説明

ワックスおよびそれを用いた木質床材

【課題】 耐磨耗性及び耐傷性に優れ、しかも、人間の健康に有益なワックスおよびそれを用いた木質床材を提供すること。
【解決手段】 水性樹脂系ワックスとトルマリン微粉末とを混合させて成る。このワックスを用い、木質基板1の表面に塗料を塗装して形成された塗膜層2の表面に塗布して表面保護層3を設けて成る。これにより、水性樹脂系ワックスとトルマリン微粉末とを混合させて成るワックスに含まれるトルマリン微粉末からマイナスイオンが発生するので、人間の健康に有益なものとなり、しかも、木質基板1の表面に塗料を塗装して形成された塗膜層2の表面に塗布して表面保護層3を設けた結果として、界面活性効果や、水のクラスターの細分化という効果から耐磨耗性及び耐傷性に優れる木質床材が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワックスおよびそれを木質基板の表面に塗布し形成された表面保護層を有する木質床材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、木質基板の表面に塗料を塗布した木質床材として、たとえば、アミノアルキッド樹脂液に炭化珪素やホワイトアルミナなどの無機質充填剤を配合し混合させた下塗り塗料を木質基板の表面に塗装し、この上に上塗り塗料を塗装して、耐磨耗性を向上させた木質床材が知られている。このような木質床材にあっては、耐磨耗性や耐傷性を向上させることが重要な要素の一つとなっている。
【0003】
しかしながら、上記の塗装方式では、木質基板の下塗り塗料に配合される上記無機質充填剤の比重が大きいため、下塗りの塗装工程において無機質充填剤が沈殿し均一に分散されないことがあり、これにより表面における耐磨耗性にばらつきの生ずることがあった。また、下塗り塗料を木質基板の表面に塗装した際に、塗料中の樹脂成分が木質基板に浸透してしまい、下塗り塗料を塗装した下塗膜層の無機質充填剤の保持力が弱くなる。したがって、耐傷性は確保できるものの、耐磨耗性の十分得られないことがあった。
【0004】
そこで、例えば特開平1−105861号公報には、図3に示すように、木質基板100の表面に下塗り塗料を塗装して下塗膜層101を形成し、この下塗膜層101に無機質充填剤を含有する中塗り塗料を塗装して中塗膜層102を形成し、この中塗膜層102に粉末樹脂系ワックスを含有する上塗り塗料を塗装して上塗膜層103を設けた木質床材が開示されている。 この技術は、中塗膜層102で無機質充填剤が確実に保持されて耐磨耗性と耐傷性が確保でき、また上塗膜層により耐磨耗性をさらに向上させる点において一応の効果を奏している。
【0005】
ところで、最近、マイナスイオンが人間の健康に対して効果的であることが注目され、マイナスイオンを大量に発生させる環境を実現させることを目的とし、例えば内壁に珪藻土とトルマリンとの混合材を用いるなど、微弱電流を流し続けるトルマリンを部屋の内装に用いることが提案されている。例えば特開2002−306588号公報には、樹脂ワックス、ワニス、塗料等の塗布剤を主成分とし、これにトルマリン(電気石)微粉末が混合されてなる機能性塗布剤の技術が示されている。これによると、部屋の壁面やクロス、押入れ、天井、更にはフローリングの艶だし等の為にスプレー等により塗布されて使用した場合、塗布された塗布剤におけるトルマリンの機能により、室内等に高いマイナスイオンが発生し、室内環境が良好になり、健康が増進されるとされている。
【0006】
また、木質床材への適応としては、例えば特開2002−147002号公報には、マイナスイオンを放出するトルマリン鉱石の微粉末を上塗り塗料に混ぜて化粧床材の表面に塗布する建築用化粧床材の技術が開示されている。この場合、 図4に示すように、マイナスイオン203を放出するトルマリン鉱石を5μから15μぐらいに微粉末状に粉砕し、そのトルマリン微粉末粒子202を建築用木質化粧床材を製造する塗装工程での上塗り塗料201に混ぜ、その塗料を木質化粧床材を製造する塗装工程の上塗り塗装でロールコーターやフローコーターなどの塗装機で塗布し、乾燥して固着させている。これによりトルマリン鉱石の微粉末粒子202は木質化粧床材の表層部塗膜層内に固着され、塗膜がある限りトルマリン鉱石の微粉末粒子2からマイナスイオン203を発散できることになる。
【0007】
しかし、上記のように、スプレー等により塗布するものは均一に塗布することが難しく、また上塗膜層を塗料にトルマリン微粉末を混合させることは、耐磨耗性や耐傷性の点において表面性能にばらつきの生ずるという問題発生が懸念される。例えば、施工養生の際に表面の塗膜に傷が付き易く、その塗膜の傷の再生がし難いことも想定される。トルマリン微粉末が沈殿し均一に分散されないからである。
【特許文献1】特開平1−105861号公報
【特許文献2】特開2002−306588号公報
【特許文献3】特開2002−147002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、耐磨耗性及び耐傷性に優れ、しかも、人間の健康に有益なワックスおよびそれを用いた木質床材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本願発明によるワックスは、水性樹脂系ワックスとトルマリン微粉末とを混合させて成ることを特徴としている。
【0010】
そして、前記水性樹脂系ワックスは、30〜40重量%の量のアクリル系樹脂を添加したものであることが好ましい。
【0011】
また、本願発明による木質床材は、上記いずれかに記載のワックスを用い、木質基板の表面に塗料を塗装して形成された塗膜層の表面に塗布して表面保護層を設けて成ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本願発明のワックスおよびそれを用いた木質床材は、水性樹脂系ワックスとトルマリン微粉末とを混合させて成るワックスに含まれるトルマリン微粉末からマイナスイオンが発生するので、人間の健康に有益なものとなり、しかも、木質基板の表面に塗料を塗装して形成された塗膜層の表面に塗布して表面保護層を設けた結果として、界面活性効果や、水のクラスターの細分化という効果から耐磨耗性及び耐傷性に優れるということを特徴として有する木質床材が得られる。
【0013】
そして、前記水性樹脂系ワックスは、30〜40重量%の量のアクリル系樹脂を添加したことにより、木質基板表面の塗料による塗膜層との付着性が向上するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1〜2は、本願の請求項1乃至請求項3に対応した一実施形態であるワックスおよびそれを用いた木質床材を示し、図1を参照すると、本発明の一実施例としてのワックスを用いた木質床材の概略構成図が示されている。
【0015】
この実施形態のワックスは、水性樹脂系ワックスとトルマリン微粉末とを混合させて成る。この場合、前記水性樹脂系ワックスは、30〜40重量%の量のアクリル系樹脂を添加してもいる。
【0016】
また、この実施形態の木質床材は、上記のワックスを用い、木質基板1の表面に塗料を塗装して形成された塗膜層2の表面に塗布して表面保護層3を設けて成る。
【0017】
詳しくは、このワックスは、粒径として0.4μm程度のトルマリン微粉末を、5〜30重量%の量添加させている。なお、このトルマリン微粉末の添加量としては、5〜50重量%程度であっても良いが、5〜30重量%の量とすることにて、通常のワックス効果以外に、トルマリンによる、マイナスイオンを大量に発生させる環境を形成し、人体の多くを構成しているプラスイオンとのバランス調整をとるトルマリン効果を発現する。このように、微弱電流を流し続けるトルマリンは結果としてマイナスイオンの発生と、それ以外に界面活性効果、水のクラスターの細分化という効果を生み出す。これにより、後述する水性樹脂系ワックスに混入する界面活性剤の減量も可能となる。
【0018】
また、上記水性樹脂系ワックスは、樹脂分、可塑剤、界面活性剤、除菌剤、防腐剤、消泡剤及び水などを混合させたもので、この場合、通常はこの樹脂分が15〜20重量%であるのに対し、30〜40重量%の量のアクリル系エマルジョン樹脂を添加して構成されている。したがって、上記木質基板1の表面の塗膜層との付着性が向上するという効果を奏する。また、表面保護層3の保護性能の高いものとなり、耐磨耗性がより向上することとなる。
【0019】
この木質基板1の表面に下塗り塗料を塗装して下塗膜層21を形成し、この下塗膜層21に無機充填剤を含有する中塗り塗料を塗装して中塗膜層22を形成し、この中塗膜層22に粉末樹脂ワックスを含有する上塗り塗料を塗装して上塗膜層23を形成して塗膜層2を形成し、この塗膜層2の表面に水性樹脂系ワックスとトルマリン微粉末とを混合させた混合ワックス剤を塗布して表面保護層3を設けて成るものであり、この場合、木質基板1の表面に、塗膜層として下塗膜層21と中塗膜層22と上塗膜層23が、刷毛、ロールコーター、フローコーター、あるいはスプレーなどにより形成されて成る。
【0020】
木質基板1としては、ベニヤ合板、ハードボードパーティクルボード等の合板基材11に単板12が貼着されたものが使用されるが、これに限定されるものではない。下塗膜層21と中塗膜層22を形成する塗料としては、アミノアルキッド樹脂液、ポリウレタン樹脂液、ポリエステル樹脂液、アクリル樹脂液、塩化ビニル樹脂液などが使用されるが、ポリウレタン樹脂液は、樹脂自体が耐磨耗性に優れており好ましい。
【0021】
下塗膜層21は、上記塗料を単独で使用し、中塗膜層22としては、上記塗料の固形分に対して、炭化珪素、アルミナのような無機質充填剤を20〜50重量%程度配合した塗料にて形成されている。また、上塗膜層23は、上記塗料にポリエチレン系ワックスのような粉末樹脂ワックスを固形分に対して10〜20重量%配合した塗料にて形成され、この上塗膜層23上には、水性樹脂系ワックスとトルマリン微粉末とを混合させた混合ワックス剤による表面保護層3が設けられる。
【0022】
本形態の木質床材は、合板基材11の表面に単板12が貼着されて木質基板1が構成され、この木質基板1の単板12表面がサンディング、実加工の後カラーリングされて、下塗膜層21と中塗膜層22と上塗膜層23とが順に形成され、上塗膜層23を乾燥させて形成された塗膜層2の表面に、図2に示すロールコーターAによる塗布方法によって平滑な表面保護層3が設けられて乾燥されて製造される。この場合、粘度は、岩田塗装機株式会社の簡易粘度計によるフォードカップNo.2において20〜30秒程度とし、塗布量を0.5〜2g/尺2 程度とし、60〜90℃の温度のドライヤーにより1〜15分程度の乾燥条件としている。
【0023】
かかるワックスおよびそれを用いた木質床材は、水性樹脂系ワックスとトルマリン微粉末とを混合させて成るワックスに含まれるトルマリン微粉末からマイナスイオンが発生するので、人間の健康に有益なものとなり、しかも、木質基板1の表面に塗料を塗装して形成された塗膜層2の表面に塗布して表面保護層を設けた結果として、界面活性効果や、水のクラスターの細分化という効果から耐磨耗性及び耐傷性に優れるということを特徴として有する木質床材が得られる。
【0024】
そして、水性樹脂系ワックスを、30〜40重量%の量のアクリル系樹脂を添加したことにより、木質基板表面の塗料による塗膜層との付着性が向上するという効果を奏する。
【0025】
また、工場出荷時点において、通常の塗料によっては得られないしっとりとした質感で且つ肉厚感の仕上がりとなり美観上好ましい。さらに、施工養生時に付いた傷に対しても、再度同様のワックス処理を行って再生することも可能となり、施工性も向上できるという効果がもたらされる。
【0026】
なお、本発明は上記各実施例に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施例は適宜変更され得ることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本願発明の一実施形態である木質床材の概略構成を示す断面図。
【図2】同木質床材の、混合ワックス剤の塗布工程の説明図。
【図3】従来例の木質床材の概略構成を示す断面図。
【図4】別の従来例の木質床材の概略構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0028】
1 木質基板
2 塗膜層
3 表面保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性樹脂系ワックスとトルマリン微粉末とを混合させて成るワックス。
【請求項2】
前記水性樹脂系ワックスは、30〜40重量%の量のアクリル系樹脂を添加したものであることを特徴とする請求項1のワックス。
【請求項3】
請求項1または請求項2いずれかに記載のワックスを用い、木質基板の表面に塗料を塗装して形成された塗膜層の表面に塗布して表面保護層を設けて成ることを特徴とする木質床材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−143824(P2006−143824A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333932(P2004−333932)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】