説明

ワイヤーハーネスの可動経路解析システム

【課題】ワイヤーハーネスの振れる可動範囲を予測し、ワイヤーハーネスの振れの経路をより実際のワイヤーハーネスにおける値に近づけたワイヤーハーネスの可動経路解析システムを提供する。
【解決手段】ワイヤーハーネスの可動範囲予測手段に、FEM解析を用いて最外点Mpxを含むワイヤーハーネスWの振れの経路Waを算出し表示する可動経路の表示システムにおいて、
経路Waを実際のワイヤーハーネスの振れを測定して求めた回帰式によって補正する補正部7を設け、補正部7は回帰式hや条件データa乃至fを記憶する回帰式記憶手段76を備え、条件データa乃至fを回帰式hに適用して最外点補正値を算出する最外点演算手段77を備え、算出された最外点補正値を前記経路Waに適用して補正された新たな経路Waを演算する最外点修正手段78を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、拘束具で互いに間隔を置いて拘束されて配索され、自動車や家電製品などの電気系統を必要とする機器の製造工程で電気系統の配線を行う線状柔軟物、例えばワイヤーハーネスにおいて、FEM解析により解析された節点群で構成されるライン状の解析モデルに対応する基準配索経路から強制的に移動させ得る可動範囲が、FEM解析により解析してワイヤハーネス可動範囲面として表示するワイヤハーネスの可動範囲予測方法を使用し、その可動範囲面の中の任意の最大可動位置に対応する最外点を選択し、その最外点を含むワイヤーハーネスの可動経路を表示してワイヤーハーネスの振れによる周辺部品との干渉を防止可能とするワイヤーハーネス可動経路表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や家電製品等の内部に配設される電気系統の配線は、ワイヤーハーネスによって結線されるのが一般的である。このワイヤーハーネスは、長細い線状で、且つ柔軟性を有する線状柔軟物であり、自動車機器や電気機器等へ電気を供給する電線を外皮によって束ねたものであり、例えば自動車ではあらゆる部分に張り巡らされている。
このワイヤーハーネスは、結線するに当たって、作業の円滑化を図るためにはワイヤーハーネスに予め余分な長さを持たせておいてワイヤーハーネスの取り回しを容易にしておいて結線する等、ワイヤーハーネス長やワイヤーハーネス支持部を考慮することが肝要であった。この支持部の考慮や、余分な長さをどの程度持たせておくか等を考慮することで、製造コストを抑えて尚かつ取り付け作業を容易にすることが出来るので、製造コスト及び製造工程に要する時間を最小にすることが求められている。
そのため従来から拘束具間でワイヤーハーネスが振れた時の可動範囲をFEM解析によって予測し、その予測した可動範囲を液晶ディスプレイ等の表示手段で表示させる方法が模索されており、従来は以下に表すような『ワイヤー様構造物の可動範囲予測方法及びその装置』(特開2004−119613号、以下、従来例1という。)によって表示させていた。
【0003】
従来例1には、複数本の線条材から構成されるワイヤを円形断面で線形性が保たれた複数の梁要素が結合された弾性体とみなし、コンピュータによるFEM解析を利用した計算により、所定箇所に配索されるワイヤの可動範囲を予測する方法であって、安定しているワイヤにおける拘束部位以外の複数の梁要素のそれぞれの結合点である節点に対して、所定の方向に所定の力を加えたときのワイヤの可動範囲を、ワイヤの形状特性、材料特性及び拘束条件を満たすようにFEM解析を利用して算出するワイヤ様構造物の可動範囲予測方法が開示されている。
【0004】
即ち、両端をクランプされたワイヤハーネスにつき、その拘束位置及び方向を拘束条件として、フックの法則に応じて、節点もしくは梁要素に3軸方向に並進及び3軸方向回りの6個の自由度、つまり各梁要素の両節点につき12個の自由度を持つとして、ワイヤハーネスの長さ及び断面積の形状特性並びに梁要素の断面積、断面二次モーメント、密度、縦弾性係数及び横弾性係数の材料特性に対応する12行12列の剛性ベクトルと、並進及び回転の12行の変位ベクトルとの積が、12行の力ベクトルに相当する関係が成立することを前提にする。そして、3個以上の節点が連続するワイヤハーネスにつき、各節点間の変位の連続性と力が釣合うことを前提に、下記の式(1)のフックの法則に対応する配索経路関数によりワイヤハーネスの配索経路が解析される。
【0005】
[K]{x}={F}・・・式(1)
K:前述の形状特性及び材料特性を基に算出もしくは実測され、かつ前述のばね定数に相当する剛性ベクトル、x:変位ベクトル、F:力ベクトル。
【0006】
これにより、ワイヤハーネスの両端の拘束位置及び拘束する方向を規定する拘束条件を前提に、ワイヤハーネスの長さ・円形断面形状の形状特性及び材料特性に応じて、弾性体としての梁要素が介在する各節点の互いの三次元方向の力を均衡させた状態に基準の配索経路が解析されると共に、節点に力を加えた場合の配索経路、即ち重力、エンジン駆動、走行時の振動等に起因する基準配索経路からの変位が解析され、また変位に対する力も解析可能となった。
【0007】
また、他の従来例としては『柔軟物の変形解析装置』(特開2005−149055号、以下、従来例2という。)があった。この従来例2には、画面上にワイヤハーネス等の柔軟物の三次元形状を模したグラフィック表示を行う画像表示手段と、柔軟物の画面上で指示された特定部位及び移動させられた移動位置を三次元仮想空間の三次元座標値として認識する座標値認識手段と、柔軟物の解析モデルに対して認識された特定部位を含めて拘束部位間を分割する複数個の節点を設定する節点設定手段と、柔軟物の材料特性データ、形状データ及び拘束条件を入力条件として、認識された移動位置及び設定された節点の三次元座標値データに応答して、FEM解析により特定部位の移動に伴って初期状態の解析モデルが変形するのを解析して変形解析モデルを作成する変形解析手段とを備えて、変形した柔軟物の三次元形状を模したグラフィック表示を行う柔軟物の変形解析装置が開示されている。これにより、ワイヤハーネスの一端に取付けられたコネクタを外す際に、その移動経路及び周辺の干渉物に対する位置関係を確認できるようにしたものであった。
【0008】
本発明者はこれらを踏まえ、『ワイヤーハーネスの可動範囲解析方法及び装置』(特願2007−228579号、以下、従来例3という。)を発明した。
この従来例3は、「拘束具で互いに間隔をおいて拘束されて配索されるワイヤーハーネスについて、節点群のそれぞれの間に弾性体としての梁要素が介在すると見なしたライン状の解析モデルに対して、FEM解析によりワイヤーハーネスの形状特性、材料特性及び拘束条件に対応して解析された基準配索経路からワイヤーハーネスを強制的に移動させ得る可動範囲をFEM解析により解析するワイヤーハーネスの可動範囲解析方法であって、
【0009】
両側の拘束点間の直線状の基準ラインを底辺とし、基準ラインを含む平面状の解析面上において解析モデルのライン長を2辺の長さとする三角形の頂点を形成するように、任意の複数個の節点を頂点にそれぞれ幾何学的に位置設定し、
各頂点に所属の節点が基準配索経路から移動可能か否かを解析するための節点の解析経路として、基準ラインに対する垂線を各頂点からそれぞれ設定し、頂点を可動範囲の限界として、各解析経路上での所属の節点の設定位置においてワイヤーハーネスの形状特性、前記材料特性及び前記拘束条件に対応するワイヤーハーネスの変形が許容され得るか否かにより、最大可動位置を解析し、この最大可動位置の解析を、基準ラインを中心に所定の回転角ごとに回転させた複数の解析面ごとに行なうことを特徴とするワイヤーハーネスの可動範囲解析方法」にかかる。
【0010】
即ち、従来例3は、図9に表すように、自動車のインストルメントパネル等に配索されるワイヤーハーネスWについて、解析された配索経路からの最大可動範囲を解析するパソコン101に、その表示部としてのディスプレー部102と、入力部としてのキーボード103及びマウス104並びにディスクドライブ105等を有する入出力部106が付属している。そしてディスクドライブ105は、入出力用に記録媒体がセットされる装置である。
【0011】
パソコン101は、CPU、RAM、記憶装置としてのハードディスクドライブ等を内蔵し、ハードディスクドライブに予め記憶されるプログラムをCPU他の手段によって作動させるものであり、以下の各手段によって構成する。尚、これら各手段は、CPU、RAM、ハードディスクドライブ等、通常コンピュータ装置が備える手段によって随時構築され、処理されることとなる。
解析条件格納手段111は、ワイヤーハーネスWの材料特性及び形状特性並びに拘束部位の三次元座標値及び拘束方向等の拘束条件等の解析条件を格納する。配索経路解析手段110は、解析条件格納手段111の解析条件を基に拘束具CLで互いに間隔をおいて拘束されワイヤーハーネスWの安定した基準配索経をFEM解析により中心ラインのライン状の解析モデルについて解析する。表示制御手段112は、入力された画像表示データに応答してディスプレー部102の画面102aに三次元仮想空間を表示し、三次元形状を模したグラフィック表示を行なわせる。可動範囲解析部120は、頂点設定手段121と、解析経路設定手段122と、可動位置確定手段123と、可動範囲データ作成手段124からなり、ワイヤーハーネスの可動範囲を解析可能に構成されている。
【0012】
そして、上記従来例3は、図12に表すように、ワイヤーハーネスの可動範囲解析方法を順次処理するフローチャートに従って動作する。以下、該フローチャートに沿って従来例3の動作を説明する。
先ず最初に入出力部105から関連の解析ソフトをロードさせ解析条件等の入力を行いワイヤーハーネスWに対して予め登録された解析条件格納手段111の解析条件に応じて配索経路解析手段110により基準の安定した配索経路が解析される。解析された配索経路は、表示制御手段112がワイヤーハーネスWの円形断面に対応して円筒状に肉付けされた配索形状を、三次元形状を模して画面102aに表示させる。そして、図11に示される拘束具CL1、CL2間の配索経路について、その可動範囲の解析を指令する。すると図12に表すステップS101が実行される。ステップS101では、可動範囲解析部120において、それぞれの節点b1〜b10について三角形を形成する頂点が各基準面について解析される。この解析状態を表すのが、図10(B)である。ステップS101に続いてはステップS102が実行される。
【0013】
ステップS102では、垂線状の解析経路が設定される。この設定は、ハードディスクドライブに記憶させたりメモリ上に記憶させれば良い。次いでステップS103が実行される。
【0014】
ステップS103では、ステップS102で設定された解析経路上で、基準の配索経路から所属の節点b1〜b10の移動が許容される最外可動位置Mh111〜Mh1011をFEM解析により解析する。この状態が図10(C)に表す状態である。
図10(C)に×印で表すのは頂点であり、○印で表すのは最外可動位置である。つまり、節点b1〜b10を所属の解析経路に沿って頂点に向けて移動させ、解析モデルM1の解が得られるか否か、即ち前述の式(1)による配索経路関数が収束する限界位置を最大可動位置Mh111〜Mh1011として確定し、前記同様記憶する。次いでステップS104が実行される。
【0015】
ステップS104では、ステップS103で記憶した最大可動位置Mh111〜Mh1011を読み出し、この最大可動位置Mh1〜Mh10を各基準面ごとに結ぶと共に、共通の頂点の最大位置Mh1〜Mh10同士も順に結んで作成された最外可動範囲データに応答して、任意の基準面を正面視した状態で、基準の配索経路からの最大可動範囲を確認させるメッシュ状の三次元画像が画面2aに表示される。この表示された状態を、図10(D)で表す。確認のために必要な回転位置を入力装置104で指定して、その領域の正面視の画像を表示させることもできる。
【0016】
しかしながら、従来例3のワイヤーハーネスの可動範囲解析方法であるとワイヤーハーネスの振れる可動範囲は予測できたが、実際に問題が発生する任意の一つの最外点にワイヤーハーネスが振れるまでの経路を示すことはできず、その振れの経路は不明であった。そのため、実際のワイヤーハーネスが振れる経路の予測が困難なためワイヤーハーネスを実際に配設する場合に設計等において対策が取り難いという問題点があった。そこで発明者は、更に『ワイヤーハーネス可動経路表示システム』(特願2008−011098号、以下、従来例4という。)を発明した。
【0017】
以下に従来例4を説明する。
従来例4は、請求項1に『拘束具で互いに間隔を置いて拘束されて配索されるワイヤハーネスについて、節点群のそれぞれの間に弾性体としての梁要素が介在すると見なしたライン状の解析モデルに対して、FEM解析によりワイヤハーネスの形状特性、材料特性及び拘束条件に対応して解析された基準配索経路からワイヤハーネスを強制的に移動させ得る可動範囲を解析して可動範囲を予測し、その可動範囲面を表示するワイヤハーネスの可動範囲予測方法に加えて、
表示されたワイヤーハーネスの可動範囲面の最大可動位置の任意の位置に複数の最外点を作成し表示する最外点自動表示手段と、
作成され表示された最外点に経路解析条件を付与する最外点経路解析条件付与手段と、
表示されている任意の一つの最外点を選択する選択指示手段と、
選択指示手段によって選択された最外点に付与されている解析条件によってFEM解析を行い、その最外点を含むワイヤーハーネスの振れの経路を表示する経路表示手段とからなることを特徴とするワイヤーハーネスの可動経路表示システム。』を開示している。
【0018】
また、請求項2には、『ワイヤハーネスの可動範囲予測方法が、両側の拘束点間の直線状の基準ラインを底辺とし、基準ラインを含む平面状の解析面上において解析モデルのライン長を2辺の長さとする三角形の頂点を形成するように、任意の複数個の節点を頂点にそれぞれ幾何学的に位置設定し、
各頂点に所属の節点が基準配索経路から移動可能か否かを解析するための節点の解析経路として、基準ラインに対する垂線を各頂点からそれぞれ設定し、
頂点を可動範囲の限界として、各解析経路上での所属の節点の設定位置においてワイヤハーネスの形状特性、材料特性及び拘束条件に対応するワイヤハーネスの変形が許容されるか得か否かにより、最大可動位置を解析し、
この最大可動位置の解析を、基準ラインを中心に所定の回転角ごとに回転させた複数の解析面毎に行うことによってワイヤハーネスの可動範囲面を作成するワイヤーハーネスの可動範囲予測方法である請求項1に記載のワイヤーハーネス可動経路表示システム。』を開示している。
【0019】
この従来例4は、従来例3に記載されたワイヤーハーネス可動範囲予測手段(図12(E))に基づいており、従来例4であるワイヤハーネスの可動範囲予測方法に使用される可動範囲解析装置を図9に示し以下説明する。
【0020】
可動範囲解析装置は、例えば自動車のインストルメントパネルもしくはその周辺のボデー内に間欠的に順に拘束されて配索されるワイヤハーネスについて、その解析された配索経路からの最大可動範囲を解析するのにパソコン101を用いるもので、さらにディスプレイ部102と、入力部としてのキーボード103及びマウス104並びにCD等の記録媒体がセットされる入出力用のディスクドライブ106等の入出力部105とが付属すると共に、CPU、メモリ等を内蔵してプログラムにより作動することにより次の各部を構成している。
【0021】
即ち、ワイヤハーネスの材料特性及び形状特性並びに拘束部位の三次元座標値及び拘束方向等の拘束条件等の解析条件を格納する解析条件格納手段111と、その解析条件を基に拘束具で互いに間隔を置いて拘束されワイヤハーネスの安定した基準配索経路をFEM解析により中心ラインのライン状の解析モデルについて解析する配索経路解析手段110と、入力する画像表示データに応答してディスプレイ部102の画面102aの三次元仮想空間に三次元形状を模したグラフィック表示を行わせる表示制御手段112と、ワイヤハーネスの可動範囲を解析する可動範囲解析部120と、ワイヤーハーネス可動経路表示部130とから構成される。
【0022】
この可動範囲解析部は、両側の拘束点間の直線状の基準ラインを底辺とし、基準ラインを含む平面状の解析面上において解析モデルのライン長を2辺の長さとする三角形の頂点を形成するように、任意の複数個の節点を頂点にそれぞれ幾何学的に位置設定する頂点設定手段121と、その幾何学的な各頂点に所属の節点が基準配索経路から移動可能か否かを解析するための節点の解析経路として、基準ラインに対する垂線を各頂点からそれぞれ設定する解析経路設定手段122と、頂点を可動範囲の限界として、各解析経路上での所属の節点の設定位置においてワイヤハーネスの形状特性、材料特性及び拘束条件を基にワイヤハーネスの変形が許容され得るか否かにより最大可動位置を解析する最大可動位置確定手段123と、基準ラインを中心に所定の回転角ごとに回転させた複数面の解析面について、各解析面上における複数個の節点の解析された最大可動位置を順に結ぶと共に、回転角を異にする共通の頂点同士の最大可動位置を順に結ぶ三次元空間における可動範囲データを作成する可動範囲データ作成手段124とで構成される。
【0023】
配索経路解析手段110は、例えば図10(A)及び図11に示すように、互いに異なる方向に拘束具CL1及びCL2により完全拘束することにより配索されるべきワイヤハーネス109に対して、円形断面の線形性が保たれた複数の梁要素が節点で結合された弾性体と見なすことにより、ワイヤハーネス109の長さ・円形断面の形状特性、その中心ラインに沿った例えば5mm間隔の節点群b1〜b10の三次元座標値、梁要素の断面積、断面二次モーメント、密度、縦弾性係数、横弾性係数等の材料特性及び拘束位置・方向を解析条件として、前述の式(1)による配索経路関数を基に、各節点について前述の中心ラインを中心にした互いに力が均衡した捩れ回転量及び並進に起因する三次元位置を解析することにより、拘束点a1、a2間の安定した基準配索経路を規定するライン状の解析モデルM1を作成する。このように、ワイヤハーネス109の全域について三次元空間での配索経路を解析する。
【0024】
可動範囲解析部120の頂点設定手段121は、図10(A)(B)に示すように、両側の拘束点a1、a2間の各節点b1〜b10について、ライン状の解析モデルM1のライン長L1が例えば基準ラインB1の距離100mmに対して、湾曲分だけ長くなった約110mmとして頂点位置をそれぞれ演算する。つまり、底辺の長さと、頂点の両側の2辺の長さの和とが既知であると、三角形、即ち頂点位置が規定され得ることを前提に、各節点b1〜b10について、両側の拘束点a1、a2間の直線状の基準ラインB1を底辺とし、ライン長L1及びそのライン上の任意の節点両側の線分長に応じて規定される三角形の頂点位置を設定する。
【0025】
解析経路設定手段122は、図10(C)に示すように、それぞれの頂点位置からの基準ラインB1に対する垂線の足である交点h1〜h10を解析し、それぞれの垂線を設定する。可動位置確定手段123は、各基準面について、節点b1〜b10について、所属の垂直状の解析経路において基準の配索経路(図10(A))から幾何学的な頂点に向けて微小間隔で逐次移動させる際の収束する最大位置Mh1〜Mh10を、配索経路解析手段110を構成する前述の式(1)の解析ソフトを利用して解析する。
【0026】
つまり、各節点b1〜b10の所属の解析経路を微小量ずつ逐次移動させる過程で、図13を基に前述したように、節点b1に所属の共通位置の両側の節点同士、節点b2の両側の節点同士、・・・・・・節点b10の両側の節点同士の変位が等しく、かつ力が釣り合う範囲で最大位置を解析する。因みに、移動量に相当する変位ベクトル{x}に対して剛性ベクトル[K]の両側での相違により隣同士の節点の変位が等しくなり得なかったり、或は周辺の配索形状の変化により力ベクトル{F}が均衡し得ないと、式(1)の関係が不成立、つまり収束しないことになる。
【0027】
節点b1については、幾何学的な最大位置に移動させる過程でワイヤハーネス109の変形曲率が小さくなり、収束可能な範囲な最大位置Mh1が、×印で示す頂点v1よりも下方位置に確定される。節点b2〜b8については、最大位置Mh2〜Mh8が×印で示す所属の頂点と一致する。節点b9については、拘束点a2での拘束方向に起因して基準ラインB1に対して逆回転位相の解析面上の配索位置から所属の解析面側へ大きく変形させられ、頂点v9には到達し得ず、基準ラインB1を僅かに越えた最大位置Mh9に確定される。節点b10については、さらに至近位置の拘束点a2の拘束により変形が制限されて逆回転位相の解析面上に最大位置Mh10に確定される。
尚、可動位置確定手段123における節点b1〜b10の所属の解析経路への設定は、頂点に向けて逐次移動させるのと逆方向に、頂点位置で収束するか否かを確認して、収束しない場合に解析経路上を頂点から基準ラインB1に向けて移動することも考えられる。
【0028】
可動範囲データ作成手段124は、図10(D)に示すように、図10(A)〜(C)に示す解析面の最大可動位置Mh11〜Mh102を点表示して順に結ぶと共に、所定の角度、例えば30°回転させた解析面の順に結ばれた最大可動位置Mh12〜Mh102と共通の頂点同士の最大可動位置の点を順に結び、同様に所定の角度ずつ360°の範囲にわたり回転させた共通の頂点同士の最大可動位置の点を順に結び、さらに最後のMh111〜Mh1011と最初の最大可動位置Mh11〜Mh102の点を結ぶ可動範囲データを作成する(図10は省略して示している)。
【0029】
表示制御手段112は、この可動範囲データに応答してディスプレイ部102の画面102a上の三次元仮想空間に、最大可動範囲を指示する三次元形状のメッシュ状画像をグラフィック表示する。その表示は、可動範囲データを配索形状の解析用のCADの三次元座標系に対して基準ラインB1を画面102a上の三次元仮想空間で正面視した状態を含めて、周知の方法により、外部からの操作指令に応じて任意の方向から見た画像表示データに変換してグラフィック表示を行う。尚、可動範囲データ作成手段の変形例として最大可動位置を表示する点同士を結ばない場合には、表示制御手段112は、最大可動範囲をメッシュ状画像でなく、点群もしくはプロット状画像としてグラフィック表示する。
【0030】
上述したワイヤーハーネス可動範囲予測手段は、図12(E)に示すフローチャートに基づき説明する。ワイヤーハーネスWの可動範囲予測をスタートすると、拘束点間の基準ラインを底辺とし、節点両側の線分長を2辺とする三角形の頂点に各節点を位置設定する。次に頂点から基準ラインへ垂線を設定する。次に頂点を限界として解析経路上で基準配索経路から節点の移動が許容される最外可動位置をそれぞれFEM解析により解析する。次に、基準ラインを中心に所定の回転角毎に回転させた複数の解析平面について、節点の最外可動位置をそれぞれFEM解析により解析する。最後に、各解析平面上で最外可動位置を順にラインで結ぶとともに、各回転角を異にする共通の頂点同士の最外可動位置を順に結んで三次元空間における可動範囲データを作成して可動範囲画像を仮想三次元により表示する。
【0031】
ワイヤーハーネス可動範囲予測手段(図12(E))によってデイスプレー部102の画面に表示されたワイヤーハーネス109の可動範囲面Aを使用して、次にワイヤーハーネス可動経路表示部130によって、ワイヤーハーネス109の可動経路を予め予測して表示する。ワイヤーハーネス可動経路表示部130は、最外点自動表示手段130、最外点経路解析条件付与手段131、経路表示手段132と、選択指示手段104とからなる。
デイスプレー部102の画面に表示されたワイヤーハーネス109の可動範囲面Aの最大可動位置Mh1−−nの任意の位置に最外点自動表示手段131により任意の複数の最外点Mpを作成し表示する(図12(F)及び図14参照)。
表示されたそれぞれの最外点Mpに最外点経路解析条件付与手段131によって経路解析条件を付与する(図12(F))。
【0032】
次に、図13及び図14に示すようにワイヤーハーネス可動経路表示部130の選択指示手段(マウス)104により画面102aに表示されている任意の一つの最外点Mpxを選択して経路解析の指示を行なう。図14において109aは、選択して経路解析を指示された最外点Mpxを含むワイヤーハーネスの解析元経路を示す。
【0033】
次に、選択指示手段104によって選択指示された最外点Mpxに付与されている解析条件によって有限要素法解析を行い、図15に示すようにその最外点Mpxを含むワイヤーハーネス109の振れの経路Waを経路表示手段32によって画面2aに表示することができる。
【特許文献1】特開2004−119613号公報
【特許文献2】特開2005−149055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
上記従来例4によれば、従来例1乃至従来例3では、ワイヤーハーネスの振れる可動範囲は予測できたが実際に問題が発生する任意の一つの最外点にワイヤーハーネスが振れるまでの経路を示すことができないという問題点を解決することが可能となった。そして、その振れの経路は不明であるために、実際の振れ経路の予測が困難であり、ワイヤーハーネスの実際の配設する場合に事前に対策が取り難いという問題点は解決される。
そして、予測手段では表示することのできなかった自動車のワイヤーハーネスの振れの可動経路を容易に表示することができるようになった。
【0035】
しかしながら従来例4においても、FEM解析を行う上で設定するワイヤーハーネスの物理特性は、ワイヤーハーネスの種類、直径等、限られたものであり、例えば、単に直径といっても、ワイヤーハーネスを構成する電線数や、該電線を保護して該電線を束ねて被覆する保護材の種類や保護材の被覆の強さ(内部での各電線の自由度)等は考慮されていないため、ワイヤーハーネスを実際に取り付ける際に起こるワイヤーハーネス各部の取り得る範囲である可動範囲の特定に誤差を生じるので、実車への配索段階で干渉の問題や過剰対策を行ってしまう部位が発見されるという問題点を有した。
【0036】
この発明は、上記問題点を鑑み、従来例4に表すワイヤーハーネスの可動範囲の特定に加え更にワイヤーハーネスの特性を特定する条件を加えて可動範囲の特定を可能とすることで、従来例4にも増して実際の配索時に近いFEM解析を可能とさせるワイヤーハーネス可動経路解析システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0037】
そこでこの発明では、上記課題を解決するために、拘束具で互いに間隔を置いて拘束されて配索されるワイヤーハーネスを複数の節点群に分割し、各節点群のそれぞれの間に弾性体としての梁要素が介在すると見なしたライン状の解析モデルを、ワイヤーハーネスの形状特性、材料特性及び拘束条件である条件データに基づいてFEM解析手段により解析させた基準配索経路から、ワイヤーハーネスを強制的に移動させ得る可動範囲を解析し予測して表示可能であり、表示されたワイヤーハーネスの可動範囲面の最大可動位置の任意の位置に複数の最外点を作成し表示する最外点自動表示手段を備え、作成された最外点に経路解析条件を付与する最外点経路解析条件付与手段を備え、作成される任意の一つの最外点を選択する選択指示手段を備え、選択指示手段によって選択された最外点に付与されている解析条件に基づいてFEM解析手段に解析を行わせ、その最外点を含むワイヤーハーネスの振れの経路を表示する経路表示手段を備えるシステムにおいて、
ワイヤーハーネスを構成する複数の構成要素毎に各構成要素の変更可能な条件データが予め記憶されて入力指示手段が選択することで該データを読み出し可能であり、且つ、条件データが予めワイヤーハーネスの変形に寄与する度合いを条件データ毎に実験して得た結果からそれぞれの条件データが変更された際に寄与する度合いを計算した関数式を回帰式として予め記憶される回帰式記憶手段を備え、
回帰式記憶手段が記憶している各構成要素である条件データを選択可能であり、選択した条件を記憶手段から補正点演算手段へ読み出し指示可能な入力指示手段を備え、
入力指示手段により選択された各条件データを回帰式記憶手段から読み出して取得すると共に、回帰式記憶手段に予め記憶された回帰式を回帰式記憶手段から取得し、回帰式に取得した各条件データを当てはめて回帰式から最外点補正値を算出する補正点演算手段を備え、
FEM解析手段が解析した最外点を取得すると共に補正点演算手段が算出した最外点補正値を取得し、FEM解析手段の解析した最外点に最外点補正値を適用して、修正最外点を算出し、最外点自動表示手段が表示する最外点を修正最外点とする最外点修正手段を備え、
経路表示手段が、該修正最外点を最外点とし、その最外点を含むワイヤーハーネスの振れの経路を表示可能であることを特徴とするワイヤーハーネスの可動経路解析システムを提案する。
【0038】
また、前記ワイヤーハーネスの可動経路解析システムにおけるワイヤーハーネスの可動範囲面の作成を、
ワイヤーハーネスを強制的に移動させ得る可動範囲を解析し予測する際に、ワイヤーハーネスに対し、両側の拘束点間の直線状の基準ラインを底辺とし、基準ラインを含む平面状の解析面上において解析モデルのライン長を2辺の長さとする三角形の頂点を形成するように、任意の複数個の節点を頂点にそれぞれ幾何学的に位置設定し、
各頂点に所属の節点が基準配索経路から移動可能か否かを解析するための節点の解析経路として、基準ラインに対する垂線を各頂点からそれぞれ設定し、
頂点を可動範囲の限界として、各解析経路上での所属の節点の設定位置においてワイヤハーネスの形状特性、材料特性及び拘束条件に対応するワイヤハーネスの変形が許容され得るか否かと、前記算出した最外点補正値とにより、最大可動位置を解析し、
この最大可動位置の解析を、基準ラインを中心に所定の回転角ごとに回転させた複数の解析面毎に行うワイヤーハーネスの可動経路解析システムを提供する。
【発明の効果】
【0039】
従ってこの発明によれば、従来の予測手段では表示することのできなかった自動車のワイヤーハーネスの振れの可動経路を容易に表示することができるばかりか、可動経路を予測する際に、予め実験によって得られた実際のワイヤーハーネスの可動経路におけるワイヤーハーネスの持つ材料特性や拘束条件などの条件データの変化による解析データへの影響を回帰式によって加味して可動経路の予測が可能となるので、より実測値に近い可動経路の予測が可能となるという効果を有する。
【0040】
そのため、自動車の走行等によるワイヤーハーネスの振れによる周辺部品との干渉を予め防ぐような配線が従来にもまして可能となり、ワイヤーハーネスの断線や異音の発生等を防止することが可能であるという効果を有する。
【実施例1】
【0041】
以下にこの発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1乃至図4はこの発明の実施形態であるワイヤーハーネス可動経路表示システムに使用されるワイヤハーネス可動範囲予測方法の説明図であり、図5は同じくワイヤーハーネスの振れの経路表示手段を表すフローチャートであり、図6は図5の最外点の任意の一つを選択指示手段で選択し指示を行なう状態を表す説明図であり、図7は図5の解析結果の経路を表示した状態を表す説明図である。
【0042】
この発明の実施形態であるワイヤーハーネス可動経路表示システムは、従来技術3に記載されたワイヤーハーネス可動範囲予測手段(図4(E))に基づく。そしてこのワイヤハーネスの可動範囲予測に使用される可動範囲解析システムを図1以下を用いて詳説する。
【0043】
可動範囲解析装置は、例えば自動車のインストルメントパネルもしくはその周辺のボデーに間欠的に順に拘束されて配索されるワイヤハーネスについて、その解析された配索経路からの最大可動範囲を解析するのにパソコン1を用いるもので、さらにディスプレイ部2と、入力部としてのキーボード3及びマウス4並びにCD等の記録媒体がセットされる入出力用のディスクドライブ6等の入出力部5とが付属すると共に、CPU、メモリ等を内蔵してプログラムにより作動することにより次の各部を構成している。
【0044】
即ち、ワイヤハーネスの材料特性及び形状特性並びに拘束部位の三次元座標値及び拘束方向等の拘束条件等に基づく解析条件を条件データとして格納する解析条件格納手段11と、その解析条件を基に拘束具で互いに間隔を置いて拘束されワイヤハーネスの安定した基準配索経路をFEM解析により、ワイヤーハーネスの中心ラインを仮想的にライン状の解析モデルとして解析する配索経路解析手段10と、入力する画像表示データに応答してディスプレイ部2の画面2aを三次元仮想空間として三次元形状を模したグラフィック表示を行わせる表示制御手段12と、ワイヤハーネスの可動範囲を解析する可動範囲解析部20と、ワイヤーハーネス可動経路表示部30とから構成される。
【0045】
また、配索経路解析手段10は、例えば図2(A)及び図3に表すように、ワイヤーハーネスWが互いに異なる方向に拘束具CL1及びCL2により完全拘束されることにより配索されるのに対して、円形断面の線形性が保たれた複数の梁要素が節点b1乃至b10で結合された弾性体と見なすことにより、ワイヤハーネス9の長さ・円形断面の形状特性、その中心ラインに沿った例えば5mm間隔の節点群b1乃至b10の三次元座標値、梁要素の断面積、断面二次モーメント、密度、縦弾性係数、横弾性係数等の材料特性及び拘束位置・方向を解析条件として、前述の式(1)による配索経路関数を基に、各節点について前述の中心ラインを中心にした互いに力が均衡した捩れ回転量及び並進に起因する三次元位置を解析可能な演算手段を備え、この演算手段が演算することにより、拘束点a1、a2間の安定した基準配索経路を規定するライン状の解析モデルM1を作成可能であり、作成した解析モデルM1のデータを記憶可能な記憶手段を備えてこれを記憶可能である。このように配索経路解析手段10は、ワイヤハーネス9の全域について三次元空間での配索経路を解析する。
【0046】
可動範囲解析部20は、両側の拘束点間を結ぶ直線を基準ラインとして算出可能な演算手段を備えており、演算手段が算出した基準ラインを底辺とし、基準ラインを含む平面である解析面上に、該基準ラインが底辺であり、解析モデルのライン長を他の2辺の長さとする三角形を形成し、この三角形の他の2辺の頂点を形成し、この三角形を任意の複数個の節点を頂点にそれぞれ幾何学的に位置設定可能な頂点設定手段21を可動範囲解析部20に備える。頂点設定手段21は、予め設定された計算式に対応させ、各節点位置を計算可能な演算手段と、演算結果を記憶可能な記憶部とを有している。頂点設定手段21では、ワイヤーハーネスが両側の拘束具間に余裕を持った長さなので基準ラインより長くなるため頂点を持って三角形が形成されることとなる。
【0047】
そして頂点設定手段21は、図2(A)(B)に表すように、両側の拘束点a1、a2間の各節点b1〜b10について、ライン状の解析モデルM1のライン長L1が例えば基準ラインB1の距離100mmに対して、湾曲分だけ長くなった約110mmとして頂点位置をそれぞれ演算する。つまり、底辺の長さと、頂点の両側の2辺の長さの和とが既知であると、三角形、即ち頂点位置が規定され得ることを前提に、各節点b1〜b10について、両側の拘束点a1、a2間の直線状の基準ラインB1を底辺とし、ライン長L1及びそのライン上の任意の節点両側の線分長に応じて規定される三角形の頂点位置を設定する。
【0048】
また、可動範囲解析部20には解析経路設定手段22を備える。解析経路設定手段22は、頂点設定手段21が設定し記憶した幾何学的な各頂点位置を頂点設定手段21からデータを読み出し、所属の節点が基準配索経路から移動可能か否かを解析するための節点の解析経路として、頂点設定手段21が設定した各頂点から基準ラインに対する垂線を予め定められている計算式により、解析経路設定手段22が備える演算手段が演算し、やはり解析経路設定手段22が備える記憶手段が記憶可能とすることで各垂線を設定する。
【0049】
そして解析経路設定手段22は、図2(C)に表すように、それぞれの頂点位置からの基準ラインB1に対する垂線の足である交点h1〜h10を解析し、それぞれの垂線を設定する。
可動位置確定手段23は、各基準面について、節点b1〜b10について、所属の垂直状の解析経路において基準の配索経路(図2(A))から幾何学的な頂点に向けて微小間隔で逐次移動させる際の収束する最大位置Mh1〜Mh10を、配索経路解析手段10を構成する前述の式(1)の解析ソフトを利用して解析する。
【0050】
つまり、各節点b1〜b10の所属の解析経路を微小量ずつ逐次移動させる過程で、図5を基に前述したように、節点b1に所属の共通位置の両側の節点同士、節点b2の両側の節点同士、・・・・・・節点b10の両側の節点同士の変位が等しく、かつ力が釣り合う範囲で最大位置を解析する。因みに、移動量に相当する変位ベクトル{x}に対して剛性ベクトル[K]の両側での相違により隣同士の節点の変位が等しくなり得なかったり、或は周辺の配索形状の変化により力ベクトル{F}が均衡し得ないと、式(1)の関係が不成立、つまり収束しないことになる。
【0051】
節点b1については、幾何学的な最大位置に移動させる過程でワイヤハーネス9の変形曲率が小さくなり、収束可能な範囲な最大位置Mh1が、×印で示す頂点v1よりも下方位置に確定される。節点b2〜b8については、最大位置Mh2〜Mh8が×印で示す所属の頂点と一致する。節点b9については、拘束点a2での拘束方向に起因して基準ラインB1に対して逆回転位相の解析面上の配索位置から所属の解析面側へ大きく変形させられ、頂点v9には到達し得ず、基準ラインB1を僅かに越えた最大位置Mh9に確定される。節点b10については、さらに至近位置の拘束点a2の拘束により変形が制限されて逆回転位相の解析面上に最大位置Mh10に確定される。
【0052】
更に可動範囲解析部20には最大可動位置確定手段23を備える。最大化同位置確定手段23は、前記頂点設定手段21が設定した頂点を可動範囲の限界として、各解析経路上での所属の節点の設定位置においてワイヤハーネスの形状特性、材料特性及び拘束条件である条件データに基づいてワイヤハーネスの変形が許容され得るか否かにより最大可動位置を解析し、解析結果を記憶可能である。従って、最大可動位置確定手段23は、演算手段および記憶手段を備えている。
【0053】
尚、可動位置確定手段23における節点b1〜b10の所属の解析経路への設定は、頂点に向けて逐次移動させるのと逆方向に、頂点位置で収束するか否かを確認して、収束しない場合に解析経路上を頂点から基準ラインB1に向けて移動することも考えられる。
【0054】
更に可動範囲解析部20には可動範囲データ作成手段24を備える。
可動範囲データ作成手段24は、演算手段及び記憶手段を備えており、前記基準ラインを中心に所定の回転角ごとに回転させた複数面の解析面について、各解析面上における複数個の節点の解析された最大可動位置を順に結ぶと共に、回転角を異にする共通の頂点同士の最大可動位置を順に結ぶ三次元空間における可動範囲データを作成可能であり、最大可動位置確定手段23に一時的に記憶された各節点の最大可動位置を読み込んで演算手段がFEM解析しその結果を順次記憶手段が記憶することで行う。そして、可動範囲データ作成手段24が作成した可動範囲データは、71へ出力される。
【0055】
可動範囲データ作成手段24は、図2(D)に表すように、図2(A)〜(C)に表す解析面の最大可動位置Mh11〜Mh102を点表示して順に結ぶと共に、所定の角度、例えば30°回転させた解析面の順に結ばれた最大可動位置Mh12〜Mh102と共通の頂点同士の最大可動位置の点を順に結び、同様に所定の角度ずつ360°の範囲にわたり回転させた共通の頂点同士の最大可動位置の点を順に結び、さらに最後のMh111〜Mh1011と最初の最大可動位置Mh11〜Mh102の点を結ぶ可動範囲データを作成する。尚、図2では、作成したデータを省略して表している。
【0056】
可動範囲データ作成手段24が解析した可動範囲データは、補正部7へ出力される。
補正部7は、この可動範囲データを補正可能な可動範囲補正部7aと、可動経路を補正可能な可動経路補正部7bとからなり、可動範囲データ作成手段24から入力される可動範囲データは、可動範囲補正部7aによって補正される。
【0057】
即ち、可動範囲データ作成手段24が作成した可動範囲データに、この発明の特徴となる、実際に拘束具CL1及びCL2で拘束したワイヤーハーネスWの各節点b1乃至b10を移動させて予め得た実測可動範囲から求めた回帰式を用いてFEM解析した可動範囲データが、実測値により近付くよう補正するために、可動範囲回帰式記憶手段71、可動範囲演算手段72、可動範囲修正手段73、条件入力手段74からなる補正部7に設けた可動範囲修正手段7aによって可動範囲データ作成手段24が求めたワイヤーハーネスWの可動範囲データに対し、条件データによる補正を行う。
【0058】
即ち、可動範囲回帰式記憶手段71は、コンピュータシステムのハードディスク(図示せず)に種々の情報を記憶可能である。可動範囲回帰式記憶手段71に記憶される情報は、可動範囲データをFEM解析するワイヤーハーネスWの物理的な構成要素である条件データであり、具体的には、可動範囲をFEM解析するに際して必要となるワイヤーハーネスWを構成する電線単体の素線径情報aと、ワイヤーハーネスWを構成する電線の種別を表す線種情報bと、ワイヤーハーネスWの断面中に電線が占める割合である占有率cと、ワイヤーハーネスWを長さ方向と直角に切断したときの直径情報dと、ワイヤーハーネスWを構成する電線を束ねて被覆している保護材の種別を表す保護材種別情報eと、ワイヤーハーネスWを構成している電線数情報fである。さらに、可動範囲回帰式記憶手段71には、補正するための回帰式hを記憶する。この回帰式hは、可動範囲再演算手段72によって読み出され、回帰式hに条件入力手段74によって選択される前記記憶された条件データを代入して算出する。
【0059】
可動範囲回帰式記憶手段71に記憶される回帰式hは、可動範囲データを特定するために各条件データがFEM解析に対して寄与する度合い、即ちFEM解析における条件データによる補正値を算出可能であり、予め実物のワイヤーハーネスWを用いて前記条件データを変更しながら拘束具CL1及び拘束具CL2によって拘束されたワイヤーハーネスWの各節点b1乃至b10を最外点へと移動させて実測データを取り、従来同様に条件データによる補正の無い場合にFEM解析された可動範囲データとの差を、条件データ毎に比較し、可動範囲データにそれぞれの条件データがどの程度寄与するかを測定し、それぞれの条件データの寄与度に係数を与えた近似式を算出して求めたものである。この回帰式hは、節点b1乃至b10それぞれの位置により異なるので、それぞれの節点b1乃至b10毎に用意されており、それぞれの節点b1乃至b10毎に算出されて記憶されている。尚、各節点b1乃至b10の間に、その節点の拘束具CL1あるいは拘束具CL2からの位置とに相関関係がある場合には、更に節点b1乃至b10の位置を条件データの一部として予め設定しておくことで、回帰式hは1つで良くなる。この実施例では、回帰式hは、図8に表すような回帰式を用いるが、その他の回帰式であってもよく、実測される可動範囲データに近い可動範囲データを得られる補正値を算出可能であればどのような式であってもよい。
【0060】
また、各条件データは表示制御手段12が予め定められたディスプレイ部2の位置に一覧表示させ、条件入力手段74(入出力部5を兼用)によって選択入力させる。そして、条件入力手段74を用いて作業者が選択した値を可動範囲回帰式記憶手段71から読み出し可動範囲演算手段72へ出力させ、可動範囲演算手段72がやはり可動範囲回帰式記憶手段71から読み出した回帰式にその値を代入して演算を行うように形成する。
例えば、素線径情報aでは、入力された電線単体の直径、例えば、1.25mmなどの直径を条件入力手段74のキーボード3から直接入力しその値を用いてもよいが、この実施例では、表示制御手段12がディスプレイ部2に素線径情報aを選択可能に一覧表を表示させ、条件入力手段74のマウス3をクリックすることで該表から値を選択可能に形成する。従って、一覧表に表示する値は予め可動範囲回帰式記憶手段71に記憶されており、条件入力手段74がこれを表示制御手段12に表示させて選択させ、その値を可動範囲回帰式記憶手段71から読み出し、可動範囲演算手段72によって回帰式に代入演算させるように形成している。
また線種情報bは、ワイヤーハーネスWを構成する素線である電線がその太さや被覆する外皮等によって堅さ等の物理特性が異なっているのでこれらを表す値であり、ワイヤーハーネスWを構成する種々の素線の情報が予め可動範囲回帰式記憶手段71に記憶されており、長さ情報aと同様、ディスプレイ部2に表示されて選択されることで回帰式hに代入可能である。この線種情報bは、作業者が印刷された一覧表などから読み取り、条件入力手段74のキーボード3によって直接入力してもよく、この場合には、入力された値を一時的に可動範囲回帰式記憶手段71等に記憶させ、可動範囲演算手段72が演算する際に回帰式hへ代入させればよい。
同様に電線数情報fも想定される本数が例えば「1」から「30」まで予め可動範囲回帰式記憶手段71に記憶されており、前記同様ディスプレイ部2に表示させて所望数を選択させ、可動範囲演算手段72の演算の際にその値を可動範囲回帰式記憶手段71から読み出して代入させる。この電線数情報fも条件入力手段74によってその数を直接入力するようにしてもよく、この場合には、入力されて数がそのまま一時的に可動範囲回帰式記憶手段71等の記憶手段へ演算時使用する電線数情報fとして記憶されて使用されればよい。
占有率cも同様であり、予め想定されるワイヤーハーネスWの断面中に電線が占める割合である占有率が定められており、可動範囲回帰式記憶手段71に想定されるワイヤーハーネスWの占有率が数値化して記憶されている。そして、前記同様ディスプレイ部2に表示されて選択させ、選択した占有率cとして読み出し回帰式hの演算に用いる。この占有率cも、直接その値を入力して用いてもよい。
直径情報dも同様であり、予め想定されるワイヤーハーネスWの直径を可動範囲回帰式記憶手段71に記憶されており、表示制御手段12がこの記憶されている直径をディスプレイ部2に表示させ、条件入力手段74によって選択入力され、選択された直径を可動範囲回帰式記憶手段71から読み出し、可動範囲演算手段72へ出力する。なお、直径情報dは、直接キーボード3から数値を入力し、その値を一時的に可動範囲回帰式記憶手段71等の記憶手段に記憶させ、可動範囲回帰式記憶手段71の演算時に読み出して用いるようにしてもよく、この実施例でも直接入力させるように形成している。
保護材種別情報eも同様であり、保護材の種類によってワイヤーハーネスWの動きが拘束されるので、予め想定されるワイヤーハーネスWを被覆している保護材の種類を特定する情報であり、可動範囲回帰式記憶手段71に想定される保護材の種類に対応してその寄与度を数値化して種々記憶されている。そして、表示制御手段12がこの記憶されている種類をディスプレイ部2に表示させ、条件入力手段74によって選択入力させ、選択された保護材の種類と対応して記憶されている寄与度を表す数値を可動範囲回帰式記憶手段71から読み出し、可動範囲演算手段72へ出力する。
【0061】
この実施例では、ワイヤーハーネスWの拘束具CL1及び拘束具CL2の間の長さ情報a、ワイヤーハーネスWを構成する電線の種別を表す線種情報b、拘束具CL1及び拘束具CL2を構成するクランプ種情報c、ワイヤーハーネスWの直径情報d、ワイヤーハーネスWの保護材の種別を表す保護材種別情報e、ワイヤーハーネスWを構成している電線数情報fが、それぞれワイヤーハーネスWの節点b1乃至b10の位置の可動範囲データに寄与する要因であり条件データとして用いたが、これらのうち寄与度の低いものを削減する、あるいは、その他に寄与する条件を付加する等して他の回帰式hとなる近似式を用いて演算するようにしてもよい。
なお、この実施例では、条件入力手段74は入出力部5により形成する。即ち入出力部5は条件入力手段74としても機能する。そして、クランプ種情報cおよび保護材種別情報e以外の条件データは、入出力部5の備えるキーボード3から実数値として入力して用い、一時的に回帰式記憶手段71等の記憶手段に記憶させておき、可動範囲演算手段72の演算時に可動範囲演算手段72へ出力するように形成し、クランプ種情報cおよび保護材種別情報eは、ディスプレイ部2に入出力部5の備えるマウス4によって選択可能に表示させ、その中から選択されたものと対応して回帰式記憶手段71に記憶された拘束寄与度を表す数値を読み出し、可動範囲演算手段72の演算時に可動範囲演算手段72へ出力するように形成する。
【0062】
また、この実施例では、ワイヤーハーネスWの保護材の種別を表す保護材種別情報eに関する条件データは、別途設ける保護材データ記憶手段75に記憶させてあり、可動範囲回帰式記憶手段71に記憶されるその他の条件データa乃至条件データd及び条件データfとは別途記憶させてあり、ディスプレイ部2に表示された保護材種別情報eの値が入出力部5のマウス4によって選択されると該当する保護材種別情報eを可動範囲回帰式記憶手段71を経由して可動範囲演算手段72へ出力するように構成するが、可動範囲回帰式記憶手段71へ記憶しておいてもよい。また、可動範囲回帰式記憶手段71と保護材データ記憶手段75とを解析条件格納手段11とは別途設けたが、実質的には、コンピュータシステム全体として解析条件格納手段11と可動範囲回帰式記憶手段71と保護材データ記憶手段75とはハードディスクドライブが記憶手段として機能しており、ハードディスクドライブに各データが予め記憶されている。
【0063】
8は回帰式精度選択部である。回帰式精度選択部8は、前記回帰式hによる計算が、求める補正値の精度によって異なるため、必要とする精度となるように入出力部5によって選択可能に表示制御手段12によって表示された値から選択可能であり、選択された値を可動範囲演算手段72へと出力する。尚、回帰式精度選択部8は、回帰式hに代入して使用する条件データa乃至条件データfから、同様に入出力部5によって選択可能に表示制御手段12によって表示された値から選択可能であり、選択された値のみを用いて他の条件データは使用しない回帰式hとして可動範囲演算手段72に演算させることが可能である。このように回帰式精度選択部8を設けることで、条件データのうち実測値と近づけるための条件としての寄与度が低い条件データを用いずに演算できるため、解析時間の短縮を図ることが可能となる。具体的には、実質的に保護材径となる直径情報dや電線種を表す電線情報bなどは、精度への影響が少ないため、回帰式精度選択部8によって選択せず回帰式hにこれらを用いた項を無くして可動範囲演算手段72が演算する等である。
【0064】
このように構成する可動範囲補正部7aは、可動範囲演算手段72では、入出力部5による可動範囲回帰式記憶手段71および保護材データ記憶手段75からの条件データの入力が完了すると回帰式記憶手段71に記憶されている回帰式hを読み出し、条件データが回帰式hへ代入され、可動範囲データを補正する可動範囲補正値を演算する。
可動範囲補正値を算出するための回帰式hは、前記した通り節点b1乃至b10によりそれぞれ異なり、節点b1の回帰式hは図8(a)に例示するように、最も補正精度の良い回帰式は全ての条件データa乃至条件データfを用いたものであり、係数Ka乃至Kfがそれぞれ条件データa乃至条件データfの寄与度を表す係数を表している。そして、図8(a)に表す例では、可動範囲補正値の精度は実測データとの合致率が95パーセントに達してる。また、図8(b)に表す例は、演算処理を速くさせるために、条件データa及び条件データeのみを使用したときの回帰式hを表しており、係数及び条件データは、比較的寄与度の大きな長さ情報a及び保護材種別情報eのみを用いたものである。この図8(b)に表す回帰式hを用いた例では、補正値の精度は実測データとの合致率が70パーセント程度となる。そして、閾値として合致率90パーセントを選択すると、図8(c)に表すように、条件データa及び条件データe並びに条件データfを用いた回帰式hであり、この場合には、補正値の精度は実測データとの合致率が所望の90パーセントとなる。
【0065】
73は可動範囲修正手段である。可動範囲修正手段73は、可動範囲データ作成手段24から演算結果を取得可能に接続されると共に可動範囲演算手段72から演算結果を取得可能に接続され、可動範囲データ作成手段24から取得した可動範囲データと可動範囲演算手段72から取得した可動範囲補正値とを用い、可動範囲データ作成手段24の演算した可動範囲データを修正し、新たな可動範囲データとして最外点自動表示手段31へ出力可能である。
従って可動範囲修正手段73では、従来可動範囲データ作成手段24が解析した可動範囲データを実際のワイヤーハーネス取付け時に近づけるように補正し、補正された新たな可動範囲データを提供する。
【0066】
表示制御手段12は、可動範囲データ作成手段24が作成した可動範囲データに応答してディスプレイ部2の画面2a上に、最大可動範囲を指示する三次元形状のメッシュ状画像を三次元仮想空間のグラフィックとして表示する。その表示は、可動範囲データを配索形状の解析用のCADの三次元座標系に対して基準ラインB1を画面2a上の三次元仮想空間で正面視した状態を含めて、周知の方法により、外部からの操作指令に応じて任意の方向から見た画像表示データに変換してグラフィック表示を行う。尚、可動範囲データ作成手段の変形例として最大可動位置を表示する点同士を結ばない場合には、表示制御手段12は、最大可動範囲をメッシュ状画像でなく、点群もしくはプロット状画像としてグラフィック表示する。
即ち、表示制御手段12は、入力する情報をディスプレイ部2へ表示可能な情報へ変換し、画面2a上に表示可能である。例えば、経路表示手段33から出力されるワイヤーハーネスの振れの経路Waの情報を入力すると、該情報を現在ディスプレイ部2の画面に加えて表示する等が可能であり、また、現在の画像に加えて表示するか単独で表示するか等の制御も可能であり、この制御は作業者からの指示信号を入力することで行う。尚、このような表示制御手段12のフレームデータ生成や映像信号の出力は、通常行われているビデオ・グラフィクスの技術と何ら変わらないので詳説を省略する。
【0067】
上述したワイヤーハーネス可動範囲予測手段の各手段の作用を、図4(E)に表すフローチャートに基づき説明する。ワイヤーハーネスWの可動範囲予測をスタートすると、頂点設定手段21によって拘束点間の基準ラインを底辺とし、節点両側の線分長を2辺とする三角形の頂点に各節点を位置設定する。次に解析経路設定手段22によって頂点から基準ラインへ垂線を設定する。該垂線の設定が終了すると、次いで可動位置確定手段23が頂点を限界として解析経路上で基準配索経路から節点の移動が許容される最外可動位置をそれぞれFEM解析によって解析する。そして、可動位置確定手段23が確定した最外可動位置に基づき、可動範囲データ作成手段24が基準ラインを中心に所定の回転角毎に回転させた複数の解析平面について、節点の最外可動位置をそれぞれFEM解析により解析する。
そして更に、可動範囲データ作成手段24が各解析平面上で最外可動位置を順にラインで結ぶとともに、各回転角を異にする共通の頂点同士の最外可動位置を順に結んで三次元空間における可動範囲データを作成し、この可動範囲データ作成手段24が特定した可動範囲データが可動範囲補正部7aへと出力されて、更に可動範囲補正部7aが補正して実測値により近づけた可動範囲データへと補正して新たな可動範囲データとし、これを表示制御手段12が可動範囲画像としてディスプレイ部2へ仮想三次元画像として表示する。更に、可動範囲補正部7aの出力する新たな可動範囲データは、ワイヤーハーネス可動経路表示部30へと出力される。
【0068】
次に、図4(F)に表すように、ワイヤーハーネス可動経路表示部30によって、ワイヤーハーネスWの可動経路を予め予測して表示する。即ち、ワイヤーハーネス可動経路表示部30は、図4(E)に表すワイヤーハーネス可動範囲予測手段によってディスプレイ部2の画面2aに表示されるワイヤーハーネスWの可動範囲面Aのデータを使用して可動経路を予測表示させる。ワイヤーハーネス可動経路表示部30は、最外点自動表示手段30、最外点経路解析条件付与手段31、経路表示手段32と、選択指示手段4とからなる。
【0069】
最外点自動表示手段31は、ディスプレイ部2の画面2aに表示されたワイヤーハーネスWの可動範囲面Aの最大可動位置Mh1−−nの任意の位置に任意の複数の最外点Mpを作成可能な演算手段を備え、演算した結果を記憶可能な記憶手段を備える。そして、記憶した最外点Mpを表示制御手段12へ出力すると共に、最外点経路解析条件付与手段32へも最外点Mpのデータを出力可能である。
そして、最外点Mpのデータを入力した表示制御手段12は、図4(F)及び図6に表す最外点Mpを表示させる表示画像を作成し、ディスプレイ部2の画面2aにワイヤーハーネスWと共に表示する。
【0070】
最外点経路解析条件付与手段32は、図4(F)に表すように、最外点自動表示手段31の算出した最外点Mpのデータを取得し、この最外点Mpに対して最外点の経路を解析する上で必要である経路解析条件を付与可能であり、付与した解析条件に基づき最外点Mpの経路をFEM解析により解析可能な演算手段を備え、解析したデータを記憶可能な記憶手段を備えている。
即ち、最外点経路解析条件付与手段32では、図5及び図6に表すように、作業者が画面2aに表示されている任意の一つの最外点Mpxを選択指示手段(マウス)4によって選択すると、該位置を認識して(通常コンピュータが備える機能なので詳細は省略する。)経路解析の指示が行なわれ、解析条件格納手段11に予め格納された条件データを読み出し、この条件データを元に最外点Mpxに対してFEM解析を行い、最外点Mpの経路を解析する。
そして、最外点経路解析条件付与手段32では、解析した最外点Mpの経路に関するデータを、最外点修正手段78へ出力する。
この実施形態では選択指示手段4はパソコン1のマウス4であり、選択して指示する行為はマウス4のクリックである。選択指示手段4の他の実施形態としては、パソコンのキーボードやタッチパネル等のマウスと同作用を行い得る部材であれば可能である。その場合、選択して指示する行為はキーボードやタッチパネルへのタッチになる。図6において9aは、選択して経路解析を指示された最外点Mpxを含むワイヤーハーネスの解析元経路を示す。
【0071】
最外点経路解析条件付与手段32で行うFEM解析において、最外点自動表示手段31が作成した最外点Mpに、この発明の特徴となる、実際に拘束具CL1及びCL2で拘束したワイヤーハーネスWの各節点b1乃至b10を移動させて得た最外点位置から予め求めた回帰式を用いてFEM解析した最外点経路が実測値により近付くよう補正するための回帰式記憶手段76、最外点演算手段77、最外点修正手段78、条件入力手段79からなる補正部7によって最外点経路解析条件付与手段32がFEM解析する際に、ワイヤーハーネスWの条件データによる補正を行わせている。この回帰式記憶手段76、最外点演算手段77、最外点修正部78、及び、条件入力手段79が補正部7の経路補正部7bを形成している。
【0072】
即ち、回帰式記憶手段76は、コンピュータシステムのハードディスク(図示せず)に種々の情報を記憶可能である。回帰式記憶手段76に記憶される情報は、最外点経路をFEM解析するワイヤーハーネスWの物理的な構成要素である条件データであり、具体的には、可動範囲をFEM解析するに際して必要となるワイヤーハーネスWを構成する電線単体の素線径情報aと、ワイヤーハーネスWを構成する電線の種別を表す線種情報bと、ワイヤーハーネスWの断面中に電線が占める割合である占有率cと、ワイヤーハーネスWを長さ方向と直角に切断したときの直径情報dと、ワイヤーハーネスWを構成する電線を束ねて被覆している保護材の種別を表す保護材種別情報eと、ワイヤーハーネスWを構成している電線数情報fである。さらに、回帰式記憶手段76には、補正するための回帰式hを記憶する。この回帰式hは、最外点演算手段77によって読み出され、回帰式hに条件入力手段79によって選択される前記記憶された条件データを代入して算出する。
【0073】
回帰式記憶手段76に記憶される回帰式hは、最外点経路解析条件付与手段32によってFEM解析を行う際に各条件データが該解析に対して寄与する度合い、即ちFEM解析における条件データによる補正値を算出可能であり、予め実物のワイヤーハーネスWを用いて前記条件データを変更しながら拘束具CL1及び拘束具CL2によって拘束されたワイヤーハーネスWの各節点b1乃至b10を最外点へと移動させて実測データを取り、従来同様に条件データによる補正の無い場合にFEM解析された最外点経路との差を、条件データ毎に比較し、最外点経路にそれぞれの条件データがどの程度寄与するかを測定し、それぞれの条件データの寄与度に係数を与えた近似式を算出して求めたものである。この回帰式hは、節点b1乃至b10それぞれの位置により異なるので、それぞれの節点b1乃至b10毎に用意されており、それぞれの節点b1乃至b10毎に算出されて記憶されている。尚、各節点b1乃至b10の間に、その節点の拘束具CL1あるいは拘束具CL2からの位置とに相関関係がある場合には、更に節点b1乃至b10の位置を条件データの一部として予め設定しておくことで、回帰式hは1つで良くなる。この実施例では、回帰式hは、図8に表すような回帰式を用いるが、その他の回帰式であってもよく、実測される最外点経路に近い解析最外点経路を算出可能であればどのような式であってもよい。
【0074】
また、各条件データは表示制御手段12が予め定められたディスプレイ部2の位置に一覧表示させ、条件入力手段79によって選択入力させる。そして、条件入力手段79を用いて作業者が選択した値を回帰式記憶手段76から読み出し最外点演算手段77へ出力させ、最外点演算手段77がやはり回帰式記憶手段76から読み出した回帰式にその値を代入して演算を行うように形成する。例えば素線径情報aでは、入力された電線単体の直径、例えば、1.25mmなどの直径を条件入力手段79のキーボード3から直接入力しその値を用いてもよいが、この実施例では、表示制御手段12がディスプレイ部2に素線径情報aを選択可能に一覧表を表示させ、条件入力手段79のマウス3をクリックすることで該表から値を選択可能に形成する。従って、一覧表に表示する値は予め回帰式記憶手段76に記憶されており、条件入力手段79がこれを表示制御手段12に表示させて選択させ、その値を回帰式記憶手段76から読み出し、最外点演算手段77によって回帰式に代入演算させるように形成している。
【0075】
また線種情報bは、ワイヤーハーネスWを構成する素線である電線がその太さや被覆する外皮等によって堅さ等の物理特性が異なっているのでこれらを表す値であり、ワイヤーハーネスWを構成する種々の素線の情報が予め回帰式記憶手段76に記憶されており、長さ情報aと同様、ディスプレイ部2に表示されて選択されることで回帰式hに代入可能である。この線種情報bは、作業者が印刷された一覧表などから読み取り、条件入力手段79のキーボード3によって直接入力してもよく、この場合には、入力された値を一時的に回帰式記憶手段76等に記憶させ、最外点演算手段77が演算する際に回帰式hへ代入させればよい。
【0076】
同様に電線数情報fも想定される本数が例えば「1」から「30」まで予め回帰式記憶手段76に記憶されており、前記同様ディスプレイ部2に表示させて所望数を選択させ、最外点演算手段77の演算の際にその値を回帰式記憶手段76から読み出して代入させる。この電線数情報fも条件入力手段79によってその数を直接入力するようにしてもよく、この場合には、入力されて数がそのまま一時的に回帰式記憶手段76等の記憶手段へ演算時使用する電線数情報fとして記憶されて使用されればよい。
【0077】
占有率cも同様であり、予め想定されるワイヤーハーネスWの断面中に電線が占める割合である占有率が定められており、可動範囲回帰式記憶手段71に想定されるワイヤーハーネスWの占有率が数値化して記憶されている。そして、前記同様ディスプレイ部2に表示されて選択させ、選択した占有率cとして読み出し回帰式hの演算に用いる。この占有率cも、直接その値を入力して用いてもよい。
【0078】
直径情報dも同様であり、予め想定されるワイヤーハーネスWの直径を回帰式記憶手段76に記憶されており、表示制御手段12がこの記憶されている直径をディスプレイ部2に表示させ、条件入力手段79によって選択入力され、選択された直径を回帰式記憶手段76から読み出し、最外点演算手段77へ出力する。なお、直径情報dは、直接キーボード3から数値を入力し、その値を一時的に回帰式記憶手段76等の記憶手段に記憶させ、回帰式記憶手段76の演算時に読み出して用いるようにしてもよく、この実施例でも直接入力させるように形成している。
【0079】
保護材種別情報eも同様であり、保護材の種類によってワイヤーハーネスWの動きが拘束されるので、予め想定されるワイヤーハーネスWを被覆している保護材の種類を特定する情報であり、回帰式記憶手段76に想定される保護材の種類に対応してその寄与度を数値化して種々記憶されている。そして、表示制御手段12がこの記憶されている種類をディスプレイ部2に表示させ、条件入力手段79によって選択入力させ、選択された保護材の種類と対応して記憶されている寄与度を表す数値を回帰式記憶手段76から読み出し、最外点演算手段77へ出力する。
【0080】
この実施例では、ワイヤーハーネスWの拘束具CL1及び拘束具CL2の間の長さ情報a、ワイヤーハーネスWを構成する電線の種別を表す線種情報b、拘束具CL1及び拘束具CL2を構成するクランプ種情報c、ワイヤーハーネスWの直径情報d、ワイヤーハーネスWの保護材の種別を表す保護材種別情報e、ワイヤーハーネスWを構成している電線数情報fが、それぞれワイヤーハーネスWの節点b1乃至b10の位置の最外点経路に寄与する要因であり条件データとして用いたが、これらのうち寄与度の低いものを削減する、あるいは、その他に寄与する条件を付加する等して他の回帰式hとなる近似式を用いて演算するようにしてもよい。
【0081】
なお、この実施例では、条件入力手段79は入出力部5により形成する。即ち入出力部5は条件入力手段79としても機能する。そして、クランプ種情報cおよび保護材種別情報e以外の条件データは、入出力部5の備えるキーボード3から実数値として入力して用い、一時的に回帰式記憶手段76等の記憶手段に記憶させておき、最外点演算手段77の演算時に最外点演算手段77へ出力するように形成し、クランプ種情報cおよび保護材種別情報eは、ディスプレイ部2に入出力部5の備えるマウス4によって選択可能に表示させ、その中から選択されたものと対応して回帰式記憶手段76に記憶された拘束寄与度を表す数値を読み出し、最外点演算手段77の演算時に最外点演算手段77へ出力するように形成する。
【0082】
また、この実施例では、ワイヤーハーネスWの保護材の種別を表す保護材種別情報eに関する条件データは、別途設ける保護材データ記憶手段75に記憶させてあり、回帰式記憶手段76に記憶されるその他の条件データa乃至条件データd及び条件データfとは別途記憶させてあり、ディスプレイ部2に表示された保護材種別情報eの値が入出力部5のマウス4によって選択されると該当する保護材種別情報eを回帰式記憶手段76を経由して最外点演算手段77へ出力するように構成するが、回帰式記憶手段76へ記憶しておいてもよい。また、回帰式記憶手段76と保護材データ記憶手段75とを解析条件格納手段11とは別途設けたが、実質的には、コンピュータシステム全体として解析条件格納手段11と回帰式記憶手段76と保護材データ記憶手段75とはハードディスクドライブが記憶手段として機能しており、ハードディスクドライブに各データが予め記憶されている。
【0083】
8は回帰式精度選択部である。回帰式精度選択部8は、前記回帰式hによる計算が、求める補正値の精度によって異なるため、必要とする精度となるように入出力部5によって選択可能に表示制御手段12によって表示された値から選択可能であり、選択された値を最外点演算手段77へと出力する。尚、回帰式精度選択部8は、回帰式hに代入して使用する条件データa乃至条件データfから、同様に入出力部5によって選択可能に表示制御手段12によって表示された値から選択可能であり、選択された値のみを用いて他の条件データは使用しない回帰式hとして最外点演算手段77に演算させることが可能である。このように回帰式精度選択部8を設けることで、条件データのうち実測値と近づけるための条件としての寄与度が低い条件データを用いずに演算できるため、解析時間の短縮を図ることが可能となる。具体的には、実質的に保護材径となる直径情報dや電線種を表す電線情報bなどは、精度への影響が少ないため、回帰式精度選択部8によって選択せず回帰式hにこれらを用いた項を無くして最外点演算手段77が演算する等である。
【0084】
このように構成する補正部7は、最外点演算手段77では、入出力部5による回帰式記憶手段76および保護材データ記憶手段75からの条件データの入力が完了すると回帰式記憶手段76に記憶されている回帰式hを読み出し、条件データが回帰式hへ代入され、最外点経路を補正する最外点補正値を演算する。
最外点補正値を算出するための回帰式hは、前記した通り節点b1乃至b10によりそれぞれ異なり、節点b1の回帰式hは図8(a)に例示するように、最も補正精度の良い回帰式は全ての条件データa乃至条件データfを用いたものであり、係数Ka乃至Kfがそれぞれ条件データa乃至条件データfの寄与度を表す係数を表している。そして、図8(a)に表す例では、補正値の精度は実測データとの合致率が95パーセントに達してる。また、図8(b)に表す例は、演算処理を速くさせるために、条件データa及び条件データeのみを使用したときの回帰式hを表しており、係数及び条件データは、比較的寄与度の大きな長さ情報a及び保護材種別情報eのみを用いたものである。この図8(b)に表す回帰式hを用いた例では、補正値の精度は実測データとの合致率が70パーセント程度となる。そして、閾値として合致率90パーセントを選択すると、図8(c)に表すように、条件データa及び条件データe並びに条件データfを用いた回帰式hであり、この場合には、補正値の精度は実測データとの合致率が所望の90パーセントとなる。
【0085】
尚、この実施例では、最外点演算手段77は最外点補正値の算出を行うだけであるが、最外点自動表示手段31の算出した最外点Mpのデータを取得し、この最外点Mpに対して最外点の経路を解析する上で必要である経路解析条件を付与可能であり、付与した解析条件に基づき最外点Mpの経路をFEM解析の機能を持たせ、最外点経路解析条件付与手段32と併せた手段としてもよく、最外点経路解析条件付与手段32及び最外点演算手段77の機能を備える手段をシステム中に備えていれば足りる。
【0086】
78は最外点修正手段である。最外点修正手段78は、最外点経路解析条件付与手段32から演算結果を取得可能に接続されると共に最外点演算手段77から演算結果を取得可能に接続され、最外点経路解析条件付与手段32から取得したワイヤーハーネスの振れの経路Waと最外点演算手段77から取得した最外点補正値とを用いワイヤーハーネスの振れの経路Waを修正し、新たな修正されたワイヤーハーネスの振れの経路Waを演算して経路表示手段33へ出力可能である。
【0087】
従って最外点修正手段78では、従来最外点経路解析条件付与手段32が解析したワイヤーハーネスの振れの経路Waを実際のワイヤーハーネス取付け時に近づけるように補正し補正された新たなワイヤーハーネスの振れの経路Waを提供する。
経路表示手段33は、最外点修正手段78により修正されたワイヤーハーネスの振れの経路Waを入力し、解析された結果に基づいてワイヤーハーネスの振れの経路WaをCADデータとして生成しディスプレイ部2に表示可能な情報として表示制御手段12へ出力する。これによりワイヤーハーネスの振れの経路Waは、最終的に表示制御手段12によってディスプレイ部2に表示される。
【0088】
尚、上記実施例では、説明のため補正部7を可動範囲補正部7a及び経路補正部7bとから形成し、それぞれ同じ演算あるいは記憶の機能を持たせているが、例えば、実質的に可動範囲補正部7aが経路補正部7bの機能を備え同じ手段が可動範囲補正部7a及び経路補正部7bの備える機能を有するように構成しても良く、コンピュータシステムにより構成する場合には、実質的にこのように構成されれば足りる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
この発明は、自動車や家電製品等に用いるワイヤーハーネスの設計や、これら製品の作業工程の検証などに用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】この発明の実施形態であるワイヤハーネス可動経路表示システムに使用されるワイヤーハーネス可動範囲予測方法を実施する可動範囲解析装置の構成を説明する構成図
【図2】図1の可動範囲解析装置の動作を説明する説明図
【図3】図1の可動範囲解析装置の解析対象になるワイヤーハーネスを示す正面図
【図4】図1の可動範囲解析装置の動作を説明するフローチャート
【図5】この発明の実施形態であるワイヤハーネス可動経路表示システムに使用されるワイヤーハーネス経路表示部のフローチャート
【図6】同じく表示された最外点の一つをマウスでクリックする状態を示す説明図
【図7】同じく図5の解析結果のワイヤーハーネス振れ経路を表示した状態を示す説明図
【図8】最外点補正値を演算する回帰式を表す説明図であり、(a)は補正精度が最も高いが作業時間を要する回帰式の例、(b)は補正精度が最も低いが作業時間が最も短くなる回帰式の例、(c)は補正精度と作業時間とがほどよい状態となる回帰式の例
【図9】従来のワイヤハーネス可動経路表示システムに使用されるワイヤーハーネス可動範囲予測方法を実施する可動範囲解析装置の構成を説明する構成図
【図10】従来例図である図9の可動範囲解析装置の動作を説明する説明図
【図11】従来例図である図9の可動範囲解析装置の解析対象になるワイヤーハーネスを示す正面図
【図12】従来例図である図9の可動範囲解析装置の動作を説明するフローチャート
【図13】従来のワイヤハーネス可動経路表示システムに使用されるワイヤーハーネス経路表示部のフローチャート
【図14】同じく従来の表示された最外点の一つをマウスでクリックする状態を示す説明図
【図15】同じく図13の解析結果のワイヤーハーネス振れ経路を表示した状態を示す説明図
【符号の説明】
【0091】
1 パソコン
2 ディスプレイ部
3 キーボード
4 マウス
5 入出力部
6 ディスクドライブ
7 補正部
7a 可動範囲補正部
71 可動範囲回帰式記憶手段
72 可動範囲演算手段
73 可動範囲修正手段
74 条件入力手段(入出力部5)
75 保護材データ記憶部
7b 可動経路補正部
76 回帰式記憶手段
77 最外点演算手段
78 最外点修正手段
79 条件入力手段(入出力部5)
10 配索経路解析手段
11 解析条件格納手段
12 表示制御手段
20 可動範囲解析部
21 頂点設定手段
22 解析経路設定手段
23 可動位置確定手段
24 可動範囲データ作成手段
30 ワイヤーハーネス経路表示部
31 最外点自動表示手段
32 最外点経路解析条件付与手段
33 経路表示手段
a1、a2 拘束点
B1 基準ライン
b1〜b10 節点
CL1、CL2 拘束具
h1〜h10 交点
L1 ライン長
M1 解析モデル
Mh1〜Mh10 最大可動位置
A ワイヤーハーネス可動予測範囲
Mp1〜Mpn ワイヤーハーネス可動予測範囲の最外点
Mpx 選択指示された任意の一つの最外点
W ワイヤハーネス
Wa ワイヤーハーネスの解析元経路
a 長さ情報
b 線種情報
c クランプ種情報
d 直径情報
e 保護材種別情報
f 電線数情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拘束具で互いに間隔を置いて拘束されて配索されるワイヤーハーネスを複数の節点群に分割し、各節点群のそれぞれの間に弾性体としての梁要素が介在すると見なしたライン状の解析モデルを、ワイヤーハーネスの形状特性、材料特性及び拘束条件である条件データに基づいてFEM解析手段により解析させた基準配索経路から、ワイヤーハーネスを強制的に移動させ得る範囲を解析して可動範囲を予測し、その可動範囲面を表示可能なワイヤハーネスの可動範囲予測システムにおいて、
ワイヤーハーネスを構成する複数の構成要素毎に各構成要素の変更可能な条件データが予め記憶されて入力指示手段が選択することで該データを読み出し可能であり、且つ、条件データが予めワイヤーハーネスの変形に寄与する度合いを条件データ毎に実験して得た結果からそれぞれの条件データが変更された際に寄与する度合いを計算した関数式を回帰式として予め記憶される回帰式記憶手段を備え、
回帰式記憶手段が記憶している各構成要素である条件データを選択可能であり、選択した条件を記憶手段から補正点演算手段へ読み出し指示可能な入力指示手段を備え、
入力指示手段により選択された各条件データを回帰式記憶手段から読み出して取得すると共に、回帰式記憶手段に予め記憶された回帰式を回帰式記憶手段から取得し、回帰式に取得した各条件データを当てはめて回帰式から最外点補正値を算出する補正点演算手段を備え、
FEM解析手段が解析した最外点を取得すると共に補正点演算手段が算出した最外点補正値を取得し、FEM解析手段の解析した最外点に最外点補正値を適用して、修正最外点を算出し、最外点自動表示手段が表示する最外点を修正最外点とする最外点修正手段を備え、
経路表示手段が、該修正最外点を最外点とし、その最外点を含むワイヤーハーネスの振れの経路を表示可能であることを特徴とするワイヤハーネスの可動範囲予測システム。
【請求項2】
拘束具で互いに間隔を置いて拘束されて配索されるワイヤーハーネスを複数の節点群に分割し、各節点群のそれぞれの間に弾性体としての梁要素が介在すると見なしたライン状の解析モデルを、ワイヤーハーネスの形状特性、材料特性及び拘束条件である条件データに基づいてFEM解析手段により解析させた基準配索経路から、ワイヤーハーネスを強制的に移動させ得る可動範囲を解析し予測して表示可能であり、表示されたワイヤーハーネスの可動範囲面の最大可動位置の任意の位置に複数の最外点を作成し表示する最外点自動表示手段を備え、作成された最外点に経路解析条件を付与する最外点経路解析条件付与手段を備え、作成される任意の一つの最外点を選択する選択指示手段を備え、選択指示手段によって選択された最外点に付与されている解析条件に基づいてFEM解析手段に解析を行わせ、その最外点を含むワイヤーハーネスの振れの経路を表示する経路表示手段を備えるシステムにおいて、
ワイヤーハーネスを構成する複数の構成要素毎に各構成要素の変更可能な条件データが予め記憶されて入力指示手段が選択することで該データを読み出し可能であり、且つ、条件データが予めワイヤーハーネスの変形に寄与する度合いを条件データ毎に実験して得た結果からそれぞれの条件データが変更された際に寄与する度合いを計算した関数式を回帰式として予め記憶される回帰式記憶手段を備え、
回帰式記憶手段が記憶している各構成要素である条件データを選択可能であり、選択した条件を記憶手段から補正点演算手段へ読み出し指示可能な入力指示手段を備え、
入力指示手段により選択された各条件データを回帰式記憶手段から読み出して取得すると共に、回帰式記憶手段に予め記憶された回帰式を回帰式記憶手段から取得し、回帰式に取得した各条件データを当てはめて回帰式から最外点補正値を算出する補正点演算手段を備え、
FEM解析手段が解析した最外点を取得すると共に補正点演算手段が算出した最外点補正値を取得し、FEM解析手段の解析した最外点に最外点補正値を適用して、修正最外点を算出し、最外点自動表示手段が表示する最外点を修正最外点とする最外点修正手段を備え、
経路表示手段が、該修正最外点を最外点とし、その最外点を含むワイヤーハーネスの振れの経路を表示可能であることを特徴とするワイヤーハーネスの可動経路解析システム。
【請求項3】
ワイヤーハーネスを強制的に移動させ得る可動範囲を解析し予測する際に、ワイヤーハーネスに対し、両側の拘束点間の直線状の基準ラインを底辺とし、基準ラインを含む平面状の解析面上において解析モデルのライン長を2辺の長さとする三角形の頂点を形成するように、任意の複数個の節点を頂点にそれぞれ幾何学的に位置設定し、
各頂点に所属の節点が基準配索経路から移動可能か否かを解析するための節点の解析経路として、基準ラインに対する垂線を各頂点からそれぞれ設定し、
頂点を可動範囲の限界として、各解析経路上での所属の節点の設定位置においてワイヤハーネスの形状特性、材料特性及び拘束条件に対応するワイヤハーネスの変形が許容され得るか否かと、前記算出した最外点補正値とにより、最大可動位置を解析し、
この最大可動位置の解析を、基準ラインを中心に所定の回転角ごとに回転させた複数の解析面毎に行うことによってワイヤハーネスの可動範囲面を作成する請求項1又は請求項2に記載のワイヤーハーネスの可動経路解析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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