説明

ワイヤボンディング装置

【課題】被ボンディング材に導電体を超音波ボンディングするワイヤボンディング装置について、半導体パッケージのケーシングなどの障壁がある狭い場所における使用を可能とするために、導電体を含めたボンディングツール周辺の構造を横方向のサイズについて縮小化を図りつつ、ホーンのインピーダンスや共振周波数を安定させ、安定したボンダビリティを有し、超音波振動振幅の伝達が阻害されない超音波ワイヤボンダを提供する。
【解決手段】導電体6をボンディングツール7の先端付近まで導く供給経路を、ボンディングツール7と概ね平行とし、ボンディングツール7に対して共振体と相反する側のできるだけ近い位置にとるように、導電体ガイド11,12を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの製造に用いる超音波方式のワイヤボンディング装置に関し、特に半導体パッケージのケーシングなどの障壁がある狭い場所においてボンディング可能なワイヤボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造において、半導体チップ上に設けられた接続電極(ボンディングパッド)と半導体パッケージに設けられた外部引出し用端子(リード)とを電気的に接続するために、アルミ等の導電性ワイヤを用いる超音波ワイヤボンディング装置が広く一般に使用されている。
【0003】
一般に、ウェッジボンダのワイヤ接合部におけるワイヤが供給される方向は、ツールの振動方向と一致させる必要があり、また、ワイヤの供給には負荷がかからないような経路をとる必要がある。そこで、ワイヤが超音波振動子の下方を通ってツール先端に供給されるような構造(特許文献1参照)や、ホーン本体にボンディングツール先端へ向けたワイヤ通過穴をあけた構造(特許文献2参照)が採用されている。
【0004】
また、本発明に関連する先行技術として、ホーン先端部分に取り付けられているキャピラリの交換によって生じるホーンのインピーダンスや共振周波数の変化を安定させ、規定の超音波エネルギ、振動振幅を得るために、超音波振動モードの節となる部位に、穴をあける等のホーンを形成する材料とは密度の異なる物質を存在させるという技術が知られている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平10−041334号公報
【特許文献2】特開平06−177216号公報
【特許文献3】特開2001−121080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体パッケージの形状は様々であり、その形状に適用できるワイヤボンディング装置を使用する必要があるが、パッケージの形状が小型化・複雑化するに伴って、ワイヤボンダのボンディングツール周辺の構造も横寸法を縮小化しなければならない。
【0006】
また、自動車等に用いられるパワーデバイスにおいては、ボンディングパッドとリードとの接続に用いられる断面が円形状のワイヤを、耐電流容量を増大し、ボンド接合面積を拡大するために、断面が幅広のリボン状の導電体(以下「リボン」と呼ぶ。)を用いて接続するワイヤボンディング(以下ワイヤ及びリボンを用いるものを含めて「ワイヤボンディング」と呼ぶ。)の需要が高まってきている。
【0007】
しかし、前述のようにワイヤが超音波振動子の後方を通ってツール先端に供給される構造では、ボンディングツールとワイヤとのなす角度が大きく、半導体パッケージのケーシングなどの障壁がある狭い場所においてはボンディングを行えないことがある。また、ホーン本体にボンディングツール先端へ向けた導電体通過穴をあけた構造では、特にリボンを用いた場合に幅広の通過穴が必要となり、ホーンの外径及びボンディングツール穴に対する影響が大きくなる。その結果、ホーンのインピーダンスや共振周波数を変化させ、ホーンの振動振幅の伝達を阻害することとなる。
【0008】
そこで、本発明は、超音波を用いて被ボンディング材に導電体を接合するワイヤボンディング装置であって、半導体パッケージのケーシングなどの障壁がある狭い場所における使用を可能とするために、ワイヤを含めたボンディングツール周辺の構造を横方向のサイズについて縮小化を図りつつ、ホーンのインピーダンスや共振周波数を安定させ、安定したボンダビリティを有し、超音波振動振幅の伝達が阻害されないワイヤボンディング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明によるワイヤボンディング装置では、導電体をボンディングツールの先端付近まで導く供給経路を、ボンディングツールと概ね平行とし、ボンディングツールに対して共振体と相反する側のできるだけ近い位置にとるようにする。
【0010】
すなわち本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、振動子から発生された超音波振動を伝達する共振体と、共振体の先端部付近に、共振体の中心軸に略直交する向きに延出されたボンディングツールと、ボンディングツール先端に導かれる導電体を供給する導電体供給体とを有し、被ボンディング材に導電体を接合するワイヤボンディング装置であって、ボンディングツールの先端付近にあって共振体と相反する側に配設された導電体ガイドを有し、導電体供給体を導電体ガイドの上方に配設することにより、導電体をボンディングツールと概ね平行にボンディングツールの先端付近まで導くワイヤボンディング装置を提供する。
【0011】
これによると、導電体をボンディングツールに近接させることにより、導電体からボンディングツール中心までの横方向のサイズが縮小され、障壁があるような狭い場所においてもボンディングを行うことができ、共振体に導電体の通過穴をあける必要がないため、通過穴によって生じる共振体の超音波振動伝達への影響を受けることなく、ボンディングを行うことができる。
【0012】
また本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、振動子から発生された超音波振動を伝達する共振体と、共振体の先端部付近に、共振体の中心軸に略直交する向きに延出されたボンディングツールと、ボンディングツール先端に導かれる導電体を供給する導電体供給体とを有し、被ボンディング材に導電体を接合するワイヤボンディング装置であって、ボンディングツールの先端付近にあって共振体と相反する側に配設された第1の導電体ガイドと、第1の導電体ガイドの上方に配設された第2の導電体ガイドとを有することにより、導電体をボンディングツールと概ね平行にボンディングツールの先端付近まで導くことを特徴とするワイヤボンディング装置を提供する。
【0013】
これによると、第1の手段による作用・効果に加えて、導電体供給体を配設する位置が限定されないため、導電体供給経路及び装置の設計に自由度が与えられる。
【0014】
さらに本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、第1及び第2の手段である前記ワイヤボンディング装置において、導電体がリボンであるワイヤボンディング装置を提供する。
【0015】
これによると、共振体に導電体の通過穴をあけた構造のワイヤボンディング装置においては、通過穴が幅広であるほど共振体のインピーダンスや共振周波数を変化させ、振動振幅の伝達を阻害することとなるが、通過穴によるこれらの影響を生じないために特に幅広のリボンを用いたときに本手段による効果は大きい。
【発明の効果】
【0016】
上記手段を用いることにより、ボンディングツールの長さ方向と直交するどの断面においても、従来技術の超音波ワイヤボンダよりも導電体とボンディングツール中心との横寸法を小さくすることができる。したがって、半導体パッケージのケーシングなどの障壁がある狭い場所において、ワイヤボンディングを行うことができるようになり、しいては半導体パッケージの小型化を可能とする。また、通過穴を大きくしたときに生ずる共振体のインピーダンスや共振周波数の変化の影響を受けないため、安定したワイヤボンディングを行うことが可能となり、超音波振動振幅の伝達が阻害されることもない。したがてって、超音波振動系設計の自由度も広がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施例として、ワイヤボンディング装置のボンディング動作を行う様子を示した側面図である。ワイヤボンディング装置は、超音波発振器1と、超音波発振器1から発振された電気信号から超音波振動を発生するBLT振動子2と、BLT振動子2から発生された超音波振動を伝達する共振体としてのコーン3と、同じく超音波振動を伝達する共振体としてのホーン4と、ホーン4の先端部付近に取り付けられたボンディングツール7とを有している。
【0019】
BLT振動子2、コーン3及びホーン4の中心軸は全て一致するように連結されており、ボンディングツール7は、ホーン4の中心軸と概ね直行する向きに伸びるようにボンディングツールセットねじ8により固定されている。ボンディングツール7の先端は、導電体6へ効率よく超音波を印加でき、さらに導電体を正確な位置に接合できるような形状、例えば凹部を有する形状又は複数の凹部若しくは大きさの異なる複数の凹部を有する形状であってよい。
【0020】
BLT振動子2、コーン3及びホーン4の上方にはブロック14が配置されている。ブロック14から懸装されたホルダ15によってコーン3の振動振幅の節となる位置を保持している。
【0021】
ボンディングツール7の先端付近であってホーン4の先端部側には、ブロック14から懸装された導電体ガイドホルダ10により固定された、導電体ガイド手段としての第1の導電体ガイド11が配設されている。第1の導電体ガイド11は、導電体6が導かれる方向を変え、ボンディングツール7の先端下方で一定方向に供給されるような構造をしていればよい。ボンディングツール7に対して導電体ガイドホルダ10の反対側には、導電体ガイドホルダ10と同様にブロック14から懸装された、導電体を切断する導電体カッタ9が取り付けてある。
【0022】
また、ブロック14には、導電体供給体としての導電体スプール13が装備され、第1の導電体ガイド11の上方には導電体ガイド手段として、第2の導電体ガイド12が配設されている。導電体スプール13から引き出される導電体6は、第2の導電体ガイド12を経由して、ホーン4の中心軸線上であってホーンの先端部に近接する点を通過し、ボンディングツール7とほぼ平行にツール先端方向に導かれ、第1の導電体ガイド11を経由してツール先端下方に供給される。
【0023】
ボンディングツール7は、ツール先端がホーン4の中心軸と同じ方向に振動し、ツールの長さ方向に加圧を行いつつ超音波振動を印加して導電体6を被ボンディング材に超音波接合する。ワイヤボンディング装置は、半導体素子22に設けられた接続電極(ボンディングパッド)にファーストボンディングを行う。続いてボンディングツール7を含むボンディングヘッドがケーシング20の方向(図面右方向)へ移動しながら、若しくはケーシング20がボンディングツール7の方向(図面左方向)へ移動しながら、導電体6が引き出され、ケーシング20に設けられた回路主端子21と接続した外部引出し端子(リード)にセカンドボンディングを行う。その後、導電体カッタ9によって導電体6は切断されて、ボンディング1工程が終了する。
【0024】
第1の導電体ガイド11及びボンディングツールセットねじ8の横寸法を小さくするほど、ボンディングツール7の先端をさらにケーシング20に近づけることができる。すなわち、より狭い場所におけるボンディングが可能となり、ケーシング形状の小型化・複雑化が可能であるといえる。
【0025】
図2は、本発明の一実施例として、ワイヤボンディング装置の側面を一部破断して示した概念図である。(A)は本発明によるワイヤボンディング装置の側面を一部破断して示しており、(B)はBLT振動子2の後端からホーン4の先端までの縦振動振幅モードを示しており、(C)はボンディングツール7の後端から先端までの撓み振動振幅モードを示している。
【0026】
超音波発振器1から発振された電気信号は、BLT振動子2により縦振動の超音波振動に変換され、コーン3及びホーン4を共振して伝達され、ホーン4の先端部付近に取り付けられたボンディングツール7で撓み振動に変換される。ホーンには導電体の通過穴が設けられていないため、振動振幅は損失なくホーン先端まで伝わる。ホーン4の先端は固定されておらず、振動振幅が最大(振動振幅の腹)となるようにされている。ボンディングツール7は、ホーン4の先端部付近の振動振幅が大きな位置に取り付けられることにより、縦振動から撓み振動へ変換する際の超音波振動振幅の減衰を抑える。ボンディングツール7の撓み振動は、ボンディングツールセットねじ8により固定された部位が振幅の腹となり、ツール先端の振動振幅が最大となって伝達されるように調整される。そしてボンディングツール7の先端において、導電体に超音波振動を印加し、ツールによる加圧を併用して導電材をボンディングパッド及びリードなどの被ボンディング材に超音波接合する。
【0027】
図3は、本発明の一実施例として、ワイヤボンディング装置のホーン先端部付近を示す上面図である。リボン6は、ホーン4の先端部にできるだけ近い位置を供給経路とされている。
【0028】
このように図1〜図3は、本発明によるワイヤボンディング装置の一実施例を示すが、本発明がここに示された実施例に限定されるものではない。例えば、コーン3を介さずに、BLT振動子2に直接ホーン4を連結してもよい。この場合、ブロック14から懸装されたホルダ15が保持する位置は、コーン3を固定する場合と同様に、BLT振動子2又はホーン4の振動振幅の節となる位置であればよい。また、第2の導電体ガイド12の配設位置は、第1の導電体ガイド11の上方であればよく、第1の導電体ガイド11からの距離を大きくするほどより高い障壁を有するケーシングに適用することができる。
【0029】
また、導電体スプール13から引き出される導電体の経路の始点が、ブロック14に設けられる第2の導電体ガイド12の上方すなわちホーン4の先端部の上方となるように、導電体スプール13を配置してもよい。さらに、導電体スプール13をこのように配置した場合に、第2の導電体ガイド12を設けずに、導電体6が、共振体の中心軸線上であって共振体の先端部に近接する点を通過し、ボンディングツール7と概ね平行にボンディングツール先端付近まで直接導かれるようにしてもよい。
【0030】
図4は、従来技術に基づいて構成されたワイヤボンディング装置の側面を一部破断して示した概念図である。(A)は従来技術によるワイヤボンディング装置の側面を一部破断して示しており、(B)はBLT振動子2の後端からホーン4の先端までの縦振動振幅モードを示しており、(C)はボンディングツール7の後端から先端までの撓み振動振幅モードを示している。導電体をボンディングツールと概ね平行にしてツール先端付近へ導く手段を含んだものであって、半導体パッケージのケーシングなどの障壁がある狭い場所において、ワイヤボンディングを行うことができる。
【0031】
図5は、従来技術に基づいて構成されたワイヤボンディング装置のホーン先端部付近を示す上面図である。
【0032】
図4及び図5に示す従来技術に基づいて構成されたワイヤボンディング装置は、図1〜図3に示す本発明によるワイヤボンディング装置と異なり、ボンディングツール7に対してBLT振動子2の側であって、ホーン4の中心軸線上に導電体通過穴5があけられている。導電体6は、図1〜図3のようにホーン先端部に近接した中心軸の延長線上を通過するのではなく、ホーン4にあけられた導電体通過穴5を通過して、ボンディングツール7と概ね平行な経路をたどってツール先端付近まで導かれる。第1の導電体ガイド11はボンディングツール7に対してBLT振動子2の側に取り付けてある。
【0033】
ホーン4にあけられた導電体通過穴5が小さい場合には、超音波振動の伝達への影響は少なく、ホーンのどの部位にあけても問題とはならない。しかし、導電体通過穴5がホーン4の外径及びボンディングツール穴に対して穴径の影響を無視できなくなる大きさになると、ホーンのインピーダンスや共振周波数を変化させ、例え超音波振動モードの節となる部位に穴をあけたとしても、ホーンの振動振幅の伝達を阻害することとなる。
【0034】
したがって、縦振動振幅モードに示すように、導電体通過穴をあけた場合には、導電体通過穴がない場合よりも超音波振動振幅が小さくなってボンディングツール7へ伝達される。その結果、ボンディングツールの撓み振動振幅モードに示すように、撓み振動に変換された振動振幅についても、導電体通過穴をあけた場合には、導電体通過穴がない場合よりも超音波振動振幅は小さくなり、超音波接合能力を低下させる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施例として、ワイヤボンディング装置のボンディング動作を行う様子を一部破断して示した側面図である。
【図2】本発明の一実施例として、ワイヤボンディング装置の側面を一部破断して示した概念図である。
【図3】本発明の一実施例として、ワイヤボンディング装置のホーン先端部付近を示す上面図である。
【図4】従来技術に基づいて構成されたワイヤボンディング装置の側面を一部破断して示した概念図である。
【図5】従来技術に基づいて構成されたワイヤボンディング装置のホーン先端部付近を示す上面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 超音波発振器
2 BLT振動子
3 コーン
4 ホーン
5 導電体通過穴
6 導電体
7 ボンディングツール
8 ボンディングツールセットねじ
9 導電体カッタ
10 導電体ガイドホルダ
11 第1の導電体ガイド
12 第2の導電体ガイド
13 導電体スプール
14 ブロック
15 ホルダ
20 ケーシング
21 主回路端子
22 半導体素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動子から発生された超音波振動を伝達する共振体と、
前記共振体の先端部付近に、前記共振体の中心軸に略直交する向きに延出されたボンディングツールと、
前記ボンディングツール先端に導かれる導電体を供給する導電体供給体とを有し、
被ボンディング材に導電体を接合するワイヤボンディング装置であって、
前記ボンディングツールの先端付近にあって前記共振体と相反する側に配設された導電体ガイドを有し、
前記導電体供給体を前記導電体ガイドの上方に配設することにより、
前記導電体を前記ボンディングツールと概ね平行に前記ボンディングツールの先端付近まで導くことを特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項2】
振動子から発生された超音波振動を伝達する共振体と、
前記共振体の先端部付近に、前記共振体の中心軸に略直交する向きに延出されたボンディングツールと、
前記ボンディングツール先端に導かれる導電体を供給する導電体供給体とを有し、
被ボンディング材に導電体を接合するワイヤボンディング装置であって、
前記ボンディングツールの先端付近にあって前記共振体と相反する側に配設された第1の導電体ガイドと、
前記第1の導電体ガイドの上方に配設された第2の導電体ガイドとを有することにより、
前記導電体を前記ボンディングツールと概ね平行に前記ボンディングツールの先端付近まで導くことを特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項3】
前記導電体が、リボンであることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか一項に記載のワイヤボンディング装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate