説明

ワイヤハーネス及び電線固定具

【課題】電線固定具の基部と電線を含む線状体とを安定した状態で結束することができ、振動などによって線状体に曲げ方向の力が加わった場合でも、電線固定具と線状体との位置ずれ及び結束材による結束の緩みが生じにくい電線固定具及びワイヤハーネスを提供すること。
【解決手段】電線固定具1は、電線を含む線状体と結束される基部10と、基部10から起立したクランプ部20とを有する。基部10の中間板部11は、第1の面において第1の方向(X軸方向)に沿う谷状の凹み111を形成する曲がった板状の部分である。基部10における4つの張出部12は、中間板部11における、第1の方向の両側各々の縁における第2の方向(Y軸方向)の両側各々に偏った4箇所P1〜P4各々から第1の方向に沿ってそれぞれ独立して張り出して形成され、線状体と結束される板状の部分である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線を含む線状体と結束される基部とその基部から起立して形成されたクランプ部とを有する電線固定具、及びそれを備えたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に代表される車両に搭載されるワイヤハーネスは、電線又は保護チューブで覆われた電線などの線状体の一部に取り付けられた電線固定具を備えることが多い。ワイヤハーネスが電線固定具を備える場合、自動車のボディなどの板状の支持体にワイヤハーネスを固定する作業が容易となる。
【0003】
特許文献1に示されるように、電線固定具は、線状体と結束される基部と、基部から起立して形成されたクランプ部とを有する。クランプ部は、その一部が板状の支持体に形成された貫通穴に挿入されることにより、支持体における貫通孔の縁部に固定さる。また、基部は、例えば、粘着テープなどの結束材により電線が固定される棒状又は平板状の部分である。
【0004】
また、特許文献1に示される電線固定具において、基部は、クランプ部が形成された中央部の両側の部分において、孔を取り囲む枠状に形成されている。なお、特許文献1において、基部は、取付部本体と称されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−45171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電線固定具の基部が平板状である場合、概ね円柱状とみなされる線状体は、外周における1箇所でしか基部の表面と接しない。そのため、基部に対する線状体の位置が不安定となり、基部に対する線状体の位置ずれが生じやすく、基部と線状体とを安定した状態で結束することが難しい。
【0007】
さらに、電線固定具の基部は、平板状である場合、表裏の面各々の側へ撓みやすい。そのため、電線固定具のクランプ部が支持体に対して吊り下がる状態で固定された場合、基部におけるクランプ部が形成された部分が大きく撓むことによって基部に対する線状体の位置ずれが生じやすい。特許文献1に示される電線固定具においても、基部におけるクランプ部が形成された中央の部分は平板状であるため、同様のことが言える。
【0008】
基部に対する線状体の位置ずれは、結束材による電線固定具と線状体との結束の緩み、及び線状体の端部に設けられた端子に対する過剰な引っ張り力の作用の原因となるため好ましくない。
【0009】
また、電線固定具の基部が、十分な強度の確保のために大きな厚みで形成されると、ワイヤハーネスの重量の増大、及びワイヤハーネスの敷設に要するスペースの増大を招くため好ましくない。さらに、電線固定具における基部の剛性が高過ぎると、振動などによって線状体に曲げ方向の力が加わった場合に、ほとんど撓まない基部と曲がりやすい線状体とを結束する結束材に一時的に過大な力が加わる状況が頻発し、結束材による電線固定具と線状体との結束の緩みが生じやすい。
【0010】
本発明は、電線固定具の基部と電線を含む線状体とを安定した状態で結束することができ、振動などによって線状体に曲げ方向の力が加わった場合でも、電線固定具と線状体との位置ずれ及び結束材による結束の緩みが生じにくい電線固定具及びワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係るワイヤハーネスは、電線を含む線状体と電線固定具と結束材とを備える。電線固定具は、前記線状体と結束される基部、及び前記基部から起立して形成され板状の支持体における貫通穴の縁部に固定さるクランプ部を有する。また、前記結束材は、前記電線固定具の前記基部と前記線状体とを結束する。さらに、第1発明に係るワイヤハーネスにおいて、前記電線固定具の前記基部は、以下に示す各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、第1の面において第1の方向に沿う谷状の凹みを形成する曲がった板状の部分であり、前記第2の面に前記クランプ部が起立して形成された中間板部である。
(2)第2の構成要素は、前記中間板部における、前記第1の方向の両側各々の縁における前記第1の方向に直交する第2の方向の両側各々に偏った4箇所各々から前記第1の方向に沿ってそれぞれ独立して張り出して形成され、前記線状体と結束された板状の部分である4つの張出部である。
【0012】
第2発明に係るワイヤハーネスは、第1発明に係るワイヤハーネスの一例である。第2発明に係るワイヤハーネスにおいて、前記電線固定具の前記基部は、前記4つの張出部各々における、前記中間板部の前記第1の面と同じ側の面に突起して形成された突起部をさらに備える。
【0013】
第3発明に係るワイヤハーネスは、第2発明に係るワイヤハーネスの一例である。第3発明に係るワイヤハーネスにおいて、前記電線固定具の前記突起部は、根元側から先端側へ徐々に細く形成されている。
【0014】
第4発明に係るワイヤハーネスは、第2発明又は第3発明に係るワイヤハーネスの一例である。第4発明に係るワイヤハーネスにおいて、前記線状体は、前記電線と該電線の周囲を覆うコルゲートチューブとを含む。さらに、前記電線固定具の前記突起部は、前記コルゲートチューブの外側表面の凹みに嵌り込んでいる。
【0015】
また、本発明は、第1発明から第4発明に係るワイヤハーネスが備える電線固定具の発明として捉えられてもよい。
【発明の効果】
【0016】
第1発明に係るワイヤハーネスにおいて、概ね円柱状とみなされる線状体は、その一部が電線固定具の基部における中間板部が形成する谷状の凹みに嵌り、外周における少なくとも2箇所で中間板部の第1の面と接する。そのため、基部に対する線状体の第2の方向における位置ずれが防止され、基部と線状体とを安定した状態で結束することが容易となる。なお、第2の方向は、基部が形成する谷状の凹みが沿う方向に直交する方向、即ち、線状体の幅方向である。
【0017】
また、第1発明に係るワイヤハーネスにおいて、電線固定具の基部における中間板部は、第1の方向に沿う谷状の凹みを形成する曲がった板状である。そのため、中間板部は、特に大きな厚みで形成されていなくても、第1の方向に交差する方向(曲げ方向)に加わる力に対する強度が高い。その結果、電線固定具のクランプ部が支持体に対して吊り下がる状態で固定された場合でも、クランプ部と繋がる中間板部が大きく撓むことが防止され、中間板部に対する線状体の位置ずれが生じにくい。
【0018】
また、線状体から電線固定具に加わる曲げ方向の力は、4つの張出部に分散される。そのため、電線固定具が線状体から加わる曲げ方向の力によって折れて破損する事態も生じにくい。
【0019】
一方、第1発明に係るワイヤハーネスにおいて、粘着テープなどの結束材によって線状体と直接結束される板状の部分である4つの張出部は、中間板部よりも幅が狭く、中間板部よりも撓みやすい。そのため、振動などによって線状体に曲げ方向の力が加わった場合に、4つの張出部が、一緒に結束された線状体の変形に追従してわずかに撓み、結束材に一時的に加わる力が緩和される。その結果、結束材に一時的に過大な力が加わる事態が回避され、結束材による電線固定具と線状体との結束の緩みが生じにくい。
【0020】
以上に示したことから、第1発明によれば、電線固定具の基部と電線を含む線状体とを安定した状態で結束することができ、振動などによって線状体に曲げ方向の力が加わった場合でも、電線固定具と線状体との位置ずれ及び結束材による結束の緩みが生じにくい。また、第1発明によれば、電線固定具が特に大きな厚みで形成される必要もない。
【0021】
また、第2発明に係るワイヤハーネスにおいては、線状体と直接結束される4つの張出部に形成された突起部が、線状体の表面に食い込む、又は線状体における表面の凹みもしくは電線間の隙間に入り込む。その結果、電線固定具と線状体との位置ずれ及びその位置ずれに起因する結束の緩みが、より確実に防止される。
【0022】
また、第3発明に係るワイヤハーネスにおいては、4つの張出部に形成された突起部が、先細りに形成されている。そのため、突起部は、線状体における表面の凹みもしくは電線間の隙間にその幅に応じた深さで入り込むことにより、様々な幅の凹みもしくは隙間にガタなく嵌り込む。その結果、電線固定具と線状体との位置ずれ及びその位置ずれに起因する結束の緩みが、より確実に防止される。
【0023】
また、第4発明に係るワイヤハーネスにおいては、4つの張出部に形成された突起部が、線状体の外装を形成するコルゲートチューブの凹みに嵌り込んでいる。そのため、電線固定具は、比較的滑りやすいコルゲートチューブに対しても位置がずれにくい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電線固定具1の第1の斜視図である。
【図2】電線固定具1の第2の斜視図である。
【図3】支持体に固定されたクランプ部の側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス2の斜視図である。
【図5】ワイヤハーネス2の断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネス2Aの側面図である。
【図7】ワイヤハーネス2Aにおける突起部の部分の側面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネス2Bの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0026】
<第1実施形態>
まず、図1から図3を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る電線固定具1の構成について説明する。図1に示されるように、電線固定具1は、基部10及びクランプ部20を有する。基部10は、電線91を含む線状体9と結束される部分である。また、クランプ部20は、基部10から起立して形成され、板状の支持体における貫通穴の縁部に固定さる部分である。
【0027】
なお、図1は、基部10側から見た電線固定具1の斜視図、図2は、クランプ20側から見た電線固定具1の斜視図である。また、図1において、線状体9が仮想線(二点鎖線)により描かれている。線状体9は、例えば、電線91の束又は保護チューブで覆われた電線91などである。
【0028】
電線固定具1は、例えば、ポリプロピレン(PP)又はポリアミド(PA)などの熱可塑性樹脂からなる部材である。本実施形態において、電線固定具1は、それ全体が一体に成形された部材である。
【0029】
<クランプ部>
図2及び図3に示されるように、クランプ部20は、その一部が板状の支持体7に形成された貫通穴である取付孔7Aに挿入されることにより、支持体7における取付孔7Aの縁部に固定さる部分である。
【0030】
クランプ部20は、支持体7に形成された取付孔7Aに挿入される挿入部21と、基部10と繋がったフランジ部22とを有している。クランプ部20は、挿入部21とフランジ部22とにより、支持体7における取付孔7Aの縁部を把持する。
【0031】
フランジ部22における一方の面に基部10の中間板部11が固定され、他方の面に挿入部21が立設されている。フランジ部22は、取付孔7Aを塞ぐように、取付孔7Aの面積よりも大きな面積で形成されている。例えば、フランジ部22は、長孔であるの取付孔7Aとほぼ相似な形状で取付孔7Aよりも一回り大きな面を有する皿状に形成されている。
【0032】
挿入部21は、フランジ部22の一方の面に立設された柱部211と、その柱部211の両側に張り出して設けられた2つの張出部212とを備える。2つの張出部212は、可撓性を有し、柱部211の両側に張り出した幅が、取付孔7Aの幅よりも大きな幅で形成されている。
【0033】
挿入部21が取付孔7Aに挿入される際に、2つの張出部212は、取付孔7Aの縁部(支持体7)に接して押圧され、柱部211の両側に張り出す幅が、取付孔7Aの幅まで収縮する。挿入部21が取付孔7Aの内側へさらに押し込められると、2つの張出部212の形状は、取付孔7Aの縁部の裏側において、取付孔7Aの幅よりも大きな幅になるまで復帰する。その結果、2つの張出部212各々の外側に形成された爪部212aが、取付孔7Aの縁部の裏側に引っ掛かり、爪部212aとフランジ部22とが、取付孔7Aの縁部を表裏両側から挟み込む。その結果、クランプ部20が支持体7に固定される。
【0034】
<基部>
電線固定具1の基部10は、1つの中間板部11と4つの張出部12と4つの突起部13とを有する。
【0035】
中間板部11は、一方の面において第1の方向に沿う谷状の凹み111を形成する曲がった板状の部分である。中間板部11の他方の面における中央部には、クランプ部20が起立して形成されている。
【0036】
なお、第1の方向は、基部10と結束される線状体9の長手方向である。各図に示される座標軸において、X軸方向は、中間板部11が形成する谷状の凹み111が沿う方向、即ち、基部10と結束される線状体9の長手方向である。また、Y軸方向は、第1の方向に直交する幅方向(第2の方向)であり、Z軸方向は、第1の方向及び幅方向に直交する高さ方向である。
【0037】
本実施形態において、基部10は、谷状の凹み111を形成する側の面において、第1の方向に沿う中央線の両側で傾斜する2つの矩形状の平面を形成している。即ち、基部10は、一方の面の側へ中央線の部分で屈曲した板状である。
【0038】
電線固定具1の基部10において、4つの張出部12は、中間板部11の縁の4箇所P1,P2,P3,P4各々から第1の方向(X軸方向)に沿ってそれぞれ独立して張り出して形成された板状の部分である。中間板部11の縁の4箇所P1,P2,P3,P4は、中間板部11における、第1の方向(X軸方向)の両側各々の縁における幅方向(第2の方向)の両側各々に偏った4つの箇所である。
【0039】
図1に示される例では、中間板部11の4箇所P1,P2,P3,P4は、中間板部11の四隅である。より具体的には、箇所P1は、中間板部11における、第1の方向の一方の側(X軸の正方向側)の縁における幅方向の一方の側(Y軸の負方向側)に偏った箇所である。また、箇所P2は、中間板部11における、第1の方向の一方の側(X軸の正方向側)の縁における幅方向の他方の側(Y軸の正方向側)に偏った箇所である。また、箇所P3は、中間板部11における、第1の方向の他方の側(X軸の負方向側)の縁における幅方向の一方の側(Y軸の負方向側)に偏った箇所である。また、箇所P4は、中間板部11における、第1の方向の他方の側(X軸の負方向側)の縁における幅方向の他方の側(Y軸の正方向側)に偏った箇所である。
【0040】
4つの突起部13各々は、4つの張出部12各々における、中間板部11の第1の面、即ち、凹み111を形成する側の面と同じ側の面に突起して形成されている。なお、4つの張出部12各々ごとに複数の突起部13が形成されていてもよい。
【0041】
また、4つの突起部13各々は、根元側から先端側へ徐々に細く形成されている。図1に示される例では、突起部13の輪郭形状は、円錐がその頭頂部と底面との間の位置において底面に平行な平面で2分割された場合における底面側の部分の輪郭形状と同じ形状である。
【0042】
<ワイヤハーネス>
続いて、図4及び図5を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス2の構成について説明する。ワイヤハーネス2は、線状体9と電線固定具1と結束材8とを備える。なお、図4はワイヤハーネス2の斜視図であり、図5はワイヤハーネス2の断面図である。但し、図5において、結束材8は仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0043】
ワイヤハーネス2において、線状体9は、複数の電線91が束ねられた電線束であり、結束材8は粘着テープである。また、ワイヤハーネス2において、結束材8は、電線固定具1におけるクランプ部20の両側の2箇所において、基部10における4つの張出部12と線状体9とを結束している。
【0044】
より具体的には、一方の結束材8は、電線固定具1におけるクランプ部20の一方の側(X軸の正方向側)において、基部10における4つの張出部12のうちの2つの張出部12と線状体9とを結束している。また、他方の結束材8は、電線固定具1におけるクランプ部20の他方の側(X軸の負方向側)において、基部10における4つの張出部12の内の残りの2つの張出部12と線状体9とを結束している。なお、結束材8が、結束用のベルト部材などの他の部材であることも考えられる。
【0045】
図4及び図5に示されるように、基部10における4つの張出部12と線状体9とが結束されることにより、概ね円柱状とみなされる線状体9は、その一部が電線固定具1の基部10における中間板部11が形成する谷状の凹み111に嵌り、外周における少なくとも2箇所P5,P6で中間板部11の第1の面と接する。
【0046】
また、図5に示されるように、ワイヤハーネス2において、4つの張出部12各々に形成された4つの突起部13各々は、線状体9における電線91の表面に食い込む。なお、4つの突起部13各々が、線状体9における電線91間の隙間に入り込む場合もある。
【0047】
<効果>
ワイヤハーネス2において、概ね円柱状とみなされる線状体9は、その一部が電線固定具1の基部10における中間板部11が形成する谷状の凹111みに嵌り、外周における少なくとも2箇所P5,P6で中間板部11の第1の面と接する。そのため、基部10に対する線状体9の幅方向(Y軸方向)における位置ずれが防止され、基部10と線状体9とを安定した状態で結束することが容易となる。
【0048】
また、ワイヤハーネス2において、電線固定具1の基部10における中間板部11は、第1の方向(X軸方向)に沿う谷状の凹み111を形成する曲がった板状である。そのため、中間板部11は、特に大きな厚みで形成されていなくても、幅方向及び高さ方向(曲げ方向)に加わる力に対する強度が高い。
【0049】
従って、電線固定具1のクランプ部20が支持体7に対して吊り下がる状態で固定された場合でも、クランプ部20と繋がる中間板部11が大きく撓むことが防止され、中間板部11に対する線状体9の位置ずれが生じにくい。
【0050】
また、線状体9から電線固定具1に加わる曲げ方向の力は、4つの張出部12に分散される。そのため、電線固定具1が線状体9から加わる曲げ方向の力によって折れて破損する事態も生じにくい。
【0051】
一方、ワイヤハーネス2において、粘着テープなどの結束材8によって線状体9と直接結束される板状の部分である4つの張出部12は、中間板部11よりも幅が狭く、中間板部11よりも撓みやすい。そのため、振動などによって線状体9に曲げ方向の力が加わった場合に、4つの張出部12が、一緒に結束された線状体9の変形に追従してわずかに撓み、結束材8に一時的に加わる力が緩和される。その結果、結束材8に一時的に過大な力が加わる事態が回避され、結束材8による電線固定具1の張出部12と線状体9との結束の緩みが生じにくい。
【0052】
また、張出部12と線状体9との結束の緩みが生じにくいため、緩んだ結束材8が基部10から外れることを防止するための突起が、基部10における第1の方向の両端に設けられることは、必ずしも必要でない。
【0053】
また、ワイヤハーネス2において、線状体9と直接結束される4つの張出部12に形成された突起部13が、線状体9の表面に食い込む、又は線状体9における電線91間の隙間に入り込む。その結果、電線固定具1と線状体9との位置ずれ及びその位置ずれに起因する結束の緩みが、より確実に防止される。
【0054】
また、電線固定具1において、4つの張出部12に形成された突起部13が、先細りに形成されている。そのため、突起部13が電線91間の隙間に入り込む場合、突起部13は、電線91間の隙間にその幅に応じた深さで入り込むことにより、様々な幅の隙間にガタなく嵌り込む。その結果、電線固定具1と線状体9との位置ずれ及びその位置ずれに起因する結束の緩みが、より確実に防止される。
【0055】
以上に示したことから、ワイヤハーネス2が採用されることにより、電線固定具1の基部10と線状体9とを安定した状態で結束することができ、振動などによって線状体9に曲げ方向の力が加わった場合でも、電線固定具1と線状体9との位置ずれ及び結束材8による結束の緩みが生じにくい。また、電線固定具1が特に大きな厚みで形成される必要もない。
【0056】
<第2実施形態>
次に、図6及び図7を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネス2Aについて説明する。このワイヤハーネス2Aは、図4及び図5に示されたワイヤハーネス2と比較して、線状体9の構成のみが異なる。
【0057】
図6はワイヤハーネス2Aの側面図であり、図7はワイヤハーネス2Aにおける電線固定具1の突起部13の部分の側面図である。図6及び図7において、図1から図5に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。また、図7において、結束材8は仮想線(二点鎖線)により描かれている。以下、ワイヤハーネス2Aにおけるワイヤハーネス2と異なる点についてのみ説明する。
【0058】
ワイヤハーネス2Aの線状体9は、1本又は複数本の電線91とその電線91の周囲を覆うコルゲートチューブ92とを含む。
【0059】
コルゲートチューブ92は、いわゆる蛇腹構造を有することによって長手方向における柔軟性を有する筒状の部材である。より具体的には、コルゲートチューブ92は、外周面に周方向に沿う複数の凹部921と凸部922とが長手方向において交互に並んで形成された構造を有する。コルゲートチューブ92は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はABS樹脂などの熱可塑性樹脂からなる一体成形部材である。
【0060】
また、コルゲートチューブ92には、その長手方向全体に亘る一連の切れ目が形成されている。なお、切れ目の図示は省略されている。コルゲートチューブ92は、所定の治具を用いて切れ目の両側へ拡げられることによって長手方向全体に渡る隙間が形成され、電線91は、その隙間からコルゲートチューブ92内へ挿入される。これにより、コルゲートチューブ92は、電線91の周囲を覆う。また、コルゲートチューブ92は、両端部において粘着テープ81によって内側の電線91に対して固定されている。
【0061】
図6に示されるように、ワイヤハーネス2Aにおいて、電線固定具1の4つの張出部に形成された突起部13は、線状体9の外装を形成するコルゲートチューブ92の凹部921に嵌り込んでいる。そのため、電線固定具1は、比較的滑りやすいコルゲートチューブ92に対し位置がずれにくい。
【0062】
また、突起部13が先細りに形成されているため、突起部13は、コルゲートチューブ92表面の凹部921の幅に応じた深さで入り込むことにより、様々な幅の凹部921にガタなく嵌り込む。その結果、電線固定具1とコルゲートチューブ92との位置ずれ及びその位置ずれに起因する結束の緩みが、より確実に防止される。
【0063】
<第3実施形態>
次に、図8を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネス2Bについて説明する。図8は、ワイヤハーネス2Bの断面図である。なお、図8において、結束材8は仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0064】
ワイヤハーネス2Bは、図4及び図5に示されたワイヤハーネス2と比較して、電線固定具1が電線固定具1Aに置き換えられた構成を備えている。また、電線固定具1Aは、電線固定具1の基部10と同様の構造を有する基部10Aを備えるが、電線固定具1Aの基部10Aの形状は、電線固定具1の基部10の形状と若干異なる。図8において、図1から図5に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ワイヤハーネス2Bにおけるワイヤハーネス2と異なる点についてのみ説明する。
【0065】
ワイヤハーネス2Bが備える電線固定具1Aは、基部10A及びクランプ部20を有する。電線固定具1Aのクランプ部20は、電線固定具1のクランプ部20と同じである。
【0066】
また、電線固定具1Aも、電線固定具1と同様に、谷状の凹み111を形成する曲がった板状の中間板部11Aと、4つの張出部12Aとを有する。4つの張出部12Aは、中間板部11Aにおける第1の方向(X軸方向)の両側の縁における幅方向の両側各々に偏った4箇所から第1の方向に沿って中間板部11Aから張り出している。
【0067】
但し、電線固定具1の中間板部11が屈曲した板状であるのに対し、電線固定具1Aの中間板部11Aは湾曲した板状である。
【0068】
ワイヤハーネス2Bにおいても、基部10Aにおける4つの張出部12Aと線状体9とが結束されることにより、概ね円柱状とみなされる線状体9は、その一部が電線固定具1Aの基部10Aにおける中間板部11Aが形成する谷状の凹み111に嵌り、外周における少なくとも2箇所P7,P8で中間板部11Aの第1の面と接する。
【0069】
図8に示されるようなワイヤハーネス2Bが採用された場合も、ワイヤハーネス2が採用された場合と同様の作用及び効果が得られる。
【0070】
<その他>
ワイヤハーネス2Aにおいて、線状体9が、コルゲートチューブ92の代わりに、電線91の周囲を覆う他の保護チューブを含むことも考えられる。
【0071】
また、電線固定具1,1Aにおいて、基部10,10Aとクランプ部20とが着脱可能に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1,1A 電線固定具
2,2A,2B ワイヤハーネス
7 支持体
7A 取付孔
8 結束材
9 線状体
10,10A 基部
11,11A 中間板部
12,12A 張出部
13 突起部
20 クランプ部
21 挿入部
22 フランジ部
81 粘着テープ
91 電線
92 コルゲートチューブ
111 基部が形成する凹み
211 クランプ部の柱部
212 クランプ部の張出部
212a クランプ部の爪部
921 コルゲートチューブの凹部
922 コルゲートチューブの凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を含む線状体と、
前記線状体と結束される基部、及び前記基部から起立して形成され板状の支持体における貫通穴の縁部に固定さるクランプ部を有する電線固定具と、
前記電線固定具の前記基部と前記線状体とを結束する結束材と、を備えたワイヤハーネスであって、
前記電線固定具の前記基部は、
第1の面において第1の方向に沿う谷状の凹みを形成する曲がった板状の部分であり、前記第2の面に前記クランプ部が起立して形成された中間板部と、
前記中間板部における、前記第1の方向の両側各々の縁における前記第1の方向に直交する第2の方向の両側各々に偏った4箇所各々から前記第1の方向に沿ってそれぞれ独立して張り出して形成され、前記基部における前記第1の面に接しつつ前記第1の方向に沿って配置された前記線状体と結束された板状の部分である4つの張出部と、を有することを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記電線固定具の前記基部は、
前記4つの張出部各々における、前記中間板部の前記第1の面と同じ側の面に突起して形成された突起部をさらに備える、請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記電線固定具の前記突起部は、根元側から先端側へ徐々に細く形成されている、請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記線状体は、前記電線と該電線の周囲を覆うコルゲートチューブとを含み、
前記電線固定具の前記突起部は、前記コルゲートチューブの外側表面の凹みに嵌り込んでいる、請求項2又は請求項3に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
電線を含む線状体と結束される基部と、
前記基部から起立して形成され、板状の支持体における貫通穴の縁部に固定さるクランプ部と、を有する電線固定具であって、
前記基部は、
第1の面において第1の方向に沿う谷状の凹みを形成する曲がった板状の部分であり、前記第2の面に前記クランプ部が起立して形成された中間板部と、
前記中間板部における、前記第1の方向の両側各々の縁における前記第1の方向に直交する第2の方向の両側各々に偏った4箇所各々から前記第1の方向に沿ってそれぞれ独立して張り出して形成された板状の部分である4つの張出部と、を有することを特徴とする電線固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−74747(P2013−74747A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212925(P2011−212925)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】