説明

ワイヤボンディング装置及びそれにおけるワイヤ切断方法

【課題】 ワイヤボンディング1サイクルの時間を短縮でき、生産性を向上させることができるようにする。
【解決手段】 本発明のワイヤボンディング装置におけるワイヤ切断方法は、ボンディング対象部位に接続された金ワイヤ5をワイヤクランパ9により拘束し引きちぎるようにしてテイルを切断するものであり、ワイヤクランパ9による金ワイヤ5に対する拘束力を徐々に増大させながら引きちぎるようにしたことを特徴としている。ワイヤクランパ9は一対の挟持爪9a,9aで金ワイヤ5を挟持するように構成されており、該両挟持爪の間隔を徐々に狭めることにより、金ワイヤ5に対する拘束力を徐々に増大させるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップ上や基板上の電極等に金属ワイヤを結線するワイヤボンディング装置におけるワイヤ切断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワイヤボンディング装置におけるワイヤ切断方法としては、ボンディング対象部位に接続された金属ワイヤをワイヤクランパにより拘束し引きちぎるようにしてテイルを切断する方法がある。このとき、ワイヤクランパの移動速度が速すぎると、金属ワイヤが伸びるとともに切断時に過度の引張応力が働いて、金属ワイヤ変形が生じることがあるという課題がある。しかし、移動速度を遅くすると、ワイヤボンディング1サイクルの時間が長くなるという課題がある。
【0003】
これらの課題を解決しようとする従来のワイヤ切断方法として、特許文献1に記載されたワイヤボンディング方法を例示する。このワイヤボンディング方法は、下記(1)〜(6)からなる単位動作を繰り返す方法に関するものである。そして、(5)のテイル切断時に、ワイヤクランパ50によりワイヤ51を挟持したまま、キャピラリ52を上昇させてテイルを切断するに際して、テイル切断までの上昇速度を遅くし、以後キャピラリ上死点までの上昇速度を早くするようにしている。
(1)第1ボンディング
(2)ループ形成
(3)第2ボンディング(図3(a)及び図4(動作ポイントa)参照)
(4)テール形成(図3(b)及び図4(動作ポイントb)と、図3(c)及び図4(動作ポイントc)とを参照)
(5)テイル切断(図3(d)及び図4(動作ポイントd)参照)
(6)次の第1ボンディング点へ移動(図3(e)及び図4(動作ポイントe)参照)
【0004】
【特許文献1】特開2001−118878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来のワイヤボンディング方法では、テイル形成からテイル切断までのワイヤクランパ50の上昇速度を遅くしている(図4における動作ポイントc〜dの間)ので、その分ワイヤボンディング1サイクルの時間が長くなるという課題がある。近年における半導体素子の集積度の向上等に伴って配線箇所数も増大しており、ワイヤボンディング1サイクルの時間のわずかな遅延でもそれが集積することにより生産性が大幅に低下してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のワイヤボンディング装置におけるワイヤ切断方法は、
ボンディング対象部位に接続された金属ワイヤをワイヤクランパにより拘束し引きちぎるようにしてテイルを切断するワイヤ切断方法であって、
前記ワイヤクランパにより前記金属ワイヤをスライド可能にほぼ拘束していない状態から拘束力を徐々に増大させながら引きちぎるようにしたことを特徴としている。
【0007】
この方法によれば、テイル切断時にワイヤクランパの移動速度を減速するのと同様の効果が得られる。すなわち、前記金属ワイヤのテイル切断時に該金属ワイヤにかかる力を徐々に増大させる(金属ワイヤへ適度な引っ張り応力が加わるようにする)ことができ、テイル切断時の衝撃を抑え、テイルの変形を防止することができる(直進性を保った金属ワイヤ切断が可能となる)。このため、テイル切断時にワイヤクランパの移動速度を減速せずに(又は従来例よりも減速量を少なくして)、従来例と同様の効果が得られるので、ワイヤボンディング1サイクルの時間を短縮でき、生産性を向上させることができる。また、テイル切断時のワイヤクランパの移動速度を従来例と同様に減速すれば、従来例よりも確実にテイルの変形を防止することができる。
【0008】
ここで、「前記ワイヤクランパによる前記金属ワイヤに対する拘束力を徐々に増大させ」とは、特に限定されないが、次の態様を例示する。
(1)前記ワイヤクランパは少なくとも一対の挟持爪で前記金属ワイヤを挟持するように構成されており、前記金属ワイヤを該両挟持爪が解放している状態から該両挟持爪の間隔を徐々に狭めることによる態様。
(2)前記ワイヤクランパは前記金属ワイヤを少なくとも一対の挟持爪で挟持するように構成されており、前記金属ワイヤを該両挟持爪で弱く挟持した状態から該両挟持爪による挟持力(荷重)を徐々に強めることによる態様。
【0009】
これらの方法によれば、既存のワイヤボンディング装置の機械的構成をほとんど変更せずに、主にワイヤクランパの制御処理内容を修正することにより対応でき、低コストで実現できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るワイヤボンディング装置におけるワイヤ切断方法によれば、金属ワイヤのテイル切断時における衝撃を抑え、テイルの変形を防止することができるようにすることができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1〜図3は本発明を具体化した一実施形態のワイヤボンディング装置におけるワイヤ切断方法を示している。本例で使用するワイヤボンディング装置は、中心に金ワイヤ5を通すための貫通穴が形成され、該貫通穴から先方に突出する金ワイヤ5を先端部でボンディング点に押し付けるキャピラリ6と、該キャピラリ6の上方で金ワイヤ5をクランプしたり開放したりするワイヤクランパ9と、キャピラリ6及びワイヤクランパ9を水平及び昇降移動させる駆動機構(図示略)とを備えている。ワイヤクランパ9は一対の挟持爪9a,9aで金ワイヤ5を挟持するように構成されており、両挟持爪9a,9aの間隔を制御可能に構成されている。本例では、両挟持爪9aが開いた状態における該両挟持爪9aの間隔は、0.07〜0.08mmとなっている。なお、本例のワイヤクランパ9では、両挟持爪9a,9aの閉じ時間Tcを指定すると、その時間をかけて両挟持爪9a,9aの間隔をリニアに狭めるように構成されている。
【0012】
以下、ワイヤボンディング装置におけるワイヤ切断方法を、図1及び図2を参照しながら工程順に説明する。本例では、フレーム2の上に装着された半導体チップ1上のボンディングパッド3を第一ボンディング点とし、フレーム2上のボンディング電極4を第二ボンディング点として金ワイヤ5で接続する場合において、第二ボンディング点の接続後に行うワイヤ切断方法を示す。また、前記第二ボンディング点は、ウェッジボンディング法により金ワイヤ5を圧接することにより接続されているものとする(図1(A)及び図2(動作ポイントA)参照)。
【0013】
(1)第二ボンディング点において金ワイヤ5を圧接した下死点よりも、キャピラリ6及びワイヤクランパ9をわずかに上昇させた位置からワイヤクランパ9の両挟持爪9a,9aの間隔を狭め始める(図1(B)及び図2(動作ポイントB)参照)。両挟持爪9a,9aの閉じ時間Tcとしては、特に限定されないが、本例では、1.5〜2.5ミリ秒とすることを例示する。この位置では、ワイヤクランパ9は、金ワイヤ5をスライド可能に拘束していない状態となっている。なお、キャピラリ6及びワイヤクランパ9の上昇速度は減速しない。
【0014】
(2)キャピラリ6及びワイヤクランパ9の上昇とともに、両挟持爪9a,9aの間隔が金ワイヤ5の直径に略等しいところまで狭まると、両挟持爪9a,9aと金ワイヤ5との摩擦により、金ワイヤ5に対する拘束力が生じ始め、これにより金ワイヤ5が上昇し始める(図1(C)及び図2(動作ポイントC)参照)。この拘束力が弱いときは、ワイヤクランパ9に対して、金ワイヤ5がスライドするので、ワイヤクランパ9の上昇速度よりも金ワイヤ5の上昇速度が遅くなっている。
【0015】
(3)両挟持爪9a,9aの間隔が狭まるにつれて、金ワイヤ5に対する拘束力が増大して行き、最終的に、ワイヤクランパ9の上昇速度と金ワイヤ5の上昇速度とが等しくなる。前記(2)の工程から本工程までの過程で、前記ウェッジボンディングによって亀裂が生じている部位から金ワイヤ5がテイル切断される(図1(D)及び図2(動作ポイントD)参照)。
【0016】
(4)キャピラリ6及びワイヤクランパ9の上昇速度を低下させることなく、上昇させ、上死点に到達させる(図1(E)及び図2(動作ポイントE)参照)。
【0017】
以上のように構成された本例のワイヤ切断方法によれば、テイル切断時にワイヤクランパ9の移動速度を減速するのと同様の効果が得られる。すなわち、金ワイヤ5のテイル切断時に該金ワイヤ5にかかる力を徐々に増大させる(金ワイヤ5へ適度な引っ張り応力が加わるようにする)ことができ、テイル切断時の衝撃を抑え、テイルの変形を防止することができる(直進性を保った金ワイヤ5切断が可能となる)。このため、テイル切断時にワイヤクランパ9の移動速度を減速せずに(又は従来例よりも減速量を少なくして)、従来例と同様の効果が得られるので、ワイヤボンディング1サイクルの時間を短縮でき、生産性を向上させることができる。また、テイル切断時のワイヤクランパの移動速度を従来例と同様に減速すれば、従来例よりも確実にテイルの変形を防止することができる。
【0018】
また、金ワイヤ5を該両挟持爪9a,9aが解放している状態から該両挟持爪の間隔を徐々に狭めることにより、金ワイヤ5に対する拘束力を徐々に増大させるようにしているので、既存のワイヤボンディング装置の機械的構成をほとんど変更せずに、主にワイヤクランパ9の制御処理内容を修正することにより対応でき、低コストで実現できる。
【0019】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)金ワイヤ5を該両挟持爪9a,9aで弱く挟持した状態から該両挟持爪9a,9aによる挟持力を徐々に強めることにより、金ワイヤ5に対する拘束力を徐々に増大させるようにすること。
(2)他の部位に接続した金ワイヤ5の切断に本方法を使用すること。
(3)ボールボンディング法等の他の方法で接続した金ワイヤ5の切断に本方法を使用すること。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を具体化した一実施形態に係るワイヤボンディング装置におけるワイヤ切断方法の手順を示す図である。
【図2】同方法におけるワイヤボンディング装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図3】従来のワイヤボンディング装置におけるワイヤ切断方法の手順を示す図である。
【図4】同方法におけるワイヤボンディング装置の動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0021】
1 半導体チップ
2 フレーム
3 ボンディングパッド
4 ボンディング電極
5 金ワイヤ
6 キャピラリ
9 ワイヤクランパ
9a 挟持爪
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップ上や基板上の電極等に金属ワイヤを結線するワイヤボンディング装置及びそれにおけるワイヤ切断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワイヤボンディング装置におけるワイヤ切断方法としては、ボンディング対象部位に接続された金属ワイヤをワイヤクランパにより拘束し引きちぎるようにしてテイルを切断する方法がある。このとき、ワイヤクランパの移動速度が速すぎると、金属ワイヤが伸びるとともに切断時に過度の引張応力が働いて、金属ワイヤ変形が生じることがあるという課題がある。しかし、移動速度を遅くすると、ワイヤボンディング1サイクルの時間が長くなるという課題がある。
【0003】
これらの課題を解決しようとする従来のワイヤ切断方法として、特許文献1に記載されたワイヤボンディング方法を例示する。このワイヤボンディング方法は、下記(1)〜(6)からなる単位動作を繰り返す方法に関するものである。そして、(5)のテイル切断時に、ワイヤクランパ50によりワイヤ51を挟持したまま、キャピラリ52を上昇させてテイルを切断するに際して、テイル切断までの上昇速度を遅くし、以後キャピラリ上死点までの上昇速度を早くするようにしている。
(1)第1ボンディング
(2)ループ形成
(3)第2ボンディング(図3(a)及び図4(動作ポイントa)参照)
(4)テール形成(図3(b)及び図4(動作ポイントb)と、図3(c)及び図4(動作ポイントc)とを参照)
(5)テイル切断(図3(d)及び図4(動作ポイントd)参照)
(6)次の第1ボンディング点へ移動(図3(e)及び図4(動作ポイントe)参照)
【0004】
【特許文献1】特開2001−118878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来のワイヤボンディング方法では、テイル形成からテイル切断までのワイヤクランパ50の上昇速度を遅くしている(図4における動作ポイントc〜dの間)ので、その分ワイヤボンディング1サイクルの時間が長くなるという課題がある。近年における半導体素子の集積度の向上等に伴って配線箇所数も増大しており、ワイヤボンディング1サイクルの時間のわずかな遅延でもそれが集積することにより生産性が大幅に低下してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のワイヤボンディング装置におけるワイヤ切断方法は、
ボンディング対象部位に接続された金属ワイヤをワイヤクランパにより拘束し引きちぎるようにしてテイルを切断するワイヤ切断方法であって、
前記ワイヤクランパにより前記金属ワイヤをスライド可能にほぼ拘束していない状態から拘束力を徐々に増大させながら引きちぎるようにしたことを特徴としている。
【0007】
この方法によれば、テイル切断時にワイヤクランパの移動速度を減速するのと同様の効果が得られる。すなわち、前記金属ワイヤのテイル切断時に該金属ワイヤにかかる力を徐々に増大させる(金属ワイヤへ適度な引っ張り応力が加わるようにする)ことができ、テイル切断時の衝撃を抑え、テイルの変形を防止することができる(直進性を保った金属ワイヤ切断が可能となる)。このため、テイル切断時にワイヤクランパの移動速度を減速せずに(又は従来例よりも減速量を少なくして)、従来例と同様の効果が得られるので、ワイヤボンディング1サイクルの時間を短縮でき、生産性を向上させることができる。また、テイル切断時のワイヤクランパの移動速度を従来例と同様に減速すれば、従来例よりも確実にテイルの変形を防止することができる。
【0008】
ここで、「前記ワイヤクランパによる前記金属ワイヤに対する拘束力を徐々に増大させ」とは、特に限定されないが、次の態様を例示する。
(1)前記ワイヤクランパは少なくとも一対の挟持爪で前記金属ワイヤを挟持するように構成されており、前記金属ワイヤを該両挟持爪が解放している状態から該両挟持爪の間隔を徐々に狭めることによる態様。
(2)前記ワイヤクランパは前記金属ワイヤを少なくとも一対の挟持爪で挟持するように構成されており、前記金属ワイヤを該両挟持爪で弱く挟持した状態から該両挟持爪による挟持力(荷重)を徐々に強めることによる態様。
【0009】
これらの方法によれば、既存のワイヤボンディング装置の機械的構成をほとんど変更せずに、主にワイヤクランパの制御処理内容を修正することにより対応でき、低コストで実現できる。
【0010】
また、本発明のボンディング装置は、中心に金属ワイヤを通すための貫通穴が形成され、該貫通穴から先方に突出する金属ワイヤを先端部でボンディング点に押し付けるキャピラリと、該キャピラリの上方で金属ワイヤをクランプしたり開放したりするワイヤクランパと、該キャピラリ及び該ワイヤクランパを水平及び昇降移動させる駆動機構とを備え、
前記いずれかのワイヤ切断方法を使用するように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るワイヤボンディング装置及びそれにおけるワイヤ切断方法によれば、金属ワイヤのテイル切断時における衝撃を抑え、テイルの変形を防止することができるようにすることができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1〜図3は本発明を具体化した一実施形態のワイヤボンディング装置及びそれにおけるワイヤ切断方法を示している。本例で使用するワイヤボンディング装置は、中心に金ワイヤ5を通すための貫通穴が形成され、該貫通穴から先方に突出する金ワイヤ5を先端部でボンディング点に押し付けるキャピラリ6と、該キャピラリ6の上方で金ワイヤ5をクランプしたり開放したりするワイヤクランパ9と、キャピラリ6及びワイヤクランパ9を水平及び昇降移動させる駆動機構(図示略)とを備えている。ワイヤクランパ9は一対の挟持爪9a,9aで金ワイヤ5を挟持するように構成されており、両挟持爪9a,9aの間隔を制御可能に構成されている。本例では、両挟持爪9aが開いた状態における該両挟持爪9aの間隔は、0.07〜0.08mmとなっている。なお、本例のワイヤクランパ9では、両挟持爪9a,9aの閉じ時間Tcを指定すると、その時間をかけて両挟持爪9a,9aの間隔をリニアに狭めるように構成されている。
【0013】
以下、ワイヤボンディング装置におけるワイヤ切断方法を、図1及び図2を参照しながら工程順に説明する。本例では、フレーム2の上に装着された半導体チップ1上のボンディングパッド3を第一ボンディング点とし、フレーム2上のボンディング電極4を第二ボンディング点として金ワイヤ5で接続する場合において、第二ボンディング点の接続後に行うワイヤ切断方法を示す。また、前記第二ボンディング点は、ウェッジボンディング法により金ワイヤ5を圧接することにより接続されているものとする(図1(A)及び図2(動作ポイントA)参照)。
【0014】
(1)第二ボンディング点において金ワイヤ5を圧接した下死点よりも、キャピラリ6及びワイヤクランパ9をわずかに上昇させた位置からワイヤクランパ9の両挟持爪9a,9aの間隔を狭め始める(図1(B)及び図2(動作ポイントB)参照)。両挟持爪9a,9aの閉じ時間Tcとしては、特に限定されないが、本例では、1.5〜2.5ミリ秒とすることを例示する。この位置では、ワイヤクランパ9は、金ワイヤ5をスライド可能に拘束していない状態となっている。なお、キャピラリ6及びワイヤクランパ9の上昇速度は減速しない。
【0015】
(2)キャピラリ6及びワイヤクランパ9の上昇とともに、両挟持爪9a,9aの間隔が金ワイヤ5の直径に略等しいところまで狭まると、両挟持爪9a,9aと金ワイヤ5との摩擦により、金ワイヤ5に対する拘束力が生じ始め、これにより金ワイヤ5が上昇し始める(図1(C)及び図2(動作ポイントC)参照)。この拘束力が弱いときは、ワイヤクランパ9に対して、金ワイヤ5がスライドするので、ワイヤクランパ9の上昇速度よりも金ワイヤ5の上昇速度が遅くなっている。
【0016】
(3)両挟持爪9a,9aの間隔が狭まるにつれて、金ワイヤ5に対する拘束力が増大して行き、最終的に、ワイヤクランパ9の上昇速度と金ワイヤ5の上昇速度とが等しくなる。前記(2)の工程から本工程までの過程で、前記ウェッジボンディングによって亀裂が生じている部位から金ワイヤ5がテイル切断される(図1(D)及び図2(動作ポイントD)参照)。
【0017】
(4)キャピラリ6及びワイヤクランパ9の上昇速度を低下させることなく、上昇させ、上死点に到達させる(図1(E)及び図2(動作ポイントE)参照)。
【0018】
以上のように構成された本例のワイヤボンディング装置及びそれにおけるワイヤ切断方法によれば、テイル切断時にワイヤクランパ9の移動速度を減速するのと同様の効果が得られる。すなわち、金ワイヤ5のテイル切断時に該金ワイヤ5にかかる力を徐々に増大させる(金ワイヤ5へ適度な引っ張り応力が加わるようにする)ことができ、テイル切断時の衝撃を抑え、テイルの変形を防止することができる(直進性を保った金ワイヤ5切断が可能となる)。このため、テイル切断時にワイヤクランパ9の移動速度を減速せずに(又は従来例よりも減速量を少なくして)、従来例と同様の効果が得られるので、ワイヤボンディング1サイクルの時間を短縮でき、生産性を向上させることができる。また、テイル切断時のワイヤクランパの移動速度を従来例と同様に減速すれば、従来例よりも確実にテイルの変形を防止することができる。
【0019】
また、金ワイヤ5を該両挟持爪9a,9aが解放している状態から該両挟持爪の間隔を徐々に狭めることにより、金ワイヤ5に対する拘束力を徐々に増大させるようにしているので、既存のワイヤボンディング装置の機械的構成をほとんど変更せずに、主にワイヤクランパ9の制御処理内容を修正することにより対応でき、低コストで実現できる。
【0020】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)金ワイヤ5を該両挟持爪9a,9aで弱く挟持した状態から該両挟持爪9a,9aによる挟持力を徐々に強めることにより、金ワイヤ5に対する拘束力を徐々に増大させるようにすること。
(2)他の部位に接続した金ワイヤ5の切断に本方法を使用すること。
(3)ボールボンディング法等の他の方法で接続した金ワイヤ5の切断に本方法を使用すること。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を具体化した一実施形態に係るワイヤボンディング装置におけるワイヤ切断方法の手順を示す図である。
【図2】同方法におけるワイヤボンディング装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図3】従来のワイヤボンディング装置におけるワイヤ切断方法の手順を示す図である。
【図4】同方法におけるワイヤボンディング装置の動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0022】
1 半導体チップ
2 フレーム
3 ボンディングパッド
4 ボンディング電極
5 金ワイヤ
6 キャピラリ
9 ワイヤクランパ
9a 挟持爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンディング対象部位に接続された金属ワイヤをワイヤクランパにより拘束し引きちぎるようにしてテイルを切断するワイヤ切断方法であって、
前記ワイヤクランパにより前記金属ワイヤをスライド可能にほぼ拘束していない状態から拘束力を徐々に増大させながら引きちぎるようにしたことを特徴とするワイヤボンディング装置におけるワイヤ切断方法。
【請求項2】
前記ワイヤクランパは少なくとも一対の挟持爪で前記金属ワイヤを挟持するように構成されており、
前記金属ワイヤを該両挟持爪が解放している状態から該両挟持爪の間隔を徐々に狭めることにより、前記金属ワイヤに対する拘束力を徐々に増大させるようにした請求項1記載のワイヤボンディング装置におけるワイヤ切断方法。
【請求項3】
前記ワイヤクランパは前記金属ワイヤを少なくとも一対の挟持爪で挟持するように構成されており、
前記金属ワイヤを該両挟持爪で弱く挟持した状態から該両挟持爪による挟持力を徐々に強めることにより、前記金属ワイヤに対する拘束力を徐々に増大させるようにした請求項1記載のワイヤボンディング装置におけるワイヤ切断方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンディング対象部位に接続された金属ワイヤをワイヤクランパにより拘束し引きちぎるようにしてテイルを切断するワイヤ切断方法であって、
前記ワイヤクランパにより前記金属ワイヤをスライド可能にほぼ拘束していない状態から拘束力を徐々に増大させながら引きちぎるようにしたことを特徴とするワイヤボンディング装置におけるワイヤ切断方法。
【請求項2】
前記ワイヤクランパは少なくとも一対の挟持爪で前記金属ワイヤを挟持するように構成されており、
前記金属ワイヤを該両挟持爪が解放している状態から該両挟持爪の間隔を徐々に狭めることにより、前記金属ワイヤに対する拘束力を徐々に増大させるようにした請求項1記載のワイヤボンディング装置におけるワイヤ切断方法。
【請求項3】
前記ワイヤクランパは前記金属ワイヤを少なくとも一対の挟持爪で挟持するように構成されており、
前記金属ワイヤを該両挟持爪で弱く挟持した状態から該両挟持爪による挟持力を徐々に強めることにより、前記金属ワイヤに対する拘束力を徐々に増大させるようにした請求項1記載のワイヤボンディング装置におけるワイヤ切断方法。
【請求項4】
中心に金属ワイヤを通すための貫通穴が形成され、該貫通穴から先方に突出する金属ワイヤを先端部でボンディング点に押し付けるキャピラリと、該キャピラリの上方で金属ワイヤをクランプしたり開放したりするワイヤクランパと、該キャピラリ及び該ワイヤクランパを水平及び昇降移動させる駆動機構とを備え、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のワイヤ切断方法を使用するように構成されたワイヤボンディング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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