説明

ワイヤーハーネス固定装置

【課題】ワイヤーハーネスの固定作業とアース線のアース作業とを容易に行えるようにすること。
【解決手段】ワイヤーハーネス固定装置の一例であるプロテクタ20は、車体に突設された導電性を有するブラケット板10にワイヤーハーネスWHを固定する。プロテクタ20は、ハーネス保持部24と、ハーネス保持部24に一体的に設けられ、ブラケット板10を挿入可能なブラケット板挿入部30とを有するワイヤーハーネス保持固定部材22と、アース線18が接続されるアース線接続部42と、ブラケット板挿入部30に保持可能に形成され、ブラケット板挿入部30に保持された状態でブラケット板挿入部30に挿入されたブラケット板10に電気的に接触可能なブラケット板接続部46とが導電性材料によって一体形成されたアース線中継接続部材40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤーハーネスを車体に固定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤーハーネスを収納して車体に固定するためのプロテクタにおいてアース線をアースする構造を組込んだものとして特許文献1に開示のものがある。
【0003】
特許文献1では、プロテクタのアース端取付部に、当該アース端取付部とアース端子との重合姿勢を固定する構成が組込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−5322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、当該アース端取付部とアース端子とを重ね合せ、その重ね合せ姿勢を維持しつつ、それらを共通の固定ボルトによって車体に固定する必要があるため、その固定作業が面倒である。
【0006】
そこで、本発明は、ワイヤーハーネスの固定作業とアース線のアース作業とを容易に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1の態様は、車体に突設された導電性を有するブラケット板にワイヤーハーネスを固定するためのワイヤーハーネス固定装置であって、前記ワイヤーハーネスを保持するためのハーネス保持部と、前記ハーネス保持部に一体的に設けられ、前記ブラケット板を挿入可能なブラケット板挿入部とを有するワイヤーハーネス保持固定部材と、アース線が接続されるアース線接続部と、前記ブラケット板挿入部に保持可能に形成され、前記ブラケット板挿入部に保持された状態で前記ブラケット板挿入部に挿入された前記ブラケット板に電気的に接触可能なブラケット板接続部とが導電性材料によって一体形成されたアース線中継接続部材とを備え、前記ブラケット板挿入部及び前記ブラケット板接続部のすくなくとも一方に、前記ブラケット板挿入部に挿入された前記ブラケット板に抜止め保持可能な抜止め形状部分が形成されている。
【0008】
第2の態様は、第1の態様に係るワイヤーハーネス固定装置であって、前記ブラケット板接続部は、前記ブラケット板をその厚み方向両側から挟込み可能な複数の挟込み片を有し、前記複数の挟込み片のそれぞれに、前記ブラケット板の側方から見てV字状を呈するように屈曲し、前記ブラケット板をその厚み方向両側から挟込む屈曲部が形成されている。
【0009】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係るワイヤーハーネス固定装置であって、前記ブラケット板接続部は、前記ブラケット板の挿入方向に沿って前記ブラケット板の主面に向けて傾斜するように延出する爪部を有する。
【0010】
第4の態様は、第3の態様に係るワイヤーハーネス固定装置であって、前記ブラケット板接続部は、前記爪部の先端部を前記ブラケット板に抜止め状に引っ掛からせる形状に形成されている。
【0011】
第5の態様は、第1〜第4のいずれか1つの態様に係るワイヤーハーネス固定装置であって、前記ワイヤーハーネス保持固定部材に、前記アース線接続部を収容可能な止水用凹部が形成され、前記止水用凹部内に前記アース線接続部が収容された状態で、前記止水用凹部に止水剤が充填されている。
【発明の効果】
【0012】
第1の態様に係るワイヤーハーネス固定装置によると、アース線接続部にアース線を接続した状態で、ブラケット板をブラケット板挿入部に挿入すると、ブラケット板に対するワイヤーハーネス固定装置の抜止め固定が行われると共に、アース線がアース線中継接続部材を介してブラケット板にアースされる。このため、ワイヤーハーネスの固定作業とアース線のアース作業とを容易に行える。
【0013】
第2の態様によると、屈曲部がブラケット板に対してその両面側から接触するため、ブラケット板接続部とブラケット板とが安定してより確実に電気的に接触する。
【0014】
第3の態様によると、ブラケット板をブラケット板挿入部に挿入すると、爪部がブラケット板に係止する。このため、ブラケット板をより確実に抜止め保持することができる。
【0015】
第4の態様によると、前記爪部が前記ブラケット板に抜止め状に引っ掛かるため、ブラケット板接続部に対してブラケット板を抜止め保持することができる。
【0016】
第5の態様によると、アース線とアース線接続部とを止水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係るプロテクタを示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線部分断面図である。
【図3】ブラケット板挿入部から蓋部を開いた状態を示す斜視図である。
【図4】ブラケット板挿入部から蓋部を開いた状態を示す斜視図である。
【図5】アース線中継接続部材を示す斜視図である。
【図6】ブラケット板挿入部及びアース線中継接続部材とブラケット板との位置関係を示す断面図である。
【図7】アース線中継接続部材とブラケット板との位置関係を示す説明図である。
【図8】変形例に係るブラケット板接続部を示す部分斜視図である。
【図9】変形例に係る爪部がブラケット板に係合している状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態に係るワイヤーハーネス固定装置について説明する。本実施形態では、ワイヤーハーネス固定装置が、ワイヤーハーネスを収容した状態で当該ワイヤーハーネスを車体に対して固定するプロテクタである例で説明する。図1はプロテクタ20を示す斜視図であり、図2は図1のII−II線部分断面図であり、図3及び図4はブラケット板挿入部30から蓋部38を開いた状態を示す斜視図である。
【0019】
プロテクタ20は、ワイヤーハーネスWHを収容した状態で、車体に突設されたブラケット板10に固定可能に構成されている。これにより、ワイヤーハーネスWHが車体のブラケット板10に取付固定される。
【0020】
ここで、ブラケット板10は、金属等の導電性材料によって形成された細長い板状部材である。このブラケット板10は、金属等で構成された車体に対して突出した状態で溶接、ボルト締等によって固定されている。そして、後述するアース線18を、本ブラケット板10に電気的に接続すると、当該アース線18はブラケット板10を介して車体にアースされる。また、本実施形態では、ブラケット板10に、嵌合孔12が形成されている。ここでは、嵌合孔12は、略方形状の孔であり、ブラケット板10の幅方向中間部に、ブラケット板10の長手方向に沿って複数箇所に形成されている。そして、後述する抜止め部34の嵌合突部34cが嵌合孔12に嵌め込まれることによって、ブラケット板10がプロテクタ20に対して抜止め固定される。なお、ブラケット板10に形成される嵌合孔12は、三角形状等その他の孔形状であってもよい。
【0021】
プロテクタ20は、ワイヤーハーネス保持固定部材22と、アース線中継接続部材40とを備えている。
【0022】
ワイヤーハーネス保持固定部材22は、樹脂にて金型一体成形等された部材であり、ハーネス保持部24と、ブラケット板挿入部30とを備えている。
【0023】
ハーネス保持部24は、ワイヤーハーネスWHを保持するための部分である。ここでは、ハーネス保持部24は、細長板状の底部24aの両側部から一対の側壁部24bが立上がる樋状に形成されている。そして、ワイヤーハーネスWHがハーネス保持部24内にその延在方向に沿った状態で収容されることによって、当該ワイヤーハーネスWHがハーネス保持部24内に保持される。
【0024】
ブラケット板挿入部30は、上記ハーネス保持部24に一体的に設けられている。ここでは、ブラケット板挿入部30は、一方の側壁部24bの外面に、当該外面から突出するように設けられている。
【0025】
より具体的には、ブラケット板挿入部30は、連結部31と挿入本体部32とを有している。
【0026】
挿入本体部32は、略直方体状に形成されており、内部に一方側(図1では上方)に開口する挿入凹部33が形成されている。この挿入本体部32の底部外側コーナー部分の幅方向中央部には、開口32hが形成されている。そして、ブラケット板10が挿入本体部32の上方開口より挿入凹部33内に挿入される。また、アース線中継接続部材40のブラケット板接続部46が本挿入凹部33内に収容配置された状態でブラケット板10に接触する。
【0027】
この挿入凹部33内には、挿入凹部33内に挿入されたブラケット板10を抜止めするための抜止め部34が設けられている。抜止め部34は、挿入本体部32の外側壁部の幅方向中間部の内側に設けられており、抜止め嵌合片34aと支持片34bとを有している。抜止め嵌合片34aは、前記外側壁部の幅方向中間部の内側で、ブラケット板10の挿入方向に沿って延びる細長板状部材に形成されている。また、抜止め嵌合片34aのうちブラケット板10の挿入方向前方側の端部(図2では下側の端部)であって挿入凹部33の内側を向く面に、嵌合突部34cが突設されている。嵌合突部34cは、ブラケット板10の挿入方向に向けて徐々に突出寸法が大きくなると共に、その頂点で段部を介して抜止め嵌合片34aに至る突起形状に形成されている。この抜止め嵌合片34aのうちブラケット板10の挿入方向とは反対側の端部が支持片34bを介して挿入本体部32の外側壁部に連結されている。これにより、抜止め嵌合片34aは、その長手方向をブラケット板10の挿入方向に沿わせた嵌合姿勢と、嵌合突部34cをブラケット板10の挿入経路から退避させた退避姿勢との間で姿勢変更可能に支持されている。また、支持片34bの弾性復元力によって、抜止め嵌合片34aは退避姿勢から嵌合姿勢に向けて付勢されている。これにより、ブラケット板10を挿入する際には、ブラケット板10の先端部が上記嵌合突部34cの傾斜面に摺接することで、嵌合突部34cがブラケット板10の挿入経路から退避する方向に押され、抜止め嵌合片34aが退避姿勢に姿勢変更する。また、ブラケット板10の嵌合孔12が嵌合突部34cの位置に達すると、抜止め嵌合片34aが嵌合姿勢に弾性復帰し、嵌合突部34cが嵌合孔12に嵌め込まれ、ブラケット板10の抜止めが図られる。なお、抜止め嵌合片34aの挿入方向前方側の端部は、開口32hを介して外部に露出している。従って、当該開口32hを通じて抜止め嵌合片34aの端部を動かすことで、抜止め嵌合片34aを姿勢変更させて、嵌合突部34cを嵌合孔12から離脱させることができる。
【0028】
また、挿入凹部33の内面には、アース線中継接続部材40のブラケット板接続部46を保持するための突起部35が形成されている。ここでは、挿入凹部33のうち連結部31側の内面の上端両側部及びこれに対向する位置に、突起部35が形成されている。突起部35は、ブラケット板10の挿入方向に向けて徐々に突出寸法が大きくなると共に、その頂点で段部を介して挿入凹部33の各内面に至る突起形状に形成されている。そして、ブラケット板接続部46を挿入凹部33内に押しこむ際には、当該ブラケット板接続部46が突起部35の傾斜面に当接することで、ブラケット板接続部46及び挿入本体部32の少なくとも一方が弾性変形する。ブラケット板接続部46が突起部35を乗越えると、ブラケット板接続部46及び挿入本体部32が元の形状に弾性復帰して、突起部35がブラケット板接続部46の上端部に当接して、挿入凹部33からのブラケット板接続部46の抜止めが図られる。
【0029】
連結部31は、ハーネス保持部24と挿入本体部32との間に設けられている。ここでは、ハーネス保持部24の一方の側壁部24bと外面と挿入本体部32の上端部とを一体的に連結している。連結部31には、一方側(図1では上方)に開口する止水用凹部31Aが形成されている。止水用凹部31Aは、後述するアース線接続部42を収容可能な細長い直方体凹状に形成されている。そして、アース線接続部42及びアース線18のうち当該アース線接続部42に接続された部分全体が、止水用凹部31A内に収容された状態で、止水用凹部31A内に止水剤Lが充填されている(図6参照)。なお、止水用凹部31Aと挿入凹部33との間の仕切壁32Wの中間部には、ブラケット板接続部46とアース線接続部42とを連結する部分を配設するための、切欠状の凹部32Waが形成されている。また、止水用凹部31Aの一端側の外側壁部の縁部には、アース線18を引込むための凹部31gが形成されている。
【0030】
また、このブラケット板挿入部30には、止水用凹部31Aの開口を閉塞するための蓋部38が設けられている。蓋部38は、止水用凹部31Aの開口を塞ぐ程度の大きさの板状蓋部38aと板状蓋部38aの側方で挿入凹部33の開口縁部に沿って配設される枠状蓋部38bとを有している。この蓋部38の一端部はブラケット板挿入部30の一端部にヒンジ部38fを介して連結されている。そして、蓋部38をブラケット板挿入部30の外側方に開くことで、ブラケット板挿入部30にアース線中継接続部材40を収容配置できる。また、蓋部38をブラケット板挿入部30の上面に配設することで、止水用凹部31Aの開口を板状蓋部38aで覆うことができる。なお、この状態では、挿入凹部33の開口は、枠状蓋部38bを通じて外方に開口した状態が維持されている。
【0031】
また、枠状蓋部38bの他端部は、ブラケット板挿入部30の一端部外面に沿って延びるU字状の蓋係止部38cに形成されている。ここで、ブラケット板挿入部30の一端部外面には、蓋係止突部37が形成されている。蓋係止突部37は、ブラケット板10の挿入方向に向けて徐々に突出寸法が大きくなると共に、その頂点で段部を介してブラケット板挿入部30の外面に至る突起形状に形成されている。また、蓋係止突部37の両側方に離れた位置に、一対の逃げ規制片37dが形成されている。そして、蓋部38をブラケット板挿入部30の上面に配設すると、枠状蓋部38bの他端部の蓋係止部38cの先端部が一対の逃げ規制片37d間で蓋係止突部37を乗越えて当該蓋係止突部37に係止する。これにより、蓋部38がブラケット板挿入部30の上面に配設された状態が維持される。また、蓋部38の板状蓋部38aには、板状蓋部38aが止水用凹部31Aの開口を塞いだ状態で止水用凹部31Aに向けて突出可能な押え片38dが少なくとも1つ(ここでは2つ)突設されている。この押え片38dは、板状蓋部38aが止水用凹部31Aの開口を塞いだ状態で、アース線18をアース線接続部42に向けて押込む役割を果す。
【0032】
図5はアース線中継接続部材40を示す斜視図である。図1〜図5に示すように、アース線中継接続部材40は、アース線接続部42とブラケット板接続部46とが導電性材料によって一体形成された部材である。ここでは、鉄等の金属板をプレス加工等することで、所定形状に打抜き及び曲げ加工されたアース線中継接続部材40が形成されている。
【0033】
アース線接続部42は、アース線18を接続可能に形成されている。ここでは、アース線接続部42は、底板部42aと底板部42aの両端部から底板部42aに対して略直交する同一方向に突出する一対の芯線接触部42bとを備えている。一対の芯線接触部42bに、先端部に向けて開口するU字凹状の刃部42cが形成されている。刃部42cの間隔寸法は、アース線18の芯線の直径よりも僅かに小さい寸法に設定されている。また、刃部42cの上端部は、上方に向けて拡開する形状に形成されている。そして、アース線18を一対の芯線接触部42bの刃部42cに押込むことで、刃部42cがアース線18の被覆部に切込んでいき、アース線18の芯線の両側部に圧接される。ここでは、止水用凹部31A内に収容されたアース線接続部42の一対の芯線接触部42b上にアース線18を配設した状態で、蓋部38を閉じると押え片38dがアース線18を押込んで、刃部42cがアース線18の被覆部に切込んで芯線に接触するようになっている。これにより、アース線接続部42と芯線とが電気的に接続される。
【0034】
なお、アース線18とアース線接続部42との接続構造は、上記圧接による構成に限られない。例えば、アース線接続部が略U字筒状に形成され、アース線の露出芯線部に圧着される構成であってもよい。この場合、押え片38dを形成した蓋部38を省略してもよい。
【0035】
なお、アース線18は、ハーネス保持部24に収容されたワイヤーハーネスWHからハーネス保持部24に形成された凹部24g又は孔部を通って引出されていてもよいし(図1で実線で示すアース線18参照)、或は、ワイヤーハーネスWHがハーネス保持部24に収容される部分以外の箇所から引出されていてもよい(図1で二点鎖線で示すアース線18参照)。
【0036】
ブラケット板接続部46は、ブラケット板挿入部30の挿入凹部33に保持可能な形状に形成されると共に、挿入凹部33に保持された状態で、当該挿入凹部33に挿入されたブラケット板10に電気的に接触可能に形成されている。
【0037】
より具体的には、ブラケット板接続部46は、挿入凹部33内に挿入されたブラケット板10をその厚み方向両側から挟込み可能な挟込み片47、48を複数有している。ここでは、ブラケット板10の一方の主面側(アース線接続部42側)に一枚の挟込み片47が配設されると共に、ブラケット板10の他方の主面側に2つの挟込み片48が配設されている。また、挟込み片47の底縁部と2つの挟込み片48の底縁部とが底片49を介して連結されている。2つの挟込み片48の間には上記抜止め部34を配設するための隙間が設けられ、底片49のうち前記隙間に連続する部分には抜止め嵌合片34aの下端部を配設するための凹部が形成されている。
【0038】
挟込み片47の底側領域は挿入凹部33の内面に沿って延びる平板状に形成され、挟込み片47の開口側領域は屈曲部47aに形成されている。屈曲部47aは、ブラケット板10の側方から見て、当該ブラケット板10に向けて凸となるV字状を呈するように屈曲した形状とされている。また、2つの挟込み片48についても同様に、その底側領域は挿入凹部33の内面に沿って延びる平板状に形成され、挟込み片47の開口側領域は屈曲部48aに形成されている。屈曲部48aは、ブラケット板10の側方から見て、当該ブラケット板10に向けて凸となるV字状を呈するように屈曲した形状とされている。屈曲部47aと2つの屈曲部48aとは、ブラケット板10の挿入方向において同一位置で、互いに対向する側に屈曲している。従って、屈曲部47aと2つの屈曲部48aとは、ブラケット板10をその厚み方向両側から挟込む位置関係で配設される。また、ブラケット板10が屈曲部47aと2つの屈曲部48aとの間に挟込まれた状態で、当該ブラケット板10が挿入凹部33の中間部の所定位置に支持される。この位置では、抜止め嵌合片34aの一主面がブラケット板10の一主面に面接触するように配設され、嵌合突部34cが嵌合孔12に嵌め込まれた状態が維持される。つまり、本実施形態では、ブラケット板10を挟込む屈曲部47a及び2つの屈曲部48aと、嵌合孔12に嵌め込まれる抜止め部34の嵌合突部34cとが、ブラケット板10に抜止め保持可能な抜止め形状部分を構成している。
【0039】
なお、上記挟込み片47の先端縁部の幅方向中間部とアース線接続部42の幅方向中央部とは、連結片47dを介して連結されている。
【0040】
そして、ブラケット板接続部46を挿入凹部33内にその開口側より押込むと、挿入凹部33の内面の上端部に突設された突起部35が、挟込み片47、48の上端縁部に当接して、ブラケット板接続部46が挿入凹部33内に抜止め保持される。また、この状態で、連結片47dが仕切壁32Wの凹部32Wa内に配設されると共に、アース線接続部42が止水用凹部31Aに収容される。このようにして、アース線中継接続部材40がブラケット板挿入部30に保持される。なお、アース線18とアース線接続部42との接続は、アース線中継接続部材40をブラケット板挿入部30に取付ける前及び後のいずれの段階で行ってもよい。
【0041】
この後、止水用凹部31A内にシリコーン樹脂等の止水剤を充填した状態で、蓋部38を閉じるとプロテクタ20が製造される。
【0042】
図6はブラケット板挿入部30及びアース線中継接続部材40とブラケット板10との位置関係を示す断面図であり、図7はアース線中継接続部材40とブラケット板10との位置関係を示す説明図である。
【0043】
すなわち、屈曲部47a、48aのうち頂点部分より上側部分は、上方に向けて互いに離れる方向に傾斜している。このため、上記ブラケット板挿入部30に上方よりブラケット板10を挿入すると、ブラケット板10の先端部の両側部が屈曲部47a、48aの上側部分の内向き傾斜面に摺接する。これにより、両屈曲部47a、48aが互いに離れる方向に弾性変形し、両屈曲部47a、48a間にブラケット板10が挟込まれる。
【0044】
ブラケット板10をさらに奥に挿入すると、ブラケット板10の幅方向中央部でブラケット板10の先端部が抜止め嵌合片34aの嵌合突部34cの傾斜面に摺接することで、嵌合突部34cがブラケット板10の挿入経路から退避する方向に押され、抜止め嵌合片34aが退避姿勢に姿勢変更する。そして、ブラケット板10の嵌合孔12が抜止め嵌合片34aの嵌合突部34cに対応する位置に達すると、抜止め嵌合片34aが嵌合姿勢に弾性復帰し、嵌合突部34cが嵌合孔12に嵌め込まれ、ブラケット板10の抜止めが図られる。これにより、ブラケット板10に対してプロテクタ20が取付固定される。また、屈曲部47a、48aがブラケット板10を挟込むように当該ブラケット板10に接触しているため、この接触部分を介してブラケット板接続部46とブラケット板10とが電気的に接触した状態となっている。これにより、アース線18は、アース線中継接続部材40及びブラケット板10を介して車体にアースされることになる。
【0045】
以上のように構成されたプロテクタ20によると、アース線接続部42にアース線18を接続した状態で、ブラケット板10をブラケット板挿入部30に挿入すると、ブラケット板10に対するプロテクタ20の抜止め固定が行われると共に、アース線18がアース線中継接続部材40を介してブラケット板10にアースされる。このため、車体へのワイヤーハーネスWHの固定作業とワイヤーハーネスWHに含まれるアース線18のアース接続作業を容易に行える。
【0046】
なお、上記ブラケット板10は、プロテクタ20を固定するために必要な部材であるため、車体にアースのために特別な構成(アース接続用のネジ孔等)を形成する必要もない。
【0047】
しかも、屈曲部47a、48aは、ブラケット板10に対してその両面側から接触するため、ブラケット板接続部46とブラケット板10とが安定してより確実に電気的に接触する。
【0048】
また、ブラケット板10をブラケット板接続部46に挿入する際には、屈曲部47a、48aの両方が弾性変形してそれらの間にブラケット板10を配設することができるため、ブラケット板10の挿入作業を容易に行える。
【0049】
もっとも、ブラケット板接続部46は、ブラケット板挿入部30に挿入されたブラケット板10に電気的に接続可能な構成であればよい。例えば、屈曲部47a、48aのうち一方だけが設けられた構成であってもよい。
【0050】
また、ワイヤーハーネス保持固定部材22に、アース線接続部42を収容可能な止水用凹部31Aが形成され、この止水用凹部31A内にアース線接続部42が収容された状態で止水用凹部31Aに止水剤Lが充填されているため、アース線18とアース線接続部42との接続部分を止水剤Lで封止することができ、これにより、アース線18とアース線接続部42との接続信頼性を向上させることができる。
【0051】
もっとも、止水用凹部31Aにアース線接続部42を収容することは必須ではない、止水用凹部31A内に止水剤Lを充填することも必須ではない、また、蓋部38も必須ではない。
【0052】
{変形例}
図8は変形例に係るブラケット板接続部を示す部分斜視図である。すなわち、上記屈曲部47aに対応する屈曲部147aにおいて、屈曲している頂点部分147bより下方部分の幅方向中央部が、頂点部分147bを基点として切り起された爪部148が形成されている。この爪部148は、ブラケット板10の挿入方向に沿ってブラケット板10の主面に向けて傾斜するように延出している。
【0053】
そして、爪部148の先端部が挿入されたブラケット板10に係止するようになっている。ここでは、爪部148の先端部がブラケット板10の表面に強い力で接触している。これにより、ブラケット板10は挿入方向と反対方向には抜けにくいようになっている。また、爪部148とブラケット板10とがより確実にかつ安定して電気的に接続される。
【0054】
なお、爪部148は、ブラケット板10に形成された嵌合孔12に嵌め込まれていてもよい。この場合でも、爪部148が嵌合孔12に嵌り込む構成によって、ブラケット板10の抜止めを図ることができる。この場合でも、爪部148が嵌合孔12の周縁部に接触することで、或は、屈曲部147aのうち爪部148の周縁部がブラケット板10に接触することで、屈曲部147aとブラケット板10とが電気的にされる構成とすればよい。
【0055】
また、ここでは、爪部148の先端部は、その平面視において尖った端部148aを有している。ここでは、爪部148の先端部をW字状に形成することで、当該先端部の両端部に尖る端部148aを形成している。そして、ブラケット板10をブラケット板挿入部に挿入すると、爪部148の尖った端部148aがブラケット板10の主面を削り取り、当該主面に引っ掛るようになっている。なお、図9では、爪部148の端部148aがブラケット板10に食込む状態を誇張して描いている。上記のように爪部148の端部148aをブラケット板10の主面に引っ掛からせるためには、爪部148の端部148aを十分に鋭く尖らせること、爪部148をブラケット板10に対してなるべく大きい力で押付けることができるように、爪部148の厚み、バネ形状を設定すること等の少なくとも1つの構成を採用することで実現できる。
【0056】
このように、ブラケット板接続部に爪部148を形成することで、ブラケット板接続部に対してブラケット板10をより確実に抜止め保持することができる。
【0057】
これにより、プロテクタをブラケット板10に対してより強固に固定できる。あるいは、上記実施形態における抜止め部34を省略し、本ブラケット板接続部の爪部148がブラケット板10に抜止め保持する構成だけを採用してもよい。後者の場合、ブラケット板10に嵌合孔12が形成されることは必須ではない。これにより、構成の簡易化を図ることができる。
【0058】
すなわち、プロテクタにおいてブラケット板を抜止め保持する構成としては、ブラケット板挿入部及びブラケット板接続部のすくなくとも一方に、ブラケット板に抜止め保持可能な抜止め形状部分が形成されていればよい。
【0059】
なお、本実施形態では、ワイヤーハーネス固定装置がプロテクタである例で説明したが、ワイヤーハーネス固定装置はワイヤーハーネスを保持した状態で当該ワイヤーハーネスを車体に取付けることができる構成であればよい。例えば、ワイヤーハーネスに外装されるコルゲートには、コルゲートチューブクランプとよばれる部材が取付けられることがある。コルゲートチューブクランプは、当該コルゲートに外嵌めされるコルゲートチューブ取付部と車体に固定される車体固定部とを備えており、前記車体固定部が上記と同様にしてブラケット板に固定される。この車体固定部に対しても上記実施形態で説明したアース線中継接続部材40等を組込むようにしてもよい。
【0060】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0061】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0062】
10 ブラケット板
18 アース線
20 プロテクタ
22 ワイヤーハーネス保持固定部材
24 ハーネス保持部
30 ブラケット板挿入部
31 連結部
31A 止水用凹部
32 挿入本体部
33 挿入凹部
34 抜止め部
40 アース線中継接続部材
42 アース線接続部
46 ブラケット板接続部
47、48 挟込み片
47a、48a 屈曲部
147a 屈曲部
148 爪部
148a 爪部の端部
L 止水剤
WH ワイヤーハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に突設された導電性を有するブラケット板にワイヤーハーネスを固定するためのワイヤーハーネス固定装置であって、
前記ワイヤーハーネスを保持するためのハーネス保持部と、前記ハーネス保持部に一体的に設けられ、前記ブラケット板を挿入可能なブラケット板挿入部とを有するワイヤーハーネス保持固定部材と、
アース線が接続されるアース線接続部と、前記ブラケット板挿入部に保持可能に形成され、前記ブラケット板挿入部に保持された状態で前記ブラケット板挿入部に挿入された前記ブラケット板に電気的に接触可能なブラケット板接続部とが導電性材料によって一体形成されたアース線中継接続部材と、
を備え、
前記ブラケット板挿入部及び前記ブラケット板接続部のすくなくとも一方に、前記ブラケット板挿入部に挿入された前記ブラケット板に抜止め保持可能な抜止め形状部分が形成されている、ワイヤーハーネス固定装置。
【請求項2】
請求項1記載のワイヤーハーネス固定装置であって、
前記ブラケット板接続部は、前記ブラケット板をその厚み方向両側から挟込み可能な複数の挟込み片を有し、前記複数の挟込み片のそれぞれに、前記ブラケット板の側方から見てV字状を呈するように屈曲し、前記ブラケット板をその厚み方向両側から挟込む屈曲部が形成された、ワイヤーハーネス固定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のワイヤーハーネス固定装置であって、
前記ブラケット板接続部は、前記ブラケット板の挿入方向に沿って前記ブラケット板の主面に向けて傾斜するように延出する爪部を有する、ワイヤーハーネス固定装置。
【請求項4】
請求項3記載のワイヤーハーネス固定装置であって、
前記ブラケット板接続部は、前記爪部の先端部を前記ブラケット板に抜止め状に引っ掛からせる形状に形成されている、ワイヤーハーネス固定装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のワイヤーハーネス固定装置であって、
前記ワイヤーハーネス保持固定部材に、前記アース線接続部を収容可能な止水用凹部が形成され、
前記止水用凹部内に前記アース線接続部が収容された状態で、前記止水用凹部に止水剤が充填されている、ワイヤーハーネス固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−239274(P2012−239274A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105869(P2011−105869)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】