説明

ワイヤハーネス配索構造

【課題】ワイヤハーネスを配索する際の作業性を向上させることができ、また、配索領域の省スペース化を達成することのできるワイヤハーネス配索構造を提供すること。
【解決手段】複数の電線42を断面略円形態に結束して構成されたワイヤハーネス10を配索するワイヤハーネス配索構造は、ワイヤハーネス10が、延在方向に沿って部分的に薄肉平形化されて平形形状を保持された平形部10aを有することで、配索作業が容易であり、配索領域が省スペースになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネス配索構造に関し、特に、配索作業性を向上させると同時に、配索領域が省スペースとなるための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
車両シートには、搭乗者の姿勢に合わせてシートクッションを前後方向及び上下方向に位置調整したり、シートバックをリクライニング動作させたりする電動シート装置や、エアバッグを搭乗者とサイドドアとの間に展開させるエアバッグユニット装置が設けられているものがあり、このような装置が搭載される車両シートにおいては、電動部品への給電のために、ワイヤハーネスが配索される。
【0003】
図7及び図8は車両シートにおけるワイヤハーネス配索構造の従来例を示したものである。図7及び図8に示すように、ワイヤハーネス配索構造100は、シートクッション(図示せず)が装着されるサイドフレーム102に、シートバック104を水平な回動軸105でリクライニング自在に設けられた車両シート106内で、ワイヤハーネス108をシートの下方からシートバック104に配索したものである。
【0004】
ワイヤハーネス108は、配索経路上において、コルゲートチューブ109内により被覆されて保護されている。ワイヤハーネス108は回動軸105に沿って中間部109aを平行に配索され、この中間部109aをクランプ110で回動軸105に固定され、中間部109aの両側に連続する部分をそれぞれ他のクランプ112,114でシートクッションとシートバック104とに固定されている。
【0005】
この種のワイヤハーネスの配索構造は、下記特許文献1にも開示されている。
【特許文献1】特開2006−304538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、車両シートの機能の向上に伴い、電動部品の数が増加し、その給電に用いられるワイヤハーネスも、結束される電線数が増えて束が大径化する傾向がある。そして、車両シートの内部という狭い空間に収まるように、このような太い束のワイヤハーネスを曲げることは困難であり、作業性が悪いという問題がある。
【0007】
また、太い束のワイヤハーネスは曲げにくいので、ワイヤハーネスの曲げ半径が大きくなってしまい、広い配索スペースが必要になるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、ワイヤハーネスの配索作業性を向上させると共に、配索領域を省スペースにできるワイヤハーネス配索構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 複数の電線を断面略円形態に結束して構成されたワイヤハーネスを配索するワイヤハーネス配索構造であって、
前記ワイヤハーネスは、その前記複数の電線の束がその延在方向に沿って部分的に所定長さにわたって薄肉平形化されて平形形状を保持された平形部を有していることを特徴とするワイヤハーネス配索構造。
【0010】
(2) 前記複数の電線の束は、前記延在方向に沿って樹脂製の保護材により被覆されており、該保護材と共に前記平形形状を保持されていることを特徴とする前記(1)に記載のワイヤハーネス配索構造。
【0011】
(3) 前記複数の電線の束は、結束具により前記平形形状に保持されていることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のワイヤハーネス配索構造。
【0012】
(4) 前記複数の電線の束は、当該複数の電線の束を収容する収容空間が断面平形形状のプロテクタに収容されることで前記平形形状に保持されていることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のワイヤハーネス配索構造。
【0013】
(5) 前記平形部を曲げることで配索方向を転換されることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか記載のワイヤハーネス配索構造。
【0014】
上記(1)の構成によれば、ワイヤハーネスを構成する電線束が太くなっても、ワイヤハーネスを部分的に薄形平形化した平形部で簡単に曲げることができるので、配索作業性を向上させることができる。
【0015】
また、ワイヤハーネスを平形部で簡単に曲げることができるので、曲げ半径が大きくならず、配索領域を省スペース化することができる。
【0016】
また、ワイヤハーネスを平形部で折り曲げることができるので、配索方向の変更に広いスペースを必要とせず、配索領域を省スペース化することができる。
【0017】
上記(2)の構成によれば、ワイヤハーネスが保護材により被覆されているので、ワイヤハーネスが狭い空間に配索されても、振動等によりワイヤハーネスが周囲の部材と接することがなく、ワイヤハーネスの損傷を防止することができる。
【0018】
上記(3)の構成によれば、結束具により平形形状が保持されるので、ワイヤハーネスの任意の部分を容易に平形形状にすることができる。したがって、配索現場で平形部を形成することもでき、また、配索部の変更に応じて平形形状を形成する部分の変更も容易である。ここで、結束具としては、テープ、タイバンド等を用いることができる。
【0019】
上記(4)の構成によれば、プロテクタにより平形形状が保持されるので、ワイヤハーネスが狭い空間に配索されても、振動等によりワイヤハーネスが周囲の部材と接することがなく、ワイヤハーネスの損傷を防止することができる。
【0020】
上記(5)の構成によれば、平形部を曲げることで配索方向を転換することにより、ワイヤハーネスの配索自由度が高まる。
【発明の効果】
【0021】
本発明による車両シートにおけるワイヤハーネス配索構造によれば、ワイヤハーネスに部分的に形成された平形部を小半径で曲げたり、ねじったり、折り曲げて配索することができるので、配索作業性を向上させることができる。また、平形部を曲げる場合、曲げ半径は大きくならず、更に平形部を折り曲げて配索することもできるので、配索領域を省スペース化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る車両シートにおけるワイヤハーネス配索構造の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
[第1実施形態]
図1は本発明の第1実施形態であるワイヤハーネスの斜視図、図2は図1のワイヤハーネスの側面図、図3は図1のワイヤハーネスの配索図である。
【0024】
ワイヤハーネス10は複数の電線42を束ねて構成され、延在方向の適当な箇所をテープやタイバンド等の結束具(図示せず)により固定されている。ワイヤハーネス10はもともとは全長にわたって断面略円形状であるが、延在方向の所定の部分に、束ねた電線42を平面状に分散してワイヤハーネスを薄肉平形化した平形部10aが形成されている。そして、平形部10aはテープやタイバンド等の結束具44により平形形状を維持されている。
【0025】
結束具44は、平形部10aの延在方向両端部を含めた適当な箇所で、平形部10aを結束してワイヤハーネス10の平形形状を保持している。
【0026】
平形部10aは、図1に示すように、電線42が平面状に分散されることで断面略円形部10cよりも幅広となり、図2に示すように、断面略円形部10cよりも薄肉となる。したがって、図2で矢印A、Bで示す方向に曲がり易くなっている。
【0027】
図3は車両シートのリクライニングシートの回動軸の周りにワイヤハーネスを配索した状態を表す。ワイヤハーネス10は、シート外部に引き出される供給側端部にコネクタ(図示せず)が接続され、このコネクタは、車室側の他のハーネスにコネクタ接続される。ワイヤハーネス10のシート内部側は、複数の枝ハーネスなどに分岐されていて、シート内の各電動部(電気機器)に接続される。
【0028】
図3に示すように、サイドフレーム12には、シートバック13を回動自在に支持する回動軸16が設けられ、シートバック13は、回動軸16を支点に回動(リクライニング)できるように構成されている。サイドフレーム12には、ワイヤハーネス10を固定するための固定部18が、回動軸16よりも後方側に設けられている。サイドフレーム12の内側には、インナートリム24が装着されており、サイドフレーム12の回動機構近傍が外から見えないようになっている。
そして、ワイヤハーネス10はサイドフレーム12から導入された部分が、固定部18にクリップ20により固定されている。固定部18に固定されたワイヤハーネス10は回動軸16の前方側を迂回して回動軸16の略3分の2をラップして配索され、更に上方に向けてシートバック13内に配索されている。
【0029】
また、固定部18に固定された平形部10aに対して、回動軸16の周囲の平形部10は90度ねじられて配索されている。すなわち、平形部10aは、それぞれ固定部18及び回動軸16に対向する位置関係にある。
【0030】
このように、平形部10aを利用してワイヤハーネス10の配索方向を変更することで、車両シートの内部というような極めて狭い空間内であっても、ワイヤハーネス10を曲げて配索することが可能となる。また、ワイヤハーネス10を回動軸16の回りに曲げて配索した場合、平形部10aは曲がり易いので曲げ半径が大きくならず、配索領域が省スペースとなる。更に、平形部10aをねじって向きを90度変更して配索することも可能であるので、配索作業性もよく、配索方向の自由度も高い。
【0031】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態に用いられるワイヤハーネスの斜視図である。この第2実施形態のワイヤハーネス10は、樹脂製の保護材21がワイヤハーネス10に装着されている点で、第1実施形態と異なり、他の構成は第1実施形態と同じである。保護材21は、例えば、メッシュ構造であり、容易に変形可能であり、曲げ易い構造になっている。保護材21としては、例えばフェデラル・モーグルシステムプロテクション株式会社製のワイヤハーネス磨耗防止用メッシュチューブを用いることができる。
【0032】
第2実施形態のワイヤハーネス10は、保護材21により延在方向全域が被覆されており、平形部10aは、ワイヤハーネス10が保護材21と共に変形されて形成されている。そして、ワイヤハーネス10を構成する電線42を平面状に分散させて平形形状を形成し、保護材21の外側からテープ、タイバンド等の結束具44で保護材21及びワイヤハーネス10を結束して平形形状を保持している。
【0033】
第2実施形態のワイヤハーネス配索構造は、使用するワイヤハーネス10の構成が第1実施形態と異なるだけであり、図3に示すように、車両シートへの配索構造は第1実施形態と同じである。なお、第2実施形態のワイヤハーネス10は、結束具44を省略した図5に示す構成であってもよい。
【0034】
第2実施形態のワイヤハーネス配索構造によれば、ワイヤハーネス10が保護材21により被覆されているので、配索されたワイヤハーネス10が振動等により周囲の部材に接しても、ワイヤハーネス10が損傷することがない。
【0035】
[第3実施形態]
また、第1実施形態及び第2実施形態におけるそれぞれのワイヤハーネス10に、図6に示す樹脂製プロテクタ22を装着して配索してもよい。この場合、プロテクタ22を断面平形形状のワイヤハーネス収容空間を有する形状に構成し、プロテクタ22内にワイヤハーネス10を収容することで平形形状を保持する構成であってもよい。更にこの場合、平形部10aにおける結束具44を省略してもよい。
【0036】
図6は図3の回動軸周りに平形部を配索する場合のプロテクタ22の一部切欠斜視図である。プロテクタ22は、回動軸16周りのワイヤハーネス配索経路に応じて湾曲したワイヤハーネス収容空間を有し、このワイヤハーネス収容空間は、ワイヤハーネス10の平形部10aの厚さに対応してほぼ同じ高さに形成されている。したがって、ワイヤハーネス10の平形部10aはプロテクタ22内に収容されることで、平形形状が保持される。そして、ワイヤハーネス10が振動等により外部部材と接することがなく、ワイヤハーネス10の損傷を防止することができる。なお、図6において、プロテクタ22のワイヤハーネス収容空間を示すために、プロテクタ22の手前側の側壁は図示を省略してある。
【0037】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0038】
例えば、上記実施形態は、車両シート内でのワイヤハーネス配索構造であるが、ワイヤハーネスを配索する対象物は車両シートに限らず何であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施形態に用いられるワイヤハーネスの斜視図である。
【図2】図1のワイヤハーネスの側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態であるワイヤハーネスの配索図である。
【図4】本発明の第2実施形態に用いられるワイヤハーネスの斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態に用いられるワイヤハーネスの変形例の斜視図である。
【図6】本発明の第3実施形態に用いられるプロテクタの一部切欠斜視図である。
【図7】従来のワイヤハーネスの配索図である。
【図8】図7の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0040】
10 ワイヤハーネス
10a 平形部
12 サイドフレーム
13 シートバック
16 回動軸
18 ワイヤハーネス固定部
20 クリップ
21 保護材
22 プロテクタ
24 インナートリム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線を断面略円形態に結束して構成されたワイヤハーネスを配索するワイヤハーネス配索構造であって、
前記ワイヤハーネスは、その前記複数の電線の束がその延在方向に沿って部分的に所定長さにわたって薄肉平形化されて平形形状を保持された平形部を有していることを特徴とするワイヤハーネス配索構造。
【請求項2】
前記複数の電線の束は、前記延在方向に沿って樹脂製の保護材により被覆されており、該保護材と共に前記平形形状を保持されていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス配索構造。
【請求項3】
前記複数の電線の束は、結束具により前記平形形状を保持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のワイヤハーネス配索構造。
【請求項4】
前記複数の電線の束は、当該複数の電線の束を収容する収容空間が断面平形形状のプロテクタに収容されることで前記平形形状を保持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のワイヤハーネス配索構造。
【請求項5】
前記平形部を曲げることで配索方向を転換されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のワイヤハーネス配索構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−9866(P2010−9866A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166251(P2008−166251)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】