説明

ワイヤハーネス形状保持構造及びワイヤハーネス形状保持部形成装置並びにワイヤハーネス形状保持部形成方法

【課題】ワイヤハーネスに対して形状保持部を形成するワイヤハーネス形状保持部形成装置を提供する。
【解決手段】電線2と管体3の内壁3a との間に硬化性の充填材5を充填する一対の充填補助部品11,12が形状保持部4の両側に配置される。一対の充填補助部品11,12のそれぞれは硬化性の充填材5が流通する充填材流通口11c、12cと、電線2と管体3の内壁3aとの間に充填された充填材5の流れを規制する流路規制壁11b、12bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネス形状保持構造及びワイヤハーネス形状保持部形成装置並びにワイヤハーネス形状保持部形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に配索されるワイヤハーネスは、電線と、この電線が挿通した外装材としてのコルゲートチューブ等からなる可撓性の管体とによって形成されている。特許文献1には、電線を管体の内部で保持する構造を有した従来のワイヤハーネスが記載されている。
【0003】
従来のワイヤハーネスは可撓性の管体としてピラーガーニッシュを用い、この管体の両端の開口部から必要な長さだけ引き出すように電線を管体の内部に挿通させ、この電線挿通状態で管体の孔部から流動状の塑性物質を注入して塑性物質を冷却固化させる構造となっている。塑性物質が固化することにより、塑性物質が管体の内部で電線を固定するため、ガタ等の異音の発生を防止することが可能となるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−76121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に自動車等においては、ワイヤハーネスは配索経路に沿って折り曲げられ、この折り曲げ状態で配索される。従ってワイヤハーネスを配索するためには、ワイヤハーネスは折り曲げられた形状を保持する必要がある。しかしながら、上述した従来構造のワイヤハーネスは管体内で電線を固定するだけであり、配索のための折り曲げ形状を保持することができない。従って折り曲げ形状を保持するためのプロテクタ等の配索用部材を作成し、この配索用部材を用いてワイヤハーネスを配索している。このため配索経路に沿ったワイヤハーネスの配索が面倒である問題を有している。
【0006】
そこで本発明は、配索経路等に沿った形状をワイヤハーネス自体が保持した構造とすることにより配索を簡単に行うことが可能なワイヤハーネス形状保持構造を提供することを目的とする。又、本発明はワイヤハーネスに対して形状保持部を形成するワイヤハーネス形状保持部形成装置及びワイヤハーネス形状保持部形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、電線と、この電線が内部に挿通された可撓性の管体とからなるワイヤハーネスの形状を保持するワイヤハーネス形状保持構造であって、前記ワイヤハーネスの形状を保持する部位に、硬化性の充填材を前記電線と管体の内壁との間に充填して形成した形状保持部を有することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、電線と、この電線が内部に挿通された可撓性の管体とからなるワイヤハーネスの形状を保持する形状保持部を形成する形状保持形成装置であって、前記電線と管体の内壁との間に硬化性の充填材を充填する一対の充填補助部品が前記形状保持部の両側に配置され、前記一対の充填補助部品のそれぞれは前記硬化性の充填材が流通する充填材流通口と、前記電線と管体の内壁との間に充填された充填材の流れを規制する流路規制壁とを備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のワイヤハーネス形状保持部形成装置であって、前記一対の充填補助部品のそれぞれは、前記形状保持部の前記管体の開口端部に取り付けられる一対の周壁半体と、これらの一対の周壁半体のそれぞれに一体に設けられて管体と電線との間を閉塞する前記流路規制壁とで形成され、前記一対の周壁半体の一方には前記充填材流通口が設けられ、前記流路規制壁には電線が挿通する電線挿通凹部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載のワイヤハーネス形状保持部形成装置であって、前記一対の充填補助部品には、前記管体の端部に係合する係合リブが設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、電線と、この電線が内部に挿通された可撓性の管体とからなるワイヤハーネスの形状を保持する形状保持部を形成する形状保持形成方法であって、前記形状保持部の両側のそれぞれに充填補助部品を取り付け、この取り付け状態で一方の充填補助部品の充填材流通口から他方の充填補助部品に向けて硬化性の充填材を管体の内壁と電線との間に注入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の本発明によれば、電線と管体の内壁との間に硬化性の充填材を充填することにより設けられた形状保持部がワイヤハーネスの形状を保持する。従ってワイヤハーネス自体が配索経路に沿った形状となるため、配索用部材を不要とし、ワイヤハーネスだけでの配索が可能となり、ワイヤハーネスの配索を簡単に行うことができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、一対の充填保持部品に充填材流通口及び流路規制壁を形成しており、一方の充填補助部品の充填材流通口から充填材を充填することにより流路規制壁が電線と管体の内壁との間の充填材の流れを規制してワイヤハーネスに形状保持部を形成する。ワイヤハーネスが形状保持部を有することにより、ワイヤハーネス自体が形状を保持する構造とすることができる。又、流路規制壁が充填材の充填範囲を規制するため、充填材の充填範囲を管理することができる。さらにこのような発明によれば、充填材流通口及び流路規制壁を充填補助部品に形成するだけであるから、簡単な構造とすることができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、周壁半体の電線挿通凹部に電線を挿通させた状態で、一対の周壁半体を閉じることにより流路規制壁が電線と管体の内壁との間を閉塞するため、充填材流通口から充填材を電線及び管体の内壁との間に充填して形状保持部を形成することができる。従ってワイヤハーネスに対して形状保持部を確実に形成することができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、充填補助部品に形成されている係合リブが管体の端部に係合することにより充填補助部品が管体の端部に取り付けられるため、充填補助部品を管体の端部に簡単に取り付けることができる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、一方の充填補助部品の充填材流通口から充填材を注入することにより充填材を管体の内壁と電線との間に充填してワイヤハーネスに形状保持部を形成することができる。従って形状保持部を間谷形成することができる。この場合、他方の充填補助部品の充填材流通口から充填材の排出を目視することにより充填材の充填の過不足を確認することができるため、充填材の充填を確実に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態のワイヤハーネス及びワイヤハーネス形状保持部形成装置を示す断面図である。
【図2】第1実施形態における第1充填補助部品を示す断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態のワイヤハーネス形状保持部形成装置における第1充填補助部品を示す斜視図である。
【図4】本発明の第3実施形態のワイヤハーネス形状保持部形成装置における第1充填補助部品を示す断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態のワイヤハーネス形状保持部形成装置における第1充填補助部品の第1形態を示す正面図である。
【図6】本発明の第3実施形態のワイヤハーネス形状保持部形成装置における第1充填補助部品の第2形態を示す正面図である。
【図7】本発明の第3実施形態のワイヤハーネス形状保持部形成装置における第1充填補助部品の第3形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図示する実施形態により具体的に説明する。なお、各実施形態において、同一の部材には同一の符号を伏して対応させてある。
【0019】
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態のワイヤハーネス形状保持部形成装置10を示し、図2はその部分断面図を示す。ワイヤハーネス形状保持部形成装置10(以下、形成装置10)はワイヤハーネス1の所定部位に対して形状保持部4を形成するものである。
【0020】
ワイヤハーネス1は電線2と、電線2が挿通する可撓性の管体3とによって形成されている。管体3は外装材として用いられるものであり、図2に示すように凹凸部が交互に形成されることにより可撓性を有した蛇腹状のコルゲートチューブを用いることができる。電線2は管体3の内壁3aとの間に隙間を有するように管体3に挿通される。形状保持部4はワイヤハーネス1を折り曲げするために形成されるものであり、例えば配索経路に沿わせるためにワイヤハーネス1に対して形状を保持する部位に形成される。形状保持部4は形状を保持する部位に対し、発泡ウレタン等の硬化性の充填材5を電線2と管体3の内壁3aとの間に充填することにより形状を保持するように機能する。
【0021】
図1に示すように、ワイヤハーネス1は管体3に加えて、外側の管体6、7を備えている。外側の管体6は後述する第1充填補助部品11の外側(図1における右側)に位置するように設けられ、外側の管体7は後述する第2充填補助部品12の外側(図1における左側)に位置するように設けられる。これらの外側の管体6、7は、管体3と同様にコルゲートチューブ等の可撓性の管体が用いられ、内部には電線2が挿通する。
【0022】
ワイヤハーネス形状保持部形成装置10は同一の構造となっている第1充填補助部品11及び第2充填補助部品12からなる一対の充填補助部品を有している。一対の充填補助部品11、12はワイヤハーネス1の形状保持部4を挟むように形状保持部4の両側に配置されるものであり、この実施形態では図1に示すように、第1充填補助部品11が形状保持部4の右側に配置され、第2充填補助部品12が形状保持部4の左側に配置されている。
【0023】
それぞれの充填補助部品11、12は筒状の本体部11a、12aを有している。筒状の本体部11a、12aは管体3の開口端部に係合することにより管体3の外周側に取り付けられるものである。この実施形態において、第1充填補助部品11は一方側の端部が管体3に係合し、他方側の端部が外側の管体6に係合する。この係合を行うため、第1充填補助部品11の本体部11aの長さ方向の両端部には、管体3の凹部に係合する係合リブ13及び外側の管体6の凹部に係合する係合リブ13が形成されている(図2参照)。両端部の係合リブ13、13が管体3、6に係合することにより、第1充填補助部品11がこれらの管体3、6の外周側に取り付けられる。両端部の係合リブ13、13は図2に示すように、第1充填補助部品11の本体部11aにおける長さ方向の両端部の内壁に凸状となって形成されており、対応した管体3、6の開口端部の凹部に嵌り込んで係合する。
【0024】
図示を省略するが、第2充填補助部品12の本体部12aにも、第1充填補助部品11の係合リブ13、13と同様の凸状の係合リブが長さ方向の両端部に形成されている。一方側の端部の係合リブは管体3の開口端部に係合し、他方側の端部の係合リブは外側の管体7の開口端部に係合する。これらの係合により第2充填補助部品12が管体3及び外側の管体7の外周側に取り付けられる。
【0025】
第1充填補助部品11の本体部11aには、流路規制壁11b及び充填材流通口11cが形成されている。
【0026】
流路規制壁11bは本体部11aの内壁から内径方向に一体に延びるように形成されている。流路規制壁11bは本体部11aの両端部に設けられている係合リブ13、13の間に位置するように設けられており、後述する充填材5が第1充填補助部品11の外側(図2における右側)に流れないように規制する。この流路規制壁11bの略中央部分には、電線2が挿通する電線挿通孔11dが形成されている。
【0027】
充填材流通口11cは流路規制壁11bに近接するように本体部11aを厚さ方向に貫通する孔によって形成されている。充填材流通口11cは流路規制壁11bの内側(図2における左側)に位置するように本体部11aに形成されている。第1充填補助部品11における充填材流通口11cは充填材5を電線2及び管体3の内壁3aの間に注入するための注入口となるものである。
【0028】
第2充填補助部品12の本体部12aも第1充填補助部品11と同様に、流路規制壁12b及び充填材流通口11cが形成されている。
【0029】
流路規制壁12bは本体部12aの内壁から内径方向に一体に延びるように形成されており、その略中央部分には電線2が挿通する電線挿通孔12dが形成されている。第2充填補助部品12における流路規制壁12bは、充填材5が第2充填補助部品12の外側(図1における左側)に流れないように規制するものである。
【0030】
第2充填補助部品12における充填材流通口12cは、この流路規制壁12bの内側(図1における右側)に位置するように本体部12aに形成されている。第2充填補助部品12において、充填材流通口12cは電線2及び管体3の内壁3aに充填された充填材5を排出する排出口となっている。
【0031】
この実施形態において、第1充填補助部品11は電線2及び管体3の内壁3aの間に充填材5を充填する充填側となっており、第1充填補助部品11には図1に示すように充填装置15が設けられる。
【0032】
充填装置15は充填材5が充填されたシリンダ15aと、シリンダ15aから一体に延びたノズル15bとを有しており、ノズル15bの先端部が第1充填補助部品11の充填材流通口11cに差し込まれる。充填装置15はシリンダ15aに挿入されたピストン15cを押圧することにより充填材5をノズル15bから突出するようになっている。
【0033】
以上に加えてこの実施形態においては、形状固定治具17が用いられる。形状固定治具17は配索形状に沿った折り曲げ状態となるようにワイヤハーネス1を一時的に固定するものである。このため形状固定治具17には配索形状に沿った溝部17aが形成されており、この溝部17aにワイヤハーネス1が嵌め込まれて一時的に固定される。
【0034】
次に図1及び図2に示す形成装置10によってワイヤハーネス1に形状保持部4を形成する手順を説明する。
【0035】
形状保持部4に対応した部分の電線2を管体3に挿通させ、管体3から抜き出ている電線2を第1及び第2充填補助部品11、12の電線挿通孔11d、12dに挿通させる。そしてワイヤハーネス1における形状保持部4に対応した部分を形状固定治具17によって折り曲げて一時的に固定する。
【0036】
その後、管体3の両端部を第1及び第2充填補助部品11、12に係合させる。この係合は可撓性の管体3を撓ませた状態で右側の開口端部を第1充填補助部品11の内側の係合リブ13に係合させ、左側の開口端部を第2充填補助部品12の内側の係合リブに係合させることにより行われる。さらに、外側の管体6、7を管体3と同様にして、第1及び第2充填補助部品11、12における外側の係合リブ13に係合させる。これらの管体3及び外側の管体6、7の係合により、第1充填補助部品11が管体3と外側の管体6との間に配置され、第2充填補助部品12が管体3と外側の管体7との間に配置される。これにより管体3の長さ方向の両側に第1及び第2充填補助部品11、12が配置され、形状保持部4がこれらの充填補助部品11、12に挟まれた状態となる。
【0037】
次に第1充填補助部品11側の充填装置15から未硬化の充填材5を押し出し、充填材流通口11cを通じて電線2と管体3の内壁3aとの間に充填材5を注入する。注入された充填材5は第1及び第2充填補助部品11、12の流路規制壁11b、12bによって圧力差が生じ、圧力の低い第2充填補助部品12側に円滑に流動する。図1及び図2において、矢印Gは充填材5の流動を示している。充填材5は第1充填補助部品11の流路規制壁11bによって規制されて外側の管体6側に流れ出ることなく、電線2と管体3の内壁3aとの間の隙間を充填しながら第2充填補助部品12側に流れる。
【0038】
充填材5が第2充填補助部品12に達すると流路規制壁12bによって流動が規制されるため、外側の管体7側に流れ出ることがない。そしてこの充填材5は第2充填補助部品12の充填材流入口12cから排出される。充填材流入口12cからの充填材5の排出を目視することにより第1、第2充填補助部品11、12間における電線2と管体3の内壁3aとの間に充填材5が十分に充填されたことを確認することができる。この確認の後、充填材5を硬化させる。この硬化により形状保持部4が形状を保持した状態となる。
【0039】
このような実施形態によれば、電線2と管体3の内壁3aとの間に充填材5が充填されて形成された形状保持部4がワイヤハーネスの形状を保持するため、ワイヤハーネス自体が配索経路に沿った形状となる。このためワイヤハーネスだけでの配索が可能となり、配索用部材を不要とすることができ、ワイヤハーネスの配索を簡単に行うことができる。
【0040】
又、形成装置10においては、第1充填補助部品11の充填材流通口11aから充填材5を充填することにより第1及び第2充填補助部品11、12の流路規制壁11b、12bが電線2と管体3の内壁3aとの間の充填材5の流れを規制してワイヤハーネス1に形状保持部4を形成する。このため、形状保持部4を簡単に形成することができる。又、流路規制壁11b、12bが充填材5の充填範囲を規制するため、充填材5の充填範囲を管理することができる。さらに形成装置10は充填材流通口11c、12c及び流路規制壁11b、12bを第1及び第2充填補助部品11,12に形成するだけであるから、簡単な構造の形成装置10とすることができる。
【0041】
〔第2実施形態〕
図3は本発明の第2実施形態のワイヤハーネス形状保持部形成装置(形成装置)10を示す。形成装置10は第1実施形態と同様に第1充填補助部品11及び第2充填補助部品12からなる一対の充填補助部品を備えている。第1充填補助部品11及び第2充填補助部品12は同一の構造となっているため、図3においては第1充填補助部品11だけを示している。
【0042】
図3に示すように第1充填補助部品11は、一対の周壁半体21、22を有している。一対の周壁半体21、22は円を半割りした形状に成形されており、ヒンジ(図示省略)により相互に開き動作及び閉じ動作可能に連結されている。周壁半体21、22は閉じ動作することにより筒状となってワイヤハーネス1の形状保持部4に取り付けられる。なお、一対の周壁半体21、22はヒンジにより連結されることなく別体とし、使用に際して筒状に組み付ける構造であっても良い。
【0043】
図3における充填補助部品11は充填材5の充填側となるものであり、それぞれの周壁半体21、22の内壁には、管体3に係合する内側の係合リブ13及び外側の管体6に係合する外側の係合リブ13が形成されている。又、一対の周壁半体21、22のそれぞれには流路規制壁24、25が対向するように形成されている。流路規制壁24、25は周壁半体21、22の内壁から半円板状となって内径方向に突出するように形成されており、周壁半体21、22を閉じ作動することにより相互に突き合わされ、この突き合わせにより全体として充填材5の流れを規制する第1実施形態の流路規制壁11bとなる。
【0044】
それぞれの流路規制壁24、25の略中央部分には、電線挿通凹部26が対向するように形成されている。電線挿通凹部26は半円状の凹部となっており、周壁半体21、22を閉じ作動して流路規制壁24、25を突き合わせることにより第1実施形態の電線挿通孔11dとなる。これにより電線2が第1充填補助部品11を挿通することができる。
【0045】
さらに一方の周壁半体21には充填材流通口11cが形成されている。第1充填補助部品11を充填材5の充填側に用いる場合、充填材流通口11cは充填材5を注入する注入口となり、第1充填補助部品11を充填材5の排出側に用いる場合、充填材流通口11cは充填材5を排出する排出口となる。
【0046】
このような実施形態の第1充填補助部品11は閉じ動作することにより筒状となり、同様の閉じ動作により筒状となった第2充填補助部品12と共に第1実施形態における形成装置10を構成する。従って、ワイヤハーネス1に形状保持部4を形成する手順は第1実施形態と同様である。
【0047】
このような実施形態では、周壁半体21,22の電線挿通凹部26に電線2を挿通させた状態で、一対の周壁半体21,22を閉じることにより第1実施形態の流路規制壁11b、12bとなるため、電線2と管体3の内壁3aとの間を閉塞する。このため、充填材流通口11c又は12cから充填材5を電線2及び管体3の内壁3aとの間に充填して形状保持部4を形成することができる。従ってワイヤハーネス1に対して形状保持部4を確実に形成することができる。
【0048】
〔第3実施形態〕
図4は本発明の第3実施形態のワイヤハーネス形状保持部形成装置(形成装置)10を示す。図4は第1充填補助部品11を示すが、第2充填補助部品12も同様な構造となっている。
【0049】
この実施形態の第1充填補助部品11においては、本体部11aの長さ方向の両端部に形成される係合リブ13、13のそれぞれに斜面28が形成されている。その他の構造は第1実施形態と同様となっている。
【0050】
斜面28は管体3、6が押し込まれる方向に対し遠ざかる方向に傾斜するように形成されている。例えば、外側の管体6が押し込まれる矢印Hで示す方向に対し、外側(右側)の係合リブ13は押し込み方向Hから遠ざかる方向に傾斜するものであり、内側(左側)の係合リブ13も管体3が押し込まれる方向から遠ざかる方向に傾斜している。
【0051】
係合リブ13、13にこのような斜面28を形成した構造では、管体3、6を第1充填補助部品11に押し込む際に斜面28が管体3、6の開口端部を内径側に撓ませるように案内する。これにより第1充填補助部品11と管体3、6との連結を簡単に行うことができる。
【0052】
〔第4実施形態〕
図5〜図7は本発明の第4実施形態を示し、第1充填補助部品11に固定部31が形成されている。図示を省略するが、第2充填補助部品12に対しても同様に固定部31が形成されるものである。
【0053】
固定部31は第1充填補助部品11の本体部11aから径方向外側に突出した舌片状に形成されている。それぞれの固定部31には係合孔32が形成されている。図5においては横長の係合孔32となっており、この横長の係合孔32に取り付け用ボルト(図示省略)が貫通することにより第1充填補助部品11が固定される。図6においては係合孔32がスタッドボルト用となっており、スタッドボルト(図示省略)が貫通することにより第1充填補助部品11が固定される。図7においては係合孔32がクリップ用となっており、クリップ(図示省略)が貫通することにより第1充填補助部品11が固定される。
【0054】
このように第1充填補助部品11に固定部31を突出させ、固定部31に係合孔32を形成することにより第1充填補助部品11を固定することができる。このように固定することにより第1充填補助部品11を定位置に固定することができるため、ワイヤハーネス1に対して形状保持部4を正確に形成することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 ワイヤハーネス
2 電線
3 管体
3a 内壁
4 形状保持部
5 充填材
6、7 外側の管体
10 ワイヤハーネス形状保持部形成装置
11 第1充填補助部品
12 第2充填補助部品
11b、12b、24、25 流路規制壁
11c、12c 充填材流通口
11d、12d 電線挿通孔
13 係合リブ
21、22 周壁半体
26 電線挿通凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、この電線が内部に挿通された可撓性の管体とからなるワイヤハーネスの形状を保持するワイヤハーネス形状保持構造であって、
前記ワイヤハーネスの形状を保持する部位に、硬化性の充填材を前記電線と管体の内壁との間に充填して形成した形状保持部を有することを特徴とするワイヤハーネス形状保持構造。
【請求項2】
電線と、この電線が内部に挿通された可撓性の管体とからなるワイヤハーネスの形状を保持する形状保持部を形成する形状保持形成装置であって、
前記電線と管体の内壁との間に硬化性の充填材を充填する一対の充填補助部品が前記形状保持部の両側に配置され、
前記一対の充填補助部品のそれぞれは前記硬化性の充填材が流通する充填材流通口と、前記電線と管体の内壁との間に充填された充填材の流れを規制する流路規制壁とを備えていることを特徴とするワイヤハーネス形状保持部形成装置。
【請求項3】
請求項2記載のワイヤハーネス形状保持部形成装置であって、
前記一対の充填補助部品のそれぞれは、前記形状保持部の前記管体の開口端部に取り付けられる一対の周壁半体と、これらの一対の周壁半体のそれぞれに一体に設けられて管体と電線との間を閉塞する前記流路規制壁とで形成され、前記一対の周壁半体の一方には前記充填材流通口が設けられ、前記流路規制壁には電線が挿通する電線挿通凹部が設けられていることを特徴とするワイヤハーネス形状保持部形成装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載のワイヤハーネス形状保持部形成装置であって、
前記一対の充填補助部品には、前記管体の端部に係合する係合リブが設けられていることを特徴とするワイヤハーネス形状保持部形成装置。
【請求項5】
電線と、この電線が内部に挿通された可撓性の管体とからなるワイヤハーネスの形状を保持する形状保持部を形成する形状保持形成方法であって、
前記形状保持部の両側のそれぞれに充填補助部品を取り付け、この取り付け状態で一方の充填補助部品の充填材流通口から他方の充填補助部品に向けて硬化性の充填材を管体の内壁と電線との間に注入することを特徴とするワイヤハーネス形状保持部形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−186952(P2012−186952A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49295(P2011−49295)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】