ワイヤ導体の描画方法およびインレット
【課題】貫通穴を設けた基材にモジュール基板を嵌め込こみ、ワイヤ導体によりコイル状若しくはダイポール形状のアンテナが描画されたインレットにおいて、前記基材と基板との支持・固定部の強度を向上させ、信頼性を向上させる。
【解決手段】裏面と表面のどちらか一方の面に熱可塑性樹脂が塗布された基材に貫通穴を設け、貫通穴に、外部導体を接続するための左右の接合パッドと、ICチップを実装するための接合パッドを含む、2つの領域に分割したICスリット、が設けられた実装部を有する基板あるいは基板モジュールを嵌め込み、基材にワイヤ導体をコイル状もしくはダイポール形状のアンテナとして描画し、アンテナとICチップとの接続は、貫通穴を繰り返し横断するように基板の両接合パッド上にそれぞれワイヤ導体を描画し、ワイヤ導体を熱圧着ヘッドにより、接合パッド上に物理的・電気的に接続させること。
【解決手段】裏面と表面のどちらか一方の面に熱可塑性樹脂が塗布された基材に貫通穴を設け、貫通穴に、外部導体を接続するための左右の接合パッドと、ICチップを実装するための接合パッドを含む、2つの領域に分割したICスリット、が設けられた実装部を有する基板あるいは基板モジュールを嵌め込み、基材にワイヤ導体をコイル状もしくはダイポール形状のアンテナとして描画し、アンテナとICチップとの接続は、貫通穴を繰り返し横断するように基板の両接合パッド上にそれぞれワイヤ導体を描画し、ワイヤ導体を熱圧着ヘッドにより、接合パッド上に物理的・電気的に接続させること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非接触型ICカード及びその製造方法に係り、特にIC基板モジュールと外部のデータ処理部との間での情報交換に巻き線アンテナを利用して、電磁誘導方式にて行なう非接触型ICカードにおいて、前記巻き線アンテナをエナメル線等のワイヤ導体をプラステック基材に描画形成すると共に、前記ICパッケージとの接続とIC基板モジュールの支持・固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、ICカードと外部機器との接続方法には、接触型と非接触型の2種類があり、非接触型では、内部にアンテナが設けられたICカードが使用される。このような非接触型ICカードが外部機器に装着されるか、またはICカードが外部機器に近接されると、非接触型ICカードと外部機器との間で電源供給及びデータの授受が行なわれる。
【0003】
非接触ICカードは、基材、IC基板モジュール、巻き線アンテナより構成され、IC基板モジュール及び巻き線アンテナは基材に配設され、IC基板モジュールは、接着材を用いて基材に固定されている。
IC基板モジュールは、一対の端子電極を有しており、端子電極には巻き線アンテナが熱圧着により接続される。
【0004】
ワイヤ導体は、ワイヤを送出しながら、加熱により基材面に塗布された熱可塑性樹脂を溶融させることが可能な描画ヘッドにより前記基材面に描画・固定される。ワイヤ導体を接続させるための方法としてワイヤ導体を描画する基材に嵌め込まれたチップユニットを横断する形でワイヤ導体が描画され、チップユニットの端子とワイヤ導体が圧着され、物理的かつ電気的に接続される。
【0005】
巻き線タグ用基板の現行仕様では、基板又はモジュールの導体部と、それを嵌め込む穴を有する基材上に描画されたワイヤ導体とは熱圧着により、互いに物理的かつ電気的に接続され、基板又はモジュールと基材はワイヤ導体を介して固定される。
【0006】
現行仕様においては、基板を基材に対して固定するワイヤ導体の支持部は4箇所しかなく、熱圧着後基板又はモジュールに外力が加えられた際にワイヤ導体が断線する可能性がある。特に基板又はモジュール側から見て、アンテナコイル側のワイヤ導体による支持部が断線すると、ICを実装してもR/Wとの通信ができなくなってしまう。
【0007】
しかしながら、単にチップユニット(IC実装済の基板モジュールも含む)を、ワイヤ導体を描画する基材に設けられた貫通穴若しくは凹部に嵌め込み、チップユニットに設けられたワイヤ導体との接続端子上を横断する形で前記ワイヤ導体を描画し、基板と圧着・導通させることを目的としているが、基板又はモジュールと基材の支持・固定箇所の信頼性向上に関しては特に述べられていない(特許文献1)。
【0008】
基材と基板との支持・固定部の強度を向上させ、信頼性を向上するためには、パッドを横切る配線の全てをパッドに接続させる事が望ましいが、特許文献1においては端部の配線以外を接続してしまうと、コイルの機能を果たさなくなってしまうため、貫通穴を横断するワイヤ導体の中で端部の配線のみ熱圧着する為、強度の向上には寄与しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許3721520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
貫通穴を設けた基材に基板またはモジュール基板を嵌め込こみ、前記基板またはモジュール基板が嵌め込こまれ基材に、ワイヤ導体によりコイル状若しくはダイポール形状のアンテナが描画されたインレットにおいて、前記基材と基板との支持・固定部の強度を向上させ、信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、裏面と表面のどちらか一方の面に熱可塑性樹脂が塗布された基材に貫通穴を設け、貫通穴に、外部導体を接続するための左右の接合パッドと、ICチップを実装するための接合パッドを含む、2つの領域に分割したICスリット、が設けられた実装部を有する基板あるいは基板モジュールを嵌め込み、基材にワイヤ導体をコイル状もしくはダイポール形状のアンテナとして描画し、アンテナとICチップとの接続は、貫通穴を繰り返し横断するように基板の両接合パッド上にそれぞれワイヤ導体を描画し、ワイヤ導体を熱圧着ヘッドにより、接合パッド上に物理的・電気的に接続させることを特徴とするワイヤ導体の描画方法である。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、貫通穴の横断を、貫通穴と各接合パッドとの成す3辺を跨いで実施することを特徴とする請求項1に記載のワイヤ導体の描画方法である。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、基板モジュールの2辺の、左右の接合パッドの中央部に凹部を設け、凹部に嵌合する凸部を貫通穴に設け、凸部を跨ぐように貫通穴を横断することを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤ導体の描画方法である。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、描画したワイヤ導体が基板上で重なる場合、重なり部分の基板に凹部が設けられるか又は接合パッドのパターンが欠如し、基材上で重なる場合、重なり部分の基材の表面を凹状にエンボス加工していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のワイヤ導体の描画方法である。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、裏面と表面のどちらか一方の面に熱可塑性樹脂が塗布された基材に貫通穴が設けられ、貫通穴に、外部導体を接続するための左右の接合パッドと、ICチップを実装するための接合パッドを含む、2つの領域に分割されたICスリット、が設けられた実装部を有する基板あるいは基板モジュールが嵌め込こまれ、基材にワイヤ導体をコイル状もしくはダイポール形状のアンテナとして描画され、アンテナとICチップとの接続が、貫通穴を繰り返し横断するように基板の両接合パッド上にそれぞれワイヤ導体が描画され、ワイヤ導体が熱圧着ヘッドにより、接合パッド上に物理的・電気的に接続させれていることを特徴とするインレットである。
【0016】
また、請求項6に記載の発明は、ワイヤ導体による描画における貫通穴の横断が、貫通穴と各接合パッドとの成す3辺を跨いで実施されていることを特徴とする請求項5に記載のインレットである。
【0017】
また、請求項7に記載の発明は、基板モジュールの2辺の、左右の接合パッドの中央部に凹部が設けられ、凹部に嵌合する凸部が貫通穴に設けられ、ワイヤ導体による描画が凸部を跨ぐように貫通穴を横断していることを特徴とする請求項5または6に記載のインレットである。
【0018】
また、請求項8に記載の発明は、描画されたワイヤ導体が基板上で重なっている場合、
重なっている部分の基板に凹部が設けられているか又は接合パッドのパターンが欠如し、基材上で重なっている場合、重なっている部分の基材の表面が凹状にエンボス加工されていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のインレットである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の基材1および基材1に嵌め込まれた基板2に描画されるワイヤ導体4の描画方法により、板が可動する方向がなくなり、板が動くことでワイヤに加わる繰り返し応力を減少でき、アンテナ13と基板1間の導通を保つワイヤ導体4に加わるストレスを低減し通信不良が発生しにくくすることができ、さらに表層のラミネート工程やワイヤ導体4と基板導体の熱溶着工程時に加わるワイヤ導体4との交点へのストレスを低減させることができ、ワイヤ断線、不都合なワイヤ同士の導通等を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】貫通穴が設けられた基材に、ICモジュール基板を嵌め込み、ワイヤー描画される巻き線タグインレットを示した概念図である。
【図2】図1に示したワイヤー描画される巻き線タグインレットの断面概念図である。
【図3】本発明におけるワイヤー描画を示した概念図である。
【図4】本発明におけるワイヤー描画後の、ワイヤ導体・基板熱圧着を示した概念図である。
【図5】ワイヤー描画された巻き線タグインレットの一例写真
【図6】本発明のワイヤ導体描画を貫通穴に対し2回横断してワイヤ導体描画されたインレット示した概念図である。
【図7】本発明のワイヤ導体描画を貫通穴に対し3回横断してワイヤ導体描画されたインレット示した概念図である。
【図8】本発明のワイヤ導体描画において、貫通穴の4辺を跨ぐ形でワイヤ描画されたインレットを示した概念図である。
【図9】本発明のワイヤ導体描画において、貫通穴の対向する長辺部に凸部を設け、貫通穴の4辺を跨ぐ形でワイヤ描画されたインレットを示した概念図である。
【図10】本発明のワイヤ導体描画において、ワイヤ導体配線とワイヤ導体配線が重なり合う部分の基材に凹みエンボス加工が施されたインレットを示した概念図である。
【図11】本発明のワイヤ導体描画において、ワイヤ導体配線とワイヤ導体配線が重なり合う部分の基板に穴加工が施されたインレットを示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明を実施するための形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明のインレットの一例を示した概念図である。図で熱可塑性樹脂が塗布されているPET、PEN、ポリイミド、紙等の基材2に貫通穴を設け、その貫通穴3に厚みが0.3mm以下のFR−4、ポリイミド、PET、PENに代表される樹脂をベースとする基板1が嵌め込まれている。裏面と表面の少なくともどちらか又は両面にCu、Al等の導体層を設け、左右端に銅ワイヤ等の外部導体を接続するための接合パッド5をフォトリソ法等により形成してある。
【0023】
図2は、図1で示したICモジュールが嵌め込まれた基材1の断面図を示す。スリットを形成させたパッドにはICチップ6を搭載し、ワイヤ導体4により導通すると共に、ワイヤ導体4は基材2上の熱可塑性樹脂に溶融接着し固定される。
【0024】
図3はワイヤ導体4の描画イメージであり、加熱された状態で描画される為、基材1とは熱可塑性樹脂を溶かし接着し、接合パッド5上に設置される。更に図4に示す様に、熱圧着ヘッド9により、ワイヤ導体4と基板1の接合パッド5部が熱圧着され導通され、図
5のようなインレットが得られる。
【実施例1】
【0025】
銅箔が積層された、厚みが0.17mm厚みの樹脂基板(FR−4:難燃性のガラス布基材エポキシ樹脂)をフォトリソ法を用いて、ICスリット14により左右に分割した領域を設け、左右領域に銅ワイヤ導体4を接続するための接合パッド5とICチップ6を実装するための実装部形成し、次に熱可塑性樹脂を塗布した0.2mm厚みの上質紙からなる基材2に貫通穴3を設け、その貫通穴3に前記樹脂基板1を嵌め込む、続いて0.1mmφのワイヤ導体4をダイポール形状に設けると共に、接続パッド5に描画する。更に基材上に描画されたワイヤ導体4と接合パッド5は熱圧着により物理的かつ電気的に接続され、基板1又はモジュールと基材2はワイヤ導体4を介して固定される。
【0026】
図6は本発明におけるワイヤ導体4と接合パッド5との熱圧着の工程を示しており、ワイヤ導体4を繰り返し横断させ、配線を2重にして接合したものを、図7は配線を3重にして接合したものを示している。その後熱圧着ヘッド9より加熱・圧着することにより、ワイヤ導体4と接合パッド5は電気的に接続すると共に、物理的にも固定される。
【0027】
基板1と基材2を固定するワイヤ導体4支持部において、特にアンテナ部と基板間の導通を保たたれ、ワイヤ導体4にかかる応力は隣接する導体に分散するため、ICチップ6を基板1に実装した後において外力による断線に伴う、通信不良が発生しにくくなる。特にアンテナ部と基板間の導通を保つワイヤ導体4の両脇又は少なくとも基板中心側から見て外側に隣接するワイヤ導体4を配線し、これらのワイヤ導体4を基板1とワイヤ導体4と一括して熱圧着することで、他の導体よりもアンテナ部と基板間の導通を保つワイヤ導体4に加わるストレスを低減し、ワイヤ断線4に伴う通信不良が発生しにくくすることができる。
【実施例2】
【0028】
図8に貫通穴3を横断するワイヤ導体4を貫通穴内形又は基板外形の最低でも3辺以上を跨ぐ形で描画したものを示す。2回は貫通穴3を横断することになり、ワイヤ導体4は熱圧着ヘッド9によって一括して基板導体に設けられた同一の接合パッド5上に物理的・電気的に接続される。従来の接合では、ワイヤ配線4に対して直角の方向に基板1が可動してしまうが、本発明の描画方法により、基板1が可動する方向がなくなり、板が動くことでワイヤに加わる繰り返し応力を減少できるようになり、ワイヤ断線リスクを低減させることができる。
【実施例3】
【0029】
図9に、実施例2の描画方法を用い、さらに基板1の長辺側に凹部11を設けると共にそれに対応する貫通穴凸部を基板設置用穴に設け、少なくともこの凸部を経由してワイヤ導体4が配線したものを示す。本方式により基板1を跨ぐワイヤ導体4の長さを減らすことができ、ワイヤ導体4と基板1の熱圧着後においてワイヤ伸び等に起因する、基板設置用穴に対する基板の位置ズレを低減させることができる。
【実施例4】
【0030】
図10、実施例1のワイヤ導体配線手法において、ワイヤとワイヤが重なり合う部分の基材2に穴部12を設け、ワイヤとワイヤが重なり合う部分がくるように配線したものを、図11に実施例2のワイヤ導体配線手法において、ワイヤとワイヤが重なり合う部分の基材2に凹部11を設け配線したものを示す。ワイヤ導体4の重なる部分において、ワイヤ導体4の逃げを設けたことになり、後工程(表層のラミネート等)やワイヤ導体4と基板導体の熱溶着時に加わるワイヤ導体交点へのストレスを低減させることができ、ワイヤ断線、不都合なワイヤ同士の導通等を抑止することができる。
【符号の説明】
【0031】
1・・・基板
2・・・基材
3・・・貫通穴
4・・・ワイヤ導体
5・・・接合パッド
6・・・ICチップ
7・・・描画ヘッド
8・・・熱可塑性樹脂
9・・・熱圧着ヘッド
10・・・熱圧着部
11・・・凹部
12・・・穴部
13・・・アンテナ
14・・・ICスリット
15・・・貫通穴凸部
【技術分野】
【0001】
本発明は非接触型ICカード及びその製造方法に係り、特にIC基板モジュールと外部のデータ処理部との間での情報交換に巻き線アンテナを利用して、電磁誘導方式にて行なう非接触型ICカードにおいて、前記巻き線アンテナをエナメル線等のワイヤ導体をプラステック基材に描画形成すると共に、前記ICパッケージとの接続とIC基板モジュールの支持・固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、ICカードと外部機器との接続方法には、接触型と非接触型の2種類があり、非接触型では、内部にアンテナが設けられたICカードが使用される。このような非接触型ICカードが外部機器に装着されるか、またはICカードが外部機器に近接されると、非接触型ICカードと外部機器との間で電源供給及びデータの授受が行なわれる。
【0003】
非接触ICカードは、基材、IC基板モジュール、巻き線アンテナより構成され、IC基板モジュール及び巻き線アンテナは基材に配設され、IC基板モジュールは、接着材を用いて基材に固定されている。
IC基板モジュールは、一対の端子電極を有しており、端子電極には巻き線アンテナが熱圧着により接続される。
【0004】
ワイヤ導体は、ワイヤを送出しながら、加熱により基材面に塗布された熱可塑性樹脂を溶融させることが可能な描画ヘッドにより前記基材面に描画・固定される。ワイヤ導体を接続させるための方法としてワイヤ導体を描画する基材に嵌め込まれたチップユニットを横断する形でワイヤ導体が描画され、チップユニットの端子とワイヤ導体が圧着され、物理的かつ電気的に接続される。
【0005】
巻き線タグ用基板の現行仕様では、基板又はモジュールの導体部と、それを嵌め込む穴を有する基材上に描画されたワイヤ導体とは熱圧着により、互いに物理的かつ電気的に接続され、基板又はモジュールと基材はワイヤ導体を介して固定される。
【0006】
現行仕様においては、基板を基材に対して固定するワイヤ導体の支持部は4箇所しかなく、熱圧着後基板又はモジュールに外力が加えられた際にワイヤ導体が断線する可能性がある。特に基板又はモジュール側から見て、アンテナコイル側のワイヤ導体による支持部が断線すると、ICを実装してもR/Wとの通信ができなくなってしまう。
【0007】
しかしながら、単にチップユニット(IC実装済の基板モジュールも含む)を、ワイヤ導体を描画する基材に設けられた貫通穴若しくは凹部に嵌め込み、チップユニットに設けられたワイヤ導体との接続端子上を横断する形で前記ワイヤ導体を描画し、基板と圧着・導通させることを目的としているが、基板又はモジュールと基材の支持・固定箇所の信頼性向上に関しては特に述べられていない(特許文献1)。
【0008】
基材と基板との支持・固定部の強度を向上させ、信頼性を向上するためには、パッドを横切る配線の全てをパッドに接続させる事が望ましいが、特許文献1においては端部の配線以外を接続してしまうと、コイルの機能を果たさなくなってしまうため、貫通穴を横断するワイヤ導体の中で端部の配線のみ熱圧着する為、強度の向上には寄与しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許3721520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
貫通穴を設けた基材に基板またはモジュール基板を嵌め込こみ、前記基板またはモジュール基板が嵌め込こまれ基材に、ワイヤ導体によりコイル状若しくはダイポール形状のアンテナが描画されたインレットにおいて、前記基材と基板との支持・固定部の強度を向上させ、信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、裏面と表面のどちらか一方の面に熱可塑性樹脂が塗布された基材に貫通穴を設け、貫通穴に、外部導体を接続するための左右の接合パッドと、ICチップを実装するための接合パッドを含む、2つの領域に分割したICスリット、が設けられた実装部を有する基板あるいは基板モジュールを嵌め込み、基材にワイヤ導体をコイル状もしくはダイポール形状のアンテナとして描画し、アンテナとICチップとの接続は、貫通穴を繰り返し横断するように基板の両接合パッド上にそれぞれワイヤ導体を描画し、ワイヤ導体を熱圧着ヘッドにより、接合パッド上に物理的・電気的に接続させることを特徴とするワイヤ導体の描画方法である。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、貫通穴の横断を、貫通穴と各接合パッドとの成す3辺を跨いで実施することを特徴とする請求項1に記載のワイヤ導体の描画方法である。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、基板モジュールの2辺の、左右の接合パッドの中央部に凹部を設け、凹部に嵌合する凸部を貫通穴に設け、凸部を跨ぐように貫通穴を横断することを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤ導体の描画方法である。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、描画したワイヤ導体が基板上で重なる場合、重なり部分の基板に凹部が設けられるか又は接合パッドのパターンが欠如し、基材上で重なる場合、重なり部分の基材の表面を凹状にエンボス加工していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のワイヤ導体の描画方法である。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、裏面と表面のどちらか一方の面に熱可塑性樹脂が塗布された基材に貫通穴が設けられ、貫通穴に、外部導体を接続するための左右の接合パッドと、ICチップを実装するための接合パッドを含む、2つの領域に分割されたICスリット、が設けられた実装部を有する基板あるいは基板モジュールが嵌め込こまれ、基材にワイヤ導体をコイル状もしくはダイポール形状のアンテナとして描画され、アンテナとICチップとの接続が、貫通穴を繰り返し横断するように基板の両接合パッド上にそれぞれワイヤ導体が描画され、ワイヤ導体が熱圧着ヘッドにより、接合パッド上に物理的・電気的に接続させれていることを特徴とするインレットである。
【0016】
また、請求項6に記載の発明は、ワイヤ導体による描画における貫通穴の横断が、貫通穴と各接合パッドとの成す3辺を跨いで実施されていることを特徴とする請求項5に記載のインレットである。
【0017】
また、請求項7に記載の発明は、基板モジュールの2辺の、左右の接合パッドの中央部に凹部が設けられ、凹部に嵌合する凸部が貫通穴に設けられ、ワイヤ導体による描画が凸部を跨ぐように貫通穴を横断していることを特徴とする請求項5または6に記載のインレットである。
【0018】
また、請求項8に記載の発明は、描画されたワイヤ導体が基板上で重なっている場合、
重なっている部分の基板に凹部が設けられているか又は接合パッドのパターンが欠如し、基材上で重なっている場合、重なっている部分の基材の表面が凹状にエンボス加工されていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のインレットである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の基材1および基材1に嵌め込まれた基板2に描画されるワイヤ導体4の描画方法により、板が可動する方向がなくなり、板が動くことでワイヤに加わる繰り返し応力を減少でき、アンテナ13と基板1間の導通を保つワイヤ導体4に加わるストレスを低減し通信不良が発生しにくくすることができ、さらに表層のラミネート工程やワイヤ導体4と基板導体の熱溶着工程時に加わるワイヤ導体4との交点へのストレスを低減させることができ、ワイヤ断線、不都合なワイヤ同士の導通等を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】貫通穴が設けられた基材に、ICモジュール基板を嵌め込み、ワイヤー描画される巻き線タグインレットを示した概念図である。
【図2】図1に示したワイヤー描画される巻き線タグインレットの断面概念図である。
【図3】本発明におけるワイヤー描画を示した概念図である。
【図4】本発明におけるワイヤー描画後の、ワイヤ導体・基板熱圧着を示した概念図である。
【図5】ワイヤー描画された巻き線タグインレットの一例写真
【図6】本発明のワイヤ導体描画を貫通穴に対し2回横断してワイヤ導体描画されたインレット示した概念図である。
【図7】本発明のワイヤ導体描画を貫通穴に対し3回横断してワイヤ導体描画されたインレット示した概念図である。
【図8】本発明のワイヤ導体描画において、貫通穴の4辺を跨ぐ形でワイヤ描画されたインレットを示した概念図である。
【図9】本発明のワイヤ導体描画において、貫通穴の対向する長辺部に凸部を設け、貫通穴の4辺を跨ぐ形でワイヤ描画されたインレットを示した概念図である。
【図10】本発明のワイヤ導体描画において、ワイヤ導体配線とワイヤ導体配線が重なり合う部分の基材に凹みエンボス加工が施されたインレットを示した概念図である。
【図11】本発明のワイヤ導体描画において、ワイヤ導体配線とワイヤ導体配線が重なり合う部分の基板に穴加工が施されたインレットを示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明を実施するための形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明のインレットの一例を示した概念図である。図で熱可塑性樹脂が塗布されているPET、PEN、ポリイミド、紙等の基材2に貫通穴を設け、その貫通穴3に厚みが0.3mm以下のFR−4、ポリイミド、PET、PENに代表される樹脂をベースとする基板1が嵌め込まれている。裏面と表面の少なくともどちらか又は両面にCu、Al等の導体層を設け、左右端に銅ワイヤ等の外部導体を接続するための接合パッド5をフォトリソ法等により形成してある。
【0023】
図2は、図1で示したICモジュールが嵌め込まれた基材1の断面図を示す。スリットを形成させたパッドにはICチップ6を搭載し、ワイヤ導体4により導通すると共に、ワイヤ導体4は基材2上の熱可塑性樹脂に溶融接着し固定される。
【0024】
図3はワイヤ導体4の描画イメージであり、加熱された状態で描画される為、基材1とは熱可塑性樹脂を溶かし接着し、接合パッド5上に設置される。更に図4に示す様に、熱圧着ヘッド9により、ワイヤ導体4と基板1の接合パッド5部が熱圧着され導通され、図
5のようなインレットが得られる。
【実施例1】
【0025】
銅箔が積層された、厚みが0.17mm厚みの樹脂基板(FR−4:難燃性のガラス布基材エポキシ樹脂)をフォトリソ法を用いて、ICスリット14により左右に分割した領域を設け、左右領域に銅ワイヤ導体4を接続するための接合パッド5とICチップ6を実装するための実装部形成し、次に熱可塑性樹脂を塗布した0.2mm厚みの上質紙からなる基材2に貫通穴3を設け、その貫通穴3に前記樹脂基板1を嵌め込む、続いて0.1mmφのワイヤ導体4をダイポール形状に設けると共に、接続パッド5に描画する。更に基材上に描画されたワイヤ導体4と接合パッド5は熱圧着により物理的かつ電気的に接続され、基板1又はモジュールと基材2はワイヤ導体4を介して固定される。
【0026】
図6は本発明におけるワイヤ導体4と接合パッド5との熱圧着の工程を示しており、ワイヤ導体4を繰り返し横断させ、配線を2重にして接合したものを、図7は配線を3重にして接合したものを示している。その後熱圧着ヘッド9より加熱・圧着することにより、ワイヤ導体4と接合パッド5は電気的に接続すると共に、物理的にも固定される。
【0027】
基板1と基材2を固定するワイヤ導体4支持部において、特にアンテナ部と基板間の導通を保たたれ、ワイヤ導体4にかかる応力は隣接する導体に分散するため、ICチップ6を基板1に実装した後において外力による断線に伴う、通信不良が発生しにくくなる。特にアンテナ部と基板間の導通を保つワイヤ導体4の両脇又は少なくとも基板中心側から見て外側に隣接するワイヤ導体4を配線し、これらのワイヤ導体4を基板1とワイヤ導体4と一括して熱圧着することで、他の導体よりもアンテナ部と基板間の導通を保つワイヤ導体4に加わるストレスを低減し、ワイヤ断線4に伴う通信不良が発生しにくくすることができる。
【実施例2】
【0028】
図8に貫通穴3を横断するワイヤ導体4を貫通穴内形又は基板外形の最低でも3辺以上を跨ぐ形で描画したものを示す。2回は貫通穴3を横断することになり、ワイヤ導体4は熱圧着ヘッド9によって一括して基板導体に設けられた同一の接合パッド5上に物理的・電気的に接続される。従来の接合では、ワイヤ配線4に対して直角の方向に基板1が可動してしまうが、本発明の描画方法により、基板1が可動する方向がなくなり、板が動くことでワイヤに加わる繰り返し応力を減少できるようになり、ワイヤ断線リスクを低減させることができる。
【実施例3】
【0029】
図9に、実施例2の描画方法を用い、さらに基板1の長辺側に凹部11を設けると共にそれに対応する貫通穴凸部を基板設置用穴に設け、少なくともこの凸部を経由してワイヤ導体4が配線したものを示す。本方式により基板1を跨ぐワイヤ導体4の長さを減らすことができ、ワイヤ導体4と基板1の熱圧着後においてワイヤ伸び等に起因する、基板設置用穴に対する基板の位置ズレを低減させることができる。
【実施例4】
【0030】
図10、実施例1のワイヤ導体配線手法において、ワイヤとワイヤが重なり合う部分の基材2に穴部12を設け、ワイヤとワイヤが重なり合う部分がくるように配線したものを、図11に実施例2のワイヤ導体配線手法において、ワイヤとワイヤが重なり合う部分の基材2に凹部11を設け配線したものを示す。ワイヤ導体4の重なる部分において、ワイヤ導体4の逃げを設けたことになり、後工程(表層のラミネート等)やワイヤ導体4と基板導体の熱溶着時に加わるワイヤ導体交点へのストレスを低減させることができ、ワイヤ断線、不都合なワイヤ同士の導通等を抑止することができる。
【符号の説明】
【0031】
1・・・基板
2・・・基材
3・・・貫通穴
4・・・ワイヤ導体
5・・・接合パッド
6・・・ICチップ
7・・・描画ヘッド
8・・・熱可塑性樹脂
9・・・熱圧着ヘッド
10・・・熱圧着部
11・・・凹部
12・・・穴部
13・・・アンテナ
14・・・ICスリット
15・・・貫通穴凸部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面と表面のどちらか一方の面に熱可塑性樹脂が塗布された基材に貫通穴を設け、貫通穴に、外部導体を接続するための左右の接合パッドと、ICチップを実装するための接合パッドを含む、2つの領域に分割したICスリット、が設けられた実装部を有する基板あるいは基板モジュールを嵌め込み、基材にワイヤ導体をコイル状もしくはダイポール形状のアンテナとして描画し、アンテナとICチップとの接続は、貫通穴を繰り返し横断するように基板の両接合パッド上にそれぞれワイヤ導体を描画し、ワイヤ導体を熱圧着ヘッドにより、接合パッド上に物理的・電気的に接続させることを特徴とするワイヤ導体の描画方法。
【請求項2】
貫通穴の横断を、貫通穴と各接合パッドとの成す3辺を跨いで実施することを特徴とする請求項1に記載のワイヤ導体の描画方法。
【請求項3】
基板モジュールの2辺の、左右の接合パッドの中央部に凹部を設け、凹部に嵌合する凸部を貫通穴に設け、凸部を跨ぐように貫通穴を横断することを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤ導体の描画方法。
【請求項4】
描画したワイヤ導体が基板上で重なる場合、重なり部分の基板に凹部が設けられるか又は接合パッドのパターンが欠如し、基材上で重なる場合、重なり部分の基材の表面を凹状にエンボス加工していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のワイヤ導体の描画方法。
【請求項5】
裏面と表面のどちらか一方の面に熱可塑性樹脂が塗布された基材に貫通穴が設けられ、貫通穴に、外部導体を接続するための左右の接合パッドと、ICチップを実装するための接合パッドを含む、2つの領域に分割されたICスリット、が設けられた実装部を有する基板あるいは基板モジュールが嵌め込こまれ、基材にワイヤ導体をコイル状もしくはダイポール形状のアンテナとして描画され、アンテナとICチップとの接続が、貫通穴を繰り返し横断するように基板の両接合パッド上にそれぞれワイヤ導体が描画され、ワイヤ導体が熱圧着ヘッドにより、接合パッド上に物理的・電気的に接続させれていることを特徴とするインレット。
【請求項6】
ワイヤ導体による描画における貫通穴の横断が、貫通穴と各接合パッドとの成す3辺を跨いで実施されていることを特徴とする請求項5に記載のインレット。
【請求項7】
基板モジュールの2辺の、左右の接合パッドの中央部に凹部が設けられ、凹部に嵌合する凸部が貫通穴に設けられ、ワイヤ導体による描画が凸部を跨ぐように貫通穴を横断していることを特徴とする請求項5または6に記載のインレット。
【請求項8】
描画されたワイヤ導体が基板上で重なっている場合、重なっている部分の基板に凹部が設けられているか又は接合パッドのパターンが欠如し、基材上で重なっている場合、重なっている部分の基材の表面が凹状にエンボス加工されていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のインレット。
【請求項1】
裏面と表面のどちらか一方の面に熱可塑性樹脂が塗布された基材に貫通穴を設け、貫通穴に、外部導体を接続するための左右の接合パッドと、ICチップを実装するための接合パッドを含む、2つの領域に分割したICスリット、が設けられた実装部を有する基板あるいは基板モジュールを嵌め込み、基材にワイヤ導体をコイル状もしくはダイポール形状のアンテナとして描画し、アンテナとICチップとの接続は、貫通穴を繰り返し横断するように基板の両接合パッド上にそれぞれワイヤ導体を描画し、ワイヤ導体を熱圧着ヘッドにより、接合パッド上に物理的・電気的に接続させることを特徴とするワイヤ導体の描画方法。
【請求項2】
貫通穴の横断を、貫通穴と各接合パッドとの成す3辺を跨いで実施することを特徴とする請求項1に記載のワイヤ導体の描画方法。
【請求項3】
基板モジュールの2辺の、左右の接合パッドの中央部に凹部を設け、凹部に嵌合する凸部を貫通穴に設け、凸部を跨ぐように貫通穴を横断することを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤ導体の描画方法。
【請求項4】
描画したワイヤ導体が基板上で重なる場合、重なり部分の基板に凹部が設けられるか又は接合パッドのパターンが欠如し、基材上で重なる場合、重なり部分の基材の表面を凹状にエンボス加工していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のワイヤ導体の描画方法。
【請求項5】
裏面と表面のどちらか一方の面に熱可塑性樹脂が塗布された基材に貫通穴が設けられ、貫通穴に、外部導体を接続するための左右の接合パッドと、ICチップを実装するための接合パッドを含む、2つの領域に分割されたICスリット、が設けられた実装部を有する基板あるいは基板モジュールが嵌め込こまれ、基材にワイヤ導体をコイル状もしくはダイポール形状のアンテナとして描画され、アンテナとICチップとの接続が、貫通穴を繰り返し横断するように基板の両接合パッド上にそれぞれワイヤ導体が描画され、ワイヤ導体が熱圧着ヘッドにより、接合パッド上に物理的・電気的に接続させれていることを特徴とするインレット。
【請求項6】
ワイヤ導体による描画における貫通穴の横断が、貫通穴と各接合パッドとの成す3辺を跨いで実施されていることを特徴とする請求項5に記載のインレット。
【請求項7】
基板モジュールの2辺の、左右の接合パッドの中央部に凹部が設けられ、凹部に嵌合する凸部が貫通穴に設けられ、ワイヤ導体による描画が凸部を跨ぐように貫通穴を横断していることを特徴とする請求項5または6に記載のインレット。
【請求項8】
描画されたワイヤ導体が基板上で重なっている場合、重なっている部分の基板に凹部が設けられているか又は接合パッドのパターンが欠如し、基材上で重なっている場合、重なっている部分の基材の表面が凹状にエンボス加工されていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のインレット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−103831(P2012−103831A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250604(P2010−250604)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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