説明

ワックス−殺生物剤木材処理

【課題】ワックス−殺生物剤木材処理2より木材を保存する方法を提供する。
【解決手段】パラフィンワックス、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤、および少なくとも1つの有機木材防腐剤を含む水性組成物と、木材を接触させることによる、木材を保存する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材を腐蝕させる生物からの保護を付与するために木材を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木材を処理するために有機溶媒中の重合体、ワックスおよび殺生物剤の使用は、例えば、米国特許第4,143,010号で、四塩化炭素のような有機溶媒中にペンタクロロフェノール、脂肪酸またはワックス、および合成重合体を用いて木材を処理することを開示する報告がなされた。しかし、木材への殺生物剤の浸透を高める方法そのままで、有機溶媒の使用なしに木材を処理する方法が望ましい。
【特許文献1】米国特許第4,143,010号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明によって検討される問題は、木材への殺生物剤の浸透を高めるために、水性配合物中で殺生物剤とワックスで木材を処理する方法、および水性木材処理配合物を安定化する方法の必要性である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、(a)45から75℃の融点、および1ミクロンより大きくない平均粒子サイズを有するパラフィンワックス;(b)少なくとも1つの非イオン性界面活性剤;および(c)有機木材防腐剤:を含む水性組成物と、木材を接触させることによって木材を保存する方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
有機木材防腐剤としては、例えば、ハロゲン化3−イソチアゾロン殺生物剤、3−ヨードプロパルギルn−ブチルカルバメート、プロピコナゾール、テブコナゾール、ベソキサジンおよび非ハロゲン化3−イソチアゾロン殺生物剤、例えば2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(「OIT」)が挙げられる。
【0006】
さらに、油、鉱物油のような天然または合成のいずれかのパラフィン油、あるいはヒマワリ油、大豆油、パーム油、またはそれらの水素添加類似体のような穀物油も、いっそう安定な木材処理エマルジョンを作るために使用されうる。このエマルジョンは、陰イオン性界面活性剤を任意に含みうる。
【0007】
全ての百分率およびppm値は、重量基準であり、そして他に特に示されない限り、処理混合物の総重量に基づいている。有機木材防腐剤は、微量の不純物としてのものを除いて金属を含まないものである。ハロゲン化イソチアゾロン殺生物剤は、好ましくは、C−C12のN−アルキル置換基を有する3−イソチアゾロン、さらに好ましくは塩素化3−イソチアゾロン、そして最も好ましくは4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(「DCOIT」)を含む。
【0008】
本発明に使用するのに適したワックスは、好ましくは、45〜160℃までの、好ましくは130℃より大きくなく、あるいはまた75℃より大きくなく、あるいはまた65℃より大きくなく、あるいはまた56℃より大きくない融点(しばしば軟化点と報告される)を示す。パラフィン、例えばスラックワックスおよびスケールワックス、カルナバ、ポリエチレン、ポリプロピレン、酸素化ポリエチレン、マレイン酸無水物で修飾されたポリプロピレン、およびマレイン酸無水物C−C24アルキレン共重合体は、本発明に使用するのに適している。1つより多くのワックスが、木材処理混合物に含まれうる。好ましくは、ワックスは、500nmより大きくない、あるいはまた250nmより大きくない、あるいはまた120nmより大きくない、あるいはまた110nmより大きくない、あるいはまた100nmより大きくない平均粒子サイズを示す。
【0009】
典型的な非イオン性界面活性剤は、それに限定されないが、ポリエーテル、例えばエチレンオキシドおよびプロピレンオキシド縮合物が挙げられ、これは、直鎖および分岐鎖アルキル並びにアルキルアリールポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールエーテルおよびチオエーテル、約7から約18個までの炭素原子を含有するアルキル基を有し、そして約3個から約100個までのエチレンオキシ単位を有するアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、およびソルビタン、ソルビド、マンニタン、マンニドおよびアルキルポリグルコシドを含むヘキシトールのポリオキシアルキレン誘導体を包含する。
【0010】
木材を処理するために使用される水性組成物は、好ましくは、300ppmから5,000ppmまで、さらに好ましくは400ppmから4,000ppmまで、そして最も好ましくは500ppmから2,000ppmまでのハロゲン化イソチアゾロン殺生物剤を含有する。好ましくは、組成物は、0.001%から3%まで、さらに好ましくは0.01%から1%まで、そして最も好ましくは0.02%から0.7%までの界面活性剤を含有する。本発明の1つの実施態様では、界面活性剤の濃度は、0.02%から0.4%までである。好ましくは、組成物のワックス固形分含有率は、0.5%から5%まで、さらに好ましくは1%から3%までである。好ましくは、ワックス固形分対殺生物剤比は、1:1から150:1まで、さらに好ましくは3:1から70:1までである。
【0011】
水性木材処理組成物は、非水性溶媒を任意に含有する。好ましくは、溶媒の量は、0.01%から2%まで、さらに好ましくは0.02%から1%まで、そして最も好ましくは0.04%から0.5%までである。適切な溶媒は、少なくとも150℃の沸点を、そして好ましくは少なくとも60℃の引火点を有するエステルおよびエーテル溶媒を含む。好ましくは、水性組成物は、実質的に他の溶媒を含まない。適切な溶媒の例としては、グリコール、およびそれらのエーテルおよびエステル、例えばテキサノール(TEXANOL)(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール,モノ−イソブチレートエステル;イーストマン社(Eastman Co.)、テネシー州キングスポート(Kingsport,TN)から入手可能)、ダウアノールDPM(DOWANOL DPM)(ジプロピレングリコール、メチルエーテル;ダウ・ケミカル社(Dow Chemical Co.)から入手可能)、ダウアノールPPH(プロピレングリコールフェニルエーテル)、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルのようなトリプロピレングリコールのアルキルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルのようなエチレングリコールのアルキルエーテル、およびジエチレングリコールモノブチルエーテルのようなジエチレングリコールのアルキルエーテル、およびアーチャー(Archer)RCヒマワリ油エステルのような穀物油エステルが挙げられる。
【0012】
所定の場合には、得られた木材処理エマルジョンは十分に適合性でなく、そして木材の表面上にワックス粒子を堆積させることなく木材が処理されうるように、エマルジョンを安定化する追加の成分を必要とする。10000ppmまでの追加の非イオン性界面活性剤(3〜7モルまでのエチレンオキシド含有量)を添加できる(好ましくは、100〜8000ppmの範囲、さらに好ましくは150〜6000ppmの範囲)。さらなる適合性が必要とされる場合、それにより上に示されるとおり、0.1から1%までの油を添加しうる(好ましくは0.1〜1%、さらに好ましくは0.2〜0.6%の範囲にある)。油のワックスに対する比は、2:1から1:50までである(好ましい範囲は1:3から1:10までである)。任意に、乳化を助けるために0.1〜1%の陰イオン性界面活性剤を添加しうる(さらに好ましくは0.2〜0.6%の範囲にある)。使用しうる陰イオン性界面活性剤の例は、アルキルおよびアルキルアリールスルホン酸、並びにC10−C24脂肪酸のアルカリ金属およびアンモニウム塩である。パルミチン酸、オレイン酸およびステアリン酸のような脂肪酸の塩は、それらがある程度撥水性を付与できるので好ましい。好ましい塩は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、およびヒドロキシアルキルアンモニウム、例えばヒドロキシエチルアンモニウムあるいはトリ(ヒドロキシエチル)アンモニウムである。
【0013】
本発明に使用される水性組成物は、都合により、それに限定されないが、安定化剤、染料、他の木材殺生物剤、殺真菌剤および殺昆虫剤、抗酸化剤、金属キレート剤、ラジカルスカベンジャーなどを含めた別の成分を含みうる。安定化剤としては、例えば、個々に使用されるかまたは組合わせて使用される、有機および無機UV安定化剤、例えば、浸出に抵抗する、酸化銅または他の銅塩または錯体;酸化亜鉛;鉄塩、酸化鉄、鉄錯体、透明酸化鉄およびナノ粒子酸化鉄;二酸化チタン;ベンゾフェノンおよび置換ベンゾフェノン;桂皮酸並びにそれのエステルおよびアミド;置換トリアジン、例えば、トリフェニルトリアジンおよび置換フェニルトリアジンUV吸収剤、ベンゾトリアゾールおよび置換ベンゾトリアゾールUV吸収剤;ヒンダードアミン光安定化剤が挙げられる。他の木材殺生物剤、殺真菌剤および殺昆虫剤としては、米国特許番号第6,610,282号に記載のもの、例えばイミダクロプリドおよびペルメトリンが挙げられる。抗酸化剤としては、市販で入手可能ないずれかの抗酸化剤化合物、例えば、イルガフォス(IRGAFOS)のようなホスファイト抗酸化剤、ラクトン抗酸化剤、BHTのようなフェノール性抗酸化剤、アスコルビン酸、およびイルガノックス(IRGANOX)などが挙げられる。金属キレート剤としては、例えばEDTA、NTA、1,10−フェナントロリン、アキュマー(ACUMER)3100、デクエスト(DEQUEST)、タモール(TAMOL)731、トリポリホスフェート、並びに金属塩をキレート化または分散させる上で有用な他の無機および有機化合物および重合体が挙げられる。ラジカルスカベンジャーとしては、例えばテンポ(TEMPO)が挙げられる。
【0014】
好ましくはAWPA基準T1−05、N1−04、N2−04およびそこに引用された文献で特定された条件下で、ここに記述される水性組成物と、木材を接触させることによって、木材の処理を行う。
【0015】
1つの好ましい実施態様では、処理混合物は、単一容器内で、0.5〜5%ワックス固形分、400〜4000ppmDCOIT、0〜1.5%界面活性剤(類)、および残部水を用いて、即時使用エマルジョンとして配合される。
【実施例】
【0016】
処理混合物
DCOIT/ダウアノール(DOWANOL)から得られる木材処理混合物の製造
DPM/テキサノール(TEXANOL)配合物:
【0017】
20分間、300rpmで攪拌しながら、市販のワックスエマルジョンを、総重量まで(添加されるべき殺生物剤の重量を引いて)水道水で希釈することによって、1ガロン(3.8L)の処理混合物を製造した。十分に攪拌した混合物に、十分に配合されたDCOIT〔1:1ジプロピレングリコールメチルエーテルに溶解した、25%DCOITおよび25%TERGITOL15−S−5(40エチレンオキシド単位を有する分岐C15アルキル)、全て、DCOIT配合物中の重量基準〕をゆっくりと添加して、表1に示されるとおり800ppmまたは2500ppmDCOITの最終濃度を生じさせた。その混合物を、30分間攪拌し、そして木材を処理するときにそのまま使用する。
【0018】
木材を処理する手順:
2つの5.5×5.5×1インチ(14×14×2.5cm)片のサザンイエローパインを、注入管、ガス/真空注入口、圧力センサー、ドロップアウト弁およびレベルインジケーターを有する2L圧力容器装置に入れる。その容器を密閉し、そして圧力を、26〜27インチのHg(88〜91kPa)に減少させ、そして15〜20分間保持する。真空をとめ、そして十分な処理混合物を、木材を完全に覆うまで、その容器に注ぐ。容器をおよそ150psig(1136kPa)まで加圧する。ポンプを使用して、木材より上の液体水準を維持する。それ以上処理混合物が、木材に取り込まれないとき、圧力を解放し、そしてその容器を、ドロップアウト弁を介して排出する。木材を、この時点で取り出し(フルセル(full cell)処理)うるか、または再度およそ5分間、容器を真空で吸引し、容器を再度ドレインし、そしてその後木材を取り出して(最終真空処理でのフルセル)、処理された木材からある程度の表面水分を部分的に除去しうる。ここに報告される木材の全ては、最終真空手順でフルセルを介して処理された。
【0019】
処理混合物と木材の分析:
そのままの処理混合物の2gのサンプルを、HPLCによりDCOITについて分析する。処理混合物は、表1に示されるとおり、800ppmまたは1500ppmのDCOITを含有することが認められた。
【0020】
いったん木材サンプルが、一定重量まで乾燥され、一定温度および湿度の部屋に入れられると、それを、DCOIT含有量について分析した。3/4インチ(19mm)のフォルストナービットを含むドリル加圧機を使用して、3つの穴を木材に開けた。穴の配置は、一方の上面であり、側面および末端から少なくとも1/4インチ(6.4mm)であり、そして木目角は、2つの面の間で最も垂直であった。各穴から、1、3および10ミリメートルの深さで、1ミリメートルの区分を集め、合わせ、そしてDCOITについて分析した。
【0021】
2時間、超音波により、メタノール中で、既知重量の木材削り出しサンプルを抽出する。その後、抽出物を室温まで冷却させる。逆相高速液体クロマトグラフィーによって、冷却した抽出物を分析する。移動相として水とメタノールを使用する25cmのC18カラムを使用して、DCOITを、サンプルマトリックスから分離する。280ナノメートルで設定された紫外線検出器を使用して、DCOITを検出する。サンプル中のDCOITピークのピーク面積を、外部標準算出法を使用した標準溶液中のDCOITピークと比較することによって、サンプル中のDCOITの濃度を決定する。
【0022】
表1は、1、3および10mmの深さで、ppm単位で、木材中のDCOITについての浸透データ;ワックスエマルジョンの平均粒子サイズ(PS);ワックスの融点(MP);ワックス配合物中に存在する界面活性剤(ワックス界面活性剤)の型(N=非イオン性、A=陰イオン性);ワックス型、および木材の処理前/中の処理混合物の安定性(S=安定、U=不安定)を示す。
【0023】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)45から75℃の融点、および1ミクロンより大きくない平均粒子サイズを有するパラフィンワックス;
(b)少なくとも1つの非イオン性界面活性剤;および
(c)少なくとも1つの有機木材防腐剤:
を含む水性組成物と、木材を接触させることを含む、
木材を保存する方法。
【請求項2】
平均粒子サイズが、120nmより大きくない請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの有機木材防腐剤が、ハロゲン化3−イソチアゾロン殺生物剤である請求項2記載の方法。
【請求項4】
ハロゲン化3−イソチアゾロン殺生物剤が、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンである請求項3記載の方法。
【請求項5】
パラフィンワックスが、56℃より大きくない融点を有する請求項4記載の方法。
【請求項6】
組成物が、0.5%から5%のパラフィンワックス、および400ppmから4000ppmの4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを含む請求項5記載の方法。
【請求項7】
パラフィンワックスが、110nmより大きくない平均粒子サイズを有する請求項6記載の方法。

【公開番号】特開2007−216680(P2007−216680A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−17320(P2007−17320)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】