説明

ワイヤーハーネス

【課題】配索の作業性がよく、電線や電線の束に取り付けられる部材の材料の種類の削減を図ることができる(=部材の材料の共通化を図ることができる)ワイヤーハーネス並びにその外装材を提供する。
【解決手段】電線12や電線12の束の所定の部分を覆うように設けられる外装材11aを有し、外装材11aは、互いに硬さが異なる部分であって、相対的に硬い第一の部分111aと、相対的に軟らかい第二の部分112aと、第一の部分111aと第二の部分112aの中間の硬さを有する第三の部分113aとを有し、第一の部分が外装材の表面に成形されて形状維持部材やプロテクタとしての機能を有し、第二の部分112aおよび第三の部分113aが電線12や電線12の束の所定の部分を包んで緩衝材や消音・防音材としての機能を有し、第一の部分111aと第二の部分112aと第三の部分113aとが、熱可塑性を有する不織布2により一体に成形される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネスに関するものであり、詳しくは、電線や電線の束の所定の部分に、これらの電線や電線の束を覆う外装材が設けられるワイヤーハーネスおよびその外装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両の内部には、電気装置や電子機器などを相互に電気的に接続するためのワイヤーハーネスが配索される。一般的なワイヤーハーネスは、所定の数および所定の種類の電線を備える。そして、これらの電線が纏められ、纏められた電線が、ワイヤーハーネスの幹線や枝線を形成する。ワイヤーハーネスの電線や電線の束の端部(すなわち、幹線や枝線の端部)には、所定のコネクタ類が装着される。
【0003】
さらに、ワイヤーハーネスの電線や電線の束の所定の部分には、所定の外装材が設けられることがある。たとえば、電線の束がバラバラにならないように、電線の束に樹脂テープが巻き付けられることや、コルゲートチューブが取り付けられることがある。また、電線や電線の束を保護するために、プロテクタが取り付けられることがある。さらに、電線や電線の束が所定の形状(たとえば、配索される経路の形状)を維持するように、形状維持部材が設けられることがある。
【0004】
このように、ワイヤーハーネスの電線や電線の束には、樹脂テープや、コルゲートチューブや、プロテクタや、形状維持部材などといった、所定の機能を有する外装材が設けられることがある。しかしながら、このようなワイヤーハーネスは、次のような問題を有する。
【0005】
まず、ワイヤーハーネスの電線や電線の束に設けられる外装材の種類や数が多いと、これらの外装材や外装材の材料の管理に手間を要する。また、これらの外装材は、種類や構成に応じて、ワイヤーハーネスの電線や電線の束に取り付けるための作業の内容が相違することがある。このため、ワイヤーハーネスを製造するための工程の種類が増加し、製造コストの上昇を招くおそれがある。
【0006】
また、ワイヤーハーネスの電線や電線の束に射出成形品を装着する構成であると、射出成形品を製造するための成形型は一般に高価であることから、部品コストの上昇を招くことがある。また、ワイヤーハーネスの電線や電線の束に樹脂テープを巻き付ける構成では、作業に長時間を要する。
【0007】
ところで、射出成形品や樹脂テープ以外の部材をワイヤーハーネスの電線や電線の束に取り付ける構成としては、たとえば、特許文献1の特開2003−197038号公報に記載の構成がある。特許文献1に記載の構成の概略は、次のとおりである。まず、熱可塑性の材料からなる二枚の被覆部材によりフラット回路体を挟み、これらを金型により加熱しながら加圧する。これにより、二枚の被覆部材をフラット回路体に密着させるとともに、二枚の被覆部材どうしを溶着する。このような構成によれば、熱可塑性材料からなる二枚の被覆部材が、フラット回路体を保護するプロテクタとなる。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、前記の問題を解決することは困難である。すなわち、特許文献1に記載の構成は、フラット回路体のプロテクタには適用できるが、それ以外の電線の束(たとえば、断面が略円形に纏められた電線の束)には、適用できない。このように、適用できる電線の束の構成が限定されるから、適用できない電線や電線の束には、従来のプロテクタが必要となる。また、不織布は変形が容易な材料であるから、特許文献1に記載の構成では、フラット回路体を所定の形状に維持することは困難である。すなわち、特許文献1に記載の構成は、形状維持部材に適用することは困難である。このため、電線や電線の束の形状を所定の形状に維持するためには、形状維持部材が別途必要となる。このように、特許文献1に記載の構成では、電線や電線の束に取り付ける部材の種類を減らすことは困難である。したがって、これらの部材の管理の手間を削減すること、製品価格の上昇を防止または抑制すること、製造工程における工数の削減や作業内容の単純化を図ること、製造時間の短縮を図ることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−197038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、電線や電線の束を覆うように取り付けられる外装部材の管理の手間を削減できるワイヤーハーネスを提供すること、また、このような外装部材の材料の種類の削減を図ることができる(=部材の材料の共通化を図ることができる)ワイヤーハーネスを提供すること、また、このようなワイヤーハーネスの製造における工数の削減や作業内容の単純化や工程の共通化を図ること、並びに製造時間の短縮を図ることである。さらに、そのようなワイヤーハーネス用の外装材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明に係るワイヤーハーネスは、電線または電線の束と、前記電線または電線の束の所定の部分を覆うように設けられる外装材とを有し、前記外装材には、所定の硬さを有する部分と、前記所定の硬さを有する部分よりも軟らかい部分とが、同じ材料により一体に成形されていることを要旨とするものである。
【0012】
ここで、前記外装材の表面に前記所定の硬さを有する部分が成形され、前記電線または電線の束は前記軟らかい部分に包まれている構成であることが好ましい。
【0013】
また、前記外装材は、熱可塑性の材料からなる不織布により成形される構成が適用できる。
【0014】
前記不織布は、基本繊維とバインダ繊維とを有するものが適用できる。そして、前記基本繊維は所定の融点を有する熱可塑性の樹脂材料からなり、前記バインダ繊維は、芯繊維と前記芯繊維の外周に成形されるバインダ材の層とを有し、前記芯繊維は所定の融点を有する熱可塑性の樹脂材料からなり、前記バインダ材の層は前記基本繊維および前記芯繊維の融点よりも低い融点の熱可塑性の樹脂材料からなる構成が適用できる。
【0015】
前記所定の硬さを有する部分は、前記基本繊維および前記バインダ繊維の前記芯繊維がバインダ材により結合しているとともに、前記軟らかい部分に比較して前記基本繊維および前記バインダ繊維の芯繊維の密度が高い構成が適用できる。
【0016】
一方、本発明の外装材は、ワイヤーハーネスの電線または電線の束を収容可能なものであって、所定の硬さを有する部分と、前記所定の硬さを有する部分よりも軟らかい部分とが、同じ材料により一体に成形されていることを要旨とするものである。
【0017】
前記外装材は、前述したように、熱可塑性の材料からなる不織布により成形される構成が適用できる。
【0018】
前記不織布は、基本繊維とバインダ繊維とを有し、前記基本繊維は、所定の融点を有する熱可塑性の樹脂材料からなり、前記バインダ繊維は、芯繊維と前記芯繊維の外周に成形されるバインダ材の層とを有し、前記芯繊維は所定の融点を有する熱可塑性の樹脂材料からなり、前記バインダ材の層は前記基本繊維および前記芯繊維の融点よりも低い融点の熱可塑性の樹脂材料からなる構成が適用できる。
【0019】
前記所定の硬さを有する部分は、前記基本繊維および前記バインダ繊維の前記芯繊維がバインダ材により結合しているとともに、前記軟らかい部分に比較して前記基本繊維および前記バインダ繊維の芯繊維の密度が高い構成が適用できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のワイヤーハーネスおよびそのワイヤーハーネス用の外装材によれば、外装材には、所定の硬さを有する部分と、所定の硬さを有する部分よりも軟らかい部分とが、同じ材料により一体に成形される。すなわち、外装材には、相対的に硬い部分と軟らかい部分とが、同じ材料により一体に成形される。このため、相対的に硬い部分と軟らかい部分とにそれぞれ所定の機能を持たせることにより、外装材にそれぞれ所定の機能を持たせることができる。このため、同じ材料により、互いに機能が異なる外装材を成形できるから、異なる用途または機能の外装材を、共通の材料により成形できる。したがって、外装材の材料の種類の削減を図ることができる(=材料の共通化を図ることができる)。そうすると、外装材の材料の管理の手間の削減を図ることができる。さらに、ワイヤーハーネスに設ける外装材の種類を削減することができる。このため、ワイヤーハーネスの低価格化を図ることができる。
【0021】
また、本発明によれば、不織布を加熱しながら加圧するだけでワイヤーハーネスの外装材が成形できるから、射出成形品を適用する構成に比較すると、製造コストの削減を図ることができる。また、樹脂テープを巻き付ける構成と比較すると、製造時間の短縮を図ることができる。さらに、同じ材料により、互いに機能が異なる外装材を成形できるから、異なる用途または機能の外装材を、共通の工程により成形できる。したがって、工程の共通化を図ることができる。
【0022】
また、本発明によれば、外装材には、相対的に硬い部分と軟らかい部分とが、同じ材料により一体に成形される。このため、外装材に、複数の機能を持たせることができる。たとえば、相対的に硬い部分に、形状維持部材やプロテクタの機能を持たせ、相対的に軟らかい部分に、緩衝材や消音・防音材や断熱材の機能を持たせることができる。このため、たとえば、消音・防音機能を有する形状維持部材を、一種類の材料により成形できる。そうすると、ワイヤーハーネスの製造における工数の削減や作業内容の単純化を図ることができる。また、製造に要する時間の短縮を図ることができる。
【0023】
また、本発明によれば、外装材の所定の硬さを有する部分が、電線または電線の束の所定の部分(すなわち、ワイヤーハーネスの幹線や枝線の所定の部分)を所定の形状に維持する機能を有する。このため、電線または電線の束の所定の部分を、当該部分が配索される領域の形状に成形しておくことにより、ワイヤーハーネスを配索する作業の手間の削減を図ることができる。また、電線または電線の所定の部分が所定の形状に維持されるから、当該部分を配索対象部材に固定するためのクランプの数を削減することができる。そうすると、部品点数の削減を図ることができるとともに、配索の作業工数の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネスの所定の部分(=外装材が設けられる部分)を抜き出して示した外観斜視図である。
【図2】この各実施形態にかかるワイヤーハーネスの所定の部分の断面構造を、模式的に示した断面図であり、(a)は第一実施形態にかかるワイヤーハーネスを示し、(b)は第二実施形態にかかるワイヤーハーネスを示し、(c)は第三実施形態にかかるワイヤーハーネスを示し、(d)は第四実施形態にかかるワイヤーハーネスを示し、(e)は第五実施形態にかかるワイヤーハーネスを示し、(f)は第六実施形態にかかるワイヤーハーネスを示す。
【図3】本発明にかかるワイヤーハーネスの製造方法において用いられる第一の成形型と第一の治具の構成を、模式的に示した外観斜視図である。
【図4】このワイヤーハーネスの製造方法において用いられる第二の成形型と第二の治具の構成を、模式的に示した外観斜視図である。
【図5】このワイヤーハーネスの製造方法において、電線や電線の束の所定の部分に不織布を装着する工程を模式的に示した図であり、(a)は、板状(またはブロック状)の不織布を曲げて挟むように装着する構成を示し、(b)は、シート状の不織布を巻き付けるように装着する構成を示し、(c)は、スリットが成形される棒状の不織布が適用され電線や電線の束の所定の部分をスリットの内部に埋め込むことにより不織布を電線や電線の束の所定の部分の外周に装着する構成を示し、(d)は、二個の不織布で電線や電線の束の所定の部分を挟むことにより装着する構成を示す。
【図6】このワイヤーハーネスの製造方法において、電線や電線の束および不織布を治具に収容し、治具を成形型に嵌め込む工程を模式的に示した図である。
【図7】このワイヤーハーネスの製造方法において、成形型により不織布を加熱および加圧する工程を模式的に示した図である。
【図8】このワイヤーハーネスの製造方法において、成形された外装材が、治具に収容された状態で成形型から取り外される工程を示した図である。
【図9】本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネスの外装材の構成を、模式的に示した外観斜視図であり、(a)は、本発明の第七〜第九実施形態にかかる外装材を示し、(b)は、本発明の第十〜第十二実施形態にかかる外装材を示し、(c)は、本発明の第七〜第九実施形態にかかる外装材にワイヤーハーネスの電線の束の所定の部分が収容された状態を示す。
【図10】(a)は、本発明の第七実施形態にかかるワイヤーハーネスの外装材の断面構造を示し、(b)は、第八実施形態にかかる外装材の断面構造を示し、(c)は、第九実施形態にかかる外装材の断面構造を示し、(d)は、第十実施形態にかかる外装材の断面構造を示し、(e)は、第十一実施形態にかかる外装材の断面構造を示し、(f)は、第十二実施形態にかかる外装材の断面構造を示す。
【図11】本発明の第一実施形態にかかる外装材の製造方法において用いられる成形具の構成を、模式的に示した外観斜視図である。
【図12】本発明の第七実施形態にかかる外装材の製造方法を、模式的に示した断面図であり、(a)は、不織布を成形具に収容する工程を示した図、(b)は、不織布を加熱しながら加圧する工程を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネスについて説明する。
【0026】
図1は、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fの所定の部分(=所定の部材11a,11b,11c,11d、11e,11fが設けられる部分)を抜き出して示した外観斜視図である。図2は、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fの所定の部分の断面構造を、模式的に示した断面図である。具体的には、図2(a)は、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス1aを示し、図2(b)は、本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネス1bを示し、図2(c)は、本発明の第三実施形態にかかるワイヤーハーネス1cを示し、図2(d)は、本発明の第四実施形態にかかるワイヤーハーネス1dを示し、図2(e)は、本発明の第五実施形態にかかるワイヤーハーネス1eを示し、図2(f)は、本発明の第六実施形態にかかるワイヤーハーネス1fを示す。
【0027】
まず、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fの共通の構成について説明する。本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fは、所定の種類および所定の数の電線12を備える。そして、これらの所定の種類および所定の数の電線12が、所定の態様で纏められ、各電線12や纏められた電線12の束が、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fの幹線や枝線となる。電線12や電線12の束の端部(すなわち、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fの幹線や枝線の端部)には、所定のコネクタ類が装着される。
【0028】
なお、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fに含まれる電線12の種類や数、電線12や電線12の束の端部に装着されるコネクタ類の種類や構成、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fの幹線や枝線の長さや分岐の形態は、特に限定されるものではない。これらは、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fの機能や用途、配索される空間の寸法や形状などに応じて、適宜設定される。
【0029】
そして、図1と図2のそれぞれに示すように、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fの電線12や電線12の束の所定の部分には、所定の外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fが設けられる。外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fは、電線12や電線12の束の所定の部分の外周を覆うように設けられる部材である。特に、図1や図2に示すように、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fは、電線12や電線12の束の所定の部分の外周を隙間なく覆うように設けられる構成であることが好ましい。換言すると、電線12や電線12の束の所定の部分が、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fから露出しない構成であることが好ましい。
【0030】
なお、図1と図2においては、複数の電線12が纏められた「電線12の束」に、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fが設けられる構成を示すが、単数の電線12に,外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fが設けられる構成であってもよい。
【0031】
外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fは、(1)電線12や電線12の束を保護する機能(=「プロテクタ」の機能)、(2)電線12や電線12の束の形状(=本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fの幹線や枝線の形状)を所定の形状に維持する機能(=「形状維持部材」の機能)、(3)異音の発生を防止または抑制する機能(「消音材」または「防音材」の機能)、(4)電線12や電線12の束に熱が伝わることを防止または抑制する機能(「断熱材」の機能)、(5)電線12や電線12の束に衝撃が加わらないようにする機能(「緩衝材」の機能)、(6)電線12の束がバラバラにならないように纏める機能(「結束材」の機能)、の一つまたは複数を有する。
【0032】
電線12や電線12の束のうち(=本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fの幹線や枝線のうち)、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fが設けられる位置や範囲は、特に限定されるものではない。また、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fの寸法や形状は、特に限定されるものではない。これらは、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fに持たせる機能や、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fが設けられる部分が配索される領域(たとえば、自動車などの内部空間)の寸法や形状などに応じて、適宜設定される。たとえば、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fの形状や寸法は、当該外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fが設けられる部分が配索される領域の形状や寸法と同じかまたはほぼ同じ形状に形成される構成が適用できる。
【0033】
外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fには、互いに硬さが異なる部分が成形される。換言すると、所定の硬さを有する部分と、この所定の硬さを有する部分よりも軟らかい部分とが成形される。
【0034】
本発明の第一実施形態と第四実施形態にかかるワイヤーハーネス1a、1dの外装材11a,11dには、互いに硬さが異なる三種類の部分が成形される。相対的に最も硬い部分(=前記「所定の硬さを有する部分」)を「第一の部分111a,111d」と称する。相対的に最も軟らかい部分(=前記「所定の硬さを有する部分よりも軟らかい部分」)を「第二の部分112a,112d」と称する。「第一の部分111a,111d」と「第二の部分112a,112d」の中間の硬さを有する部分(この部分も、前記「所定の硬さを有する部分よりも軟らかい部分」に相当する)を、「第三の部分113a,113d」と称する。
【0035】
本発明の第二実施形態と第五実施形態にかかるワイヤーハーネス1b,1eの外装材11b,11eには、互いに硬さが異なる二種類の部分が成形される。相対的に硬い部分(=前記「所定の硬さを有する部分」)を「第一の部分111b,111e」と称する。相対的に軟らかい部分(=前記「所定の硬さを有する部分よりも軟らかい部分」)を「第二の部分112b,112e」と称する。同様に、本発明の第三実施形態と第六実施形態にかかるワイヤーハーネス1c,1fの外装材11c,11fには、互いに硬さが異なる二種類の部分が成形される。相対的に硬い部分(=前記「所定の硬さを有する部分」)を「第一の部分111c,111f」と称する。相対的に軟らかい部分(=前記「所定の硬さを有する部分よりも軟らかい部分」)を「第三の部分113c,113f」と称する。
【0036】
そして、本発明の第一実施形態と第四実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1dの外装材11a,11dを、電線12や電線12の束の軸線方向に対して直角な方向に切断すると、その断面には、第一の部分111a,111dと第二の部分112a,112dと第三の部分113a,113dとが現れる。本発明の第二実施形態と第五実施形態にかかるワイヤーハーネス1b,1eの外装材11b,11eを、同様に切断すると、その断面には、第一の部分111b,111eと第二の部分112b,112eとが現れる。本発明の第三実施形態と第六実施形態にかかるワイヤーハーネス1c,1fの外装材11c,11fを、同様に切断すると、その断面には、第一の部分111c,111fと第三の部分113c,113fとが現れる。
【0037】
なお、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d、1e,1fの外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fの第一の部分111a,111b,111c,111d,111e,111fは、同じ物理的構造を有する。本発明の第一実施形態、第二実施形態、第四実施形態、第五実施形態にかかるワイヤーハーネス1a、1b,1d,1eの外装材11a,11b,11d,11eの第二の部分112a,112b,112d,112eは、同じ物理的構造を有する。本発明の第一実施形態、第三実施形態、第四実施形態、第六実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1c,1d,1fの外装材11a,11c,11d,11fの第三の部分113a,113c,113d,113fは、同じ物理的構造を有する。
【0038】
外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fは、熱可塑性の材料からなる不織布により成形される。そして、第一の部分111a,111b,111c,111d,111e,111fと、第二の部分112a,112b,112d,112eと、第三の部分113a、113c,113d,113fとは、互いに異なる硬さを有する別々の不織布(または異なる種類の不織布)により成形されるものではなく、単一の不織布(または一種類の不織布)から成形される。すなわち、「所定の硬さを有する部分」と「所定の硬さを有する部分より軟らかい部分」とは、同じ材料により一体に成形される。
【0039】
この不織布には、基本繊維とバインダ繊維とを有するものが適用される。基本繊維は、所定の融点を有する熱可塑性樹脂材料により形成される。バインダ繊維は、芯繊維と、芯繊維の周囲に形成されるバインダ材の層とを有する。そして、芯繊維は、基本繊維と同じ熱可塑性樹脂材料により形成される。バインダ材の層は、基本繊維および芯繊維よりも融点が低い熱可塑性樹脂材料により形成される。
【0040】
また、外装材に成形される前の不織布は、弾性変形可能である。特に、見かけ上の体積が小さくなるような圧縮変形が可能であるものが適用される。そして、不織布に含まれる基本繊維およびバインダ繊維の軸線の向きは、ランダムであること(=規則性がないこと)が好ましい。
【0041】
このような構成の不織布の基本繊維およびバインダ繊維は、ある所定の温度以上の温度に加熱されると、熱可塑性による塑性変形が可能な状態となる。特に、バインダ繊維のバインダ材の融点以上の温度であって、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の融点よりも低い温度に加熱されると、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維は、固体の状態(=繊維の状態)を維持したままで、熱可塑性による塑性変形が可能な状態となるが、バインダ繊維のバインダ材は溶融して流動可能な状態となる。この状態では、不織布は、全体としては固体の状態を維持しており、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維が有する熱可塑性により塑性変形可能な状態となる。
【0042】
説明の便宜上、バインダ繊維のバインダ材の融点と基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の融点との間の温度帯域(ただし、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の融点は含まない)を、「第一の温度帯域」と称する。
【0043】
このような構成の不織布は、第一の温度帯域内の温度に加熱されると、バインダ繊維のバインダ材が溶融して、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維どうしの間に流出する。その後、第一の温度帯域よりも低い温度に冷却されると、溶融したバインダ材が固化する。そして、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維どうしが、固化したバインダ材により結合する。すなわち、固化したバインダ材が、接着剤やホットメルト樹脂のような態様で、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維どうしを結合する。
【0044】
したがって、このような構成の不織布は、第一の温度帯域内の温度に加熱された状態で所定の形状に成形され、その後、第一の温度帯域よりも低い温度に冷却されると、成形された形状を維持するようになる。さらに、溶融したバインダ材が固化して、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維どうしを結合するため、不織布は、第一の温度帯域内の温度に加熱される前に比較して、硬くなる。
【0045】
このような構成の不織布の基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維には、PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる繊維が適用できる。また、バインダ繊維のバインダ材には、PETとPEI(ポリエチレンイソフタレート)の共重合樹脂が適用できる。そして、バインダ繊維は、PETからなる基本繊維の外周面に、PETとPEIの共重合樹脂からなるバインダ材の層が形成される構成が適用できる。このような構成の不織布の基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維(=PET)の融点は、約250℃である。また、バインダ材の融点(=PETとPEIの共重合樹脂の融点)は、約110〜150℃である。したがって、このような材料が適用された不織布の第一の温度帯域は、110〜250℃である。
【0046】
なお、基本繊維およびバインダ繊維の材料は、前記材料に限定されるものではない。要は、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維と、バインダ繊維のバインダ材の層は、熱可塑性の材料からなり、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の融点が、バインダ繊維のバインダ材の融点よりも高いものであればよい。したがって、PETおよびPETとPEIの共重合樹脂に限らず、各種熱可塑性の材料が適用できる。
【0047】
外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fに、このような不織布が適用される構成においては、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fの第一の部分111a,111b,111c,111d,111e,111fと、第二の部分112a,112b,112d,112eと、第三の部分113a,113c,113d,113fの構成は、以下のとおりである。
【0048】
第一の部分111a,111b,111c,111d,111e,111fは、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fに成形される前の状態の不織布よりも、基本繊維およびバインダ繊維の密度が高くなっているとともに、バインダ材により、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維どうしが結合している部分である。このため、第一の部分111a、111b,111c,111d,111e,111fは、外装材に成形される前の状態の不織布よりも、硬さが硬い(換言すると、剛性が高い、変形しにくい)。
【0049】
さらに、第一の部分111a,111b,111c,111d,111e,111fは、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の軸線が、全体として外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fの表面(外周面)に平行な方向を向いている。少なくとも、第一の部分111a,111b,111c,111d,111e,111fは、他の部分に比較して、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fの表面に平行な方向を向く基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の割合が高くなっている。
【0050】
第二の部分112a,112b、112d、112eは、外装材11a,11b,11d,11eに成形される前の不織布の物理的な性質を有している部分である。すなわち、不織布が単に圧縮変形している部分である。また、バインダ繊維のバインダ材は溶融および固化していない。このため、『基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維がバインダ材により結合している』という状態ではない。そして、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の軸線の方向は、外装材11a,11b,11d,11eに成形される前においてランダムであれば、外装材11a,11b,11d,11eに成形された後においてもランダムの状態に維持されている。
【0051】
第三の部分113a,113c,113d,113fは、バインダ材により、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維どうしが結合されている部分である。なお、基本繊維およびバインダ繊維の軸線方向は、第二の部分112a,112b,112d,112eと同じであり、第一の部分111a,111b,111c,111d,111e,111fのように、『全体として外装材の表面に平行な方向を向いている』ということはない。また、圧縮変形の度合は、第二の部分112a,112b,112d,112eと同程度であるか、それよりも大きく、第一の部分111a,111c,111d,111fよりも小さい。このように、第三の部分113a,113c,113d,113fは、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の軸線がバインダ材により結合されているため、外装材11a,11c,11d,11fに成形される前の状態や、外装材11a,11b,11d,11eに成形された後の第二の部分112a,112b,112d,112eよりも硬くなっている。一方、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の密度は、第一の部分111a,111b,111c,111d,111e,111fよりも小さい。そして、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の軸線の方向は、外装材11a,11c,11d,11fの表面に平行な方向に揃っていない。このため、第三の部分113a,113c,113d,113fは、第一の部分111a,111b,111c,111d,111e,111fよりは軟らかい。したがって、第三の部分113a,113c,113d,113fは、第一の部分111a,111b,111c,111d,111e,111fよりも軟らかく、第二の部分112a,112b,112d,112eよりも硬い。
【0052】
したがって、本発明の第一実施形態と第四実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1dの外装材11a,11dは、第一の部分111a,111dが最も硬く、第二の部分112a,112dが最も軟らかく、第三の部分113a,111dが第一の部分111a,111dと第二の部分112a,112dの中間の硬さを有する。本発明の第二実施形態と第五実施形態にかかるワイヤーハーネス1b,1eの外装材11b,11eは、第一の部分111b,111eが硬く、第二の部分112b,112eが軟らかい。本発明の第三実施形態と第六実施形態にかかるワイヤーハーネス1c,1fの外装材11c,11fは、第一の部分111c,111fが硬く、第三の部分113c,113fが軟らかい。このように、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fの外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fには、互いに硬さが異なる部分が成形される。
【0053】
第一の部分111a,111b,111c,111d,111e,111fと、第二の部分112a,112b,112d,112eと、第三の部分113a,113c,113d,113fのそれぞれの寸法や形状、位置や範囲は、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fに持たせる機能などに応じて相違させる構成が適用できる。
【0054】
たとえば、第一の部分111a,111b,111c,111d,111e,111fにプロテクタの機能を持たせる場合に、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fの外周の全方向について保護したい場合には、本発明の第一実施形態〜第三実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1cのように、第一の部分111a,111b,111cを、外装材11a,11b,11cの外周の全域にわたって成形する構成が適用できる。これに対して、所定の一部のみを保護したい場合には、本発明の第四実施形態〜第六実施形態にかかるワイヤーハーネス1d,1e,1fのように、第一の部分111d,111e,111fを、保護したい部分およびその近傍の部分にのみ成形する構成(すなわち、外周の一部に成形する構成)が適用できる。
【0055】
また、第一の部分111a,111b,111c,111d,111e,111fに形状維持部材の機能を持たせる場合には、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fに必要となる剛性に応じて、第一の部分111a,111b,111c,111d,111e,111fの位置や形状を異ならせる。たとえば、外装材11a,11b,11cがどの方向にも変形しないようにする場合には、本発明の第一実施形態〜第三実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1cのように、第一の部分111a,111b,111cを、外装材11a,11b,11cの外周の全域にわたって成形する構成が適用できる。これに対して、ある方向には変形することを許容するが、別の方向には変形しないようにするためには、本発明の第四実施形態〜第六実施形態にかかるワイヤーハーネス1d,1e,1fのように、第一の部分111d,111e,111fを、表面の一部に略平板状に成形する構成が適用できる。第一の部分111d,111e,111fが略平板状に成形されると、平板の法線方向には曲がり変形が許容されるが、面方向には変形ができなくなる。
【0056】
また、第二の部分112a,112b,112d,112eおよび第三の部分113a,113c,113d,113fの寸法を変更することにより、電線12や電線12の束の所定の部分の緩衝材としての機能、消音材・防音材としての機能、断熱材としての機能の程度を変更することができる。
【0057】
次に、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fの製造方法(換言すると、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fの成形方法)について説明する。なお、ここでは、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス1aの製造方法を主に説明し、本発明の第二実施形態〜第六実施形態にかかるワイヤーハーネス1b,1c,1d,1e,1fの製造方法については、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス1aの製造方法と異なる構成についてのみ説明する。
【0058】
本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス1aの製造方法においては、成形型5と治具(補助具)6が用いられる。成形型5は、対をなす第一の成形型51と第二の成形型52とを有する。治具6も、対をなす第一の治具61と第二の治具62とを有する。図3と図4は、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス1aの製造方法において用いられる成形型5と治具6の構成を、模式的に示した外観斜視図である。具体的には、図3は、第一の成形型51と第一の治具61の構成を示し、図4は、第二の成形型52と第二の治具62の構成を示す。そして、図3中の上方が、第一の成形型51および第一の治具61における、第二の成形型52および第二の治具62に対向する側となる。また、図4中の上方が、第二の成形型52および第二の治具62における、第一の成形型51および第一の治具61に対向する側となる。
【0059】
成形型5は、不織布2を加熱するとともに加圧して、所定の形状および寸法を有する外装材を成形する工具である。成形型5の第一の成形型51と第二の成形型52のそれぞれには、図3と図4のそれぞれに示すように、加圧部511,521が形成される。加圧部511,521は、後述する治具6を介して不織布2を加熱するとともに加圧する部分である。図3と図4に示すように、成形型5の一方(ここでは、第一の成形型51)に形成される加圧部511は、第一の治具61を嵌め込むことが可能な溝状の構造を有する。成形型5の他方(ここでは、第二の成形型52)に形成される加圧部521は、第一の治具61に嵌り込むことができる凸状の構造を有する。
【0060】
さらに、成形型5は、加圧部511,521を「所定の温度」に加熱可能な加熱手段(図略)を有する。なお、「所定の温度」については後述する。加熱手段には、公知の各種加熱手段が適用できる。たとえば、加熱手段として電熱線が適用され、この電熱線が成形型5の内部に埋め込まれる構成や、成形型5の外周に電熱線が装着される構成などが適用できる。また、成形型5の内部に流体が通過することができる経路(たとえば孔)が形成され、この経路に温度調整された流体(気体(空気、過熱蒸気など)、液体(油など))を通過させる構成などが適用できる。このように、加熱手段は、成形型5の加圧部511,521を「所定の温度」に加熱できる構成を有していればよく、その種類や構成は限定されるものではない。
【0061】
治具6は、不織布2を加熱および加圧して外装材11aを成形する際に、作業性の向上や作業効率の向上を図るためなどに用いられる工具である。図3と図4のそれぞれに示すように、第一の治具61は、電線12や電線12の束の所定の部分と、当該部分に装着された不織布2とを収容可能な構造を有する。第二の治具62は、所定の断面形状を有する略棒状の構造を有する工具であり、第一の治具61に嵌め込むことができる構成を有する。そして、第一の治具61に第二の治具62を嵌め込むと、第一の治具61と第二の治具62とに囲繞される空間の寸法および形状が、成形される外装材11aの寸法および形状と同じとなる構成を有する。たとえば、成形する外装材11aが、軸線方向に直角な方向の断面が略円形で、軸線形状が略直線である場合には、第一の治具61には、断面略「U」字形状の棒状の構成が適用され、第二の治具62には、断面略半円形状の棒状の構成が適用される。
【0062】
このように、治具6の寸法および形状は、成形される外装材11aの寸法や形状に基づいて設定されるものであり、特に限定されるものではない。なお、治具6は、外側(=成形型5の加圧部511,521に接触する側)と内側(=不織布2が収容される側)との間で、熱を伝達しやすい構成であることが好ましい。さらに、治具6は、蓄熱量が小さい構成(=周りの温度に追従しやすい構成)であることが好ましい。このため、たとえば、治具6は、薄い金属板などからなり、鈑金加工により製造される構成が適用できる。
【0063】
図5〜図8は、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス1aの製造方法に含まれる所定の工程を、模式的に示した断面図である。具体的には、次のとおりである。図5は、電線12や電線12の束の所定の部分に不織布2を装着する工程を模式的に示した図である。図6は、電線12や電線12の束および不織布2を治具6に収容し、治具6を成形型5に嵌め込む工程を模式的に示した図である。図7は、成形型5により不織布2を加熱および加圧する工程を模式的に示した図である。図8は、成形された外装材11aが、治具6に収容された状態で成形型5から取り外される工程を示した図である。
【0064】
まず、図5に示すように、電線12や電線12の束の所定の部分の外周に、不織布2が装着される。不織布2の形状や寸法は、特に限定されないが、たとえば、板状(またはブロック状)の不織布2や、シート状の不織布2や、所定の断面形状を有し外周から中心部に向かってスリット21が成形される棒状の不織布2などが適用できる。
【0065】
図5(a)に示すように、板状(またはブロック状)の不織布2が適用される場合には、不織布2を曲げて電線12や電線12の束の所定の部分を挟み込むことにより、不織布2を電線12や電線12の束の所定の部分の外周に装着する構成が適用される。図5(b)に示すように、シート状の不織布2が適用される場合には、電線12や電線12の束の所定の部分の外周に巻き付けるように装着する構成が適用される。この場合には、不織布2が複数回にわたって巻き付けられる構成が適用される。図5(c)に示すように、スリット21が成形される棒状の不織布2が適用される場合には、電線12や電線12の束の所定の部分をスリット21の内部に埋め込むことにより、不織布2を電線12や電線12の束の所定の部分の外周に装着する構成が適用される。なお、図5(a)〜図5(c)においては、電線12や電線12の束の所定の部分の外周に、一個の不織布2を装着する構成を示したが、複数の不織布2を装着する構成であってもよい。たとえば、図5(d)に示すように、二個の不織布2を適用し、これらの二個の不織布2で電線12や電線12の束の所定の部分を挟むことにより、不織布2を電線12や電線12の束の所定の部分の外周に装着する構成が適用される。
【0066】
図5(a)に示す態様であると、電線12や電線12の束の所定の部分を、不織布2を曲げて挟み込むだけでよいから、この工程の作業内容が単純であり、時間の短縮を図ることができる。図5(b)に示すような態様であると、電線12や電線12の束の所定の部分を不織布2の略中心に位置決めすることができる。すなわち、電線12や電線12の束の所定の部分が、成形された外装材11aの中心に確実に位置させることができ、外装材11aの内部において位置が偏ることが防止される。図5(c)に示すような態様であると、電線12や電線12の束の所定の部分を、不織布2のスリット21に押し込むだけでよいから、作業が単純となる。また、電線12や電線12の束の所定の部分が、成形された外装材11aの内部において偏ることが防止される。図5(d)に示すような態様であると、二個の不織布2により、電線12や電線12の束の所定の部分を挟むだけでよいから、この工程の作業内容が単純になり、時間の短縮を図ることができる。
【0067】
なお、不織布2は、電線12や電線12の束の所定の部分の外周に装着された状態において、その断面(ここでは、電線12や電線12の束の所定の部分の軸線方向に直角な方向で切断した断面)の形状および寸法が、成形される外装材11aの断面よりも大きくなるようにする。換言すると、電線12や電線12の束の所定の部分の外周に装着された状態における不織布2の断面の外形の輪郭が、外装材11a(=成形後の不織布2)の断面の外形の輪郭の外側にあるようにする。
【0068】
次いで、図6に示すように、電線12や電線12の束の所定の部分と、この部分に装着された不織布2とを、治具61に収容する。具体的には、第一の治具61の内側に、不織布2などを収容し、さらに第二の治具62を嵌め込む。そうすると、不織布2は、電線12や電線12の束の所定の部分の外周に装着された状態に維持される。このため、電線12や電線12の束の所定の部分が、不織布2から抜け落ちることや、不織布2が、電線12や電線12の束の所定の部分の外周に装着される前の形状に戻ることが防止される。そして、電線12や電線12の束の所定の部分および不織布2が収容された治具6を、第一の成形型51の加圧部511に嵌め込む。
【0069】
次いで、図7に示すように、成形型5の第一の成形型51と第二の成形型52とを接近させる。そして、治具6の内側に形成される領域の寸法および形状が、成形後の外装材11aの形状および寸法になるようにする。これにより、不織布2は、治具6を介して成形型5により加圧されて、外装材11aの寸法および形状に圧縮変形する。そして、成形型5の加熱手段が発する熱により、圧縮変形している状態で加熱される。
【0070】
そして、「所定の時間」にわたって、この状態を維持する。すなわち、「所定の時間」にわたって、不織布2への加熱および加圧を継続する。
【0071】
「所定の温度」は、不織布2を前記「第一の温度帯域」内の温度に加熱可能な温度である。たとえば、「所定の温度」は、「第一の温度帯域」内の温度か、それよりも高い温度が適用される。
【0072】
また、「所定の時間」は、次のとおりである。不織布2のうち、治具6に接触している部分およびその近傍の部分(すなわち、外装材11aの表層部となる部分)は、第一の温度帯域内の温度に達する時間であるが、電線12や電線12の束の所定の部分に接触している部分およびその近傍の部分(すなわち、外装材11aの中心部となる部分)は、第一の温度帯域内の温度に達しない時間である。
【0073】
次いで、図8に示すように、「所定の時間」が経過した後、成形型5が分離される。そして、成形された外装材11aと、電線12や電線12の束の所定の部分(すなわち、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス1aの所定の部分)が、治具6に収容された状態(=第一の治具61と第二の治具62に挟まれた状態)で、成形型5から取り外される。
【0074】
その後、外装材11aと、電線12や電線12の束の所定の部分とが、治具6に収容された状態で冷却される。なお、冷却方法は特に限定されるものではない。たとえば、冷蔵庫内に収納する方法、常温または低温の気体を吹き付ける方法、常温中に放置する方法などが適用できる。
【0075】
なお、治具6は熱伝導率の高い材料から形成され、かつ内側と外側との間で熱を伝えやすい構成を有している。このため、成形された外装材11aが有する熱は、治具6を通じて迅速に外部に放散される。また、治具6が金属板などからなり板金加工などにより形成される構成であれば(すなわち、質量が小さい構成であれば)、蓄熱量が小さいから、成形型5から取り外されると、ただちに温度降下が開始する。このため、成形された外装材11aは、成形型5から取り外された後は、治具6によって加熱されない。このような構成によれば、成形された外装材11aが、必要以上に加熱されることを防止できる。したがって、外装材の性質の制御が容易となる。
【0076】
このような製造方法によれば、次のようなメカニズムにより、第一の部分111aと第二の部分112aと第三の部分113aとを有する外装材11aが成形される。
【0077】
第一の成形型51と第二の成形型52とを接近させると、不織布2は、治具6を介して成形型5によって加熱されるとともに加圧される。このため、不織布2は圧縮変形して、成形すべき外装材11aの寸法および形状となる。
【0078】
そして、不織布2のうち、治具6に接している面から所定の深さの部分は、第一の温度帯域内の温度に達する。第一の温度帯域内の温度に達した部分は、熱可塑性による塑性変形が容易な状態にあるから、加熱および加圧によって熱可塑性による塑性変形(ここでは、圧縮変形)する。なお、不織布2は、表面側(=治具2に接している側)が中心側(=電線12や電線12の束の所定の部分の外周に接している側)に比較して温度が高いから、第一の温度帯域内の温度に達した部分における熱可塑性による塑性変形の度合は、中心側から表面側に向かうにしたがって大きくなる。このため、不織布2のこの部分における基本繊維およびバインダ繊維の密度は、表面側が高くなる。
【0079】
そして、特に不織布2の表層部においては、加熱および加圧によって、不織布2の基本繊維およびバインダ繊維の軸線が、全体として圧縮方向に対して直角な方向(すなわち、外装材11aの表面に平行な方向)を向く。不織布2の基本繊維およびバインダ繊維の軸線が、外装材11aの表面に平行な方向を向いた部分は、他の部分に比較すると、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の密度が特に高くなる。
【0080】
さらに、不織布2のうち、第一の温度帯域内の温度に達した部分は、バインダ繊維のバインダ材が溶融し、溶融したバインダ材が基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維どうしの間に流れ出る。その後、不織布2が、第一の温度帯域よりも低い温度に冷却されると、溶融して流出したバインダ材が固化し、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維どうしを結合する。
【0081】
そうすると、不織布2の表層部においては、基本繊維および芯繊維の密度が加圧前よりも高くなり、かつ、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の軸線が表面に平行な方向を向いた状態で、バインダ材により結合される。このため、表層部は、加熱および加圧される前の不織布に比較して硬くなる。また、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の軸線方向が、表面に平行な方向を向くから、基本繊維およびバインダ繊維の軸線がランダムな方向を向いている状態に比較すると、耐摩耗性が高くなる。
【0082】
このように、外装材11aの表層部には、他の部分に比較して硬く、かつ耐摩耗性が高い部分が成形される。この部分が「第一の部分111a」となる。第一の部分111aは、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の密度が他の部分より高く(かつ、加圧および加熱前の不織布2よりも高く)、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の軸線が全体として表面に平行な方向を向き(少なくとも、他の部分よりも、軸線が表面に平行な方向を向く基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の割合が高く)、かつ、基本繊維とバインダ繊維の芯繊維どうしが、バインダ材によって結合している部分である。
【0083】
一方、不織布2のうち、電線12や電線12の束の所定の部分の外周に接触している部分やその近傍の部分は、第一の温度帯域内の温度に達していない。このため、これらの部分においては、バインダ繊維のバインダ材が溶融していない。したがって、これらの部分は、加熱および加圧前の不織布の物理的な性質(たとえば、変形のしやすさ)を有している。このように、電線や電線の束の所定の部分の外周に接触している部分およびその近傍の部分には、第一の部分に比較して軟らかい部分が成形される。この部分が「第二の部分112a」となる。換言すると、第二の部分112aは、バインダ材が溶融しておらず、加圧および加熱前の不織布の性質を有している部分である。
【0084】
さらに、不織布2の前記第一の温度帯域内の温度に達した部分のうち、第一の部分111aとなった部分よりも中心側の部分が、「第三の部分113a」となる。第三の部分113aにおいては、第一の部分111aと同様に、溶融して固化したバインダ材により、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維どうしが結合している。このため、第二の部分112aよりも硬くなっている。しかしながら、塑性変形(圧縮変形)の度合が第一の部分111aよりも小さく、かつ、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の軸線の軸線の向きが、加熱および加圧前の向きから大きく変化していない(すなわち、たとえばランダムな方向を向いている、または、「全体として外装材11aの表面に平行な方向を向いている」構成ではない)。このため、第三の部分113aは、第一の部分111aより軟らかい。
【0085】
このように、第一の部分111aと第二の部分112aとの間に(換言すると、第一の部分111aの中心寄りに)、第一の部分111aと第二の部分112aの中間の硬さを有する第三の部分113aが成形される。
【0086】
さらに、次のようなメカニズムにより、成形された外装材11aは、隙間なく電線12や電線12の束の所定の部分を覆う構成となる。まず、不織布2が平板状の構成を有し、曲げられることによって電線12や電線12の束の所定の部分を包んでいる場合や、不織布2がシート状の構成を有し、電線12や電線12の束の所定の部分の外周に巻き付けられている場合には、不織布2の幅方向(=電線12や電線12の束の軸線方向に直角な方向)の端部の接触している面どうしが、溶融したバインダ繊維のバインダ材によって結合する。不織布2が棒状の構成を有しスリット21の内部に電線12や電線12の束の所定の部分が収容されている場合には、スリット21の内側の面どうしがバインダ材によって結合する。複数の不織布2により電線12や電線12の束の所定の部分を包んでいる場合には、溶融したバインダ繊維のバインダ材が、複数の不織布2の接触面を結合する。したがって、外装材11aは、電線12や電線12の束の所定の部分の周囲を、切れ目なく覆う構成を有するようになる。特に、不織布2が面どうしで結合するため、高い結合力が得られる。
【0087】
このような構成によれば、不織布2どうしの結合に接着剤などが不要であるから、コストの削減を図ることができる。そして、『接着剤により不織布2どうしを結合する』という工程が不要であるから、工数の削減を図ること(または工数の増加を防止すること)ができる。
【0088】
なお、第一の部分111aの寸法(ここでは、外装材11aを円柱に見たてた場合において、半径方法の寸法をいうものとする。以下同じ)は、不織布2を加熱および加圧する工程において、加熱時間と加熱温度の一方または両方を調整することにより、変更することができる。すなわち、加熱時間を長くするか、加熱温度を高くすると、第一の部分111aの寸法が大きくなる。一方、加熱時間を短くするか、加熱温度を低くすると、第一の部分111aの寸法が小さくなる。
【0089】
さらに、第一の部分111aの寸法は、電線12や電線12の束の所定の部分に不織布2を装着する工程において、装着する不織布2の寸法を異ならせることによって、変更することができる。すなわち、装着する不織布2の寸法が大きくなると、不織布2を加熱しながら加圧する工程において、不織布2の圧縮変形の度合いが高くなる。このため、外装材11aの表面に平行な方向を向く不織布の基本繊維やバインダ繊維が多くなる。そうすると、第一の部分111aの寸法が大きくなる。一方、装着する不織布2の寸法が小さくなると、不織布2を加熱しながら加圧する工程において、不織布2の圧縮変形の度合いが低くなる。このため、外装材11aの表面に平行な方向を向く不織布2の基本繊維やバインダ繊維が少なくなる。そうすると、第一の部分111aの寸法が小さくなる。
【0090】
また、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス1aの第二の部分112aと第三の部分113aの寸法は、不織布2を加熱しながら加圧する工程において、加熱時間と加熱温度の一方または両方を調整することにより、変更することができる。すなわち、加熱時間を長くするか、加熱温度を高くすると、第一の温度帯域内の温度に達する部分の寸法が大きくなるから、第二の部分112aの寸法が小さくなり、第三の部分113aの寸法が大きくなる。一方、加熱時間を短くするか、加熱温度を低くすると、第一の温度帯域内の温度に達する部分が小さくなるから、第二の部分112aの寸法が大きくなり、第三の部分113aの寸法が小さくなる。
【0091】
次に、本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネス1bの製造方法について説明する。なお、本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネス1bの製造方法は、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス1aの製造方法と比較すると、不織布2を加熱しながら加圧する「所定の時間」が短い。「所定の時間」が短くなると、電線12や電線12の束の所定の部分の外周に装着された不織布2は、第一の温度帯域内の温度に達する部分が小さくなる。すなわち、不織布2の表層部のみ第一の温度帯域内の温度に達する。このため、圧縮変形により基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の軸線が表面に平行な方向を向いた部分のみが、第一の温度帯域内の温度に達する。そうすると、外装材の表層部に「第一の部分111b」が成形され、それ以外の部分は「第二の部分112b」となり、「第三の部分」は成形されない。なお、これ以外の構成は、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス1aの製造方法と同じ構成が適用される(図2(b)参照)。したがって、説明は省略する。
【0092】
次に、本発明の第三実施形態にかかるワイヤーハーネス1cの製造方法について説明する。なお、本発明の第三実施形態にかかるワイヤーハーネス1cの製造方法は、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス1aの製造方法と比較すると、不織布2を加熱しながら加圧する「所定の時間」が長い。「所定の時間」が長くなると、電線12や電線12の束の所定の部分の外周に装着された不織布2は、その全体が、第一の温度帯域内の温度に達する。このため、圧縮変形により基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の軸線が表面に平行な方向を向いた部分が、第一の部分111cとなり、それ以外の部分は、すべて第三の部分113cになる。そうすると、外装材11cの表層部に「第一の部分111c」が成形され、それ以外の部分は「第三の部分113c」となり、「第二の部分」は成形されない(図2(c)参照)。なお、これ以外の構成は、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス1aの製造方法と同じ構成が適用される。したがって、説明は省略する。
【0093】
次に、本発明の第四実施形態にかかるワイヤーハーネス1dの製造方法について説明する。本発明の第四実施形態にかかるワイヤーハーネス1dの製造方法は、不織布2を加熱しながら加圧する工程において、第一の部分111dおよび第三の部分113dを成形したい箇所のみ加熱する。たとえば、図1(d)に示すように、外装材11dの外周の半分に第一の部分111dと第三の部分113dを成形する場合には、たとえば、成形型5の一方のみが加熱手段を備え、不織布2の半分を加熱する構成が適用できる。このように、第一の部分111dおよび第三の部分113dを成形する部分のみ加熱する構成であればよい。したがって、たとえば、成形型5が、加圧部511,521の所定の一部(=第一の部分111dおよび第三の部分113dを成形したい箇所に接触する部分)にのみ、加熱手段により加熱できる構成を有している構成であってもよい。なお、それ以外は、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス1aの製造方法と同じ構成が適用される。したがって、説明は省略する。
【0094】
本発明の第五実施形態にかかるワイヤーハーネス1eの製造方法は、本発明の第四実施形態にかかるワイヤーハーネス1dの製造方法において、不織布2を加熱しながら加圧する「所定の時間」を短くした構成が適用される。すなわち、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス1aの製造方法に対する本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネス1bの製造方法と同じ関係を有する。したがって、説明は省略する。
【0095】
本発明の第六実施形態にかかるワイヤーハーネス1fの製造方法は、不織布2を加熱しながら加圧する工程において、第一の部分111fを成形する部分と、第三の部分113fを成形する部分とで、加熱する温度を異ならせる構成が適用される。たとえば、第一の部分111fを成形する部分は、第一の温度帯域内の上限近傍の温度(または、第一の温度帯域よりも高い温度)で加熱し、第三の部分113fを成形する部分は、第一の温度帯域内の下限近傍の温度で加熱する構成が適用できる。このような構成であると、第一の温度帯域内の上限近傍の温度で加熱された部分は、熱可塑性による塑性変形の度合が大きくなるから、第一の部分111fとなる。一方、第一の温度帯域内の下限近傍の温度で加熱された部分は、第一の温度帯域内の上限近傍の温度で加熱された部分よりも温度が低いから、熱可塑性による塑性変形の度合も小さくなり、その結果、第三の部分113fとなる。
【0096】
また、第一の部分111fと第三の部分113fとを異なるタイミングで成形する構成であってもよい。たとえば、まず、不織布2を第一の温度帯域内の温度で加熱し、不織布2の全体が第三の部分113fとなるようにする。そのまま引き続いて、第一の部分111fを成形したい部分を、第一の温度帯域内の上限近傍の温度で加熱して第一の部分111fを成形する。このような構成であっても、本発明の第六実施形態にかかるワイヤーハーネス1fを製造できる。なお、第一の部分111fと第三の部分113fを成形する順序は逆であってもよい。また、この場合には、加圧部511,521の温度を変更可能な成形型5を用いればよい。
【0097】
なお、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fの製造方法において、治具6を用いずに、成形型5によって直接的に不織布2を加熱および加圧する構成であってもよい。この場合には、成形型5は、第一の成形型51と第二の成形型52とを接近させると、第一の成形型51の加圧部511に第二の成形型52の加圧部521が嵌り込む構成を有し、かつ、加圧部511,521により囲繞され空間の寸法および形状が、成形される外装材11aの寸法および形状となる構成を有していればよい。なお、治具6を用いない構成においては、成形型5が加熱手段に加えて冷却手段を備える構成であることが好ましい。このような構成によれば、不織布2を「所定の時間」にわたって加熱しながら加圧した後、冷却手段によって金型を冷却することにより、成形された外装材11aを、熱可塑性による塑性変形が生じない温度に冷却することができる。
【0098】
治具6を用いる構成であると、作業性の向上を図ることができる。たとえば、不織布2を治具6に収容する場所と、不織布2を成形型5により加熱しながら加圧する場所とが同じ場所である必要がないから、作業しやすい場所で収容作業を行うことができる。また、成形された外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fの冷却は、成形型5から取り外して行うことができる。このため、成形型5を常に所定の温度に維持することができ、成形型5の加熱や冷却に要する時間の削減を図ることができる。
【0099】
一方、治具6を用いない構成であると、成形型5により直接的に不織布2を加熱するため、不織布2の温度の管理が容易となる。特に、本発明の第四実施形態〜第六実施形態にかかるワイヤーハーネス1d,1e,1fの製造方法において、第一の部分111d,111e,111fを成形する範囲の精度を高くできる。
【0100】
本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fは、次のような作用効果を奏する。
【0101】
本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fの外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fには、所定の硬さを有する部分である第一の部分111a,111b,111c,111d,111e,111fと、第一の部分111a,111b,111c,111d,111e,111fよりも軟らかい部分である第二の部分112a,112b,112d,112eおよび/または第三の部分113a,113c,113d,113fとが、同じ材料(=同じ不織布2)により一体に成形される。換言すると、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fの外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fには、互いに硬さが異なる部分である第一の部分111a,111b,111c,111d,111e,111fと第二の部分112a,112b,112d,112eと第三の部分113a,113c,113d,11fとが、同じ材料(=同じ不織布2)により一体に成形される。
【0102】
そして、硬い部分である第一の部分111a,111b,111c,111d,111e,111fに、(1)電線12や電線12の所定の部分を所定の形状に維持する形状維持部材の機能、(2)電線12や電線12の束を保護するプロテクタの機能、の一方または両方の機能を持たせることができる。一方、軟らかい部分である第二の部分112a,112b,112d,112eおよび第三の部分113a,113c,113d,113fには、(3)異音の発生を防止または抑制する消音材や防音材の機能、(4)電線12や電線12の束に熱が伝わることを防止または抑制する断熱材の機能、(5)電線12や電線12の束に衝撃が加わらないようにする緩衝材の機能、の一つまたは複数の機能を持たせることができる。さらに、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fには、全体として、電線の束がバラバラにならないように纏める結束材の機能も持たせることができる。
【0103】
このように、一種類の材料と共通の工程により、形状維持部材と、プロテクタと、消音材と、緩衝材と、防音材・消音材と、断熱材と、結束材とのいずれかの機能を有する外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fを成形することができる。さらに、一種類の材料と共通の工程により、これらのうちの複数の機能を有する外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fを成形することもできる。たとえば、緩衝機能や消音・防音機能や断熱機能を有する形状維持部材やプロテクタを、一種類の材料により同一の工程で成形できる。
【0104】
したがって、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d、1e,1fによれば、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fに異なる機能を持たせる場合であっても、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fを共通の材料により成形することができる。そうすると、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fの材料の共通化を図ることができるから、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fの材料の種類を減らすことができ、材料の在庫の管理が容易となる。また、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fに持たせる機能を異ならせる場合であっても、製造方法および製造に用いる設備は共通である。このため、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fの製造設備に要する費用の削減や、製造設備の共通化やフレキシブル化を図ることができる。
【0105】
また、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fによれば、射出成形品を用いる構成と比較して、次のような作用効果を奏する。
【0106】
まず、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fの製造(=外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fの成形)において試用される成形型5は、射出成形品を製造する成形型に比較して構成が単純であるから安価である。このため、射出成形品を用いる構成と比較して、設備コストの削減を図ることができる。さらに、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fは、射出成形品に比較して安価な材料(=不織布)を適用できるから、材料コストの削減を図ることができる。
【0107】
また、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fの外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fを成形する工程は、射出成形品に電線12や電線12の束の所定の部分を嵌め込む方法に比較して、作業が簡単である。
【0108】
さらに、不織布2により成形された外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fは、射出成形品に比較して重量を軽くすることができる。すなわち、射出成形品は、中実な固体(=内部が詰まった固体)であるのに対し、不織布2により成形された外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fは、完全に中実な固体ではなく、空気を含む。このため、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fの軽量化を図ることができる。
【0109】
また、不織布により成形された外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fは、射出成形品に比較すると、変形させやすい。たとえば、射出成形品を設計する場合には、配索される空間の形状や寸法の公差によるばらつきに応じて、寸法や形状を考慮する必要がある。このため、設計が複雑となる。これに対して不織布2により成形された外装材は、変形させることによって公差を吸収することができる。このため、設計において公差によるばらつきを考慮する必要がなくなる。
【0110】
また、射出成形品を用いる構成は、射出成形品の内周面と電線12や電線12の束の所定の部分との間に隙間があることがある。そうすると、振動や衝撃などによって、電線12や電線12の束の所定の部分が、射出成形品の内周面に衝突し、射出成形品と電線12や電線12の束の所定の部分との間で衝突音が発生する。このような衝突音は、使用者に異音として感じられることがある。なお、射出成形品の内部にスポンジなどを挿入して衝突音の発生を防止する構成が適用できるが、このような構成とすると、部品点数や部品の種類や作業工数が増加し、部品コストや製造コストが上昇するとともに、製造に要する時間が長くなる。
【0111】
これに対して本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fによれば、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fの第一の部分111a,111b,111c,111d,111e,111fが射出成形品の機能(たとえば、形状維持部材やプロテクタの機能)を有し、第二の部分112a,112b,112d,112eおよび第三の部分112a,112c,112d,112eが防音材や消音材の機能を有する。このように、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fが、形状維持部材やプロテクタの機能と、防音材の機能を併せ持つ。そして、第一の部分111a,111b,111c,111d,111e,111fと第二の部分112a,112b,112d,112eと第三の部分113a,113c,113d,113fとは、一つの材料から同じ工程で成形される。このため、部品点数の削減や作業工数の削減、作業内容の単純化を図ることができる。そうすると、製造時間の短縮や、製造コストの削減を図ることができる。
【0112】
また、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fは、樹脂テープを巻き付けて所定の形状に成形する構成と比較して、次のような作用効果を奏する。
【0113】
電線12や電線12の束の所定の部分に樹脂テープを巻き付ける作業は、手間と時間を要する。また、ワイヤーハーネスごとに仕上がりがばらつきやすく、品質の管理や品質の維持に問題がある。さらに、樹脂テープを電線12や電線12の束の所定の部分の外周に巻き付ける構成は、仕上がりの見映えがよくないという問題を有する。
【0114】
これに対して、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1eによれば、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fを成型する作業の工程は前記のとおりであり、樹脂テープを巻き付ける作業に比較すると、手間や時間を省略することができる。また、ワイヤーハーネスの固体ごとの仕上がりのばらつきをなくすことができ、品質の管理や品質の維持が容易となる。さらに、射出成形品を適用する構成と同質の外観を得ることができ、見映えがよいという効果を奏する。
【0115】
また、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fが形状維持部材の機能を有すると、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fを車両などの内部に配索する作業の作業性の向上や、作業工数の削減や、部品点数の削減や、軽量化を図ることができる。具体的には次のとおりである。
【0116】
従来一般の、ワイヤーハーネスを配索する作業においては、ワイヤーハーネスの枝線や幹線を、配索対象部材に設定された所定の経路に沿わせるように配設し、その後、クランプなどにより所定の部材に固定する。ここで、ワイヤーハーネスの枝線や幹線が変形しやすいと、次のような問題が生じる。まず、ワイヤーハーネスの幹線や枝線を、所定の経路に沿うように配設する作業に手間を要する。また、配索されたワイヤーハーネスの幹線や枝線が所定の部材の所定の経路から外れ出ないようにするために、多数のクランプが必要となる。さらに、ワイヤーハーネスの幹線や枝線が配索された状態で、宙に浮いた部分が存在しないようにする必要がある。すなわち、ワイヤーハーネスの枝線や幹線が宙に浮いた状態にあると、使用中の振動などによって他の部材などに接触や衝突などを起こして損傷することがあるほか、異音が発生することがある。このため、ワイヤーハーネスの幹線や枝線に、宙に浮いた部分が生じないように、全長にわたって配索対象部材に沿わせて配索する必要がある。そうすると、ワイヤーハーネスの幹線や枝線の配索経路が、配索対象部材の形状などによって制限され、たとえば迂回などが必要となってワイヤーハーネスの幹線や枝線の長さが長くなることがある。ワイヤーハーネスの幹線や枝線の長さが長くなると、部品コストの上昇やワイヤーハーネスの重量の増加を招くほか、ワイヤーハーネスの取り扱いが不便となる。
【0117】
これに対して、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fのように、枝線や幹線(=電線12や電線12の束の所定の部分)に、形状維持部材の機能を有する外装材が装着される構成であると、次のような作用効果を奏する。まず、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fの枝線や幹線を、配索対象部材に設定された所定の経路に沿わせるように配設する作業が容易となる。すなわち、幹線や枝線は、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fによって、配索対象部材に設定された所定の経路の形状に維持されている。このため、枝線や幹線を配索対象部材に載置などすれば、自然と所定の経路の沿って配置された状態となる。そして、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fにより所定の経路の形状に維持されるから、クランプの数を削減することができる。さらに、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fにより所定の経路の形状に維持されるから、幹線や枝線が配索対象部材に配索された状態において、少なくとも一部が宙に浮いた状態であってもよい。すなわち、枝線や幹線の少なくとも一部が宙に浮いた状態にあっても、所定の形状に維持される。このため、使用中の振動や衝撃などによって他の部材などに接触や衝突などを起こすことが防止される。したがって、損傷や異音の発生を防止できる。
【0118】
さらに、『幹線や枝線の少なくとも一部を宙に浮かせる』という構成を適用することによって、幹線や枝線の配索経路の自由度が高くなる。このため幹線や枝線の配索経路の短縮を図ることができる。そして、配索経路の短縮を図ることによって、幹線や枝線の長さを短くすることができる。そうすると、部品コストの削減や軽量化を図ることができるほか、取り扱いが容易となる。また、幹線や枝線の長さが短くなれば、配索に要する時間の短縮を図ることができるほか、配索対象部材に取り付けるためのクランプの数をさらに少なくすることができる。
【0119】
また、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fは、特許文献1に記載の構成と異なり、電線12の束の形態(=纏められた電線12の全体の形状、換言すると、電線12がどのような形態で纏められているか)は限定されない。すなわち、複数の電線12が全体として断面略円形となるように纏められていてもよく、略方形となるように纏められていてもよい。特許文献1に記載の構成のように、複数の電線によりフラット回路体が形成される構成に限定されるものではない。
【0120】
次に、本発明の実施形態ごとの作用効果について説明する。
【0121】
本発明の第一〜第三実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b、1cにおいては、表層部に成形される第一の部分111a,111b,111cが、プロテクタの機能と形状維持部材の機能の一方または両方を有するとともに、第二の部分112a,112bと第三の部分113a,113cが、緩衝材の機能と防音材・消音材の機能と断熱材の機能のうちの一つまたは複数の機能を有する。
【0122】
すなわち、外装材11a,11b,11cの表層部に成形される第一の部分111a,111b,111cが、電線12や電線12の束の所定の部分の形状(特に軸線の形状)を、所定の形状(加圧および加熱により成形された形状)に維持することができる。また、第一の部分111a,111b,111cは、外装材11a,11b,11cの外周の全体にわたって成形されている。このため、外装材11a,11b,11cのどの方向からその表面に異物が接触または衝突した場合にであっても、電線12や電線12の束の所定の部分に直接的に異物が接触や衝突することを防止でき、電線12や電線12の束の所定の部分を保護することができる。
【0123】
さらに、第一の部分111a,111b、111cは耐摩耗性が高くなっているから、外部の部材との間で摩擦が生じた場合であっても、外装材11a,11b,11cが摩耗することを防止または抑制できる。このため、第一の部分111a,111b,111cの内側に成形される第二の部分112a,112bや第三の部分113a,113cや、電線12や電線12の束の所定の部分が損耗することを防止または抑制できる。
【0124】
また、本発明の第一実施形態〜第三実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1cにおいては、電線12や電線12の束の所定の部分が、第二の部分112a,112bまたは第三の部分113cに接触して包まれている。第二の部分112a,112bは、加圧および加熱前の不織布2の物理的性質および物理的構成を有しており、第一の部分111a,111b,111cよりも軟らかい。第三の部分113a,113cは、第二の部分112a,112bよりは硬いものの、第一の部分111a,111b,111cよりは軟らかい。このように、電線12や電線12の束の所定の部分は、第一の部分111a,111b,111cより軟らかい第二の部分112a,112bまたは第三の部分113cによって、弾性的に接触した状態で包まれている。
【0125】
このため、外装材11a,11b,11cに振動や衝撃が加わった場合であっても、第二の部分112a,112bおよび第三の部分113a,113cが振動や衝撃をやわらげ、電線12や電線12の束の所定の部分に振動や衝撃が伝わることを防止または抑制できる。このように、第二の部分112a,112bおよび第三の部分113a,113cは、緩衝材として機能する。
【0126】
また、電線12や電線12の束の所定の部分は、第二の部分112aまたは第三の部分113cに弾性的に接触して包まれているから、外装材11a,11b,11cに振動や衝撃などが加わった場合であっても、電線12や電線12の束の所定の部分が第二の部分112a,112bまたは第三の部分113c以外の部材と衝突することが防止される。このため、電線12や電線12の束の所定の部分が、何らかの部材に衝突することによって衝突音(異音に感じられるような音)が発生することを防止できる。このように、第二の部分112a、112bおよび第三の部分113a,113cは、防音材として機能する。
【0127】
また、第二の部分112a、112bおよび第三の部分113a,113cは軟らかい多孔質であるといえるから、異音が発生した場合であっても、発生した異音を吸収できる。このように、第二の部分112a,112bおよび第三の部分113a,113cは、消音材として機能する。
【0128】
さらに、第二の部分112a,112bおよび第三の部分113a,113cは、繊維が絡み合った状態であり、内部に空気を含んでいる。このため、中実(=中身が詰まった)の物体に比較して熱伝導率が小さい。したがって、外装材11a,11b,11cの外部から電線12や電線12の束の所定の部分に熱が伝わることを防止または抑制でき、電線12や電線12の束の所定の部分が熱により損傷することを防止または抑制できる。このように、第二の部分112a,112bおよび第三の部分113a,113cは、断熱材としての機能を有する。
【0129】
本発明の第四〜第六実施形態にかかるワイヤーハーネス1d,1e,1fも、本発明の第一〜第三実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1cと、同様の作用効果を奏することができる。そしてさらに、次のような作用効果を奏することができる。
【0130】
本発明の第四〜第六実施形態にかかるワイヤーハーネス1d,1e,1fを配索対象部材に配索する際に、外装材11d,11e,11fの第一の部分111d,111e,111fが成形されない側(=第二の部分112d,112eまたは第三の部分113fが露出している側)を配索対象部材に向け、第一の部分111d,111e,111fが成形される側をその反対側に向ける。そうすると、第一の部分111d,111e,111fが、本発明の第一〜第三実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1cと同様に、プロテクタとしての機能を有する。一方、外装材11d,11e,11fは、第二の部分112d,112eまたは第三の部分113fが配索対象部材に対向している。このため、外装材11d,11e,11fや配索対象部材に振動や衝撃が加わって、外装材11d,11e、11fが配索対象部材に衝突した場合であっても、第二の部分112d,112eまたは第三の部分113fが配索対象部材に接触するから、配索対象部材と外装材11d,11e,11fとの間で、衝突音が発生しない(またはほとんど発生しない)。
【0131】
また、本発明の第四〜第六実施形態にかかるワイヤーハーネス1d,1e,1fを配索対象部材に設けられた溝状の経路に配索する場合には、次のようにする。外装材11d,11e,11fの第二の部分112d,112eまたは第三の部分113fが露出している部分を、当該溝状の経路の内周面に接触するように嵌め込む。そして、第一の部分111d,111e,111fが、溝状の経路の開口部から露出するようにする。そうすると、外装材11d,11e,11fの第二の部分112d,112eまたは第三の部分113fが、配索対象部材の溝状の経路の内周面に弾性的に接触する。このため、配索対象部材に振動や衝撃が加わった場合であっても、外装材11d,11e,11fと配索対象部材との間で、衝突音などが発生することが防止される。そして、露出している第一の部分111d,111e,111fが、プロテクタの機能を有する。
【0132】
また、本発明の第二実施形態と第五実施形態にかかるワイヤーハーネス1b,1eのように、第三の部分を成形しない構成では、特に緩衝材としての機能の向上を図ることができる。すなわち、相対的に最も硬い第一の部分111b,111eを除いては、すべて相対的に最も軟らかい第二の部分112b,112eとなり、第二の部分112b,112eの寸法が大きくなる。このため、電線12や電線12の束の所定の部分を保護する緩衝材としての機能が高くなる。
【0133】
一方、本発明の第三実施形態と第六実施形態にかかるワイヤーハーネス1c,1fのように、第二の部分を成形せず、第一の部分111c,111fと第三の部分113c,113fのみを成形する構成であると、外装材11c,11fに成形された不織布2の結合強度の向上を図ることができる。すなわち、第三の部分113c,113fは、バインダ繊維のバインダ材が溶融して固化し、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維どうしを結合している。
【0134】
このため、第三の部分113c、113fにおいては、たとえば、図5(a)に示すように、板状(またはブロック状)の不織布2を曲げて挟むように装着する構成では、突き合わされて接触している面どうしの全体が結合する。図5(b)に示すように、シート状の不織布2を巻き付けるように装着する構成では、巻き付けられた不織布2の両面が互いに全体にわたって結合する。図5(c)に示すように、スリット21が成形される棒状の不織布2が適用される構成においては、スリット21の内面の全体が結合する。図5(d)に示すように、二個の不織布2で挟む構成においては、互いに接触する面の全体が結合する。このように、不織布2どうしが結合する面積が大きくなるから、結合強度が高くなる。
【0135】
そして、本発明の第一実施形態と第四実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1dのように、第二の部分112a,112dと第三の部分113a,113dの両方を成形することにより、外装材11a,11dに成形された不織布2どうしの結合強度の確保できるとともに、緩衝材としての機能を持たせることができる(なお、第三の部分113a,113dも緩衝材としての機能を有するが、ここでは、第三の部分のみが成形される構成よりも、緩衝材としての機能が高くなる)。
【0136】
次に、本発明の別の各実施形態にかかる外装材について説明する。
【0137】
図9は、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネスの外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mの構成を、模式的に示した外観斜視図である。それぞれ、図9(a)は、本発明の第七〜第九実施形態にかかる外装材11g,11h,11iを示し、図9(b)は、本発明の第十〜第十二実施形態にかかる外装材11j,11k,11mを示す。また、図9(c)は、本発明の第七〜第九実施形態にかかる外装材に、ワイヤーハーネスの電線の束の所定の部分が収容された状態を示す。図10は、本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mの断面構造を示す。具体的には、それぞれ、図10(a)は、本発明の第七実施形態にかかる外装材11gを示し、図10(b)は、第八実施形態にかかる外装材11hを示し、図10(c)は、第九実施形態にかかる外装材11iを示し、図10(d)は、第十実施形態にかかる外装材11jを示し、図10(e)は、第十一実施形態にかかる外装材11kを示し、図10(f)は、第十二実施形態にかかる外装材11mを示す。
【0138】
まず、本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mの共通の構成について説明する。各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mは、ワイヤーハーネスが配索される部材(以下、「配索対象部材」と称することがある)に配設され、配索されたワイヤーハーネスの電線や電線の束の所定の部分(=ワイヤーハーネスの幹線や枝線の所定の部分)を収容することができる部材である。
【0139】
図9に示すように、本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mは、側方の一部が開口した略筒状の構成を有する。そして、その内側に、ワイヤーハーネスの電線や電線の束の所定の部分を収容することができる。たとえば、断面が略「U」字形状または「C」字形状の棒状の構成が適用できる。また、軸線方向の中間で分岐(換言すると合流)している構成であってもよい。要は、ワイヤーハーネスの電線や電線の束を、その内部に収容できる構成であればよい。そして、断面寸法や形状(「断面」とは、収容される電線の軸線方向に直角な方向に切断した断面をいうものとする。以下、特に断りのない限りは同様とする)や、軸線の形状や寸法、分岐や合流の態様などは、収容されるワイヤーハーネスの電線や電線の束に応じて適宜設定される。なお、説明の便宜上、ワイヤーハーネスの電線や電線の束が収容される領域の側の面を「内周面」と称し、その反対側の面を「外周面」と称する。
【0140】
本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mは、(1)ワイヤーハーネスの電線や電線の束の所定の部分を保護する機能(=「プロテクタ」の機能)、(2)配索されたワイヤーハーネスの電線や電線の束が、配索された位置から外れ出ないようにする機能、換言すると、ワイヤーハーネスの電線や電線の束の形状を所定の形状に維持する機能(=「形状維持部材」の機能)、(3)異音の発生を防止または抑制する機能(=「消音材」や「防音材」の機能)、(4)ワイヤーハーネスの電線や電線の束に衝撃が加わらないようにする機能(「緩衝材」の機能)、(5)ワイヤーハーネスの電線や電線の束に熱が伝わらないようにする機能(=「断熱材」の機能)、(6)ワイヤーハーネスの電線の束がバラバラにならないように纏める機能(=「結束材」の機能)、の一つまたは複数を有する。
【0141】
そして、本発明の各実施形態にかかる外装材には、互いに硬さが異なる部分が成形される。すなわち、所定の硬さを有する部分と、この所定の硬さを有する部分に比較して軟らかい部分とが成形される。
【0142】
本発明の第七実施形態と第十実施形態にかかる外装材11g,11jには、互いに硬さが異なる三種類の部分が成形される。相対的に最も硬い部分(=前記「所定の硬さを有する部分」)を「第一の部分111g,111j」と称する。相対的に最も軟らかい部分(=前記「所定の硬さを有する部分より軟らかい部分」)を「第二の部分112g,112j」と称する。「第一の部分111g,111j」と「第二の部分112g,112j」の中間の硬さを有する部分(この部分も、前記「所定の硬さを有する部分より軟らかい部分」に相当する)を、「第三の部分113g,113j」と称する。
【0143】
本発明の第八実施形態と第十一実施形態にかかる外装材11h,11kには、互いに硬さが異なる二種類の部分が成形される。相対的に硬い部分(=前記「所定の硬さを有する部分」)を「第一の部分111h,111k」と称する。相対的に軟らかい部分(=前記「所定の硬さを有する部分より軟らかい部分」)を「第二の部分112h,112k」と称する。同様に、本発明の第九実施形態と第十二実施形態にかかる外装材11i,11mには、互いに硬さが異なる二種類の部分が成形される。相対的に硬い部分(=前記「所定の硬さを有する部分」)を「第一の部分111i,111m」と称する。相対的に軟らかい部分(=前記「所定の硬さを有する部分より軟らかい部分」)を「第三の部分113i,113m」と称する。
【0144】
そして、本発明の第七実施形態と第十実施形態にかかる外装材11g,11jの断面には、第一の部分111g,111jと第二の部分112g,112jと第三の部分113g,113jとが現れる。本発明の第八実施形態と第十一実施形態にかかる外装材11h,11kの断面には、第一の部分111h,111kと第二の部分112h,112kとが現れる。本発明の第九実施形態と第十二実施形態にかかる外装材11i,11mの断面には、第一の部分111i,111mと第三の部分113i,113mとが現れる。
【0145】
なお、本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mの第一の部分111g,111h,111i,111j,111k,111mは、同じ物理的構造を有する。本発明の第七実施形態、第八実施形態、第十実施形態、第十一実施形態にかかる外装材11g,11h,11j,11kの第二の部分112g,112h,112j,112kは、同じ物理的構造を有する。本発明の第七実施形態、第九実施形態、第十実施形態、第十二実施形態にかかる外装材11g,11i,11j,11mの第三の部分113g,113i,113j,113mは、同じ物理的構造を有する。
【0146】
本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mは、熱可塑性の材料からなる不織布により成形される。そして、第一の部分111g,111h,111i,111j,111k,111mと、第二の部分112g,112h,112j,112kと、第三の部分113g、113i,113j,113mとは、互いに異なる硬さを有する別々の不織布(または異なる種類の不織布)により成形されるものではなく、単一の不織布(または一種類の不織布)から成形される。すなわち、「所定の硬さを有する部分」と「所定の硬さを有する部分より軟らかい部分」とは、同じ材料により一体に成形される。
【0147】
この不織布には、基本繊維とバインダ繊維とを有するものが適用される。基本繊維は、所定の融点を有する熱可塑性樹脂材料により形成される。バインダ繊維は、芯繊維と、芯繊維の周囲に形成されるバインダ材の層とを有する。そして、芯繊維は、基本繊維と同じ熱可塑性樹脂材料により形成される。バインダ材の層は、基本繊維および芯繊維よりも融点が低い熱可塑性樹脂材料により形成される。
【0148】
また、外装材に成形される前の不織布は、弾性変形可能である。特に、見かけ上の体積が小さくなるような圧縮変形が可能であるものが適用される。そして、不織布に含まれる基本繊維およびバインダ繊維の軸線の向きは、ランダムであること(=規則性がないこと)が好ましい。
【0149】
このような構成の不織布の基本繊維およびバインダ繊維は、ある所定の温度以上の温度に加熱されると、熱可塑性による塑性変形が可能な状態となる。特に、バインダ繊維のバインダ材の融点以上の温度であって、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の融点よりも低い温度に加熱されると、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維は、固体の状態(=繊維の状態)を維持したままで、熱可塑性による塑性変形が可能な状態となるが、バインダ繊維のバインダ材は溶融して流動可能な状態となる。この状態では、不織布は、全体としては固体の状態を維持しており、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維が有する熱可塑性により塑性変形可能な状態となる。
【0150】
説明の便宜上、バインダ繊維のバインダ材の融点と基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の融点との間の温度帯域(ただし、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の融点は含まない)を、「第一の温度帯域」と称する。
【0151】
このような構成の不織布は、第一の温度帯域内の温度に加熱されると、バインダ繊維のバインダ材が溶融して、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維どうしの間に流出する。その後、第一の温度帯域よりも低い温度に冷却されると、溶融したバインダ材が固化する。そして、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維どうしが、固化したバインダ材により結合する。すなわち、固化したバインダ材が、接着剤やホットメルト樹脂のような態様で、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維どうしを結合する。
【0152】
したがって、このような構成の不織布は、第一の温度帯域内の温度に加熱された状態で所定の形状に成形され、その後、第一の温度帯域よりも低い温度に冷却されると、成形された形状を維持するようになる。さらに、溶融したバインダ材が固化して、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維どうしを結合するため、不織布は、第一の温度帯域内の温度に加熱される前に比較して、硬くなる。
【0153】
このような構成の不織布の基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維には、PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる繊維が適用できる。また、バインダ繊維のバインダ材には、PETとPEI(ポリエチレンイソフタレート)の共重合樹脂が適用できる。そして、バインダ繊維は、PETからなる基本繊維の外周面に、PETとPEIの共重合樹脂からなるバインダ材の層が形成される構成が適用できる。このような構成の不織布の基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維(=PET)の融点は、約250℃である。また、バインダ材の融点(=PETとPEIの共重合樹脂の融点)は、約110〜150℃である。したがって、このような材料が適用された不織布の第一の温度帯域は、110〜250℃である。
【0154】
なお、基本繊維およびバインダ繊維の材料は、前記材料に限定されるものではない。要は、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維と、バインダ繊維のバインダ材の層は、熱可塑性の材料からなり、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の融点が、バインダ繊維のバインダ材の融点よりも高いものであればよい。したがって、PETおよびPETとPEIの共重合樹脂に限らず、各種熱可塑性の材料が適用できる。
【0155】
本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mに、このような不織布が適用される構成においては、第一の部分111g,111h,111i,111j,111k,111mと、第二の部分112g,112h,112j,112kと、第三の部分113g,113i,113j,113mの構成は、以下のとおりとなる。
【0156】
第一の部分111g,111h,111i,111j,111k,111mは、本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mに成形される前の状態の不織布よりも、基本繊維およびバインダ繊維の密度が高くなっているとともに、バインダ材により、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維どうしが結合している部分である。このため、第一の部分111g、111h,111i,111j,111k,111mは、外装材に成形される前の状態の不織布よりも、硬さが硬い(換言すると、剛性が高い、変形しにくい)。
【0157】
さらに、本発明の第七〜第九実施形態にかかる外装材11g,11h,11iの第一の部分111g、111h,111iは、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の軸線が、全体として、外周面に略平行な方向を向いている。少なくとも、第一の部分111g,111h,111iは、外周面に平行な方向を向く基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の割合が、他の部分に比較して高くなっている。一方、本発明の第十〜第十二実施形態にかかる外装材11j,11k,11mの第一の部分111j、111k,111mは、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の軸線が、全体として、内周面に略平行な方向を向いている。少なくとも、第一の部分111j,111k,111mは、他の部分に比較して、内周面に平行な方向を向く基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の割合が、他の部分に比較して高くなっている。
【0158】
第二の部分112g,112h、112j、112kは、本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11j,11kに成形される前の不織布の物理的な性質を有している部分である。すなわち、不織布が単に圧縮変形している部分である。また、バインダ繊維のバインダ材は溶融および固化していない。このため、『基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維がバインダ材により結合している』という状態ではない。そして、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の軸線の方向は、本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11j,11kに成形される前においてランダムであれば、本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11j,11kに成形された後においてもランダムの状態に維持されている。
【0159】
第三の部分113g,113i,113j,113mは、バインダ材により、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維どうしが結合されている部分である。なお、基本繊維およびバインダ繊維の軸線方向は、第二の部分112g,112h,112j,112kと同じであり、第一の部分111g,111h,111i,111j,111k,111mのように、『全体として収容材の表面に平行な方向を向いている』ということはない。また、圧縮変形の度合は、第二の部分112g,112h,112j,112kに比較して小さい。このように、第三の部分113g,113i,113j,113mは、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の軸線がバインダ材により結合されているため、本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11i,11j,11mに成形される前の状態や、本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11j,11kに成形された後の第二の部分112g,112h,112j,112kよりも硬くなっている。
【0160】
一方、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の密度は、第一の部分111g,111h,111i,111j,111k,111mよりも小さい。そして、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の軸線の方向は、外装材111g,111i,111j,111mの表面(=内周面または外周面)に平行な方向に揃っていない。このため、第三の部分113g,113i,113j,113mは、第一の部分111g,111h,111i,111j,111k,111mよりは軟らかい。
【0161】
このような構成であるから、第三の部分113g,113i,113j,113mは、第一の部分111g,111h,111i,111j,111k,111mよりも軟らかく、第二の部分112g,112h,112j,112kよりも硬い。
【0162】
したがって、本発明の第七実施形態と第十実施形態にかかる外装材11g,11jは、第一の部分111g,111jが最も硬く、第二の部分112g,112jが最も軟らかく、第三の部分113g,113jが第一の部分111g,111jと第二の部分112g,112jの中間の硬さを有する。本発明の第八実施形態と第十一実施形態にかかる外装材11h,11kは、第一の部分111h,111kが硬く、第二の部分112h,112kが軟らかい。本発明の第九実施形態と第十三実施形態にかかる外装材11i,11mは、第一の部分111i,111mが硬く、第三の部分113i,113mが軟らかい。このように、本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネスの収容材11g,11h,11i,11j,11k,11mには、互いに硬さが異なる部分が成形される。
【0163】
なお、第一の部分111g,111h,111i,111j,111k,111mと、第二の部分112g,112h,112j,112kと、第三の部分113g,113i,113j,113mのそれぞれの寸法や形状、位置や範囲は、本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mに持たせる機能などに応じて相違させる構成が適用できる。
【0164】
たとえば、第一の部分111g,111h,111i,111j,111k,111mにプロテクタの機能を持たせる場合には、ワイヤーハーネスの電線や電線の束の所定の部分のうち、特に保護したい部分が収容される部分にのみ、第一の部分111g,111h,111i,111j,111k,111mを成形する構成が適用できる。また、第一の部分111g,111h,111i,111j,111k,111mの寸法は、本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mにもたせる強度に応じて設定される。同様に、第一の部分111g,111h,111i,111j,111k,111mに形状維持部材の機能を持たせる場合には、特に形状を維持したい部分についてのみ、第一の部分111g,111h,111i,111j,111k,111mを成形する構成が適用できる。また、第一の部分111g,111h,111i,111j,111k,111mの寸法は、本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mにもたせる剛性(=変形のしにくさ)に応じて設定される。
【0165】
また、第二の部分112g,112h,112j,112kおよび第三の部分113g,113i,113j,113mの寸法を変更することにより、ワイヤーハーネスの電線や電線の束の所定の部分の緩衝材としての機能、消音材・防音材としての機能、断熱材としての機能の程度を変更することができる。
【0166】
次に、本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mの製造方法について説明する。なお、ここでは、本発明の第七実施形態にかかる外装材11gの製造方法を主に説明し、本発明の第八実施形態〜第十二実施形態にかかる外装材11h,11i,11j,11k,11mの製造方法については、本発明の第七実施形態にかかる外装材11gの製造方法と異なる構成についてのみ説明する。
【0167】
本発明の第七実施形態にかかる外装材11gの製造方法においては、成形具7が用いられる。成形具7は、対をなす第一の成形具71と第二の成形具72とを有する。図11は、本発明の第一実施形態にかかる外装材11gの製造方法において用いられる成形具7の構成を、模式的に示した外観斜視図である。
【0168】
成形具7は、不織布2を加熱するとともに加圧して、外装材11gを成形する工具である。図11に示すように、第一の成形具71には、不織布2を収容可能な凹部711が成形される。この凹部711の内周面の形状および寸法は、成形後の外装材11gの外周面の寸法および形状に等しく(またはほぼ等しく)設定される。第二の成形具72は、略棒状の部材である。そして第二の成形具72の寸法および形状は、外装材11gの内周面の寸法および形状に等しく(またはほぼ等しく)設定される。そして、第二の成形具72を第一の成形具71の凹部711に嵌め込むと、第一の成形具71の内周面と第二の成形具72の外周面との間に成形される空間の寸法および形状が、成形後の外装材11gの形状と等しくなる(またはほぼ等しくなる)。
【0169】
さらに、第一の成形具71には、「所定の温度」に加熱できる加熱手段(図略)が設けられる構成であることが好ましい。なお、「所定の温度」については後述する。加熱手段には、公知の各種加熱手段が適用できる。たとえば、加熱手段として電熱線が適用され、この電熱線が第一の成形具71の内部に埋め込まれる構成や、第一の成形具71に電熱線が装着される構成などが適用できる。また、第一の成形具71の内部に流体が通過することができる経路(たとえば孔)が形成され、この経路に温度調整された流体(気体(空気、過熱蒸気など)、液体(油など))を通過させる構成などが適用できる。このように、加熱手段は、第一の成形具71を「所定の温度」に加熱できる構成を有していればよく、その種類や構成は限定されるものではない。
【0170】
図12は、本発明の第七実施形態にかかる外装材11gの製造方法を、模式的に示した断面図である。具体的には、図12(a)は、不織布2を成形具7に収容する工程を示した図であり、図12(b)は、成形具7により不織布2を加熱しながら加圧する工程を示した図である。
【0171】
まず、図12(a)に示すように、不織布2が第一の成形具71の凹部711に収容されるとともに、不織布2の内側に第二の成形具72が挿入される。そうすると、図12(b)に示すように、不織布2は、成形具71によって加圧されて圧縮変形する。そして、不織布2の断面寸法および形状は、第一の成形具71の凹部711の内周面と、第二の成形具72の外周面との間に成形される領域の寸法および形状に等しくなる。
【0172】
そして、図12(b)に示す状態を維持しながら、第一の成形具71を加熱手段によって「所定の温度」に加熱する。そして、この状態を、「所定の時間」にわたって維持する。すなわち、「所定の時間」にわたって、不織布2への加熱および加圧を継続する。
【0173】
「所定の温度」は、不織布2を前記「第一の温度帯域」内の温度に加熱可能な温度である。たとえば、「所定の温度」は、「第一の温度帯域」内の温度か、それよりも高い温度が適用される。
【0174】
また、「所定の時間」は、次のとおりである。不織布2のうち、第一の成形具71に接触している部分およびその近傍の部分(すなわち、本発明の第七実施形態にかかる外装材11gの外周面となる部分およびその近傍の部分)は、第一の温度帯域内の温度に達する時間であるが、第二の成形具72に接触している部分およびその近傍の部分(すなわち、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの収容材11gの内周面となる部分およびその近傍の部分)は、第一の温度帯域内の温度に達しない時間である。
【0175】
次いで、「所定の時間」が経過した後、第一の成形具71の加熱を停止し、加熱および加圧された不織布2(すなわち、成形された本発明の第一実施形態にかかる外装材11g)が冷却される。なお、冷却方法は特に限定されるものではない。たとえば、冷蔵庫内に収納する方法、常温または低温の気体を吹き付ける方法、常温中に放置する方法などが適用できる。また、成形された本発明の第七実施形態にかかる外装材11gを、成形具7から取り外してから冷却してもよく、成形具7に収容された状態で冷却してもよい。
【0176】
このような製造方法によれば、次のようなメカニズムにより、第一の部分111gと第二の部分112gと第三の部分113gとを有する本発明の第七実施形態にかかる外装材11gが成形される。
【0177】
不織布2が成形具7に収容された状態となると(=不織布2が第一の成形具71と第二の成形具72に挟まれた状態となると)、不織布2は圧縮変形し、成形すべき外装材11gの寸法および形状となる。
【0178】
そして、この状態で第一の成形具71が「所定の温度」に加熱されると、不織布2のうち、第一の成形具71に接している面から所定の深さの部分は、第一の温度帯域内の温度に達する。第一の温度帯域内の温度に達した部分は、熱可塑性による塑性変形が容易な状態にあるから、加熱および加圧によって熱可塑性による塑性変形(ここでは、圧縮変形)する。なお、不織布2は、外周面側(=第一の成形具に接している側)が内周面側(=第二の治具に接している側)に比較して温度が高いから、第一の温度帯域内の温度に達した部分における熱可塑性による塑性変形の度合は、内周面側から外周面側に向かうにしたがって大きくなる。このため、不織布2のこの部分における基本繊維およびバインダ繊維の密度は、外周面側が高くなる。
【0179】
そして、特に不織布2のうちの第一の成形具に接触している部分およびその近傍の部分(すなわち、外周面の表層部)においては、加熱および加圧によって、不織布2の基本繊維およびバインダ繊維の軸線が、全体として圧縮方向に対して直角な方向(すなわち、外周面に平行な方向)を向く。不織布2の基本繊維およびバインダ繊維の軸線が、外装材11gの表面に平行な方向を向いた部分は、他の部分に比較すると、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の密度が特に高くなる。
【0180】
さらに、不織布2のうち、第一の温度帯域内の温度に達した部分は、バインダ繊維のバインダ材が溶融し、溶融したバインダ材が基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維どうしの間に流れ出る。その後、不織布2が、第一の温度帯域よりも低い温度に冷却されると、溶融して流出したバインダ材が固化し、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維どうしを結合する。
【0181】
そうすると、不織布2のうち、第一の成形具に接触している部分およびその近傍の部分は、基本繊維および芯繊維の密度が加圧前よりも高くなり、かつ、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の軸線が外周面に平行な方向を向いた状態で、バインダ材により結合される。このため、外周面の表層部は、加熱および加圧される前の不織布に比較して硬くなる。また、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の軸線方向が、外周面に平行な方向を向くから、基本繊維およびバインダ繊維の軸線がランダムな方向を向いている状態に比較すると、耐摩耗性が高くなる。
【0182】
このように、本発明の第七実施形態にかかる外装材11gの外周面の表層部には、他の部分に比較して硬く、かつ耐摩耗性が高い部分が成形される。この部分が「第一の部分111g」となる。第一の部分111gは、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の密度が他の部分より高く(かつ、加圧および加熱前の不織布2よりも高く)、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の軸線が全体として表面に平行な方向を向き(少なくとも、他の部分よりも、軸線が表面に平行な方向を向く基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の割合が高く)、かつ、基本繊維とバインダ繊維の芯繊維どうしが、バインダ材によって結合している部分である。
【0183】
一方、不織布2のうち、第二の成形具に接触している部分やその近傍の部分は、第一の温度帯域内の温度に達していない。このため、これらの部分においては、バインダ繊維のバインダ材が溶融していない。したがって、これらの部分は、加熱および加圧前の不織布の物理的な性質(たとえば、変形のしやすさ)を有している。このように、第二の成形具に接触している部分およびその近傍の部分(すなわち、内周面側)には、第一の部分に比較して軟らかい部分が成形される。この部分が「第二の部分112g」となる。換言すると、第二の部分112gは、バインダ材が溶融しておらず、加圧および加熱前の不織布の性質を有している部分である。
【0184】
さらに、不織布2の前記第一の温度帯域内の温度に達した部分のうち、第一の部分111gとなった部分よりも内周面側の部分が、「第三の部分113g」となる。第三の部分113gにおいては、第一の部分111gと同様に、溶融して固化したバインダ材により、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維どうしが結合している。このため、第二の部分112gよりも硬くなっている。しかしながら、圧縮変形の度合が第一の部分111gよりも小さく、かつ、基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の軸線の軸線の向きが、加熱および加圧前の向きから大きく変化していない(すなわち、たとえばランダムな方向を向いている、または、「全体として外周面に平行な方向を向いている」構成ではない)。このため、第三の部分113gは、第一の部分111gより軟らかい。
【0185】
このように、第一の部分111gと第二の部分112gとの間に(換言すると、第一の部分111gよりも内周面寄りに)、第一の部分111gと第二の部分112gの中間の硬さを有する第三の部分113gが成形される。
【0186】
なお、第一の部分111gの寸法(ここでは、本発明の第七実施形態にかかる外周材11gを「筒」に見たてた場合において、「筒」の軸線方向に直角な方向の寸法をいうものとする。以下同じ)は、不織布2を加熱および加圧する工程において、加熱時間と加熱温度の一方または両方を調整することにより、変更することができる。すなわち、加熱時間を長くするか、加熱温度を高くすると、第一の部分111gの寸法が大きくなる。一方、加熱時間を短くするか、加熱温度を低くすると、第一の部分111gの寸法が小さくなる。
【0187】
さらに、第一の部分111gの寸法は、本発明の第七実施形態にかかる外装材に成形する前の不織布2の寸法を異ならせることによって、変更することができる。すなわち、不織布2の寸法が大きくなると、不織布2を加熱しながら加圧する工程において、不織布2の圧縮変形の度合いが高くなる。このため、外装材11gの外周面に平行な方向を向く不織布の基本繊維やバインダ繊維が多くなる。そうすると、第一の部分111gの寸法が大きくなる。一方、装着する不織布2の寸法が小さくなると、不織布2を加熱しながら加圧する工程において、不織布2の圧縮変形の度合いが低くなる。このため、外装材11gの外周面に平行な方向を向く不織布2の基本繊維やバインダ繊維が少なくなる。そうすると、第一の部分111gの寸法が小さくなる。
【0188】
また、本発明の第七実施形態にかかる外装容材11gの第二の部分112gと第三の部分113gの寸法は、不織布2を加熱しながら加圧する工程において、加熱時間と加熱温度の一方または両方を調整することにより、変更することができる。すなわち、加熱時間を長くするか、加熱温度を高くすると、第一の温度帯域内の温度に達する部分の寸法が大きくなるから、第二の部分112gの寸法が小さくなり、第三の部分113gの寸法が大きくなる。一方、加熱時間を短くするか、加熱温度を低くすると、第一の温度帯域内の温度に達する部分が小さくなるから、第二の部分112gの体積が大きくなり、第三の部分113gの寸法が小さくなる。
【0189】
次に、本発明の第八実施形態にかかる外装材11hの製造方法について説明する。なお、本発明の第八実施形態にかかる外装材11hの製造方法は、本発明の第七実施形態にかかる外装材11gの製造方法と比較すると、不織布2を加熱しながら加圧する「所定の時間」が短い。「所定の時間」が短くなると、不織布2において、第一の温度帯域内の温度に達する部分が小さくなる。すなわち、不織布2の外周面の表層部のみが第一の温度帯域内の温度に達する。このため、圧縮変形により基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の軸線が表面に平行な方向を向いた部分のみが、第一の温度帯域内の温度に達する。そうすると、本発明の第八実施形態にかかる外装材の外周面の表層部に「第一の部分111h」が成形され、それ以外の部分は「第二の部分112h」となり、「第三の部分」は成形されない(図10(b)参照)。なお、これ以外の構成は、本発明の第七実施形態にかかる外装材11gの製造方法と同じ構成が適用される。したがって、説明は省略する。
【0190】
次に、本発明の第九実施形態にかかる外装材11iの製造方法について説明する。なお、本発明の第九実施形態にかかる外装材11iの製造方法は、本発明の第七実施形態にかかる外装材11gの製造方法と比較すると、不織布2を加熱しながら加圧する「所定の時間」が長い。「所定の時間」が長くなると、不織布2の全体が、第一の温度帯域内の温度に達する。このため、圧縮変形により基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維の軸線が表面に平行な方向を向いた部分が、第一の部分111iとなり、それ以外の部分は、すべて第三の部分113iになる。そうすると、本発明の第九実施形態にかかる外装材11iの表層部に「第一の部分111i」が成形され、それ以外の部分は「第三の部分113i」となり、「第二の部分」は成形されない(図10(c)参照)。なお、これ以外の構成は、本発明の第七実施形態にかかる外装材11gの製造方法と同じ構成が適用される。したがって、説明は省略する。
【0191】
次に、本発明の第十〜第十二実施形態にかかる外装材11j,11k,11mの製造方法について説明する。この製造方法は、不織布2を加熱しながら加圧する工程において、成形される外装材11j,11k、11mの内周面側を加熱する。すなわち、本発明の第七〜第九実施形態にかかる外装材11g,11h,11iの製造方法においては、第一の成形具71が加熱手段を備え、第一の成形具71により不織布2を加熱する構成であるのに対して、本発明の第十〜第十二の実施形態にかかる外装材11j,11k、11mの製造方法は、第二の成形具72が加熱手段を有し、第二の成形具72により不織布2を加熱する構成が適用される。
【0192】
それ以外の構成は、本発明の第七〜第九実施形態にかかる外装材11g,11h,11iの製造方法と同じ構成が適用される。したがって、説明は省略する。
【0193】
そして、本発明の第十実施形態にかかる外装材11jの製造方法は、第七実施形態にかかる外装材11gの製造方法に対応する。このため、本発明の第十実施形態にかかる外装材11jに第一の部分111jと第二の部分112jと第三の部分113jとが成形されるメカニズムは、内周面側と外周面側とが反対になった構成を除いては、本発明の第七実施形態にかかる外装材11gの製造方法と同じである。
【0194】
また、本発明の第十一実施形態にかかる外装材11kの製造方法は、第八実施形態にかかる外装材11hの製造方法に対応する。このため、本発明の第十一実施形態にかかる外装材11kに、第一の部分111kと第二の部分112kとが成形され、第三の部分が成形されないメカニズムは、内周面側と外周面側とが反対になった構成を除いては、第八実施形態にかかる外装材11hの製造方法と同じである。
【0195】
また、本発明の第十二実施形態にかかる外装材11mの製造方法は、本発明の第九実施形態にかかる外装材11iの製造方法に対応する。このため、本発明の第十二実施形態にかかる外装材11mに、第一の部分111mと第三の部分113mとが成形され、第二の部分が成形されないメカニズムは、内周面側と外周面側とが反対になった構成を除いては、第九実施形態にかかる外装材11iの製造方法と同じである。
【0196】
本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mは、次のような作用効果を奏する。
【0197】
すなわち、本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mには、所定の硬さを有する部分である第一の部分111g,111h,111i,111j,111k,111mと、この第一の部分111g,111h,111i,111j,111k,111mよりも軟らかい部分である第二の部分112g,112h,112j,112kおよび/または第三の部分113g,113i,113j,113mとが、同じ材料(=同じ不織布2)により一体に成形される。換言すると、本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mには、互いに硬さが異なる部分である第一の部分111g,111h,111i,111j,111k,111mと第二の部分112g,112h,112j,112kと第三の部分113g,113i,113j,11mとが、同じ材料(=同じ不織布2)により一体に成形される。
【0198】
そして、硬い部分である第一の部分111g,111h,111i,111j,111k,111mに、(1)ワイヤーハーネスの電線や電線の束の所定の部分を保護する機能(=「プロテクタ」の機能)、(2)配索されたワイヤーハーネスの電線や電線の束が、配索された位置から外れ出ないようにする機能、換言すると、ワイヤーハーネスの電線や電線の束の形状を所定の形状に維持する機能(=「形状維持部材」の機能)の一方または両方を持たせることができる。一方、軟らかい部分である第二の部分112g,112h,112j,112kおよび第三の部分113g,113i,113j,113mには、(3)異音の発生を防止または抑制する機能(=「消音材」や「防音材」の機能)、(4)ワイヤーハーネスの電線や電線の束に衝撃が加わらないようにする機能(「緩衝材」の機能)、(5)ワイヤーハーネスの電線や電線の束に熱が伝わらないようにする機能(=「断熱材」の機能)、のうちの一つまたは複数を持たせることができる。さらに、本発明の各実施形態にかかる外装材には、全体として、(6)ワイヤーハーネスの電線の束がバラバラにならないように纏める機能(=「結束材」の機能)をもたせることができる。
【0199】
このように、一種類の材料と共通の工程により、形状維持部材と、プロテクタと、消音材と、緩衝材と、防音材・消音材と、断熱材と、結束材とのいずれかの機能を有する本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mを成形することができる。すなわち、一種類の材料と共通の工程とにより、互いに異なる用途または機能の収容材を作り分けることができる。さらに、一種類の材料と共通の工程により、これらのうちの複数の機能を有する外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mを成形することもできる。たとえば、緩衝機能や消音・防音機能や断熱機能を有する形状維持部材や収容材を、一種類の材料により同一の工程で成形できる。
【0200】
したがって、本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j、11k,11mによれば、互いに異なる機能を有する複数種類の外装材を成形する場合であっても、それらを共通の材料により成形することができる。そうすると、外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mの材料の共通化を図ることができるから、材料の種類を減らすことができ、材料の在庫の管理が容易となる。また、互いに異なる複数種類の外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mを成形する場合であっても、製造方法および製造に用いる設備は共通である。このため、製造設備に要する費用の削減や、製造設備の共通化やフレキシブル化を図ることができる。
【0201】
また、本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mの第一の部分111g,111h,111i,111j,111k,111mと第二の部分112g,112h,112j,112kと第三の部分113g,113i,113j,113mが奏する作用効果は、次のとおりである。
【0202】
すなわち、第一の部分111g,111h,111iは、成形前の不織布2に比較して硬くなっているから、本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mに収容されたワイヤーハーネスの電線や電線の束の所定の部分の形状(特に軸線の形状)を、所定の形状に維持することができる。また、第一の部分111g,111h,111iは、その外側からその外周面に異物が接触または衝突した場合にであっても、収容される電線や電線の束の所定の部分に直接的に異物が接触や衝突することを防止でき、電線や電線の束の所定の部分を保護することができる。
【0203】
第二の部分112g,112h,112j,112kは、加圧および加熱前の不織布2の物理的性質および物理的構成を有しており、第一の部分111g,111h,111iよりも軟らかい。第三の部分113g,113iは、第二の部分112g,112hよりは硬いものの、第一の部分111g,111h,111iよりは軟らかい。このため、本発明の第七〜第九実施形態にかかる外装材11g,11h,11iに振動や衝撃が加わった場合であっても、第二の部分112g,112hおよび第三の部分113g,113iが振動や衝撃をやわらげ、収容されたワイヤーハーネスの電線や電線の束の所定の部分に振動や衝撃が伝わることを防止または抑制できる。このように、第二の部分112g,112hおよび第三の部分113g,113iは、緩衝材として機能する。
【0204】
また、第二の部分112g、112hおよび第三の部分113g,113iは軟らかいから、他の部材が接触や衝突しても、衝突音などが発生しない。このように、第二の部分112g,112h,112j,112kおよび第三の部分113g,113i,113j,113mは、防音材として機能する。そして、第二の部分112g、112hおよび第三の部分113g,113iは軟らかい多孔質であるといえるから、異音が発生した場合であっても、発生した異音を吸収できる。このように、第二の部分112g,112hおよび第三の部分113g,113iは、消音材として機能する。
【0205】
さらに、第二の部分112g,112hおよび第三の部分113g,113iは、繊維が絡み合った状態であり、内部に空気を含んでいる。このため、中実(=中身が詰まった)の物体に比較して熱伝導率が小さい。したがって、本発明の第七〜第九実施形態にかかる外装材11g,11h,11iの外部から、収容されるワイヤーハーネスの電線や電線の束の所定の部分に熱が伝わることを防止または抑制できる。このため、収容されるワイヤーハーネスの電線や電線の束の所定の部分が熱により損傷することを防止または抑制できる。このように、第二の部分112g,112hおよび第三の部分113g,113iは、断熱材としての機能を有する。
【0206】
本発明の各実施形態ごとの作用効果は次のとおりである。
【0207】
本発明の第七〜第九実施形態にかかる外装材11g,11h、11iには、第一の部分111g,111h,111iが外周面の表層部に成形される。第一の部分111g,111h、111iは耐摩耗性が高くなっているから、外装材と外部の部材との間で摩擦が生じた場合であっても、外装材111g,111h,111iが摩耗することを防止または抑制できる。このため、第一の部分111g,111h,111iの内側に成形される第二の部分112g,112hや第三の部分113g,113iや、電線12や電線12の束の所定の部分が損耗することを防止または抑制できる。
【0208】
また、収容されたワイヤーハーネスの電線や電線の束の所定の部分は、第二の部分112gまたは第三の部分113iに弾性的に接触することになる。このため、外装材11g,11h,11iに振動や衝撃などが加わった場合であっても、収容されるワイヤーハーネスの電線や電線の束の所定の部分が、第二の部分112gまたは第三の部分113i以外の部材と衝突することが防止される。このため、ワイヤーハーネスの電線や電線の束の所定の部分が、何らかの部材に衝突することによって衝突音(異音に感じられるような音)が発生することを防止できる。このように、第二の部分112g、112hおよび第三の部分113g,113iは、防音材として機能する。
【0209】
本発明の第十〜第十二実施形態にかかる外装材11j,11k,11mは、第二の部分112j、112kまたは第三の部分113mが外周面に露出している。このような構成であると、外装材11j、11k,11mの第二の部分112j,112kまたは第三の部分113mが、その外側に近接する他の部材と接触することになる。このため、外装材11j,11k,11mや、近接する他の部材に振動や衝撃などが加わった場合であっても、近接する他の部材との間で、衝突音(異音に感じられるような音)が発生することを防止できる。このように、第二の部分112j,112kおよび第三の部分113mは、防音材として機能する。
【0210】
また、本発明の第八実施形態と第十一実施形態にかかる外装材11h,11kのように、第三の部分を成形しない構成では、特に緩衝材としての機能の向上を図ることができる。すなわち、相対的に最も硬い第一の部分111h,111kを除いては、すべて相対的に最も軟らかい第二の部分112g,112kとなり、第二の部分112g,112kの寸法が大きくなる。このため、収容されるワイヤーハーネスの電線や電線の束の所定の部分に衝撃や振動が伝わらないようにする緩衝材としての機能が高くなる。
【0211】
一方、本発明の第九実施形態と第十三実施形態にかかる外装材11i,11mのように、第二の部分を成形せず、第一の部分111i,111mと第三の部分113i,113mのみを成形する構成であると、第三の部分113i,113mは第二の部分に比較して硬いことから、外装材11i,11mの強度の向上を図ることができるとともに、収容されるワイヤーハーネスの電線や電線の束を保持する機能の向上を図ることができる。
【0212】
そして、本発明の第七実施形態と第十実施形態にかかる外装材11g,11jのように、第二の部分112g,112jと第三の部分113g,113jの両方を成形することにより、強度の向上やワイヤーハーネスの電線や電線の束を保持する機能の向上を図ることができるとともに、緩衝材としての機能を持たせることができる(なお、第三の部分113g,113jも緩衝材としての機能を有するが、ここでは、第三の部分113g,113jのみが成形される構成よりも、衝撃を弱める効果が高くなる)。
【0213】
また、本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mによれば、射出成形品を用いる構成と比較して、次のような作用効果を奏する。
【0214】
まず、本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mの成形において試用される成形具7は、射出成形品を製造する成形型に比較して構成が単純であるから安価である。このため、射出成形品を用いる構成と比較して、設備コストの削減を図ることができる。さらに、各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mは、射出成形品に比較して安価な材料(=不織布)を適用できるから、材料コストの削減を図ることができる。
【0215】
また、これらの外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mを成形する工程は、射出成形品に電線や電線の束の所定の部分を嵌め込む方法に比較して、作業が簡単である。
【0216】
さらに、これらの外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mは、不織布2により成形されるため、射出成形品に比較して重量を軽くすることができる。すなわち、射出成形品は、中実な固体(=内部が詰まった固体)であるのに対し、不織布2により成形された外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mは、完全に中実な固体ではなく、内部に空気を含む。このため、これらの外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mの軽量化を図ることができる。
【0217】
また、これらの外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mは、不織布により成形されるため、射出成形品に比較すると、変形させやすい。このため、射出成形品を設計する場合には、配索される空間の形状や寸法の公差によるばらつきに応じて、寸法や形状を考慮する必要がある。このため、設計が複雑となる。これに対して不織布2により成形された外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mは、変形させることによって公差を吸収することができる。このため、設計において公差によるばらつきを考慮する必要がなくなる。
【0218】
また、これらの外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mは、電線や電線の束の所定の部分に樹脂テープを巻き付ける構成と比較して、次のような作用効果を奏する。
【0219】
電線や電線の束の所定の部分に樹脂テープを巻き付ける作業は、手間と時間を要する。また、ワイヤーハーネスごとに仕上がりがばらつきやすく、品質の管理や品質の維持に問題がある。さらに、樹脂テープを電線や電線の束の所定の部分の外周に巻き付ける構成は、仕上がりの見映えがよくないという問題を有する。
【0220】
これに対して、本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11kの成形方法は前記のとおりであり、樹脂テープを巻き付ける作業に比較すると、手間や時間を省略することができる。また、ワイヤーハーネスの固体ごとの仕上がりのばらつきをなくすことができ、品質の管理や品質の維持が容易となる。さらに、射出成形品を適用する構成と同質の外観を得ることができ、見映えがよいという効果を奏する。
【0221】
また、これらの外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mが形状維持部材の機能を有すると、ワイヤーハーネスを車両などの内部に配索する作業の作業工数の削減や、部品点数の削減や、軽量化を図ることができる。具体的には次のとおりである。
【0222】
従来一般の、ワイヤーハーネスを配索する作業においては、ワイヤーハーネスの枝線や幹線を、配索対象部材に設定された所定の経路に沿わせるように配設し、その後、クランプなどにより所定の部材に固定する。ここで、ワイヤーハーネスの枝線や幹線が変形しやすいと、次のような問題が生じる。まず、配索されたワイヤーハーネスの幹線や枝線が所定の部材の所定の経路から外れ出ないようにするために、多数のクランプが必要となる。また、ワイヤーハーネスの幹線や枝線が配索された状態で、宙に浮いた部分が存在しないようにする必要がある。すなわち、ワイヤーハーネスの枝線や幹線が宙に浮いた状態にあると、使用中の振動などによって他の部材などに接触や衝突などを起こして損傷することがあるほか、異音が発生することがある。このため、ワイヤーハーネスの幹線や枝線に、宙に浮いた部分が生じないように、全長にわたって配索対象部材に沿わせて配索する必要がある。そうすると、ワイヤーハーネスの幹線や枝線の配索経路が、配索対象部材の形状などによって制限され、たとえば迂回などが必要となってワイヤーハーネスの幹線や枝線の長さが長くなることがある。ワイヤーハーネスの幹線や枝線の長さが長くなると、部品コストが上昇やワイヤーハーネスの重量の増加を招くほか、ワイヤーハーネスの取り扱いが不便となる。
【0223】
これに対して、本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mが用いられる構成であると、次のような作用効果を奏する。まず、これらの外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mに収容されたワイヤーハーネスの電線や電線の束の所定の部分は、所定の形状(=配索経路の形状)に維持されるから、クランプの数を削減することができる。さらに、ワイヤーハーネスの電線や電線の束の所定の部分は所定の形状に維持されるから、配索対象部材に配索された状態において、少なくとも一部が宙に浮いた状態であってもよい。すなわち、電線や電線の束の少なくとも一部が宙に浮いた状態にあっても、宙に浮いた部分は所定の形状に維持される。このため、使用中の振動や衝撃などによって他の部材などに接触や衝突などを起こすことが防止される。したがって、損傷や異音の発生を防止できる。
【0224】
さらに、『幹線や枝線の少なくとも一部を宙に浮かせる』という構成が適用できることによって、ワイヤーハーネスの電線や電線の束の配索経路の自由度が高くなる。このため配索経路の短縮を図ることができる。そして、配索経路の短縮を図ることによって、電線や電線の束の長さを短くすることができる。そうすると、部品コストの削減や軽量化を図ることができるほか、取り扱いが容易となる。また、電線や電線の束の長さが短くなれば、配索に要する時間の短縮を図ることができるほか、配索対象部材に取り付けるためのクランプの数をさらに少なくすることができる。
【0225】
また、本発明の各実施形態にかかる外装材は、特許文献1に記載の構成と異なり、電線の束の形態(=纏められた電線の形状。換言すると、電線がどのような形態で纏められているか)は限定されない。すなわち、複数の電線が全体として断面略円形となるように纏められていてもよく、略方形となるように纏められていてもよい。特許文献1に記載の構成のように、複数の電線によりフラット回路体が形成される構成に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0226】
以上、本発明の各実施形態について詳細に説明したが、本発明は、前記各実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変が可能である。
【0227】
本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fにおいては、各外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fの断面形状が略円形である構成を示したが、外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fの断面形状は限定されるものではない。外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fの断面形状は、配索される領域の寸法や形状などに応じて適宜設定される。
【0228】
なお、前記各実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fの説明では、本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネス1a,1b,1c,1d,1e,1fごとに、互いに異なる構成の外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fが設けられる構成を示したが、これは、説明の便宜のためである。すなわち、一つのワイヤーハーネスの幹線や枝線に、互いに異なる構成を有する外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fが設けられる構成を除外するものではない。たとえば、一つのワイヤーハーネスに、互いに異なる構成を有する複数種類の外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fが設けられる構成であってもよい。同様に、ワイヤーハーネスの一つの幹線や枝線に、互いに異なる構成を有する複数種類の外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fが装着される構成であってもよい。ワイヤーハーネスの幹線や枝線のどの位置にどのような構成の外装材11a,11b,11c,11d,11e,11fを設けるかは、配索される領域の寸法や形状や環境、外装材に要求される機能などに応じて設定されるものである。
【0229】
また、本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mの断面形状が略方形である構成を示したが、断面形状は限定されるものではない。本発明の各実施形態にかかる外装材11g,11h,11i,11j,11k,11mの断面形状は、ワイヤーハーネスが配索される領域の寸法や形状などに応じて適宜設定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線または電線の束と、前記電線または電線の束の所定の部分を覆うように設けられる外装材とを有し、前記外装材には、所定の硬さを有する部分と、前記所定の硬さを有する部分よりも軟らかい部分とが、同じ材料により一体に成形されていることを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項2】
前記外装材の表面に前記所定の硬さを有する部分が成形され、前記電線または電線の束は前記軟らかい部分に包まれていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤーハーネス。
【請求項3】
前記外装材は、熱可塑性の材料からなる不織布により成形されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワイヤーハーネス。
【請求項4】
前記不織布は、基本繊維とバインダ繊維とを有し、
前記基本繊維は、所定の融点を有する熱可塑性の樹脂材料からなり、
前記バインダ繊維は、芯繊維と前記芯繊維の外周に成形されるバインダ材の層とを有し、前記芯繊維は所定の融点を有する熱可塑性の樹脂材料からなり、前記バインダ材の層は前記基本繊維および前記芯繊維の融点よりも低い融点の熱可塑性の樹脂材料からなることを特徴とする請求項3に記載のワイヤーハーネス。
【請求項5】
前記所定の硬さを有する部分は、前記基本繊維および前記バインダ繊維の前記芯繊維がバインダ材により結合しているとともに、前記軟らかい部分に比較して前記基本繊維および前記バインダ繊維の芯繊維の密度が高いことを特徴とする請求項4に記載のワイヤーハーネス。
【請求項6】
ワイヤーハーネスの電線または電線の束を収容可能な外装材であって、所定の硬さを有する部分と、前記所定の硬さを有する部分よりも軟らかい部分とが、同じ材料により一体に成形されていることを特徴とするワイヤーハーネスの外装材。
【請求項7】
前記請求項6において、前記外装材は、熱可塑性の材料からなる不織布により成形されることを特徴とする。
【請求項8】
前記不織布は、基本繊維とバインダ繊維とを有し、
前記基本繊維は、所定の融点を有する熱可塑性の樹脂材料からなり、
前記バインダ繊維は、芯繊維と前記芯繊維の外周に成形されるバインダ材の層とを有し、前記芯繊維は所定の融点を有する熱可塑性の樹脂材料からなり、前記バインダ材の層は前記基本繊維および前記芯繊維の融点よりも低い融点の熱可塑性の樹脂材料からなることを特徴とする請求項7に記載の外装材。
【請求項9】
前記所定の硬さを有する部分は、前記基本繊維および前記バインダ繊維の前記芯繊維がバインダ材により結合しているとともに、前記軟らかい部分に比較して前記基本繊維および前記バインダ繊維の芯繊維の密度が高いことを特徴とする請求項8に記載の外装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−65561(P2013−65561A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−231832(P2012−231832)
【出願日】平成24年10月19日(2012.10.19)
【分割の表示】特願2012−520859(P2012−520859)の分割
【原出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】