説明

ワイヤハーネス

【課題】複数の電線を束ねた外装部材を容易に電線束から外すことができる易解体ワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】自動車の車体パネルに取り付けられるワイヤハーネス1Aは、複数の電線からなる電線束2と、前記複数の電線を束ねた複数のクリップ6と、これらクリップ6により前記複数の電線と共に束ねられた伸縮自在な袋状に設けられた膨張チューブ5と、を有している。このワイヤハーネス1Aは、前記複数の電線と膨張チューブ5とがクリップ6により共に束ねられた状態で、膨張チューブ5内に流体が注入されて該膨張チューブ5が膨張することにより、クリップ6が破断して電線束2から外れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などに配索されるワイヤハーネスに関し、詳しくは、前記自動車などの廃車時や修理時において、容易に解体することが可能なワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
種々の電子機器が搭載される自動車は、これらの電子機器に電力や制御信号を伝送するためにワイヤハーネスを配索している。図11は、従来のワイヤハーネスを示す斜視図である。このワイヤハーネス100は、複数の電線20が粘着テープ4などの外装部材により束ねられた電線束2と、これら電線束2の端末などに取り付けられ、電子機器のコネクタに結合されるコネクタ3と、前記自動車の車体を構成するパネルに前記電線束2を固定するためのクリップ6などの外装部材と、を有している。
【0003】
上記クリップ6は、前記電線束2の各所定位置に取り付けられる。このクリップ6は、前記電線束2の外周に巻き付けられるバンド部61と、このバンド部61を電線束2の外周に巻き付いた状態に固定するバンド係止部62と、前記パネルに設けられた穴に圧入係止される圧入部63と、を有している。
【0004】
このようなクリップ6は、バンド部61が電線束2の外周に巻き付けられ、圧入部63が前記パネルの穴に係止して、電線束2を前記パネルに取り付ける。そして、電線束2を前記車体の所定位置に位置決めするとともに、電線束2が走行中などの振動により振動することを防止する(特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開2002−233038号公報
【特許文献2】特開平11−260151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した自動車の廃車時や修理時においてワイヤハーネス100を解体してリサイクルする際は、電線束2に巻き付けられた複数のクリップ6のバンド部61を1つずつ外してこの電線束2を前記パネルから取り外し、そして、前記粘着テープ4を剥がして電線束2をばらして解体していた。
【0006】
このように、従来のワイヤハーネス100は、パネルなどから取り外す際に複数のクリップ6のバンド部61を1つずつ外さなければならず、解体作業に多くの時間を要してしまうという問題があった。また、前記パネルの手の届き難い場所にクリップ6が取り付けられている場合は、バンド部61を外す作業が非常に困難な作業になってしまうという問題があった。また、何重にも重ねられて巻き付けられた粘着テープ4を剥がす作業は多くの時間を要してしまうという問題があった。
【0007】
また、複数の電線と針金状の引き裂き線材とを、粘着テープにより共に束ねた構成のワイヤハーネスが特許文献2(特開平11−260151号公報)に示されている。このワイヤハーネスを解体する際には、引き裂き線材の一端部を把持し、その軸線方向に沿って該引き裂き線材の他端部に向かって引っ張ることで、粘着テープを引き裂いて解体する。
【0008】
しかし、上記特許文献2に示された粘着テープの引き裂き作業は、前記引き裂き線材を引っ張るのに大きな力が必要となるという問題があった。また、この粘着テープの引き裂き作業は、上述したクリップ6を電線束から外した後の作業となるので、当該特許文献2において、上述した「パネルの手の届き難い場所にクリップ6が取り付けられている場合はバンド部61を外す作業が非常に困難な作業になってしまう」という問題は依然として解決されていなかった。
【0009】
したがって、本発明は、複数の電線を束ねた粘着テープやクリップ等の外装部材を容易に電線束から外すことができる易解体ワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、複数の電線と、これら複数の電線を束ねる外装部材と、該外装部材により前記複数の電線と共に束ねられる伸縮自在な袋状に設けられた膨張チューブと、を有し、そして、前記複数の電線と前記膨張チューブとが前記外装部材により共に束ねられた状態で、前記膨張チューブ内に流体が注入されて該膨張チューブが膨張することにより、前記外装部材が破断することを特徴とするワイヤハーネスである。
【0011】
上記請求項1に記載された発明によれば、膨張チューブが膨張することにより電線束に巻き付けられた複数の外装部材が同時に破断して外れるので、ワイヤハーネスの解体作業に要する時間を短くすることができる。また、このワイヤハーネスの解体作業は、作業員が外装部材に直接手を触れることがなく力の要らない作業であるので、作業員の肉体的な負担を軽減することができるとともに、作業の安全を確保することができる。
【0012】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記外装部材が粘着テープであることを特徴とするものである。この粘着テープは、複数の電線と膨張チューブとを単に束ねるだけのものであっても良いが、複数の電線と膨張チューブとを束ねるとともにこの電線束にパネルへの係止部材を取り付けるものであっても良い。さらに、複数の電線と膨張チューブとを束ねるとともにこの電線束をパネルに取り付けるものであっても良い。
【0013】
請求項3に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記外装部材が、前記複数の電線の外周に巻き付けられる帯状のバンド部と、該バンド部を前記複数の電線の外周に巻き付いた状態に固定するバンド係止部と、パネルに設けられた穴に圧入係止される圧入部と、を有するクリップであることを特徴とするものである。
【0014】
上記請求項3に記載された発明によれば、膨張チューブが膨張することにより、電線束の各所定位置に巻き付けられた複数のクリップの各バンド部が同時に破断する、即ち外れる、ので、電線束を容易にパネルから取り外すことができるとともにワイヤハーネスの解体作業に要する時間を短くすることができる。また、これらクリップがパネルの手の届き難い場所に取り付けられている場合でも、該クリップに直接手を触れずに容易にバンド部を電線束から外すことができる。
【0015】
請求項4に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記外装部材が、粘着テープと、前記複数の電線の外周に巻き付けられる帯状のバンド部と該バンド部を前記複数の電線の外周に巻き付いた状態に固定するバンド係止部とパネルに設けられた穴に圧入係止される圧入部とを有するクリップと、の双方で構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
上記請求項4に記載された発明によれば、膨張チューブが膨張することにより、電線束の各所定位置に巻き付けられた複数のクリップの各バンド部が同時に外れるので、電線束を容易にパネルから取り外すことができるとともにワイヤハーネスの解体作業に要する時間を短くすることができる。また、これらクリップがパネルの手の届き難い場所に取り付けられている場合でも、該クリップに直接手を触れずに容易にバンド部を電線束から外すことができる。さらに、膨張チューブが膨張することにより、前述したバンド部と共に粘着テープも外れるので、電線束をパネルから取り外すのと同時に電線束をばらすことができ、ワイヤハーネスの解体作業に要する時間をさらに短くすることができる。
【0017】
請求項5に記載された発明は、請求項3または請求項4に記載された発明において、前記バンド部に、幅と厚みとのうち少なくとも一方が他の部分よりも小さく形成されて、破断し易くなるように形成された破断部が設けられていることを特徴とするものである。
【0018】
上記請求項5に記載された発明によれば、破断部を設けることにより、破断部を設けない場合よりも小さい力でバンド部を破断させることができる。即ち、膨張チューブに注入される流体の量が少なくて済むことになる。本発明では、破断部の有無、及び、破断部の幅・厚み寸法を変更することにより、バンド部の強度、即ち切れ易さ、を調節することができる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載された発明によれば、複数の電線と、これら複数の電線を束ねる外装部材と、該外装部材により前記複数の電線と共に束ねられる伸縮自在な袋状に設けられた膨張チューブと、を有し、そして、前記複数の電線と前記膨張チューブとが前記外装部材により共に束ねられた状態で、前記膨張チューブ内に流体が注入されて該膨張チューブが膨張することにより、前記外装部材が破断することから、前記外装部材を容易に電線束から外すことができ、短時間で容易かつ安全にワイヤハーネスを解体することができる。
【0020】
請求項2に記載された発明によれば、前記外装部材が粘着テープであることから、この粘着テープを容易に電線束から外すことができ、短時間で容易かつ安全にワイヤハーネスを解体することができる。
【0021】
請求項3に記載された発明によれば、前記外装部材が、前記複数の電線の外周に巻き付けられる帯状のバンド部と、該バンド部を前記複数の電線の外周に巻き付いた状態に固定するバンド係止部と、パネルに設けられた穴に圧入係止される圧入部と、を有するクリップであることから、このクリップのバンド部を容易に電線束から外すことができ、電線束を容易にパネルから取り外すことができて、短時間で容易かつ安全にワイヤハーネスを解体することができる。また、クリップがパネルの手の届き難い場所に取り付けられている場合でも、該クリップに直接手を触れずに容易にバンド部を電線束から外すことができる。
【0022】
請求項4に記載された発明によれば、前記外装部材が、粘着テープと、前記複数の電線の外周に巻き付けられる帯状のバンド部と、該バンド部を前記複数の電線の外周に巻き付いた状態に固定するバンド係止部と、パネルに設けられた穴に圧入係止される圧入部と、を有するクリップと、の双方で構成されていることから、これら粘着テープ及びクリップのバンド部を容易に電線束から外すことができ、電線束を容易にパネルから取り外すことができて、短時間で容易かつ安全にワイヤハーネスを解体することができる。また、クリップがパネルの手の届き難い場所に取り付けられている場合でも、該クリップに直接手を触れずに容易にバンド部を電線束から外すことができる。
【0023】
請求項5に記載された発明によれば、前記バンド部に、幅と厚みとのうち少なくとも一方が他の部分よりも小さく形成されて、破断し易くなるように形成された破断部が設けられていることから、破断部を設けない場合よりも小さい力でバンド部を破断させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係るワイヤハーネスを図1ないし図4を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るワイヤハーネスを示す平面図である。図2は、図1に示されたワイヤハーネスをパネルから取り外す方法を説明する説明図である。図3は、図1に示されたワイヤハーネスの作用を説明する説明図であり、前記ワイヤハーネスを構成する膨張チューブに流体が注入されていない状態を示す図である。図4は、図1に示されたワイヤハーネスの作用を説明する説明図であり、図3に示された膨張チューブに流体が注入された状態を示す図である。
【0025】
図1に示す本発明のワイヤハーネス1Aは、自動車に配索されるとともに該自動車の車体を構成するパネルに取り付けられる。このワイヤハーネス1Aは、複数の電線と、これら電線の端部などに取り付けられたコネクタ3と、前記複数の電線を束ねた外装部材としての複数のクリップ6と、これらクリップ6により前記複数の電線と共に束ねられた伸縮自在な袋状に設けられた膨張チューブ5と、を有している。
【0026】
また、上記複数の電線は、外周に粘着テープ4が螺旋状に巻き付けられている。また、本発明では、複数の電線が、クリップ6または粘着テープ4等により1つに束ねられた状態のものを電線束と呼び、符号2を付す。また、前記電線1本1本は、導電性の芯線とこの芯線を被覆する絶縁性の被覆部とを有する被覆電線である。
【0027】
上記コネクタ3は、上記電線の芯線と電気的に接続される導電性の端子金具と、箱状に設けられて前記端子金具を収容する絶縁性のコネクタハウジングとを有している。このコネクタ3は、各種電子機器のコネクタにコネクタ結合される。
【0028】
上記クリップ6は、合成樹脂で構成され、図3及び図4に示すように、電線束2の外周に巻き付けられる帯状のバンド部61と、このバンド部61を電線束2の外周に巻き付いた状態に固定するバンド係止部62と、前記パネルに設けられた穴に圧入係止される圧入部63と、を有している。
【0029】
上記バンド部61は、長手方向の一端がバンド係止部62に固定され、他端が自由端となっている。また、このバンド係止部62の前記他端側の部分には、前記長手方向に沿って間隔をあけて複数設けられた穴、または、のこぎりの歯のような刻み目が形成されている。これら穴または刻み目は、電線束2の外周に巻き付く部分の長さ調節のために形成されている。
【0030】
上記バンド係止部62は、上記バンド部61の他端側の部分に設けられた上記穴または上記刻み目に係止することにより、バンド部61を電線束2の外周に巻き付いた状態に固定する。
【0031】
上記圧入部63は、弾性変形自在に設けられており、上記パネルに設けられた穴に押し込まれることにより、クリップ6、即ち電線束2、をパネルに取り付ける。
【0032】
上記膨張チューブ5は、ゴム等の伸縮自在な材料により、外形が線状・棒状に設けられ、内側が空洞に設けられた本体部50と、この本体部50の長手方向の一端に設けられた開口部に装着されたバルブ51と、で構成されている。即ち、この膨張チューブ5は、長手方向の一端に開口部が設けられた袋状に設けられており、前記開口部に装着されたバルブ51を介して本体部50内に流体が注入されることにより図2及び図4に示すように膨張する。また、バルブ51を介して本体部50内の流体が排出されることにより、膨張した状態からしぼんだ状態(図1及び図3を参照。)に戻る。
【0033】
また、上記膨張チューブ5に注入される流体として、空気などの気体、または、水などの液体を用いることができる。
【0034】
上述した構成のワイヤハーネス1Aを組み立てる際は、複数の電線の外周に粘着テープ4を螺旋状に巻き付けて電線束2を設け、続いてこの電線束2としぼんだ状態の膨張チューブ5を共に重ねてこれらの外周にクリップ6のバンド部61を巻き付ける。また、クリップ6は複数取り付けられる。こうしてワイヤハーネス1Aが組み立てられる。
【0035】
そして、上記のように組み立てられたワイヤハーネス1Aは、クリップ6の圧入部63をパネルの穴に押し込んで圧入係止させることにより、このパネルに取り付けられる。
【0036】
また、上述した構成の、パネルに固定されたワイヤハーネス1Aは、以下に示すようにパネルから取り外される。即ち、図2に示すように、バルブ51に流体供給装置7が装着され、このバルブ51を介して本体部50内に流体が注入される。このことにより本体部50が膨張していく。そして、本体部50が膨張していくことにより、バンド係止部62のバンド部61への係止が解除されて、このバンド部61が電線束2及び膨張チューブ5から外れる。この際、複数のクリップ6のバンド部61がほぼ同時に外れる。このようにバンド部61が外れることにより、電線束2及び膨張チューブ5即ちワイヤハーネス1Aがパネルから取り外される。
【0037】
また、本発明において、「外装部材が破断する」とは、クリップ6のように、帯状のバンド部61がバンド係止部62に係止されて輪状に設けられたものにおいては、(A)バンド係止部62のバンド部61への係止が解除されること、及び、(B)バンド部61の一部分がちぎれること、の双方を言う。
【0038】
また、図3及び図4に示す矢印Y1は、バンド係止部62のバンド部61に対して作用する係止力の方向と大きさを示している。また、図4に示す矢印Y2は、膨張チューブ5の本体部50の膨張による、バンド係止部62に対して作用する係止解除力の方向と大きさを示している。
【0039】
これら図3及び図4を用いて上述した事を説明すると、ワイヤハーネス1Aがパネルに取り付けられた状態では、図3に示すように、バンド係止部62のバンド部61に対して作用する係止力(矢印Y1)のみが生じている。そして、本体部50が膨張していくことにより、前記係止力(矢印Y1)を打ち消す力、即ち本体部50の膨張によるバンド係止部62に対して作用する係止解除力(矢印Y2)、が大きくなっていき、この係止解除力(Y2)が前記係止力(矢印Y1)を上回った時点でバンド係止部62のバンド部61への係止が解除されて、このバンド部61が電線束2及び膨張チューブ5から外れる。
【0040】
そして、パネルから取り外された電線束2は、粘着テープ4が取り外され、さらに細かく分解されて、リサイクルされる。
【0041】
本実施形態によれば、膨張チューブ5が膨張することにより電線束2に巻き付けられた複数のクリップ6が同時に外れるので、ワイヤハーネス1Aの解体作業に要する時間を短くすることができる。また、このワイヤハーネス1Aの解体作業は、作業員がクリップ6に直接手を触れることがなく力の要らない作業であるので、作業員の肉体的な負担を軽減することができるとともに、作業の安全を確保することができる。また、これらクリップ6がパネルの手の届き難い場所に取り付けられている場合でも、該クリップ6に直接手を触れずに容易にバンド部61を電線束2から外すことができる。
【0042】
さらに、本実施形態によれば、ワイヤハーネス1Aをパネルから取り外す作業が、複雑な構成の装置を必要としないので、ワイヤハーネス1Aの解体コストを低くすることができる。
【0043】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係るワイヤハーネスを図5及び図6を用いて説明する。図5は、本発明の第2の実施形態に係るワイヤハーネスを示す平面図である。図6は、図5に示されたワイヤハーネスをパネルから取り外す方法を説明する説明図である。また、これら図5及び図6において、前述した第1の実施形態と同一構成部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
図5に示すワイヤハーネス1Bは、第1の実施形態と同様に自動車に配索されるとともに該自動車の車体を構成するパネルに取り付けられる。このワイヤハーネス1Bは、複数の電線と、これら電線の端部などに取り付けられたコネクタ3と、前記複数の電線を束ねた外装部材としての複数のクリップ6’と、これらクリップ6’により前記複数の電線と共に束ねられた膨張チューブ5と、を有している。
【0045】
上記クリップ6’は、バンド部61と、バンド係止部62と、圧入部63と、を有している。そして、このバンド部61には、幅が他の部分よりも小さく形成されて、破断し易くなるように形成された破断部61aが設けられている。
【0046】
上述した構成の、パネルに固定されたワイヤハーネス1Bは、以下に示すようにパネルから取り外される。即ち、図6に示すように、バルブ51に流体供給装置7が装着されて本体部50内に流体が注入され、そして、本体部50が膨張することにより、バンド部61が破断部61aにおいて破断して、このバンド部61が電線束2及び膨張チューブ5から外れる。このようにバンド部61が外れることにより、電線束2及び膨張チューブ5即ちワイヤハーネス1Bがパネルから取り外される。
【0047】
上記構成のワイヤハーネス1Bによれば、破断部61aを設けることにより、破断部61aを設けない場合よりも小さい力でバンド部61を破断させることができる。即ち、膨張チューブ5に注入される流体の量が少なくて済むことになる。
【0048】
このように本発明では、破断部61aの有無、及び、破断部61aの幅・厚み寸法を変更することにより、バンド部61の強度、即ちちぎれ易さ、を調節することができる。
【0049】
また、上述した第2の実施形態では、バンド部61の一部分の幅を小さくすることにより破断部61aを設けていたが、本発明では、バンド部61の一部分の厚みを薄くすることにより破断部を設けても良い。
【0050】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係るワイヤハーネスを図7及び図8を用いて説明する。図7は、本発明の第3の実施形態に係るワイヤハーネスを示す平面図である。図8は、図7に示されたワイヤハーネスをパネルから取り外す方法を説明する説明図である。また、これら図7及び図8において、前述した第1,2の実施形態と同一構成部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
図7に示すワイヤハーネス1Cは、第1,2の実施形態と同様に自動車に配索されるとともに該自動車の車体を構成するパネルに取り付けられる。このワイヤハーネス1Cは、複数の電線と、これら電線の端部などに取り付けられたコネクタ3と、前記複数の電線を束ねた外装部材としての粘着テープ4と、同じく前記複数の電線を束ねた外装部材としての複数のクリップ6と、これら粘着テープ4とクリップ6とにより前記複数の電線と共に束ねられた膨張チューブ5と、を有している。
【0052】
上述した構成のワイヤハーネス1Cを組み立てる際は、複数の電線としぼんだ状態の膨張チューブ5とを合わせたものの外周に粘着テープ4を巻き付けて電線束2を設け、続いてこの膨張チューブ5を含んだ電線束2の外周にクリップ6のバンド部61を巻き付ける。また、クリップ6は複数取り付けられる。こうしてワイヤハーネス1Cが組み立てられる。
【0053】
また、上述した構成の、パネルに固定されたワイヤハーネス1Cは、以下に示すようにパネルから取り外される。即ち、図8に示すように、バルブ51に流体供給装置7が装着されて本体部50内に流体が注入され、本体部50が膨張していくことにより、バンド係止部62のバンド部61への係止が解除されるとともに粘着テープ4が裂けて、これらバンド部61と粘着テープ4とが複数の電線及び膨張チューブ5から外れる。このようにバンド部61と粘着テープ4とが外れることにより、複数の電線及び膨張チューブ5即ちワイヤハーネス1Cがパネルから取り外されるとともに、電線束2がばらばらにばらされる。
【0054】
このように本発明では、複数の電線と膨張チューブ5とを共に束ねる外装部材が、粘着テープ4とクリップ6との双方で構成されていても良く、クリップ6のみ、または、粘着テープ4のみであっても良い。また、この粘着テープ4は、複数の電線と膨張チューブ5とを単に束ねるだけのものであっても良いが、複数の電線と膨張チューブ5とを束ねるとともにこの電線束2にパネルへの係止部材(不図示)を取り付けるものであっても良い。さらに、複数の電線と膨張チューブ5とを束ねるとともにこの電線束2をパネルに取り付けるものであっても良い。
【0055】
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態に係るワイヤハーネスを図9及び図10を用いて説明する。図9は、本発明の第4の実施形態に係るワイヤハーネスを示す平面図である。図10は、図9に示されたワイヤハーネスをパネルから取り外す方法を説明する説明図である。また、これら図9及び図10において、前述した第1〜3の実施形態と同一構成部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
図9に示すワイヤハーネス1Dは、第1〜3の実施形態と同様に自動車に配索されるとともに該自動車の車体を構成するパネルに取り付けられる。このワイヤハーネス1Dは、複数の電線と、これら電線の端部などに取り付けられたコネクタ3と、前記複数の電線を束ねた外装部材としての粘着テープ4と、同じく前記複数の電線を束ねた外装部材としての複数のクリップ6’と、これら粘着テープ4とクリップ6’とにより前記複数の電線と共に束ねられた膨張チューブ5と、を有している。
【0057】
上記構成のワイヤハーネス1Dは、前述した第3の実施形態と同様に組み立てられる。また、パネルに固定されたワイヤハーネス1Dは、以下に示すようにパネルから取り外される。即ち、図10に示すように、バルブ51に流体供給装置7が装着されて本体部50内に流体が注入され、本体部50が膨張していくことにより、バンド部61が破断部61aにおいて破断するとともに粘着テープ4が裂けて、これらバンド部61と粘着テープ4とが複数の電線及び膨張チューブ5から外れる。このようにバンド部61と粘着テープ4とが外れることにより、複数の電線及び膨張チューブ5即ちワイヤハーネス1Dがパネルから取り外されるとともに、電線束2がばらばらにばらされる。
【0058】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るワイヤハーネスを示す平面図である。
【図2】図1に示されたワイヤハーネスをパネルから取り外す方法を説明する説明図である。
【図3】図1に示されたワイヤハーネスの作用を説明する説明図であり、前記ワイヤハーネスを構成する膨張チューブに流体が注入されていない状態を示す図である。
【図4】図1に示されたワイヤハーネスの作用を説明する説明図であり、図3に示された膨張チューブに流体が注入された状態を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るワイヤハーネスを示す平面図である。
【図6】図5に示されたワイヤハーネスをパネルから取り外す方法を説明する説明図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るワイヤハーネスを示す平面図である。
【図8】図7に示されたワイヤハーネスをパネルから取り外す方法を説明する説明図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係るワイヤハーネスを示す平面図である。
【図10】図9に示されたワイヤハーネスをパネルから取り外す方法を説明する説明図である。
【図11】従来のワイヤハーネスを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
1A,1B,1C,1D ワイヤハーネス
4 粘着テープ(外装部材)
5 膨張チューブ
6,6’ クリップ(外装部材)
61 バンド部
61a 破断部
62 バンド係止部
63 圧入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線と、これら複数の電線を束ねる外装部材と、該外装部材により前記複数の電線と共に束ねられる伸縮自在な袋状に設けられた膨張チューブと、を有し、そして、
前記複数の電線と前記膨張チューブとが前記外装部材により共に束ねられた状態で、前記膨張チューブ内に流体が注入されて該膨張チューブが膨張することにより、前記外装部材が破断する
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記外装部材が粘着テープであることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記外装部材が、前記複数の電線の外周に巻き付けられる帯状のバンド部と、該バンド部を前記複数の電線の外周に巻き付いた状態に固定するバンド係止部と、パネルに設けられた穴に圧入係止される圧入部と、を有するクリップである
ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記外装部材が、
粘着テープと、
前記複数の電線の外周に巻き付けられる帯状のバンド部と、該バンド部を前記複数の電線の外周に巻き付いた状態に固定するバンド係止部と、パネルに設けられた穴に圧入係止される圧入部と、を有するクリップと、
の双方で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記バンド部に、幅と厚みとのうち少なくとも一方が他の部分よりも小さく形成されて、破断し易くなるように形成された破断部が設けられている
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載のワイヤハーネス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−129734(P2009−129734A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304226(P2007−304226)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】