説明

ワイヤハーネス

【課題】パネルの取付孔に係止可能に形成されると共にチューブに係合可能に形成された配線用クリップが、電線に一体成形されたワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス1は、パネルの取付孔に係止される配線用クリップ2が電線3に一体成形されている。前記配線用クリップ2は、板状に形成された本体部5と、前記本体部5の一方の面に立設され前記電線3の軸方向に延長され当該電線3の外表面を覆う突出部6と、前記本体部5の他方の面に立設され前記パネルの前記取付孔に係止される係止部7と、を備え、かつ、前記本体部5の一方の面から突出されると共に前記電線3の軸方向に略直交する方向に延長され当該電線3を収容したチューブ30の外周面に係合する突条10と、前記突出部6の両側面のそれぞれから膨出されると共に前記電線3の軸方向に略平行する方向に延長され当該電線3を収容した前記チューブ30の内周面に係合する係合部14,14が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルの取付孔に係止可能に形成されると共にチューブに係合可能に形成された配線用クリップが、電線に一体成形されたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等には、種々の電子機器と電装品とが搭載されている。これらの電子機器と電装品とにバッテリなどの電源等からの電力や制御装置等からの制御信号などを伝達する手段として、ワイヤハーネスが用いられている。ワイヤハーネスは、配線用クリップ等によって、自動車等の車体を構成するパネルに取り付けられ、所要の配索形態で配索されている。
【0003】
ワイヤハーネスを構成する電線に、配線用クリップが電線に一体成形されたワイヤハーネスが種々提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照)。特許文献1〜特許文献3に記載のワイヤハーネスおよび一般的なワイヤハーネスは、前記電線を保護するコルゲートチューブ等のチューブが設けられ、前記パネルに配索される(例えば、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−315164号公報
【特許文献2】特開2005−26178号公報
【特許文献3】特開2006−14569号公報
【特許文献4】特開2009−183013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したワイヤハーネスは、コルゲートチューブが、ワイヤハーネス用テープやバンドクリップ等によって前記ワイヤハーネスに仮留めされた後、位置合わせを行い、本留めされているため、作業員がワイヤハーネス用テープやバンドクリップ等によってコルゲートチューブをワイヤハーネスに仮留めする工程と、仮留めされたコルゲートチューブを作業員が位置合わせする工程と、位置合わせされたコルゲートチューブを作業員がワイヤハーネス用テープで捲回したりバンドクリップで結束したりして本留めする工程と、が必要であり、ワイヤハーネスを製造する所要時間が長時間化する。
【0006】
さらに、ワイヤハーネスに仮留めされたコルゲートチューブを移動させて位置合わせする際には、捲回されたワイヤハーネス用テープを解いてから捲回しなおしたり、バンドクリップのバンドを弛緩したり、手間がかかるため、作業員への負担が大きい。
【0007】
本発明は、パネルの取付孔に係止可能に形成されると共にチューブに係合可能に形成された配線用クリップが、電線に一体成形されたワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、パネルの取付孔に係止される配線用クリップが電線に一体成形されたワイヤハーネスにおいて、前記配線用クリップは、板状に形成された本体部と、前記本体部の一方の面に立設され前記電線の軸方向に延長され当該電線の外表面を覆う突出部と、前記本体部の他方の面に立設され前記パネルの前記取付孔に係止される係止部と、を備え、かつ、前記本体部の一方の面から突出されると共に前記電線の軸方向に略直交する方向に延長され当該電線を収容したチューブの外周面に係合する突条と、前記突出部の両側面のそれぞれから膨出されると共に前記電線の軸方向に略平行する方向に延長され当該電線を収容した前記チューブの内周面に係合する係合部と、が設けられていることを特徴とするワイヤハーネスである。
【0009】
請求項2に記載された発明は、前記本体部には、当該本体部が前記電線の軸方向に延長された延長部が設けられ、かつ、前記延長部には、当該延長部の一方の面から突出されると共に前記電線の軸方向に略直交する方向に延長され当該電線を収容した前記チューブの外周面に係合する第2突条が設けられていることを特徴とする請求項1に請求のワイヤハーネスである。
【0010】
請求項3に記載された発明は、前記係合部には、当該係合部から突出されると共に前記電線の軸方向に略直交する方向に延長され当該電線を収容した前記チューブの内周面に係合する第3突条が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネスである。
【0011】
請求項4に記載された発明は、前記本体部には、当該本体部が前記電線の軸方向に延長された延長部が設けられ、前記延長部には、当該延長部の一方の面から突出されると共に前記電線の軸方向に略直交する方向に延長され当該電線を収容した前記チューブの外周面に係合する第2突条が設けられ、かつ、前記係合部には、当該係合部から突出されると共に前記電線の軸方向に略直交する方向に延長され当該電線を収容した前記チューブの内周面に係合する第3突条が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネスである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載された発明によれば、ワイヤハーネスは、配線用クリップの本体部の一方の面に設けられた突条がチューブの外周面に係合すると共に、前記配線用クリップの本体部の一方の面に立設された突出部の係合部が前記チューブの内周面に係合するため、前記配線用クリップに前記チューブが容易に直接取り付けられる。
【0013】
従って、ワイヤハーネスは、ワイヤハーネス用テープ等でチューブと配線用クリップとを捲回して仮留めする作業や、バンドクリップ等でチューブと配線用クリップとを結束して仮留めする作業などが不要となるため、チューブの仮留めにかかる所要時間が短縮される。
【0014】
そして、ワイヤハーネスは、ワイヤハーネス用テープやバンドクリップ等でチューブが仮留めされないため、前記チューブが配線用クリップに仮留めされた状態において、当該チューブを容易に移動することができる。従って、配線用クリップの位置合わせが容易に行える。
【0015】
請求項2に記載された発明によれば、ワイヤハーネスは、配線用クリップの本体部の一方の面に立設された突出部の係合部がチューブの内周面に係合し、前記本体部の一方の面に設けられた突条が前記チューブの外周面に係合し、かつ、前記本体部が延長された延長部に設けられた第2突条が前記チューブの外周面に係合するため、前記チューブと前記配線用クリップとの係合がより確実になされる。
【0016】
請求項3に記載された発明によれば、ワイヤハーネスは、配線用クリップの本体部の一方の面に立設された突出部の係合部がチューブの内周面に係合し、前記突出部に設けられた第3突条が前記チューブの内周面に係合し、かつ、前記本体部の一方の面に設けられた突条が前記チューブの外周面に係合するため、前記チューブと前記配線クリップとの係合が確実になされる。
【0017】
請求項4に記載された発明によれば、ワイヤハーネスは、配線用クリップの本体部の一方の面に立設された突出部の係合部がチューブの内周面に係合し、前記突出部に設けられた第3突条が前記チューブの内周面に係合し、前記本体部の一方の面に設けられた突条が前記チューブの外周面に係合し、かつ、前記本体部が延長された延長部に設けられた第2突条が前記チューブの外周面に係合するため、前記チューブと前記配線用クリップとの係合がより確実に十分になされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるワイヤハーネスの斜視図である。
【図2】図1に示すワイヤハーネスの配線用クリップの斜視図である。
【図3】図2に示す配線用クリップの側面図である。
【図4】図2に示す配線用クリップの正面図である。
【図5】図2に示す配線用クリップの平面図である。
【図6】図1に示すワイヤハーネスの配線用クリップを成形する金型の要部断面図である。
【図7】図6に示す金型の下型の斜視図である。
【図8】図1に示すワイヤハーネスにコルゲートチューブが取り付けられた状態の斜視図である。
【図9】図8に示すワイヤハーネスにコルゲートチューブが取り付けられた状態の側面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態にかかるワイヤハーネスの配線用クリップの斜視図である。
【図11】図10に示す配線用クリップの背面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態にかかるワイヤハーネスの斜視図である。
【図13】図12に示すワイヤハーネスの配線用クリップの側面図である。
【図14】図12に示すワイヤハーネスにコルゲートチューブが取り付けられた状態の斜視図である。
【図15】図12に示すワイヤハーネスにコルゲートチューブが取り付けられた状態の側面図である。
【図16】本発明の第4の実施形態にかかるワイヤハーネスの配線用クリップの斜視図である。
【図17】本発明の第5の実施形態にかかるワイヤハーネスの配線用クリップの斜視図である。
【図18】図17に示す配線用クリップの側面図である。
【図19】図17に示す配線用クリップの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図1〜図19を参照して説明する。
【0020】
本発明の第1の実施形態にかかるワイヤハーネス1は、図1に示すように、パネルの取付孔に係止される配線用クリップ2と、電線3とを備えている。ワイヤハーネス1は、前記電線3に配線用クリップ2が一体成形されて形成されている。
【0021】
配線用クリップ2は、図2および図3に示すように、薄板状に形成された本体部5と、前記本体部5の一方の面に突設された突出部6と、前記パネルの前記取付孔に係止される係止部7と、を備えている。配線用クリップ2は、ポリプロピレン樹脂などの可撓性を有する合成樹脂から構成されている。
【0022】
電線3は、導電性の芯線と、絶縁性の被覆部とを備えている。芯線は、複数本の導線が撚られて形成されている。導線は、導電性の金属からなる。被覆部は、前記芯線を被覆しており、ポリ塩化ビニル樹脂などの合成樹脂からなる。このため、電線3の外表面は、前記被覆部の外表面となっている。なお、芯線は、一本の導線から構成されても良い。
【0023】
本体部5は、当該本体部5の一方の面に立設され、前記電線3の軸方向に直交する方向に延長された突条10が設けられている。突条10は、前記突出部6を挟んで両側にそれぞれ3個設けられている。突条10は、前記電線3の軸方向に等間隔で複数個設けられている。なお、突条10は、後述するコルゲートチューブ30(図8および図9に示す)の凹部33に係合する間隔で配置されていれば良いため、等間隔でなくとも良い。
【0024】
コルゲートチューブ30は、図8および図9に示すように、凹部33と凸部34とが繰り返し形成され、外周面に前記コルゲートチューブ30の長手方向に平行に形成されたスリット31が形成されている。コルゲートチューブ30は、ポリプロピレン樹脂などの可撓性を有する合成樹脂で構成されている。
【0025】
突出部6は、前記本体部5の一方の面に立設された柱状部13と、前記柱状部13の先端に設けられると共に前記電線3の外表面に一体成形される覆い部12と、前記柱状部13の両側面のそれぞれから膨出され前記電線3の軸方向に延長されて形成された係合部14,14と、を備えている。
【0026】
柱状部13は、前記電線3の軸方向に延長されて形成されている。覆い部12は、前記電線3の軸方向に延長された円筒形状に形成されている。係合部14,14は、前記電線3の軸方向に延長されると共に他方の面が前記コルゲートチューブ30の内周面の形状に沿って円弧状に形成されている。
【0027】
係止部7は、前記本体部5の他方の面に立設された柱状部18,18と、前記柱状部18,18の先端から前記本体部5の他方の面に向かって延長された係止片19,19と、前記本体部5の他方の面から下方に向かって次第に拡開された押圧部21と、を備えている。
【0028】
係止片19,19は、前記本体部5の他方の面に向かうに従って徐々に互いに離間するように傾斜して形成されている。係止片19,19は、揺動可能に形成され、前記係止片19,19の揺動方向が、前記電線3の軸方向に平行する方向に形成されている。係止片19,19は、当該係止片19,19のそれぞれの自由端が、前記パネルの前記取付孔の周縁部に係止可能に形成されている。
【0029】
押圧部21は、前記本体部5の他方の面の中央部に設けられている。押圧部21は、当該押圧部21の縁端部が、前記取付孔の外径よりも大径に形成されている。押圧部21は、前記係止片19,19が前記取付孔に係止された際に、前記パネルの表面を押圧するように形成されている。
【0030】
上述の如く構成されたワイヤハーネス1は、図6に示すように、金型40内で、射出成形によって、前記電線3に配線用クリップ2が一体成形されて形成される。
【0031】
金型40は、水平割金型であって、上型41と下型42とから構成されている。上型41と下型42とには、それぞれ、前記電線3の外形に沿って形成された線条キャビティ44と、前記配線用クリップ2の外形に沿って形成された配線用クリップキャビティ43と、が設けられている。
【0032】
下型42には、図7に示すように、線条キャビティ44と配線用クリップキャビティ43とがそれぞれ上向きに形成されている。線条キャビティ44上は、前記金型40の両端から前記電線3を外部に導出させる導出口45,46が、上型41と下型42とにそれぞれ設けられている。
配線用クリップキャビティ43は、図示しない射出成形機から射出された溶融樹脂を案内するランナが連通している。なお、金型40は、垂直割金型であっても良い。
【0033】
なお、金型40は、線条キャビティ44上に複数の配線用クリップキャビティ43を設けても良い。この場合の金型40は、複数個の配線用クリップキャビティ43が、ワイヤハーネス1が前記パネルに取り付けられる時に、複数個の配線用クリップ2が前記パネルの取付孔に係止可能となる位置に配置される。即ち、複数個の配線用クリップ2は、電線3に対する相対的な位置が前記パネルの前記取付孔に係止可能となる位置に設けられている。
【0034】
本発明でいう、複数個のクリップ2が、電線3に対する相対的な位置がパネルの取付孔に係止可能となる位置に設けられているとは、線条キャビティ44に対してワイヤハーネス1の設計時の相対的な位置に保たれた配線用クリップキャビティ43内に溶融樹脂を射出成形して得られたワイヤハーネス1において、複数個の配線用クリップ2の電線3に対する相対的な位置が、射出成形時に生じる誤差を除くと、設計時に定められた位置となっていることをいう。
【0035】
前述の金型40によって成形されたワイヤハーネス1は、図8および図9に示すように、チューブ30のスリット31を配線用クリップ2の突出部6に押圧し、前記スリット31を拡開させて前記突出部6に前記チューブ30が取り付けられる。このとき、前記スリット31に電線3が挿通され、前記チューブ30内に前記電線3が収容されると共に、前記突出部6に取り付けられた前記チューブ30は、前記突出部6の両側面に設けられたそれぞれの係合部14,14が前記チューブ30の内周面に係合し、前記本体部6の一方の面に設けられた突条10が前記チューブ33の外周面の凹部33に係合する。
【0036】
次いで、前記チューブ30を電線3の軸方向の前後に移動させ、当該チューブ30の位置合わせがなされる。この時、前記チューブ30の凸部34が前記突条10を順次乗り越えることで当該チューブ30の移動がなされる。このため、前記チューブ30の隣接する凹部33同士の間隔の幅で細かく位置合わせが行えるため、前記チューブ30の取付精度が向上する。
【0037】
次いで、ワイヤハーネス用テープ等によって、前記配線用クリップ2上に位置合わせされた前記チューブ30の一端側と当該配線用クリップ2とを捲回して、前記チューブ30を前記配線用クリップ2に固定する。
【0038】
次いで、前記チューブ30が固定されたワイヤハーネス1を、前記パネルに取り付ける。前記パネルの取付孔に前記ワイヤハーネス1の配線用クリップ2の係止部7が侵入すると、係止片19,19のそれぞれの自由端が互いに近接する方向に弾性変形される。
【0039】
そして、前記係止片19,19が前記取付孔を挿通すると、前記係止片19,19のそれぞれの自由端が弾性回復力によって、互いに離間する方向に変位され、前記それぞれの自由端が前記取付孔の周縁部に係止する。この時、本体部10の他方の面に設けられた押圧部21が前記パネルの表面を押圧するため、前記係止部7と前記取付片との係止が確実になされ、ワイヤハーネス1が前記パネルに所要の配索形態で固定される。
【0040】
上述の第1の実施形態にかかるワイヤハーネス1は、パネルの取付孔に係止される配線用クリップ2が電線3に一体成形されている。前記配線用クリップ2は、板状に形成された本体部5と、前記本体部5の一方の面に立設され前記電線3の軸方向に延長され当該電線3の外表面を覆う突出部6と、前記本体部5の他方の面に立設され前記パネルの前記取付孔に係止される係止部7と、を備え、かつ、前記本体部5の一方の面から突出されると共に前記電線3の軸方向に略直交する方向に延長され当該電線3を収容したチューブ30の外周面に係合する突条10と、前記突出部6の両側面のそれぞれから膨出されると共に前記電線3の軸方向に略平行する方向に延長され当該電線3を収容した前記チューブ30の内周面に係合する係合部14,14と、が設けられている。
【0041】
このため、ワイヤハーネス1は、配線用クリップ2の突出部6に設けられた係合部14,14がチューブ30の内周面に係合すると共に、前記配線用クリップ2の本体部5の一方の面に設けられた突条10が前記チューブ30の外周面に係合するため、前記配線用クリップ2に前記チューブ30を直接取り付けることができる。
【0042】
従って、ワイヤハーネス1は、ワイヤハーネス用テープで捲回して仮留めしたり、バンドクリップで結束して借り留めしたりする必要がないため、前記チューブ30の位置合わせが容易に行える。
【0043】
(第2の実施形態)
次に、本発明にかかるワイヤハーネスの第2の実施形態について、図10および図11を参照して説明する。なお、前述した実施形態と同一部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0044】
ワイヤハーネス1Aは、配線用クリップ2Aと電線3とを備え、前記電線3に前記配線用クリップ2Aが一体成形されて形成されている。配線用クリップ2Aは、板状に形成された本体部5と、前記本体部5の一方の面に突出された突出部6Aと、前記本体部5の他方の面に立設された係止部7と、を備えている。
【0045】
突出部6Aは、前記本体部5の一方の面に立設された柱状部13と、前記柱状部13の先端に設けられると共に前記電線3の外表面の一部を覆う覆い部12Aと、前記柱状部13の両側面にそれぞれ膨出された係合部14,14と、を備えている。
【0046】
覆い部12Aは、当該覆い部12Aの全長に亘って前記電線3の外表面が露出されるスリット12aと、前記覆い部12Aの中央部に前記スリット12Aに連通する開口部12bと、が形成されている。このため、覆い部12Aは、前記電線3を上方に強く引っ張ると、前記スリット12aが拡開して、前記電線3が前記覆い部12Aから取り外されるように形成されている。
【0047】
上述の第2の実施形態にかかるワイヤハーネス1Aは、前述の第1の実施形態にかかるワイヤハーネス1の構成に加え、突出部6Aの覆い部12Aにスリット12aと開口部12bとが設けられている。このため、刃物や工具等を使用せずに電線3と配線用クリップ2Aとを分離できる。
【0048】
(第3の実施形態)
次に、本発明にかかるワイヤハーネスの第3の実施形態について、図12〜図15を参照して説明する。なお、前述した実施形態と同一部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
ワイヤハーネス1Bは、図12に示すように、配線用クリップ2Bと電線3とを備え、前記電線3に前記配線用クリップ2Bが一体成形されて形成されている。配線用クリップ2Bは、薄板状に形成された本体部5Bと、前記本体部5Bの一方の面に突出された突出部6と、前記本体部5Bの他方の面に立設された係止部7と、を備えている。
【0050】
本体部5Bは、図13に示すように、当該本体部5Bの一方の面が前記電線3の軸方向に延長された延長部8が設けられている。延長部8には、当該延長部8の一方の面に立設されると共に前記電線3の軸方向に直交する方向に延長された第2突条11が設けられている。第2突条11は、前記電線3の軸方向に等間隔かつ前記コルゲートチューブ30の凹部33に係合する間隔で設けられている。第2突条11は、前記本体部5Bの一方の面に設けられた突条10よりも突出量が大きく形成されている。このため、第2突条11は、図14および図15に示すように、コルゲートチューブ30の凹部33内に前記突条10よりも大きく入り込んで、当該凹部33と係合する。
【0051】
上述の第3の実施形態にかかるワイヤハーネス1Bは、前述の第1の実施形態にかかるワイヤハーネス1の構成に加え、前記本体部5Bには、当該本体部5Bが前記電線3の軸方向に延長された延長部8が設けられ、かつ、前記延長部8には、当該延長部8の一方の面から突出されると共に前記電線3の軸方向に略直交する方向に延長され当該電線3を収容した前記チューブ30の外周面に係合する第2突条11が設けられている。
【0052】
このため、ワイヤハーネス1Bは、配線用クリップ2Bの突出部6に設けられた係合部14,14がチューブ30の内周面に係合すると共に、前記配線用クリップ2Bの本体部5Bの一方の面に設けられた突条10が前記チューブ30の外周面の凹部33と係合し、延長部8の一方の面に設けられた第2突条11が前記チューブ30の外周面の凹部33と、に係合する。従って、ワイヤハーネス1Bは、前記チューブ30と前記配線用クリップ2Bとの係合がより確実になされる。
【0053】
また、ワイヤハーネス1Bは、前記コルゲートチューブ30の前記配線用クリップ2Bの延長部8側を上方に引き上げることで、前記延長部8の第2突条11と前記コルゲートチューブ30との係合が解除される。このため、前記コルゲートチューブ30の位置合わせの際には、当該コルゲートチューブ30が前記配線用クリップ2Bに対して比較的容易に移動される。
【0054】
(第4の実施形態)
次に、本発明にかかるワイヤハーネスの第4の実施形態について、図16を参照して説明する。なお、前述した実施形態と同一部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
ワイヤハーネス1Cは、薄板状に形成された本体部5Bと、前記本体部5Bの一方の面に突出された突出部6Aと、前記本体部5Bの他方の面に立設された係止部7と、を備えている。本体部5Bは、当該本体部5Bの一方の面が前記電線3の軸方向に延長された延長部8が設けられている。突出部6Aは、覆い部12Aに、スリット12aと開口部12bとが設けられている。
【0056】
上述の第4の実施形態にかかるワイヤハーネス1Cは、前述の第3の実施形態にかかるワイヤハーネス1Bの構成に加え、突出部6Aの覆い部12Aにスリット12aと開口部12bとが設けられている。
【0057】
このため、電線3と配線用クリップ2Cとを分離する必要がある場合に、刃物や工具等を使用せずに前記電線3と前記配線用クリップ2Cとを分離できる。
【0058】
(第5の実施形態)
次に、本発明にかかるワイヤハーネスの第5の実施形態について、図17〜図19を参照して説明する。なお、前述した実施形態と同一部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
ワイヤハーネス1Dは、図17に示すように、配線用クリップ2Dと電線3とを備え、前記電線3に前記配線用クリップ2Dが一体成形されて形成されている。配線用クリップ2Dは、図18に示すように、薄板状に形成された本体部5Bと、前記本体部5Bの一方の面に突出された突出部6Dと、前記本体部5Bの他方の面に立設された係止部7と、を備えている。
【0060】
突出部6Dは、図18に示すように、前記本体部5Bに立設された柱状部13と、前記柱状部13の先端に設けられると共に前記電線3を覆う覆い部12と、前記柱状部の両側面からそれぞれ膨出された係合部14D,14Dと、を備えている。
【0061】
係合部14D,14Dは、それぞれ、図19に示すように、当該係合部14D,14Dの他方の面が、前記コルゲートチューブ30の凹部33の内周面に沿って円弧状に形成されている。係合部14D,14Dには、それぞれ、前記他方の面の円弧形状に沿って、前記コルゲートチューブ30の凸部34の内周面側に係合する複数の第3突条15が設けられている。複数の突条15は、図18に示すように、前記電線3の軸方向に直交する方向に延長されて形成されている。複数の第3突条15は、前記電線3の軸方向に、前記コルゲートチューブ30の凸部34の内周面側と係合する間隔で設けられている。
【0062】
上述の第5の実施形態にかかるワイヤハーネス1Dは、前述の第3の実施形態にかかるワイヤハーネス1Bの構成に加え、係合部14D,14Dには、前記電線3の軸方向に略直交され前記チューブ30の内周面に係合される第3突条15が設けられている。
【0063】
このため、ワイヤハーネス1Dは、配線用クリップ2Dの突出部6Dに設けられた係合部14D,14Dと、当該係合部14D,14Dに設けられた第3突条15とがコルゲートチューブ30の内周面に係合すると共に、前記配線用クリップ2Dの本体部5Bの一方の面に設けられた突条10が前記コルゲートチューブ30の外周面に係合し、かつ、前記延長部8の一方の面に設けられた第2突条11が前記コルゲートチューブ30の外周面に係合するため、前記コルゲートチューブ30と前記配線用クリップ2Dとの係合がより確実に十分になされる。
【0064】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 ワイヤハーネス
2 配線用クリップ
3 電線
5 本体部
6 突出部
7 係止部
8 延長部
10,11 突条
14 係合部
15 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルの取付孔に係止される配線用クリップが電線に一体成形されたワイヤハーネスにおいて、
前記配線用クリップは、板状に形成された本体部と、前記本体部の一方の面に立設され前記電線の軸方向に延長され当該電線の外表面を覆う突出部と、前記本体部の他方の面に立設され前記パネルの前記取付孔に係止される係止部と、を備え、かつ、
前記本体部の一方の面から突出されると共に前記電線の軸方向に略直交する方向に延長され当該電線を収容したチューブの外周面に係合する突条と、前記突出部の両側面のそれぞれから膨出されると共に前記電線の軸方向に略平行する方向に延長され当該電線を収容した前記チューブの内周面に係合する係合部と、が設けられていることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記本体部には、当該本体部が前記電線の軸方向に延長された延長部が設けられ、かつ、
前記延長部には、当該延長部の一方の面から突出されると共に前記電線の軸方向に略直交する方向に延長され当該電線を収容した前記チューブの外周面に係合する第2突条が設けられていることを特徴とする請求項1に請求のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記係合部には、当該係合部から突出されると共に前記電線の軸方向に略直交する方向に延長され当該電線を収容した前記チューブの内周面に係合する第3突条が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記本体部には、当該本体部が前記電線の軸方向に延長された延長部が設けられ、
前記延長部には、当該延長部の一方の面から突出されると共に前記電線の軸方向に略直交する方向に延長され当該電線を収容した前記チューブの外周面に係合する第2突条が設けられ、かつ、
前記係合部には、当該係合部から突出されると共に前記電線の軸方向に略直交する方向に延長され当該電線を収容した前記チューブの内周面に係合する第3突条が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−217296(P2012−217296A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82011(P2011−82011)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】