説明

ワイヤボンディング装置

【課題】ワイヤショートの有無を、自動的に、かつ、ワイヤボンディングの作業を停止せずに確認可能な、ワイヤボンディング装置およびこの装置を用いたワイヤボンディング方法を提供する。
【解決手段】周回単位でワイヤをボンディングするたびに、その形状を計測して記憶する。さらに、記憶された計測結果に基づいて、上下に隣接するワイヤ同士の間隔を演算することで、ワイヤショートの有無が判定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤボンディング装置と、この装置を用いたワイヤボンディング方法とに係り、特に、下段にボンディングされたワイヤの上段に別のワイヤをボンディングするワイヤボンディング装置と、この装置を用いたワイヤボンディング方法とに係る。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造する際、半導体チップを実装基板上に実装するとともに、半導体チップの入出力端部を実装基板上の接続端部に接続する。ここで、半導体チップの入出力端部がボンディングパッドであり、実装基板上の接続端部もボンディングパッドであり、半導体チップのボンディングパッドと、実装基板のボンディングパッドとを、ボンディングワイヤを介して接続する場合について考える。
【0003】
近年、半導体チップの入出力端部の数が増加した結果、半導体チップおよび実装基板のボンディングパッドを接続するボンディングワイヤを、立体的に配置する必要が生じている。すなわち、下段にボンディングされたワイヤの上段に、別のワイヤをボンディングすることによって、実装基板の面積が最小限に抑えられている。
【0004】
このような場合、当然ながら、上下段のボンディングワイヤが短絡してはならない。そこで、一段ごとにボンディングワイヤの形状を統一することが好ましい。ここで、例えばQFP(Quad Flat Package)などにおいて、一段分のボンディングワイヤは半導体チップの周囲を一周するので、この単位を「周回」と呼ぶことにする。さらに、複数の周回のボンディングワイヤを用いる半導体装置を、「多段周回品」と呼ぶことにする。
【0005】
図2は、ボンディングワイヤを用いた半導体装置の構成例を示す側面図である。この半導体装置は、多段周回品であって、半導体チップ10と、実装基板20と、第1周回〜第5周回のボンディングワイヤ31〜35とを具備している。半導体チップ10は、半導体チップ側ボンディングパッド11を具備している。実装基板20は、実装基板側ボンディングパッド21を具備している。ここで、第1周回のボンディングワイヤ31は、同じ側面を有する複数のボンディングワイヤの中の1つである。第2〜第5周回のボンディングワイヤ32〜35についても同様である。言い換えれば、同じ周回のボンディングワイヤはほぼ同じ包絡面に含まれている。それぞれのボンディングワイヤの形状を、「ループ形状」とも呼ぶ。
【0006】
なお、ここでは、半導体チップ10のボンディングパッド11の表面から、ボンディングワイヤの頂点までの高さを、「ループ高さ」と呼ぶ。例えば、図2に示すループ高さ40は、第5周回のボンディングワイヤのループ高さである。
【0007】
さて、多段周回品において、それぞれの周回は、異なる周回のボンディングワイヤが短絡しないように設計される。しかし、多段周回品を実際に製造する過程においては、上段のボンディングワイヤに予期せぬ変形が発生し、下段のボンディングワイヤに短絡する場合がある。このようなワイヤショートが発生した半導体装置は、当然ながら不良品となる。したがって、このようなワイヤショートが発したかどうかを確実に確認する必要がある。
【0008】
図1は、従来技術によるワイヤショートの確認方法を示す図群である。図1(a)は、3周回分のワイヤをボンディングした後のボンディングワイヤの様子を示す平面図である。図1(b)は、2周回分のワイヤをボンディングした時点のボンディングワイヤの様子を示す平面図である。
【0009】
図1(a)のように、3周回分のワイヤボンディングを行った後では、第1周回および第2周回の間におけるワイヤショートの有無を確認することは非常に困難である。そこで、従来は、図1(b)のように、第2周回のボンディングが完了した時点で、ボンディング作業を一旦停止して、第1周回および第2周回におけるワイヤショートの有無を確認していた。このように、ワイヤボンディングを途中で故意に停止することを「分け打ち」と呼ぶ。なお、分け打ちを行っても、ワイヤショートの有無の確認は、作業者が顕微鏡で行う必要がある。
【0010】
第1周回および第2周回のボンディングを行い、ワイヤショートが発生していないことが確認されると、第3周回のボンディングを行い、第2周回および第3周回の間におけるワイヤショートの有無を確認する。この手順を繰り返すことで、全ての周回をボンディングしてもワイヤショートが発生しないことが確認されると、半導体装置の量産へ進むことが出来る。
【0011】
半導体装置の量産過程では、生産性を向上するために、分け打ちや、作業者による手動の確認などを行う余裕が無い。したがって、仮に、量産途中で生産装置に制御不良などが発生し、その結果としてボンディングワイヤの形状に変化が生じたとしても、量産終了までワイヤショートの確認手段が無い。すなわち、ワイヤショートを含む不良品が、量産後の選別工程に流出してしまう。
【0012】
上記に関連して、特許文献1(特開平10−74786号公報)には、半導体装置に係る記載が開示されている。この半導体装置では、複数列のボンディングパッドが形成されたICチップのボンディングパッドとリードフレームとをボンディングワイヤを介して接続している。この半導体装置では、ICチップの内側に設けられたボンディングパッドに接続するボンディングワイヤほど高く大きなループを形成している。この半導体装置は、これらのボンディングワイヤ間に絶縁物を介在させたことを特徴としている。
【0013】
また、特許文献2(特開2001−345339号公報)には、半導体装置に係る記載が開示されている。この半導体装置では、リードフレームに複数個の半導体チップが積層して固定されている。半導体チップの第1ボンド点と、リードフレームのリードの第2ボンド点間を、台形ループ形状のワイヤで接続する。このループ形状は、第1ボンド点より立ち上がったネック部高さ、このネック部高さに連なる台形部、この台形部に連なり第2ボンド点の方向に傾斜して該第2ボンド点にボンディングされた傾斜部とからなる。最上位のワイヤ以外のワイヤの前記傾斜部には、少なくとも最下位のワイヤに屈曲部を形成したことを特徴とする。
【0014】
また、特許文献3(特開2007−129121号公報)には、半導体設計支援装置に係る記載が開示されている。この半導体設計支援装置は、記憶部と、演算処理部とを具備する。ここで、記憶部は、半導体チップに関する情報であるチップデータと半導体チップを搭載するパッケージに関する情報であるパッケージデータとを格納する。演算処理部は、チップデータとパッケージデータとに基づいて半導体チップとパッケージとの接続が適切に行われるか否かを判定する。演算処理部は、パッドデータ生成部と、リード電極データ生成部と、ボンディングワイヤデータ生成部と、ワイヤ識別部と、判定実行部とを含む。ここで、パッドデータ生成部は、半導体チップに配置される複数の電極パッドの配置位置に関する情報を有するパッドデータを生成する。リード電極データ生成部は、パッケージに配置される複数のリード電極の配置位置に関する情報を有するリード電極データを生成する。ボンディングワイヤデータ生成部は、パッドデータとリード電極データとに基づいて、複数の電極パッドと複数のリード電極とを接続する複数のボンディングワイヤに関する情報を有するボンディングワイヤデータを生成する。ワイヤ識別部は、ボンディングワイヤデータに基づいて、複数のボンディングワイヤの長さを算出し、長さに基づいて高さを推定し、推定された高さが所定の範囲に含まれるボンディングワイヤを同じグループに分類する。判定実行部は、同じグループに分類されているボンディングワイヤの間隔が、予め定められた値の範囲内に収まっているか否かを判定することで、ボンディングワイヤが適切に形成されるか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平10−74786号公報
【特許文献2】特開2001−345339号公報
【特許文献3】特開2007−129121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記に説明した従来技術では、以下のような問題がある。すなわち、ワイヤショートの有無を確認するために、ワイヤボンディング作業の途中で装置を停止する必要がある。ここで、ワイヤボンディングの作業を最初から最後まで停止しない方が効率の面で有利であることは言うまでもない。また、ワイヤショートの有無の確認は、作業者に依存している。ここで、ワイヤショートの有無の確認を含む全ての作業を自動化したほうが効率の面で有利であることは言うまでもない。さらに、ワイヤボンディング装置が故障をした場合など、製品確認作業でワイヤショートが発見されるまで不良品を作り続けてしまう。ここで、ワイヤショートの発見が早ければ早いほど良いことは言うまでもない。よって、作業性の向上のために、ワイヤボンディング作業の途中で装置を停止して、ワイヤショートの有無を確認するのではなく、ワイヤショートの判定を自動で行い、ワイヤショートが発生したと判定した時点でワイヤボンディング装置を停止させる技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの符号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの符号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0018】
本発明によるワイヤボンディング装置は、キャピラリ(51)と、座標検出部(54、62)と、接触検出部(53)と、記憶部(63)と、演算部(64)とを備えている。ここで、キャピラリ(51)は、ワイヤ(31〜35)の両端をそれぞれボンディングパッド(11、21)に接合する。座標検出部(54、62)は、キャピラリ(51)の先端座標(34a〜34n、35a〜35r)を検出する。接触検出部(53)は、両端がボンディングパッド(11、21)に接合されたワイヤ(31〜35)およびキャピラリ(51)の先端部の接触を検出する。記憶部(63)は、ワイヤ(31〜35)およびキャピラリ(51)の先端部の接触を接触検出部(53)で検出した時の、座標検出部(54、62)で検出されたキャピラリ先端座標(34a〜34n、35a〜35r)を記憶する。演算部(64)は、記憶部(63)に保存された第1のワイヤ(31〜35)の接触座標(34a〜34n、35a〜35r)と第1のワイヤ(31〜35)の上方に形成された第2のワイヤ(31〜35)の接触座標(34a〜34n、35a〜35r)とから第1のワイヤ(31〜35)と第2のワイヤ(31〜35)の間の距離を演算する。
【0019】
本発明によるワイヤボンディング方法は、(a)周回単位でワイヤ(31〜35)の第1のボンディングを実施するステップと、(b)前記ステップ(a)の後に、直近にボンディングされた周回のワイヤ形状を測定する第1の測定を実施するステップと、(c)ステップ(b)の後に、第2のボンディングおよび第2の測定を実施するステップと、(d)ステップ(b)および(c)で得られた測定結果に基づいて、第1および第2のボンディングによるワイヤ(31〜35)同士の距離を演算するステップとを具備する。
【発明の効果】
【0020】
本発明のワイヤボンディング装置およびワイヤボンディング方法によれば、周回単位でワイヤをボンディングするたびに、その形状を計測して記憶する。さらに、記憶された計測結果に基づいて、上下に隣接するワイヤ同士の間隔を演算することで、ワイヤショートの有無が判定される。ここで、ワイヤボンディングの作業の途中で装置を停止する必要が無く、ワイヤショートの有無の判定は機械的かつ自動的に行われる。しかも、1個の半導体チップの全てのワイヤボンディングが完了した次のステップでワイヤショートの有無が判明するので、それ以上の不良品を増やさずに済む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、従来技術によるワイヤショートの確認方法を示す図群である。図1(a)は、3周回分のワイヤをボンディングした後のボンディングワイヤの様子を示す平面図である。図1(b)は、2周回分のワイヤをボンディングした時点のボンディングワイヤの様子を示す平面図である。
【図2】図2は、ボンディングワイヤを用いた半導体装置の構成例を示す側面図である。
【図3】図3は、本発明のワイヤボンディング装置の構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、本発明のワイヤボンディング方法を示すフローチャートである。
【図5】図5は、本発明のワイヤボンディング方法において、測定されるワイヤと、キャピラリとの位置関係の例を示す側面図である。
【図6】図6は、本発明のワイヤボンディング方法において、ワイヤショートが見つかった半導体装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付図面を参照して、本発明によるワイヤボンディング装置およびこの装置を用いたワイヤボンディング方法を実施するための形態を以下に説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
図3は、本発明のワイヤボンディング装置の構成を示すブロック図である。図3のワイヤボンディング装置は、キャピラリ51と、超音波振動子52と、ピエゾセンサー53と、ボンディングヘッド部54と、バス61と、制御部62と、記憶部63と、演算部64とを具備している。
【0024】
キャピラリ51は、超音波振動子52の先端部に接続されている。超音波振動子52は、ボンディングヘッド部54に接続されている。ピエゾセンサー53は、超音波振動子52に接続されている。バス61は、ピエゾセンサー53と、ボンディングヘッド部54と、制御部62と、記憶部63と、演算部64とに接続されている。
【0025】
本発明のワイヤボンディング装置は、大きく分けて、2つの機能を有する。第1の機能は、ワイヤボンディングを行う。第2の機能は、ボンディングされたワイヤの形状を計測する。本発明のワイヤボンディング装置の2つの機能について、図4を用いて説明する。図4は、本発明のワイヤボンディング方法を示すフローチャートである。
【0026】
図4のフローチャートは、第0〜第7のステップS0〜S7を具備している。
【0027】
第0のステップS0では、本発明のワイヤボンディング方法を開始する。第0のステップS0の次には、第1のステップS1に進む。
【0028】
第1のステップS1では、1周回単位のワイヤのボンディングを実施する。なお、上述したとおり、1周回のボンディングワイヤは、同じ側面を有する。言い換えれば、1周回のボンディングワイヤはほぼ同じ包絡面に含まれている。
【0029】
ここで、本発明のワイヤボンディング装置の第1の機能について詳細に説明する。制御部62は、ボンディングヘッド部54、超音波発振子(図示せず)の電源(図示せず)のそれぞれに向けた制御信号を生成する。ボンディングヘッド部54は、この制御信号に応じて、超音波振動子52を上下方向および水平方向に駆動する。超音波振動子52の先端部に接続されたキャピラリ51は、このボンディングヘッド部54の駆動に応じて、ボンディングワイヤを、一方では半導体チップ10のボンディングパッド11に、他方では実装基板20のボンディングパッド21に、接合する。なお、この制御信号は、記憶部63に記憶されたデータや、演算部64を用いて演算されるデータなどに応じて生成されても構わない。また、この制御信号は、記憶部63に格納されることが望ましい。
【0030】
この動作を繰り返すことで、1周回単位のワイヤのボンディングが完了する。第1のステップS1の次には、第2のステップS2に進む。
【0031】
第2のステップS2では、直近にボンディングした周回単位のワイヤ形状を測定する。このとき、本発明のワイヤボンディング装置は、第1のステップS1と同じ要領で、キャピラリ51を測定対象となるボンディングワイヤの真上に移動する。すなわち、制御部62が生成する制御信号に応じて、ボンディングヘッド部54がキャピラリ51を水平方向に移動する。なお、このときに、第1のステップS1で記憶部63に格納されたデータを用いても構わない。
【0032】
キャピラリ51が測定対象ワイヤの真上に移動したら、ボンディングヘッド部54が、制御部62からの制御信号に応じて、キャピラリ51の先端を、測定対象ワイヤに向けて下降する。このとき、キャピラリ51の先端が下降するスピードは、測定対象ワイヤを変形しない程度に十分ゆっくりであることが望ましい。
【0033】
下降を続けるキャピラリ51が、測定対象ワイヤに接触すると、ピエゾセンサー53が反応して信号を出力する。ピエゾセンサー53からの信号は、バス61を介して制御部62に供給される。制御部62は、ピエゾセンサー53からの信号を受信すると、即座に、キャピラリ51を停止するための制御信号をボンディングヘッド部54に向けて出力する。なお、本発明では、ピエゾセンサー53に限定する必要は無く、その代わりに、ボンディングワイヤ34とキャピラリ51との接触を検出する任意の接触検出部を用いても構わない。
【0034】
これまでの説明で、測定対象ワイヤにおける1点の座標が測定される。次に、キャピラリ51は、測定対象ワイヤに沿って所定の距離を移動する。これらの動作を繰り返すことで、測定対象ワイヤにおける複数の点の座標、すなわちワイヤのループ形状が得られる。図5は、本発明のワイヤボンディング方法において測定される、たとえば第4周回のボンディングワイヤ34と、キャピラリ位置34a〜34nとの位置関係の例を示す側面図である。キャピラリ位置34a〜34nは、1つのキャピラリ51がワイヤ34における合計14の点の座標を測定したことを示している。言い換えれば、ボンディングヘッド部54と、制御部62とは、キャピラリ51の先端座標を検出する座標検出部として機能する。
【0035】
これまでの説明で、1本のボンディングワイヤのループ形状が得られる。次に、キャピラリ51は、別のボンディングワイヤの真上に移動する。これらの動作を繰り返すことで、直近にボンディングされた周回単位のワイヤのループ形状が測定される。
【0036】
第2のステップS2の次には、第3のステップS3に進む。
【0037】
第3のステップS3では、全ての周回のワイヤのボンディングが完了したかどうかを確認する。全てのボンディングが完了している場合は第4のステップS4に進み、その他の場合は第1のステップS1に戻って次の周回のワイヤのボンディングを実施する。
【0038】
第4のステップS4では、上下に隣接する周回単位のワイヤ間隔を演算する。すなわち、第2のステップS2で記憶部63に格納されたワイヤのループ形状のデータに基づいて、異なる周回に属しながら、水平座標で同じ乃至十分に近い値を共有するワイヤの組み合わせを全てピックアップして、それぞれの組み合わせについて上下方向のワイヤ間隔を演算する。
【0039】
図6は、本発明のワイヤボンディング方法において、ワイヤショートが見つかった半導体装置を示す側面図である。図6に描かれたキャピラリ位置35a〜35rは、第2のステップS2で計測された第5周回のボンディングワイヤの測定軌跡(位置)を示す。図6のデータと、図5のデータとを重ね合わせることで、図5のキャピラリ位置34gと、図6のキャピラリ位置35iとの周辺では、ワイヤ間隔が小さいことが読み取れる。
【0040】
第4のステップS4の次には、第5のステップS5に進む。
【0041】
第5のステップS5では、全てのワイヤにおいて、上下方向の間隔が規定値以上であるかどうかを確認する。全てのワイヤにおいて、上下方向の間隔が規定値以上であれば、第7のステップS7に進む。その他の場合は、第6のステップS6に進む。
【0042】
図6の例では、演算部64は、図5のキャピラリ位置34gと、図6のキャピラリ位置35iとの周辺において、ワイヤ間隔が規定値未満(エラー)であると判定し、本発明のワイヤボンディング方法は第6のステップS6に進む。
【0043】
第6のステップS6では、エラーが発生しているので、本発明のワイヤボンディング装置の稼働を停止する。これは、ワイヤショートの発生を止めるために必要な措置を取るためであり、また、同じワイヤショートが発生した半導体装置をこれ以上生産しないためでもある。
また第6のステップでは、ワイヤボンディング装置の稼働が停止したことをオペレータに知らせるために、制御部62は例えばワイヤボンディング装置に備えられた警報灯やブザーなどの報知部(図示せず)に異常停止状態にあることを作業者に報知させる信号を送り出してもよい。
【0044】
第7のステップS7では、本発明のワイヤボンディング装置は正しく稼働しているので、そのまま稼働を継続する。
【0045】
以上に説明したように、本発明のワイヤボンディング装置およびワイヤボンディング方法によれば、ワイヤボンディングの作業の途中で装置を停止する必要が無く、ワイヤショートの有無の判定は機械的かつ自動的に行われる。しかも、全てのワイヤボンディングが完了した次のステップでワイヤショートの有無が判明するので、それ以上の不良品を増やさずに済む。
またワイヤショート有無の判定は、全ての製品(個体)や全周回間毎におこなっても良いし、例えばリスクが高いと思われる特定周回間でのみに適用したり、一定処理数毎や一定時間毎に区切って抜き取りで実施したりすることで生産性を向上させても良い。全製品に適用しなくても、ワイヤショート不良の発生の拡大を抑制することができる。
【0046】
本発明を、特許文献1発明と比較する。特許文献1発明では、上限に隣接するボンディングワイヤの間に絶縁膜を付加することで、ワイヤショートを防いでいる。その一方で、本発明ではこのような絶縁膜を必要としないので、コスト面で優れている。
【0047】
本発明を、特許文献2発明と比較する。特許文献2発明では、複数のボンディングワイヤの長さを算出して、算出された各長さに基づいて複数のボンディングワイヤの高さを推定している。その一方で、本発明では、実際の測定によってボンディングワイヤの高さを得ることによって、ワイヤショートの有無を確実に検出するという点で優れている。
【0048】
本発明を、特許文献3発明と比較する。特許文献3発明では、ループ形状を工夫することでワイヤショートの回避を試みている。しかし、どんなループ形状であっても、ワイヤショートのリスクを根絶することは出来ない。本発明では、どんなループ形状であっても、ワイヤショートが発生すればこれを確実に検出するという点で優れている。
【符号の説明】
【0049】
10 半導体チップ
11 (半導体チップ側)ボンディングパッド
20 実装基板
21 (実装基板側)ボンディングパッド
31 第1周回のボンディングワイヤ
32 第2周回のボンディングワイヤ
33 第3周回のボンディングワイヤ
34 第4周回のボンディングワイヤ
34a〜34n キャピラリ位置
35 第5周回のボンディングワイヤ
35a〜35r キャピラリ位置
40 ループ高さ
51 キャピラリ
52 超音波振動子
53 ピエゾセンサー
54 ボンディングヘッド部
61 バス
62 制御部
63 記憶部
64 演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤの両端をそれぞれボンディングパッドに接合するキャピラリと、
前記キャピラリの先端座標を検出する座標検出部と、
前記両端がボンディングパッドに接合されたワイヤ、および、前記キャピラリの先端部の接触を検出する接触検出部と、
前記ワイヤおよび前記キャピラリの先端部の接触を前記接触検出部で検出した時の、前記座標検出部で検出された前記キャピラリ先端座標を記憶する記憶部と、
前記記憶部に保存された第1のワイヤの前記接触座標と前記第1のワイヤの上方に形成された第2のワイヤの前記接触座標とから前記第1のワイヤと前記第2のワイヤ間の距離を演算する演算部と
を備えた
ワイヤボンディング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤボンディング装置において、
前記座標検出部は、
上下に隣接する周回単位のワイヤ同士の間隔が、所定の規定値以下となるワイヤの組み合わせが見つかった場合、前記ワイヤボンディング装置の動作を自動的に停止する制御部
をさらに具備する
ワイヤボンディング装置。
【請求項3】
(a)周回単位でワイヤの第1のボンディングを実施するステップと、
(b)前記ステップ(a)の後に、直近にボンディングされた周回のワイヤ形状を測定する第1の測定を実施するステップと、
(c)前記ステップ(b)の後に、第2のボンディングおよび第2の測定を実施するステップと、
(d)前記ステップ(b)および(c)で得られた測定結果に基づいて、前記第1および前記第2のボンディングによるワイヤ同士の距離を演算するステップと
を具備する
ワイヤボンディング方法。
【請求項4】
請求項3に記載のワイヤボンディング方法において、
(e)前記ステップ(d)で得られた結果に基づいて、前記上下に隣接する周回単位のワイヤ同士の間隔が所定の規定値以上であることを確認するステップと、
(f)前記ステップ(e)で得られた結果に基づいて、前記ワイヤ同士のショートが存在する場合にはワイヤボンディング装置を停止するステップと
をさらに具備する
ワイヤボンディング方法。
【請求項5】
請求項3に記載のワイヤボンディング方法において、
前記ステップ(b)は、
(b−1)キャピラリの先端を、前記周回のワイヤの真上に移動するステップと、
(b−2)前記キャピラリの先端を、前記ワイヤに向けて下降するステップと、
(b−3)前記キャピラリの先端が前記ワイヤに接触した際に、前記下降を止めるステップと、
(b−4)前記ステップ(b−3)における前記キャピラリの座標に基づいて、前記ワイヤの形状を部分的に記憶するステップと、
(b−5)前記キャピラリの先端を、前記ワイヤに沿って所定の距離だけ移動するステップと、
(b−6)前記ワイヤ全体の形状を記憶するまで、前記ステップ(b−1)〜(b−5)を繰り返すステップと、
(b−7)前記周回の全てのワイヤのそれぞれについて、前記ステップ(b−6)を実行するステップと
を具備する
ワイヤボンディング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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