説明

ワックス乳剤防腐剤組成物および製造方法

連続相としての水、不連続相としてのワックス、乳化剤および一般構造:(I)


(式中、Rは、C〜Cアルキルで場合により置換されることが可能である、チアゾリル、イソチアゾリルまたはチアジアゾリルなどの、窒素および硫黄を含有する複素環であることが可能であり、Rは、水素またはC〜Cアルキル、特に水素であることが可能であり、nは、0、1、2または3であり、Rのそれぞれの例は、独立して、水素、C〜Cアルキル、フェノキシ、C〜Cアルコキシ、ハロ、アミノ、C〜Cアルキルアミノ、ジC〜Cアルキルアミノ、イミダゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、チエニル、フリル、ピリル、ナフチル、フェニル、ハロフェニル、C〜CアルキルフェニルまたはC〜Cアルコキシフェニルであることが可能である。)を有する防腐剤を含む、乳剤。この防腐剤は、乳剤が形成された後に乳剤に添加することができる。この乳剤は、石膏ボードまたは石膏木材繊維ボードなどの石膏製品に組み込むことができる。この石膏製品は、石膏、水および乳剤を含有するスラリーを固体製品に成形することにより製造できる。リグノセルロース材料と結合剤とを混合して混合物を作成し、この混合物を特定の形状に固化して複合製品を成形することにより製造されるリグノセルロース複合製品の耐水性を改善する方法は、上記のように、この混合物に乳剤を添加することを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
石膏(硫酸カルシウム二水和物)は、その一定の諸特性により工業製品および建築製品(特に石膏ボードおよび石膏木材繊維(GWF)製品)の製造に大変よく使用されている。石膏は、豊富で、一般に安い原料であり、脱水および再水和の工程により、注型、成型または他の方法で有用な形状に成型することができる。石膏ボードの製造の基礎原料は、通常スタッコと呼ばれる硫酸カルシウム(石膏)の半水和物であり、二水和物を加熱変換して水相を取り除くことにより製造される。
【0002】
石膏製品の製造は、一般に、石膏および最終製品の他の成分を含有する石膏含有スラリーを調製すること、ついで加工してスラリーから水を除去すること、および残る固体を成形および乾燥して所望の形に加工することを含む。石膏スラリーは、石膏ボードの製造において、紙基材上に流しこまれなければならない。連続工程において、スラリー/基材の組み合わせは、ついでローラ間を通過することによりサイジング処理される。このサイジング処理工程と同時に、サイジング処理した石膏スラリー上に紙の裏当を置く。従って、この石膏スラリーは、適切にサイジング処理した石膏ボードが製造されうるように、十分な流動性を有さなければならない。流動性とは、石膏スラリーが流動する能力を指す。
【0003】
石膏ボードの製造にあたり、限られた程度で石膏スラリーを発泡させることができることもまた重要である。発泡性とは、発泡させることができるこの能力を指す。石膏スラリーおよび紙基材がサイジングローラを通過するとき、石膏の定常流がサイジングローラに送達されるように、一定の量の石膏スラリーを逆流させ、ローラニップに堆積させる。発泡性は、ローラニップで石膏スラリーを逆流させるこの能力にとって、重要である。マスターロールを使用しないで成形プレートを使用することができるが、発泡は、最終製品の密度を調節するために重要である。石膏スラリーが基材上を流れ、ついでサイジングローラを通過する、石膏ボード製造工程の連続的性質のゆえに、サイジング処理された後に石膏スラリーが流れる範囲は、石膏ボードの最終製品の寸法を維持するために重要である。石膏スラリーが流動を止める時間は、プリセット時間と呼ばれる。従ってプリセット時間は、石膏スラリーの重要な特性である。石膏スラリーの硬化時間もまた重要な特性である。硬化時間は、石膏スラリーが、加熱下、乾燥されて最終の固体石膏ボードになるまでに要する時間を指す。当分野で公知のように、連続的な石膏ボード製造工程において、石膏スラリーが、一貫した硬化時間を有することが重要である。
【0004】
石膏ボードの製造と異なり、石膏木材繊維(GWF)製品の製造は、従来の製紙工程によって容易になる。種々の繊維材料の希釈水性分散液を水でフェルト化する方法は、多くの種類の紙およびボード製品を製造するための、公知の工業的製造方法である。この方法において、繊維の水性分散液、結合剤、および必要または望ましい他の成分を、脱水のために、Fourdrinier式またはOliver式マット成形機などの、動いている、小孔のあるサポートワイヤ上に流す。この分散液を、第一に、重力により脱水し、ついで真空吸引により脱水する。ついで湿ったマットをロールとサポートワイヤ間で特定の厚さに圧縮してさらなる水を除く。ついで圧縮されたマットを加熱対流または強制通気乾燥機で乾燥し、乾燥した材料を所望の寸法に切り分ける。石膏木材繊維製品の製造は同様に、湿端面ヘッドボックス散布機序を用いて、石膏木材繊維スラリーを真空ワイヤ上に散布して最初のマットを作成し、一連の真空ベルトロールで脱水し、ついで圧縮し、最終的な脱水を行うために釜に入れて実施できる。石膏木材繊維製品は、表面紙および裏紙を含まず、しかし現在入手可能な従来の外装製品と比較し得る同様な性能と用途を有する、紙を含まない芯材である。
【0005】
石膏は、水を吸収し、これにより石膏が使われている製品の強度が減少し、カビ、糸状菌等が増殖するなどの有害な生物活動が製品内および製品表面に生じるようになる。通常の石膏ボード、石膏タイル、石膏ブロック、石膏型などの従来の製品は、水に対して比較的低い抵抗性を有する。例えば、通常の石膏ボードを水に浸す場合、このボードは、かなりの量の水を直ちに吸収し、その強度を大幅に失う。2インチx4インチの円筒の石膏ボード芯材を約70°Fで水に浸した場合、この円筒は、40分の浸漬の後、36%の水分吸収を示すことが、試験により示された。
【0006】
石膏ボードに耐水性を付与する試みは、水性石膏スラリーにアスファルト、金属石鹸、樹脂およびワックス添加剤を組み入れることを含む。得られた材料は、使用が困難で、重要な性質は制御が困難であった。石膏ボードに耐水性を付与する試みとして、ポリシロキサンベース系も用いられている。最終石膏製品はまた、耐水性塗膜または皮膜で被覆されている。耐水性石膏製品を得るための過去の試みの1つの具体例は、水性石膏スラリー中への、融解パラフィン、ワックスまたはアスファルトの噴霧である。
【0007】
耐水性石膏製品を得るための先行技術の他の試みの例は、水性石膏スラリーに、ワックス1部に対して約1部から約10部のアスファルトの相対的比率においてワックス(パラフィンワックスなど)およびアスファルトの乳剤を添加することである。石膏への耐水性の付与に使用する室温システムを提供する試みにおいて、ポリビニルアルコールが使用されている。
【0008】
一部の乳剤は、特にリグノ硫酸ナトリウム、C24以上の重合アルキルフェノールおよび種々のワックスなどの他の化学化合物を組み合わせ、ホウ酸ナトリウムなどの複合化剤を加えたコーン、サゴ、コムギ、コメなどの一般的なデンプン種を含む。このシステムは、従来の、入手可能なワックス乳剤と比べて著しい利点を示すが、長期保存におけるリグノ硫酸ナトリウムの分解の結果生じる細菌活動によるpHの低下、水/ワックス界面での少量の分離として現れる温度および経時変化で生じる粘度変化、ならびに、単一および組み合わせで生じる変化の故に、混合者における予測される使用率よりも低い使用率を等の多くの欠陥を有する。
【0009】
パネルボード産業は、限定するものではないが、本明細書において包括的にリグノセルロース複合製品と呼ぶ、合板、OSB(オリエンテッド・ストランド・ボード)(通常削片板またはウェハーボードと呼ばれる)、中密度繊維ボード、パーティクルボードおよび他の製品を含む。これらの複合製品のそれぞれおよび材木(建築材料として用いられる、切り出され、加工された木片)(本明細書において包括的に“リグノセルロース製品”を指す)において、水分吸収または“取り込み”および膨潤(これらの両方とも製品の有用性に有害な効果を有する)を抑制することが所望される。例えば、床の下張りに用いられる合板において、膨潤は、最終的な木またはタイルの表張りにゆがみまたは変形をもたらす。同様の問題は、水分にさらされる領域に適用した屋根の部材として用いられる、膨潤したOSBに関しても起きる。これらの複合ボードパネルは、木および他のリグノセルロース製品と同様に、野外保管により、水の取り込みの結果として(これは、細菌、真菌および昆虫の、増殖および侵入の結果生じる生物学的分解をもたらす)、現場で劣化することも知られている。
【0010】
リグノセルロース複合製品は、通常、リグノセルロース材料とワックスおよび熱硬化性樹脂とを熱圧することにより、製造される。これは、従来の結合工程を指す。このワックスは、複合製品の耐水性を改善するためのサイジング処理剤である。この樹脂は、複合物を含む材料をまとめ、これによりこれらをまとまった形に成形する結合剤である。レゾールは、リグノセルロース複合製品の結合樹脂として一般的に用いられる。
【0011】
リグノセルロース複合製品の従来の熱圧製造方法において、リグノセルロース材料は、フェノール樹脂および他の成分を混和機または混合機中で混合される。得られた混和物または混合物は、通常、大気圧より上の圧力と室温より上の温度で圧縮して複合物を製造する。マットの製造に使用するリグノセルロース材料は、木質繊維、木材フレーク、木材ストランド、木材チップ、木材粒子およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。ここで列挙したリグノセルロース材料は、当分野において木材ファーニッシュと呼ばれる。しかしながら、藁、バガス、樹皮、再生木質繊維、再生紙繊維およびそれらの混合物などの他の木材ファーニッシュもまた使用できることが公知である。フェノール樹脂をひとたび混和または混合した木材ファーニッシュを、ついで支持材料上に成形し、完成品に近似した形状の予備成形物を作成する。ついでこの予備成形物を熱圧のコール板上に置き、ここで大気圧より上の圧力と室温より上の温度を適用することにより完成品を製造する。高温と圧力によりフェノール樹脂が重合し、これにより予備成形物が結合してまとまった完成品となる。この熱圧方法は、Shui−Tung Chiuへの米国特許第4,433,120号にさらに説明されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
石膏製品上の生物の増殖に対する抵抗性を付与することにおいて有用であって、使用が経済的な添加剤に対する必要性が残っている。石膏製品に殺生物剤を添加する場合、この製品の表面および/または裏当紙にカビ抵抗性化学物質を噴霧することが普通である。リグノセルロース複合製品に対する有用かつ効果的な防腐剤の必要性もまた残っている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の概要)
上記の特徴および他の特徴を、以下の詳細な説明により例示する。
【0014】
連続相としての水、不連続相としてのワックス、乳化剤および一般構造
【0015】
【化5】

(式中、Rは、C〜Cアルキルで場合により置換されることが可能である、チアゾリル、イソチアゾリルまたはチアジアゾリルなどの、窒素および硫黄を含有する複素環であることが可能であり、Rは、水素またはC〜Cアルキル、特に水素であることが可能であり、nは、0、1、2または3であり、Rのそれぞれの例は、独立して、水素、C〜Cアルキル、フェノキシ、C〜Cアルコキシ、ハロ、アミノ、C〜Cアルキルアミノ、ジC〜Cアルキルアミノ、イミダゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、チエニル、フリル、ピリル、ナフチル、フェニル、ハロフェニル、C〜CアルキルフェニルまたはC〜Cアルコキシフェニルであることが可能である。)
を有する防腐剤を含む、乳剤。
【0016】
ワックス乳剤の製造方法は、本明細書で定義した防腐剤を含有しない乳剤を製造し、ついでそれにこの防腐剤を添加することを含む。
【0017】
石膏製品は、石膏および本明細書で定義した防腐剤を含む。
【0018】
石膏製品の製造方法は、石膏、水および本明細書に記載の防腐剤を含有する水中ワックス型乳剤からスラリーを作成し、このスラリーを固体製品に成形することを含む。
【0019】
リグノセルロース材料と結合剤とを混合して混合物を作成し、この混合物を特定の形状に固化して複合製品を形成することにより製造されるリグノセルロース複合製品の耐水性を改善する方法は、この混合物に本明細書で定義した乳剤を添加することを含む。
【0020】
リグノセルロース材料と結合剤とを混合して混合物を作成し、この混合物に本明細書で定義した乳剤を添加し、この混合物および混合物に含有される乳剤を固体製品に成形することにより製造される、リグノセルロース複合製品。
【0021】
(発明の詳細な説明)
ある種の防腐剤は、ワックス乳剤、とりわけ石膏製品および木質繊維ボードおよび他のリグノセルロース複合製品の製造に使用されるワックス乳剤において、とりわけ有用であることが見いだされた。
【0022】
本明細書に記載の防腐剤は、生物の増殖、例えば、石膏製品上でのカビ、真菌などの増殖を抑制するのに有用である。本明細書において、“防腐剤”は、殺菌剤、防カビ剤、殺藻剤、殺カビ剤、またはこれらの組み合わせなどの殺生物剤を含む。典型的な防腐剤は、Wagnerらへの米国特許第3,370,957号記載の組成物を含み(この全文を本明細書に組み込む)、これは一般構造(I)
【0023】
【化6】

(式中、Rは、C〜Cアルキルで場合により置換されることが可能である、チアゾリル、イソチアゾリルまたはチアジアゾリルなどの、窒素および硫黄を含有する複素環であることが可能であり、Rは、水素またはC〜Cアルキル、特に水素であることが可能であり、nは、0、1、2または3であり、Rのそれぞれの例は、独立して、水素、C〜Cアルキル、フェノキシ、C〜Cアルコキシ、ハロ、アミノ、C〜Cアルキルアミノ、ジC〜Cアルキルアミノ、イミダゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、チエニル、フリル、ピリル、ナフチル、フェニル、ハロフェニル、C〜CアルキルフェニルまたはC〜Cアルコキシフェニルなどであることが可能である。)に関する防腐剤を開示している。
【0024】
殺カビ剤の特定の実施形態は、一般構造(II)および(III)
【0025】
【化7】

(式中、R、RおよびRは先に定義したものである。)を有するものを含む。
【0026】
構造(I)を有する典型的な殺カビ剤は、2−(4’−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、2−[3’−(1’,2’,5’−チアジアゾリル]ベンゾイミダゾール、2−(4’−チアゾリル)−5−メトキシベンゾイミダゾール、2−(4’−チアゾリル)−5−フェノキシベンゾイミダゾール塩酸塩、2−(2’−メチル−4’−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、2−[4’−(1’,2’,3’−チアジアゾリル)]ベンゾイミダゾール、1−アセチル−2−(4’−チアゾリル)−5−フェニルベンゾイミダゾール、2−(4’−イソチアゾリル)ベンゾイミダゾール、2−(4’−チアゾリル)−6−フルオロベンゾイミダゾール、2−(4’−チアゾリル)−5−アミノベンゾイミダゾール、2−(2’−チアゾリル)−5−(1’−イミダゾリル)ベンゾイミダゾール、2−(4’−イソチアゾリル)−5−クロロベンゾイミダゾール、2−(4’−チアゾリル)−5−フェニルベンゾイミダゾール、2−[4’−(1’,2’,3’−チアダゾリル)]−5−(4’−トリル)ベンゾイミダゾール、1−アセチル−2−(2’−チアゾリル)−5−フェニルベンゾイミダゾール、1−メチル−2−(2’−イソチアゾリル)−5−(2’−メトキシフェニル)ベンゾイミダゾール、2−(4’−イソチアゾリル)−5−フリルベンゾイミダゾール、2−(4’−チアゾリル)−5−(4’−フルオロフェニル)ベンゾイミダゾール塩酸塩、2−(4’−チアゾリル)−5−ブロモベンゾイミダゾール、2−(4’−チアゾリル)−5−クロロベンゾイミダゾール、2−(2’−チアゾリル)−5−メトキシベンゾイミダゾール、2−(4’−チアゾリル)−5−(2’−フルオロフェニル)ベンゾイミダゾール塩酸塩、2−[3’−(1’,2’、5’−チアジアゾリル)1−5−メチルチオベンゾイミダゾール、2−(4’−チアゾリル)−5,6−ジフルオロベンゾイミダゾール、1−ベンゾイル−2−(4’−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、2−(2’−チアゾリル)−5−(2’−ピリル)ベンゾイミダゾール、1−メチル−2−(4’−イソチアゾリル)ベンゾイミダゾール塩酸塩、2−(4’−チアゾリル)−5−フェノキシベンゾイミダゾール、2−[3’−(1’,2’,5’−チアジアゾリル)1−5−メトキシベンゾイミダゾール、1−エチル−2−(4’−チアゾリル)−5−(2’−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、1−アセチル−2−[3’−(1’,2’,5’−チアジアゾリル)]−5−(2”−フリル)ベンゾイミダゾール、2−(4’−チアゾリル)−4−フルオロベンゾイミダゾール塩酸塩、2−(2’−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、1−アセチル−2−(4’−チアゾリル)ベンゾイミダゾールおよびこれらの組み合わせを含む。下記の特定の実施形態において、石膏ボード上の生物種の増殖を抑制することにおいてチアベンダゾール(2−(4’−チアゾリル)ベンゾイミダゾール)が有効であることが見いだされ、従って、全般に、ベンゾイミドール化合物および本明細書に記載の他の防腐剤の有用性が示された。
【0027】
好適には、本防腐剤はワックス乳剤に最後の成分として添加する。すなわち、本防腐剤はすでに形成されたワックス乳剤に「後添加」する。本防腐剤は、ワックス乳剤中に、ワックス乳剤(重量%)の0.01から10重量%、場合により0.1から5重量%、例えば、0.2から4重量%の量で存在することができる。本防腐剤は、100%の固体を含む水和ペーストまたは例えば25から50%活性チアベンダゾールなどの水希釈系などのいずれの好都合な形態で添加してよい。本防腐剤は、撹拌しながら添加するのが好ましく、これにより乳剤の不連続なワックス相中に防腐剤が完全に分散されると考えられる。これらの殺生物剤の1つまたはそれ以上または下記のその他のものを、最終石膏製品の約0.0025重量%から約0.2重量%に相当する量で、場合により使用することができる。防腐剤は、強く撹拌しながら、水相が0.01から5%(パーセント)の範囲の量の連続相であるすべての所望のワックス乳剤に、後添加する。得られたワックス乳剤は、石膏製品の製造に使用することが可能であり、最終製品の所望の特性、すなわち、強度、接着面での接着、および(該当する場合は)耐水性に有意な影響を示さない。乳剤は、石膏および水の混合物に、混合物の特性に有害な影響を与えることなく、添加することができるが、これは、石膏ボードおよびGWFなどの石膏製品の製造に必要である。このような特性は、流動性、成形性および硬化時間を含む。石膏壁板製品の製造において、最終製品に耐水性を付与することは、確定されたボード浸漬試験において、壁板により実現される最大水分吸収を制限するために重要である。例えば、American Standards for Testing Materials ASTM 1396およびその補遺にそのような試験が記載されている。
【0028】
一般に、本防腐剤は、ステアリン酸/オレイン酸と、アミン構造がTEA、DEA、AMP、モルホリンおよび公知の他の脂肪酸アミン系として記載できるアミンとの組み合わせを含有する乳剤;リグニン硫酸塩またはリグニンスルホン酸塩が種々のワックスとの組み合わせで界面活性剤として働く乳剤;およびデンプン化合物および金属塩およびカルシウムフェノラート、分枝鎖長鎖アルキルフェノールカルシウム、長直鎖アルキルフェノールカルシウム、アミン含有/不含含マレイン酸複合ポリマーおよび長鎖(C30以上)アルキルフェノール、およびワックスまたはワックスの組み合わせからなる複合混合物を含む乳剤を含む、石膏製品の製造に有用な種々のワックス乳剤で乳化したワックス乳剤に使用することができる。例としてこのような乳剤の一部を、これらに限定するものでないが、下記に示す。本防腐剤の添加は、石膏スラリーに組み込まれたとき、最終製品に所望される特性、すなわち、強度、接着面での接着、および(該当する場合は)耐水性を保持しながら、最終石膏製品に起こるカビおよび他の生物活性に対して抵抗性を付与する乳剤を提供する。加えて、これらの防腐剤の使用により、他の防腐剤の使用と比較して強い製品強度がもたらされることが見いだされた。
【0029】
本明細書に記載の防腐剤を含有するワックス乳剤は、石膏を含有しない種々のパネルボードの製造に使用する樹脂に添加することもできる。
【0030】
1つの実施形態において、本防腐剤は、デンプン(場合により複合化デンプン)を含有するワックス乳剤に用いることができる。1つの実施形態において、このような乳剤は、ワックス、アルキルフェノール、ポリナフタレンスルホン酸、水酸化アルカリ金属および複合化デンプンを含むことができる。ポリナフタレンスルホン酸と水酸化アルカリ金属は反応してポリナフタレンスルホン酸の塩を生成する。このような乳剤は、(a)ワックスおよびアルキルフェノールを混合して第1の予混合を得ること;(b)ポリナフタレンスルホン酸、水酸化アルカリ金属、水および複合化デンプンを混合して第2の予混合を得ること;(c)第1の予混合および第2の予混合を混合して混合物を得ること;および(d)混合物を均質化することにより、製造することができる。
【0031】
本発明の種々の実施形態を製造するのに有用なワックスは、融点が約120°Fから約150°F、好ましくは約135°Fから約145°Fの任意の市販ワックスから選択できる。このようなワックスは、通常、低揮発性であり、標準的な熱重量分析中、約10%未満の重量減少を示す。また、これらのワックスの油分は、通常、約1重量%未満である。これらのワックスは、比較的高分子量であり、C36の平均鎖長(すなわち36炭素鎖長)またはそれ以上を有する。
【0032】
特定の実施形態において、ワックスの1つまたはそれ以上を鹸化することは、有用である。このようにして、鹸化ワックスは、添加した界面活性剤の役割を果たす。この点に関して有用なワックスは、ある酸価または鹸化価を有し、約180°Fより大きい融点を有するワックスに限定される。このようなワックスの鹸化は、ワックスと、水酸化アンモニウムなどの強塩基性物質または水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムなどの水酸化アルカリ金属とを混合することにより達成できる。本明細書に記載の乳剤の製造において鹸化できるワックスは、石炭の液化によるワックス、植物ろう、スラックワックスの加工もしくは精製により得られる酸化ワックス、スケールワックスまたは原油を含む。例えば、鹸化性ワックスは、モンタンワックス、カルナバワックス、蜜蝋、ベイベリ−ミイルトル−ワックス、カンデリラワックス、カランダヤシワックス、トウゴマワックス、エスパルトワックス、木蝋、オウリキュリーワックス、レタノ−(レタモ−)セリミンビワックス、セラック、鯨蝋、サトウキビワックス、ウール/ラノリンワックス、などを含む。水酸化アルカリ金属は、約45重量%の水酸化アルカリ金属を含むことができる高濃度水溶液の形で添加できる。水酸化アンモニウムは、固形形状で添加できる。鹸化剤の一部または全部は、その場で、分散剤、および/または乳剤の他の構成成分と反応させることもできる。水酸化アンモニウムは、それが発するアンモニア臭が原因で反対されることがあるが、水酸化アンモニウムは有利であると考えられる、なぜならば、ワックスの鹸化に加えて、乳剤が用いられている樹脂のホルムアルデヒドの捕捉剤としてアンモニアが役立ち、これにより最終複合製品からのホルムアルデヒドの放出を減少させることができるからである。水酸化アンモニウムとホルムアルデヒドとの組み合わせはまた、水酸化アンモニウム臭を改善するので、一部の実施形態において、この目的のために、例えば、約0.02から約0.1重量%の量のホルムアルデヒドを乳剤に添加することができる。加えて、水酸化アンモニウムは、北部地方の木材種、すなわち、ベイマツ、ポプラなどを含むリグノセルロース材料に乳剤を使用するときにとりわけ有利である。ワックスを鹸化するために必要な強塩基性物質の量は、5つのワックスの鹸化価に基づいて算出できる。例えば、鹸化価を1000で割ったものは、ワックス1グラムに添加する水酸化カリウムのグラム数に等しい。
【0033】
適した不鹸化性ワックスは、約120°F(約49℃)より上、例えば、約120°Fから約165°F(約49℃から約74℃)、場合により約120°Fから約150°F(約49℃から約66℃)、および好ましくは約135°Fから約145°F(約57℃から約63℃)の融点を有するワックスを含む。適した不鹸化性ワックスは、パラフィンワックス、スラックワックスおよびスケールワックスを含む。このようなワックスは、標準的な熱重量分析中、約10重量%未満の重量損失を示す低揮発性のものとして市販されている。また、これらのワックスの油分は、通常、約5重量%未満であり、好ましくは約1重量%未満である。これらのワックスの一部は、比較的高分子量のものであり、C36の平均鎖長(すなわち36炭素鎖長)あるいはそれ以上を有する。パラフィンワックスは、通常、軽潤滑油留出物から得られ、主に20から30炭素原子の平均鎖長を有する直鎖炭化水素である。適したパラフィンワックスは、Honeywell/Astor(ジョ―ジア州ダルース)より入手可能なWax3816を含む。スラックワックスは、3重量%から50重量%の油分を有する石油ワックスである。適したスラックワックスは、Exxon600スラックワックスおよびAshland200スラックワックスを含み、ならびにExxon600スラックワックス50部およびAshland200スラックワックス50部の組み合わせを含む。
【0034】
本発明の乳剤に使用されるデンプンは、複合化デンプンである。デンプンは、乳剤の製造中、その場で複合化され、またはデンプンは、乳剤に添加する前に予備複合化されることができる。デンプンは、好ましくは、ホウ酸塩化合物、モリブデン酸塩化合物またはモリブデン化合物などの複合化剤とデンプンとを混合することにより複合化される。例えば、好ましいホウ酸塩化合物は、四ホウ酸ナトリウム十水和物である。例えば、好ましいモリブデン酸塩化合物は、七モリブデン酸アンモニウムである。例えば、好ましいモリブデン化合物は、二硫化モリブデンである。デンプンを複合化するのに有用な他の化合物は、ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム、四ホウ酸リチウムおよびホウ酸マグネシウム化合物;二モリブデン酸アンモニウム、七モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸バリウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸ナトリウムおよびモリブデン酸カリウム;および他のモリブデン化合物などを含む。
【0035】
本発明の複合化デンプンを製造するのに有用なデンプンは、これらに限定されないが、コーン、コメ、コムギ、ジャガイモ、サゴおよび他のデンプンを含む。
【0036】
複合化剤(ホウ酸塩化合物、モリブデン酸塩化合物、またはモリブデン化合物)のデンプンに対する比率は、乳剤中の複合化デンプンの機能性にとって重要である。複合化剤(ホウ酸塩化合物、モリブデン酸塩化合物、またはモリブデン化合物)のデンプンに対する比率を、重量比で1:20まで低くすることができることが見いだされた。比率は、1:3.5のように高くすることができるが、しかしながらこの比率およびより高い比率では、石膏混合物および最終石膏製品における所望の特性のバランスを維持するために、乳剤においてより多い量の複合デンプンが必要とされる。これらの所望の特性は、流動性、成形性および耐水性を含む。
【0037】
ホウ酸塩化合物、モリブデン酸塩化合物およびモリブデン化合物は、驚くほどに有効な複合化剤である。有用な複合化剤の例は、これらに限定されないが、ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)、ホウ酸マグネシウムおよび他のホウ酸塩化合物、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸マグネシウムおよび他のモリブデン酸塩化合物、二硫化モリブデンおよび他のモリブデン化合物を含む。複合化剤(例えば、四ホウ酸ナトリウム十水和物、モリブデン酸ナトリウム脱水物、二硫化モリブデン、または他の化合物)の改質デンプンに対する比率は、ボード/スラリー工程、すなわち、フォーム助剤およびスラリー添加剤の適合性に必要な他の特性の調節に大きく影響する。
【0038】
本乳剤にアルキルフェノールを組み込むことは、石膏製品における低い水分吸収を達成するために有用であることが見いだされた。本明細書において、「アルキルフェノール」は、長鎖アルキル基を有するフェノール化合物を指す。長鎖アルキル基は、直鎖または分枝鎖であることができる。長鎖アルキル基は、C24〜C34(24〜34炭素鎖長)であることができ、好ましくはC24〜C28であることができる。このようなアルキルフェノールは、長鎖C24〜C34(24〜34炭素鎖長)重合メチレン連結アルキルフェノール、フェノール塩類、カルシウムフェノラート、分枝鎖長鎖アルキルフェノールカルシウム、直鎖長鎖アルキルフェノールカルシウムおよびアミン置換基含有/不含有マレイン酸複合ポリマーを含む。
【0039】
アルキルフェノールのアルキル基は、対応するオレフィンから誘導することができる。例えば、C26アルキル基は、C26アルケン(好ましくは1−アルケン)から誘導され、C34アルキル基は、C34アルケンから誘導され、混合鎖長基は、対応するオレフィンの混合物から誘導される。しかしながら、アルキル基が少なくとも約30炭素原子を有するアルキル基である場合、このアルキル基は、エチレン、プロピレン、ブテン−1、イソブテン、ブタジエン、イソプレン、1−ヘキセンおよび1−オクテンなどの2〜10炭素原子を有するモノおよびジオレフィンのホモポリマーまたはインターポリマー(例えば、コポリマー、ターポリマー)から製造される脂肪族基(またはこのような基の混合物)でありうる。脂肪族ヒドロカルビル基は、このようなホモポリマーまたは共重合体のハロゲン化(例えば、塩素化または臭素化)類似体から誘導することもできる。しかしながら、このような基は、モノマーの高分子量アルケン(例えば、1−テトラコンテン)ならびにその塩素化類似体および塩酸化類似体、脂肪族石油留分、とりわけパラフィンワックスならびにその分解、塩素化類似体および塩酸化類似体、ホワイトオイル、チーグラーナッタ(Ziegler−Natta)工程(例えば、ポリ(エチレン)グリース)により製造されるものなどの合成アルケンおよび当業者に公知の他の供給源などの他の供給源から誘導できる。ヒドロカルビル基の不飽和は、所望により、当分野で公知の方法による水素化により還元または除去できる。塩素または他のハロゲンを実質的に含まない方法および物質による製造は、環境上の理由から、時には好ましい。2以上のアルキル基が存在できるが、通常、芳香族基の各芳香核に2または3以下を含む。最も典型的に、とりわけヒドロカルビル置換フェノールが単一ベンゼン環に基づく場合、1つの芳香族部分について1つだけのヒドロカルビル基が存在する。
【0040】
本明細書に記載の乳剤に有用なアルキルフェノールの1例は、C24〜C34重合メチレン連結アルキルフェノールとして記載されている319Hの商品名でLubrizol Chem. Corp.(オハイオ州ウィクリフ)から入手可能である。これらの乳剤に使用できる種々の他の市販アルキルフェノールは、以下を含む(以下の表1において任意の識別番号により識別される)。
【0041】
【表1】

【0042】
本明細書において、アルキルフェノール、およびアルキルフェノールと鹸化剤または乳剤のいずれかの他の成分との反応生成物は、アルキルフェノール成分と記す。
【0043】
このような乳剤は、補助界面活性剤および分散助剤の両方として以前より用いられているリグノ硫酸ナトリウムまたはリグノスルホン酸ナトリウムの使用の代替品を提供し、生物活動を抑制するための殺生物剤の必要性をさらに減少させている。(しかしながら、本明細書に記載の防腐剤は、リグノ硫酸塩またはリグノスルホン酸塩を含む乳剤において使用可能であった。)デンプン:ホウ酸塩、またはデンプン:モリブデン酸塩、またはデンプン:モリブデン化合物の比率は、重量比で約4:1から約20:1であることができる。
【0044】
乳剤は、ある容器中でワックスおよび界面活性剤(“ワックス混合物”)を加熱し、もう一つの容器で水、複合化剤(ホウ酸塩化合物、モリブデン酸塩化合物、またはモリブデン化合物)およびコーンスターチ(“水混合物”)を加熱することにより、製造できる。両方の混合物をかき混ぜながら約185°(85℃)に加熱した。次に、かき混ぜながらワックス混合物を水混合物に注いだ。ついで得られた混合物をホモジナイザーに入れた。
【0045】
均質化に関して、約0.6ミクロンから約1.8ミクロンのミセル径分布が達成されることが好ましい。しかしながら、ミセル径分布は、約0.5ミクロンから約2.5ミクロンの範囲でありうる。均質化のこの水準は、例えば、二重オリフィスホモジナイザーを用い、約2,000から約4,000psiで操作することにより達成できる。
【0046】
均質化混合物は、均質化工程の後に冷却することが好ましい。
【0047】
均質化混合物は、およそ185°Fから約100°Fに冷却することが最も好ましい。これは、均質化混合物を室温に維持した水に浸されている冷却コイルに通すことにより達成できる。
【0048】
さらに具体的に、特定の実施形態において有用な複合化デンプンを製造するために、水、複合化剤(すなわちホウ酸塩化合物、モリブデン酸塩化合物、またはモリブデン化合物)およびデンプンを混合することにより、乳剤を製造することができる。複合化デンプンの水溶液にポリナフタレンスルホン酸および水酸化カリウムを加える。この混合物を約185°Fから約205°Fの温度にし、デンプンがゲル化の最大の状態を達成するまで維持するが、これは通常、約20から約30分で起こる。ワックス化合物に重合アルキルフェノールを組み込み、温度を約185°Fから約205°Fにする。ついで水相にワックス相を添加し、反応させてその場で界面活性剤を形成させる。重合アルキルフェノールとポリナフタレンスルホン酸のこの組み合わせおよび反応により、界面活性剤/分散剤が形成され、これがワックス結晶を改質するために作用し、ワックス結晶が、密着し互いに結合することに抵抗することを可能にし、ワックス結晶が、石膏の極性のために移動するまで、ワックス結晶を分離して維持する。ついでこの反応系を約2,000から約4,000psiの圧力でホモジナイザーにかけ、ついで最終ワックス乳剤の安定性および粘度を調節するために所定の速度で冷却する。均質化組成物は、約135°Fから約145°Fの温度でホモジナイザーから出る。ついで混合物を約80°Fから約110°Fに冷却する。冷却速度は、ワックスの再結晶化と溶液の破壊を引き起こさないように調節される。
【0049】
改質デンプン化合物と他に記載した化合物とを組み合わせ適切な割合で利用することにより、約40重量%から約60重量%の固体の広い範囲が利用可能となる低粘度系を作成することができる。
【0050】
単一のワックス添加剤を用いる特定の実施形態において、二元界面活性剤系が室温および高温の両方において安定した乳剤を提供することが見いだされた。かかる安定した乳剤は、例えば、乳剤が分離したり凝固したりすることなしに、熱水または沸騰水に添加することができる。
【0051】
二元界面活性剤の1例は、ドデシルイソプロパノールアミンベンゼンスルホン酸塩および非イオンエトキシル化アリールフェノールの組み合わせである。
【0052】
ドデシルイソプロパノールアミンベンゼンスルホン酸塩は、SD1121という商品名でUnichema(デラウェア州ウィルミントン)から入手可能である。1つの非イオンエトキシル化アリールフェノールは、Ethox Corp.,(サウスカロライナ州グリーンヴィル)から入手可能なEthox2938である。あるいは、アルコキシル化脂肪酸エステルをドデシルイソプロパノールアミンベンゼンスルホン酸塩と組み合わせ二元界面活性剤系を形成することができる。1つのアルコキシル化脂肪酸エステルは、これもまたEthox Corpから入手可能なEthox2914である。本発明の特定の実施形態において、分散助剤、または流動性修飾剤は、石膏/乳剤混合物の流動性の維持に有用であることも見いだされている。このような分散剤は、強力なリポフィル(lipophile)であり、従って優れた消泡剤である。1つのこのような分散剤は、ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル),α−フェニル−ω−ヒドロキシスチレン酸塩である。
【0053】
乳剤は、単一のワックス、二元界面活性剤系、アルキルフェノールおよび複合化デンプンを組み合わせ、均質化することにより生成可能である。以下の表1に例を示す。
【0054】
【表2】

【0055】
本明細書に開示の防腐剤を含むことができる他のワックス乳剤は、(1)単一のステアリン酸/オレイン酸と、アミン構造がTEA、DEA、AMP、モルホリンおよび他の脂肪酸アミンとして記載できるアミンとの組み合わせ、および(2)種々のワックスとの組み合わせで界面活性剤として働くリグニン硫酸塩またはリグニンスルホン酸塩を含むものが挙げられる。
【0056】
乳剤は、2つ以上のワックス、補助界面活性剤、アルキルフェノールおよび複合化デンプンを混合し、均質化することにより、製造できる。2つのワックス乳剤の典型的な組成物範囲を以下の表2に示す。
【0057】
【表3】

【0058】
以下の表3に、二元ワックス実施形態に従って製造された乳剤の例を示す。
【0059】
【表4】

【0060】
表3の乳剤を水と混合し、この水乳剤混合物に石膏を添加することができる。ついでこの水/乳剤/石膏混合物を石膏製品に成形できる。
【0061】
別の実施形態において、石膏製品を製造するのに有用なワックス乳剤は、以下の表4に示すように、リグノスルホン酸塩またはリグノ硫酸塩を含むことができる。
【0062】
【表5】

【0063】
さらに別の実施形態において、有用なワックス乳剤は、カルボキシメチルセルロースを含有することができる。このような乳剤は、リグノセルロース製品に有用である。石膏製品の製造に有用な石膏スラリーに使用するカルボキシメチルセルロース含有ワックス乳剤の1例は、非鹸化性ワックス、鹸化ワックス、アルキルフェノール成分、分散剤/界面活性剤、カルボキシメチルセルロース成分および水を含む。特定の実施形態において、非鹸化性ワックスは、乳剤の約33重量%から約35重量%を占めることができ、鹸化ワックスは、乳剤の約3重量%から約5重量%を占めることができ、アルキルフェノール成分は、乳剤の約0.5重量%から約2.5重量%を占めることができ、分散剤は、乳剤の約0.5重量%から約2重量%を占めることができ、カルボキシメチルセルロース成分は、乳剤の約0.2重量%から約5重量%を占めることができる。
【0064】
本明細書に記載の乳剤は、不鹸化性ワックスおよび鹸化性ワックスを含むワックス成分を含む。
【0065】
適した鹸化性ワックスは、ある酸価または鹸化価を有し、約180°F(約82℃)より上の融点を有する。
【0066】
好ましくは、ワックスは、不純物として極性化合物を約5重量%より多く含まない。
【0067】
ワックス成分は、乳剤の全重量に基づいて、約25重量パーセントから約50重量%、好ましくは約30重量%から約40重量%の量で存在できる。好ましくは、ワックス成分は、約120°F以上の融点を示す不鹸化性ワックスと鹸化性ワックスの組み合わせを含む。不鹸化性ワックスは、乳剤の全重量の約25重量%から約44重量%を含むことができ、鹸化性ワックスは、乳剤の全重量の約0.5重量%から約5重量%を含むことができる。ワックスの好ましい組み合わせは、第一のワックスとしてHoneywell 3816などのパラフィンワックスおよびモンタンワックスなどの鹸化性ワックスとの組み合わせである。1つの実施形態において、ワックス成分は、乳剤の全重量に基づいて、約25重量%から約45重量%、好ましくは約30重量%から約40重量%の量のパラフィンワックスおよび約2.5重量%から約5重量%、好ましくは約3.5重量%から約4.5重量%の量の鹸化性ワックスを含む。
【0068】
鹸化性ワックスを鹸化するために、本明細書に記載の強塩基性化合物を乳剤混合物に添加する。鹸化剤は、乳剤の約0.15重量%から約4.5重量%、場合により約0.5重量%から約3重量%の量、添加することができる。高濃度水性鹸化剤を乳剤の約0.5から約3重量%の量で場合により添加することができる。水酸化アンモニウムを、固体の形状で、乳剤の約0.15から約3重量%の量で添加することができる。鹸化剤の量は、使用する鹸化性ワックスの種類または木材の種類に基づいて変えることができる。鹸化剤の添加の結果、本明細書に記載の乳剤は、約8.5から約12.5のpH、例えば、約8.5から約9.5のpHを有することができる。
【0069】
これらの乳剤に有用な典型的なカルボキシメチルセルロース材料は、約20から約50炭素の分子炭素鎖長を有する。適したカルボキシメチルセルロースの例は、LT−30の商品名でPenn Carbose(ペンシルヴァニア州サマセット)から入手可能なカルボキシメチルセルロースナトリウムであり、約26から30炭素の炭素鎖長を有すると記載されている。他の適したカルボキシメチルセルロース材料は、Penn CarboseのLT−20およびLT−42を含む。カルボキシメチルセルロース、およびそれが乳剤中の鹸化剤または他のいずれかの他の成分と反応した生成物は、本明細書において「カルボキシメチルセルロース成分」と記す。
【0070】
ポリナフタレンスルホン酸塩は、本明細書に記載の乳剤に有用であり、理論に拘束されるものではないが、分散剤/界面活性剤として働くと考えられる。この塩は、ポリナフタレンスルホン酸および鹸化剤、例えば、水酸化アルカリ金属のその場での反応生成物であることができる。1つの市販ポリナフタレンスルホン酸は、DISAL GPSであり、これはHandy Chemical(ケベック州モントリオール、カナダ)から入手できる。この酸および酸塩は、まとめてポリナフタレンスルホン酸成分と記し、より広くは(代用物質を含めて)分散剤/界面活性剤と記す。分散剤/界面活性剤は、乳剤の約0.1重量%から約5重量%、場合により約0.25重量%から約5重量%を、含むことができる。
【0071】
乳剤にアルキルフェノールを組み込むことにより、リグノセルロース複合製品における低い水分吸収を達成することが容易になることが見いだされた。好ましくは、アルキルフェノールは、アルキル部分の平均炭素鎖長が、カルボキシメチルセルロースの平均炭素鎖長と匹敵する、すなわち、およそ同じであるかまたはそれに近いように選択される。例えば、約C24〜約C34の平均鎖長のアルキルフェノールは、約26〜約32炭素の平均鎖長を有するカルボキシメチルセルロース(例えば、Carbose LT−30カルボキシメチルセルロースなど)を含む乳剤に使用できる。
【0072】
乳剤中に存在するアルキルフェノール成分の量は、乳剤の全重量に基づいて、約0.25重量%から約10重量%であり、場合により約0.5重量%から約2.5重量%である。
【0073】
本明細書に記載の乳剤の1つの製造方法は、時間、エネルギー、作業者および製造効率に帰する。この方法は、単一の容器中で乳剤の成分を混合し、ついで以下のような条件下、ホモジナイザーに混合物を運ぶことを含む。この方法の利点は、単一の容器中で乳剤混合物が製造されることである。乳剤の成分の部分混合物を混合する前に、異なる容器で調製し別々に保存する必要がない。
【0074】
「単一の容器」方法の1つの実施形態において、不鹸化性ワックス(例えば、3816ワックス、以下にさらに説明する)を融解し、例えば、その融点よりも約10°F上の温度で融解形で貯蔵し、ワックスが固化しない温度で水を添加する。ついでこの容器に以下の実例のように仕込む。
a.約189°Fから約192°F(約87℃から約89℃)の温度で融解不鹸化性ワックス(例えば、3816ワックス)を仕込む、
b.加熱および撹拌を開始する、
c.撹拌しながら融解鹸化性ワックスおよびアルキルフェノールを仕込む、
d.水の大部分(例えば、95%)を仕込む、撹拌を続ける、
e.分散剤/界面活性剤、(例えば、DISALポリナフタレンスルホン酸、本明細書の他の部分でさらに説明する)、カルボキシメチルセルロースおよび鹸化剤を仕込む、
f.残りの水(好ましくはチューブの洗浄に用いる水を算出し、全体から減じたものを含む)を仕込む、
g.タンクの温度を、例えば約190°Fから約210°F(約88℃から約100℃)にする、
h.温度を維持しながら、約30から約150分間撹拌を続ける、
i.約1500から約3500PSI(約10メガパスカル(MPa)から約24MPa)でホモジナイザーにかける、
j.場合により、ホモジナイザーからの出口温度と周囲より上の温度間の第1の放熱および、周囲(保存)温度への第2の放熱を含む、2度の放熱を行う工程で冷却する。例えば、ホモジナイザー出口温度よりも約10°Fから約20°F低い第1の放熱を達成するために、例えば乳剤組成物をホモジナイザーから冷却器に移し、ついで、場合により撹拌しながら、例えば、さらに約5°Fから約15°F低い第2の放熱を達成するために冷却タンクに移す。1つの実施形態において、第1の放熱は、約130°Fから約110°Fに冷却することにより生じ、第2の放熱は、約110°Fから約70°Fに冷却することにより生じる。
【0075】
特定の理論に拘束されるものではないが、2回の放熱冷却工程を用いることにより、乳剤生成の形成法を可能にし、完結へと進む。その結果、乳剤の粘度は、経時的にさらに安定し、せん断撹拌にかけた場合本乳剤は、単一の放熱冷却工程を用いる場合よりもより安定している。乳剤製造の別法において、融解ワックスおよびアルキルフェノールを含む第1の予混合を製造し、水、カルボキシメチルセルロースおよびポリナフタレンスルホン酸および鹸化剤を含む第2の予混合(水性予混合)を製造し、ついで第1と第2の予混合を、少なくともワックスが鹸化するのに十分な時間(例えば1から3時間)混合タンク中で混合し、ついで得られた混合物をホモジナイザーに移し、前述のように冷却することができるバッチ法を使用することができる。
【0076】
本明細書に記載の乳剤の一部の実施形態における成分の範囲の例を以下の表5に示す。
【0077】
【表6】

【0078】
以下の表6に、本明細書に記載の乳剤の特定の実施形態における成分の割合の例を示す。
【0079】
【表7】

【0080】
このような乳剤は、ブルックフィールド粘度計で測定して、約10から約100センチポアズの粘度を、有することができる。1つの試料乳剤は、約40%の固体で9cpsの粘度を有した。
【0081】
本明細書に記載の乳剤および他の乳剤は、石膏スラリーに組み込むとき、石膏製品の製造に有用であり、本明細書に記載の防腐剤は、それらの全てに使用できる。
【実施例】
【0082】
以下の成分:Gワックス(パラフィンワックス)33%、モンタンワックス3.3%、アルキルフェノール0.5%、Disal 0.5%、水酸化カリウム0.75%、七モリブデン酸アンモニウム0.01%、デンプン0.09%、polyfon H(リグノスルホン酸、ナトリウム塩)0.5%、水61.35%を用いてワックス乳剤配合物を製造した。このワックス乳剤に、商品名MC−2でSupreme Chemical(ジョージア州カミング)から販売されている0.2%チアベンダゾールを後添加した。このワックス乳剤を石膏製品の製造に用いた。得られた石膏製品をASTMD3273に従って試験した。この4週間の試験の最中、石膏ボードなどの対象の素材の試料を、約90°F(32.2℃)の一定温度および95%から98%の相対湿度で鉢植え用の土および糸状菌培養物と共に閉じたチャンバー内に置く。試験用試料の状態を毎週観測し、糸状菌の増殖が見られれば、その程度を測定する。上述のように製造した試料は、試験の第1週中において、生物の増殖を示さなかった。
【0083】
他の試験において、上述のとおりの試験乳剤を、尿素−ホルムアルデヒド結合剤を含むパーティクルボード試片の試料の製造に用いた。試験乳剤のいくつかは乳剤のワックスの1重量%のチアベンダゾールを含有し、他のものは2重量%含有した。試片を製造するファーニッシュに、ファーニッシュの0.4固体重量%の量の乳剤を添加した。試片のいくつかを試験の前に24時間水に浸した。試験のために、一定の湿度条件(72°F(22.2℃)、72%相対湿度(RH))、戸外屋根環境条件(大気にさらされてはいるが、降雨に直接さらされることからは防御されている)、制御されていない倉庫における室内、および水浴の脇の実験室環境を含む種々の環境に、種々の浸漬および非浸漬試片を置いた。同様に製造し処理した対照試片もまたこれらの環境においた。第1週の後、対照試片は肉眼で見える生物の増殖を示したが、第6週の後、チアベンダゾールを用いて製造した試料片はその上に肉眼で見える増殖を何も示さなかった。
【0084】
特定の理論に拘束されるものではないが、チアベンダゾールを含有するワックス乳剤を用いて製造した石膏製品の試料は、他の石膏製品との視覚的な比較評価において、チアベンダゾールと考えられる結晶が石膏の固体に埋め込まれていることを示すと考えられる。このことは、チアベンダゾールおよび上記の関連化合物が、石膏スラリーが湿っている間、石膏中にワックスにより運ばれ、ついで、石膏スラリーが脱水されて石膏製品を形成しワックス乳剤が破壊されるにしたがって結晶化し、本防腐剤が、その結晶形に戻り石膏結晶中に埋め込まれる、と考えられる。従って、本防腐剤は、単に製品の表面に存在したり、またはワックス乳剤が破壊された後に残ることができるワックスの不連続な分離した凝集で存在するよりも、むしろ石膏結晶構造に含侵され、結合しているということができる。本防腐剤は、石膏製品の表面またはワックスの凝集中からよりも、石膏結晶の内部構造から浸出しにくいと思われることから、本防腐剤を石膏中に組み込むことにより、本防腐剤の有効期限が延びる。これが、この防腐剤を含有する石膏製品の試料に見られる増強された製品強度に寄与する要因でありうる。
【0085】
他の防腐剤のいずれかの有効量もまた、本石膏製品に、場合により、使用することができる。例えば殺菌剤/防カビ剤、殺カビ剤または他の殺生物剤を含む防腐剤を、乳剤中または石膏含有スラリー中にその防腐剤を組み込むことにより、石膏製品中に、場合により含有させることができる。石膏製品に適した防腐剤の1例は、3,5−ジメチル−テトラヒドロ−1,3,5,2Hチアジアジン−2−チオンを含有する、METASOL D3TAとして市販されている殺菌剤/防カビ剤である。METASOL D3TAはOndo−Nalco(テキサス州ヒューストン)から入手できる。殺カビ剤は、ホルムアルデヒドを含むいずれの市販殺カビ剤をも含むことができる。他の適した殺生物剤は、ビス−チオ−ベンゼン、プロピコナゾールおよびビス(トリブチルスズ)オキシドを含む。
【0086】
例えば、GWF製品および他の石膏製品(木質繊維または他のリグノセルロース材料を含有する)を含むリグノセルロース製品に有用であって、チアベンダゾールおよび/または本明細書に記載のリグノセルロース製品に関連した防腐剤に加えて場合により使用できる防腐剤は、無機であっても有機であってもよく、例えば、殺虫剤、防カビ剤、殺菌剤などの殺生物剤および前記殺生物剤の1つまたはそれ以上を含む組み合わせを含むことができる。殺生物剤は、(1)標的生物、(2)溶解特性、(3)温度およびpHに対する安定性、および複合材料の製造に見られる他の条件に従って選択できる。殺生物剤は、糸状菌、粘液菌、真菌、細菌などの微生物を殺すまたは増殖を抑制する物質を含む。殺虫剤、防カビ剤および殺菌剤は、殺生物剤の全ての例である。防カビ剤は、真菌を殺すまたは増殖を抑制する物質を含む。殺菌剤は、細菌を殺す薬剤を含む。殺虫剤は、昆虫を殺す薬剤である。殺生物剤のさらなる具体例は、これらに限定されないが、塩素化炭化水素、有機金属、ハロゲン放出化合物、金属塩、有機硫黄化合物およびフェノールを含む。好ましい殺生物剤は、これらに限定されないが、アンモニア性銅第四級アンモニウム(ACQ)などのクロム化ヒ酸銅(CCA)、アンモニア性ヒ酸銅亜鉛(ACZA)、ビス(ジメチルカルバミン酸)銅(CDDC)、アンモニア性クエン酸銅および銅アゾール、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、第四級アンモニウム塩、ペンタクロロフェノール、テブコナゾール(TEB)、クロロタロニル(CTL)、クロルピリホス、イソチアゾロン、プロピコナゾール、他のトリアゾール、ピレスロイドおよび他の殺虫剤、イミジクロプリド、オキシン銅など、ならびに前記殺生物剤の1つまたはそれ以上を含む組み合わせを含む。有機殺生物剤に加えて、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム塩、亜鉛、ホウ酸亜鉛、ホウ酸シリカ、銅塩および亜鉛塩などの無機防腐剤を組み込んだ、種々の放出速度を示すナノ粒子を使用することができる。
【0087】
適した一般的な殺菌剤は、例えば、3−イソチアゾロン、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン、メチレン−ビス−チオ−シアナート(MBT)、2−チオシアノ−メチルチオベンゾチアゾール、テトラクロロイソフタロニトリル、5−ブロモ−5−ニトロ−1,3−ジオキサン、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジ−ブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)、N,N’−ジメチルヒドロキシル−5,5’−ジメチル−ヒダントイン、ブロモクロロジメチルヒダントイン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、4,5−トリ−メチレン−2−メチル−3−イソチアゾロン、5−クロロ−2−(2,4−ジクロロフェノキシ)−フェノール、3,4,4’−トリクロロカルバニリド、ナフテン酸銅、8−ヒドロキシ−キノリン銅、ホウ酸亜鉛、ホウ酸、トリメチルホウ素、酸化亜鉛、グルタルアルデヒド、1,4−ビス(ブロモ−アセトキシ)−2−ブテン、4,5−ジクロロ−1,1−ジチアシクロペンテン−3−オン、クロロタロニル、第四級アンモニウムベース化合物および前記殺菌剤の1つまたはそれ以上を含む組み合わせを含む。
【0088】
適した防カビ剤は、例えば、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、2−メチル−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、2、4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、チオシアン酸銅、N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N,N−ジメチル−N’−フェニル−N’−フルオロジクロロメチルチオスルファミド;2−ピリジンチオール−1−オキシドの銅、ナトリウムおよび亜鉛塩;テトラエチルチウラムジスルフィド、2,4,6−トリクロロフェニル−マレイミド、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)−ピリジン、ジヨードメチルp−トリルスルホン、フェニル(ビスピリジル)ビスマスジクロリド、2−(4−チアゾリル)−ベンゾイミダゾール、ピリジントリフェニルボラン、フェニルアミド、ハロプロパルギル化合物、プロピコナゾール、シプロコナゾール、テブコナゾールおよび2−ハロアルコキシアリール−3−イソチアゾロン(2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)−3−イソチアゾロン、2−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−5−クロロ−3−イソチアゾロン、2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)−4,5−ジクロロ−3−イソチアゾロンなど)、および前記防カビ剤の1つまたはそれ以上を含む組み合わせを含む。
【0089】
本防カビ剤は、例えば、フェルバム、ジラム、マネブ(エチレンジチオカルバミン酸マンガン)、マンコゼブ、ジネブ(エチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛)、プロピネブ、メタム、チラム、ジネブおよびポリエチレンチウラムジスルフィドの錯体、ダゾメット、およびこれらと銅塩の混合物などのジチオカルバミン酸および誘導体;ジノカップ、ビナパクリルおよび2−sec−ブチル−4,6−ジニトロフェニルイソプロピルカーボネートなどのニトロフェノール誘導体;キャプタンホルペット、グリオジン、ジチアノン、チオキノックス、ベノミル、チアベンダゾール、ビノロゾリン、イプロジオン、プロシミドン、トリアジメノール、トリアジメホン、ビテルタノール、フルオロイミド、トリアリモル、シクロヘキシイミド、エチリモル、ドデモルフ、ジメトモルフ、チフルザミドおよびキノメチオネートなどの複素環構造;クロラニル、ジクロン、クロロネブ、トリカンバ、ジクロランおよびポリクロロニトロベンゼンなどの種々の防カビ剤;グリセオフルビン、カスガマイシンおよびストレプトマイシンなどの抗カビ抗生物質;ジフェニルスルホン、ドジン、メトキシル、1−チオシアノ−2,4−ジニトロベンゼン、1−フェニル−チオセミカルバジド、チオファナートメチルおよびシモキサニルなどの種々の防カビ剤;フララキシル、シプロフラム、オフレース、ベナラキシルおよびオキサジキシルなどのアシルアラニン;フルアジナム、フルメトベル、EP578,586−Aに開示されているものなどのフェニルベンズアミド誘導体、EP550,788−Aに開示されているバリン誘導体などのアミノ酸誘導体、メチル(E)−2−(2−(6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ)フェニル)−3−メトキシアクリラートなどのメトキシアクリラート、ベンゾ(1,2,3)チアジアゾール−7−チオカルボン酸S−メチルエステル、プロパモカルブ、イマザリル、カルベンダジム、ミクロブタニル、フェンブコナゾール、トリデモルフ、ピラゾホス、フェナリモル、フェンピクロニル、ピリメタニル、および前記防カビ剤の1つまたはそれ以上を含む組み合わせなどの農業用防カビ剤であることができる。
【0090】
殺菌剤/防カビ剤の組み合わせを、本防腐剤組成物に含めることができる。殺菌剤/防カビ剤の1例はMETASOL D3TAであり、これはOndo−Nalco(テキサス州ヒューストン)から入手可能である、3,5−ジメチル−テトラヒドロ−1,3,5,2H−チアジアジン−2−チオンである。
【0091】
適した殺虫剤は、例えば、アセフェート、アルジカルブ、α−シペルメトリン、アジンホスメチル、ビフェントリン、ビナパクリル、ブプロフェジン、カルバリル、カルボフラン、カルタップ、クロルピリホス、クロルピリホスメチル、クロフェンテジン、シフルトリン、シヘキサチン、シペルメトリン、シフェノトリン、デルタメトリン、デメトン、デメトン−S−メチル、デメトン−O−メチル、デメトン−S、デメトン−S−メチルスルホキシド、デメフィオン−O、デメフィオン−S、ジアリホール、ジアジノン、ジコホル、ジクロトホス、ジフルベンズロン、ジメトエート、ジノカップ、エンドスルファン、エンドチオン、エスフェンバレラート、エチオフェンカルブ、エチオン、エトエートメチル、エトプロップ、エトリムホス、フェナミホス、フェナザフロール、酸化フェンブタスズ、フェニトロチオン、フェノキシカルブ、フェンスルホチオン、フェンチオン、フェンバレラート、フルシクロクスロン、フルフェノクスロン、フルバリネート、ホノホス、ホスメチラン、フラチオカルブ、ヘキシチアゾックス、イサゾホス、イソフェンホス、イソキサチオン、メタミドホス、メチダチオン、メチオカルブ、メトミル、メチルパラチオン、メビンホス、メキサカルバート、モノクロトホス、ニコチン、オメトエート、オキサミル、パラチオン、ペルメトリン、ホラート、ホサロン、ホスメット、ホスファミドン、ピリミカルブ、ピリミホスエチル、プロフェノホス、プロメカルブ、プロパルギット、ピリダベン、レスメトリン、ロテノン、テブフェノジド、テメホス、TEPP、テルブホス、チオジカルブ、トルクロホスメチル、トリアザメート、トリアゾホス、バミドチオンおよび前記殺虫剤の1つまたはそれ以上を含む組み合わせを含む。
【0092】
殺シロアリ剤は、他の殺虫剤の特性を損なわない限りにおいて、他の殺虫剤に加えて使用することができる。殺シロアリ剤は、ペルメトリン、イミダクロプリド、エトプフェンプロックスおよび前記薬剤の1つまたはそれ以上を含む組み合わせを含む。
【0093】
適した防腐剤の具体例は、塩化ジデシルジメチルアンモニウム(DDAC)、BARDAP(プロピオン酸N,N−ジデシル−N−メチルポリオキシエチルアンモニウム)、銅塩化ベンザルコニウムまたは塩化N−アルキルベンジルジメチルアンモニウム(BKC)などのアルキルアンモニウム化合物;ナフテン酸銅(NCU)またはナフテン酸亜鉛(NZN)などのナフテン酸の金属塩;バーサチック酸亜鉛などのバーサチック酸の金属塩;シプロコナゾール[(2RS,3RS;2RS,3SR)−2−(4−クロロフェニル)−3−(シクロプロピル−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−01]、テブコナゾール[(RS)−1−p−クロロフェニル−4,4−ジメチル−3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)ペンタン−3−01]、プロピコナゾール[1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール]、1−[2−(2’,4−ジクロロフェニル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノールまたは1−[2−(2’,4’−ジクロロフェニル)−4−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノールなどのトリアゾール類化合物;およびIF−1000[4−クロロフェニル−3−ヨードプロパルギルホルマール]、IPBC[3−ヨード−2−プロピニル−N−ブチルカルバメート]などの有機ヨウ素化合物および前記防腐剤の1つまたはそれ以上を含む組み合わせを含む。
【0094】
リグノセルロース防腐剤は、組み合わせで使用することができる。好ましい組み合わせは、シプロコナゾールおよびDDAC、シプロコナゾールおよびBARDAP、テブコナゾールおよびプロピコナゾールなどを含む。
【0095】
木材を腐朽する土壌細菌および木材を腐敗する真菌(主に、ケトミウム・グロボーサム(Chaetomium globosum)などの木材を腐敗する真菌)の増殖を抑制または予防するために有効な化合物もまた防腐剤として使用できる。このような化合物は、p−クミルフェノール(PCP)およびその塩(p−クミルフェノールナトリウム塩、p−クミルフェノールエチルアミン塩など)ならびに前記木材防腐剤の1つまたはそれ以上を含む組み合わせを含む。PCPは、木材を腐朽する土壌細菌、アスコミケテス(ascomycetes)および不完全真菌の増殖を抑制し、カビ防止剤および殺シロアリ剤として有用である。従ってPCPがとりわけ好ましい。PCPは、約200から1,000グラム/立方メートル木材(g/m3)の処理量(適用量)で、木材材料に十分な効果を発揮できる。
【0096】
本明細書に記載の全ての範囲は、包括的かつ組み合わせ可能であり、例えば、”約120°から約165°F、場合により135°から145°F”は、約120°から約145°F、約130°から約150°Fなどを含む全ての終点および中間の値ならびにそれらの組み合わせを含む。本明細書において、”第1の””第2の”など用語は、順序、量、または重要性のいずれをも指すものでなく、ある要素と他の要素とを区別するために用いられるものであり、本明細書において”a”および”an”という用語は、量の限定を意味するものでなく、引用した事項の少なくとも1つが存在することを示す。
【0097】
本発明の特定の実施形態および最良の形態が、本明細書に記載されているが、これらの実施形態は、説明のためのものであるにすぎない。本発明の精神および添付の特許請求の範囲を逸脱することのない修飾が可能であることは当業者に明白であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続相としての水、不連続相としてのワックス、乳化剤および一般構造
【化1】

(式中、Rは、C〜Cアルキルで場合により置換されることが可能である、チアゾリル、イソチアゾリルまたはチアジアゾリルなどの、窒素および硫黄を含有する複素環であることが可能であり、Rは、水素またはC〜Cアルキル、特に水素であることが可能であり、nは、0、1、2または3であり、Rのそれぞれの例は、独立して、水素、C〜Cアルキル、フェノキシ、C〜Cアルコキシ、ハロ、アミノ、C〜Cアルキルアミノ、ジC〜Cアルキルアミノ、イミダゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、チエニル、フリル、ピリル、ナフチル、フェニル、ハロフェニル、C〜CアルキルフェニルまたはC〜Cアルコキシフェニルであることが可能である。)
を有する防腐剤を含む、乳剤。
【請求項2】
該防腐剤が、ベンゾイミダゾール化合物を含む、請求項1の乳剤。
【請求項3】
該防腐剤が、チアベンダゾールを含む、請求項1の乳剤。
【請求項4】
該防腐剤が、乳剤の0.01から10重量%を占める、請求項1から3のいずれか1項の乳剤。
【請求項5】
不鹸化性ワックス、鹸化性ワックス、アルキルフェノール、ポリナフタレンスルホン酸、カルボキシメチルセルロース、鹸化剤および水を含む、請求項1から3のいずれか1項の乳剤。
【請求項6】
乳剤の全重量に基づいて約25重量%から約40重量%の量の少なくとも1つのワックス、乳剤の全重量に基づいて約2.5重量%から約4.5重量%の量の鹸化性ワックス、乳剤の全重量に基づいて約0.25重量%から約10.0重量%の量のアルキルフェノール、乳剤の全重量に基づいて約0.25重量%から約5.0重量%の量のポリナフタレンスルホン酸、乳剤の全10重量に基づいて約55重量%から約65重量%の量の水、約0.5%から約1の量の水酸化アルカリ金属を含む、請求項1から3のいずれか1項の乳剤。
【請求項7】
33重量%の不鹸化性ワックス、3重量%の鹸化性ワックス、0.5重量%のアルキルフェノール、0.5重量%のポリナフタレンスルホン酸、0.2重量%のカルボキシメチルセルロース、鹸化剤および水を含む、請求項1から3のいずれか1項の乳剤。
【請求項8】
一般構造
【化2】

(式中、Rは、C〜Cアルキルで場合により置換されることが可能である、チアゾリル、イソチアゾリルまたはチアジアゾリルなどの、窒素および硫黄を含有する複素環であることが可能であり、Rは、水素またはC〜Cアルキル、特に水素であることが可能であり、nは、0、1、2または3であり、Rのそれぞれの例は、独立して、水素、C〜Cアルキル、フェノキシ、C〜Cアルコキシ、ハロ、アミノ、C〜Cアルキルアミノ、ジC〜Cアルキルアミノ、イミダゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、チエニル、フリル、ピリル、ナフチル、フェニル、ハロフェニル、C〜CアルキルフェニルまたはC〜Cアルコキシフェニルであることが可能である。)を有する防腐剤を含有しない乳剤を製造すること、および
ついで乳剤に該防腐剤を添加すること
を含む、ワックス乳剤の製造方法。
【請求項9】
ペースト状の防腐剤を添加することを含む、請求項8の方法。
【請求項10】
該防腐剤を、防腐剤と水との混合物の形で、水−防腐剤混合物の約25固体重量%の量で添加することを含む、請求項8の方法。
【請求項11】
石膏および一般構造
【化3】

(式中、Rは、C〜Cアルキルで場合により置換されることが可能である、チアゾリル、イソチアゾリルまたはチアジアゾリルなどの、窒素および硫黄を含有する複素環であることが可能であり、Rは、水素またはC〜Cアルキル、特に水素であることが可能であり、nは、0、1、2または3であり、Rのそれぞれの例は、独立して、水素、C〜Cアルキル、フェノキシ、C〜Cアルコキシ、ハロ、アミノ、C〜Cアルキルアミノ、ジC〜Cアルキルアミノ、イミダゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、チエニル、フリル、ピリル、ナフチル、フェニル、ハロフェニル、C〜CアルキルフェニルまたはC〜Cアルコキシフェニルであることが可能である。)
を有する防腐剤を含む、石膏製品。
【請求項12】
石膏、水および一般構造
【化4】

(式中、Rは、C〜Cアルキルで場合により置換されることが可能である、チアゾリル、イソチアゾリルまたはチアジアゾリルなどの、窒素および硫黄を含有する複素環であることが可能であり、Rは、水素またはC〜Cアルキル、特に水素であることが可能であり、nは、0、1、2または3であり、Rのそれぞれの例は、独立して、水素、C〜Cアルキル、フェノキシ、C〜Cアルコキシ、ハロ、アミノ、C〜Cアルキルアミノ、ジC〜Cアルキルアミノ、イミダゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、チエニル、フリル、ピリル、ナフチル、フェニル、ハロフェニル、C〜CアルキルフェニルまたはC〜Cアルコキシフェニルであることが可能である。)
を有する防腐剤を含有する水中ワックス型乳剤からスラリーを作成し、該スラリーを固体製品に成形することを含む、石膏製品の製造方法。
【請求項13】
リグノセルロース材料と結合剤とを混合して混合物を作成し、該混合物を選択される形状に固化して複合製品を形成することにより製造されるリグノセルロース複合製品の耐水性を改善する方法であって、前記混合物に請求項1に記載の乳剤を添加することを含む、前記方法。
【請求項14】
リグノセルロース材料と結合剤とを混合して混合物を作成すること、該混合物に請求項1に記載の乳剤を添加することならびに該混合物およびその中に含有される乳剤を固体製品に成形することにより製造される、リグノセルロース複合製品。

【公表番号】特表2008−514599(P2008−514599A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533465(P2007−533465)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/027495
【国際公開番号】WO2006/036294
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(596174400)ヘキソン スペシャルティ ケミカルズ インコーポレーテッド (20)
【住所又は居所原語表記】180 East Broad Street,Columbus,Ohio 43215,United States of America
【Fターム(参考)】