説明

ワイヤーハーネスの製造方法、ワイヤーハーネスの製造装置

【課題】熱可塑性材料に不測の変形や熱可塑性材料の分離が発生しないようにできるワイヤーハーネスの製造方法を提供すること。
【解決手段】電線91の所定の部分を挟み込むようにしてノズル12の第一の筐体部材121と第二の筐体部材122を一体に結合させることにより、電線91の所定の部分をノズル12の第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成された管状体の貫通孔の内部に収容し、電線91の所定の部分とノズル12とを相対的に移動させながら、材料可塑化手段11により可塑化された熱可塑性材料を、ノズル12に形成される熱可塑性材料の吐出口1213,1223から、電線91の所定の部分の外周に吐出することによって、電線91の所定の部分を覆う略チューブ状の被覆材91を熱可塑性材料により一体に成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネスの製造方法、ワイヤーハーネスの製造装置に関するものであり、詳しくは、電線の所定の部分に、電線を保護する機能および/または複数の電線を纏める機能を有する部材が設けられるワイヤーハーネスの製造方法、およびこのワイヤーハーネスを製造できる装置(=ワイヤーハーネスの製造装置)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両の内部には、電気機器や電子機器などを相互に接続するためのワイヤーハーネスが配索される。このような用途に用いられるワイヤーハーネスは、一般的に、所定の種類および所定の長さの複数の電線を有し、これらの複数の電線が所定の態様で結束される(または纏められる)という構成を有する。また、ワイヤーハーネスに含まれる各電線の端部には、所定の種類のコネクタ類が装着される。そして、ワイヤーハーネスの所定の部分には、電線群がバラバラにならないように結束する(または纏める)部材や、電線または電線群を保護する機能を有する部材などが設けられる。
【0003】
電線群を結束(または纏める)構成や電線を保護する構成としては、電線群の所定の部分にテープを巻き付ける構成、電線群の所定の部分を樹脂材料などからなるチューブ(たとえば、コルゲートチューブ)に収容する構成、電線群の所定の部分を樹脂成形品に埋め込む(インサート成形する)構成、電線群の所定の部分の外周を覆う部材を樹脂材料などにより成形する構成、などが用いられている。
【0004】
しかしながら、これらの構成では、次のような問題を有することがある。
【0005】
電線群の所定の部分にテープが巻き付けられると、巻き付けられた部分は、巻き付けられる前に比較して(または巻き付けられていない部分に比較して)、電線群の柔軟性(電線群の変形のし易さ)が低下する。このため、ワイヤーハーネスを車両などに配索する作業において、ワイヤーハーネスの取り扱い性が低下する。このため、作業効率が低下するおそれがある。このほか、テープが巻き付けられた部分は、見映えがよくないという問題を有する。
【0006】
電線群の所定の部分をチューブに収容する構成はにおいては、このコネクタ類の構成によっては、ワイヤーハーネスの製造装置や製造手順が制限されることがある。ワイヤーハーネスに含まれる電線の端部には、一般的に所定のコネクタ類が装着されるが、コネクタが装着された電線をチューブを通過させることができない場合(たとえば、コネクタ類の大きさがチューブの内径よりも大きい場合)には、まず、電線群の所定の部分をチューブを通過させ(=チューブの内部に収容し)、その後、電線の端部にコネクタ類を装着する、という順序でワイヤーハーネスを製造する必要がある。電線の端部にコネクタ類を自動で装着する装置が用いられることがあるが、電線群がチューブに収容された状態では、チューブや他の電線が干渉して、このような装置に電線をセッティングできないことがある。この場合には、電線の端部にコネクタ類を装着する作業を自動で行うことができず、手作業で行わなければならない。このため、ワイヤーハーネスの製造コストの削減を図ることが困難である。
【0007】
スリットが形成されたチューブを用いる構成では、電線または電線群が抜け出ないようにするため、チューブの外周にテープなどを巻き付ける必要がある。このため、作業工数が増加するため、製造コストの削減を図ることが困難である。また、テープが巻き付けられたチューブは、見映えがよくないという問題も有する。
【0008】
また、ワイヤーハーネスに用いられるチューブは、一般的に、電線の所定の部分に対する位置決め機構を有していない。このため、チューブが電線群の所定の位置から位置ずれしないようにするためには、電線群とチューブとに跨るようにテープなどを巻き付ける必要がある。したがって、作業工数の削減を図ることが困難である。また、巻き付けられたテープは見映えがよくないという問題も有する。
【0009】
電線または電線群の所定の部分を成形部材の内部に埋め込む構成においては、成形部材を成形するための成形型(一般には、射出成形を行うための金型)が必要となる。そして、このような成形型を、長さや径が異なった成形をする部分ごとに用意する必要がある。成形型は一般に高価であり、かつ、汎用性が低いことから、このような成形型を用いる構成では、設備コストの上昇を招くおそれがある。
【0010】
電線または電線群の所定の部分の周囲を覆う部材を成形する構成においても、電線または電線群の外径(外形)に応じた成形型が必要となる。このため、前記同様の理由により、設備コストの上昇を招くおそれがある。また、このような構成においては、成形される部材の厚さ寸法を変化させることが困難である。すなわち、電線または電線群の所定の部分を覆う部材のうち、電線または電線群を保護する機能を持たせたい部分は厚さを厚くし、そうではない部分は厚さを薄くしたい場合がある。しかしながら、電線の心線を覆う被覆材を成形する構成と略同じ構成では、部材の厚さを変化させることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−288895号公報
【特許文献2】特開平11−238420号公報
【特許文献3】特開平8−31474号公報
【特許文献4】特開2005−294132号公報
【特許文献5】特開2004−14475号公報
【特許文献6】特開2000−261939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、被覆材が成形されても被覆材が成形された部分の柔軟性(特に曲がりやすさ)の低下を防止または抑制を図ることができるワイヤーハーネスの製造装置、ワイヤーハーネスの製造方法を提供すること、または、被覆材が位置ずれしないワイヤーハーネスの製造装置、ワイヤーハーネスの製造方法を提供すること、または、見映えのよい被覆材が成形されたワイヤーハーネスの製造装置、ワイヤーハーネスの製造方法を提供すること、または、厚さが変化する被覆材であって一体に成形された被覆材を有するワイヤーハーネスの製造装置、ワイヤーハーネスの製造方法を提供すること、または、設備コストや製造コストの削減を図ることができるもしくは上昇の防止を図ることができるワイヤーハーネスの製造装置、ワイヤーハーネスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明にかかるワイヤーハーネスの製造装置は、電線と熱可塑性材料により成形され前記電線の所定の部分を覆う被覆材とを有するワイヤーハーネスの製造装置であって、前記熱可塑性材料を、外力を加えると塑性変形が可能な程度に軟化した状態に可塑化する材料可塑化手段と、一体に結合可能および複数の部材に分離可能であり一体に結合すると前記電線の前記所定の部分を収容可能な貫通孔と前記貫通孔の一端の外周を切れ目なく囲繞する熱可塑性材料の吐出口とが形成されるノズルと、を備え、前記ノズルが一体に結合すると前記ノズルに形成される前記貫通孔の内部に前記電線の前記所定の部分が収容された状態で、前記材料可塑化手段により可塑化された熱可塑性材料を、前記ノズルに形成される前記熱可塑性材料の吐出口から、前記貫通孔の一端から突出する前記電線の前記所定の部分の外周面上に吐出することにより、前記電線の前記所定の部分を覆う被覆材を、前記熱可塑性材料により一体に成形することができることを特徴とする。
【0014】
前記ノズルは、互いに一体に結合および分離可能であるとともに結合した状態においては貫通孔が形成された管状体を構成することができる複数の入れ子部材と、互いに一体に結合および分離可能であるとともに前記複数の入れ子部材のそれぞれを嵌め込むことができる複数の筐体部材と、を備え、前記複数の入れ子部材のそれぞれが嵌め込まれた前記複数の筐体部材が結合すると前記複数の入れ子部材も結合して管状体を構成し、前記複数の入れ子部材が結合して構成された管状体の貫通孔が前記電線の前記所定の部分を収容できる貫通孔となるとともに、前記複数の入れ子部材が結合して構成された管状体の軸線方向の一端の外周に前記熱可塑性材料の吐出口が形成される構成が適用できる。
【0015】
前記複数の入れ子部材のそれぞれには、前記複数の入れ子部材が結合して管状体を構成した場合において前記管状体の外周面となる面に、溝状の熱可塑性材料の経路が形成され、前記可塑化された樹脂材料は、前記溝状の熱可塑性材料の経路を通じて前記熱可塑性材料の吐出口から吐出される構成が適用できる。
【0016】
前記ノズルは、互いに平面方向に一体に結合および分離可能であるとともに結合した状態においては貫通孔が形成された板状体を構成することができる複数の板状型部材を備え、前記複数の板状型部材が結合して構成された板状体の貫通孔が前記電線の前記所定の部分を収容できる貫通孔となるとともに、前記複数の板状型部材が結合して構成された板状体における前記貫通孔の軸線方向の一端の外周に前記熱可塑性材料の吐出口が形成される構成が適用できる。
【0017】
前記複数の板状型部材のそれぞれには、蓋部材によって蓋をされた溝状の熱可塑性材料の経路が前記板状体の平面方向に形成され、前記可塑化された樹脂材料は、前記溝状の熱可塑性材料の経路を通じて前記熱可塑性材料の吐出口から吐出される構成が適用できる。
【0018】
前記溝状の熱可塑性材料の経路は複数形成され、前記吐出口までの経路が長いものほど経路の断面積が大きく形成されている構成が適用できる。
【0019】
本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置は、前記ノズルの前記熱可塑性材料の吐出口から吐出されて成形された熱可塑性材料からなる被覆材に対して送風することにより冷却することができる送風手段を備える構成であることが好ましい。
【0020】
本発明にかかるワイヤーハーネスの製造方法は、導体の周りがシース材により被覆された複数本の被覆電線よりなる電線束の所定の部分の外周にその周方向の複数方向から熱可塑性樹脂材料を熱可塑性により塑性変形できるが融点よりも低い温度に加熱して吐出することにより略チューブ状に一体成形により形成された被覆材により覆い、該チューブ状の被覆材の内周面を前記電線束の外側に位置する電線の外周面に部分的に直接接着すると共に、前記各電線間の隙間には空隙を形成するようにしたことを特徴とする。
【0021】
前記電線束の外周に熱可塑性樹脂材料を吐出してチューブ状の被覆材を形成するに際しては、前記電線束を前記熱可塑性樹脂材料の吐出部位に対して該電線束の軸線方向に相対移動させるようにするとよい。
【0022】
前記熱可塑性樹脂材料の単位時間当たりの吐出量、あるいは前記電線束の軸線方向への相対移動速度を制御することにより、前記チューブ状の被覆材の肉厚を前記電線の軸線方向に全長に亘って同じとするか、または途中部位を厚肉に変化させるようにするとよい。
【0023】
前記チューブ状の被覆材を構成する熱可塑性樹脂材料は、ポリエステル系ホットメルト型樹脂であるとよい。
【0024】
本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法は、本発明にかかるワイヤーハーネスの製造装置を用いたワイヤーハーネスの製造方法であって、前記電線の前記所定の部分を挟み込むようにして前記ノズルを一体に結合させることにより、前記電線の前記所定の部分を前記ノズルの前記貫通孔の内部に収容し、前記電線の所定の部分と前記ノズルとを相対的に移動させながら、前記材料可塑化手段により可塑化された熱可塑性材料を、前記ノズルの前記熱可塑性材料の吐出口から、前記電線の前記所定の部分の外周に吐出することによって、前記電線の前記所定の部分を覆う略チューブ状の被覆材を前記熱可塑性材料により一体に成形する工程を含むことを特徴とする。
【0025】
前記電線の所定の部分と前記ノズルとの相対的な移動の速度および/または前記ノズルの前記熱可塑性材料の吐出口から吐出される単位時間あたりの熱可塑性材料の量を制御することにより、被覆材の厚さを制御するとよい。
【0026】
前記材料可塑化手段により可塑化された熱可塑性材料を、前記電線の前記所定の部分の外周に吐出することによって、前記電線の前記所定の部分を覆う略チューブ状の被覆材を前記熱可塑性材料により一体に成形するとともに、前記熱可塑性材料の可塑性によって前記被覆材の内周面と前記電線の前記所定の部分の外周とを接着するようにするとよい。
【0027】
本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法は、本発明にかかるワイヤーハーネスの製造装置を用いたワイヤーハーネスの製造方法であって、上記のワイヤーハーネスの製造方法により前記電線の前記所定の部分に熱可塑性材料からなる被覆材を成形し、その後、前記電線の前記所定の部分と前記ノズルとの相対的な移動を停止するとともに、前記送風手段により成形された前記被覆材に対して送風して冷却し、さらにその後、前記ノズルの前記熱可塑性材料の吐出口から熱可塑性材料を吐出しないで前記電線の前記所定の部分と前記ノズルとを相対的に移動させることによって、成形された前記被覆材と前記ノズルの内部に存在する前記熱可塑性材料とを、前記ノズルの前記熱可塑性材料の吐出口の位置において切断して分離する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明にかかるワイヤーハーネスの製造装置によれば、設備コストの上昇の防止または抑制、または設備コストの削減を図ることができる。
【0029】
すなわちたとえば、本発明にかかるワイヤーハーネスの製造装置に適用されるノズルは、射出成形用の金型に比較すると、構造が簡単であり安価に製造できる。すなわち、射出成形用の金型は、射出された熱可塑性材料の圧力に耐えられる構成を有する必要がある。これに対して、本発明にかかるワイヤーハーネスの製造装置に適用されるノズルには、高い圧力が加わらないから、高い圧力に耐えられる構成とする必要がない。このため、構造が単純であり、また小型に製造することができる。
【0030】
また、一般的な射出成形においては、射出された熱可塑性材料の圧力によって、成形用の金型の上型と下型が分離しないようにするために、型締め機構が必要となる。このため、被覆材を成形するための設備の構成が複雑となり、高価となる。これに対して本発明にかかるワイヤーハーネスの製造装置においては、熱可塑性材料を吐出している間においても、一体に結合した複数の筐体部材が分離するような力は加わらない。このため、本発明にかかるワイヤーハーネスの製造装置は、射出成形のための設備における型締め機構に相当する機構が必要ではない。
【0031】
さらに、一般的な射出成形においては、熱可塑性材料を成形用の金型に充填するために、熱可塑性材料に高い圧力を加える必要がある。これに対して本発明にかかるワイヤーハーネスの製造装置においては、可塑化した樹脂材料に対して、ノズルに形成される熱可塑性材料の吐出口から吐出できる(=流動できる)圧力を加えられる構成であればよい。このため、射出成形に比較すると、熱可塑性材料に加える圧力が小さいから、熱可塑性材料を送りだす装置も小型のものが適用できる。また、熱可塑性材料の経路(材料可塑化手段とノズルとを結合するホースなど)も、高い圧力に耐えられるような構成とする必要がない。
【0032】
さらに、本発明にかかるワイヤーハーネスの製造装置は、汎用性が高い。
【0033】
たとえば、射出成形により被覆材を成形する構成においては、一組の成形用の金型で一つの種類(一つの寸法および形状)の被覆材しか成形することができない。このため、厚さが異なる被覆材を成形するためには、被覆材の厚さごとに成形用の金型を用意する必要がある。同様に、軸線方向長さが異なる被覆材を形成する場合には、被覆材の軸線方向の長さごとに成形用の金型を用意する必要がある。これに対して本発明にかかるワイヤーハーネスの製造装置に適用されるノズルは、ノズルと電線の所定の部分との相対移動の速度および/または熱可塑性材料の単位時間あたりの吐出量を調整することにより、被覆材の厚さを変更することができる。したがって、一組のノズルで、複数の厚さ寸法の被覆材を成形することができる。さらに、ノズルと電線の所定の部分とを相対的に移動させる範囲を適宜設定することにより、電線の所定の部分に種々の長さの被覆材を成形することができる。
【0034】
さらに、電線の所定の部分が、複数の入れ子部材が結合して構成される貫通孔に収容できる寸法であれば、電線の所定の部分の外径にかかわらず、被覆材を成形することができる。このため、一組のノズルによって、複数の電線の径(複数の電線が含まれる場合には、電線束の径)に対応することができる。また、電線の径が軸線方向の途中で変化する場合であっても、途切れることなく(またはノズルを交換することなく)、径が異なる部分に跨って一体に被覆材を成形することができる。
【0035】
また、第一の板状型部材と第二の板状型部材が結合して構成される板状体の平面方向に熱可塑性材料の経路が形成される構成であれば、ノズルの厚み(電線の軸線方向における大きさ)を小さくすることができるため、電線の根本(分岐点等)により近い部分まで被覆材を形成することができる。
【0036】
さらに、熱可塑性材料の経路が複数形成され、経路が長いものほど断面積が大きい構成とすれば、各経路における管路抵抗による圧力損失を均等に近づけることができる。つまり、ノズルの吐出口から吐出される熱可塑性材料の圧力が電線の周方向に均等となる状態に近づけることができるから、形成される被覆材の厚みが周方向に均一なものなる。
【0037】
本発明にかかるワイヤーハーネスの製造方法によれば、電線の端部にコネクタ類を装着する工程と、電線の所定の部分に被覆材を成形する工程との順序が制限されない。したがって、本発明にかかるワイヤーハーネスの製造方法においては、各電線の端部に所定のコネクタ類を装着した後、電線を纏め、被覆材を成形することができる。このため、電線の端部にコネクタ類を装着する工程を、各電線が単独で存在する状態において行うことができる。したがって、自動でコネクタ類を装着する装置を用いてコネクタ類を装着する工程において、他の電線や被覆材が干渉して電線を自動でコネクタ類を装着する装置にセッティングできないということがない。したがって、各電線にコネクタ類を装着する工程を、自動でコネクタ類を装着する装置を用いて行うことができ、製造コストの削減を図ることができる。
【0038】
さらに本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法によれば、軸線方向に沿って厚さが変化する被覆材(すなわち、強度が相違する被覆材)92を、簡単にかつ一体に成形することができる。具体的には、被覆材を成形している最中において、ノズルと電線の所定の部分との相対的な移動速度、またはノズルに形成される熱可塑性材料の吐出口から吐出される熱可塑性材料の単位時間あたりの量の一方または両方を調整するだけで、被覆材の厚さを調整することができる。すなわち、軸線方向に沿って厚さが変化する被覆材を一体に成形することができる。したがって、複数の被覆材を設ける必要がないから、作業工数の削減を図ることができる。さらに、軸線方向に沿って厚さ寸法が変化する被覆材を、熱可塑性材料によって一体に成形することができるから、ワイヤーハーネスの部品点数の削減を図ることができる。
【0039】
本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法によれば、成形した被覆材の終端において、被覆材が引き伸ばされるように塑性変形することなく切断することができる。このため、被覆材の軸線方向の端部の見映えの向上を図ることができる。
【0040】
送風手段により、成形された被覆材に送風されると、被覆材は急速に冷却される。このため、被覆材は、熱可塑性による塑性変形が生じない状態となる。一方、ノズルの内部に存在する熱可塑性材料は、送風手段による送風を受けないため冷却されないから、熱可塑性による塑性変形が生じやすい状態にある。この結果、熱可塑性材料(成形された被覆材も含む)には、熱可塑性による塑性変形が生じない状態にある部分と、熱可塑性による塑性変形が生じやすい状態にある部分との境界が、ノズルの熱可塑性材料の吐出口の位置に形成される。
【0041】
この状態で、ノズルと電線の所定の部分とを相対的に移動させると、ノズルの内部に存在する熱可塑性材料は、摩擦力などによりそのままノズルの内部に残る。一方、ノズルの熱可塑性材料の吐出口から吐出された部分(成形された被覆材)は、熱可塑性による塑性変形が生じない状態にあるから、軸線方向に引っ張り力が加わっても、塑性変形しない。このため、ノズルに形成される熱可塑性材料の吐出口において(すなわち、熱可塑性により変形することができる部分とできない部分との境界において)、成形された被覆材と、成形前の熱可塑性材料とを、それぞれ伸びるように塑性変形させることなく切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】参考として示すワイヤーハーネスの所定の部分(=被覆材が設けられる部分)を抜き出して示した図であり、(a)は、ワイヤーハーネスの所定の部分の外観斜視図であり、(b)は、(a)のA−A線断面図であって、ワイヤーハーネスの所定部分の断面構造を模式的に示した図である。
【図2】参考として示すワイヤーハーネスの所定の部分を抜き出して示した外観斜視図であって、被覆材の厚さが軸線方向に沿って変化する構成を示す。
【図3】本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置の要部の構成を、模式的に示した図である。
【図4】本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置が備えるノズルの構成を模式的に示した分解斜視図であり、ノズルを構成する各部材の外観斜視図である。
【図5】本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置が備えるノズルが組み付けられた状態を示した外観斜視図であり、第一の筐体部材と第二の筐体部材とが分離している状態を示す。
【図6】本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置が備えるノズルが組み付けられた状態を示した外観斜視図であり、第一の筐体部材と第二の筐体部材とが結合している状態を示す。
【図7】本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置が備える第一の入れ子部材および第二の入れ子部材のそれぞれに形成される熱可塑性材料の経路の構成を示した図であり、(a)は第一の入れ子部材および第二の入れ子部材を軸線方向の一端から見た図、(b)は、第一の入れ子部材および第二の入れ子部材のそれぞれの外周面(に形成される熱可塑性材料の経路)を平面に展開した図、(c)は、(b)のA−A線断面図、(d)は、図7(b)のB−B線断面図である。
【図8】本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置の要部の構成を、模式的に示した図である。
【図9】本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置が備えるノズルの構成を模式的に示した分解斜視図であり、ノズルを構成する各部材の外観斜視図である。
【図10】図9のC−C線断面図である。
【図11】本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置が備えるノズルが組み付けられた状態を示した外観斜視図であり、第一の板状型部材と第二の板状型部材とが分離している状態を示す。
【図12】本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置が備える第一の板状型部材(第二の板状型部材)に形成される熱可塑性材料の経路の構成を示した図であり、(a)は、第一の板状型部材(第二の板状型部材)の平面図、(b)は、第一の板状型部材(第二の板状型部材)の側面図である。
【図13】蓋部材が固定された状態における図12のD−D線断面を示した図である。
【図14】被覆材を成形する工程を模式的に示した図である。
【図15】被覆材を成形する工程を模式的に示した図である。
【図16】被覆材を成形する工程を模式的に示した図である。
【図17】被覆材を成形する工程を模式的に示した図である。
【図18】本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置の効果を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0044】
図1は、参考として示すワイヤーハーネス9の所定の部分(=被覆材92が設けられる部分)を抜き出して示した図である。具体的には、図1(a)は、ワイヤーハーネス9の所定の部分の外観斜視図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A線断面図であって、ワイヤーハーネス9の所定の部分の断面構造を模式的に示した図である。
【0045】
ワイヤーハーネス9は、所定の長さおよび所定の種類の複数の電線91を有し、これら所定の数の電線91が、全体として所定の形状となるように(=所定の幹線や所定の枝線を形成するように)纏められるという構成を有する。すなわち、纏められた複数の電線91が、ワイヤーハーネス9の所定の幹線や所定の枝線を形成する。また、各電線91の端部には、所定のコネクタ類が装着される(図略)。なお、ワイヤーハーネス9の全体的な形状および寸法、ワイヤーハーネス9に含まれる電線91の数や種類、各電線91の端部に装着されるコネクタ類の構成は、特に限定されるものではなく、適宜設定される。
【0046】
図1(a),(b)に示すように、ワイヤーハーネス9の所定の部分は、複数の電線91を有し、複数の電線91をひとまとめに覆う被覆材92が設けられる。被覆材92は、複数の電線91を結束する機能(=複数の電線91がバラバラにならないように纏める機能)、および/または、電線91を保護するプロテクタとしての機能を有する。ワイヤーハーネス9の所定の部分が有する電線91の数は、特に限定されるものではない。また、本発明において「電線」91とは、特に断らない限り、複数の電線(電線群)の意味が含まれるものとする。
【0047】
被覆材92は、内部が空洞の略チューブ状に成形される部材であり、電線91の外周を覆うように形成される(換言すると、その内部に電線91を収容するように成形される)。被覆材92は、人間の力によって容易に変形(元の形状に戻ることができる変形であって、塑性変形ではない)することができる部材である。また、被覆材92は、ワイヤーハーネス9の使用が想定される環境の温度においては、容易に塑性変形しない。
【0048】
被覆材92の内周面の一部は、電線91に接着している。ワイヤーハーネス9の所定の部分に複数の電線が含まれる場合には、被覆材92の内周面の一部と、複数の電線91の一部または全部とが接着している。被覆材92は、ワイヤーハーネス9の所定の部分に含まれる電線91の外周を覆うように成形される。このため、当該所定の部分に含まれる電線91が少数(2〜4本程度。電線91の纏められる形態により相違する)であれば、全ての電線91は、それらの外周の一部が被覆材92の内周面に接触するため、全ての電線91と被覆材92の内周面とが接着している。
【0049】
ただし、当該所定の部分に含まれる電線91が多数である場合には、これら多数の電線91が纏められた状態(電線91の束となった状態)においては、他の電線91に周囲を囲繞されることにより電線91の束の外側に露出しない電線91が存在することがある。このような電線91は、被覆材92の内周面に接触しないから、被覆材に接着されない。換言すると、纏められた電線91のうち、最も外側に位置する電線91の外周面の、さらに外側に露出する部分(他の電線91に対向する部分などではない部分)の一部が、被覆材92の内周面と接着している。このように、被覆材92の内周面の一部と電線91とが接着しているが、必ずしも被覆材92の内周面の一部と全ての電線91とが接着している構成ではない。
【0050】
被覆材92は、熱可塑性材料からなり、熱可塑性材料が有する熱可塑性を利用することによって成形される。被覆材92は、熱可塑性材料により一体に成形されるものであり、複数の部品を組み合わせて(=接合して)成形されるものではなく、かつ、被覆材92には、熱可塑性材料の「継ぎ目」などは形成されない。熱可塑性材料には、種々の熱可塑性の樹脂材料が適用できる。たとえば、ポリエステル系ホットメルト樹脂などが適用できる。
【0051】
被覆材92の厚さは、特に限定されるものではなく、被覆材92に持たせるべき機能やその程度に応じて適宜設定される。例えば、被覆材92に電線91を保護するプロテクタとしての機能を持たせる場合には、電線91が損傷しないように被覆材92の厚さを厚くして強度を高くする構成が適用できる。一方、被覆材92に単に電線を纏める機能のみを持たせる場合には、電線を纏めるために必要な強度が得られる程度の厚さとする構成が適用できる。このように、被覆材92の厚さは、適宜設定できる。
【0052】
図2は、ワイヤーハーネス9の所定の部分を抜き出して示した外観斜視図であって、被覆材92の厚さが軸線方向に沿って変化する構成を示す。被覆材92は、図1に示すように、その軸線方向の全長にわたって厚さが略均一な構成であってもよく、図2に示すように、その軸線方向に沿って厚さが変化する構成であってもよい。たとえば、ワイヤーハーネスの所定の部分に成形された被覆材のうち、特に電線の保護を強化したい箇所は厚さを部分的に厚くするという構成が適用できる。また、要求される電線91の保護の度合に応じて、被覆材92の厚さを相違させるという構成が適用できる。このように、被覆材92の厚さは、被覆材に要求される機能などに応じて適宜設定される。
【0053】
なお、軸線方向の全長にわたって厚さが略均一な被覆材92も、軸線方向に沿って厚さが変化する被覆材92も、熱可塑性材料により一体に成形される。すなわち、例えば、軸線方向に沿って厚さが変化する被覆材は、厚さが薄い部分に別部品が接着などされることにより厚さが大きくされるという構成や、互いに厚さが異なるチューブ状に成形された部品が軸線方向に沿って結合される、という構成ではなく、厚さが薄い部分も厚い部分も、全体として一体に成形される。
【0054】
次に、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置1について説明する。
【0055】
図3は、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置1の要部の構成を、模式的に示した図である。図3に示すように、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置1は、材料可塑化手段11と、ノズル12と、送風手段13とを備える。そして、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置1は、材料可塑化手段11が被覆材の材料である熱可塑性材料を加熱して可塑化し、ホース(熱可塑性材料の経路となる部材)14などを通じてノズル12に送り、可塑化した熱可塑性材料をノズル12から吐出することによって、電線91を覆うように被覆材92を成形することができる。また、送風手段13は、ノズル12から吐出された熱可塑性材料(=成形された被覆材92)に風を当てることにより冷却することができる。
【0056】
このように、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置1は、上記参考として示したワイヤーハーネス9を製造する際に、ワイヤーハーネス9の電線91の所定の部分に被覆材を成形することができる装置である。したがって、ワイヤーハーネス(または電線)の「被覆材成形装置」でもある。
【0057】
材料加熱手段11は、熱可塑性材料を加熱して可塑化し、ノズル12に送りだすことができる器具である。材料可塑化手段11は、従来一般の各種材料可塑化手段が適用できる。たとえば、樹脂材料の射出成形において樹脂材料を加熱して可塑化するために用いられる公知の一般的な加熱装置が適用できる。したがって、説明は省略する。
【0058】
材料可塑化手段11による熱可塑性材料の加熱温度は、熱可塑性材料が有する熱可塑性によって塑性変形可能な状態(=流動可能な状態。ゲル状)であり、かつ、可塑化した熱可塑性材料どうしが接触すると互いに結合して一体化することができる状態となる温度である。ただし、熱可塑性により塑性変形することができる温度であるが、融点よりも低い温度であり、かつ、熱可塑性材料を一般的な成形加工(たとえば、一般的な射出成形や押出成形など)における加熱温度(特に、熱可塑性材料のメーカが推奨する温度)よりも低い温度である。たとえば、熱可塑性材料が熱可塑性により塑性変形できる温度範囲の下限近傍の温度が適用される。
【0059】
熱可塑性材料としてポリエステル系ホットメルト樹脂が適用される場合には、材料可塑化手段による加熱温度は、110〜150℃の範囲の温度が適用される。ポリエステル系ホットメルト樹脂の融点は約190℃であり、一般的な射出成形においては、190〜210℃の温度に加熱される。
【0060】
ノズル12は、材料可塑化手段11により可塑化された熱可塑性材料を、ワイヤーハーネス9の電線91の周囲を覆うように吐出することにより、被覆材92を成形することができる器具である。図4は、ノズル12の構成を模式的に示した分解斜視図であり、ノズル12を構成する各部材の外観斜視図である。図5と図6は、それぞれ、ノズル12が組み付けられた状態を示した外観斜視図であり、図5は、第一の筐体部材121と第二の筐体部材122とが分離している状態を示し、図6は、第一の筐体部材121と第二の筐体部材122とが結合している状態を示す。
【0061】
図4に示すように、ノズル12は、第一の筐体部材121、第二の筐体部材122、第一の入れ子部材123、第二の入れ子部材124とを有する。図5と図6のそれぞれに示すように、第一の筐体部材121には第一の入れ子部材123を嵌め込むことができ、第二の筐体部材122には第二の入れ子部材124を嵌め込むことができる。そして、第一の入れ子部材123が嵌め込まれた第一の筐体部材121と、第二の入れ子部材124が嵌め込まれた第二の筐体部材122とは、分離可能に結合することができる。第一の入れ子部材123が嵌め込まれた第一の筐体部材121と、第二の入れ子部材124が嵌め込まれた筐体部材122のそれぞれには、熱可塑性材料の吐出口(以下、単に「吐出口」と記す)1213,1223が形成される。第一の入れ子部材123が嵌め込まれた第一の筐体部材121と、第二の入れ子部材124が嵌め込まれた筐体部材122とが結合すると、吐出口1213,1223も一体化する。可塑化した熱可塑性材料を吐出口1213,1223から吐出することにより、略チューブ状の被覆材92を成形することができる
【0062】
第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124は、分離可能に結合することができる。そして第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124とが結合すると、一個の管状体(=所定の軸線方向長さを有し、軸線方向の一端から他端にかけて貫通する貫通孔が形成される構造物)を構成する。このため、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124は、それぞれ、管状体を軸線方向に沿って二分割したような構成を有する。
【0063】
第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124は、ワイヤーハーネス9の所定の部分に含まれる電線91を挟み込んだ状態で結合することができる。すなわち、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成される管状体は、その貫通孔の内部に、ワイヤーハーネス9の所定の部分に含まれる電線91を収容(換言すると挿通)することができる。そして、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成される管状体の貫通孔に、ワイヤーハーネス9の所定の部分に含まれる電線91が収容された状態において、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成される管状体と、ワイヤーハーネス9の所定の部分に含まれる電線91とが、それらの軸線方向に沿って相対移動することができる。
【0064】
このため、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成される管状体の貫通孔は、ワイヤーハーネス9の所定の部分に含まれる電線91を収容できる形状および寸法を有する。また、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成される管状体の断面寸法および形状は、被覆材92の断面寸法および形状を規定する。さらに、ワイヤーハーネス9の所定の部分に複数の電線91が含まれる場合には、纏められた電線91の束の断面形状を規定する。このため、被覆材92の断面形状を略円形に成形し、複数の電線91を断面略円形となるように纏める場合には、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成される管状体の断面形状には、略円形が適用される。そして、この場合には、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124は、それぞれ、断面略半円形で所定の長さを有する部材となる。
【0065】
なお、本実施形態においては、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成される管状体の断面形状が略円形に形成される構成を示すが、この管状体の断面形状は特に限定されるものではない。たとえば、四辺形などの多角形に形成される構成であってもよい。要は、被覆材92の断面形状、および纏められた電線91の束の断面形状に応じて適宜設定される。
【0066】
第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成される管状体の外周面の形状は、特に限定されるものではない。たとえば、図4〜図6のそれぞれに示すように、貫通孔の断面形状と略同じ断面形状に形成される構成(本実施形態においては、略円形)であってもよく、それ以外の形状に形成される構成であってもよい。すなわち、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成される管状体の貫通孔の断面形状が略円形であり、外周面の断面形状が多角形(四角形や六角形など)であってもよい。
【0067】
ただし、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成される管状体の外周面には、熱可塑性材料の経路1231,1241が形成され、この熱可塑性材料の経路1231,1241の終点が、この管状体の軸線方向の一端であって、貫通孔の内周面に近接するように(=貫通孔の外側直近に)形成される(後述)。このため、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成される管状体の外周面の断面形状は、貫通孔の断面形状と略同じであることが好ましい。すなわち、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成される管状体は、その断面形状が、周方向の全周にわたって略均一の厚さを有することが好ましい。
【0068】
第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成される管状体の軸線方向の一端近傍は、当該軸線方向の一端に向かって断面寸法が小さくなる先細り形状に形成される。たとえば、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成される管状体の外周面の断面形状が略円形である場合には、軸線方向の一端近傍は、当該一端に向かって先細りとなるように円錐の一部を輪切りにして抜き出したような形状に形成される。
【0069】
第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124には、それぞれ、熱可塑性材料の経路1231,1241が形成される。図7は、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124のそれぞれに形成される熱可塑性材料の経路1231,1241の構成を示した図である。具体的には、図7(a)は第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材を軸線方向の一端から見た図、図7(b)は、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124のそれぞれの外周面(に形成される熱可塑性材料の経路1231,1241)を平面に展開した図、図7(c)は、図7(b)のA−A線断面図、図7(d)は、図7(b)のB−B線断面図である。
【0070】
図7に示すように、熱可塑性材料の経路1231,1241は、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124のそれぞれの外周面に形成される溝である。特に図7(b)に示すように、熱可塑性材料の経路1231,1241は、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124のそれぞれの外周面において、軸線方向の中間の所定の位置を起点とし、軸線方向の一端を終点とする(=軸線方向の一端に達する)。換言すると、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124のそれぞれの軸点方向の一端が、熱可塑性材料の経路1231,1241の終点となる。
【0071】
熱可塑性材料の経路1231,1241は、起点から終点に達するまでの間において、複数に分岐する。分岐した各熱可塑性材料の経路1231,1241は、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124のそれぞれの軸線方向の一端に向かって延伸する。そして、各熱可塑性材料の経路1231,1241は、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124のそれぞれの軸線方向の一端近傍においては、軸線方向の一端に向かうにしたがって幅が徐々に広がる先拡がり形状に形成される。また、先拡がり形状に形成される部分は、底面が徐々に内周面に接近していく(すなわち、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124の軸線方向の一端近傍は、軸線方向の一端に向かうにしたがって、厚さが薄くなる)。
【0072】
そして、分岐した各熱可塑性材料の経路1231,1241は、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124のそれぞれの軸線方向の一端の直近(=終点の直近)において、全て合流して一体化する。すなわち、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124の軸線方向の一端の外周側は、周方向の全長にわたって、熱可塑性材料の経路1231,1241となる。
【0073】
第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合すると、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124のそれぞれに形成される熱可塑性材料の経路1231,1241が、軸線方向の一端直近において合流する。このため、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成される管状体は、熱可塑性材料の経路1231,1241が、貫通孔の一端の外周を全周にわたって切れ目なく囲繞する構成を有する。また、前記のとおり、軸線方向の一端近傍においては、熱可塑性材料の経路1231,1241の底面が内周面に接近しているから、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成される管状体の貫通孔の外側の直近に、熱可塑性材料の経路1231,1241(の終点)が近接して形成される構成となる。
【0074】
熱可塑性材料の経路1231,1241には、具体的には、たとえば次のような構成が適用できる。熱可塑性材料の経路1231,1241は、軸線方向の所定の位置であって周方向の略中間位置を起点とする。そして起点から周方向の両側に向かって延伸し、その後、向きを変えて軸線方向の一端側に向かって延伸する。そして、軸線方向の一端に達するよりも手前において、それぞれ二本に分岐し(合計四本に分岐し)、分岐した各熱可塑性材料の経路1231,1241は、さらに軸線方向の一端に向かって延伸する。そして、分岐した各熱可塑性材料の経路1231,1241は、外周面が先細り形状に形成される部分において、一端に向かうにしたがって幅が徐々に広がる先拡がり形状に形成される。また、この部分においては、軸線方向の一端に向かうにしたがって、熱可塑性材料の経路1231,1241の底面が、徐々に、内周面に接近していく(すなわち、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124のそれぞれの厚さが薄くなっていく)。そして、軸線方向の一端の直近において、先拡がり形状に形成される各熱可塑性材料の経路は、全て合流して一体化する。
【0075】
なお、熱可塑性材料の経路1231,1241の構成は、前記構成に限定されるものではない。要は、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124のそれぞれにおいて、熱可塑性材料の経路1231,1241は、外周面の軸線方向の中間位置を起点とし、軸線方向の一端に達する構成であり、かつ、軸線方向の一端において、その全長(=全周)にわたって形成される構成であればよい。
【0076】
第一の筐体部材121は、第一の入れ子部材123を嵌め込むことができる構成を有する。第二の筐体部材122は、第二の入れ子部材124を嵌め込むことができる構成を有する。そして、第一の入れ子部材123が嵌め込まれた第一の筐体部材121と、第二の入れ子部材124が嵌め込まれた第二の筐体部材122とは、分離可能に結合することができる構成を有する。なお、第一の筐体部材および第二の筐体部材は、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124のそれぞれが嵌め込まれた状態で結合すると、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124も結合して管状体を構成するように構成される。
【0077】
そして、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成される=管状体の貫通孔の両端が、第一の筐体部材121および第二の筐体部材122の結合体の外周に現れる構成を有する。すなわち、ノズル12は、第一の筐体部材121および第二の筐体部材122が結合した状態において、全体として、ワイヤーハーネス9の所定の部分に含まれる電線91を収容可能な貫通孔が形成される構成を有する。
【0078】
図4と図5を参照して説明すると、第一の筐体部材121には、第一の入れ子部材123を嵌め込むことができる嵌合凹部1211が形成される。同様に、第二の筐体部材122には、第二の入れ子部材124を嵌め込むことができる嵌合凹部1221が形成される。第一の筐体部材121に形成される嵌合凹部1211の内周面は、第一の入れ子部材123が嵌め込まれると、第一の入れ子部材123の外周面(=第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124とが結合して構成される管状体の外周面となる面。以下同じ)が略密着する(ただし、熱可塑性材料の経路1231は除く)形状および寸法に形成される。
【0079】
したがって、第一の筐体部材121に形成される嵌合凹部1211は、第一の入れ子部材123の外周面の形状および寸法と略同じ形状および寸法に形成される。同様に、第二の筐体部材122に形成される嵌合凹部1221の内周面は、第二の入れ子部材124が嵌め込まれると、第二の入れ子部材124の外周面(=第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124とが結合して構成される管状体の外周面となる面。以下同じ)が略密着する(ただし、熱可塑性材料の経路は除く)形状および寸法に形成される。具体的には例えば、第一の筐体部材121に形成される嵌合凹部1211は、第一の入れ子部材123の外周面の形状および寸法と略同じ形状および寸法に形成され、第二の筐体部材122に形成される嵌合凹部1221は、第二の入れ子部材124の外周面の形状および寸法と略同じ形状および寸法に形成される。
【0080】
このため、第一の筐体部材121に第一の入れ子部材123が嵌め込まれると、第一の入れ子部材123に形成される熱可塑性材料の経路1231は、第一の筐体部材121に形成される嵌合凹部1211の内周面によって蓋をされる。同様に、第二の筐体部材122に第二の入れ子部材124が嵌め込まれると、第二の入れ子部材124に形成される熱可塑性材料の経路1241は、第二の筐体部材122に形成される嵌合凹部1221の内周面によって蓋をされる。
【0081】
第一の入れ子部材123が第一の筐体部材121に形成される嵌合凹部1211に嵌め込まれた状態においては、第一の筐体部材121の外周の一面が、第一の入れ子部材123の軸線方向の一端の端面(熱可塑性材料の経路1231の終点が位置する側の端面)に略一致する。同様に、第二の入れ子部材124が第二の筐体部材122に形成される嵌合凹部1221に嵌め込まれた状態においては、第二の筐体部材122の外周の一面が、第二の入れ子部材124の軸線方向の一端の端面に略一致する。このため、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124の軸線方向の一端の端面は、第一の筐体部材および第二の筐体部材のそれぞれの外周の一面から露出する。
【0082】
そして、第一の入れ子部材123の軸線方向の一端の直近における外周面(=熱可塑性材料の経路1231の底面)と、第一の筐体部材121に形成される嵌合凹部1211の内周面とが、所定の距離をおいて対向する。すなわち、第一の筐体部材121の外周の一面において、第一の入れ子部材123の外周面と、第一の筐体部材121に形成される嵌合凹部1211の内周面との間に、所定の隙間が形成される。同様に、第二の筐体部材122の外周の一面において、第二の入れ子部材124の外周面と、第二の筐体部材122に形成される嵌合凹部1221の内周面との間に、所定の隙間が形成される。これらの隙間が、ノズル12の吐出口1213,1223(可塑化した熱可塑性材料を吐出する吐出口)となる。
【0083】
第一の筐体部材121に形成される嵌合凹部1211に嵌め込まれた第一の入れ子部材123は、第一の筐体部材121に固定される。同様に、第二の筐体部材122に形成される嵌合凹部1221に嵌め込まれた第二の入れ子部材124は、第二の筐体部材122に固定される。第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124は、それぞれ第一の筐体部材121および第二の筐体部材122に対して着脱可能であってもよいが、少なくとも、ワイヤーハーネス9を製造している間においては、固定された状態に維持される。たとえば、ネジなどによって着脱可能に固定される構成が適用できる(図略)。
【0084】
第一の入れ子部材123が嵌め込まれた第一の筐体部材121と、第二の入れ子部材124が嵌め込まれた第二の筐体部材122とが結合すると、第一の筐体部材121および第二の筐体部材122の結合体の外周の一面には、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成される管状体の貫通孔の一端が現れる。そして、この貫通孔の一端の周囲を囲繞するように、吐出口1213,1223が形成される。たとえば、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124の結合体の貫通孔が、断面略円形に形成される構成であれば、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124の結合体の貫通孔と、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124の軸線方向の一端の端面と、熱可塑性材料を吐出する吐出口1213,1223と、第一の筐体部材121および第二の筐体部材122の嵌合凹部1211,1221の内周面とが、略同心円状に並ぶ構成となる。
【0085】
第一の筐体部材121および第二の筐体部材122のそれぞれには、熱可塑性材料の経路1212,1222が形成される。これらの熱可塑性材料の経路1212,1222は、第一の筐体部材121に嵌め込まれた第一の入れ子部材123および第二の筐体部材122に嵌め込まれた第二の入れ子部材123のそれぞれに形成される熱可塑性材料の経路の起点に、可塑化した熱可塑性材料を送りこむための経路である。このため、たとえば、第一の筐体部材121に形成される熱可塑性材料の経路1212は、第一の筐体部材121の外周から、嵌合凹部1211の内周面の所定の位置(嵌め込まれた第一の入れ子部材123に形成される熱可塑性材料の経路1231の起点)に達する貫通孔状の構成を有する。同様に、第二の筐体部材122に形成される熱可塑性材料の経路1222は、第二の筐体部材122の外周から、嵌合凹部1221の内周面の所定の位置(嵌め込まれた第二の入れ子部材124に形成される熱可塑性材料の経路1241の起点)に達する貫通孔状の構成を有する。
【0086】
このような構成によれば、可塑化した熱可塑性材料が第一の筐体部材121および第二の筐体部材122のそれぞれの熱可塑性材料の経路1212,1222に送りこまれると、第一の筐体部材121および第二の筐体部材121のそれぞれに形成される熱可塑性材料の経路1212,1222と、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124のそれぞれに形成される熱可塑性材料の経路1231,1241を通じて、吐出口1213,1223から吐出される。
【0087】
このため、第一の入れ子部材123が嵌め込まれた第一の筐体部材121および第二の入れ子部材124が嵌め込まれた第二の筐体部材の内部において、熱可塑性材料の流動の態様は次のとおりとなる。
【0088】
可塑化した熱可塑性材料が、第一の筐体部材121および第二の筐体部材122の熱可塑性材料の経路1212,1222に送り込まれると、可塑化した熱可塑性材料は、これらの熱可塑性材料の経路1212,1222を流動し、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124のそれぞれに形成される熱可塑性材料の経路1231,1241の起点に達する。そして、さらに、熱可塑性材料の経路1231,1241を、終点(=吐出口1213,1223)に向かって流動する。
【0089】
熱可塑性材料の経路1231,1241を起点から終点に向かって流動すると、熱可塑性材料の経路1231,1241の分岐の形態にしたがって、熱可塑性材料も分岐して流動する。分岐して流動する熱可塑性材料は、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124の結合体の軸線方向の一端直近において合流し、一体化する。そして、熱可塑性材料は、一体化した状態で、吐出口1213,1223から外部に吐出される。吐出口1213,1223は、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成される管状体の貫通孔の周囲を切れ目なく囲繞するから、吐出された熱可塑性材料は、吐出口1213,1223の形状および寸法に応じた断面形状および寸法を有する切れ目のない略チューブ状に成形される。
【0090】
なお、第一の筐体部材121および第二の筐体部材122の嵌合凹部1211,1221以外の部分の構成は、吐出口1213,1223の近傍における空気の流れが滞らない構成(=吐出口1213,1223から吐出された熱可塑性材料に容易に送風できる構成)であれば、特に限定されるものではない。たとえば、図5と図6のそれぞれに示すように、第一の筐体部材121および第二の筐体部材122は、結合すると軸線方向に貫通する貫通孔が形成される四角柱状となる構成のほか、四角柱以外の断面多角形の柱状となる構成や、円柱状となる構成であってもよい。
【0091】
なお、第一の入れ子部材123が嵌め込まれた第一の筐体部材と、第二の入れ子部材124が嵌め込まれた第二の筐体部材とは、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して管状体を構成するように結合する。このため、第一の筐体部材121および第二の筐体部材122は、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して管状体を構成するように位置合わせして結合できる構成であってもよい。たとえば、第一の筐体部材121および第二の筐体部材122とが結合した状態において互いに接合または対向する面の一方に突起が形成され、他方にこの突起が係合可能な凹部が形成される構成であってもよい。このような構成によれば、第一の筐体部材121および第二の筐体部材122の一方に形成される突起が他方に形成される凹部に係合することにより、第一の筐体部材121および第二の筐体部材122を位置決めして結合することができる。
【0092】
送風手段13は、第一の筐体部材121および第二の筐体部材122(すなわちノズル12)の吐出口1213,1223から吐出された熱可塑性材料(=成形された被覆材92)を、吐出口1213,1223の直近において冷却することができる部材である。このため、送風手段13は、第一の筐体部材121および第二の筐体部材122の吐出口1213,1223の直近に送風することができる構成を有する。
【0093】
なお、この送風手段13の構成は限定されるものではなく、従来公知の各種送風手段が適用できる。たとえば、送風手段13は、空気圧搾機または空気タンクと、送風管または送風チューブとを備え、空気圧搾機または空気タンクの空気を、送風管または送風チューブを通じて、第一の筐体部材121および第二の筐体部材122の吐出口1213,1223に向けて吹き付けることができる構成(=送風管または送風チューブの空気を吐き出す側の端部が、第一の筐体部材121および第二の筐体部材122の直近に配設される構成)が適用できる。このほか、送風ファン(送風ファンには、従来公知の各種ファンが適用できる)が、吐出口1213,1223の近傍に配設される構成などが適用できる。
【0094】
なお、送風手段13は、常温の空気を送風できる構成であればよく、空気の温度を調整する機構を有している必要はない。また、送風手段13は、第一の筐体部材121および第二の筐体部材122を冷却する構成である必要はない。すなわち、第一の筐体部材121および第二の筐体部材122の吐出口1213,1223から吐出された熱可塑性材料を、熱可塑性による塑性変形が生じない温度(または熱可塑性による塑性変形が生じにくい温度)に冷却することができる構成であればよい。このため、送風手段13の冷却能力(送風能力)も、熱可塑性材料が熱可塑性による塑性変形をしない温度に冷却できる能力であればよく、第一の筐体部材121および第二の筐体部材122を冷却する能力は必要ない。
【0095】
次に、本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置2について、上記第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置1と異なる点を中心に説明する。
【0096】
図8は、本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置2の要部の構成を、模式的に示した図である。図8に示すように、本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置2は、材料可塑化手段11と、ノズル22と、送風手段13とを備える。このうち、材料可塑化手段11と送風手段13の構成は、第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置1と同様である。つまり、第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置2が備えるノズル22の構成が、第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置1が備えるノズル12と異なる。
【0097】
ノズル22は、材料可塑化手段11により可塑化された熱可塑性材料を、ワイヤーハーネス9の電線91の周囲を覆うように吐出することにより、被覆材92を成形することができる器具である。図9は、ノズル22の構成を模式的に示した分解斜視図であり、ノズル22を構成する各部材の外観斜視図である。図10は、図9のC−C線断面図である。図11は、ノズル22が組み付けられた状態を示した外観斜視図である。図11は、第一の板状型部材223(第二の板状型部材224)の平面図である。図13は、第一の蓋部材221(第二の蓋部材222)が固定された状態における図12のD−D線断面を示した図である。
【0098】
図9〜図10に示すように、ノズル22は、第一の蓋部材221、第二の蓋部材222、第一の板状型部材223、第二の板状型部材224とを有する。第一の板状型部材223には第一の蓋部材221を固定することができ、第二の板状型部材224には第二の蓋部材222を固定することができる。そして、第一の板状型部材223と、第二の板状型部材224とは、平面方向(図11におけるXY平面方向、すなわち板状型部材の厚み方向に直交する平面方向)に分離可能に結合することができる。第一の板状型部材223および第二の板状型部材224のそれぞれには、第一の蓋部材221および第二の蓋部材222が固定されることにより、熱可塑性材料の吐出口(以下、単に「吐出口」と記す)2232,2242が形成される。第一の板状型部材223と第二の板状型部材224とが結合すると、吐出口2232,2242も一体化する。可塑化した熱可塑性材料を吐出口2232,2242から吐出することにより、略チューブ状の被覆材92を成形することができる。
【0099】
第一の板状型部材223および第二の板状型部材224は、分離可能に結合することができる。そして第一の板状型部材223および第二の板状型部材224とが結合すると、一個の板状体(=平面方向に直交する方向に貫通する貫通孔が形成される板状の構造物)を構成する。
【0100】
第一の板状型部材223および第二の板状型部材224は、ワイヤーハーネス9の所定の部分に含まれる電線91を挟み込んだ状態で結合することができる。すなわち、第一の板状型部材223および第二の板状型部材224が結合して構成される板状体は、その貫通孔の内部に、ワイヤーハーネス9の所定の部分に含まれる電線91を収容(換言すると挿通)することができる。そして、第一の板状型部材223および第二の板状型部材224が結合して構成される板状体の貫通孔に、ワイヤーハーネス9の所定の部分に含まれる電線91が収容された状態において、第一の板状型部材223および第二の板状型部材224が結合して構成される板状体と、ワイヤーハーネス9の所定の部分に含まれる電線91とが、電線91の軸線方向に沿って相対移動することができる。
【0101】
このため、第一の板状型部材223および第二の板状型部材224が結合して構成される板状体の貫通孔は、ワイヤーハーネス9の所定の部分に含まれる電線91を収容できる形状および寸法を有する。厳密には、後述するように、板状体の貫通孔は、第一の蓋部材221および第二の蓋部材222の突出部2211,2221の均一部分2211b,2221bに覆われるため、かかる均一部分2211b,2221bによって構成される貫通孔が、ワイヤーハーネス9の所定の部分に含まれる電線91を収容できる形状および寸法を有していればよい(図13参照)。また、第一の板状型部材223および第二の板状型部材224が結合して構成される板状体の断面寸法および形状は、被覆材92の断面寸法および形状を規定する。さらに、ワイヤーハーネス9の所定の部分に複数の電線91が含まれる場合には、纏められた電線91の束の断面形状を規定する。このため、被覆材92の断面形状を略円形に成形し、複数の電線91を断面略円形となるように纏める場合には、第一の板状型部材223および第二の板状型部材224が結合して構成される板状体の貫通孔の断面形状には、略円形が適用される。
【0102】
第一の板状型部材223および第二の板状型部材224は、相対的に薄い平板部223a,224aと、相対的に厚いホース係合部223b,224bを有する。第一の板状型部材223および第二の板状型部材224の平板部223a,224aの厚み方向と直交する一方側の面には、詳細を後述する熱可塑性材料の経路2231,2241が形成される。第一の板状型部材223および第二の板状型部材224のホース係合部223b,224bには、ホースが係合される凹部223b1,224b1が形成され、各凹部223b1,224b1の底面には、第一の板状型部材223および第二の板状型部材224の平板部223a,224aに形成される熱可塑性材料の経路2231,2241と連通する熱可塑性材料の経路2212,2222が形成されている。
【0103】
第一の板状型部材223および第二の板状型部材224には、それぞれ、熱可塑性材料の経路2231,2241が形成される。なお、第一の板状型部材223の熱可塑性材料の経路2231と、第二の板状型部材224の熱可塑性材料の経路2241は、第一の板状型部材223と第二の板状型部材224が接触する面を対称面として左右対称である。図11に示すように、熱可塑性材料の経路2231,2241は、第一の板状型部材223および第二の板状型部材224のそれぞれの平板部223a,224aにおける一方側の面(=第一の蓋部材221または第二の蓋部材222に密着する面)に形成される溝である。図9および図11に示すように、熱可塑性材料の経路2231,2241は、第一の板状型部材223および第二の板状型部材224のそれぞれの平板部223a,224aにおける一方側の面において、ホース係合部223b,224b側の所定の位置を起点とし、貫通孔に面する位置を終点とする(=貫通孔に面する位置まで達する)。
【0104】
熱可塑性材料の経路2231,2241は、起点から終点に達するまでの間において、複数に分岐する。分岐した各熱可塑性材料の経路2231,2241は、貫通孔に近づく方向に向かって延伸する。そして、各熱可塑性材料の経路2231,2241は、貫通孔近傍においては、軸線方向の貫通孔に向かうにしたがって幅が徐々に広がる先拡がり形状に形成される。また、先拡がり形状に形成される部分は、一方側の面がその反対側の面に徐々に接近していく(すなわち、第一の板状型部材223および第二の板状型部材224の平板部223a,224aにおける貫通孔近傍は、貫通孔に接近するにしたがって、厚さが薄くなる)。
【0105】
そして、分岐した各熱可塑性材料の経路2231,2241は、貫通孔まで到達すると、全て合流して一体化する。すなわち、第一の板状型部材223および第二の板状型部材224が結合して構成される貫通孔の外側には、周方向の全長にわたって熱可塑性材料が流れる。
【0106】
第一の板状型部材223および第二の板状型部材224が結合すると、第一の板状型部材223および第二の板状型部材224のそれぞれに形成される熱可塑性材料の経路2231,2241が、貫通孔の周囲において合流する。つまり、吐出口2232,2242は、貫通孔の一端の外周を全周にわたって切れ目なく囲繞する。
【0107】
熱可塑性材料の経路2231,2241には、具体的には、たとえば次のような構成が適用できる。熱可塑性材料の経路2231,2241は、ホース係合部223b,224b側の所定の位置を起点とする。そして、起点から平板部223a,224aの平面方向に所定長さ延伸し、二本に分岐する。さらに平板部223a,224aの平面方向に所定長さ延伸し、それぞれが二本に分岐する(合計四本に分岐する)。分岐した各熱可塑性材料の経路2231,2241は、貫通孔に近づく方向に向きを変えながら延伸する。そして、分岐した各熱可塑性材料の経路2231,2241は、貫通孔の周囲近傍において、貫通孔に向かうにしたがって幅が徐々に広がる先拡がり形状に形成される。また、この部分においては、貫通孔に近づくにしたがって、一方側の面がその反対側の面に徐々に接近していく(すなわち、第一の板状型部材223および第二の板状型部材224の平板部223a,224aが、貫通孔に接近するにしたがって厚さが薄くなる)。そして、貫通孔まで到達すると、全て合流して一体化する。
【0108】
なお、熱可塑性材料の経路2231,2241の構成は、前記構成に限定されるものではない。要は、第一の板状型部材223および第二の板状型部材224のそれぞれにおいて、熱可塑性材料の経路2231,2241は、平板部223a,224aの平面方向に延びるように形成されて貫通孔の周囲において合流する構成であればよい。
【0109】
第一の板状型部材223には、第一の蓋部材221が固定される。第二の板状型部材224には、第二の蓋部材222が固定される。具体的には、第一の板状型部材223の平板部223aの一方側の面に、第一の蓋部材221の平面部分が密着するように第一の蓋部材221が固定される。同様に、第二の板状型部材224の平板部224aの一方側の面に、第二の蓋部材222の平面部分が密着するように第二の蓋部材222が固定される。このため、第一の板状型部材223に第一の蓋部材221が固定されると、第一の板状型部材223に形成される熱可塑性材料の経路2231は、第一の蓋部材221によって蓋をされる。同様に、第二の板状型部材224に第二の蓋部材222が固定されると、第二の板状型部材224に形成される熱可塑性材料の経路2241は、第二の蓋部材222によって蓋をされる。
【0110】
また、第一の蓋部材221および第二の蓋部材222は、その平面部分から筒状に突出した突出部2211,2221を有する。図11に示すように、突出部2211,2221はその径方向の厚みが徐々に小さくなるテーパ部分2211a,2221aと、そのテーパ部の先端から伸びる厚みが一定の均一部分2211b,2221bを有する。第一の板状型部材223に第一の蓋部材221が固定された状態においては、第一の蓋部材221の突出部2211,2221の先端が、第一の板状型部材223の吐出口2232側の面(熱可塑性材料の経路2231が形成された面の反対側の面)に略一致する。同様に、第二の板状型部材224に第二の蓋部材222が固定された状態においては、第二の蓋部材222の突出部2211,2221の先端が、第二の板状型部材224の吐出口2242側の面(熱可塑性材料の経路2241が形成された面の反対側の面)に略一致する。このため、第一の蓋部材221および第二の蓋部材222の突出部2211,2221の先端は、第一の板状型部材223および第二の板状型部材224のそれぞれの吐出口2232,2242側の面から露出する。
【0111】
そして、図13に示すように、熱可塑性材料の経路2231,2241における、貫通孔の周囲近傍において貫通孔に向かうにしたがって幅が徐々に広がる先拡がり形状に形成された部分は、第一の蓋部材221および第二の蓋部材222の突出部2211,2221のテーパ部分2211a,2221aによって蓋をされる。一方、突出部2211,2221の均一部分2211b,2221bの外周面は、第一の板状型部材223および第二の板状型部材224が結合して形成される貫通孔の内周面と所定の距離をおいて対向する。すなわち、突出部2211,2221の均一部分2211b,2221bと、貫通孔との間に所定の隙間が形成される。この隙間の先端が、ノズル22の吐出口2232,2242(可塑化した熱可塑性材料を吐出する吐出口2232,2242)となる。
【0112】
なお、第一の蓋部材221および第二の蓋部材222は、それぞれ第一の板状型部材223および第二の板状型部材224に対して着脱可能に固定されていてもよいが、少なくとも、ワイヤーハーネス9を製造している間においては、固定された状態に維持される。たとえば、図11に示すようにネジなどによって着脱可能に固定される構成が適用できる。
【0113】
第一の蓋部材221のホース係合部223bおよび第二の蓋部材222のホース係合部224bのそれぞれには、熱可塑性材料の経路2212,2222が形成される(図10参照)。これらの熱可塑性材料の経路2212,2222は、第一の蓋部材221によって蓋をされた第一の板状型部材223の平板部223aおよび第二の蓋部材222によって蓋をされた第二の板状型部材224の平板部224aのそれぞれに形成される熱可塑性材料の経路2231,2241の起点に、可塑化した熱可塑性材料を送りこむための経路である。このため、たとえば、第一の板状型部材223のホース係合部223bに形成される熱可塑性材料の経路2212は、第一の板状型部材223のホース係合部223bの凹部223b1の底面から、平板部223a側(第一の板状型部材223の平板部223aに形成される熱可塑性材料の経路2231の起点)に達する貫通孔状の構成を有する。同様に、第二の板状型部材224のホース係合部224bに形成される熱可塑性材料の経路2222は、第二の板状型部材224のホース係合部224bの凹部224b1の底面から、平板部224a側(第二の板状型部材224の平板部224aに形成される熱可塑性材料の経路2241の起点)に達する貫通孔状の構成を有する。
【0114】
このような構成によれば、可塑化した熱可塑性材料が第一の板状型部材223のホース係合部223bおよび第二の板状型部材224のホース係合部224bのそれぞれの熱可塑性材料の経路2212,2222に送りこまれると、第一の板状型部材223の平板部223aおよび第二の板状型部材224の平板部224aのそれぞれに形成される熱可塑性材料の経路2231,2241を通じて、吐出口2232,2242から吐出される。
【0115】
このため、第一の蓋部材221が固定された第一の板状型部材223および第二の蓋部材222が固定された第二の板状型部材224の内部において、熱可塑性材料の流動の態様は次のとおりとなる。
【0116】
可塑化した熱可塑性材料が、第一の板状型部材223のホース係合部223bおよび第二の板状型部材224のホース係合部224bのそれぞれに形成される熱可塑性材料の経路2212,2222に送り込まれると、可塑化した熱可塑性材料は、これらの熱可塑性材料の経路2212,2222を流動し、第一の板状型部材223の平板部223aおよび第二の板状型部材224の平板部224aのそれぞれに形成される熱可塑性材料の経路2231,2241の起点に達する。そして、さらに、熱可塑性材料の経路2231,2241を、終点に向かって流動する。
【0117】
熱可塑性材料の経路2231,2241の起点から終点にかけてはいくつかの分岐が存在するため、熱可塑性材料は、熱可塑性材料の経路2231,2241の分岐の形態にしたがって分岐して流動する。熱可塑性材料の経路2231,2241は平面方向に延びるように形成されているから、熱可塑性材料は平面方向に流動する。分岐して流動する熱可塑性材料は、貫通孔の周囲近傍において貫通孔に向かうにしたがって幅が徐々に広がる先拡がり形状に形成された部分を通過すると、第一の蓋部材221および第二の蓋部材222の突出部2211,2221の均一部分2211b,2221bと、第一の板状型部材223および第二の板状型部材224が結合して構成される板状体の貫通孔との間の隙間で合流し、一体化する。そして、熱可塑性材料は、一体化した状態で、吐出口2232,2242から外部に吐出される。吐出口2232,2242は、第一の板状型部材223および第二の板状型部材224が結合して構成される板状体の貫通孔の一端の周囲を切れ目なく囲繞するから、吐出された熱可塑性材料は、吐出口2232,2242の形状および寸法に応じた断面形状および寸法を有する切れ目のない略チューブ状に成形される。
【0118】
なお、第一の蓋部材221および第二の蓋部材222は、熱可塑性材料の経路2231,2241を流動する熱可塑性材料の流動性を高めるためのヒータ板で構成してもよい。
【0119】
以上説明した第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置2の変形例としては、次のような例が挙げられる。
【0120】
図11に示すように、熱可塑性材料の経路2231,2241は、ホース係合部223b,224b側の所定の位置を起点とし、起点から平板部223a,224aの平面方向に所定長さ延伸し、二本に分岐する。さらに平板部223a,224aの平面方向に所定長さ延伸し、それぞれが二本に分岐する。すなわち、合計四本に分岐する。このように形成された熱可塑性材料の経路2231,2241は、第一実施形態と異なり平面方向に延るように形成されているから、各経路の起点から終点までの長さが異なる。
【0121】
したがって、分岐した各経路における流動する熱可塑性材料に対する抵抗(管路抵抗)は、各経路の断面積が同じであるとすれば、経路が長いものほど大きくなる。そのため、かかる抵抗による圧力損失を考慮し、熱可塑性材料の経路2231,2241は、起点から終点までの経路が長いものほど断面積を大きくすることが好ましい。例えば、図11に示した構成では、平面方向で見て貫通孔から最も遠い部分を回るようにして伸びる経路(図11における最も左側に位置する経路)が最も長くなるため、かかる経路の断面積を最も大きくする。そして、より貫通孔に近い部分を回るようにして伸びるものほど経路が短くなる(図11では右側に位置するものほど短くなる)ため、短いものほど経路の断面積を小さくすればよい。
【0122】
次に、本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法について説明する。以下では、第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置を用いた製造方法を説明する。
【0123】
まず、ワイヤーハーネス9に含まれる各電線91の端部に、それぞれ所定のコネクタ類が装着される。この工程は、電線91を所定の形態に纏める前の段階や被覆材92を成形する前の段階に行うことができる。このため、電線91の端部に自動でコネクタ類を装着することができる装置(以下、「単に自動装置」と称する)を用いて行うことができる。
【0124】
ワイヤーハーネス9に含まれる電線91が、所定の形態に纏められた後の段階や、被覆材92が成形された後の段階においては、他の電線91や被覆材92が干渉して、所定の電線91を自動装置にセッティングすることができない場合がある。そうすると、自動装置を用いて電線91にコネクタ類を装着することができなくなり、手作業でコネクタ類を装着する必要がある。これに対して、本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法においては、電線91を所定の形態に纏める前の段階や、被覆材92が成形される前の段階において、コネクタ類を装着できる(すなわち、各電線91がバラバラの状態でコネクタ類を装着できる)から、自動装置の使用が妨げられることがない。
【0125】
次に、ワイヤーハーネス9に含まれる電線91を所定の形態に纏める(所定の幹線および所定の枝線を形成する)。この作業は、例えば、ワイヤーハーネス9の電線91の形態が描かれた図板などを用いて行われる。この作業の内容は、従来と同じである。また、図板も、従来公知の構成のものが適用できる。したがって、説明は省略する。
【0126】
次いで、纏められた電線91の所定の部分に被覆材92を成形する。具体的には次のとおりである。図14〜図17は、被覆材92を成形する工程を模式的に示した図である。
【0127】
まず、図14に示すように、電線91の所定の部分(=被覆材92が形成される部分の軸線方向の一端)が、第一の入れ子部材123が嵌め込まれた第一の筐体部材121と、第二の入れ子部材124が嵌め込まれた第二の筐体部材122とにより(すなわち、ノズル12により)挟み込まれる。そして、第一の筐体部材121と第二の筐体部材122とが結合させられる。これにより、電線91の所定の部分の軸線方向の一端が、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成される管状体の貫通孔に収容された状態となる。
【0128】
第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124は、管状体をその軸線方向に沿って二分割したような構成を有する。このため、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124を、電線91の側方から接近させて挟み込んで結合させることによって、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成される管状体の貫通孔に、電線91の所定の部分を収容することができる。このため、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成される管状体の貫通孔の一端から電線を挿入(挿通)するという作業を行う必要がない。したがって、電線91の端部にコネクタ類が装着されている場合であっても、コネクタ類がこの作業の障碍となることがない。このように、本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法においては、電線91の端部にコネクタ類を装着する作業と、電線91の所定の部分に被覆材92を成形する作業の順序が制限されない。したがって、電線91の端部にコネクタ類を装着した後に、電線91の所定の部分に被覆材92を成形する作業を行うことができる。
【0129】
これに対して、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124の結合体の貫通孔に電線91の所定の部分を挿入する方法では、電線91の端部に貫通孔の内径よりも大きいコネクタ類が装着されていると、電線91の所定の部分を貫通孔に挿通できない。
【0130】
そして、熱可塑性材料が材料可塑化手段11により所定の温度に加熱されて可塑化され、可塑化した熱可塑性材料が、ホース14を通じて、ノズル12の第一の筐体部材121および第二の筐体部材122に形成される熱可塑性材料の経路1212,1222に送り込まれる。第一の筐体部材121および第二の筐体部材121に形成される熱可塑性材料の経路1212,1222に送り込まれた熱可塑性材料は、当該熱可塑性材料の経路1212,1222を流動して第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124に形成される熱可塑性材料の経路1231,1241に達する。さらに熱可塑性材料は、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124に形成される熱可塑性材料の経路1231,1241を、吐出口1213,1223に向かって流動する。
【0131】
可塑化した熱可塑性材料が、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124に形成される熱可塑性材料の経路1231,1241を、吐出口1213,1223向かって流動すると、熱可塑性材料の経路1231,1241の分岐の形態にしたがって、熱可塑性材料も分岐して流動する。分岐して流動した熱可塑性材料は、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124の結合体の軸線方向の一端直近において合流し、結合して一体化する。
【0132】
そして、熱可塑性材料は、一体化した状態で、ノズル12の第一の筐体部材121および第二の筐体部材122の吐出口1213,1223から、それらの外部(すなわち、ノズル12の外部)に吐出される。
【0133】
ノズル12に形成される吐出口1213,1223は、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成される管状体の貫通孔の外側の直近に、この貫通孔を切れ目なく囲繞するように形成される。このため、ノズル12の第一の筐体部材121および第二の筐体部材122の吐出口1213,1223から吐出された熱可塑性材料は、電線91の周囲を覆うとともに、略チューブ状に成形され、被覆材92となる。第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124に形成される熱可塑性材料の経路1231,1241は、吐出口1213,1223の直近において全て合流しているから、熱可塑性材料も合流して結合して一体となる。このため、被覆材92は熱可塑性材料により一体に成形され、継ぎ目や切れ目などがない。
【0134】
吐出口1213,1223から吐出された直後の熱可塑性材料(=成形された直後の被覆材92)は、熱可塑性による塑性変形が可能な温度にあるが、外力を加えると塑性変形が可能な程度に軟化した状態である。そして、一般的な射出成形において射出された直後の状態の温度、または一般的な押出成形において押し出された直後の状態の温度よりも低く、かつこれらの状態と比較すると塑性変形しがたい状態にある。このように、吐出されて成形された被覆材92は、流動性が低いため(外部から力を加えるなどしないと流動しない。すなわち、自重などではほとんど流動しないため)、電線91どうしの間に滲入することができない。なお、この状態が長時間にわたって維持されると、熱可塑性材料が電線91どうしの隙間に滲入することも考えられる。しかしながら、吐出された熱可塑性材料の温度は低い温度であるため、外気(常温の空気)に晒されると、電線91どうしの間に滲入するよりも前に、熱可塑性による塑性変形が生じない温度に低下する。このように、吐出された被覆材92が、電線91どうしの間に滲入して電線どうしを結合することがない。
【0135】
このため、本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法によれば、電線にテープが巻き付けられる構成、被覆材が射出成形される構成、電線の周囲に可塑化した熱可塑性材料が塗布される構成と比較すると、電線の所定の部分(=被覆材が成形された部分)の柔軟性(特に曲がりやすさ)の低下を防止または抑制することができる。
【0136】
すなわち、電線にテープが巻き付けられる構成においては、テープによって電線が締め付けられるから、電線は、互いに所定の圧力をもって押し付け合うように密着する。このため、全ての電線が一体に接着された状態に似た状態となるから、テープが巻き付けられた部分の柔軟性が低下する。また、射出成形により被覆材を成形する構成、および可塑化した熱可塑性材料を電線に塗布して被覆材を成形する構成では、射出された熱可塑性材料または塗布された熱可塑性材料が、電線どうしの間に滲入し、電線どうしを結合する。また、電線どうしの間が熱可塑性材料により充填される。このため、全ての電線が一体に結合した状態となるとともに、電線どうしの間に空洞がなくなるから、被覆材が成形された部分の柔軟性が低下する。
【0137】
これに対して、本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法によれば、成形された被覆材92が電線91を強固に結束しない構成を有するワイヤーハーネスを製造できる。さらに、電線どうしの間に熱可塑性材料が滲入しない構成を有するワイヤーハーネスを製造することができる。したがって、本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法によれば、被覆材92が成形された部分の柔軟性が低下しないワイヤーハーネスを製造することができる。
【0138】
吐出口1213,1223から吐出されることにより略チューブ状に成形された被覆材92の内周面の一部は、電線91の表面の一部または全部に接触する。吐出口1213,1223から吐出された直後の被覆材92は、熱可塑性による塑性変形をしやすい状態にあり、その表面は粘性を有している。このため、被覆材92の内周面のうち、電線91に接触した部分は、電線91と接着する。
【0139】
前記のとおり、ワイヤーハーネス9の所定の部分に含まれる電線91が、少数であれば、被覆材92の内周面が全ての電線91の外周面に接触するため、全ての電線91と被覆材92の内周面とが接着する。これに対して、当該所定の部分に含まれる電線92が多数であると、他の電線91に周囲を囲繞されることにより電線91の束の外側に露出しない電線91には、被覆材92の内周面が接触しない。特に、前記のように、吐出口1213,1223から吐出されて成形された被覆材92は、流動性が低いため、電線91どうしの間に滲入して露出しない電線91の表面に到達して接触するということがない。このため、被覆材92の内周面は、このような電線91とは接着しない。したがって、この場合には、被覆材92の内周面と複数の電線91の一部とが接着する構成が得られる。
【0140】
そして、図15に示すように、吐出口1213,1223から熱可塑性材料を吐出しながら、電線91の所定の部分と、ノズル12(第一の筐体部材121および第二の筐体部材122との結合体)とを、それらの軸線方向に沿って相対移動させる。そうすると、電線91の所定の部分のうちの相対移動をさせた範囲に、被覆材92が形成される。
【0141】
なお、電線91の所定の部分が、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成される管状体の貫通孔に収容できる寸法を有していれば、電線91の外径(複数の電線91が含まれる場合には、電線91の束の全体の外径)にかかわらず、被覆材92を成形することができる。したがって、電線91の所定の部分の径が、軸線方向の途中で変化する場合であっても、ノズル12と電線91の所定の部分との相対移動および熱可塑性材料の吐出を継続して被覆材92の成形を継続することができる。この結果、電線91の所定の部分において、外径が異なる部分に跨って、一体に被覆材92を成形することができる。すなわち、電線91の外径が、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124が結合して構成される管状体の貫通孔に収容できる寸法であれば、軸線方向の途中で外径が変化する場合であっても、ノズル12を交換などすることなく、被覆材92の成形を継続することができる。
【0142】
成形される被覆材92の厚さ寸法は、単位時間あたりにノズル12の吐出口1213,1223から吐出される熱可塑性材料の量と、ノズル12と電線91の所定の部分との相対的な移動速度に応じて定まる。すなわち、単位時間あたりに吐出口1213,1223から吐出される熱可塑性材料の量を多くするか、ノズル12と電線91の所定の部分との相対的な移動速度を小さくすると、成形される被覆材92の厚さが厚くなる。このように、単位時間あたりに吐出口1213,1223から吐出する熱可塑性材料の量と、ノズル12と電線91の所定の部分の相対的な移動速度の少なくとも一方を調整することにより、成形される被覆材92の厚さを調整することができる。
【0143】
したがって、単位時間あたりに吐出口1213,1223から吐出される熱可塑性材料の量と、ノズル12と電線91の所定の部分との相対的な移動速度とを一定にすると、成形される被覆材92の厚さは、軸線方向の全長にわたってほぼ均一となる。すなわち、図1に示すような被覆材92が形成される。一方、単位時間あたりに吐出口1213,1223から吐出される熱可塑性材料の量と、ノズル12と電線91の所定の部分との相対的な移動速度の一方または両方を途中で変化させると、軸線方向に沿って厚さが変化する被覆材92を成形することができる。すなわち、図2に示すような被覆材を成形することができる。このように、軸線方向に沿って厚さが変化する被覆材92を、別部品を組み付ける構成ではなく、熱可塑性材料により一体に成形することができる。
【0144】
このような構成によれば、電線91の所定の部分を特に保護したい場合であっても、別部品からなる保護部材を装着する必要がない。また、ノズル12と電線91の所定の部分との相対的な移動速度、またはノズル12の吐出口1213,1223から単位時間あたりに吐出される熱可塑性材料の量の一方または両方を調整するだけで、被覆材92の厚さを調整できる。このため、被覆材92の形状および寸法の制御が容易であり、かつ作業工数の増加を招くこともない。したがって、製造コストの上昇を抑制すること、または製造コストの削減を図ることができる。
【0145】
ノズル12と電線91の所定の部分を相対的に移動させ、ノズル12が電線91の所定の部分の他端(=被覆材92が成形される部分の他端)に位置したら(すなわち、電線91の所定の部分に被覆材92が成形されたら)、ノズル12と電線92の所定の部分との相対的な移動を停止するとともに、熱可塑性材料の吐出を停止する。
【0146】
その後、図16に示すように、送風手段13によって、成形された被覆材92のうち、少なくともノズル12の吐出口1213,1223の直近の部分に対して送風する。成形された被覆材92に送風されると、成形された被覆材92の温度が低下して、被覆材92は、熱可塑性による塑性変形が生じない状態となる。さらにその後、図17に示すように、ノズル12と電線91の所定の部分とを相対的に移動させると、成形された被覆材92はノズル12の吐出口1213,1223において、ノズル12の内部に存在する熱可塑性材料(被覆材92に成形される前の熱可塑性材料)から切断され、ノズル12から分離する。
【0147】
このような構成によれば、成形した被覆材92が引き伸ばされるように塑性変形することなく切断される。このため、被覆材92の軸線方向の端部の見映えの向上を図ることができる。
【0148】
すなわち、ノズル12の吐出口1213,1223から吐出された直後の被覆材92は、熱可塑性により塑性変形できる温度にある。このため、この状態で、ノズル12と電線91の所定の部分とを相対的に移動させると、吐出されて成形された被覆材92が引き伸ばされて塑性変形する。このため、被覆材92の端部がだれたような状態となり、見映えがよくない。なお、ノズル12の吐出口1213,1223の直近においては、成形された被覆材92が熱可塑性により塑性変形できる状態にあるから、刃物などで切断することも困難である。また、被覆材92を切断するために刃物を使用すると、この刃物によって電線91を損傷するおそれもある。
【0149】
これに対して、本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法によれば、次のような理由により、成形された被覆材92を見映えよく切断することができる。送風手段12により、成形された被覆材92のうちの少なくともノズル12の吐出口1213,1223の直近の部分に送風されると、被覆材92のこの部分は急速に冷却される。このため、被覆材92のこの部分は、熱可塑性による塑性変形が生じない状態となる。一方、ノズル12の内部に存在する熱可塑性材料は、送風手段13による送風を受けないため冷却されないから、熱可塑性による塑性変形が生じやすい状態にある。この結果、熱可塑性材料(成形された被覆材92も含む)には、熱可塑性による塑性変形が生じない状態にある部分と、熱可塑性による塑性変形が生じやすい状態にある部分との境界が、ノズル12の吐出口1213,1223の位置に形成される。
【0150】
この状態で、ノズル12と電線91の所定の部分とを相対的に移動させると、ノズル12の内部に存在する熱可塑性材料は、第一の入れ子部材123ならびに第二の入れ子部材124に形成される熱可塑性材料の経路1231,1241の内周面、および第一の筐体部材121ならびに第二の筐体部材122の嵌合凹部1211,1221の内周面との摩擦によって、第一の入れ子部材123ならびに第二の入れ子部材124に形成される熱可塑性材料の経路1231,1241の内部に残る。一方、ノズル12の吐出口から吐出された部分(成形された被覆材92)は、熱可塑性による塑性変形が生じない状態にあるから、軸線方向に引っ張り力が加わっても、塑性変形しない。このため、ノズル12の吐出口において(すなわち、熱可塑性により変形することができる部分とできない部分との境界において)、成形された被覆材92と、成形前の熱可塑性材料とを、それぞれ伸びるように塑性変形させることなく切断することができる。送風を被覆材92の周囲からまんべんなく均一に吹き付けることにより、熱可塑性により変形することができる部分とできない部分との境界が環状に形成されて、切断された端部の見映えがよくなる。したがって、被覆材92の軸線方向の端部の見映えの向上を図ることができる。
【0151】
なお、本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法における熱可塑性材料の加熱温度は、一般的な射出成形や押出成形などと比較して低い温度である。特に、熱可塑性材料が、熱可塑性による塑性変形が可能な温度範囲の下限近傍の温度が好適に適用される。このため、常温の空気を送風するのみであっても、成形された被覆材92を、熱可塑性による塑性変形が生じない温度(または熱可塑性による塑性変形が生じにくい温度)に冷却することができる。したがって、空気の温度を調整するための装置(空気を冷却する装置)が不要であるから、本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置1の構成が複雑になることがなく、かつ部品点数の増加を招くこともない。したがって、設備コストの上昇を招くことがない。
【0152】
以上の工程を経て、電線91の所定の部分に被覆材92が形成される。なお、第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置を用いた場合であっても同様の製造方法が適用できる(上記説明において、ノズル12をノズル22に置き換えればよい)。
【0153】
参考として示したワイヤーハーネス、本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置、本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法は、次のような作用効果を奏することができる。
【0154】
参考として示したワイヤーハーネスによれば、被覆材91が成形される部分の柔軟性の低下が防止または抑制される。このため、ワイヤーハーネスを車両などの内部に配索する作業において、所定の部分を容易に変形させることができるから、配索作業の効率の向上を図ることができる。
【0155】
成形された被覆材92の内周面の一部は、電線91の所定の部分に接着しているから、成形された被覆材92が電線91の所定の部分から移動することがない。このため、成形された被覆材92が移動しないように、被覆材92を電線91に固定する必要がない。
【0156】
また、電線にテープを巻き付ける構成と比較すると、ワイヤーハーネスの見映えがよい。
【0157】
本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置1によれば、設備コストの上昇の防止または抑制、または設備コストの削減を図ることができる。
【0158】
たとえば、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置1に適用されるノズル12は、射出成形用の金型に比較すると、構造が簡単であり安価に製造できる。すなわち、射出成形用の金型は、射出された熱可塑性材料の圧力に耐えられる構成を有する必要がある。これに対して、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置1に適用されるノズル12には、高い圧力が加わらないから、高い圧力に耐えられる構成とする必要がない。このため、構造が単純であり、また小型に製造することができる。
【0159】
また、一般的な射出成形においては、射出された熱可塑性材料の圧力によって、成形用の金型の上型と下型が分離しないようにするために、型締め機構が必要となる。このため、被覆材を成形するための設備の構成が複雑となり、高価となる。これに対して本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置1においては、熱可塑性材料を吐出している間においても、第一の筐体部材121と第二の筐体部材122とが分離するような力は加わらない。このため、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置1は、射出成形のための設備における型締め機構に相当する機構が必要ではない。
【0160】
さらに、一般的な射出成形においては、熱可塑性材料を成形用の金型に充填するために、熱可塑性材料に高い圧力を加える必要がある。これに対して本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置1においては、可塑化した樹脂材料に対して、第一の筐体部材121および第二の筐体部材122に形成される熱可塑性材料の経路1212,1222と、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124に形成される熱可塑性材料の経路1231,1241を通過できる(=流動できる)圧力を加えられる構成であればよい。このため、射出成形に比較すると、熱可塑性材料に加える圧力が小さいから、熱可塑性材料を送りだす装置も小型のものが適用できる。また、熱可塑性材料の経路(材料可塑化手段13とノズル12とを結合するホースなど)も、高い圧力に耐えられるような構成とする必要がない。
【0161】
また、射出成形により被覆材を成形する構成においては、成形用の金型の大きさは成形される被覆材の大きさに応じて定まる。したがって、成形する被覆材の大きさが大きくなると(例えば、軸線方向の長さが長くなると)、成形用の金型の大きさが大きくなる。これに対して本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置1に適用されるノズル12の軸線方向の長さは、成形される被覆材92の軸線方向の長さに依存せず、短い長さとすることができる。すなわち、ノズル12の軸線方向よりも長い被覆材を成形することができる。また、成形される被覆材92の軸線方向の長さは、任意に設定することができる。
【0162】
このように、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置1は、設備コストの上昇の防止もしくは抑制を図ることができるか、または設備コストの削減を図ることができる。
【0163】
また、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置1は、汎用性が高い。
【0164】
たとえば、射出成形により被覆材を成形する構成においては、一組の成形用の金型で一つの種類(一つの寸法および形状)の被覆材しか成形することができない。このため、厚さが異なる被覆材を成形するためには、被覆材の厚さごとに成形用の金型を用意する必要がある。同様に、軸線方向長さが異なる被覆材を形成する場合には、被覆材の軸線方向の長さごとに成形用の金型を用意する必要がある。これに対して本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置1に適用されるノズル12は、ノズル12と電線91の所定の部分との相対移動の速度および/または熱可塑性材料の単位時間あたりの吐出量を調整することにより、被覆材の厚さを変更することができる。したがって、一組のノズル12で、複数の厚さ寸法の被覆材92を成形することができる。さらに、ノズル12と電線91の所定の部分とを相対的に移動させる範囲を適宜設定することにより、電線91の所定の部分に種々の長さの被覆材を成形することができる。
【0165】
このように、一組のノズル12で、複数の厚さ寸法を有する被覆材92を成形することができる。
【0166】
さらに、電線91の所定の部分が、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124の結合体の貫通孔に収容できる寸法であれば、電線91の所定の部分の外径にかかわらず、被覆材92を成形することができる。このため、一組のノズルによって、複数の電線の径(複数の電線が含まれる場合には、電線束の径)に対応することができる。また、電線91の径が軸線方向の途中で変化する場合であっても、途切れることなく(またはノズル12を交換することなく)、径が異なる部分に跨って一体に被覆材92を成形することができる。
【0167】
一方、本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置2によれば、上記第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置1と同様の作用効果ならびに以下のような作用効果も奏される。
【0168】
本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置2では、第一の板状型部材223(平板部223a)と第二の板状型部材224(平板部224a)が結合して構成される板状体の平面方向に熱可塑性材料の経路2231,2241が形成される。つまり、熱可塑性材料の経路2231,2241は、板状体の貫通孔を通過する電線の軸線方向に直交する方向に延伸する。したがって、ノズル22の厚み(電線の軸線方向における大きさ)を小さくすることができるため、電線の根本(分岐点等)により近い部分まで被覆材を形成することができる。
【0169】
かかる点について図18の模式図を参照して具体的に説明する。図18(a)に示す相対的に厚み(電線Wの軸線方向における大きさ;T1)が大きいノズルLを用いて電線に被覆材Cを形成した場合と、図18(b)に示す相対的に厚み(電線Wの軸線方向における大きさ;T2)が小さいノズルSを用いて電線Wに被覆材Cを形成した場合を比較する。被覆対象である電線Wは、図示されるように途中で分岐させる必要があるものとする。
【0170】
ノズルLを用いた場合、ノズルLに対して電線Wを相対移動(図18(a)において下方に移動)させ、被覆材Cを形成していくと、ノズルLと電線Wの分岐点が接触した時点でそれ以上電線Wを相対移動させることができない。そのため、図18(a)に示すように、電線Wの分岐点からおおよそノズルLの厚みT1分電線を被覆することができない。
【0171】
一方、ノズルSを用いた場合も同様に、ノズルSと電線Wの分岐点が接触した時点でそれ以上電線Wを相対移動させることができなくなる。しかし、電線Wを被覆することができない部分は、図18(b)に示すように、電線Wの分岐点からおおよそノズルSの厚みT2分である。つまり、厚みが相対的に小さいノズルSの方が、電線Wの分岐点により近い位置まで電線Wを被覆することができる。
【0172】
つまり、上記本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置2は、板状体の平面方向に熱可塑性材料の経路2231,2241を形成することによってノズル22を薄くし、電線が分岐している場合等において、当該分岐点により近い位置まで電線を被覆することができるようにした構成である。
【0173】
また、第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置2の変形例として説明したように、複数に分岐した熱可塑性材料の経路2231,2241において、経路が長いものほど断面積を大きくすれば、各経路における管路抵抗による圧力損失を均等に近づけることができる。つまり、吐出口2232,2242から吐出される熱可塑性材料の圧力が電線の周方向に均等となる状態に近づけることができるから、被覆材92の厚みが周方向に均一なものなる。
【0174】
本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法によれば、電線91の端部にコネクタ類を装着する工程と、電線91の所定の部分に被覆材92を成形する工程との順序が制限されない。
【0175】
被覆材としてチューブ状の部材(例えば、コルゲートチューブ)を用い、チューブ状の部材の内部に電線の所定の部分を収容する構成においては、電線の端部にコネクタ類を装着する工程と、被覆材を成形する工程との順序が制限されることがある。具体的には、電線の端部に装着されるコネクタ類が、チューブ状の部材を挿通できない寸法および形状を有する場合には、電線の端部にコネクタ類を装着する工程の前に、電線をチューブ状の部材に挿通しておく必要がある。
【0176】
これらの工程の順序が制限されると、例えば次のような問題が生じる。電線の端部にコネクタ類を装着する工程においては、自動装置が用いられることがある。しかしながら、電線がチューブ状の部材の内部に挿通された状態においては、チューブ状の部材や他の電線が物理的に干渉して、所定の電線を自動装置にセッティングすることができない場合がある。そうすると、コネクタ類の装着を手作業で行う必要があり、その結果、ワイヤーハーネスの製造コストの上昇を招くか、または製造コストの削減を図ることが困難となる。
【0177】
これに対して本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法においては、各電線91の端部に所定のコネクタ類を装着した後、電線91を纏め、被覆材92を成形することができる。このため、電線91の端部にコネクタ類を装着する工程を、各電線91が単独で存在する状態で行うことができる。したがって、自動装置を用いてコネクタ類を装着工程において、他の電線91や被覆材92が干渉して電線91を自動装置にセッティングできないということがない。したがって、各電線91にコネクタ類を装着する工程を、自動装置を用いて行うことができ、製造コストの削減を図ることができる。
【0178】
なお、被覆材としてスリットが形成されたチューブ(断面略「C」字状のチューブ)を用いる構成であると、電線の端部にコネクタ類を装着する工程の後に、電線の所定の部分に被覆材を設けることができる。しかしながら、このような構成においては、電線がチューブから抜け出ないようにするため(またはスリットが開いて電線が露出しないようにするため)、チューブにテープなどを巻き付ける必要がある。このため、作業工数の増加を招く。さらに、テープが必要となるから部品点数も増加する。したがって、製造コストの上昇を招く。さらに、チューブにテープが巻き付けられるから、ワイヤーハーネスの見映えがよくないという問題も有する。
【0179】
これに対して本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法によれば、スリットのないチューブ状の被覆材92を一体に成形することができる。このため、被覆材92の外周にテープを巻き付ける必要がないから、部品点数や作業工数の増加を招かない(または、部品点数や作業工数の削減を図ることができる)。また、テープを巻き付ける必要がないから、本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネス9の見映えもよい。
【0180】
さらに、被覆材としてチューブを用いる構成においては、電線の所定の部分に設けられた被覆材が移動しないように、被覆材と電線とに跨るようにテープなどを巻き付ける必要がある。このため、作業工数の増加を招く(または、作業工数の削減を図ることができない)ほか、テープが必要となるから部品点数が増加する。さらに、テープが巻き付けられるから、ワイヤーハーネスの見映えがよくない。
【0181】
これに対して本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法においては、成形された被覆材92は、一部が電線91に接着しているから、成形された位置から移動することがない。このため、被覆材92と電線91とに跨るようにテープを巻き付ける必要がない。したがって、部品点数や作業工数の増加を防止することができる(または部品点数や作業工数の削減を図ることができる)。さらに、被覆材92にテープを巻き付ける必要がないから、本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネス9の見映えもよい。
【0182】
さらに本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法によれば、軸線方向に沿って厚さが変化する被覆材(すなわち、強度が相違する被覆材)92を、簡単にかつ一体に成形することができる。
【0183】
一般に、ワイヤーハーネスの所定の部分の電線には、所定の機能を有する被覆材が設けられる。たとえば、ワイヤーハーネスが車両などの内部に配設された状態において、他の部材などと接触して損傷するおそれがある部分には、電線を保護するためのプロテクタが設けられる。このプロテクタも、電線を保護する機能の度合に応じて、種々の寸法や硬さを有するものが適宜設けられる。一方、電線を保護する要求が小さい部分には、電線がバラバラにならないように電線を纏めるための被覆材が設けられる。このような被覆材は、高い強度が必要ないことがある。したがって、電線の所定の部分のうち、特に保護が要求される部分にはプロテクタが設けられ、それ以外の部分にはテープが巻き付けられる、という構成とすることがある。このような構成によれば、ワイヤーハーネスの部品点数や作業工数が増加するから、製造コストの上昇を招くか、または製造コストの削減を図ることが困難である。
【0184】
これに対して本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法によれば、被覆材92を成形している最中において、ノズル12と電線92の所定の部分との相対的な移動速度、またはノズル12の吐出口1213,1223から吐出される熱可塑性材料の単位時間あたりの量の一方または両方を調整するだけで、被覆材の厚さ(=すなわち強度)を調整することができる。すなわち、軸線方向に沿って厚さ(強度)が相違する被覆材92を成形することができる。したがって、複数の被覆材を設ける必要がないから、作業工数の削減を図ることができる。さらに、軸線方向に沿って厚さ寸法が変化する被覆材92を、熱可塑性材料によって一体に成形することができるから、ワイヤーハーネスの部品点数の削減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0185】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変が可能である。
【0186】
たとえば、本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法においては、被覆材92の断面形状が略円形に形成される構成を示したが、被覆材92の断面形状は限定されるものではない。被覆材92の断面形状は、本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネス9の所定の部分が配索される領域(たとえば、自動車などの車両の内部の所定の部分)の形状および寸法に応じて適宜設定すればよい。そして、第一の入れ子部材123および第二の入れ子部材124の断面形状および寸法を適宜設定することによって、被覆材92の断面形状および寸法を適宜設定できる。
【符号の説明】
【0187】
1 本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置
11 材料可塑化手段
12 ノズル
121 第一の筐体部材
1211 嵌合凹部
1212 熱可塑性材料の経路
1213 吐出口
122 第二の筐体部材
1221 嵌合凹部
1222 熱可塑性材料の経路
1223 吐出口
123 第一の入れ子部材
1231 熱可塑性材料の経路
124 第二の入れ子部材
1241 熱可塑性材料の経路
13 送風手段
14 ホース(熱可塑性材料の経路)
2 本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造装置
11 材料可塑化手段
22 ノズル
221 第一の蓋部材
2211 突出部
2211a テーパ部分
2211b 均一部分
2212 熱可塑性材料の経路
222 第二の蓋部材
2221 突出部
2221a テーパ部分
2221b 均一部分
2222 熱可塑性材料の経路
223 第一の板状型部材
223a 平板部
223b ホース係合部
凹部 223b1
2231 熱可塑性材料の経路
2232 吐出口
224 第二の板状型部材
224a 平板部
224b ホース係合部
凹部 224b1
2241 熱可塑性材料の経路
2242 吐出口
13 送風手段
14 ホース(熱可塑性材料の経路)
9 ワイヤーハーネス
91 電線(複数の電線)
92 被覆材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と熱可塑性材料により成形され前記電線の所定の部分を覆う被覆材とを有するワイヤーハーネスの製造装置であって、
前記熱可塑性材料を、外力を加えると塑性変形が可能な程度に軟化した状態に可塑化する材料可塑化手段と、
一体に結合可能および複数の部材に分離可能であり一体に結合すると前記電線の前記所定の部分を収容可能な貫通孔と前記貫通孔の一端の外周を切れ目なく囲繞する熱可塑性材料の吐出口とが形成されるノズルと、を備え、
前記ノズルが一体に結合すると前記ノズルに形成される前記貫通孔の内部に前記電線の前記所定の部分が収容された状態で、前記材料可塑化手段により可塑化された熱可塑性材料を、前記ノズルに形成される前記熱可塑性材料の吐出口から、前記貫通孔の一端から突出する前記電線の前記所定の部分の外周面上に吐出することにより、前記電線の前記所定の部分を覆う被覆材を、前記熱可塑性材料により一体に成形することができることを特徴とするワイヤーハーネスの製造装置。
【請求項2】
前記ノズルは、互いに一体に結合および分離可能であるとともに結合した状態においては貫通孔が形成された管状体を構成することができる複数の入れ子部材と、互いに一体に結合および分離可能であるとともに前記複数の入れ子部材のそれぞれを嵌め込むことができる複数の筐体部材と、を備え、
前記複数の入れ子部材のそれぞれが嵌め込まれた前記複数の筐体部材が結合すると前記複数の入れ子部材も結合して管状体を構成し、前記複数の入れ子部材が結合して構成された管状体の貫通孔が前記電線の前記所定の部分を収容できる貫通孔となるとともに、
前記複数の入れ子部材が結合して構成された管状体の軸線方向の一端の外周に前記熱可塑性材料の吐出口が形成されることを特徴とする請求項1に記載のワイヤーハーネスの製造装置。
【請求項3】
前記複数の入れ子部材のそれぞれには、前記複数の入れ子部材が結合して管状体を構成した場合において前記管状体の外周面となる面に、溝状の熱可塑性材料の経路が形成され、前記可塑化された樹脂材料は、前記溝状の熱可塑性材料の経路を通じて前記熱可塑性材料の吐出口から吐出されることを特徴とする請求項2に記載のワイヤーハーネスの製造装置。
【請求項4】
前記ノズルは、互いに平面方向に一体に結合および分離可能であるとともに結合した状態においては貫通孔が形成された板状体を構成することができる複数の板状型部材を備え、
前記複数の板状型部材が結合して構成された板状体の貫通孔が前記電線の前記所定の部分を収容できる貫通孔となるとともに、
前記複数の板状型部材が結合して構成された板状体における前記貫通孔の軸線方向の一端の外周に前記熱可塑性材料の吐出口が形成されることを特徴とする請求項1に記載のワイヤーハーネスの製造装置。
【請求項5】
前記複数の板状型部材のそれぞれには、蓋部材によって蓋をされた溝状の熱可塑性材料の経路が前記板状体の平面方向に形成され、前記可塑化された樹脂材料は、前記溝状の熱可塑性材料の経路を通じて前記熱可塑性材料の吐出口から吐出されることを特徴とする請求項4に記載のワイヤーハーネスの製造装置。
【請求項6】
前記溝状の熱可塑性材料の経路は複数形成され、前記吐出口までの経路が長いものほど経路の断面積が大きく形成されていることを特徴とする請求項5に記載のワイヤーハーネスの製造装置。
【請求項7】
前記ノズルの前記熱可塑性材料の吐出口から吐出されて成形された熱可塑性材料からなる被覆材に対して送風することにより冷却することができる送風手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスの製造装置。
【請求項8】
導体の周りがシース材により被覆された複数本の被覆電線よりなる電線束の所定の部分の外周にその周方向の複数方向から熱可塑性樹脂材料を熱可塑性により塑性変形できるが融点よりも低い温度に加熱して吐出することにより略チューブ状に一体成形により形成された被覆材により覆い、該チューブ状の被覆材の内周面を前記電線束の外側に位置する電線の外周面に部分的に直接接着すると共に、前記各電線間の隙間には空隙を形成するようにしたことを特徴とするワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項9】
前記電線束の外周に熱可塑性樹脂材料を吐出してチューブ状の被覆材を形成するに際しては、前記電線束を前記熱可塑性樹脂材料の吐出部位に対して該電線束の軸線方向に相対移動させるようにしたことを特徴とする請求項8に記載のワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂材料の単位時間当たりの吐出量、あるいは前記電線束の軸線方向への相対移動速度を制御することにより、前記チューブ状の被覆材の肉厚を前記電線の軸線方向に全長に亘って同じとするか、または途中部位を厚肉に変化させるようにしたことを特徴とする請求項9に記載のワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項11】
前記チューブ状の被覆材を構成する熱可塑性樹脂材料は、ポリエステル系ホットメルト型樹脂であることを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項12】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスの製造装置を用いるワイヤーハーネスの製造方法であって、
前記電線の前記所定の部分を挟み込むようにして前記ノズルを一体に結合させることにより、前記電線の前記所定の部分を前記ノズルの前記貫通孔の内部に収容し、
前記電線の所定の部分と前記ノズルとを相対的に移動させながら、前記材料可塑化手段により可塑化された熱可塑性材料を、前記ノズルの前記熱可塑性材料の吐出口から、前記電線の前記所定の部分の外周に吐出することによって、前記電線の前記所定の部分を覆う略チューブ状の被覆材を前記熱可塑性材料により一体に成形する工程を含むことを特徴とするワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項13】
前記電線の所定の部分と前記ノズルとの相対的な移動の速度および/または前記ノズルの前記熱可塑性材料の吐出口から吐出される単位時間あたりの熱可塑性材料の量を制御することにより、被覆材の厚さを制御することを特徴とする請求項12に記載のワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項14】
前記材料可塑化手段により可塑化された熱可塑性材料を、前記電線の前記所定の部分の外周に吐出することによって、前記電線の前記所定の部分を覆う略チューブ状の被覆材を前記熱可塑性材料により一体に成形するとともに、前記熱可塑性材料の可塑性によって前記被覆材の内周面と前記電線の前記所定の部分の外周とを接着することを特徴とする請求項12または請求項13に記載のワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項15】
請求項7に記載のワイヤーハーネスの製造装置を用いたワイヤーハーネスの製造方法であって、
請求項12から請求項14のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスの製造方法により前記電線の前記所定の部分に熱可塑性材料からなる被覆材を成形し、
その後、前記電線の前記所定の部分と前記ノズルとの相対的な移動を停止するとともに、前記送風手段により成形された前記被覆材に対して送風して冷却し、
さらにその後、前記ノズルの前記熱可塑性材料の吐出口から熱可塑性材料を吐出しないで前記電線の前記所定の部分と前記ノズルとを相対的に移動させることによって、成形された前記被覆材と前記ノズルの内部に存在する前記熱可塑性材料とを、前記ノズルの前記熱可塑性材料の吐出口の位置において切断して分離する工程を含むことを特徴とするワイヤーハーネスの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2013−8685(P2013−8685A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−180301(P2012−180301)
【出願日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【分割の表示】特願2012−514240(P2012−514240)の分割
【原出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】