511及び第二傾斜板部611の各々の先端部5111,6111に対向する外側面には、周方向に沿う複数の切り目9221が形成されている。
【0092】
さらに、本実施形態においては、ワイヤハーネス2Dの保護チューブ922Aにおける、第一突起部52及び第二突起部62により押し曲げられた部分の第一突起部52及び第二突起部62に対向する外側面にも、周方向に沿う複数の切り目9221が形成されている。
【0093】
ワイヤハーネス2Dが採用されることにより、ワイヤハーネス2が採用された場合と同様の作用及び効果が得られる。さらに、ワイヤハーネス2Dが採用されることにより、2つの傾斜板部511,611各々の先端部5111,6111及び2つの突起部52,62各々の頭頂部521,621が、枝線部92における保護チューブ922Aの切り目9221に引っ掛かることにより、枝線部92が傾斜板部511,611及び突起部52,62に対して滑って位置ずれする不都合はさらに生じにくくなる。
【0094】
<その他>
電線保護具1,1A,1B,1Cにおいて、枝線保護部20は、幹線用溝13に対して直交する方向に沿う枝線用溝23を形成している。しかしながら、枝線保護部20が、幹線用溝13に対して90°以外の角度をなす方向に沿う枝線用溝23を形成することも考えられる。
【0095】
また、電線保護具1,1A,1B,1Cは、1つの枝線保護部20のみ備えている。しかしながら、電線保護具1,1A,1B,1Cが、1つの幹線保護部10と複数の枝線保護部20とを備えることも考えられる。
【0096】
また、電線保護具1,1A,1B,1Cにおいて、枝線保護部20は、幹線用溝13の中間部分から枝分かれした枝線用溝23を形成している。しかしながら、電線保護具1,1A,1B,1Cが、複数の枝線保護部20を備え、それら複数の枝線保護部20が、幹線用溝13の一方の端から複数の方向へ分岐した複数の枝線用溝23を形成することも考えられる。
【符号の説明】
【0097】
1,1A,1B,1C 電線保護具
2,2A,2B,2C,2D ワイヤハーネス
9 電線束
10 幹線保護部(本体部)
11 幹線保護部の底板部
12 幹線保護部の側壁部
13 幹線用溝
20 枝線保護部(本体部)
21 枝線保護部の底板部
22 枝線保護部の側壁部
23 枝線用溝
24 枝線出口
30 蓋部
31 幹線用蓋部
32 枝線用蓋部
40 連結部
41 枠部(ロック機構)
42 爪部(ロック機構)
50 第一枝線支持部
51,51A 第一弾性板部
52 第一突起部
60 第二枝線支持部
61,61A 第二弾性板部
62 第二突起部
91 幹線部
92 枝線部
93 コネクタ
511 第一傾斜板部
512 第一根元側板部
512A 第一支柱部
521 第一突起部の頭頂部
611 第二傾斜板部
612 第二根元側板部
612A 第二支柱部
621 第二突起部の頭頂部
921 枝線
922,922A 保護チューブ
5111 第一傾斜板部の先端部
6111 第二傾斜板部の先端部
9221 切り目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹線部と該幹線部から分岐した枝線部とを有する電線束と、
前記電線束の分岐部を覆う電線保護具と、を備えたワイヤハーネスであって、
前記電線保護具は、
前記電線束における前記幹線部の一部が挿入された第一の溝を形成する幹線保護部と、
前記幹線保護部と一体に形成され、前記電線束における前記枝線部の一部が挿入された第二の溝を形成する枝線保護部と、
前記幹線保護部及び前記枝線保護部と組み合わされて前記第一の溝及び前記第二の溝を塞ぐ蓋部と、
前記第二の溝内で前記第二の溝の深さ方向における前記枝線保護部側から起立するとともに前記第二の溝に沿う枝線方向における第一の側へ傾斜する板状の第一傾斜板部を有し、根元部が前記枝線保護部によって支持され、弾性変形することにより前記第一傾斜板部が前記第二の溝の深さ方向において変位可能に構成された第一弾性板部と、
前記第二の溝内で前記第二の溝の深さ方向における前記蓋部側から起立するとともに前記枝線方向における前記第一の側に対し反対の第二の側へ傾斜する板状に形成され、かつ、前記第一傾斜板部に対向する第二傾斜板部を有し、根元部が前記蓋部によって支持され、弾性変形することにより前記第二傾斜板部が前記第二の溝の深さ方向において変位可能に構成された第二弾性板部と、を有し、
前記第一傾斜板部及び前記第二傾斜板部が、それぞれの先端部において前記電線束の前記枝線部における2箇所を前記第一弾性板部及び前記第二弾性板部の弾性力により押し曲げつつ前記枝線部における前記2箇所の間の部分を挟み込んでいることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記電線保護具は、
前記枝線保護部における、前記第一弾性板部の位置よりも前記枝線方向の前記第二の側の位置に形成され、前記第二の溝内で前記蓋部へ向かって突起するとともに前記第二の溝に沿う方向に交差する方向の稜線をなす頭頂部を有する第一突起部をさらに有し、
前記第一突起部は、その頭頂部において前記枝線部を押し曲げている、請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記第一弾性板部は、根元部において前記第一突起部と繋がり、前記第一突起部を介して前記枝線保護部により支持されている、請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記電線保護具は、
前記蓋部における、前記第二弾性板部の位置よりも前記枝線方向の前記第一の側の位置に形成され、前記第二の溝内で前記枝線保護部へ向かって突起するとともに前記第二の溝に沿う方向に交差する方向の稜線をなす頭頂部を有する第二突起部をさらに有し、
前記第二突起部は、その頭頂部において前記枝線部を押し曲げている、請求項1から請求項3のいずれかに記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記第二弾性板部は、根元部において前記第二突起部と繋がり、前記第二突起部を介して前記蓋部により支持されている、請求項4に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記第一弾性板部における前記第二弾性板部に対向する側の面、及び前記第二弾性板部における前記第一弾性板部に対向する側の面に、凹凸が形成されている、請求項1から請求項5のいずれかに記載のワイヤハーネス。
【請求項7】
前記電線束の前記枝線部は、前記幹線部から分岐した電線を覆う可撓性を有する筒状の部材である保護チューブを備え、
前記保護チューブにおける、前記第一傾斜板部及び前記第二傾斜板部の各々の先端部により押し曲げられた部分の前記第一傾斜板部及び前記第二傾斜板部の各々の先端部に対向する外側面には、周方向に沿う複数の切り目が形成されている、請求項1から請求項6のいずれかに記載のワイヤハーネス。
【請求項8】
幹線部と該幹線部から分岐した枝線部とを有する電線束における分岐部を覆う電線保護具であって、
前記電線束における前記幹線部の一部が挿入される第一の溝を形成する幹線保護部と、
前記幹線保護部と一体に形成され、前記電線束における前記枝線部の一部が挿入される第二の溝を形成する枝線保護部と、
前記幹線保護部及び前記枝線保護部と組み合わされて前記第一の溝及び前記第二の溝を塞ぐ蓋部と、
前記第二の溝内で前記第二の溝の深さ方向における前記枝線保護部側から起立するとともに前記第二の溝に沿う枝線方向における第一の側へ傾斜する板状の第一傾斜板部を有し、根元部が前記枝線保護部によって支持され、弾性変形することにより前記第一傾斜板部が前記第二の溝の深さ方向において変位可能に構成された第一弾性板部と、
前記第二の溝内で前記第二の溝の深さ方向における前記蓋部側から起立するとともに前記枝線方向における前記第一の側に対し反対の第二の側へ傾斜する板状に形成され、かつ、前記第一傾斜板部に対向する第二傾斜板部を有し、根元部が前記蓋部によって支持され、弾性変形することにより前記第二傾斜板部が前記第二の溝の深さ方向において変位可能に構成された第二弾性板部と、を備えることを特徴とする電線保護具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−90528(P2013−90528A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231574(P2011−231574)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】