説明

ワイヤーハーネスの製造方法、ワイヤーハーネス及びワイヤーハーネス組立用装置

【課題】ワイヤーハーネスをなるべく軽量かつ柔軟な構成としつつ、光ケーブルの曲げ規制を行いながら光ケーブルの余長吸収を行えるようにすることを目的とする。
【解決手段】光ケーブル16を組込んだワイヤーハーネス10を製造する方法である。複数の電線13を集合配置して集合電線群12を製造する。この後、光ケーブル16を集合電線群12に対して蛇行させた状態で、光ケーブル16と集合電線群12とを結束具18によって結束する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤーハーネスに光ケーブルを組込む技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光ケーブルに含まれる光ファイバは、その性質上、ある限度以上に曲げられると、光信号の伝送劣化及び強度劣化が顕著となる。このため、光ケーブルに対しては最小許容曲げ半径が設定されている。
【0003】
光ケーブルを、曲げ規制しつつ余長吸収する技術が特許文献1及び2に開示されている。
【0004】
特許文献1に開示の余長処理機構は、光ファイバ芯線が導入される収納ケース内に、ガイド曲面が形成された構成とされている。光ファイバ芯線はガイド曲面によって曲げ規制されるようになっている。
【0005】
特許文献2に開示の光ケーブル余長処理具は、光ケーブルを巻取るリールと、前記リールを収納する有底筒状容器形状に形成されたリールケースとを備えている。光ケーブルは、リールの外周面に巻付けられることによって曲げ規制されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−92331号公報
【特許文献2】特開2008−33013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ワイヤーハーネスに光ケーブルを組込む際には、光ケーブルが最小許容曲げ半径よりも小さい曲げ半径に曲らないように曲げ規制しつつ、光ケーブルの余長処理を行う必要がある。
【0008】
この場合に、上記特許文献1に開示の余長処理機構或は特許文献2に開示の光ケーブル余長処理具を用いると、ワイヤーハーネス自体に当該余長処理機構或は光ケーブル余長処理具を組込む必要がある。そうすると、ワイヤーハーネスに対する部品の追加によって、ワイヤーハーネスの重量が増加したり、ワイヤーハーネスの柔軟性が損われてしまうという問題を生じる。
【0009】
そこで、本発明は、ワイヤーハーネスをなるべく軽量かつ柔軟な構成としつつ、光ケーブルの曲げ規制を行いながら光ケーブルの余長吸収を行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、第1の態様は、光ケーブルを組込んだワイヤーハーネスを製造する方法であって、(a)複数の電線を集合配置して集合電線群を製造する工程と、(b)前記光ケーブルを集合配置された前記集合電線群に対して蛇行させた状態で、前記光ケーブルと前記集合電線群とを結束具によって結束する工程とを備える。
【0011】
第2の態様は、第1の態様に係るワイヤーハーネスの製造方法であって、前記工程(b)において、前記光ケーブルが前記集合電線群の外周面に沿って配設された状態で前記集合電線群と結束される。
【0012】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係るワイヤーハーネスの製造方法であって、前記工程(b)において、前記光ケーブルに当接することにより前記光ケーブルを一定の曲げ状態に維持可能な曲げ規制面に、前記光ケーブルを当接させて蛇行させた状態で、前記光ケーブルと前記集合電線群とを結束する。
【0013】
第4の態様は、第3の態様に係るワイヤーハーネスの製造方法であって、前記工程(b)において、複数の前記曲げ規制面を、前記集合電線群に沿って前記光ケーブルの両側から交互に当接させることにより、前記光ケーブルを前記集合電線群の外周側で蛇行させる。
【0014】
第5の態様は、第3の態様に係るワイヤーハーネスの製造方法であって、前記工程(b)において、少なくとも3つの前記曲げ規制面を、前記光ケーブルの両側から交互に当接させることにより、前記光ケーブルを前記集合電線群の外周側で蛇行させる。
【0015】
第6の態様は、第3〜第5のいずれか一つの態様に係るワイヤーハーネスの製造方法であって、前記曲げ規制面を前記光ケーブルに向けて進退可能に支持すると共に、付勢部の付勢力によって前記光ケーブルに向けて押付ける。
【0016】
上記課題を解決するため、第7の態様は、光ケーブルを組込んだワイヤーハーネスであって、複数の電線が集合配置された集合電線群と、前記集合電線群に対して蛇行させた状態で、前記集合電線群に対して結束された光ケーブルとを備える。
【0017】
第8の態様は、第7の態様に係るワイヤーハーネスであって、前記光ケーブルが前記集合電線群の外周面に沿って配設された状態で前記集合電線群と結束されている。
【0018】
上記課題を解決するため、第9の態様は、光ケーブルを組込んだワイヤーハーネスを製造するためのワイヤーハーネス組立用装置であって、ワイヤーハーネスを組立てるためのベース部材と、前記ベース部材に立設され、複数の電線を集合配置した状態で支持可能な電線支持具と、前記光ケーブルの曲げを規制しつつ前記光ケーブルに当接可能な曲げ規制面を有し、前記電線支持具によって支持された前記集合電線群に沿って配設された前記光ケーブルを前記集合電線群に対して蛇行させるように、前記光ケーブルに当接可能に設けられた光ケーブル位置規制治具とを備える。
【0019】
第10の態様は、第9の態様に係るワイヤーハーネス組立用装置であって、前記光ケーブル位置規制治具が、前記光ケーブルを前記集合電線群に対して蛇行させるように前記光ケーブルの両側から交互に当接するように、前記集合電線群に沿って複数設けられている。
【0020】
第11の態様は、第10の態様に係るワイヤーハーネス組立用装置であって、前記複数の位置規制治具のうち少なくとも一つは、前記曲げ規制面を有する可動当接部と、前記可動当接部を前記光ケーブルに向けて進退可能に支持する基部と、前記可動当接部を前記光ケーブルに向けて付勢する付勢部とを有し、前記付勢部の付勢力によって付勢された状態で前記可動当接部の前記曲げ規制面が前記光ケーブルに当接可能な付勢位置規制治具とされている。
【発明の効果】
【0021】
第1の態様によると、光ケーブルが蛇行する分によって、光ケーブルの余長吸収を行える。また、光ケーブルが蛇行した状態で集合電線群に対して結束具によって結束されるため、結束時における光ケーブルの蛇行状態が維持され、光ケーブルの曲げ規制を行うことができる。しかも、曲げ規制用の新たな部品を組込まなくてもよいため、ワイヤーハーネスをなるべく軽量かつ柔軟な構成とすることができる。
【0022】
第2の態様によると、光ケーブルの蛇行部分の外方へのはみ出しを抑制しつつ吸収可能な余長をより大きくできる。
【0023】
第3の態様によると、光ケーブルを曲げ規制面に当接させて蛇行させた状態で、前記光ケーブルと前記集合電線群とを結束するため、光ケーブルをより確実に所定の曲げ状態に曲げ規制することができる。
【0024】
第4の態様によると、光ケーブルを複数の光ケーブル位置規制治具の曲げ規制面に当接させて蛇行させるので、光ケーブルをより確実に蛇行させて余長吸収することができる。
【0025】
第5の態様によると、光ケーブルを少なくとも3つの光ケーブル位置規制治具に当接させて蛇行させるので、十分な長さの余長吸収を行える。
【0026】
第6の態様によると、前記曲げ規制面を前記光ケーブルに向けて進退可能に支持すると共に、付勢部の付勢力によって前記光ケーブルに向けて押付けるため、光ケーブルに加わる張力を一定にしつつ吸収すべき余長誤差を吸収できる。
【0027】
第7の態様によると、光ケーブルが蛇行する分によって、光ケーブルの余長吸収を行える。また、光ケーブルが蛇行した状態で集合電線群に対して結束具によって結束されるため、結束時における光ケーブルの蛇行状態が維持され、光ケーブルの曲げ規制を行うことができる。しかも、曲げ規制用の新たな部品を組込まなくてもよいため、ワイヤーハーネスをなるべく軽量かつ柔軟な構成とすることができる。
【0028】
第8の態様によると、光ケーブルの蛇行部分の外方へのはみ出しを抑制しつつ吸収可能な余長をより大きくできる。
【0029】
第9の態様によると、光ケーブルを光ケーブル位置規制治具の曲げ規制面に当接させて蛇行させるので、光ケーブルの曲げ規制態様をより安定化させつつワイヤーハーネスを容易に製造できる。
【0030】
第10の態様によると、光ケーブルを複数の光ケーブル位置規制治具の曲げ規制面に当接させて蛇行させることができるので、光ケーブルをより確実に蛇行させて余長吸収することができる。
【0031】
第11の態様によると、前記複数の位置規制治具のうち少なくとも一つは、前記付勢部の付勢力によって付勢された状態で前記可動当接部の前記曲げ規制面が前記光ケーブルに当接するため、光ケーブルに加わる張力を一定にしつつ吸収すべき余長誤差を吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態に係るワイヤーハーネスを示す概略図である。
【図2】図1のII−II線概略断面図である。
【図3】ワイヤーハーネス組立用装置を示す概略斜視図である。
【図4】ワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図5】ワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図6】ワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図7】付勢位置規制治具を示す概略斜視図である。
【図8】付勢位置規制治具を用いたワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図9】付勢位置規制治具を用いたワイヤーハーネスの製造工程を示す説明図である。
【図10】変形例に係るワイヤーハーネスを示す概略図である。
【図11】変形例に係るワイヤーハーネスを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、実施形態に係るワイヤーハーネス、ワイヤーハーネス組立用装置及びワイヤーハーネスの製造方法について説明する。
【0034】
<ワイヤーハーネス>
まず、ワイヤーハーネスについて説明する。図1はワイヤーハーネス10を示す概略図であり、図2は図1のII−II線概略断面図である。
【0035】
ワイヤーハーネス10は、集合電線群12と、光ケーブル16とを備えている。
【0036】
集合電線群12は、複数の電線13が束ねられるように集合配置された構成とされている。集合電線群12は、電線13のみでテープ等の結束具で結束された構成であってもよいし、電線13と光ケーブル16とが一緒になって結束具で結束された構成であってもよい。
【0037】
なお、実際には、複数の電線13は接続対象となる電気機器、配索レイアウト等に合わせて適宜屈曲及び分岐されつつ束ねられている。ここでは、そのような複数の電線13が1本に束ねられて集合配置された箇所に着目して説明する。
【0038】
光ケーブル16は、光ファイバに樹脂被覆等を施した線状部材である。光ファイバは、ガラス又は透明プラスチック等により形成されており、光信号は光ファイバ内で反射を繰返して伝搬される。かかる光ファイバを含む光ケーブル16が急激に曲げられると、光信号の伝送損失が増えたり、光ファイバが破断してしまうといった事態が生じ得る。そこで、一般的に、光ケーブル16には、伝送損失の抑制及び曲げ破断抑制のため、最小許容曲げ半径が規定されている。ここで、最小許容曲げ半径は、一例として、曲げ半径が小さくなるのに伴って大きくなる光ファイバの伝送損失及び破断確率が光ケーブルの使用に耐え得ると想定される限界の曲げ半径として設定することができる。より具体的には、伝送損失(曲げ損失)は、例えば、ある曲げ半径でn周巻かれた光ケーブルに対して、ある波長Lの光信号を入射させたときの損失の度合い(dB)で評価される。また、破断確率は、例えば、ある曲げ半径でm周巻かれた光ケーブルのt年後の破断する確率で評価される(例えば、過酷な環境下で意図的に劣化を進める加速劣化試験等で評価するとよい)。そして、最小許容曲げ半径は、伝送損失及び破断確率の両評価値が、実際の使用状況に応じて決定される基準を満たすように設定されとよい。なお、曲げ半径とは、光ケーブル16の中心軸の曲率半径で規定することができる。ガラス製光ファイバを含む光ケーブル16では、例えば、曲げ半径7.5mmとして規定されている。
【0039】
上記光ケーブル16は、集合電線群12に対して蛇行させた状態で、当該集合電線群12に対して結束されている。すなわち、光ケーブル16を集合電線群12に沿って配設する際、光ケーブル16が集合電線群12よりも長いと、光ケーブル16に余長が生じてしまうため、かかる余長を吸収しつつ光ケーブル16を集合電線群12に結束する必要がある。そこで、光ケーブル16を集合電線群12に対して蛇行させることによって、余長を吸収する。ここで、光ケーブル16が集合電線群12に対して蛇行するとは、例えば、光ケーブル16が集合電線群12の外周囲で集合電線群12の中心軸を基準としてS字を描くように蛇行することをいう。
【0040】
結束は、粘着テープ、結束バンド等の結束具18によって行われる。結束は、複数の電線13と光ケーブル16とを一つの束として維持すること、及び、集合電線群12の外周における光ケーブル16の位置を維持することによって集合電線群12の外周囲における光ケーブル16の蛇行態様(屈曲態様)を一定に維持する目的で行われる。このため、結束具18は、少なくとも光ケーブル16を集合電線群12の外周囲の一定位置に維持できる結束性を有していればよい。結束具18としては、粘着テープを用いることが好ましい。結束具18として粘着テープを用い、当該粘着テープを集合電線群12及び光ケーブル16に巻回して結束を行うことで、集合電線群12に対する光ケーブル16の姿勢をもなるべく一定に維持することができ、集合電線群12の外周囲における光ケーブル16の蛇行態様(屈曲態様)をより一定に維持することができるからである。以下では、結束具18として粘着テープを用いる例で説明する。
【0041】
また、結束具18は、集合電線群12の延在方向において間隔を有して複数箇所に設けられる。結束具18による結束位置は、結束作業性の観点からは、集合電線群12或は光ケーブル16を支持する治具との干渉を回避可能な位置とすることが好ましい。また、結束具18による結束位置は、蛇行態様をなるべく一定に維持するという観点からは、光ケーブル16が描くカーブの頂点、変曲点に対応する位置或はこれになるべく近い位置とすることが好ましい。実際は、上記を総合考慮して結束位置が設定される。
【0042】
また、光ケーブル16は、集合電線群12の外周面に沿って配設されていることが好ましい。かかる形態は、例えば、光ケーブル16を結束具18で集合電線群12の外周面に押え込むように結束することで実現される。余長吸収すべき光ケーブル16の長さ寸法が小さい場合、即ち、光ケーブル16を曲げる量が少なければ、光ケーブル16を意図的に集合電線群12の外周面に沿って配設する必要はない。しかしながら、余長吸収すべき光ケーブル16の長さ寸法が大きい場合、即ち、光ケーブル16を曲げる量が多ければ、結束具18で光ケーブル16を意図的に集合電線群12の外周面に押え込むようにして当該外周面に沿って配設することが好ましい。
【0043】
以上のように構成されたワイヤーハーネス10によると、光ケーブル16が蛇行する分によって、光ケーブル16の余長吸収を行うことができる。また、光ケーブル16が蛇行した状態で集合電線群12に対して結束具18によって結束されるため、その結束時点における光ケーブル16の蛇行状態が維持される。このため、光ケーブル16が結束時点よりもさらに大きく曲げられてしまうことが抑制されるように、光ケーブル16の曲げ規制を行うことができる。
【0044】
しかも、曲げ規制用の新たな部品をワイヤーハーネス10に組込まなくても上記を実現できるため、ワイヤーハーネス10をなるべく軽量な構成にすることができると共に、柔軟性も維持できる。また、低コスト化も図られる。
【0045】
また、光ケーブル16を集合電線群12の外周面に沿って配設することによって、光ケーブル16の蛇行部分の外方へのはみ出しを抑制しつつ吸収可能な余長をより大きくできる。
【0046】
<ワイヤーハーネスの製造方法>
上記ワイヤーハーネス10の製造方法を説明するにあたって、まず、ワイヤーハーネス組立用装置について説明する。図3はワイヤーハーネス組立用装置20を示す概略斜視図である。
【0047】
ワイヤーハーネス組立用装置20は、ベース部材22と、電線支持具24と、光ケーブル位置規制治具30とを備えている。
【0048】
ベース部材22は、ワイヤーハーネス10を組立てるためのベースとなる部材である。ここでは、ベース部材22は、板状に形成され、製造対象となるワイヤーハーネス10を平面状に展開した状態で配設可能に構成されている。ベース部材22は、必ずしも板状である必要はなく、複数の棒状部材が枠状に組立てられた構成であってもよい。また、ワイヤーハーネス10が部分的に立体的に配設されてもよい。
【0049】
電線支持具24は、ベース部材22上に、ワイヤーハーネス10の配設態様に沿って立設されている。電線支持具24の上端部は、ワイヤーハーネス10を一定位置にて支持可能な形状、ここでは、U字状に形成されている。そして、複数の電線13が当該U字状部分内に配設されることで、幅方向に位置決めされた状態で支持されるようになっている。電線支持具24は、上記構成の他、3本以上の棒状部材が分岐状に立設された構成等であってもよい。
【0050】
光ケーブル位置規制治具30は、ベース部材22上に、光ケーブル16の配設ラインに沿って立設されている。光ケーブル位置規制治具30は、光ケーブル16が配設されるラインの全てに亘って配設される必要はなく、光ケーブル16の端部に近い部分等、余長吸収に適した部分に立設されていればよい。
【0051】
光ケーブル位置規制治具30は、ベース部材22上に立設された支持棒部32と、支持棒部32の上端部に支持された曲げ規制部34とを有している。曲げ規制部34は、光ケーブル16の曲げを規制しつつ光ケーブル16に当接可能な曲げ規制面36を有している。ここでは、曲げ規制部34は、略長方形状の板状に形成され、その一端部の側面に弧状曲面である曲げ規制面36が形成されている。曲げ規制面36は、支持対象となる光ケーブル16の最小許容曲げ半径と同じ曲げ半径或はそれよりも大きな曲げ半径に形成されている。曲げ規制面36には、その延在方向に沿って溝が形成され、光ケーブル16をその幅方向に位置決めできることが好ましい。曲げ規制部34は、円盤状、円柱状、半円柱状であってもよい。また、曲げ規制面36は、光ケーブル16を一定の曲げ半径に維持することができればよく、例えば、複合的な曲面、或は、複数の平面が弧状に連なる面であってもよい。
【0052】
上記曲げ規制部34は、その曲げ規制面36を電線支持具24によって支持された集合電線群12の上方で、集合電線群12の一側方から他側方へ向けた姿勢で、支持棒部32によって片持ち状に支持されている。そして、電線支持具24によって支持された集合電線群12の上方に、当該集合電線群12の延在方向に沿って光ケーブル16を配設すると、曲げ規制面36が光ケーブル16の一側方から当接し、当該光ケーブル16を集合電線群12に対して蛇行させるようになっている。
【0053】
光ケーブル16をより確実に蛇行させるためには、光ケーブル位置規制治具30が集合電線群12に沿って複数設けられると共に、各曲げ規制面36が交互に反対方向を向くように配設され、複数の曲げ規制面36が集合電線群12に沿って光ケーブル16の両側から交互に当接して当該光ケーブル16を蛇行させることが好ましい。少なくとも2つの光ケーブル位置規制治具30が設けられていれば、少なくとも1箇所で光ケーブル16を屈曲させるように蛇行させて余長吸収できるからである。
【0054】
また、より十分な長さ寸法の余長吸収を行うためには、少なくとも3つの光ケーブル位置規制治具30が集合電線群12に沿って設けられていることが好ましい。これにより、少なくとも3つの前記曲げ規制面36を、光ケーブル16の両側から交互に当接させることにより、光ケーブル16を2箇所で凸状に屈曲させることができ、光ケーブル16をより十分な量で蛇行させることができるからである。以下では、光ケーブル位置規制治具30が3つ設けられた例で説明する。
【0055】
なお、上記曲げ規制部34は、電線支持具24に支持されていてもよい。これにより、ワイヤーハーネス10の製造時において、電線13を支持する箇所と、光ケーブル16の曲げ規制をする場所とを同じにすることができ、ワイヤーハーネス組立用装置20上での治具の簡素化でき、また、結束箇所を充分に確保できる。
【0056】
上記ワイヤーハーネス組立用装置20を用いたワイヤーハーネスの製造方法について説明する。
【0057】
まず、図4に示すように、複数の電線13を電線支持具24によって支持させつつワイヤーハーネス組立用装置20上に配設する。これにより、複数の電線13が集合配置された集合電線群12が製造される。なお、この際、光ケーブル位置規制治具30が電線13を配設する際に邪魔にならないように、光ケーブル位置規制治具30が可倒式或は曲げ規制面36の姿勢が可変であることが好ましい。この状態で、集合電線群12は、各電線13が結束されない状態であってもよいし、粘着テープ等の結束具で仮結束された状態であってもよい。
【0058】
次に、図5に示すように、光ケーブル16を集合電線群12に沿って当該集合電線群12上に配設する。この際、各曲げ規制面36を光ケーブル16に対して光ケーブル16の延在方向に沿って当該光ケーブル16の両側から交互に当接させることにより、光ケーブル16を集合電線群12に対して蛇行させる。この状態では、光ケーブル16は曲げ規制面36に当接されているので、光ケーブル16は当該曲げ規制面36の曲げ半径より小さく曲げられることが抑制されている。
【0059】
上記状態で、電線支持具24及び光ケーブル位置規制治具30を避けた位置、ここでは、電線支持具24及び光ケーブル位置規制治具30の各間で、集合電線群12と光ケーブル16とを結束具18によって結束する。
【0060】
光ケーブル位置規制治具30に対応する位置では、結束具18によって集合電線群12と光ケーブル16とを結束してよいし、結束しなくともよい。作業の簡易性からすると、光ケーブル位置規制治具30に対応する位置では結束具18による結束を行わない方が好ましい。より多くの余長吸収を行う場合には、光ケーブル16が集合電線群12からはみ出ないように、光ケーブル位置規制治具30に対応する位置でも結束具18による結束を行って、光ケーブル16を集合電線群12の外周面に密着させるようにすることが好ましい。
【0061】
以上のように構成されたワイヤーハーネスの製造方法によると、光ケーブル16が蛇行する分、光ケーブル16の余長吸収を行える。また、光ケーブル16が蛇行した状態で集合電線群12に対して結束具18によって結束されるため、結束時における光ケーブル16の蛇行状態が維持され、結果、光ケーブル16の曲げ規制を行うことができる。しかも、曲げ規制用の新たな部品をワイヤーハーネス10に組込まなくともよいため、ワイヤーハーネス10をなるべく軽量化でき、また、柔軟な構成を維持することができる。さらには、低コスト化も図られる。
【0062】
また、光ケーブル16を集合電線群12の外周面に沿って配設することによって、光ケーブル16の蛇行部分の外方へのはみ出しを抑制しつつ吸収可能な余長をより大きくできる。
【0063】
また、光ケーブル16を曲げ規制面36に当接させて蛇行させた状態で、光ケーブル16と集合電線群12とを結束するため、光ケーブル16をより確実に所定の曲げ状態に曲げ規制することができる。
【0064】
また、光ケーブル16を複数の曲げ規制面36に当接させて蛇行させているので、光ケーブル16をより確実に蛇行させることができる。特に、光ケーブル16を3つの曲げ規制面36に当接させて蛇行させているので、光ケーブル16をより大きな度合で屈曲させて十分な長さの余長吸収を行える。
【0065】
なお、上記ワイヤーハーネス10を製造する際、上記光ケーブル位置規制治具30を用いることは必須ではない。何らかの曲げ規制面36を光ケーブル16に当接させた状態で、光ケーブル16を集合電線群12に結束できればよい。また、曲げ規制面36を光ケーブル16に当接させることも必須ではない。光ケーブル16の位置を規制する何らかのガイドによって光ケーブル16の曲げ状態を一定に維持した状態で、当該光ケーブル16を集合電線群12に結束できればよい。
【0066】
ところで、ワイヤーハーネス10に沿って光ケーブル16を配設する際に生じる光ケーブル16の余長は必ずしも一定ではないため、変動する余長に対応できることが好ましい。
【0067】
そこで、図7に示すように、上記曲げ規制面36に対応する曲げ規制面136を有する可動当接部135を光ケーブル16に向けて進退可能に支持すると共に、付勢部139の付勢力によって曲げ規制面136を光ケーブル16に向けて押付けるようにするとよい。
【0068】
より具体的には、光ケーブル位置規制治具として次に説明する付勢位置規制治具130を用いるとよい。付勢位置規制治具130は、上記支持棒部32と、当該支持棒部32の上端部に曲げ規制部34の代りに支持された曲げ規制部134とを備えている。曲げ規制部134は、可動当接部135と、基部137と、付勢部139とを備えている。
【0069】
可動当接部135は、樹脂等によって長方形板状に形成され、その先端部に上記曲げ規制面36と同様の当接面136が形成されている。当接面136には、好ましくは、その延在方向に沿った溝が形成されている。
【0070】
基部137は、上記可動当接部135を進退可能に支持するように構成されている。ここでは、基部137は、樹脂等によって略直方体状に形成され、その一端部から内側に向けてガイド凹部137aが形成されている。ガイド凹部137aは、可動当接部135の基端部を移動可能に支持可能な直方体状に開口に形成されている。そして、可動当接部135の基端部がガイド凹部137a内に挿入支持されることによって、可動当接部135が基部137から出没可能に支持されている。そして、本曲げ規制部134が上記曲げ規制部34と同位置及び動姿勢で、支持棒部32に支持されることによって、曲げ規制面136が集合電線群12に沿って配設される光ケーブル16に対してその側方より進退可能に支持される。
【0071】
なお、可動当接部135にその移動方向に沿ってスリット135sが形成されると共に、基部137に、ガイド凹部137aを横切るようにしてピン137pが挿通固定されている。そして、ピン137pが前記スリット135sに移動可能に挿通されることによって、可動当接部135の抜止めが図られている。
【0072】
付勢部139は、上記可動当接部135を光ケーブル16に向けて付勢する部材である。ここでは、付勢部139は、コイルバネであり、ガイド凹部137aの底部と可動当接部135の基端部との間に圧縮介在されている。そして、付勢部139が原形に復帰しようとする弾性力によって可動当接部135が進出方向に付勢されている。このように可動当接部135が光ケーブル16に向けて付勢されることによって、曲げ規制面36が光ケーブル16の側面に押付けられるように付勢される。付勢部139としては、コイルバネの他、板バネ、ゴム等を用いてもよい。
【0073】
上記付勢位置規制治具130は、複数の光ケーブル位置規制治具30のうちの少なくとも一つとして用いればよく、好ましくは、複数の光ケーブル位置規制治具30のうち集合電線群12の延在方向に沿った両端位置のものを除く中間位置のものとして用いるとよい。
【0074】
図8に、3つの光ケーブル位置規制治具を用いた場合において、両端のものとして上記に説明した光ケーブル位置規制治具30を適用し、中央のものとして上記付勢位置規制治具130を適用した例を示している。
【0075】
この場合に、集合電線群12上に、複数の曲げ規制面36、136間を縫うように光ケーブル16を配設すると、2つの曲げ規制面36が光ケーブル16の外周面にその一側方より当接すると共に、その真ん中で、曲げ規制面136が光ケーブル16の外周面にその他側方より当接する。曲げ規制面136は、付勢部139によって付勢されているため、光ケーブル16に生じている余長に応じて曲げ規制面136が進出方向に移動する(図8、図9参照)。これにより、光ケーブル16に生じている余長に応じた曲げ量で光ケーブル16が蛇行する状態となる。そして、上記と同様に、光ケーブル16が集合電線群12に対して結束具18によって結束される。
【0076】
これにより、光ケーブル16に生じる余長に柔軟に対応することができる。また、光ケーブル16は曲げ規制面36、136に当接しているため、当該曲げ規制面36、136よりも小さい曲げ半径で曲げられることは抑制されている。また、曲げ規制面136は、付勢部139によって付勢されているため、過大な引張り力が光ケーブル16に作用することも抑制されている。これにより、光ケーブル16の破断が有効に抑制されている。
【0077】
なお、複数の光ケーブル位置規制治具を用いた場合において、そのうちのいずれに上記付勢位置規制治具130を適用してもよい。もっとも、コスト面からすると、複数の光ケーブル位置規制治具のうちの一部に上記付勢位置規制治具130を適用することが好ましい。この場合、端部を除いて中間に配設されるものとして上記付勢位置規制治具130を適用すると、当該付勢位置規制治具130の両側で光ケーブル16を曲げて十分な余長吸収を行える。
【0078】
なお、上記実施形態では、集合電線群12が直線状である例で説明したが、必ずしもその必要はなく、集合電線群12が曲っていてもよく、また、集合電線群は分岐していてもよい。
【0079】
図10,図11に、集合電線群が分岐する例を示す。なお、図10、図11では、曲げ規制部234は、円状周面をなす曲げ規制面236を有している例で説明する。
【0080】
図10では、集合電線群212はT字状に分岐するように配設され、光ケーブル16は、一方の分岐部分に対して略90度の角度をなす他の分岐部分に至るように配設される。曲げ規制部234は分岐部分及び光ケーブル16が配設される2つの分岐部分に配設されている。そして、T字状の集合電線群212に光ケーブル16を敷設する際に、光ケーブル16は曲げ規制面236に押し当てられつつ略90度曲げられ、その状態で、結束具18によって集合電線群212に対して結束される。この場合でも、光ケーブル16は、集合電線群212に対して所定の位置で結束具18によって固定されている。このため、光ケーブル16を曲げ規制面236から取外した状態で、光ケーブル16の曲げ半径はある程度の大きさに維持される。
【0081】
図11では、集合電線群312はY字状に分岐しており、光ケーブル16は、一方の分岐部分に対して鋭角をなす他の分岐部分に至るように配設される。曲げ規制部234は、光ケーブル16が配設される2又状の分岐部分から他の分岐部分よりの位置に配設されている。そして、Y字状の集合電線群312に光ケーブル16を敷設する際に、光ケーブル16は曲げ規制面236に押し当てられつつ折返すように曲げられ、その状態で、結束具18によって集合電線群312に対して結束される。この場合でも、光ケーブル16は、集合電線群312に対して所定の位置で結束具18によって固定されている。このため、光ケーブル16を曲げ規制面236から取外した状態で、光ケーブル16の曲げ半径はある程度の大きさに維持される。
【0082】
図10及び図11の場合でも、集合電線群212、312の中心軸に対して、光ケーブル16は迂回するようにずれている。このように、集合電線群に対して光ケーブルが蛇行する場合には、集合電線群の中心軸に対して光ケーブルがずれる各種態様が含まれる。
【0083】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【符号の説明】
【0084】
10 ワイヤーハーネス
12、212、312 集合電線群
13 電線
16 光ケーブル
18 結束具
20 ワイヤーハーネス組立用装置
22 ベース部材
24 電線支持具
30 光ケーブル位置規制治具
32 支持棒部
34、134、234 曲げ規制部
36、136、236 曲げ規制面
130 付勢位置規制治具
135 可動当接部
137 基部
139 付勢部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ケーブルを組込んだワイヤーハーネスを製造する方法であって、
(a)複数の電線を集合配置して集合電線群を製造する工程と、
(b)前記光ケーブルを集合配置された前記集合電線群に対して蛇行させた状態で、前記光ケーブルと前記集合電線群とを結束具によって結束する工程と、
を備えるワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のワイヤーハーネスの製造方法であって、
前記工程(b)において、前記光ケーブルが前記集合電線群の外周面に沿って配設された状態で前記集合電線群と結束される、ワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のワイヤーハーネスの製造方法であって、
前記工程(b)において、前記光ケーブルに当接することにより前記光ケーブルを一定の曲げ状態に維持可能な曲げ規制面に、前記光ケーブルを当接させて蛇行させた状態で、前記光ケーブルと前記集合電線群とを結束する、ワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項4】
請求項3記載のワイヤーハーネスの製造方法であって、
前記工程(b)において、複数の前記曲げ規制面を、前記集合電線群に沿って前記光ケーブルの両側から交互に当接させることにより、前記光ケーブルを前記集合電線群の外周側で蛇行させる、ワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項5】
請求項3記載のワイヤーハーネスの製造方法であって、
前記工程(b)において、少なくとも3つの前記曲げ規制面を、前記光ケーブルの両側から交互に当接させることにより、前記光ケーブルを前記集合電線群の外周側で蛇行させる、ワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項6】
請求項3〜請求項5のいずれか一つに記載のワイヤーハーネスの製造方法であって、
前記曲げ規制面を前記光ケーブルに向けて進退可能に支持すると共に、付勢部の付勢力によって前記光ケーブルに向けて押付ける、ワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項7】
光ケーブルを組込んだワイヤーハーネスであって、
複数の電線が集合配置された集合電線群と、
前記集合電線群に対して蛇行させた状態で、前記集合電線群に対して結束された光ケーブルと、
を備えるワイヤーハーネス。
【請求項8】
請求項7記載のワイヤーハーネスであって、
前記光ケーブルが前記集合電線群の外周面に沿って配設された状態で前記集合電線群と結束されている、ワイヤーハーネス。
【請求項9】
光ケーブルを組込んだワイヤーハーネスを製造するためのワイヤーハーネス組立用装置であって、
ワイヤーハーネスを組立てるためのベース部材と、
前記ベース部材に立設され、複数の電線を集合配置した状態で支持可能な電線支持具と、
前記光ケーブルの曲げを規制しつつ前記光ケーブルに当接可能な曲げ規制面を有し、前記電線支持具によって支持された前記集合電線群に沿って配設された前記光ケーブルを前記集合電線群に対して蛇行させるように、前記光ケーブルに当接可能に設けられた光ケーブル位置規制治具と、
を備えるワイヤーハーネス組立用装置。
【請求項10】
請求項9記載のワイヤーハーネス組立用装置であって、
前記光ケーブル位置規制治具が、前記光ケーブルを前記集合電線群に対して蛇行させるように前記光ケーブルの両側から交互に当接するように、前記集合電線群に沿って複数設けられている、ワイヤーハーネス組立用装置。
【請求項11】
請求項10記載のワイヤーハーネス組立用装置であって、
前記複数の位置規制治具のうち少なくとも一つは、前記曲げ規制面を有する可動当接部と、前記可動当接部を前記光ケーブルに向けて進退可能に支持する基部と、前記可動当接部を前記光ケーブルに向けて付勢する付勢部とを有し、前記付勢部の付勢力によって付勢された状態で前記可動当接部の前記曲げ規制面が前記光ケーブルに当接可能な付勢位置規制治具である、ワイヤーハーネス組立用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−89319(P2012−89319A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234273(P2010−234273)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】