説明

ワクチン

本発明は、ヒトのメタニューモウィルス(hMPV)、パラインフルエンザウイルス(PIV)及び呼吸器多核体ウイルス(RSV)から選択される少なくとも2つのパラミクソウイルスのFタンパク質抗原を含んでなる免疫原性組成物を提供する。開示される組成物の抗原は組換えFタンパク質ポリペプチドであり、それは三量体の前融合立体構造を安定化するために修飾されている。該抗原をコードする核酸も、その製造方法及び使用方法と共に提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その開示が参照によって本明細書に組み入れられる、2009年6月24日に出願された米国特許仮出願番号61/219,958の出願日の利益を主張する。
【0002】
本特許文書の開示の一部には著作権防御の対象となるものが含まれる。著作権の所有者は、米国特許商標局の特許ファイル又は記録に出現するような特許文書又は特許開示のファクシミリ再生に反対するものではないが、どんなものであれ、著作権をすべて保有する。
【背景技術】
【0003】
本開示は免疫学の分野に関する。さらに詳しくは、本開示は、下部気道感染の原因を統制することによって感染及び/又は感染の症状を抑える免疫応答を誘発する組成物及び方法に関する。
【0004】
ヒトの呼吸器多核体ウイルス(RSV)、ヒトのメタニューモウィルス(hMPV)及びパラインフルエンザウイルス(PIV1〜4)は、1歳未満の幼児における下部気道感染(LRI)の最も一般的な原因である。これらのウイルスが原因となる疾患のスペクトルには、鼻炎及び耳炎から肺炎及び細気管支炎までの幅広い呼吸器症状が含まれ、後者の2疾患は、考慮すべき罹患率及び死亡率と関連している。
【0005】
ヒトの呼吸器多核体ウイルス(RSV)は、Paramyxoviridae科、Pneumovirinae亜科、Pneumovirus属の病原性ウイルスである。RSVのゲノムは、11のタンパク質をコードするマイナス鎖RNA分子である。ウイルスのNタンパク質とのRNAゲノムの堅い会合によってウイルスのエンベロープ内で包まれるヌクレオカプシドが形成される。G糖タンパク質の抗原性に基づいて、ヒトRSV株の2つの群、A群及びB群が記載されている。
【0006】
ヒトの呼吸器多核体ウイルス(RSV)に似たヒトのメタニューモウィルス(hMPV)は、Paramyxoviridae科のPneumovirinae亜科に分類される。しかしながら、hMPVは、鳥類のメタニューモウィルス(以前は、七面鳥鼻気管炎ウイルスと呼ばれた)に遺伝的には最も密接に関係する。これら2つのウイルスはMetapneumovirus属に分類され、hMPVはこの属では初めてヒトでの疾患の原因となった。hMPVはオランダの研究者によって2001年に最初に記載され、以来、南極大陸を除いてあらゆる大陸での国々で特定されている。hMPVはマイナス単鎖のRNA内包型ウイルスである。今日までhMPVの2つの主な群(A及びB)及び4つの亜群が特定されている。
【0007】
ヒトのパラインフルエンザウイルスは、幼児の下部気道疾患の原因として呼吸器多核体ウイルス(RSV)に次ぐ位置にあるパラミクソウイルスの一群である。ヒトのパラインフルエンザウイルスは、Paramyxovirinae科、Respirovirus属に分類される。RSVと同様に、ヒトのパラインフルエンザウイルス(HPIV)は、生涯にわたって何回も感染を起こすことができる。これらの感染は普通、上部気道の病気(たとえば、風邪又は喉の痛み)によって顕在化する。HPIVはまた、特に高齢者及び欠陥のある免疫系を持つ患者の間で反復感染(肺炎、気管支炎、細気管支炎を含んでなる)によって重篤な下部気道疾患を引き起こすこともできる。4つのHPIV(血清型1〜4)のそれぞれは、異なった臨床的な及び疫学的な特徴を有する。HPIV−1及びHPIV−2の最も独特の特徴は、クループ(咽頭気管気管支炎)である。HPIV−3は、細気管支炎及び肺炎を含んでなる重篤な下部呼吸器疾患に関連することが最も多い。HPIV−4は重篤な疾患に関連することは少ない。
【0008】
健常な集団及びリスクのある集団で耐久性のある防御的免疫応答を産生する、これら呼吸器ウイルスに対する安全で且つ有効なワクチンを生成する尽力にて様々なアプローチが試みられている。しかしながら、これらのウイルスが原因となる下部呼吸器感染(LRI)を含んでなる感染を防ぐ及び/又は疾患を軽減する若しくは防ぐ目的にてワクチンとして安全で且つ有効であることが分かっていると今日評価されている候補はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、ヒトにおいて下部気道感染の先導的な原因ウイルスから選択される少なくとも2つのパラミクソウイルスFタンパク質抗原を含んでなる免疫原性組成物に関する。本明細書で開示される免疫原性組成物は、メタニューモウィルス(hMPV)、パラインフルエンザウイルス(PIV)及び呼吸器多核体ウイルス(RSV)から選択される少なくとも2つのFタンパク質抗原を含んでなる。組み合わせにおける抗原は、三量体の前融合立体構成を安定化するように修飾されている組換えFタンパク質である。また開示されるのは、組換え抗原をコードする核酸及びこれらのウイルスの少なくとも2つに特異的な免疫応答を誘発するために、たとえば、感染及び/又は感染が原因で生じる疾患に対してこれらの剤で防御するために抗原を産生し、使用する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1Aは、RSVのFタンパク質の構造的特徴を強調する模式図であり、図1Bは、例となるRAVの前融合F(PreF)抗原の模式図である。
【図2】RSV、hMPV及びPIVの例となるFタンパク質ポリペプチド間の配列配置を示す図である。
【図3】図3Aは、hMPVの例となる株の同系性を説明する系統樹を示す図であり、図3Bは、%同一性の対ごとの比較を提供する要約表を示す図である。
【図4】図4Aは、PIV−3の例となる株の同系性を説明する系統樹を示す図であり、図4Bは、%同一性の対ごとの比較を提供する要約表を示す図である。
【図5】図5Aは、RSVの例となる株の同系性を説明する系統樹を示す図であり、図5Bは、%同一性の対ごとの比較を提供する要約表を示す図である。
【図6】図6A及び図6Bは、PreF抗原によって引き出されたRSVに特異的なIgG及び中和抗体の力価を示す棒グラフである。
【図7】マウスにおいてRSVのPreF抗体によって提供された負荷に対する防御を示すグラフである。
【図8】図8A及び図8Bは、パラミクソウイルスFタンパク質抗原の組み合わせを含んでなる免疫原性組成物の成分に特異的なIgG及び中和抗体の力価を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
序論
幼児や小児における細気管支炎や肺炎のような重篤な兆候を含んでなる下部気道感染の3つの主要な原因は、大きい順に、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、ヒトのメタニューモウィルス(hMPV)、及びパラインフルエンザウイルス(PIV)ファミリーのメンバーである。本開示は、パラミクソウイルスファミリーのウイルス病原体に対して防御し、免疫スケジュールの最適化を提供して日常の免疫付与に匹敵するワクチン接種スケジュールに従って乳児の防御を増強する組み合わせワクチンを記載する。
【0012】
PCT/CA2008/002277は、三量体の前融合立体構成を安定化するように修飾されている組換えRSVのFタンパク質を含んでなる新規の抗原の設計、産生及び利用を開示している。開示された組換え抗原は、優れた免疫原性を示し、RSVの感染及び/又は疾患に対する防御のための免疫原性組成物(たとえば、ワクチン)として特に好ましく採用される。また開示されるのは、組換え抗原をコードする核酸、抗原を含有する免疫原性組成物、抗原を産生し、使用するための方法である。本開示は、これらの教示をヒトの呼吸器の感染及び疾患に関わるそのほかのパラミクソウイルスに拡大する。さらに具体的には、本開示は、三量体の前融合立体構成で同様に安定化される組換えのhMPV及びPIV(たとえば、PIV−3)のタンパク質を提供する。これらの抗原は、2以上のパラミクソウイルスによる感染の影響に対して防御する又は影響を軽減する免疫応答を誘発するために抗原の組み合わせを含有する組成物で特に有用である。
【0013】
本開示の一態様は、ヒトのメタニューモウィルス(hMPV)、パラインフルエンザウイルス(PIV)及び呼吸器多核体ウイルス(RSV)の群から選択される少なくとも2つのパラミクソウイルスFタンパク質抗原を含んでなる免疫原性組成物に関する。パラミクソウイルスFタンパク質抗原は、パラミクソウイルスFタンパク質ポリペプチドのF2ドメイン及びF1ドメインを含んでなり、膜貫通ドメイン(たとえば、可溶性)を欠き、ヘテロ三量体化ドメインによって三量体の前融合立体構成で安定化される組換えFタンパク質ポリペプチドである。たとえば、ヘテロ三量体化ドメインは、コイルド/コイルドメイン、たとえば、イソロイシンジッパーを含んでなることができ、配列番号15のアミノ酸配列によって例示される。発現の際、Fタンパク質ポリペプチドは、多量体、好ましくは三量体を形成する。
【0014】
Fタンパク質ポリペプチドは通常、F2ドメイン及びF1ドメインを含んでなり、介在フリン切断部位を含まない。プロセッシングの間及び成熟形態にてF2ドメイン及びF1ドメインが切断されないように、Fタンパク質ポリペプチドはF2ドメイン及びF1ドメインの間に未変化の融合ペプチドを保持する。通常、ヘテロ三量体化ドメインは、F1ドメインのC末端に位置する(たとえば、天然に存在するパラミクソウイルスFタンパク質にて膜貫通ドメインが存在する位置のN末端の約20アミノ酸の代わりに又はその範囲内で)。
【0015】
通常、Fタンパク質ポリペプチドはシグナルペプチド(成熟抗原から切断され得る)を含んでなる。シグナルペプチドは、同一のパラミクソウイルスFタンパク質から、異なったパラミクソウイルスFタンパク質から、又は全く異なったタンパク質からであり得る。たとえば、シグナルペプチドは、選択された宿主細胞での産生を促進するために熟練者の裁量で選択され得る。
【0016】
Fタンパク質ポリペプチドは、前融合立体構造を維持するように操作される三量体を安定して形成する。任意で、Fタンパク質ポリペプチドはまた、前融合立体構造の安定性を高める1以上の修飾も含んでなる。たとえば、好ましい修飾には、Fタンパク質の細胞外ドメイン(たとえば、HRA及び/又はHRB)の疎水性ドメインにおける親水性アミノ酸の置換又は付加;グリコシル化を変化させるアミノ酸の置換が挙げられる。任意で、Fタンパク質ポリペプチドは、ポリヒスチジン配列又はそのほかのタグを含んで精製を円滑にする。
【0017】
特定の実施形態では、免疫原性組成物はまた、少なくとも1つのパラミクソウイルスGタンパク質ポリペプチド又はその免疫原性断片も含んでなる。Gタンパク質ポリペプチドは、完全長の組換えGタンパク質、又は単離された免疫原性断片又はキメラ(若しくは「融合」)タンパク質(Fタンパク質ポリペプチド又は別の融合相手との)であリ得る。断片が選択される場合、断片は通常、少なくとも1つの免疫優勢エピトープ、たとえば、RSVのGタンパク質のアミノ酸184〜198を保持する。
【0018】
特定の実施形態では、免疫原性組成物は、2つのパラミクソウイルスFタンパク質抗原を含んでなる。たとえば、特定の一実施形態では、免疫原性組成物は、hMPVタンパク質に相当するFタンパク質ポリペプチド及びPIV(たとえば、PIV−3)に相当するFタンパク質ポリペプチドを含んでなる。他の実施形態では、免疫原性組成物は、hMPVのFタンパク質ポリペプチド又はPIVタンパク質ポリペプチド、又はhMPV及びPIVのタンパク質ポリペプチド双方との組み合わせでRSVのFタンパク質ポリペプチドを含んでなる。他の実施形態では、免疫原性組成物は、少なくとも2つのパラミクソウイルスFタンパク質抗原に加えて、少なくとも1つの追加の抗原を含んでなる。たとえば、RSV、hMPV及び/又はPIVに相当するFタンパク質ポリペプチドに加えて、免疫原性組成物は、たとえば、異なったRSV株に相当するFタンパク質ポリペプチドのような追加的なパラミクソウイルス抗原を含んでなることもできる。或いは、免疫原性組成物は、たとえば、組成物がPIV−3及びPIV−1の抗原を含んでなるように、異なった血清型のPIVに相当するFタンパク質ポリペプチドのような第2の(それ以上の)PIVのFタンパク質抗原を含んでなることができる。他の実施形態では、免疫原性組成物は、気道感染にも関与するインフルエンザ(オルソミクソウイルス)、アデノウイルス又はSARSのようなウイルスからの第3の又はそれに続く抗原を含んでなる。たとえば、免疫原性組成物は、hMPVのFタンパク質ポリペプチド及びPIVタンパク質ポリペプチド及び/又はRSVのFタンパク質ポリペプチドに加えて、インフルエンザHA抗原を含んでなることができる。
【0019】
特定の好ましい実施形態では、免疫原性組成物は、少なくとも1つのキャリア又は賦形剤(たとえば、緩衝液)も含んでなる。免疫原性組成物は好ましくは、アジュバント、好ましくは、Th1優位の免疫応答を誘発するアジュバントと共に製剤化される。アジュバントは通常、標的集団、たとえば、新生児及び乳児において過度の反応誘発性をもたらさずに防御的な免疫応答を高めるように選択される。
【0020】
対象又は対象の集団に投与する場合、本明細書で開示される免疫原性組成物は、hMPV、PIV及びRSVの2以上、及び任意で1以上の追加の呼吸器病原体による感染、それらが原因で生じる病理反応を軽減し、又は防ぐ。従って、本開示は、本明細書で開示される免疫原性組成物を対象(たとえば、ヒト対象)に投与することによってhMPV、PIV及びRSVの1以上に対する免疫応答を誘発する方法を提供する。開示される免疫原性組成物の投与は、hMPV、PIV及びRSVの少なくとも2つによる感染を軽減する又は予防するTh1優位の免疫応答を好都合に誘発する。従って、本開示は、hMPV、PIV及びRSVの2つによる感染を治療する(たとえば、予防する)ための医薬の調製におけるパラミクソウイルスFタンパク質抗原の使用に関する。たとえば、hMPV、PIV及びRSVの1以上が原因で生じる感染を予防的に治療する目的での医薬の調製にてFタンパク質抗原(又は核酸)が使用される。
【0021】
本開示の別の態様は、本明細書で開示されるパラミクソウイルスFタンパク質抗原をコードするポリヌクレオチド配列を含んでなる組換え核酸に関する。そのような核酸は、選択される宿主での発現についてコドンが最適化されることが多い。核酸は、たとえば、原核細胞ベクター、真核細胞ベクター、発現ベクターのようなベクターに挿入することができる。特定の実施形態では、核酸は宿主細胞に導入される。宿主細胞は好都合には、細菌細胞、昆虫細胞、植物細胞及び哺乳類細胞の中から選択される。
用語
【0022】
特に説明されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語はすべて本開示が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。分子生物学での一般用語の定義は、Benjamin Lewin,Genes V,published by Oxford University Press,1994(ISBN 0−19−854287−9);Kendrewら(編),The Encyclopedia of Molecular Biology,published by Blackwell Science Ltd.,1994(ISBN 0−632−02182−9);and Robert A.Meyers(編),Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference,published by VCH Publishers,Inc.,1995(ISBN 1−56081−569−8)に見い出すことができる。
【0023】
単数用語「a」、「an」及び「the」は文脈が明瞭に示さない限り、複数の指示対象を含んでなる。同様に、語「又は」は、文脈が明瞭に示さない限り、「及び」を含んでなる。用語「複数の」は、2以上を指す。核酸又はポリペプチドに対して与えられる塩基のサイズ、アミノ酸のサイズはすべて、及び分子量又は分子質量はすべて近似であり、記載に対して提供される。さらに、抗原のような物質の濃度又はレベルに関して与えられる数値限界は近似であることが意図される。従って、濃度が少なくとも(たとえば)、200pgであると示される場合、濃度は少なくともおよそ(又は約又は〜)200pgであると理解される。
【0024】
本明細書で記載されるものに類似の又は同等の方法及び物質が本開示の実践又は試験で使用され得るが、好適な方法及び物質は以下に記載される。用語「comprises」は「includes」を意味する。従って、文脈が必要としない限り、用語「comprises」及びその変異体「comprise」及び「comprising」は、言及された化合物若しくは組成物(たとえば、核酸、ポリペプチド、抗原)若しくは工程、又は化合物若しくは工程の群の包含を暗示するように理解されるが、他の化合物、組成物、工程、又はそれらの群の排除を暗示しないように理解される。略記「e.g.」はラテン語のexempli gratiaに由来し、本明細書では非限定例を指すように使用される。従って、略記「e.g.」は用語「たとえば」と同義である。
【0025】
本開示の種々の実施形態の概説を円滑にするために、以下の用語の説明が提供される。本開示の文脈で追加の用語及び説明が提供され得る。
【0026】
用語「Fタンパク質」又は「融合タンパク質」又は「Fタンパク質ポリペプチド」又は「融合タンパク質ポリペプチド」は、パラミクソウイルスの融合タンパク質ポリペプチドのアミノ酸配列の全部又は一部を有するポリペプチド又はタンパク質を指す。同様に用語「Gタンパク質」又は「Gタンパク質ポリペプチド」は、パラミクソウイルスの連結タンパク質ポリペプチドのアミノ酸配列の全部又は一部を有するポリペプチド又はタンパク質を指す。多数のパラミクソウイルスの融合及び連結タンパク質ポリペプチドが記載されており、当業者に既知である。WO2008114149は、本開示の提出日時点で公的に利用可能な例となるRSVのF及びGタンパク質の変異体(たとえば、天然に存在する変異体)を提示している。hMPVのFタンパク質の例となる株は、hMVP配列の開示について参照によって本明細書に組み入れられ、付属1として本明細書に添付されるBoivinら、Emerg.Infect.Dis.10:1154−1157(2004)でカタログ化されている。例となるPIV(たとえば、PIV−3)のFタンパク質の配列は、PIV配列の開示について参照によって本明細書に組み入れられ、付属2として本明細書に添付されるPrinoskiら、Virus Research 22:55−69(1991)に提供されている。これらの参考文献のそれぞれは、例となるFタンパク質配列を開示する目的で、参照によって本明細書に組み入れられる。さらに、これらの配列の多くは、GenBankデータベース(2009年6月24日時点)にて公的に利用可能である。
【0027】
核酸又はポリペプチド(たとえば、パラミクソウイルスのF又はGのタンパク質の核酸又はポリペプチド又は類似体)を指す場合の「変異体」は、参照の核酸又はポリペプチドとは異なる核酸又はポリペプチドである。普通、変異体と参照の核酸又はポリペプチドとの間の差異は、指示対象に比べて比率的に少数の差異を構成する。
【0028】
ポリペプチド又はタンパク質のドメインは、ポリペプチド又はタンパク質の中で構造的に定義された要素である。たとえば、「三量体化ドメイン」は、ポリペプチドの三量体への集合を促進するポリペプチド内のアミノ酸配列である。たとえば、三量体化ドメインは他の三量体化ドメイン(同一の又は異なったアミノ酸配列を持つ追加のポリペプチドの)との会合を介して三量体への集合を促進することができる。用語は、そのようなペプチド又はポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを指すのにも使用される。
【0029】
用語「天然の」及び「天然に存在する」は、天然のままと同一状態で存在するたとえば、タンパク質、ポリペプチド、又は核酸のような要素を指す。すなわち、要素は人工的に修飾されていない。この開示の文脈で、たとえば、RSVの天然に存在する株又は単離体から得られるような、RSVタンパク質又はポリペプチドの多数の天然に存在する変異体があることが理解されるであろう。
【0030】
用語「ポリペプチド」は、モノマーがアミド結合を介して一緒に連結されるアミノ酸残基であるポリマーを指す。用語「ポリペプチド」又は「タンパク質」は本明細書で使用されるとき、アミノ酸配列を包含し、糖タンパク質のような修飾された配列を含んでなることが意図される。用語「ポリペプチド」は特に、組換え的に又は合成的に製造されるものと同様に天然に存在するタンパク質を網羅することが意図される。用語「断片」は、ポリペプチドに関してポリペプチドの一部(すなわち、部分列)を指す。用語「免疫原性の断片」は、完全長の参照のタンパク質又はポリペプチドの少なくとも1つの優勢な免疫原性のエピトープを保持するポリペプチドの断片を指す。ポリペプチド内の方向は、個々のアミノ酸のアミノ部分とカルボキシ部分の方向によって定義される、C末端方向に向かうN末端にて一般に言及される。ポリペプチドは、N末端又はアミノ末端からC又はカルボキシ末端に向かって翻訳される。
【0031】
「シグナルペプチド」は、たとえば、小胞体の膜に対して及びそれを介して新しく合成された分泌タンパク質又は膜タンパク質を指示する短いアミノ酸配列(たとえば、およそ18〜25アミノ酸の長さ)である。シグナルペプチドはポリペプチドのN末端に位置することが多いが、普遍的ではなく、タンパク質が膜を交差した後、シグナルペプチダーゼによって切断されることが多い。シグナル配列は通常、3つの一般的な特徴:N末端の極性塩基性領域(n−領域)、疎水性コア及び親水性c−領域を含有する。
【0032】
用語「ポリヌクレオチド」及び「核酸配列」は、少なくとも10塩基の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド又はいずれかのヌクレオチドの修飾された形態であり得る。該用語は、DNAの単鎖形態及び二本鎖形態を含んでなる。「単離されたポリヌクレオチド」によって、由来する生物の天然に存在するゲノムにおいて直接隣接する(5’末端の1つ及び3’末端の1つ)コーディング配列の双方と直接隣接しないポリヌクレオチドを意味する。一実施形態では、ポリヌクレオチドはポリペプチドをコードする。核酸の5’及び3’の方向は、個々のヌクレオチド単位の接続性を参照して定義され、デオキシリボース(又はリボース)糖鎖の炭素部分に従って指定される。ポリヌクレオチド配列の情報(コーディング)内容は5’から3’の方向で読み取られる。
【0033】
「組換え」核酸は、天然に存在しない配列を有し、又は配列の2つの分離した断片の人工的な組み合わせによって作製された配列を有するものである。この人工的な組み合わせは、化学的な合成によって、さらに一般的には、たとえば、遺伝子操作技法による核酸の単離された断片の人工的な操作によって達成することができる。「組換え」タンパク質は、たとえば、細菌細胞又は真核細胞のような宿主細胞に導入された非相同(たとえば、組換え)の核酸によってコードされるものである。核酸は、導入された核酸によってコードされるタンパク質を発現することが可能であるシグナルを有する発現ベクターに導入することができ、又は核酸は宿主細胞の染色体に統合することができる。
【0034】
用語「非相同の」は、核酸、ポリペプチド又は別の細胞成分に関して、通常天然に見つからない成分が存在する、及び/又は異なった供給源若しくは種を起源とする成分が存在することを示す。
【0035】
用語「精製」(たとえば、病原体又は病原体を含有する組成物に関して)は、望ましくない存在を組成物から取り除く工程を指す。精製は相対的な用語であり、微量な望ましくない成分のすべてが組成物から取り除かれることを必要としない。ワクチン生産の文脈では、精製は、たとえば、遠心、透析、イオン交換クロマトグラフィ、及びサイズ排除クロマトグラフィ、アフィニティ精製又は沈殿のような工程を含んでなる。従って、用語「精製される」は、絶対的な純度を必要とせず、むしろ、それは相対的な用語として意図される。従って、たとえば、精製された核酸の調製物は、一般的な環境、たとえば、細胞又は生化学的な反応器における核酸よりも特定のタンパク質が濃縮されるものである。実質的に純粋な核酸又はタンパク質は、所望の核酸が、調製物の全核酸含量の少なくとも50%を表すように精製することができる。特定の実施形態では、実質的に純粋な核酸は、調製物の全核酸含量の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%以上を表す。
【0036】
「単離された」生物構成成分(たとえば、核酸分子、タンパク質又は細胞小器官)は、構成成分、たとえば、そのほかの染色体の及び染色体外のDNA及びRNA、タンパク質及び細胞小器官が天然に存在する生物の細胞におけるそのほかの生物構成成分から実質的に分離され、又は精製されている。「単離された」核酸及びタンパク質は、標準の精製方法によって精製された核酸及びタンパク質を含んでなる。該用語はまた、宿主細胞における組換え発現によって調製される核酸及びタンパク質、並びに化学的に合成される核酸及びタンパク質も包含する。
【0037】
「抗原」は、動物に注射される、吸収される又はさもなければ導入される組成物を含んでなる、動物にて抗体の産生及び/又はT細胞反応を刺激することができる化合物、組成物又は物質である。用語「抗原」は、関連する抗原性エピトープすべてを含んでなる。用語「エピトープ」又は「抗原決定基」は、B細胞及び/又はT細胞が応答する抗原の部位を指す。「優勢な抗原性エピトープ」又は「優勢なエピトープ」は機能的に有意な宿主の免疫応答、たとえば、抗体反応又はT細胞反応が為されるエピトープである。従って、病原体に対する防御免疫応答に関して、優勢な抗原性エピトープは、宿主の免疫系によって認識されると病原体が原因で生じる疾患からの防御を生じる抗原性部分である。用語「T細胞エピトープ」は、適切なMHC分子に結合すると、T細胞によって(T細胞受容体を介して)特異的に結合されるエピトープを指す。「B細胞エピトープ」は、抗体(又はB細胞受容体分子)によって特異的に結合されるエピトープである。
【0038】
「アジュバント」は、非特異的に免疫応答を高める剤である。一般的なアジュバントには、抗原が吸着した鉱物(ミョウバン、水酸化アルミナム、リン酸アルミナム)の懸濁液;油中水及び水中油型(及びその変異体、二重エマルション及び逆エマルションを含んでなる)を含んでなるエマルション、リポ糖類、リポ多糖類、免疫賦活核酸(たとえば、CpGオリゴヌクレオチド)、リポソーム、Toll様受容体作動薬(特に、TLP2、TLR4、TLR7/8、及びTLR9の作動薬)、並びにそのような成分の種々の組み合わせが挙げられる。
【0039】
「免疫原性組成物」は、たとえば、hMPV、PIV(たとえば、PIV−3、PIV−1)及び/又はRSVのような病原体に対して特異的な免疫応答を誘発することが可能である、ヒト又は動物対象(たとえば、実験設定で)に投与するのに好適なものの組成物である。そのようなものとして、免疫原性組成物は、1以上の抗原(たとえば、ポリペプチド抗原)又は抗原性エピトープを含んでなる。免疫原性組成物はまた、たとえば、賦形剤、キャリア及び/又はアジュバントのような、免疫応答を誘発する又は高めることが可能である追加の1以上の成分を含んでなることができる。特定の例では、免疫原性組成物を投与して、病原体によって誘導される症状又は状態に対して対象を防御する免疫応答を誘発する。場合によっては、病原体が原因で生じる症状又は疾患は、病原体に対する対象の暴露に続く病原体(hMPV、PIV及び/又はRSV)の複製を阻害ずることによって防がれる(又は軽減される又は改善される)。本開示の文脈では、用語、免疫原性組成物は、病原体に対する予防的な又は緩和的な免疫応答を誘発する目的で対象又は対象の集団への投与を意図される組成物を包含することが理解されるであろう(すなわち、ワクチン組成物又はワクチン)。
【0040】
「免疫応答」は、免疫系の細胞、たとえば、B細胞、T細胞、又は単球の刺激への応答である。免疫応答は、抗原特異的な中和抗体のような特異的抗体の産生を生じるB細胞の応答であることができる。免疫応答は、たとえば、CD4応答又はCD8応答のようなT細胞の応答であることもできる。場合によっては、応答は特定の抗原に特異的である(すなわち、「抗原特異的応答」)。抗原が病原体に由来するのであれば、抗原特異的応答は、「病原体特異的応答」である。「防御免疫応答」は、病原体の有害な機能又は活性を抑え、病原体による感染を低減し、病原体による感染の結果生じる症状(死亡を含んでなる)を減らす免疫応答である。防御免疫応答は、たとえば、プラーク低減アッセイ若しくはELISA中和アッセイにおけるウイルス複製若しくはプラーク形成の阻害によって、又は生体内での病原体負荷に対する耐性を測定することによって測定することができる。
【0041】
「Th1」優位の免疫応答は、IL−2及びIFNγを産生するのでIL−2及びIFNγの分泌又は存在によるCD4ヘルパー細胞の存在を特徴とする。それに対して、「Th2」優位の免疫応答は、IL−4、IL−5及びIL−13を産生するCD4ヘルパー細胞の優勢を特徴とする。
【0042】
「免疫学的に有効な量」は、組成物又は組成物中の抗原に対して対象にて免疫応答を誘発するのに使用される組成物(通常、免疫原性組成物)の量である。一般に、所望の成績は、病原体に対して対象を防御することが可能である又はそれに寄与する抗原特異的(たとえば、病原体特異的)免疫応答の産生である。しかしながら、病原体に対する防御免疫応答を得ることは、免疫原性組成物の複数の投与を必要とし得る。従って、本開示の文脈では、用語、免疫学的に有効な量は、前の又は後に続く投与との組み合わせで防御免疫応答を達成することに寄与する小部分の用量を包含する。
【0043】
形容詞「薬学上許容可能な」は、指示対象が対象(たとえば、ヒト又は動物対象)への投与に好適であることを指す。E.W.Martin,Mack Publishing Co.,Easton,PAによるRemingtonのPharmaceutical Sciences、第15版(1975)は、免疫原性組成物を含んでなる、治療用及び/又は予防用の組成物の薬学送達に好適な組成物及び製剤(希釈剤を含んでなる)を記載している。
【0044】
用語「調節する」は、免疫応答のような応答に関して、応答の発症、程度、持続期間又は特徴を変える又は変化させることを意味する。免疫応答を調節する剤は、その投与に続く免疫応答の発症、程度、持続期間又は特徴の少なくとも1つを変える、又は参照剤に比べて発症、程度、持続期間又は特徴の少なくとも1つを変える。
【0045】
用語「軽減する」は、剤の投与に続いて応答又は状態が定量的に低下するならば、又は参照剤に比べて剤の投与に続いてそれが低下するのであれば、剤が応答又は状態を軽減するように、相対的な用語である。同様に用語「予防する」は、応答又は状態の少なくとも1つの特徴が除去される限り、剤が応答又は状態を完全に除去することを必ずしも意味しない。従って、病的応答、たとえば、ワクチンが増強するウイルス性疾患のような感染又は応答を軽減する又は予防する免疫原性組成物は、感染又は応答が、剤の非存在下での又は参照剤と比べた感染又は応答の、たとえば、少なくとも約50%、たとえば、少なくとも約70%、約80%、さらに約90%(すなわち、10%未満まで)測定上低下する限り、そのような感染又は応答を完全に除去することができるが、必ずしも完全には除去しない。
【0046】
「対象」は、生きている多細胞の脊椎生物である。本開示の文脈では、対象は、たとえば、非ヒト動物、たとえば、マウス、コットンラット又は非ヒト霊長類のような実験用対象であり得る。或いは、対象はヒト対象であり得る。
【0047】
PreF抗原
本来、パラミクソウイルスのFタンパク質は、F0と命名された単一のポリペプチド前駆体として発現される。生体内で、F0は、小胞体にてオリゴマー化され、フリンプロテアーゼによってタンパク分解処理を受けて、2つのジスルフィド結合断片からなるオリゴマーを生成する。RSVのFのF0前駆体が2つのフリン認識部位で切断されてpep27と命名された介在ペプチドを放出するのに対して、ほかのパラミクソウイルス(PIV及びhMPVのタンパク質を含んでなる)のFタンパク質は、単一部位で切断される。フリン切断によって生じる2つの断片の小さい方はF2と呼ばれ、F0前駆体のN末端を起源とする。大きい方のC末端F1断片は、24アミノ酸の細胞質尾部に隣接する疎水性アミノ酸の配列を介して膜にてFタンパク質を固定する。略記、F0、F1及びF2は科学文献では一般にF、F及びFと示されることが当業者によって認識されるであろう。
【0048】
3つのF2−F1二量体が会合して成熟Fタンパク質を形成し、それは、標的細胞膜との接触の際、立体構造変化を受けるきっかけとなる準安定的な前融合形成(「前融合」)の立体構造を取る。この立体構造変化は、融合ペプチドとして知られる疎水性配列を剥き出しにし、それは、宿主細胞の膜と会合し、標的細胞膜とのウイルス又は感染細胞の膜の融合を促進する。
【0049】
F1断片は、HRA及びHRBと命名され、それぞれ融合ペプチド及び膜貫通アンカードメインの近傍に位置する少なくとも2つの7個反復ドメインを含有する。前融合の立体構造では、F2−F1二量体は、球形の頭部及び茎構造を形成し、そこでHRAドメインは球形の頭部における断片化(伸長した)構成の中にある。それに対して、HRBドメインは、頭部領域から伸びる三本鎖のコイルドコイルの茎を形成する。前融合から後融合の立体構造への転移の間、HRAドメインは崩壊し、HRBドメインの近傍にもたらされ、逆平行の6らせん束を形成する。後融合の状態で、融合タンパク質及び膜貫通ドメインは、並置されて膜の融合を円滑にする。
【0050】
上記で提供された立体構造の記載は、結晶学データの分子モデル化に基づくが、前融合及び後融合の立体構造の構造的な識別は、結晶学への手段なしでモニターできる。たとえば、その技術的教示の目的で、参照によって本明細書に組み入れられるCalderらのVirology,271:122−131(2000)及びMortonらのVirology,311:275−288によって明らかにされたように、電子顕微鏡を用いて前融合及び後融合(代わりに指定された前融合及び融合)の立体構造の間を区別することができる。また、その技術的教示の目的で、参照によって本明細書に組み入れられるConnollyらのProc.Natl.Acad.Sci.USA,103:17903−17908(2006)により記載されたようなリポソーム会合アッセイによって前融合の立体構造を融合(後融合)の立体構造から区別することができる。さらに、パラミクソウイルスFタンパク質の前融合形態又は融合形態の1つ又はその他に存在するが、他の形態には存在しない立体構造エピトープを特異的に認識する抗体(たとえば、モノクローナル抗体)を用いて前融合の立体構造及び融合の立体構造を区別することができる。そのような立体構造のエピトープは、分子の表面における抗原決定基の優先的な暴露による。或いは、立体構造のエピトープは、直鎖ポリペプチドで隣接しないアミノ酸の並置から生じ得る。
【0051】
本明細書で開示されるPreF抗原は、発現されたタンパク質の集団にて発現されたタンパク質の集団の実質的な部分が、前融合(前融合)の立体構造にあるように(たとえば、構造的な及び/又は熱動態的なモデル化によって予測されるように又は上記で開示された方法の1以上によって評価されるように)、パラミクソウイルスFタンパク質の前融合の立体構造を安定化させ、維持するように設計される。安定化する修飾は、天然(又は合成)のFタンパク質、たとえば、配列番号2の例となるRSVタンパク質、配列番号6の例となるhMPVタンパク質及び/又は配列番号8の例となるPIVタンパク質に導入される。開示される安定化する修飾の導入は、細胞環境又は細胞外環境(たとえば、対象への投与に続く生体内での)へのPreF抗原の導入に続く前融合の立体構造の主な免疫原性エピトープの維持を生じる。
【0052】
先ず、F0ポリペプチドの膜アンカードメインを置き換えるためにヘテロ安定化ドメインを構築物のC末端に置くことができる。この安定化ドメインは、HRBの不安定性を代償し、前融合の配座異性体を安定化するのを助けると予測される。例となる実施形態では、ヘテロ安定化ドメインはタンパク質多量体化ドメインである。そのようなタンパク質多量体化ドメインの特に好都合な一例は、三量体化ドメインである。例となる三量体化ドメインは、コイルドコイルドメインを有する複数のポリペプチドの三量体への集合を促進するそのようなコイルドコイルに折り畳む。三量体化ドメインの好都合な一例は、イソロイシンジッパーである。例となるイソロイシンジッパーは、HarburyらのScience 262:1401−1407(1993)によって記載された操作された酵母GCN4イソロイシン変異体である。好適なイソロイシンジッパードメインの配列の1つは配列番号15で表されるが、コイルドコイル安定化ドメインを形成する能力を保持するこの配列の変異体も同様に好適である。代わりの安定化コイルドコイル三量体化ドメインには、TRAF2(GENBANK受入番号.Q12933[gi:23503103];アミノ酸299−348);Thrombospondin1(受入番号.PO7996[gi:135717];アミノ酸291−314);Matrilin−4(受入番号.O95460[gi:14548117];アミノ酸594−618;CMP(matrilin−1)(受入番号.NP_002370[gi:4505111];アミノ酸463−496;HSF1(受入番号.AAX42211[gi:61362386];アミノ酸165−191;及びCubilin(受入番号.NP_001072[gi:4557503];アミノ酸104−138が挙げられる。好適な三量体ドメインは、発現されたタンパク質の実質的な部分の三量体への集合を生じることが期待される。たとえば、三量体化ドメインを有する組換えPreFポリペプチドの少なくとも50%が三量体を形成する(たとえば、AFF−MALSによって評価されるように)。通常、発現されたポリペプチドの少なくとも60%、さらに好都合には少なくとも70%、最も望ましくは少なくとも約75%が三量体として存在する。
【0053】
安定性をさらに高めるために、HRB内の中性残基(たとえば、ロイシン、イソロイシン又はバリン)を極性残基(たとえば、リジン、アルギニン又はグルタミン)で置換することができる。たとえば、RSVのF抗原の文脈では、PreFの512位(天然のF0タンパク質に対して)に位置するロイシン残基をリジンで置換することができる(配列番号10の例となるPreF抗原のL482K)。この置換は、コイルドコイル疎水性残基の周期性を改善する。同様に、105位のアミノ酸に続いてリジンを付加することができる。相当する又は匹敵する残基は、hMVP及びPIV−3にて当業者が選択することができる。
【0054】
加えて、フリン切断モチーフの欠失(hMVP及びPIVの場合は1つ、RSVの場合は1つ又は両方)はさらに前融合の配座異性体を安定化する。この設計によって、融合タンパク質はF2から切断されず、前融合の配座異性体の球形頭部からの放出を妨げ、すぐ近くの膜への接近性を妨げる。融合タンパク質と膜界面との間の相互作用が前融合状態の不安定性における主な課題であると予測される。融合工程の間、融合ペプチドと標的膜の間の相互作用は、球形頭部構造内からの融合ペプチドの暴露を生じ、前融合状態の不安定性を高め、後融合の配座異性体に折り畳む。この立体構造の変化によって膜融合の工程が可能になる。フリン切断部位の1つ(又はRSVの場合、任意で両方)の除去は、融合ペプチドのN末端部分への膜接近性を妨げ、前融合状態を安定化させると予測される。RSVのFタンパク質の場合、pep27と命名された2つのフリン切断部位の間の配列を取り除くことができる。従って、本明細書で開示される例となる実施形態では、フリン切断モチーフの除去は、未変化の融合ペプチドを含んでなるPreF抗原を生じ、それは、プロセッシング及び集合の間又はそれに続いてフリンによって切断されない。
【0055】
任意で、たとえば、1以上のアミノ酸の置換によって少なくとも1つの非フリン切断部位を取り除くことができる。たとえば、実験的証拠は、特定のメタロプロテイナーゼによる切断につながる条件下では、RSVのFタンパク質はアミノ酸110〜118の近傍で切断され得る(たとえば、PreF抗原のアミノ酸112と113の間;配列番号2の参照Fタンパク質ポリペプチドの142位のロイシンと143位のグリシンの間で切断が生じる)。従って、この領域内での1以上のアミノ酸の修飾は、PreF抗原の切断を低下させ得る。たとえば、112位のロイシンは、たとえば、イソロイシン、グルタミン又はトリプトファンのような異なったアミノ酸で置換することができる。代わりに又はさらに、113位のグリシンは、セリン又はアラニンによって置換することができる。hMPV及びPIVのPreF抗原の産生の間に、非フリンプロテアーゼによる切断が認められる事象において同様の修飾が為され得る。
【0056】
任意で、PreF抗原は、たとえば、天然のFタンパク質ポリペプチドに存在する1以上のグリコシル化部位でグリコシル化された分子の比率を上げる又は下げることによって、グリコシル化のパターン又は状況を変える1以上の修飾を含んでなることができる。たとえば、配列番号2の天然のRSVタンパク質ポリペプチドは、27位、70位及び500位(配列番号10の例となるPreF抗原の27位、70位及び470位に相当する)でのアミノ酸にてグリコシル化されると予測される。一実施形態では、修飾は、500位のアミノ酸(N470と命名)でのグリコシル化部位の近傍に導入される。たとえば、500位(参照配列の、例となるPreF抗原の470位の配置に相当する)のアスパラギンの代わりにグルタミン(Q)のようなアミノ酸を置換することによってグリコシル化部位を取り除くことができる。好都合には、このグリコシル化部位でグリコシル化効率を高める修飾が導入される。好適な修飾の例には、500〜502位にて以下のアミノ酸配列:NGS;NKS;NGT;NKTが挙げられる。興味深いことに、高いグリコシル化を生じるこのグリコシル化部位の修飾はまた実質的に高いPreF産生を生じる。従って、特定の実施形態では、PreF抗原は、参照PreF配列(配列番号2)のアミノ酸500に相当する位置で、たとえば、配列番号10によって例示されるPreF抗原の470位にて修飾されたグリコシル化部位を有する。好適な修飾には、参照Fタンパク質配列の500〜502位に相当するアミノ酸での、配列:NGS;NKS;NGT;NKTが挙げられる。同様に、hMVP及びPIVのPreF抗原にて、たとえば、配列番号6の参照hMVPタンパク質ポリペプチドの57位、172位及び/又は353位の1以上に相当するアミノ酸にて、及び/又はたとえば、配列番号8の参照PIV−3タンパク質ポリペプチドの238位、359位及び/又は446位の1以上に相当するアミノ酸にてグリコシル化部位を修飾することができる。
【0057】
本明細書で開示される安定化の修飾、たとえば、好ましくはPreF抗原のC末端に位置する、たとえば、コイルドコイル(たとえば、イソロイシンジッパードメイン)のような非相同の安定化ドメインの付加;疎水性HRBドメインにおけるロイシンからリジンへのような残基の修飾;フリン切断モチーフの除去;非フリン切断部位の除去;及び/又はグリコシル化部位の修飾のいずれか1つを、ほかの安定化修飾の1以上との組み合わせにて(又は全部くるめた組み合わせまで)採用することができる。たとえば、RSVのPreF抗原において、非相同のコイルドコイル(又はそのほかの非相同の安定化ドメイン)を単独で利用することができ、又は疎水性領域の修飾及び/又はpep27の除去及び/又はフリン切断部位の1つ若しくは両方の除去及び/又は非フリン切断部位の除去及び/又はグリコシル化部位の修飾のいずれかと組み合わせて利用することができる。特定の特殊な実施形態では、RSVのPreF抗原は、C末端のコイルドコイル(イソロイシンジッパー)ドメイン、HRB疎水性ドメインにおける安定化置換、及びフリン切断部位双方の除去を含んでなる。そのような実施形態は、pep27を欠き、フリン切断によって除去されない未変化の融合ペプチドを含んでなる。特定の一実施形態では、PreF抗原はまた500位のアミノ酸にて修飾されたグリコシル化部位を含んでなる。hMPV及び/又はPIVのPreF抗原では、非相同のコイルドコイル(又は他の非相同の安定化ドメイン)を単独で利用することができ、又は疎水性領域の修飾及び/又はフリン切断部位の除去及び/又は非フリン切断部位の除去及び/又はグリコシル化部位の修飾のいずれかと組み合わせて利用することができる。特定の特殊な実施形態では、hMPV又はPIVのPreF抗原は、C末端のコイルドコイル(イソロイシンジッパー)ドメイン、HRB疎水性ドメインにおける安定化置換、及びフリン切断部位の除去を含んでなる。そのような実施形態は、フリン切断によって除去されない未変化の融合ペプチドを含んでなる。任意で、hMPV又はPIVのPreF抗原は、修飾されたグリコシル化部位も含んでなる。
【0058】
天然のFタンパク質ポリペプチドは、PreF抗原が所望されるパラミクソウイルスの任意のFタンパク質から選択することができる。たとえば、RSVの場合、RSVのA株又はRSVのB株又はそれらの変異体(上記と同義)を選択することができる。特定の例となる実施形態では、Fタンパク質ポリペプチドは、配列番号2で表されるFタンパク質である。異なったRSV株に由来するFタンパク質ポリペプチドの多数の追加の例は、WO2008/114149(RSVのF及びGのタンパク質配列の追加の例を提供する目的で参照によって本明細書に組み入れられる)に開示されている。
【0059】
hMVPの場合、A株はB株(たとえば、A1、A2、B1、B2)又はそれらの変異体(上記と同義)を選択することができる。特定の例となる実施形態では、hMPVのFタンパク質ポリペプチドは、配列番号6で表されるFタンパク質である。異なったhMPV株に由来するFタンパク質ポリペプチドの多数の追加の例は、BoivinらのEmerg.Infect.Dis.10:1154−1157(2004)に開示されており、例となるhMPVのFタンパク質の配列を開示する目的で参照によって本明細書に組み入れられる。例となる核酸配列は、GenBankデータベースを参照して容易に特定することができる。
【0060】
PIVの場合、血清型1〜4又はそれらの変異体(上記と同義)から選択される株を選択することができる。たとえば、下部気道疾患を防ぐように設計された組成物では、PIVは最も一般的にはPIV−3である。特定の例となる実施形態では、PIVのFタンパク質ポリペプチドは、配列番号8で表されるFタンパク質である。追加のPIV(たとえば、PIV−3)の融合タンパク質の配列は、PrinoskiらのVirus Research,22:55−69(1991)で提供されており、例となるPIVのFタンパク質の配列を開示する目的で参照によって本明細書に組み入れられる。例となる核酸配列は、GenBankデータベースを参照して容易に特定することができる。
【0061】
本開示の理解を円滑にするために、アミノ酸残基の位置は、株にかかわりなく、例となるFタンパク質の1つのアミノ酸の位置(すなわち、相当するアミノ酸残基の位置に関して与えられる。ほかのパラミクソウイルスの匹敵するアミノ酸の位置は、容易に利用でき、周知の配置アルゴリズム(たとえば、BLAST、たとえば、初期設定パラメータを用いて)を用いて例となる配列と共に選択されたウイルスのFタンパク質のアミノ酸配列を並べることによって当業者によって容易に決定することができる。これら又はそのほかのパラミクソウイルスのFタンパク質の追加の変異体は、遺伝的浮動によって生じることができ、又は部位特異的若しくは無作為の突然変異誘発を用いて人為的に作出することができ、又は2以上の既存の変異体の組換えによって作出することができる。そのような追加の変異体も本明細書で開示されるPreF(及びPreF−G)の文脈で好適である。
【0062】
Fタンパク質の選択するF2及びF1のドメインでは、当業者は、F2及び/又はF1のドメイン全体を厳格に含んでなる必要はないことを認識するであろう。通常、F2ドメインの配列(又は断片)を選択する場合、立体構造の考慮が重要である。従って、F2ドメインは通常、ポリペプチドの集合及び安定性を円滑にするF2ドメインの部分を含んでなる。PCT/CA2008/002277で開示されたように、RSVのFタンパク質が関与する特定の実施形態では、F2ドメインはアミノ酸26〜105を含んでなる。PIVのFタンパク質が関与する特定の例となる実施形態では、F2ドメインはアミノ酸19〜105を含んでなる。しかしながら、長さにおける瑣末な修飾(1以上のアミノ酸の付加又は欠失による)を有する変異体も可能である。
【0063】
通常、F1ドメインの少なくとも部分列(又は断片)は、Fタンパク質の免疫優勢エピトープを含んでなる安定な立体構造を維持するように選択され、設計される。RSVのFタンパク質が関与する例となる実施形態では、F1ドメインのポリペプチドは、RSVのFタンパク質ポリペプチドの少なくとも約262〜436のアミノ酸を含んでなる。本明細書で提供される非限定の一例では、F1ドメインは、天然のFタンパク質ポリペプチドのアミノ酸137〜516を含んでなる。当業者は、追加のさらに短い配列を熟練者の裁量で使用できることを認識するであろう。hMVPのFタンパク質が関与する例となる実施形態では、F1ドメインは、アミノ酸103〜480(たとえば、103〜481)を含んでなり、PIVのFタンパク質が関与する例となる実施形態では、F1ドメインは、アミノ酸110〜481(たとえば、110〜484)を含んでなる。
【0064】
立体構造の考慮に加えて、F2又はF1のドメインの部分列を選択する場合(又は特定のPreF−G抗原のGタンパク質成分に関して以下で議論するように)、追加の免疫原性エピトープの包含に基づいて配列(たとえば、変異体、部分列まど)を選択することが望ましくてもよい。たとえば、当該技術で既知の、たとえば、神経網又は多項式決定のようなアンカーモチーフ又はそのほかの方法を用いて、追加のT細胞エピトープを特定することができ、たとえば、RANKPEP(ウエブサイト:mif.dfci.harvard.edu/Tools/rankpep.htmlで利用可能);ProPredI(ウエブサイト:imtech.res.in/raghava/propredI/index.htmlで利用可能);Bimas(ウエブサイト:www−bimas.dcrt.nih.gov/molbi/hla_bind/index.htmlで利用可能);及びSYFPEITH(ウエブサイト:syfpeithi.bmi−heidelberg.com/scripts/MHCServer.dll/home.htmで利用可能)を参照のこと。たとえば、アルゴリズムを用いてペプチドの「結合閾値」を決定し、特定の親和性で結合するMHC又は抗体の高い確率をそれらに与えるスコアを持つものを選択する。アルゴリズムは、特定の位置での特定のアミノ酸のMHC結合に対する効果、特定の位置での特定のアミノ酸の抗体結合に対する効果、又はモチーフを含有するペプチドの特定の置換の結合に対する効果のいずれかに基づく。免疫原性ペプチドの文脈の範囲内で、「保存された残基」は、ペプチドの特定の位置で無作為な分布で予想されるものより有意に高い頻度で出現するものである。アンカー残基はMHC分子との接触点を提供する保存された残基である。そのような予測方法で特定されるT細胞エピトープは、特定のMHCタンパク質への結合を測定することによって、及びMHCタンパク質の背景で提示される場合T細胞を刺激するその能力によって確認することができる。
【0065】
好都合には、PreF抗原(以下で議論されるPreF−G抗原を含んでなる)は、発現系に相当するシグナルペプチド、たとえば、哺乳類又はウイルスのシグナルペプチド、たとえば、RSVのF0の天然のシグナル配列(たとえば、配列番号2のアミノ酸1〜25又は配列番号10のアミノ酸1〜25)、又はhMPV若しくはPIVの天然のシグナル配列(たとえば、配列番号6又は8のアミノ酸1〜18)を含んでなる。通常、シグナルペプチドは、組換え発現で選択される細胞に適合するように選択される。たとえば、バキュロウイルスのシグナルペプチド又はメリチンシグナルペプチドのようなシグナルペプチドは、昆虫細胞における発現について置換され得る。植物の発現系が好まれるのであれば、好適な植物シグナルペプチドが当該技術で既知である。多数の例となるシグナルペプチドが当該技術で既知であり(たとえば、多数のヒトのシグナルペプチドを記載しているZhang & Henzel, Protein Sci., 13:2819-2824 (2004)を参照)、古細菌、原核生物及び真核生物のシグナル配列を含んでなるSPdbシグナルペプチドデータベース(http://proline.bic.nus.edu.sg/spdb/)にてカタログ化されている。任意で、先行の抗原のいずれかが追加の配列、又はHisタグのようなタグを含んで精製を円滑にすることができる。
【0066】
任意で、PreF抗原は追加の免疫原性成分を含んでなることができる。特定の特に好都合な実施形態では、PreF抗原はパラミクソウイルスのGタンパク質の抗原性成分を含んでなる。RSVに由来するPreF及びGの成分を有する例となるキメラタンパク質は、PCT/CA2008/002277に詳細に記載されているが、例となるキメラPreF−Gタンパク質の詳細な記載に関してその全体が本明細書に組み入れられる。匹敵するPreF−Gタンパク質が、特にhMOV及びPIV(たとえば、PIV−3)を含んでなるパラミクソウイルスについて設計され、製造され得る。
【0067】
たとえば、天然に存在する株に相当する配列の選択に関して、1以上のドメインが、たとえば、A2若しくはロングと命名された一般の研究室単離体、又はそのほかの天然に存在する株若しくは単離体(前述のWO2008/114149で開示されたような)のようなRSVのA株又はB株に配列では相当し得る。同様に、たとえば、hMPV及びPIVを含んでなるそのほかの天然に存在するパラミクソウイルス(前述のそれぞれBoivin et al. Emerg. Infect. Dis.10:1154-1157 (2004) and Prinoski et al. Virus Research 22:55-69 (1991)にて開示されたような)に相当する配列が選択される。例となるPreFタンパク質ポリペプチドは、配列番号10、12及び14(それぞれ、RSV、hMPV及びPIV)で提供される。
【0068】
そのような天然に存在する又は単離される変異体に加えて、前述の配列及び配列類似性を共有する操作された変異体もPreF(PreF−Gを含んでなる)抗原の文脈で採用され得る。ポリペプチド(及び一般にヌクレオチド配列)に関してPreF抗原ペプチド(及び以下に記載されるポリヌクレオチド配列)間の類似性は、配列同一性を参照して配列間での類似性という点で表現され得る。配列同一性は、同一性(又は類似性)比率という点で測定されることが多く;比率が高ければ高いほど、2つの配列の一次構造はよく類似する。一般に、2つのアミノ酸(又はポリヌクレオチド)の配列の一次構造が似ていれば似ているほど、折り畳み及び集合の結果生じる高次構造も類似する。PreFポリペプチド(又はポリヌクレオチド)配列の変異体は通常、1又は少数のアミノ酸の欠失、付加又は置換を有するが、それでもなお、非常に高い比率でアミノ酸、一般にはそのポリヌクレオチド配列を共有する。さらに重要なことに、変異体は、本明細書で開示される参照配列の構造的な特性、従って立体構造の特性を保持する。従って、配列番号10、12及び14の例となるPreF配列の1つに比べて1,2,3,4,5又は10までのアミノ酸の付加、欠失及び/又は置換を有するPreFタンパク質ポリペプチドも本明細書で開示されるようなPreFタンパク質ポリペプチドの実施形態である。たとえば、好適な実施形態は、グリコシル化部位(上記のような)を修飾するアミノ酸置換を伴ったRSV、hMPV及び/又はPIVのPreFタンパク質(たとえば、配列番号10、12及び14)を含んでなる。同様に、好適な実施形態は、配列番号10、12及び14に関して内部ペプチダーゼ切断部位(上記で議論したような)を変化させるアミノ酸の置換を含んでなることができる。特定の実施形態では、PreFポリペプチドは配列番号10、12及び14に対して双方のそのような修飾を含んでなる。
【0069】
配列同一性を決定する方法は当該技術で周知であり、PreF抗原ポリペプチド、並びにそれをコードする核酸に適用可能である(たとえば、下記のように)。種々のプログラム及び配置アルゴリズムは、Smith及びWaterman,Adv.Appl.Math.2:482,1981;Needleman及びWunsch,J.Mol.Biol.48:443,1970;Higgins及びSharp,Gene,73:237,1988;Higgins及びSharp,CABIOS,5:151,1989;Corpetら、Nucleic Acids Research,16:10881,1988;並びにPearson及びLipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:2444,1988に記載されている。Altschulら、Nature Genet.6:119,1994は、配列配置法及び相同性算出の詳細な考察を提示している。NCBI基本的な局在配置検索ツール(BLAST)(Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403, 1990)は、配列解析プログラム、blastp、blastn、blastx、tblastn及びtblastxと関連して使用するために、全米バイオテクノロジー情報センター(MD州、ベセスダ、NCBI)を含んでなる幾つかの供給源、及びインターネットにて利用可能である。このプログラムを用いて配列同一性の決定の仕方の記載はインターネットのNVBIウエブサイトで利用可能である。
【0070】
一部の例では、PreF抗体は、それが由来する天然に存在する株のアミノ酸配列に比べて1以上のアミノ酸修飾を有する(たとえば、前述の安定化修飾に加えて)。そのような差異は、1以上のアミノ酸の付加、欠失又は置換であり得る。変異体は通常、アミノ酸残基の約1%又は2%又は3%又は4%又は5%又は6%又は10%又は15%又は20%以下異なる。たとえば、変異体PreF(PreF−Gを含んでなる)ポリペプチド配列は、配列番号10の例となるPreF抗原ポリペプチド配列;又はhMPV及び/又はPIVの配列(たとえば、配列番号12及び14の例となる配列)に基づく類似のPreF抗原と比べて、1又は2又は5までの又は約10までの、又は約15までの、又は約50までの又は約100までのアミノ酸の差異を含んでなり得る。従って、F又はGのタンパク質又はPreF抗原(PreF−G抗原を含んでなる)の文脈では、変異体は通常、参照タンパク質との、又は本明細書で開示される例となるPreF抗原のいずれかとの、少なくとも80%、又は85%、さらに一般的には、少なくとも約90%以上、たとえば、94%、又は95%又は96%又は97%又はさらに98%又は99%の配列同一性を共有する。本開示の特徴として含まれる追加の変異体には、WO2008/114149(RSV)、BoivinらのEmerg.Infect.Dis.10:1154−1157(2004)(hMPV)及びPrinoskiらのVirus Research,22:55−69(1991)(PIV)で開示された天然に存在する変異体から選択されるヌクレオチド配列又はアミノ酸配列の全部又は一部を含んでなるPreF抗原(PreF−G抗原を含んでなる)である。たとえば、特定の実施形態では、RSVのPreFポリペプチドは、配列番号10に少なくとも89%の配列同一性を有し、hMVPのPreFポリペプチドは、配列番号12に少なくとも94%の配列同一性を有し、PIVのPreFポリペプチドは、配列番号14に少なくとも95%の配列同一性を有する。追加の変異体は、遺伝的浮動によって生じることができ、又は部位特異的若しくは無作為の突然変異誘発を用いて人為的に作出することができ、又は2以上の既存の変異体の組換えによって作出することができる。そのような追加の変異体も本明細書で開示されるPreF(及びPreF−G)の文脈で好適である。たとえば、修飾は、得られるPreF抗原の立体構造又は免疫原性エピトープを変化させない1以上の(たとえば、2つのアミノ酸、3つのアミノ酸、4つのアミノ酸、5つのアミノ酸、10までのアミノ酸、以上)の置換であり得る。
【0071】
代わりに又はさらに、修飾は、1以上のアミノ酸の欠失及び/又は1以上のアミノ酸の付加を含んでなることができる。実際、所望であれば、1以上のポリペプチドドメインは、単一株に一致しないが、複数株、又はさらにパラミクソウイルスのポリペプチドの複数の株を並べることによって推定されるコンセンサス配列に由来する成分部分列を含んでなる合成ポリペプチドであり得る。特定の実施形態では、その後の処理又は精製を円滑にするタグを構成するアミノ酸配列の付加によって1以上のポリペプチドドメインが修飾される。そのようなタグは抗原性タグ、又はエピトープタグ、酵素タグ又はポリヒスチジンタグであり得る。通常、タグは、たとえば、抗原又は融合タンパク質のC末端又はN末端のようなタンパク質の一方又は他方の末端に位置する。
【0072】
PreF抗原をコードする核酸
本開示の別の態様は、上述のようなPreF抗原をコードする組換え核酸に関する。さらに明確には、そのような核酸は、パラミクソウイルスのFタンパク質ポリペプチドのF2ドメイン及びF1ドメインを含んでなるFタンパク質ポリペプチド抗原を含んでなるポリペプチドをコードし、それは、(i)ヘテロ三量体化ドメインを含んでなるアミノ酸配列の付加、(ii)少なくとも1つのフリン切断部位の欠失、(iii)少なくとも1つの非フリン切断部位の欠失、及び(iv)Fタンパク質の細胞外ドメインの疎水性ドメインにおける親水性アミノ酸の少なくとも1つの置換又は付加から選択される少なくとも1つの修飾を含んでなる。任意で、そのようなポリヌクレオチドはグリコシル化部位で修飾を伴うPreF抗原をコードする。さらに、RSVのPreF抗原の場合、修飾は、pep27ドメインの1以上のアミノ酸の欠失も含んでなる。そのようなポリペプチドの性質及び構造の詳細は上記で詳細に開示している。当業者は、配列表で提供される、さもなければ本開示に(たとえば、参照による組み入れによって)含まれる例となる配列を含んでなる本明細書での教示に基づいた記載されるポリペプチド配列のいずれか及びすべてをコードするヌクレオチド配列を容易に決定することができる。
【0073】
特定の実施形態では、組換え核酸は、選択される原核又は真核の宿主細胞での発現についてコドンが最適化される。PreF抗原をコードし、哺乳類、たとえば、CHO細胞での発現についてコドンが最適化されているコドン最適化核酸の詳細は、参照によって本明細書に組み入れられるPCT/CA2008/002277で提供される。複製及び発現を円滑にするために、核酸を、たとえば、原核又は真核の発現ベクターのようなベクターに組み入れることができる。組換えのパラミクソウイルスPreF抗原をコードする核酸を含んでなる宿主も本開示の特徴である。好都合な宿主細胞には、たとえば、大腸菌のような原核生物(すなわち、細菌)の宿主細胞、並びに真菌(たとえば、酵母)細胞、昆虫細胞、及び哺乳類細胞(たとえば、CHO、VERO及びHEK293細胞)が挙げられる。
【0074】
複製及び発現を円滑にするために、核酸を、たとえば、原核又は真核の発現ベクターのようなベクターに組み入れることができる。本明細書で開示される核酸を種々のベクター(たとえば、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミド及びファージDNAの組み合わせに由来するベクター、たとえば、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鳥ポックスウイルス、仮性狂犬病ウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルスなどのようなウイルスDNAを含んでなる)に含めることができるが、最も一般的には、ベクターはポリペプチドの発現産物を生成するのに好適な発現ベクターである。発現ベクターでは、PreF抗原をコードする核酸は通常、mRNA合成に向かう適切な転写制御配列(プロモータ及び任意で1以上のエンハンサ)の近傍に且つその方向で配置される。すなわち、当該のポリヌクレオチド配列は、適切な転写制御配列に操作可能に連結される。そのようなプロモータの例には、CMVの即時早期プロモータ、LTR又はSV40のプロモータ、バキュロウイルスの多面体プロモータ、大腸菌のlac又はtrpプロモータ、ファージT7及びラムダPプロモータ、及び原核細胞又は真核細胞又はウイルスにおける遺伝子の発現を制御する既知のそのほかのプロモータが挙げられる。発現ベクターは通常、翻訳開始及び転写停止のためのリボソーム結合部位も含有する。ベクターは任意で発現を増幅するための適当な配列を含んでなる。加えて、発現ベクターは任意で、1以上の選択可能なマーカー遺伝子を含んで、形質転換した宿主細胞の表現型形質を提供するが、たとえば、真核細胞培養のためのジヒドロ葉酸還元酵素又はネオマイシン耐性、又は大腸菌におけるカナマイシン耐性、テトラサイクリン耐性若しくはアンピシリン耐性である。
【0075】
発現ベクターは、たとえば、翻訳の効率を改善するための追加の発現要素も含んでなることができる。これらのシグナルには、たとえば、ATG開始コドン及び隣接配列が挙げられる。場合によっては、たとえば、翻訳開始コドン及び関連する配列要素を当該ポリヌクレオチド配列(たとえば、天然の開始コドン)と同時に適当な発現ベクターに挿入する。そのような場合、追加の翻訳制御シグナルは必要とされない。しかしながら、ポリペプチドをコードする配列又はその一部のみが挿入される場合、ATG開始コドンを含んでなる外因性の翻訳制御シグナルがPreF抗原をコードする核酸の翻訳に提供される。開始コドンを正しい読み取りフレームに置いて当該ポリヌクレオチド配列の翻訳を確保する。外因性の転写要素及び開始コドンは種々の起源、天然及び合成由来であってもよい。所望であれば、使用中の細胞系に適したエンハンサを含めることによって発現の効率をさらに高めることができる(Scharf et al. Results Probl Cell Differ 20:125-62 (1994); Bitter et al. Methods in Enzymol 153:516-544 (1987))。
【0076】
一部の例では、PreF抗原をコードする核酸(たとえば、ベクター)は、宿主に導入された際、PreFをコードする核酸の発現を高める及び/又は最適化するように選択される1以上の追加の配列要素を含んでなる。たとえば、特定の実施形態では、PreF抗原をコードする核酸は、たとえば、ヒトのヘルペスウイルス5イントロン配列のようなイントロン配列を含んでなる。イントロンは、組換え構築物にて適切に配置されるとホモ及びヘテロの核酸の発現を高めることが繰り返し明らかにされている。発現を高める別の部類の配列には、マトリクス連結領域(又はMAR)のような遺伝子外要素、又はSTAR要素(たとえば、Otte et al., Biotechnol. Prog. 23:801‐807, 2007で開示されたようなSTAR)のような類似の遺伝子外要素が挙げられる。理論に束縛されないで、MARは核マトリクスへの標的DNA配列の固定の介在し、ヘテロクロマチンのコアから外に向かって延びるクロマチンループドメインを生成すると考えられている。MARは明瞭なコンセンサス配列又は認識可能な配列を含有しないが、その最も一貫した特徴は、全体的に高いA/T含量と一方の鎖で優勢なC塩基であると思われる。これらの領域は、鎖を分離する傾向がある湾曲二次構造を形成すると思われ、鎖分離の核生成点として作用し得るコア巻き戻し要素を含んでなり得る。幾つかの単純なAT−リッチ配列モチーフは、MAR配列:たとえば、A−ボックス、T−ボックス、DNA巻き戻しモチーフ、SATB1結合部位(H−ボックス、A/T/C25)及び脊椎動物又はショウジョウバエのためのコンセンサストポイソメラーゼII部位と関連している。例となるMAR配列は、公開された米国特許出願第20070178469号及び国際特許出願WO02/074969(参照によって本明細書に組み入れられる)に記載されている。PreF抗原をコードする核酸の発現を高めるのに使用することができる追加のMAR配列には、GirodらのNature Methods,4:747−753,2007で開示されたニワトリのリゾチームMAR,MARp1−42、MARp1−6、MARp1−68及びMARpx−29(それぞれGenBank受入番号、EA423306、DI107030、DI106196、DI107561及びDI106512)が挙げられる。当業者は、MAR1〜9で報告されているように、中程度のレベルの増強を生じるMARを選択することによって発現をさらに調節できることを十分に理解するであろう。所望であれば、たとえば、MAR−ファインダー(ウエブ:futuresoft.org/MarFinderにて利用可能)、MARテスト(ウエブ:genomatix.deで利用可能)又はSMARスキャンI(Levitsky et al., Bioinformatics 15:582‐592, 1999)のようなソフトウエアを用いて配列データベースを検索することによって、PreF抗原の発現を高める代替のMAR配列を特定することができる。特定の実施形態では、MARは、PreF抗原をコードする配列と同じ核酸(たとえば、ベクター)上で宿主細胞に導入される(たとえば、形質移入される)。代替の実施形態では、MARは、PreF抗原をコードするポリヌクレオチド配列及び操作可能に同時統合することができる別の核酸(たとえば、トランスで)上で導入される。
【0077】
組換えPreF抗原核酸の産生を介して当業者を導くのに十分な例となる手順は、SambrookらのMolecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989;SambrookらのMolecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Press,2001;AusubelらのCurrent Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates,1992(及び2003年の補足);並びにAusubelらのShort Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology、第4版、Wiley & Sons,1999に見い出すことができる。
【0078】
PreF抗原をコードする例となる核酸は配列番号9によって及びPCT/CA2008/002277にて表される。たとえば、配列番号2の500位に相当するアミノ酸にてグリコシル化部位に修飾を含んでなる変異体は、1408〜1414位(たとえば、配列番号1のポリヌクレオチドに比べて)の近傍でヌクレオチドを変える(たとえば、変異させる)ことによって作出することができる。グリコシル化の変異体(たとえば、グリコシル化効率を高める)をコードするヌクレオチドの好適な配列には、aacgggt、aacaagt、aacggga及びaacaagaが挙げられる。グリコシル化部位を除去する、たとえば、cagcagtのような代替配列も可能である。たとえば、WO2008/114149で開示されたような既知の(若しくはその後)発見されたパラミクソウイルス、又はBoivinらのEmerg.Infect.Dis.10:1154−1157(2004)(hMPV)及びPrinoskiらのVirus Research,22:55−69(1991)(PIV)で開示されたような変異体をコードするものから選択される類似のF及びGのタンパク質ポリペプチド配列を組み合わせることによって追加の変異体を作出することができる。hMPV及びPIVのPreFタンパク質をコードする例となるポリヌクレオチド配列はそれぞれ、配列番号11及び13に提供される。例となる変異体及び配列同一性を共有する追加の配列変異体は当業者によって作出することができる。通常、核酸変異体は、アミノ酸残基の1%又は2%又は5%又は10%又は15%又は20%以下で異なるポリペプチドをコードする。すなわち、コードされたポリペプチドは、配列番号9、11及び13の1つと少なくとも80%、又は85%、さらに一般的には少なくとも90%以上、たとえば、95%又はさらに98%又は99%の配列同一性を共有する。PreFポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、遺伝子コードの重複性のために自体低い配列同一性を共有することは当業者によって直ちに理解される。一部の例では、PreF抗原は、それが由来する天然に存在する株のアミノ酸配列に比べて1以上のアミノ酸修飾を有する(たとえば、前述の安定化修飾に加えて)。そのような差異は、それぞれ1以上のヌクレオチド又はアミノ酸の付加、欠失又は置換であり得る。変異体は通常、ヌクレオチド残基の約1%又は2%又は5%又は10%又は15%又は20%以下で異なる。たとえば、変異体PreF抗原(PreF−Gを含んでなる)の核酸は、配列番号9の例となるPreF抗原核酸、又は配列番号11及び13の例となるhMPV又はPIVの類似の核酸と比べて、1又は2、又は5までの、又は約10までの、又は約15までの、又は約50までの、又は約100までのヌクレオチドの差異を含んでなることができる。従って、RSVのF又はGのタンパク質又はPreF抗原(PreF−G抗原を含んでなる)の核酸は通常、配列番号9、11又は13で説明されるPreFタンパク質ポリペプチドとの少なくとも80%、又は85%、さらに一般的には少なくとも90%以上、たとえば、95%又はさらに98%又は99%の配列同一性を共有する。追加の変異体は、遺伝的浮動によって生じることができ、又は部位特異的若しくは無作為の突然変異誘発を用いて人為的に作出することができ、又は2以上の既存の変異体の組換えによって作出することができる。そのような追加の変異体も本明細書で開示されるPreF(及びPreF−G)の文脈で好適である
【0079】
上述した変異体核酸に加えて、配列番号9、11又は13によって表される例となる核酸の1以上とハイブリダイズする核酸もPreF抗原をコードする核酸の文脈で使用することができる。当業者は、上記で議論した%配列同一性の測定に加えて、2つの核酸の間の配列類似性の別の証は、ハイブリダイズする能力であることを十分に理解するであろう。2つの核酸の配列が似ていればいるほど、それらがハイブリダイズする条件はさらにストリンジェントである。ハイブリダイズ条件のストリンジェント性は、配列に依存し、異なった環境パラメータのもとで異なる。従って、ストリンジェント性の特定の程度を生じるハイブリダイズ条件は、選択するハイブリダイズ方法の性質及び組成物及びハイブリダイズする核酸配列の長さによって変化する。一般に、洗浄回数もストリンジェント性に影響するが、ハイブリダイズの温度及びハイブリダイズ緩衝液のイオン強度(特にNa及び/又はMg++の濃度)がハイブリダイズのストリンジェント性を決定する。一般に、ストリンジェントな条件は、定義したイオン強度とpHにて特定の配列についての熱融点(T)よりも約5〜20℃低いように選択される。Tは、標的配列の50%が好ましく一致したプローブとハイブリダイズする温度(定義したイオン強度とpHにて)である。核酸のハイブリダイズの条件及びストリンジェント性の算出は、たとえば、SambrookらのMolecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,2001;Tijssen,Hybridization With Nucleic Acid Probes,Part I:Theory and Nucleic Acid Preparation,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,Elsevier Science Ltd.,NY,NY,1993及びAusubelらのShort Protocols in Molecular Biology、第4版、John Wiley & Sons,Inc.,1999に見い出すことができる。
【0080】
本開示の目的で、「ストリンジェントな条件」は、ハイブリダイズ分子と標的配列の間で25%未満のミスマッチがある場合ハイブリダイズが生じる条件を包含する。さらに正確な定義のためにストリンジェント性の特定のレベルに「ストリンジェントな条件」を分類することができる。従って、本明細書で使用されるとき、「穏やかなストリンジェント性」の条件は、25%を超える配列ミスマッチを持つ分子はハイブリダイズしないものであり、「中程度のストリンジェント性」の条件は、15%を超える配列ミスマッチを持つ分子はハイブリダイズしないものであり、「高いストリンジェント性」の条件は、10%を超える配列ミスマッチを持つ分子はハイブリダイズしないものである。「非常に高いストリンジェント性」の条件は、6%を超える配列ミスマッチを持つ分子はハイブリダイズしないものである。それに対して、「低いストリンジェント性」の条件でハイブリダイズする核酸には、非常に低い配列同一性を持つもの又は核酸のほんの短い配列のみの配列同一性を持つものが挙げられる。従って、本開示に包含される核酸の種々の変異体は、少なくとも、Fタンパク質のF2ドメインとF1ドメインをコードする部分にわたって、配列番号1、3及び5の少なくとも1つとハイブリダイズできることが理解されるであろう。たとえば、そのような核酸は、配列番号9、11及び/又は13の少なくとも1つの実質的に全長にわたってハイブリダイズすることができる。
【0081】
特定の例では、原核細胞、たとえば、大腸菌細胞での導入及び発現に好適なベクターを介して細胞に導入される。たとえば、PreF抗原をコードするポリヌクレオチド配列を含んでなる核酸は、たとえば、発現ベクターのpETシリーズ(たとえば、pET96及びpET2d)のような種々の市販の又は独占所有権のあるベクターに導入することができる。コーディング配列の発現はIPTGによって誘導可能であり、高いレベルのタンパク質発現を生じる。PreF抗原をコードするポリヌクレオチド配列は、ファージT7プロモータのもとで転写される。熱誘導可能なラムダpLプロモータを含んでなるpURV22のような代替ベクターも好適である。
【0082】
発現ベクターを好適な細菌宿主に導入する(たとえば、エレクトロポレーションによって)。多数の好適な大腸菌株が利用可能であり、当業者によって選択することができる(たとえば、Rosetta株及びBL21(DE2)株は、PreF抗原をコードするポリヌクレオチド配列を含有する組換えベクターの発現に好都合であることが分かっている)。
【0083】
さらに通常、PreF抗原をコードするポリヌクレオチドは、真核細胞(たとえば、昆虫細胞又は哺乳類細胞)での導入及び発現に好適である発現ベクターに導入される。好都合には、そのような核酸は、選択されるベクター/宿主細胞での発現についてコドンが最適化される。例となる一実施形態では、PreF抗原をコードするポリヌクレオチド配列は、Lonza Biologicals社によって開発されたpEE14ベクターのようなベクターに導入される。たとえば、即時早期CMV(サイトメガロウイルス)プロモータのような構成的なプロモータのもとでポリペプチドが発現される。ポリペプチドを発現する安定的に形質移入された細胞の選抜は、グルタミン源の非存在下で増殖する形質移入細胞の能力に基づいて為される。上手くpEE14を統合した細胞は、pEE14ベクターがGS(グルタミン合成酵素)酵素を発現するので、外因性グルタミンの非存在下で増殖することができる。選抜された細胞はクローンで増殖し、所望のPreFポリペプチドの発現を特徴とする。
【0084】
別の例では、PreF抗原をコードするポリヌクレオチド配列は、バキュロウイルス発現ベクター系(BEVS)を用いて昆虫細胞に導入される。昆虫細胞を感染させることが可能な組換えバキュロウイルスは、たとえば、BD BioScienceからのBD BaculoGold系のような市販のベクター、キット及び/又は系を用いて生成することができる。手短には、抗原をコードするポリヌクレオチド配列をpAvSG2転移ベクターに挿入する。次いで、pAvSG2キメラプラスミドと、バキュロウイルスAutographa californica nuclear polyhedrosis virus(AcNPV)の線状化ゲノムDNAを含有するBD BaculoGoldによって宿主細胞SF9(Spodoptera frugiperda)に同時形質移入する。形質移入に続いて、pAvSG2プラスミドとバキュロウイルスゲノムの間で相同組換えが生じて組換えウイルスを生成する。一例では、PreF抗原は多面体プロモータ(pH)の通常制御のもとで発現される。他のプロモータ、たとえば、塩基性(Ba)プロモータ及びp10プロモータを用いて同様の転移ベクターを作出することができる。同様に、たとえば、Sf9に密接に関連するSF21及びイラクサギンウワバTrichoplusia niに由来するハイファイブ細胞株のような代替の昆虫細胞を採用することができる。
【0085】
形質移入及び発現誘導(選択したプロモータ及び/又はエンハンサ又はそのほかの調節性要素に従って)に続いて、発現されたポリペプチドを回収し(たとえば、精製又は濃縮し)、抗原性で活性のある前融合の立体構造への折り畳みを確保するように復元する。
【0086】
RSV抗原性ポリペプチドの製造方法
組換えタンパク質の発現及び精製について定評のある手順を用いて、本明細書で開示されるPreF抗原(PreF−G抗原及び適宜、G抗原も含んでなる)を製造する。当業者を導くのに十分な手順は以下の文献で見つけることができる:SambrookらのMolecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,200;及びAusubelらのShort Protocols in Molecular Biology、第4版、John Wiley & Sons,Inc.,999。追加の及び特定の詳細は以下に提供される。
【0087】
PreF抗原をコードする核酸(上述のような)は、ベクター及び宿主細胞の選択に応じて、種々の周知の手順、たとえば、エレクトロポレーション、リポソーム介在性形質移入(たとえば、市販のリポソーム形質移入剤、たとえば、LIPOFECTAMINE(商標)2000又はTRANSFECTIN(商標)を用いた)、リン酸カルシウム沈殿、感染、形質移入などによって、宿主細胞に導入される。
【0088】
組換えPreF抗原をコードする核酸を含んでなる宿主細胞も従って本開示の特徴である。好都合な宿主細胞には、たとえば、大腸菌のような原核細胞(たとえば、細菌)宿主細胞、並びに真核細胞(たとえば、Saccharomyces cerevisiae及びPicchia pastorisのような酵母)、昆虫細胞、植物細胞及び哺乳類細胞(たとえば、CHO細胞及びHEK293細胞)を含んでなる多数の真核宿主細胞が挙げられる。組換えPreF抗原をコードする核酸は、たとえば、発現ベクターのようなベクターを介して宿主細胞に導入される(たとえば、形質伝達、形質転換又は形質移入される)。上述のように、ベクターは最も通常ではプラスミドであるが、そのようなベクターは、たとえば、ウイルス粒子やファージ等であり得る。適切な発現宿主の例には、たとえば、大腸菌、Streptomyces及びSalmonella typhimuriumのような細菌細胞;Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastoris及びNeurospora crassaのような真菌細胞;Drosophila及びSpodoptera frugiperdaのような昆虫細胞;3T3、COS、CHO、BHK、HEK293又はBowesメラノーマのような哺乳類細胞;藻類細胞を含んでなる植物細胞が挙げられる。
【0089】
プロモータを活性化し、形質転換体を選抜し、挿入したポリヌクレオチド配列を増幅するのに適するように改変された従来の栄養培地にて宿主細胞を培養することができる。温度、pH等の培養条件は、通常、発現のために選択された宿主細胞と共に以前使用されたものであり、たとえば、Freshney(1994)Culture of Animal Cells,a Manual of Basic Technique、第3版、Wiley− Liss,New York及びそれに引用された文献を含んでなる本明細書で引用された文献にて当業者に明らかであろう。本発明の核酸に相当する発現産物は、たとえば、植物、酵母、真菌、細菌等のような非動物細胞での産生することができる。Sambrook、Berger及びAusubelに加えて、細胞培養に関する詳細は、Payneらの(1992)Plant Cell and Tissue Culture in Liquid Systems、John Wiley & Sons,Inc.New York,NY;Gamborg及びPhillips(編)(1995)Plant Cell,Tissue and Organ Culture;Fundamental Methods Springer Lab Manual,Springer−Verlag(Berlin Heidelberg New York)並びにAtlas及びParks(編)The Handbook of Microbiological Media(1993)CRC Press,Boca Raton,FLで見つけることができる。
【0090】
細菌の系では、発現される産物の用途に応じて多数の発現ベクターを選択することができる。たとえば、抗体の産生について大量のポリペプチド又はその断片を必要とする場合、精製しやすい融合タンパク質の高レベル発現を指向するベクターを好都合に採用する。そのようなベクターには、当該コーディング配列、たとえば、上述のような本発明のポリヌクレオチドがアミノ末端翻訳開始メチオニン及び触媒上活性のあるβ−ガラクトシダーゼ融合タンパク質を生じるβ−ガラクトシダーゼの7残基についての配列を伴ってインフレームでベクターに連結され得るBLUESCRIPT(Stratagene)のような多機能の大腸菌のクローニング及び発現のベクター;pINベクター(Van Heeke & Schuster(1989)J Biol Chem 264:5503−5509);pETベクター(Novagen,Madison WI)が挙げられるが、これらに限定されず、その中では、アミノ末端メチオニンがフレーム内でヒスチジンタグ等に連結される。
【0091】
同様に、Saccharomyces cerevisiaeのような酵母では、α因子、アルコールオキシダーゼ及びPGHのような構成的な又は誘導可能なプロモータを含有する多数のベクターが所望の発現産物の製造に使用される。概説については、Berger,Ausubel、及びたとえば、Grantらの(1987;Methods in Enzymology,153:516−544)を参照のこと。哺乳類の宿主細胞では、プラスミド及びウイルスに基づいた系の双方を含んでなる多数の発現系を利用することができる。
【0092】
挿入した配列の発現を調節する能力又は発現されたタンパク質を所望の方法で処理する能力について宿主細胞を任意で選択する。そのようなタンパク質の修飾には、グリコシル化(同様に、たとえば、アセチル化、カルボキシル化、リン酸化、脂質化及びアシル化)が挙げられるが、これらに限定されない。たとえば、前駆体形態をタンパク質の成熟形態に切断する(たとえば、フリンプロテアーゼによって)翻訳後プロセッシングは、宿主細胞の文脈で任意で実施される。3T3、COS、CHO、HeLa、BHK、MDCK、293、WI38等のような様々な宿主細胞はそのような翻訳後活性について特定の細胞性の機構及び特徴的なメカニズムを有し、導入される外来タンパク質の正確な修飾を確保するように選択することができる。
【0093】
本明細書で開示される組換えPreFF抗原の長期間の高収率の産生のために、安定的な発現系が通常使用される。たとえば、ウイルスの複製開始点又は内因性発現要素及び選択可能なマーカー遺伝子を含有する発現ベクターを用いて、PreF抗原ポリペプチドを安定的に発現する細胞株が宿主細胞に導入される。ベクターの導入に続いて、選抜培地に移す前に細胞を強化培地で1〜2日間増殖させる。選択可能なマーカーの目的は、選抜に対する耐性を付与することであり、その存在によって、導入配列を上手く発現する細胞の増殖及び回収が可能になる。たとえば、細胞種に適した組織培養法を用いて、安定的に形質転換された細胞の耐性群又は耐性コロニーを増殖させることができる。細胞培養からのコードしたタンパク質の発現及び回収に好適な条件下で、PreF抗原をコードする核酸で形質転換された宿主細胞を任意に培養する。
【0094】
好適な細胞株の形質伝達及び適当な細胞密度への宿主細胞の増殖に続いて、選択したプロモータを適当な手段(たとえば、温度シフト又は化学誘導)によって誘導し、細胞をさらなる期間培養する。任意で、培地は、プロテイナーゼによる発現タンパク質の分解を低下させる成分及び/又は添加剤を含んでなる。たとえば、PreF抗原を産生する細胞を培養するのに使用される培地は、たとえば、キレート剤又は小分子阻害剤(たとえば、AZ11557272、AS111793等)のようなプロテアーゼ阻害剤を含んで細胞性の又は細胞外(たとえば、マトリクス)のプロテイナーゼによる望ましくない切断を減らす又は消失させることができる。任意で、無血清(及び/又は動物産物を含まない)培地にて細胞を培養する。たとえば、振盪器、フラスコ又は生物反応器にて目的によって好都合な規模で細胞を増殖させることができる。
【0095】
分泌されたポリペプチド産物を次いで培養培地から回収する。或いは、遠心によって細胞を回収し、物理的な又は化学的な手段によって粉砕し、得られた粗抽出物をさらなる精製のために保持することができる。タンパク質の発現で採用した真核細胞又は微生物細胞は、凍結融解の繰り返し、機械的粉砕、又は細胞溶解剤の使用、又は当業者に周知のそのほかの方法を含んでなる従来の方法によって粉砕することができる。
【0096】
硫安沈殿又はエタノール沈殿、酸抽出、濾過、限外濾過、遠心分離、アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィ、リンセルロースクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ(たとえば、本明細書で言及されるタグ方式を使用した)、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、及びレクチンクロマトグラフィを含んでなる当該技術で周知の多数の方法によって、組換え細胞培養から、発現されたPreF抗原を回収し、精製することができる。所望のように、成熟タンパク質の立体構造を完成することにおいてタンパク質の再折り畳み工程を使用することができる。最終的に、最終精製工程にて高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を採用することができる。上記で言及された参考文献に加えて、たとえば、Sandana(1997)Bioseparation of Proteins,Academic Press,Inc.;及びBollagらの(1996)Protein Methods、第2版、Wiley−Liss,NY;Walker(1996)The Protein Protocols Handbook Humana Press,NJ,Harris及びAngal(1990)Protein Purification Applications:A Practical Approach IRL Press at Oxford,Oxford,U.K.;Scopes(1993)Protein Purification:Principles and Practice、第3版、Springer Verlag,NY;Janson及びRyden(1998)Protein Purification:Principles,High Resolution Methods and Applications,第2版、Wiley−VCH,NY;並びにWalker(1998)Protein Protocols on CD−ROM Humana Press,NJで言及されたものを含んでなる種々の精製方法が当該技術で周知である。
【0097】
例となる一実施形態では、PreFタンパク質は、以下の精製スキームに従って細胞から回収される。PreFポリペプチドをコードする組換え核酸のCHO細胞への導入に続いて、一時的に形質移入された宿主細胞又は導入されたポリヌクレオチドを含んでなる増殖した安定な集団を培地にて、所望の目的に許容できる規模で増殖に好適な条件下で増殖させる(たとえば、一般にFreshney (1994) Culture of Animal Cells, a Manual of Basic Technique, third edition, Wiley− Liss, New York及びそこで引用された文献に記載されたように)。通常、細胞は、振盪フラスコ又は生物反応器にて無血清培地で増殖させ、2〜3日間隔で継代する。これらの条件で増殖した細胞から樹立した新しい培養を通常生物反応器にて無血清培地で実施し、PreF抗原を産生させるために20%にて維持されたpOと共に27℃にて5〜7日間インキュベートする。
【0098】
組換えPreF抗原を回収するには、細胞培養物を遠心し、細胞培養上清をさらなる使用までマイナス70℃にて保存する。培養上清の融解に続いて、上清をMilliQ水にて2倍に希釈し、HClでpH6.0に調整する。20mMのリン酸緩衝液pH6.0で平衡化したBPG140/500カラムに詰めた3LCMセラミックHyperDFF樹脂に希釈した上清を75cm/時間で負荷する。試料の負荷後、平衡緩衝液をカラムに通し、UVのベースラインに戻す。25mMのリン酸緩衝液pH7.0のカラム容積(CV)の5倍で洗浄した後、0.1MのNaClを含有する50mMのリン酸緩衝液pH7.0を用いて溶出を行う。
【0099】
CMHyperD溶離液を20mMリン酸緩衝液pH7.0で3.3倍に希釈し、20mMのPO(Na)緩衝液pH7.0で平衡化した270mlのハイドロキシアパタイト2型カラム(XK50に詰めた)にて50mL/分で処理する。平衡緩衝液(〜3CV)でカラムを洗浄した後、0.5MのNaClを含有する20mMのPO(Na)緩衝液pH7.0を用いて溶出を行う。
【0100】
20mMリン酸緩衝液pH7.0で平衡化した150mlのCaptoAdhereカラム(XK26に詰めた)にてHA溶離液を15ml/分(樹脂との10分間の接触に留意して)で処理する。0.1Mのアルギニン緩衝液を含有する10mMリン酸緩衝液pH7.0の5CVで洗浄した後、0.6Mのアルギニン緩衝液を含有する10mMリン酸緩衝液pH7.0を用いて溶出を行う。
【0101】
次いで、分取用サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)カラムで処理するためにCaptoAdhere溶離液を約10倍に濃縮する。50kDのペリコンポリエーテルスルホン膜を用いて濃縮を行う。SECカラムで処理する前に、ウイルス清浄工程で用いたPLANOVA 20N 100 cmのフィルターを介して物質を濾過する。このナノ濾過工程は、ペリコン膜での濃縮の前又は後のいずれかに置くことができる。
【0102】
次いで500mLのSuperdexS200カラムと移動相としての10mMのリン酸塩(Na/K)、160mMのNaCl、pH6.5緩衝液(最終緩衝液に相当する)を用いて分取用SECを行う。SECカラム容積の5%に相当する濃縮PreFの容積を約2.6ml/分で樹脂に負荷する。通常、10mlの分画を回収する。HCPレベルをできるだけ抑える一方で収率を最適化するのが所望であれば、銀染色によるSDSゲル及び抗HCP(宿主細胞タンパク質)のウエスタンブロットにて分画の分析プールを分析することができる。
【0103】
0.22μmのMillexフィルター(代わりにSterivexフィルターを使用することができる)での濾過の後、精製されたバルクが得られる。所望であれば、精製したPreF抗原調製物を使用に先立ってマイナス70℃で保存することができる。
【0104】
或いは、PreFタンパク質はポリヒスチジン(たとえば、6個のヒスチジン)を含んでなることができ、それを用いて精製を円滑にすることができる。そのようなヒスチジンのタグを付けたPreFポリペプチドについては、以下の精製プロトコールが採用される。固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィ(IMAC)を用いた精製に先立って、細胞培養上清を緩衝液A(20mMのビシン、pH8.5)で2倍に希釈し、pHを8.5に合わせる。予め緩衝液Aで平衡化した23mlのカラム容量のQセファロースFFカラム(GE Healthcare)に得られた溶液を負荷する。一部の宿主細胞の混入と共にPreFタンパク質をカラムに捕捉させる。IMAC精製工程を妨害する培養培地成分は保持されず、流水中で排除される。タンパク質は分離され、200mM、400mM、600mM、800mM及び1MのNaClの段階的溶出によって溶出される。当該のPreFタンパク質は、200mMのNaClでの最初の段階の間に溶出される。任意で、SDS−PAGE及びタグ付いたPreFタンパク質を検出する抗His−タグ抗体を用いたウエスタンブロットを用いて回収をモニターすることができる。精製を継続するのに先立って分画をプールすることができる。
【0105】
(プールされた)PreFタンパク質を含有する溶離液を緩衝液B(20mMのビシン、500mMのNaCl、pH8.3)で3倍に希釈し、pHを8.3に合わせる。予め緩衝液Bで平衡化した(たとえば、5mlのカラム容量)、塩化ニッケルを負荷したIMACセファロースFF樹脂(GE Healthcare)に得られた溶液を負荷する。PreFは樹脂に結合し、宿主細胞の混入物の大半は流水で溶出される。弱く結合した混入物を除くために20mMのイミダゾールでカラムを洗浄する。250mMのイミダゾールの一段階でPreFタンパク質を溶出する。クマシーブルーで染色するSDS−PAGE及び抗HIsタグのウエスタンブロットを行って陽性分画を特定する。
【0106】
次いでセントリコン濃縮装置(Millipore)を用いてIMACからのプールを少なくとも150μg/mlの濃度に濃縮することができ、500mMのL−アルギニンを補完したPBS緩衝液にてタンパク質を透析することができる。得られたタンパク質を、RCDCタンパク質アッセイ(BioRad)を用いて定量し、使用まで−70℃又は−80℃で保存する。
【0107】
免疫原性組成物及び方法
本明細書で開示されるPreF抗原は、免疫原性組成物の製剤化、特に、幼児における重篤な下部呼吸器疾患を含んでなる呼吸器疾患の有意な原因である少なくとも2つの異なったパラミクソウイルスに由来する抗原との組み合わせを含んでなるものの製剤化で有用である。通常そのような免疫原性組成物は、少なくとも2つのパラミクソウイルス及び薬学上許容可能なキャリア又は賦形剤を含んでなる。たとえば、特定の実施形態では、免疫原性組成物は、hMPV抗原及び、たとえば、PIV−3抗原又はPIV−1抗原のようなPIV抗原を含んでなる。他の実施形態では、免疫原性組成物は、RSV抗原及び、hMPV抗原又はPIV抗原(たとえば、PIV−3抗原又はPIV−1抗原)のいずれかを含んでなる。他の実施形態では、免疫原性組成物は、3つの抗原を含んでなる。たとえば、特定の実施形態では、免疫原性組成物は、hMPV抗原、PIV抗原、及びRSV抗原(たとえば、hMPV抗原、PIV−3抗原、及びRSV抗原)を含んでなる。別の実施形態では、免疫原性組成物は、hMPV抗原と2つの異なったPIV抗原(たとえば、PIV−3抗原及びPIV−1抗原)を含んでなる。そのような組成物は任意でRSV抗原を含んでなることもできる。好ましくは、本明細書で開示されるように、抗原はパラミクソウイルスのPreF抗原である。
【0108】
特定の実施形態では、免疫原性組成物は、hMVP、PIV(たとえば、PIV−3)及びRSVの少なくとも2つによる感染を軽減する又は防ぐワクチンである。一部の実施形態では、免疫原性組成物は、hMVP、PIV(たとえば、PIV−3)及びRSVの少なくとも2つによる感染に続く病理学的応答を軽減する又は防ぐワクチンである。任意で、異なったパラミクソウイルスから選択される(たとえば、hMVP、PIV及びRSVから選択される)少なくとも2つのPreF抗原を含有する免疫原性組成物は、異なった病原性ウイルスの少なくとも1つの追加の抗原と共に製剤化される。たとえば、病原性生物は、パラミクソウイルスの別の株(たとえば、PIVの最初の株がPIV−3である場合のPIV−1)であることができ、又はパラミクソウイルス以外の、たとえば、インフルエンザウイルスのような気道のウイルス性病原体であることができる。他の実施形態では、追加の剤が選択されて、複数の感染性生物に対して対象を防御するのに必要とされる投与を円滑にする又は接種の回数を減らす。たとえば、抗原は、とりわけ、インフルエンザ、B型肝炎、ジフテリア、破傷風、百日咳、インフルエンザ、ポリオウイルス、球菌又は肺炎球菌の1以上に由来することができる。
【0109】
特定の実施形態では、通常、PreF抗原がGタンパク質成分を含まない実施形態では、免疫原性組成物は、1以上の単離された組換えの及び/又は精製されたパラミクソウイルスGタンパク質と共に製剤化することができる。多数の好適なGタンパク質が当該技術で記載されており、完全長の組換えGタンパク質及びGタンパク質の一部(たとえば、アミノ酸128〜229又は130〜230)で構成されるキメラタンパク質及び融合相手(たとえば、チオレドキシン)又は発現及び/又は精製を円滑にするシグナル配列及び又はリーダー配列が挙げられる。PreF抗原との混合物で使用するための例となるRSVのGタンパク質は、PCT/CA2008/002277、WO2008114149、米国特許第5,149,650号、同第6,113,911号、米国公開出願20080300382及び米国特許第7,368,537号にて見つけることができ、そのそれぞれは参照によって本明細書に組み入れられる。
【0110】
薬学上許容可能なキャリア及び賦形剤は当業者に周知であり、当業者によって選択され得る。たとえば、キャリア又は賦形剤は好都合には緩衝液を含んでなることができる。任意で、キャリア又は賦形剤は、溶解性及び又は安定性を安定化させる少なくとも1つの成分も含有する。可溶化剤/安定剤の例には界面活性剤、たとえば、ラウレルサルコシン及び/又はツイーンが挙げられる。代替の可溶化剤/安定剤には、アルギニン及びガラス形成ポリオール(たとえば、スクロース、トレハロース等)が挙げられる。多数の薬学上許容可能なキャリア及び/又は薬学上許容可能な賦形剤が当該技術で既知であり、たとえば、E.W.Martin,Mack Publishing Co.,Easton,PAによるRemingtonのPharmaceutical Sciences、第5版(1975)に記載されている。
【0111】
従って、好適な賦形剤及びキャリアが当業者によって選択され、選択された投与経路によって対象に送達するために好適な製剤を製造することができる。
【0112】
好適な賦形剤には、限定しないで、グリセロール、ポリエチレングリコール(PEG)、ソルビトール、トレハロース、N−ラウロイルサルコシンナトリウム塩、L−プロリン、非界面活性剤スルホベタイン、塩酸グアニジン、尿素、酸化トリメチルアミン、KCl、Ca2+、Mg2+、Mn2+、Zn2+及びそのほかの二価のカチオン関連塩、ジチオスレイトール、ジチオエリトール、及びβ−メルカプトエタノールが挙げられる。そのほかの賦形剤は、界面活性剤(ツイーン80、ツイーン20、トリトンX−100、NP−40、エンピゲンBB、オクチルグルコシド、ラウロイルマルトシド、Zwittergent3−08、Zwittergent3−0、Zwittergent3−2、Zwittergent3−4、Zwittergent3−6、CHAPS、デオキシコール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、臭化セチルトリメチルアンモニウムを含んでなる)であり得る。
【0113】
任意で、免疫原性組成物はアジュバントも含んでなる。RSVに対する防御免疫応答を誘発する目的で対象に投与するのに好適な免疫原性組成物の文脈で、アジュバントを選択してTh1優位の免疫応答を誘発する。
【0114】
通常、アジュバントを選択して、組成物が投与される対象又は対象の集団においてTh1優位の免疫応答を高める。たとえば、RSV感染に感受性の(又はリスクが高い)特定の年齢群の対象に免疫原性組成物を投与すべき場合、対象及び対象の集団にて安全で且つ効果的であるようにアジュバントを選択する。従って、高齢者対象(たとえば、65歳を超える対象)での投与用にRSVのPreF抗原を含有する免疫原性組成物を製剤化する場合、高齢者対象にて安全で且つ効果的であるようにアジュバントを選択する。同様に、PreF抗原を含有する免疫原性組成物が、新生児又は乳児の対象(出生から2歳までの対象)に投与することを意図される場合、新生児及び乳児にて安全で且つ効果的であるようにアジュバントを選択する。
【0115】
さらに、免疫原性組成物が投与される投与の経路を介して投与される場合、アジュバントは通常、Th1免疫応答を高めるように選択される。たとえば、鼻内投与用にPreF抗原を含有する免疫原性組成物を製剤化する場合、プロテオソーム及びプロトリンが好都合なTh1優位のアジュバントである。それに対して、免疫原性組成物を筋肉内投与用に製剤化する場合、1以上の3D−MPL、スクワレン(たとえば、QS21)、リポソーム及び/又は油と水のエマルションを含んでなるアジュバントが好都合に選択される。
【0116】
PreF抗原との併用で使用するために好適なアジュバントの1つは、非毒性の細菌性リポ多糖類誘導体である。脂質Aの好適な非度屈性誘導体の例は、モノホスホリル脂質A、さらに詳しくは3−脱アセチル化モノホスホリル脂質A(3D−MPL)である。3D−MPLは、MPLの名称のもとでGlaxoSmithKline Biologicals N.A.によって販売され、文書全体を通してMPL又は3D−MPLと呼ばれる。米国特許第4,436,727;同第4,877,611号;同第4,866,034号及び同第4,912,094号を参照のこと。3D−MPLは、IFN−γ(Th1)表現型を持つCD4T細胞の応答を促進する。3D−MPLは、GB2220211Aで開示された方法に従って製造することができる。化学的には、それは、3,4,5又は6のアシル化鎖を持つ3−脱アセチル化モノホスホリル脂質Aの混合物である。本発明の組成物では、小粒子3D−MPLを使用することができる。小粒子3D−MPLは、0.22μmのフィルターを介して無菌濾過できるような粒度を有する。そのような調製物はWO94/21292に記載されている。
【0117】
3D−MPLのようなリポ多糖類は、免疫原性組成物のヒト用量当たり1〜50μgの量で使用することができる。そのような3D−MPLは、約25μgのレベルで、たとえば、20〜30μgの間で、好適には21〜29μgの間で、又は22〜28μgの間で、又は23〜27μgの間で、又は24〜26μgの間で、又は25μgで使用することができる。別の実施形態では、免疫原性組成物のヒト用量は、約10μgのレベルで、たとえば、5〜15μgの間で、好適には6〜14μgの間で、たとえば、7〜13μgの間で、又は8〜12μgの間で、又は9〜11μgの間で、又は10μgのレベルで3D−MPLを含んでなる。さらなる実施形態では、免疫原性組成物のヒト用量は、約5μgのレベルで、たとえば、1〜9μgの間で、又は2〜8μgの間で、好適には3〜7μgの間で、又は5μgのレベルで3D−MPLを含んでなる。
【0118】
他の実施形態では、リポ多糖類は、米国特許第6,005,099号及び欧州特許第0729473B1号に記載されたようにβ(1〜6)グルコサミン二糖類であり得る。当業者は、これらの参考文献の教示に基づいて3D−MPLのような種々のリポ多糖類を容易に製造することができる。それにもかかわらず、これら参考文献のそれぞれは、参照によって本明細書に組み入れられる。前述の免疫賦活剤(LPS又はMPL又は3D−MPLに似た構造の)に加えて、MPLの上記構造の一部であるアシル化された単糖類及び二糖類の誘導体も好適なアジュバントである。他の実施形態では、アジュバントは脂質Aの合成誘導体であり、その一部は、TLR−4作動薬として記載され、OM174(2−デオキシ−6−o−[2−デオキシ−2−[(R)−3−ドデカノイルオキシテトラ−デカノイルアミノ]−4−o−ホスホノ−β−D−グルコピラノシル]−2−[(R)−3−ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]−β−D−グルコピラノシルジヒドロゲノホスフェート)、(WO95/14026);OM294DP(3S,9R)−3−[(R)−ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]−4−オキソ−5−アザ−9(R)−[(R)−3−ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン−1,10−ジオール、1,10−ビス(ジヒドロゲノホスフェート)(WO99/64301及びWO00/0462);及びOM197MP−AcDP(3S−,9R)−3−(R)−ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]−4−オキソ−5−アザ−9−[(R)−3−ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン−1,10−diol、1−ジヒドロゲノホスフェート10−(6−アミノヘキサノエート)(WO01/46127)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
使用することができるそのほかのTLR4リガンドは、たとえば、WO98/50399又は米国特許第6,303,347号で開示された(AGPの調製方法も開示されている)もののようなアルキルグルコサミニドホスフェート(AGPs)であり、好適には、RC527若しくはRC529、又は米国特許第6,764,840号で開示されたようなAGSの薬学上許容可能な塩である。一部のAGPはTLR4の作動薬であり、一部はTLR4の拮抗剤である。双方共アジュバントとして有用であると思われる。
【0120】
TLR−4を介したシグナル伝達反応(Sabroe et al, JI 2003 p1630−5)を起こすことが可能であるそのほかの好適なTLR−4リガンドは、たとえば、グラム陰性細菌に由来するリポ多糖類及びその誘導体又はその断片、特にLPSの非毒性誘導体(たとえば、3D−MPL)である。そのほかの好適なTLR作動薬は、熱ショックタンパク質(HSP)10、60、65、70、75又は90;界面活性剤プロテインA、ヒアルロナンオリゴ糖、ヘパラン硫酸断片、フィブロネクチン断片、フィブリノーゲンペプチド及びb−デフェンシン−2、及びムラミルジペプチド(MDP)である。一実施形態では、TLR作動薬はHSP60,70又は90である。ほかの好適なTLR−4リガンドは、WO2003/011223及びWO2003/099195に記載されており、たとえば、WO2003/011223の4〜5ページ又はWO2003/099195の3〜4ページで開示された化合物I、化合物II及び化合物III、特にER803022、ER803058、ER803732、ER804053、ER804057、ER804058、ER804059、ER804442、ER804680及びER804764としてWO2003/011223で開示されたそれら化合物である。たとえば、好適なTLR−4リガンドの1つはER804057である。
【0121】
追加のTLR作動薬もアジュバントとして有用である。用語「TLR作動薬」は、直接的なリガンドとして又は内因性若しくは外因性のリガンドの生成を介して間接的に、TLRシグナル伝達経路を介したシグナル伝達反応を起こすことが可能である剤を指す。そのような天然の又は合成のTLR作動薬は、代わりの又は追加のアジュバントとして使用することができる。アジュバント受容体としてのTLRの役割の手短な概説は、Kaisho及びAkira,Biochimica et Biophysica Acta,1589:1−13,2002に提供されている。これらの潜在的なアジュバントには、TLR2、TLR3、TLR7、TLR8及びTLR9についての作動薬が挙げられるが、これらに限定されない。従って、一実施形態では、アジュバント及び免疫原性組成物はさらに、TLR−1作動薬、TLR−2作動薬、TLR−3作動薬、TLR−4作動薬、TLR−5作動薬、TLR−6作動薬、TLR−7作動薬、TLR−8作動薬、TLR−9作動薬又はこれらの組み合わせからなる群から選択されるアジュバントを含んでなる。
【0122】
本発明の一実施形態では、TLRを介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬が使用される。好適には、TLRを介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、トリアシル化リポペプチド(LPs);フェノール可溶性モジュリン;結核菌LP;S−(2,3−ビス(パルミトイルオキシ)−(2−RS)−プロピル)−N−パルミトイル−(R)−Cys−(S)−Ser−(S)−Lys(4)−OH、細菌性リポタンパク質のアシル化アミノ末端を模倣するトリヒドロクロリド(Pam3Cys)LP及びBorrelia burgdorferi由来のOspA LPから選択される。
【0123】
代替の実施形態では、TLR−2を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬が使用される。好適には、TLR−2を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、M tuberculosis、B burgdorferi又はT pallidumに由来するリポタンパク質、ペプチドグリカン、細菌性リポペプチド;Staphylococcus aureusを含んでなる種に由来するペプチドグリカン;リポタイコ酸、マンヌロン酸、ナイセリアポリン、細菌性フィムブリエ、エルシニア毒性因子、CMVビリオン、麻疹血液凝集素及び酵母由来のザイモサンの1以上である。
【0124】
代替の実施形態では、TLR−3を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬が使用される。好適には、TLR−3を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、二本鎖RNA(dsRNA)又はポリイノシン−ポリシチジン酸(ポリIC)、ウイルス感染に関連する分子核酸パターンである。
【0125】
代替の実施形態では、TLR−5を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬が使用される。好適には、TLR−5を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、細菌性フラジェリンである。
【0126】
代替の実施形態では、TLR−6を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬が使用される。好適には、TLR−6を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、抗酸菌性リポタンパク質、脱アシル化LP、及びフェノール可溶性モジュリンである。追加のTLR6作動薬はWO2003/043572に記載されている。
【0127】
代替の実施形態では、TLR−7を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬が使用される。好適には、TLR−7を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、一本鎖RNA(ssRNA)、ロキソリビン、N7位及びC8位におけるグアノシン類似体、又はイミダゾキノリン化合物若しくはその誘導体である。一実施形態では、TLR作動薬はイミキモドである。さらなるTLR7作動薬はWO2002/085905に記載されている。
【0128】
代替の実施形態では、TLR−8を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬が使用される。好適には、TLR−8を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、一本鎖RNA(ssRNA)、抗ウイルス活性を持つイミダゾキノリン分子、たとえば、レシキモド(R848)であり;レシキモドもTLR−7による認識が可能である。使用することができるそのほかのTLR−8作動薬には、WO2004/071459に記載されたものが挙げられる。
【0129】
代替の実施形態では、TLR−9を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬が使用される。一実施形態では、TLR−9を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、HSP90である。或いは、TLR−9を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、細菌性又はウイルス性のDNAであり、DNAは、特にCpGモチーフとして知られる配列の文脈にて非メチル化CpG分子を含有する。CpGを含有するオリゴヌクレオチドはTh1反応を優勢に誘導する。そのようなオリゴヌクレオチドは周知であり、たとえば、WO96/02555、WO99/33488及び米国特許第6,008,200号及び同第5,856,462号に記載されている。好適には、CpGヌクレオチドはCpGオリゴヌクレオチドである。本発明の免疫原性組成物で使用するのに好適なオリゴヌクレオチドは、少なくとも3つ、好適には少なくとも6つ以上のヌクレオチドによって分離される2以上のジヌクレオチドCpGモチーフを任意で含有するCpG含有オリゴヌクレオチドである。CpGモチーフは、グアニンヌクレオチドが後に続くシトシンヌクレオチドである。本発明のCpGオリゴヌクレオチドは通常、デオキシヌクレオチドである。特定に実施形態では、ホスホジエステル結合及びそのほかのヌクレオチド間結合は本発明の範囲内であるが、オリゴヌクレオチドにおけるヌクレオチド間はホスホロジチオエート結合又は好適にはホスホロチオエート結合である。また本発明の範囲内に含まれるのは混合されたヌクレオチド間結合を伴うオリゴヌクレオチドである。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド又はホスホロジチオエートを作製する方法は、米国特許第5,666,153号、同第5,278,302号及びWO95/26204に記載されている。
【0130】
たとえば、それ自体に又は3D−MPLとの組み合わせでPreF抗原を伴う免疫原性組成物で使用することができるそのほかのアジュバントは、たとえば、QS21のようなサポニンである。
【0131】
サポニンは、Lacaille−Dubois,M及びWagner,H.(1996. A review of the biological and pharmacological activities of saponins. Phytomedicine vol 2 pp 363‐386)にて教示されている。サポニンは、植物界及び海洋動物界に広く分布するステロイド又はトリテルペングリコシドである。サポニンは、振盪すると泡立つコロイド状水溶液を形成し、コレステロールを沈殿させることについて言及される。サポニンは細胞膜の近傍にあると、膜を破裂させる膜における孔様の構造を創る。赤血球の溶血はこの現象の例であり、それは、サポニンすべてではないが、特定のサポニンの特性である。
【0132】
サポニンは、全身性投与用のワクチンでアジュバントとして知られる。個々のサポニンのアジュバント活性及び溶血活性は当該技術で広範に研究されている(Lacaille−Dubois and Wagner、上記)。たとえば、クイルA(南米の樹木Quillaja Saponaria Molinaの樹皮に由来する)及びその分画は米国特許第5,057,540号及び“Saponins as vaccine adjuvants”、Kensil,C.R.,Crit Rev Ther Drug Carrier Syst,1996,12(1−2):1−55;及びEP0362279B1に記載されている。クイルAの分画を含んでなる免疫刺激複合体(ISCOMS)と呼ばれる粒子状の構造は、溶血性であり、ワクチンの製造に使用されている(Morein, B., EP 0 109 942 B1; WO 96/11711; WO 96/33739)。溶血性のサポニンQS21及びQS17(クイルAのHPLC精製した分画)は、強力な全身性アジュバントとして記載されており、その製造方法は、米国特許第5,057,540号及びEP0362279B1に記載されており、それらは参照によって本明細書に組み入れられる。全身性ワクチンの研究で使用されているそのほかのサポニンには、Gypsophila及びSaponaria(Bomford et al., Vaccine, 10(9):572‐577, 1992)のような植物種に由来するものが挙げられる。
【0133】
QS21は、Quillaja Saponaria Molinaの樹皮に由来するHPLC精製した非毒性の分画である。QS21の製造方法は、米国特許第5,057,540に開示されている。QS21を含有する非反応源性のアジュバント製剤はWO96/33739に記載されている。前述の参考文献は参照によって本明細書に組み入れられる。QS21のような前記免疫学的に活性のあるサポニンは、免疫原性組成物のヒト用量当たり1〜50μgの量で使用することができる。有利なことに、QS21は、約25μgのレベルで、たとえば、20〜30μgの間で、好適には21〜29μgの間で、又は22〜28μgの間で、又は23〜27μgの間で、又は24〜26μgの間で、又は25μgで使用することができる。別の実施形態では、免疫原性組成物のヒト用量は、約10μgのレベルで、たとえば、5〜15μgの間で、好適には6〜14μgの間で、たとえば、7〜13μgの間で、又は8〜12μgの間で、又は9〜11μgの間で、又は10μgのレベルでQS21を含んでなる。さらなる実施形態では、免疫原性組成物のヒト用量は、約5μgのレベルで、たとえば、1〜9μgの間で、又は2〜8μgの間で、好適には3〜7μgの間で、又は5μgのレベルでQS21を含んでなる。QS21及びコレステロールを含んでなるそのような製剤は、抗原と共に製剤化されると功を奏するTh1刺激性アジュバントであることが示されている。従って、たとえば、QS21及びコレステロールの組み合わせを含んでなるアジュバントを伴った免疫原性組成物にてPreFポリペプチドを好都合に採用することができる。
【0134】
任意で、アジュバントはまた、たとえば、アルミニウム塩又はカルシウム塩、特に水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム及びリン酸カルシウムのような鉱物塩を含んでなることができる。たとえば、アルミニウム塩(たとえば、水酸化アルミニウム又は「アラム」)との組み合わせで3D−MPLを含有するアジュバントは、ヒト対象に投与するためのPreF抗原を含有する免疫原性組成物での製剤化に好適である。
【0135】
PreF抗原と共に製剤化するのに使用するために好適なTh1優位のアジュバントの別の部類には、OMPに基づく免疫賦活組成物が挙げられる。OMPに基づく免疫賦活組成物は、たとえば、鼻内投与用の粘膜アジュバントとして特に好適である。OMPに基づく免疫賦活組成物は、細菌性又はウイルス性の抗原のような免疫原のためのキャリアとして又は組成物にて有用である、たとえば、Neisseria種(たとえば、Lowellら、J.Exp.Med.167:658,1988;Lowellら、Science,240:800,1988;Lynchら、Biophys.J.45:104,1984;Lowell,in “New Generation Vaccines”第2版、Marcel Dekker,Inc.,New York,Basil,Hong Kong,page 193,1997;米国特許第5,726,292号;同第4,707,543号を参照)のような、しかし、これらに限定されないグラム陰性細菌に由来する外膜タンパク質(一部のポリンを含んでなるOMP)の調製物に属する。一部のOMPに基づく免疫賦活組成物は、「プロテオソーム」と呼ぶことができ、それは疎水性であり、ヒトでの使用に安全である。プロテオソームは、約20nm〜約800nmの小胞又は小胞様のOMPクラスターに自己形成する能力を有し、タンパク質抗原(Ag)、特に親水性部分を有する抗原と非共有性に取り込み、配位し、会合し(たとえば、静電気的に又は疎水性に)、又はさもなければ共同する。複数の分子膜構造又は1以上のOMPの溶融球状OMP組成物を含んでなる小胞形態又は小胞様形態で外膜成分を生じる任意の調製方法は、プロテオソームの定義の範囲内に含まれる。たとえば、当該技術(たとえば、米国特許第5,726,292号又は同第5,985,284号)に記載されたようにプロテオソームを調製することができる。プロテオソームはまた、OMPポリンを製造するのに使用される細菌(たとえば、Neisseria種)を起源とする内因性のリポ多糖類又はリポオリゴ糖類(LPS又はLOS)を含有することができ、それらは一般にOMP調製物全体の2%未満である。
【0136】
プロテオソームはNeisseria menigitidisから化学的に抽出された外膜タンパク質(OMP)(ほとんど、クラス4のOMPと同様にポリンA及びB)から主として構成され、界面活性剤によって溶液で維持される(Lowell GH. Proteosomes for Improved Nasal, Oral, or Injectable Vaccines. In: Levine MM, Woodrow GC, Kaper JB, Cobon GS, eds, New Generation Vaccines. New York: Marcel Dekker, Inc. 1997; 193‐206)。プロテオソームは、たとえば、透析濾過又は従来の透析工程によって、本明細書で開示されるPreFポリペプチドを含んでなるウイルス供給源に由来する精製された又は組換えのタンパク質のような種々の抗原と共に製剤化することができる。界面活性剤を徐々に取り除くことによって約100〜200nmの直径の粒子状疎水性の複合体を形成することができる(Lowell GH. Proteosomes for Improved Nasal, Oral, or Injectable Vaccines. In: Levine MM, Woodrow GC, Kaper JB, Cobon GS, eds, New Generation Vaccines. New York: Marcel Dekker, Inc. 1997; 193‐206)。
【0137】
「プロテオソーム:LPS又はプロトリン」は、本明細書で使用されるとき、少なくとも1種のリポ多糖類による外因性添加によって混合されてOMP−LPS組成物(免疫原性組成物として機能することができる)を提供するプロテオソームの調製物を指す。従って、OMP−LPS組成物は、(1)たとえば、Neisseria menigitidisのようなグラム陰性細菌から調製されるプロテオソームの外膜タンパク質調製物(たとえば、プロジュバント)と(2)1以上のリポ糖類の調製物を含んでなる、プロトリンの2つの基本成分で構成することができる。リポオリゴ糖は、外因性であることができ(たとえば、OMPプロテオソーム調製物に天然に含有される)、外因性に調製されたリポオリゴ糖(たとえば、OMP調製物とは異なった培養物又は微生物から調製された)と混合することができ又は組み合わせることができ、又はそれらの組み合わせであることができる。そのような外因性に添加されるLPSは、OMP調製物が作製されたのと同じグラム陰性細菌に由来することができ、又は異なったグラム陰性細菌に由来することができる。プロトリンはまた、任意で脂質、糖脂質、糖タンパク質、小分子等を含んでなることが理解されるべきである。プロトリンは、たとえば、米国特許出願公開第2003/0044425号に記載されたように調製することができる。
【0138】
上述のもののような異なったアジュバントの組み合わせもPreF抗原との組み合わせで使用することができる。たとえば、すでに言及したように、QS21を3D−MPLと一緒に製剤化することができる。QS21:3D−MPLの比率は通常、たとえば、1:5〜5:1のような1:10〜10:1の桁であり、実質的に1:1であることが多い。通常、比率は、2.5:1〜1:3の3D−MPL:QS21の範囲である。別の組み合わせアジュバントの製剤には、3D−MPLと、たとえば、水酸化アルミニウムのようなアルミニウム塩が挙げられる。組み合わせで製剤化する場合、この組み合わせが抗原特異的なTh1免疫応答を高めることができる。
【0139】
一部の例では、アジュバント製剤には、水中油型エマルション、又はたとえば、カルシウム塩又はアルミニウム塩、たとえば、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム及び水酸化アルミニウムのような鉱物塩が挙げられる。
【0140】
一部の実施形態では、アジュバントは、油及び水のエマルション、たとえば、水中油型エマルションを含んでなる。水中油型エマルションの一例は、水性キャリア中に代謝可能な油、たとえば、スクアレン、トコフェロールのようなトコール、たとえば、α−トコフェロール、及びたとえば、トリオレイン酸ソルビタン(スパン85(商標))又はモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ツイーン80(商標))のような界面活性剤を含んでなる。特定の実施形態では、水中油型エマルションは、追加の免疫賦活剤を含有しない(特に3D−MPLのような非毒性脂質A誘導体又はQS21のようなサポニンを含有しない)。水性キャリアは、たとえば、リン酸緩衝生理食塩水であり得る。さらに、水中油型エマルションは、スパン85及び/又はレシチン及び/又はトリカプリリンを含有することができる。
【0141】
本発明の別の実施形態では、抗原又は抗原組成物及び水中油型エマルションを含んでなるアジュバント組成物と任意で1以上のさらなる免疫賦活剤を含んでなるワクチン組成物が提供され、前記水中油型エマルションは、0.5〜10mgの代謝可能な油(好適にはスクアレン)、0.5〜11mgのトコール(好適には、α−トコフェロールのようなトコフェロール)及び0.4〜4mgの乳化剤を含んでなる。
【0142】
特定の一実施形態では、アジュバント製剤は、水中油型エマルションのようなエマルション形態で調製された3D−MPLを含んでなる。場合によっては、エマルションはWO94/21292で開示されたように直径2μm未満の小さな粒度を有する。たとえば、3D−MPLの粒子は、22μmの膜を介して無菌濾過されるのに十分なくらい小さくてもよい(欧州特許第0689454号に記載されたように)。或いは、3D−MPLはリポソーム製剤に調製することができる。任意で、3D−MPL(又はその誘導体)を含有するアジュバントは、追加の免疫賦活成分も含んでなる。
【0143】
アジュバントは、免疫原性組成物が投与される集団にて安全で且つ有効であるように選択される。成人集団及び高齢者集団については、製剤は通常、幼児製剤で通常見られるアジュバント成分より多くを含んでなる。特にエマルションのような水中油型エマルションを用いた製剤は、たとえば、コレステロール、スクアレン、α−トコフェロール及び/又はたとえば、ツイーン80若しくはスパン85のような界面活性剤のような追加の成分を含んでなることができる。例となる製剤では、そのような成分は、以下の量:約1〜50mgのコレステロール、2〜10%のスクアレン、2〜10%のα−トコフェロール、0.3〜3%のツイーン80で存在することができる。通常、スクアレン:α−トコフェロールの比率は、これがさらに安定なエマルションを提供する場合、等しいか又は1未満である。場合によっては、製剤は安定剤も含有することができる。
【0144】
たとえば、PreFポリペプチドを伴う免疫原性組成物を幼児に投与するために製剤化する場合、アジュバントの投与量は、幼児対象で有効であり、相対的に反応源性ではないように決定される。一般に、幼児製剤におけるアジュバントの投与量は、成人(たとえば、65歳以上の成人)への投与で設計される製剤で使用されるものより低い。一般に、幼児製剤におけるアジュバントの投与量は、成人(たとえば、65歳以上の成人)への投与で設計される製剤で使用されるものより低い(たとえば、用量は、成人に投与される製剤で提供される用量の画分であってもよい)。たとえば、3D−MPLの量は通常、用量当たり1μg〜200μg、たとえば、10〜100μg又は10〜50μgである。幼児用量は通常、この範囲、たとえば、約1μg〜約50μgの低い方の端であり、たとえば、約2μg、又は約5μg、又は約10μg、又は約25μgまで又は約50μgまでである。通常、QS21が製剤で使用される場合、範囲は同程度である(及び上記比率に従って)。油及び水のエマルション(たとえば、水中油型エマルション)の場合、小児又は幼児に提供されるアジュバントの用量は、成人対象に投与される用量の画分であり得る。たとえば、3D−MPLとの組み合わせでアラムが存在する場合、量は通常、用量当たり約100μg〜1mgの間、たとえば、約100μg又は約200μg〜約750μg、たとえば、約500μgである。
【0145】
免疫原性組成物は通常、免疫防御量(又はその画分用量)の抗原を含有し、従来の技法で調製することができる。ヒト対象への投与用のものを含んでなる免疫原性組成物の調製は、一般に、Pharmaceutical Biotechnology,Vol.61,Vaccine Design−the subunit and adjuvant approach,edited by Powell and Newman,Plenurn Press,1995.New Trends and Developments in Vaccines, edited by Vollerら、University Park Press,Baltimore,Maryland,U.S.A.1978に記載されている。リポソーム内へのカプセル化は、Fullertonによる米国特許第4,235,877号に記載されている。高分子へのタンパク質の抱合は、たとえば、Likhiteによる米国特許第4,372,945号及びArmorらによる同第4,474,757号に開示されている。
【0146】
通常、免疫原性組成物の各用量におけるタンパク質の量は、典型的な対象にて重大な有害な副作用なしで免疫防御の応答を誘導する量として選択される。この文脈での免疫防御は、感染に対する完全な防御を必ずしも意味するものではなく;症状又は疾患、特にウイルスに関連した重篤な疾患に対する防御を意味する。抗原の量は、どの特定の免疫原が採用されるかによって変化し得る。一般に、各ヒト用量は、1〜1000μgのタンパク質、たとえば、約1μg〜約100μg、たとえば、約1μg〜約50μg、たとえば、約1μg、約2μg、約5μg、約10μg、約15μg、約20μg、約25μg、約30μg、約40μg、又は約50μgを含んでなることが予想される。免疫原性組成物で利用される量は、対象集団(たとえば、幼児又は高齢者)に基づいて選択される。特定の組成物の任意の量は、対象における抗体力価及びそのほかの応答の所見を含んでなる標準的な検討によって確定することができる。最初のワクチン接種に続いて、約4週間以内に対象は追加免疫を受けることができる。
【0147】
選択されるアジュバントにかかわりなく、最終製剤の濃度は、標的集団で安全且つ有効であるように算出されることに留意すべきである。たとえば、ヒトにおいてパラミクソウイルス、たとえば、RSV、hMPV及びPIVに対して免疫応答を誘発するための免疫原性組成物は、好都合には幼児(最初の投与の年齢が、たとえば、出生〜1年の間、たとえば、0〜6ヵ月)に投与される。パラミクソウイルス、たとえば、RSV、hMPV及びPIVに対して免疫応答を誘発するための免疫原性組成物はまた、高齢者のヒトにも好都合に投与される(たとえば、単独で、又はインフルエンザ抗原及び/又はCOPDに関連する抗原若しくはそのほかの病原体との組み合わせで)。アジュバントの選択は、これらの異なった適用で異なることができ、各状況の最適なアジュバント及び濃度は当業者によって経験的に決定され得ることが十分に理解されるであろう。
【0148】
従って、hMPV、PIV及びRSVの2以上による暴露又は感染(その後の治療的な又はそれに先立つ予防的な)を治療するための医薬の調製におけるPreF抗原又はそれをコードする核酸の使用も本開示の特徴である。同様に、対象においてhMPV、PIV及び/又はRSVに対する免疫応答を誘発する方法は本開示の特徴である。そのような方法には、免疫的に有効な量の、PreF抗原を含んでなる組成物をヒト対象のような対象に投与することが含まれる。一般に、組成物はTh1優位の免疫応答を誘発するアジュバントを含んでなる。組成物は、これら病原体のいずれか1つとの接触に続くウイルス性疾患を促進することなく、hMPV、PIV及び/又はRSVに特異的な免疫応答を誘発するように製剤化される。すなわち、組成物は、hMPV、PIV及び/又はRSVによる感染を軽減する又は予防する、及び/又はこれらパラミクソウイルスによる感染に続く病的応答を軽減する又は予防するTh1優位の免疫応答を生じるように製剤化される。組成物は種々の異なった経路によって投与することができるが、最も一般的には免疫原性組成物は、筋肉内又は鼻内の経路によって送達される。
【0149】
免疫原性組成物は通常、免疫防御量(又はその画分用量)の抗原を含有し、従来の技法によって調製することができる。ヒト対象への投与用のものを含んでなる免疫原性組成物の調製は、一般に、Pharmaceutical Biotechnology,Vol.61,Vaccine Design−the subunit and adjuvant approach,edited by Powell and Newman,Plenurn Press,1995.New Trends and Developments in Vaccines, edited by Vollerら、University Park Press,Baltimore,Maryland,U.S.A.1978に記載されている。リポソーム内へのカプセル化は、Fullertonによる米国特許第4,235,877号に記載されている。高分子へのタンパク質の抱合は、たとえば、Likhiteによる米国特許第4,372,945号及びArmorらによる同第4,474,757号に開示されている。
【0150】
通常、免疫原性組成物の各用量におけるタンパク質の量は、典型的な対象にて重大な有害な副作用なしで免疫防御の応答を誘導する量として選択される。この文脈での免疫防御は、感染に対する完全な防御を必ずしも意味するものではなく;症状又は疾患、特にウイルスに関連した重篤な疾患に対する防御を意味する。抗原の量は、どの特定の免疫原が採用されるかによって変化し得る。一般に、各ヒト用量は、1〜1000μgのタンパク質、たとえば、約1μg〜約100μg、たとえば、約1μg〜約50μg、たとえば、約1μg、約2μg、約5μg、約10μg、約15μg、約20μg、約25μg、約30μg、約40μg、又は約50μgを含んでなることが予想される。免疫原性組成物で利用される量は、対象集団(たとえば、幼児又は高齢者)に基づいて選択される。特定の組成物の任意の量は、対象における抗体力価及びそのほかの応答の所見を含んでなる標準的な検討によって確定することができる。最初のワクチン接種に続いて、約4〜12週間以内に対象は追加免疫を受けることができる。たとえば、PreF抗原を含有する免疫原性組成物を幼児対象に投与する場合、最初の接種とそれに続く接種は、この期間に投与されるワクチンと合うように投与することができる。
【0151】
以下の実施例を提供して特定の特別な特徴及び/又は実施形態を説明する。これらの実施例は、記載される特別な特徴又は実施例に本発明を限定するように解釈されるべきではない。
【0152】
実施例
実施例1:例となるPreF抗原
呼吸器多核体ウイルス
例となるパラミクソウイルスPreF抗原は、あらゆる目的で本明細書に組み入れられるPCT/CA2008/002277で記載されたようにRSVのFタンパク質に基づいて作出した。Fの前融合立体構造に対して生成される免疫応答が、膜の融合に関与する結合、立体構造シフト及び/又はそのほかの事象を妨げる抗体を優先的に含んでなり、それによって防御的応答の有効性を高めるという予測に基づいて、前融合立体構造でタンパク質を安定化するためにRSVのFタンパク質にて修飾を行った。
【0153】
図1AとBは、RAVのF0と例となるPreF組換え抗原の特徴を模式的に説明する。図1AはRSVのF0タンパク質の説明である。F0は574のアミノ酸からなるプレタンパク質である。F0プレタンパク質は翻訳に続いてタンパク分解処理され、グリコシル化される。その後シグナルペプチダーゼによって取り除かれるシグナルペプチドは小胞体(RE)へのF0プレタンパク質の翻訳を標的とする。REにおける初期のペプチドは複数の部位(三角によって示される)で次いでグリコシル化される。F0のフリン切断はF2ペプチドドメイン及びF1ペプチドドメインを生じ、それらは、F2−F1へテロ二量体の3量体(すなわち、F2−F1の3倍)として一緒に折り畳まれ、形成する。天然の状態では、Fタンパク質は、C末端領域の膜貫通螺旋によって膜に固定される。F0ポリペプチドのさらなる特徴には、15システイン残基、4の特徴的な中性エピトープ、2つのコイルドコイル領域、及び脂質化モチーフが挙げられる。図1Bは、例となるPreF抗原の特徴を説明する。PreF抗原を構築するには、Fタンパク質の前融合立体構造を安定化するようにF0ポリペプチドを修飾し、それによって、宿主細胞に結合及び融合する前にRSVウイルスによって示されるようなFタンパク質の優勢な免疫原性エピトープを保持する。以下の安定化する変異を、F0ポリペプチドに対するPreF抗原に導入した。第1に、安定化するコイルドコイルドメインをF0ポリペプチドの細胞外ドメインのC末端に置き、F0の膜に固定するドメインを置き換えた。第2に、pep27ペプチド(天然のタンパク質のF2とF1のドメインの間に位置する)を取り除いた。第3に、双方のフリンモチーフを除いた。代替の実施形態では(PreF_V1及びPreF_V2と命名した)、RSVタンパク質の免疫的に活性のある部分(たとえば、アミノ酸149〜229)をC末端ドメインに付加した。例となるRSVのPreF抗原の配列は配列番号10によって表される。
【0154】
PCT/CA2008/002277に詳細に開示されたように、例となるPreF抗原はRSVに特異的な強固な免疫応答を誘発することが示された。図6A及び6Bは、特徴的なIgG及び中和抗体の応答を説明する。図7は例となるPreF抗原の投与によって付与されたRSV感染に対する防御を説明する。
【0155】
ヒトのメタニューモウィルス(hMPV)及びパラインフルエンザウイルス3(PIV−3)
hMPV及びPIV−3の融合タンパク質に相当する追加のPreF抗原を作出した。これらのPreFポリペプチドの配列はそれぞれ配列番号12及び14によって表される。RSVのPreF抗原で示したように、hMPV及びPIV−3のPreFポリペプチドは溶液中で三量体に自己形成する。
【0156】
hMPV及びPIV−3のPreFポリペプチドの免疫原性を確認するために、及びパラミクソウイルスによる感染を防ぐ組み合わせワクチンでの使用について抗原としての好適性を明らかにするために、表1に示すように、1以上のPreFポリペプチドのみ及び二重及び三重の組み合わせでそれらを含んでなる免疫原性組成物でマウスを免疫した。
【表1】

【0157】
ELISAによって個々の血清試料について抗原特異的なIgG抗体の力価を測定した。手短には、RSV、hMPV又はPIVタンパク質(0.5μg)のPreFの1つで3シリーズの96穴プレートを被覆し、4℃で一晩インキュベートした。1:200で出発してブロッキング緩衝液で血清試料を連続希釈し、室温で2時間インキュベートした。西洋ワサビのペルオキシダーゼ(HRP)を結合した抗マウスIgG(Sigma、ON)によって、結合した抗体を検出した。3,3A,5,5A−テトラメチルベンジジン(TMB、BD Opt EIATM,BD Biosciences,ON)をHRPの基質として使用した。50μlの1MのHSOを各ウェルに加えて反応を止めた。MolecularDeviceマイクロプレートリーダー(Molecular Devices,USA)によって450nmにて各ウェルについて吸収値を検出した。結果を幾何平均力価(GMT±95%CL)として表す。説明に役立つ結果を図8Aに示す。
【0158】
3種のPreF抗原は、単独又は二重及び三重の組み合わせのいずれもELISAで検出される有意なIgG抗体力価を引き出した。
【0159】
高い力価の中和抗体の存在は、パラミクソウイルス感染に対する防御と相関することが示されている。PreFポリペプチドが防御的免疫応答を誘発することが可能であることを明らかにするために、三価、二価及び一価のAS03で免疫したマウスの血清をウイルスに対する中和能について評価した。中和抗体を検出するアッセイはTCID50法に基づいた。
【0160】
96穴プレート(20μl/ウェル)にて培地で1:16の希釈から開始して、個々の免疫動物の血清を連続希釈した。対照のウェルは、培地のみ又はウイルス特異的抗体を含有した。中和アッセイに先立ってウイルスの滴定を行った。異なったウイルス間の標準化は、Vero細胞の感染度に基づいた。20μl/ウェルのウイルスストック(以下の力価)をプレートに加えた。
RSV→2.67×10TCID50/ml
hMPV→2.81×10TCID50/ml
PIV−3→2.11×10TCID50/ml
【0161】
プレートを33℃で20分間インキュベートし、予め1×10個/mlのVero細胞を播いた96穴平底プレートに混合物を移した。33℃(5%CO)にて4日後、上清を取り除き、PBSでプレートを洗浄し、PBS中1%のパラホルムアルデヒドで付着細胞を固定した。間接免疫蛍光(RSV;hMPV)又は細胞変性効果(PIV−3)によって感染をモニターした。
【0162】
Spearman−Karber(SK)法を用いて50%組織培養感染用量(TICD50)の計算を行い、以下のようにNIの比率を算出した。
{[中和力価(0μg/mlの阻害剤]−[中和力価(25μg/mlの阻害剤]}/[中和力価(0μg/mlの阻害剤]×100
【0163】
図8Bに示すように、PreF抗原は、単独又は組み合わせのいずれもウイルス複製を阻害することが可能である特異的な中和抗体を引き出した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトのメタニューモウイルス(hMPV)、パラインフルエンザウイルス3(PIV−3)及び呼吸器多核体ウイルス(RSV)からなる群から選択される少なくとも2つのパラミクソウイルスのFタンパク質抗原を含んでなる、免疫原性組成物。
【請求項2】
前記少なくとも2つのパラミクソウイルスのFタンパク質抗原がそれぞれ、パラミクソウイルスのFタンパク質ポリペプチドのFドメインおよびFドメインを含んでなるFタンパク質ポリペプチドを含んでなる(ここで、Fタンパク質ポリペプチドは膜貫通ドメインを欠いており、かつ、ヘテロ三量体化ドメインを含んでなる)、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
前記少なくとも2つのパラミクソウイルスのFタンパク質抗原が、組換えFタンパク質ポリペプチドである、請求項1又は2に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記ヘテロ三量体化ドメインが、FドメインのC末端に位置する、請求項2又は3に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
Fタンパク質ポリペプチドの少なくとも1つが、介在性フリン切断部位を伴わないF2ドメインおよびF1ドメインを含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記Fタンパク質ポリペプチドの少なくとも1つが、前記F2ドメインと前記F1ドメインの間に未変化の融合ペプチドを含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
前記Fタンパク質ポリペプチドの少なくとも1つが、
(a)少なくとも1つの酵素切断部位の欠失、
(b)Fタンパク質の細胞外ドメインの疎水性ドメインにおける親水性アミノ酸の少なくとも1つの置換又は付加、及び
(c)グリコシル化を変化させるアミノ酸置換
から選択される少なくとも1つの修飾を含んでなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
前記Fタンパク質ポリペプチドが三量体を形成する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
前記少なくとも2つのパラミクソウイルスのFタンパク質抗原が、ヒト呼吸器多核体ウイルス(RSV)のFタンパク質抗原と、ヒトのメタニューモウイルス(hMPV)のFタンパク質抗原及びパラインフルエンザウイルス3(PIV−3)のFタンパク質抗原のうち少なくとも1つとを含んでなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記少なくとも2つのパラミクソウイルスのFタンパク質抗原が、ヒトのメタニューモウイルス(hMPV)のFタンパク質抗原及びパラインフルエンザウイルス3(PIV−3)のFタンパク質抗原を含んでなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
呼吸器多核体ウイルス(RSV)のFタンパク質抗原をさらに含んでなる、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
インフルエンザウイルスの血球凝集素(HA)タンパク質抗原をさらに含んでなる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
前記Fタンパク質ポリペプチドの少なくとも1つが、シグナルペプチドをさらに含んでなる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
前記Fタンパク質ポリペプチドの少なくとも1つが、コイルドコイルドメインを含んでなるヘテロ三量体化ドメインを含んでなる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
前記Fタンパク質ポリペプチドの少なくとも1つが、イソロイシンジッパーを含んでなる三量体化ドメインを含んでなる、請求項14に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
前記Fタンパク質ポリペプチドの少なくとも1つが、配列番号15のアミノ酸配列を含んでなるイソロイシンジッパードメインを含んでなる、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
前記Fタンパク質ポリペプチドの少なくとも1つが、Fタンパク質の細胞外ドメインの疎水性ドメインにおいて親水性アミノ酸の少なくとも1つの置換又は付加を含んでなる、請求項1〜16のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
前記疎水性ドメインが、前記Fタンパク質の細胞外ドメインのHRBコイルドコイルドメインである、請求項17に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
前記疎水性ドメインが、前記Fタンパク質の細胞外ドメインのHRAドメインである、請求項17に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
前記Fタンパク質ポリペプチドの少なくとも1つが、天然に存在するFタンパク質前駆体(F)に存在するフリン切断部位を消失させる少なくとも1つのアミノ酸の付加、欠失又は置換を含んでなる、請求項1〜19のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
前記Fタンパク質ポリペプチドの少なくとも1つが、グリコシル化を変化させる少なくとも1つの修飾をさらに含んでなる、請求項1〜20のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
前記少なくとも2つのパラミクソウイルスのFタンパク質抗原の1以上が、
(a)配列番号10を含んでなるか、又はそれからなるRSVのFタンパク質ポリペプチド、配列番号12を含んでなるか、又はそれからなるhMPVのFタンパク質ポリペプチド、及び配列番号14を含んでなるか、又はそれからなるPIV−3のFタンパク質ポリペプチド、
(b)配列番号9によってコードされるRSVのFタンパク質ポリペプチド、配列番号11によってコードされるhMPVのFタンパク質ポリペプチド、配列番号13によってコードされるPIV−3のFタンパク質ポリペプチド、及び配列番号9、11及び13の少なくとも1つにストリンジェントな条件下で実質的に全長にわたってハイブリダイズするポリヌクレオチド配列によってコードされるPreFタンパク質ポリペプチド;並びに
(c)配列番号10と少なくとも89%の配列同一性を持つPreFポリペプチド、配列番号12と少なくとも94%の配列同一性を持つPreFポリペプチド、及び配列番号14と少なくとも95%の配列同一性を持つPreFポリペプチド
からなる群から選択される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
少なくとも1つのパラミクソウイルスGタンパク質ポリペプチド又はその断片をさらに含んでなる、請求項1〜21のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項24】
前記Gタンパク質ポリペプチドが、配列番号4の参照Gタンパク質配列のアミノ酸番号149〜229に相当するアミノ酸配列を含んでなる、請求項23に記載の免疫原性組成物。
【請求項25】
前記Gタンパク質ポリペプチドが、天然に存在するGタンパク質ポリペプチドに対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含んでなり、前記アミノ酸置換が、ワクチンにより増強されたウイルス性疾患の軽減又は予防に相関する、請求項23に記載の免疫原性組成物。
【請求項26】
前記Gタンパク質ポリペプチドが、完全長のGタンパク質ポリペプチドを含んでなるか、あるいは、Gタンパク質ポリペプチドの少なくとも一部を含んでなる融合タンパク質を含んでなる、請求項23に記載の免疫原性組成物。
【請求項27】
前記Gタンパク質ポリペプチドが、前記Fタンパク質抗原を含んでなる融合タンパク質の中に存在する、請求項23に記載の免疫原性組成物。
【請求項28】
前記Fタンパク質ポリペプチドの少なくとも1つが、リンカーをさらに含んでなる、請求項1〜25のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項29】
前記リンカーがアミノ酸配列GGを含んでなる、請求項28に記載の免疫原性組成物。
【請求項30】
前記リンカーがアミノ酸配列GGSGGSGGSを含んでなる、請求項28に記載の免疫原性組成物。
【請求項31】
前記Fタンパク質ポリペプチドの少なくとも1つが、ポリヒスチジンタグをさらに含んでなる、請求項1〜30のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項32】
前記Fタンパク質ポリペプチドの少なくとも1つが、ポリペプチドの多量体を含んでなる、請求項1〜31のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項33】
前記Fタンパク質ポリペプチドの少なくとも1つが、ポリペプチドの三量体を含んでなる、請求項1〜32のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項34】
キャリア又は賦形剤をさらに含んでなる、請求項1〜33のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項35】
前記キャリア又は賦形剤が緩衝液を含んでなる、請求項34に記載の免疫原性組成物。
【請求項36】
アジュバントをさらに含んでなる、請求項1〜35のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項37】
前記アジュバントが、Th1優位の免疫応答を誘発する、請求項36に記載の免疫原性組成物。
【請求項38】
前記アジュバントが、3D−MPL、QS21、水中油型エマルション及びミョウバンのうち少なくとも1つを含んでなる、請求項37に記載の免疫原性組成物。
【請求項39】
前記アジュバントが水中油型エマルションを含んでなる、請求項38に記載の免疫原性組成物。
【請求項40】
前記水中油型エマルションがトコールを含んでなる、請求項38又は39に記載の免疫原性組成物。
【請求項41】
3D−MPLをさらに含んでなる、請求項38〜40のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項42】
前記アジュバントが3D−MPLを含んでなる、請求項38に記載の免疫原性組成物。
【請求項43】
ミョウバンをさらに含んでなる、請求項42に記載の免疫原性組成物。
【請求項44】
QS21をさらに含んでなる、請求項42に記載の免疫原性組成物。
【請求項45】
前記3D−MPL及びQS21がリポソーム製剤中にある、請求項44に記載の免疫原性組成物。
【請求項46】
前記アジュバントが新生児への投与に好適である、請求項36〜45のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項47】
前記免疫原性組成物が、hMPV、PIV−3及びRSVのうち2以上による感染を軽減する又は予防する、請求項1〜46のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項48】
前記免疫原性組成物が、hMPV、PIV−3及び/又はRSVによる感染に続く病的な症状又は疾患を軽減する又は予防する、請求項1〜47のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項49】
請求項1〜33のいずれか1項に記載の組換えパラミクソウイルスFタンパク質抗原をコードするポリヌクレオチド配列を含んでなる、組換え核酸。
【請求項50】
前記RSV抗原をコードするポリヌクレオチド配列が、選択される宿主細胞における発現のためにコドンが最適化されている、請求項49に記載の組換え核酸。
【請求項51】
前記核酸が、
(a)配列番号9、配列番号11及び配列番号13を含んでなるか、又はそれらからなるポリヌクレオチド配列;
(b)(a)のポリヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下で実質的に全長にわたってハイブリダイズするポリヌクレオチド配列;
(c)(a)のポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の配列同一性を持つポリヌクレオチド配列
から選択されるポリヌクレオチド配列を含んでなる、請求項49又は50に記載の組換え核酸。
【請求項52】
請求項49〜51のいずれか一項に記載の組換え核酸を含んでなる、ベクター。
【請求項53】
前記ベクターが、原核細胞又は真核細胞の発現ベクターを含んでなる、請求項52に記載のベクター。
【請求項54】
請求項49又は50に記載の核酸あるいは請求項52又は53に記載のベクターを含んでなる、宿主細胞。
【請求項55】
前記宿主細胞が、細菌細胞、昆虫細胞、植物細胞及び哺乳類細胞からなる群から選択される、請求項54に記載の宿主細胞。
【請求項56】
RSV感染を治療するための医薬の調製における請求項1〜33のいずれか一項に記載のFタンパク質抗原あるいは請求項49又は50に記載の核酸の使用。
【請求項57】
前記医薬が、hMPV、PIV−3及びRSVのうち1以上による感染を予防的に治療する目的で投与される、請求項56に記載のFタンパク質抗原又は核酸の使用。
【請求項58】
hMPV、PIV−3及びRSVのうち1以上に対する免疫応答を誘発する方法であって、請求項1〜48のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を対象に投与することを含んでなる、方法。
【請求項59】
前記免疫応答がTh1優位の免疫応答である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記免疫応答が、hMPV、PIV−3及びRSVのうち1以上による感染を軽減する又は予防する防御的免疫応答を含んでなる、請求項58又は59に記載の方法。
【請求項61】
前記対象がヒト対象である、請求項58〜60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
医薬に使用するための請求項1〜33のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項63】
RSVに関連する疾患の予防又は治療に使用するための請求項1〜33のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。

【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図1A】
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【図1B】
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【公表番号】特表2012−530761(P2012−530761A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516745(P2012−516745)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059006
【国際公開番号】WO2010/149743
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(502296914)アイディー バイオメディカル コーポレイション オブ ケベック (9)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】