説明

ワイヤボンディング方法

【課題】既存のワイヤボンディング装置を何ら改造することなくボールレスボンディングが図れると共に、ボンディングの接合性の向上が図れる。
【解決手段】テール部11をキャピラリ6の先端部より僅かに突出した長さに形成する。第1ボンディング工程は、テール部11を第1ボンド点にボンディングして下部第1ボンディング部20を形成し、この下部第1ボンディング部20上にワイヤ10を重ねて接続して中間第1ボンディング部22を形成し、更に中間第1ボンディング部22上にワイヤ10を重ねて接続して上部第1ボンディング部24を形成する。第2ボンディング工程は、ワイヤ10を第2ボンド点にボンディングして下部第2ボンディング部30を形成し、この下部第2ボンディング部30上に再度ワイヤ10を重ねて接続して上部第1ボンディング部32を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤボンディング方法に係り、特に低ループ化に好適なワイヤボンディング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第1ボンド点にボールをボンディングするボールボンディング方法は、ワイヤ径の約3〜4倍のボールを潰して接合させるため、多くの面積を必要とし、ファインピッチ化の要望に応えることができない。またボールのネック部は再結晶領域となっており、硬くて脆いため、ワイヤループは、再結晶領域部分より上の部分から折り曲げる必要がある。このため、低ループ化の要望に応えることができない。
【0003】
この改善策としての、第1ボンド点にワイヤ自体をボンディングするボールレスボンディング方法は、ボールを形成しないのでファインピッチ化及び低ループ化に好適である。この種のワイヤボンディング方法として、例えば特許文献1及び2が挙げられる。
【特許文献1】特開平7−147296号公報
【特許文献2】特開2002−64117号公報
【0004】
特許文献1は、キャピラリより突出したワイヤ先端部の近傍にワイヤ屈曲用ロッドが配設されている。第1ボンド点にワイヤをボンディングする前にワイヤ屈曲用ロッドが移動してワイヤ先端部をキャピラリの下面に折り曲げる。
【0005】
特許文献2は、キャピラリのワイヤ供給孔を取り巻くように複数個の電磁石又は放射状に配置された複数の吸引孔からなる吸引保持手段を設けている。この吸引保持手段に電源又は負圧発生手段の出力が切り換え手段によって吸引する方向が変えられるようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2は、従来のワイヤボンディング装置にワイヤ屈曲用ロッド又は吸引保持手段を設ける必要がある。また単にワイヤを1回ボンディングするのみであるので、接合性に問題があった。
【0007】
また特許文献1は、ワイヤ先端部をワイヤ屈曲用ロッドで強制的に折り曲げるので、折り曲げのミスは生じなく信頼性を有するが、ワイヤ屈曲用ロッドの移動する方向によってワイヤ先端部の曲がる向きが決まってしまう。即ち、ボンディング面に押し付けられるワイヤの横たわる向きが決まる。このため、ワイヤボンディングできる向きが制限され、異なる向きにワイヤボンディングするには、ワークを回転させる必要がある。
【0008】
特許文献2は、ワイヤ先端部を任意の方向(実施例は4方向)に電磁石又は吸引孔による吸引保持手段で折り曲げるものであるが、キャピラリの下端にほぼ垂直に伸びた直径約20〜50μmのワイヤを前記した間接的な手段で折り曲げるのは、折り曲げの信頼性が低い。また電磁石による場合には、ワイヤの材質は、磁性材である必要があり、通常使用されているアルミニウム、金、銅等はそのままでは使用できない。
【0009】
本発明の課題は、既存のワイヤボンディング装置を何ら改造することなくボールレスボンディングが図れると共に、ボンディングの接合性の向上が図れるワイヤボンディング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の請求項1は、第1ボンド点に第1ボンディングを行った後、第2ボンド点に第2ボンディングを行い、第1ボンド点と第2ボンド点間をワイヤで接続するワイヤボンディング方法において、
前記第2ボンディング工程におけるワイヤ切断工程によって形成されるテール部を、キャピラリの先端部より僅かに突出した長さに形成し、
前記第1ボンディング工程は、前記テール部を第1ボンド点にボンディングして下部第1ボンディング部を形成する工程と、キャピラリを上昇及び前記下部第1ボンディング部の上方に移動させ、その後キャピラリを下降させてワイヤを前記下部第1ボンディング部上に重ねて接続して中間第1ボンディング部を形成する工程と、再度キャピラリを上昇及び前記中間第1ボンディング部の上方に移動させ、その後キャピラリを下降させてワイヤを前記中間第1ボンディング部上に重ねて接続して上部第1ボンディング部を形成する工程とからなり、
前記第2ボンディング工程は、ワイヤを第2ボンド点にボンディングして下部第2ボンディング部を形成する工程と、キャピラリを上昇及び前記下部第2ボンディング部の上方に移動させ、その後キャピラリを下降させてワイヤを前記下部第2ボンディング部上に重ねて接続して上部第1ボンディング部を形成する工程とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
テール部をキャピラリの先端部より僅かに突出した長さに形成するので、特別な装置を用いなくてもボールレスボンディングができる。
また、第1ボンディング工程は、テール部を第1ボンド点にボンディングして下部第1ボンディング部を形成し、この下部第1ボンディング部上にワイヤを重ねて接続して中間第1ボンディング部を形成し、更に中間第1ボンディング部上にワイヤを重ねて接続して上部第1ボンディング部を形成するので、第1ボンド点のボンディングの接合性が向上する。
第2ボンディング工程は、ワイヤを第2ボンド点にボンディングして下部第2ボンディング部を形成し、この下部第2ボンディング部上に再度ワイヤを重ねて接続して上部第1ボンディング部を形成するので、第2ボンド点においてもボンディングの接合性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のワイヤボンディング方法の一実施の形態を図1乃至図3により説明する。図3(d)に示すように、セラミック基板やプリント基板又はリードフレーム等よりなる回路基板1上には、パッド2が形成されたダイ3がマウントされている。また回路基板1には配線4が形成されている。
【0013】
まず、図1(a)に示すように、クランパ5を通してキャピラリ6に挿通されたワイヤ10のテール部11は、キャピラリ6の下端より僅かに突出し、該キャピラリ6の下面方向に曲げられた状態にある。またワイヤ10をクランプするクランパ5は閉じた状態にある。
【0014】
前記の状態で図1(b)に示すように、キャピラリ6が下降して第1ボンド点である配線4にテール部11をボンディングして下部第1ボンディング部20を形成する。この場合、従来のようにワイヤ10をキャピラリ6で完全に押し潰してボンディングするのではなく、下部第1ボンディング部20はキャピラリ6の下面が配線4の上面に接触しなく、かつワイヤ10が切断されない範囲内にキャピラリ6を下降させて形成する。またクランパ5は開状態となる。
【0015】
次に図1(c)に示すように、キャピラリ6を上昇させ、続いて図1(d)に示すように、下部第1ボンディング部20の上方に移動させる。次に図1(e)に示すように、キャピラリ6を下降させ、図1(d)に示すワイヤ部分21を折り曲げて下部第1ボンディング部20上にワイヤ部分21をボンディングして中間第1ボンディング部22を形成する。
【0016】
次に図1(f)に示すように、キャピラリ6を上昇させ、続いて図1(g)に示すように、中間第1ボンディング部22の上方に移動させる。次に図1(h)に示すように、キャピラリ6を下降させ、図1(g)に示すワイヤ部分23を折り曲げて中間第1ボンディング部22上にワイヤ部分23をボンディングして上部第1ボンディング部24を形成し、第1ボンディング部25とする。
【0017】
その後は第2ボンド点であるパッド2上にワイヤ10を接続する。まず、周知のリバース動作を行わせる。即ち、図2(a)に示すように、キャピラリ6を上昇させる。この上昇高さは、図2(d)に示すダイ3より若干高い位置とする。次に図2(b)に示すように、キャピラリ6を第1ボンド点であるダイ3と反対方向に移動させる、所謂リバース動作を行わせる。これにより、屈折部26が形成される。
【0018】
次に図2(c)に示すように、キャピラリ6を上昇させる。続いて図2(d)に示すように、パッド2の方向に移動してワイヤ10を繰り出し、その後下降してパッド2にワイヤ10をボンディングし、下部第2ボンディング部30を形成する。この場合、従来のようにワイヤ10をキャピラリ6で完全に押し潰してボンディングするのではなく、下部第2ボンディング部30はキャピラリ6の下面がパッド2の上面に接触しなく、かつワイヤ10が切断されない範囲内にキャピラリ6を下降させて形成する。
【0019】
次に図3(a)に示すように、キャピラリ6を上昇させ、続いて図3(b)に示すように、キャピラリ6を配線4側に移動させる。次に図3(c)に示すように、キャピラリ6を下降させ、図3(b)に示すワイヤ部分31を折り曲げて下部第2ボンディング部30上にワイヤ部分31をボンディングして上部第2ボンディング部32を形成し、第2ボンディング部33とする。
【0020】
次にキャピラリ6を僅かに上昇させ、続いてクランパ5が閉じ、図3(d)に示すように、クランパ5及びキャピラリ6を共に横方向に移動させる。これにより、ワイヤ10は第2ボンディング部33の根元より切断されると共に、キャピラリ6の下端より突出したテール部11が形成される。
【0021】
このように、テール部11をキャピラリ6の先端部より僅かに突出した長さに形成するので、特別な装置を用いなくてもボールレスボンディングができる。また、第1ボンディング工程は、テール部11を第1ボンド点にボンディングして下部第1ボンディング部20を形成し、この下部第1ボンディング部20上にワイヤ10を重ねて接続して中間第1ボンディング部22を形成し、更に中間第1ボンディング部22上にワイヤ10を重ねて接続して上部第1ボンディング部24を形成するので、第1ボンド点のボンディングの接合性が向上する。第2ボンディング工程は、ワイヤ10を第2ボンド点にボンディングして下部第2ボンディング部30を形成し、この下部第2ボンディング部30上に再度ワイヤ10を重ねて接続して上部第1ボンディング部32を形成するので、第2ボンド点においてもボンディングの接合性が向上する。
【0022】
なお、上記実施の形態においては、第1ボンド点が配線4で、第2ボンド点がパッド2の場合(「以下、「逆ボンド」という)について説明したが、逆に第1ボンド点がパッド2で、第2ボンド点が配線4の場合(「以下、「正ボンド」という)にも適用できる。また、第1ボンド点が配線4又はパッド2のみの場合ではなく、両者の組み合わせ、正ボンド→逆ボンド→正ボンドまたは逆ボンド→正ボンド→逆ボンドの順にボンディングしてもよい。この場合は、キャピラリ6の移動時間が短縮でき、生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のワイヤボンディング方法の一実施の形態を示す工程図である。
【図2】図1の続きの工程図である。
【図3】図2の続きの工程図である。
【符号の説明】
【0024】
1 回路基板
2 パッド
3 ダイ
4 配線
5 クランパ
6 キャピラリ
10 ワイヤ
11 テール部
20 下部第1ボンディング部
22 中間第1ボンディング部
24 上部第1ボンディング部
25 第1ボンディング部
30 下部第2ボンディング部
32 上部第2ボンディング部
33 第2ボンディング部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ボンド点に第1ボンディングを行った後、第2ボンド点に第2ボンディングを行い、第1ボンド点と第2ボンド点間をワイヤで接続するワイヤボンディング方法において、
前記第2ボンディング工程におけるワイヤ切断工程によって形成されるテール部を、キャピラリの先端部より僅かに突出した長さに形成し、
前記第1ボンディング工程は、前記テール部を第1ボンド点にボンディングして下部第1ボンディング部を形成する工程と、キャピラリを上昇及び前記下部第1ボンディング部の上方に移動させ、その後キャピラリを下降させてワイヤを前記下部第1ボンディング部上に重ねて接続して中間第1ボンディング部を形成する工程と、再度キャピラリを上昇及び前記中間第1ボンディング部の上方に移動させ、その後キャピラリを下降させてワイヤを前記中間第1ボンディング部上に重ねて接続して上部第1ボンディング部を形成する工程とからなり、
前記第2ボンディング工程は、ワイヤを第2ボンド点にボンディングして下部第2ボンディング部を形成する工程と、キャピラリを上昇及び前記下部第2ボンディング部の上方に移動させ、その後キャピラリを下降させてワイヤを前記下部第2ボンディング部上に重ねて接続して上部第1ボンディング部を形成する工程とからなることを特徴とするワイヤボンディング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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