説明

ワックス組成物薄膜、及びその製造方法

【課題】 防湿性及び透明性の高いワックス組成物薄膜を提供すること。
【解決手段】 本発明のワックス組成物薄膜は、ワックスを含有する組成物からなり、結晶化した前記ワックスの配向に伴い発現するX線回折ピークの前記ワックス組成物薄膜表面の法線方向の回折強度Ia及び該法線方向と90度をなす方向における回折強度Ibの比Ib/Iaが1.0より大きい値である。前記X線回折ピークが、回折角2θの21°付近に発現するアルキル鎖由来の回折ピークであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワックス組成物薄膜、それを具備する複合シート及びそれらの製造方法、該複合シートを用いた成形体、並びにワックス組成物薄膜の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、ワックスの融解完了温度未満の温度で、該ワックスと該ワックスと混合される被混合物に外力を加えて混合し、構成成分の分散が均一なワックス組成物の製造方法について先に提案している(下記特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−162037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようにして製造されたワックス組成物は、防湿剤や接着剤等の種々の用途に用いられるが、防湿剤として薄膜化した場合、所望の防湿性能を得ようとその厚みを増すと、透明性が低下して曇りが生じていた。このため、例えば当該ワックス組成物を防湿層とするシートで容器を被覆したり直接容器を形成したときに、ワックス組成物の厚みによっては容器本体の表示や中身が見え難くなるといった課題を有していた。
【0005】
また、該ワックス組成物を防湿層とした複合シートを形成した場合、該ワックス組成物の防湿層には防湿性が低く且つシートとしての十分な強度が不足していた。そこで、防湿性を確保し無い為、積層シートとしての強度も確保するには、防湿層の厚みを増し、さらに防湿層以外のシートの厚みも増加させねばならず、その結果、薄い積層シートを得ることが困難であった。防湿層の分だけ厚いシートとなってしまう。
【0006】
従って本発明は、透明性が高いワックス組成物薄膜、それを具備する複合シートを提供することを目的とする。また、本発明は、防湿性が高い為により薄くすることが可能なワックス組成物薄膜、それを具備する複合シートを提供することを目的とする。さらに本発明は、上記ワックス組成物薄膜及びそれを具備する複合シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ワックスを含有する組成物を特定の温度条件で薄膜化すると、ワックスの結晶が面方向に配向し、その結果、膜が厚くても透明性が高く、より防湿性が向上したワックス組成物薄膜が得られること及びを知見し、前記透明性はワックスの結晶の配向性と密接に関係することを知見し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、ワックスを含有する組成物からなるワックス組成物薄膜であって、結晶化した前記ワックスの配向に伴い発現するX線回折ピークの前記ワックス組成物薄膜表面の法線方向の回折強度Ia及び該法線方向と90度をなす方向における回折強度Ibの比Ib/Iaが1.0より大きい値であるとなるワックス組成物薄膜。ワックスを主体と含有する組成物からなり、ワックスの結晶が面方向に配向している事により、X線回折による回折角2θが、21°付近に発生するアルキル鎖由来の回折ピークにおいて、薄膜表面の法線方向の回折強度Iaと、法線と90度をなす方向の回折強度Ibとの比Ib/Iaが、1.0よりも大きい値となるワックス組成物薄膜を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、X線回折ピークが、回折角2θの21°付近に発現するアルキル鎖由来の回折ピークであるワックス組成物薄膜を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、厚みが10μm〜500μmであり、へーズ値が60.0%以下であるワックス組成物薄膜を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、40℃、90%RHにおける透湿度が0.40g・mm/(m2・24h)以下であるワックス組成物薄膜を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、高分子化合物を含有するワックス組成物薄膜を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、前記本発明のワックス組成物薄膜を具備する複合シートを提供するものである。
【0014】
また、本発明は、前記本発明の複合シートを用いた成形体を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、後述するように、前記本発明の複合シートを部分的に加熱することにより、加熱した部分の前記X線回折強度の比Ib/Ia、即ちワックスの結晶の配向状態を変化させることで、透明性(ヘーズ値)や透湿度を制御し、文字、模様、絵柄などを表示させたり、部分的に透湿度を変化させる加工方法、並びにこの加工方法によって加工され文字、模様、絵柄などを具備した複合シート及び成形体、部分的に透湿度が異なるように設けられた複合シート及び成形体を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、ワックスを含有するワックス組成物を該組成物の99%融解温度以下においてシートの間に挟んで薄膜化した後、該シートを分離するワックス組成物薄膜の製造方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、ワックスを含有するワックス組成物を該ワックス組成物の99%融解温度以下においてシートの間に挟んで積層化する複合シートの製造方法を提供するものである。
【0018】
また、本発明は、ワックスを含有するワックス組成物をシートの間に挟んで積層中間体を得た後、該積層中間体を前記ワックス組成物の99%融解温度以下においてさらに圧延又は延伸する複合シートの製造方法を提供するものである。
【0019】
本発明によれば、優れた防湿性能を有し、厚くても透明なワックス組成物薄膜、それを具備する複合シート及びそれらの好適な製造方法、該複合シートを用いた成形体、並びに該ワックス組成物薄膜の加工方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を、その好ましい実施形態に基づいて説明する。
【0021】
図1は、本発明の複合シートの一実施形態を模式的に示したものである。図1に示すように、複合シート1は、ワックス組成物薄膜2とワックス組成物薄膜2の両側に積層されたシート3、4とを具備する。
【0022】
複合シート1は、後述する厚みと透湿度とのバランスを考慮すると、へーズ値が60.0%以下が好ましく、50.0%以下がより好ましく、30.0%以下がさらに好ましい。ここで、複合シート1のヘーズ値は、以下の式により計算される(JIS K7105)。
H = (Td/Tt)×100
ここで、Hはヘーズ(%)、Tdは拡散透過率(%)、Ttは全光線透過率(%)である。
【0023】
複合シート1の厚みは、その用途に応じて設定される。複合シート1を容器等の包装材に用いる場合には、その厚みは、20μm〜5000μmが好ましく、20μm〜3000μmがより好ましい。
【0024】
複合シート1の透湿度は、その用途に応じて設定される。複合シート1を防湿性が要求される容器等の包装材に用いる場合には、その40℃、90%RHにおける透湿度は3.0g・mm/(m2・24h)以下が好ましく、2.0g・mm/(m2・24h)以下がより好ましい。複合シート1の透湿度は、所定厚みのフィルムを作製し、そのフィルムについてカップ法(JIS Z0208 条件B)によって測定した透湿度を厚み1mmのフィルムに換算した値である。この透湿度の換算値は、透湿度がフィルム厚みに反比例すると仮定し、カップ法で測定した透湿度にフィルム厚みを乗じることにより算出される。
【0025】
複合シート1を構成するワックス組成物薄膜2は、ワックスを含有する組成物からなる。ワックスの含有量は、用途に応じて適切に設定すればよく、好ましくは体積分率で20%以上、より好ましくは30%以上である。高い防湿性を得る必要がある場合には、ワックスが好ましくは体積分率で40%以上、より好ましくは50%以上である。
【0026】
ワックス組成物薄膜2には、高分子化合物を含ませることができる。ワックス組成物中のワックスの含有量は、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは65〜75質量%である。ワックス組成物中の高分子化合物の含有量は好ましくは5〜50質量%、より好ましくは25〜35質量%である。ワックス組成物薄膜2には、必要に応じ無機物や有機物の粉体、可塑剤、酸化防止剤や着色剤などの各種添加剤を適量含ませることができる。
【0027】
前記ワックスには、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油系ワックス、合成ワックス等を用いることができる。
該植物系ワックスとしては、ライスワックス、カルナバワックス、木ろう、キャンデリラワックス等が、該動物系ワックスとしては、みつろう、ラノリン、鯨ろう等が、該鉱物ワックスとしては、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等が、該石油系ワックスとしては、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス等が、該合成ワックスとしては、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の合成炭化水素、硬化パーム油、ステアリン酸ステアリル、ジステアリルケトン等の油脂合成ワックス等が挙げられる。使用するワックスの融点に関しては、ワックス組成物の使用目的、使用環境によって適時選択する事ができるが、例えば図1の様な複合シートの形態とする場合には、シート3、4との接着性が必要である為、適度な量の低融点成分を含有し、JIS K2235−5.3.2に記載の方法で測定された融点が40℃〜120℃であるものが好ましく、60℃〜100℃であるものがより好ましい。
【0028】
また、前記ワックス組成物に生分解性が要求される場合には、該組成物の構成成分として生分解度(JIS K6950に定められた)が50%以上のものを用いることが好ましく、60%以上のものを用いることがより好ましい。
【0029】
前記高分子化合物は、ワックスの固体状態もしくは溶融状態の物性改質や機能付加等を目的として用いることができる。例えば、固体状態の力学強度(破断強度、衝撃強度、曲げ強度、柔軟性付与等)、他の材料への接着性向上や、溶融状態での溶融粘度向上等である。
【0030】
前記高分子化合物としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の結晶性高分子化合物、未架橋のゴムやポリエステル系、ポリアミド系、ポリスチレン系、ポリ(メタ)アクリル系の共重合体等の非晶性高分子化合物若しくは低結晶性高分子化合物等が挙げられる。ただし、混合する高分子化合物を微細に分散するためには、結晶性高分子化合物の場合にはワックスの融解完了温度以下である所望の混合温度において溶融するものが好ましく、非晶性高分子化合物の場合にはワックスの融解完了温度以下である所望の混合温度以下にガラス転移温度を有するものが好ましい。
【0031】
具体的には、前記結晶性高分子化合物としては、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリブチレンテレフタレートアジペート、ポリブチレンサクシネートアジペート等の低融点高分子化合物が挙げられる。また、前記非晶性高分子化合物としては、イソプレンゴム、天然ゴム、ポリd,l−乳酸等が挙げられる。
【0032】
ワックス組成物薄膜2に生分解性が要求される場合には、物性改質に高い効果を有する生分解性の高分子化合物として、上記の中でも特に天然ゴム又は合成イソプレンゴムが好ましく用いられる。ワックスと、天然ゴム又は合成イソプレンゴムとの混合において、本発明は非常に高い効果を発現し、従来得られなかった物性改質効果を有する組成物を、溶剤等を用いることなしに得ることができる。ワックスと天然ゴム又は合成イソプレンゴムを後述の方法により混合することで、天然ゴム又は合成イソプレンゴムをワックス中に極めて均一に混合させることが可能となり、ワックスの溶融粘度を非常に高くしたり、ワックス融点以下でのワックスの脆さを大きく改善するなどの効果が得られる。
前記高分子化合物は、それぞれ単独で使用することもでき、二種以上を併用することもできる。
【0033】
また、前記有機物粉体としては、コーンスターチ、デンプン、各種高分子化合物粉体などが挙げられ、前記無機物粉体としては、酸化チタン、タルク、雲母、スメクタイト、シリカ等が挙げられる。
【0034】
特に、疎水性の高いワックス中に、親水性の比較的高い粉体を分散させる場合、ワックスの融点以上では粉体が凝集してしまい細かな分散が不可能であるが、後述の方法を用いることで高い分散性を得ることが可能となる。
【0035】
前記ワックス組成物には、混合に影響を与えない範囲で、酸化防止剤、着色剤、分散助剤、その他必要に応じて適宜添加剤等を含ませることもできる。
【0036】
ワックス組成物薄膜2は、組成物中のワックスの結晶が当該薄膜の面方向に配向している為、X線回折による該薄膜表面の法線方向の回折強度Iaと該法線方向と90度をなす方向の回折強度Ibとの比Ib/Iaが1.0よりも大きい値となる。Ib/Iaの値は、結晶の配向している割合が多いほど透明性が高くなるという観点から1.2以上が好ましく、1.5以上がより好ましい。
ここで、X線回折によるワックス組成物薄膜表面の法線方向の回折強度Iaと、該法線方向と90度をなす方向の回折強度Ibは、例えば後述する実施例のような広角X線回折測定により求めることができ、その回折角2θが21°付近(20.8°から21.8°の間)に発現するアルキル鎖由来の回折ピークにおける、前記法線方向の回折強度Iaと、該法線と90度をなす方向の回折強度Ibを測定することにより求めることができる。
【0037】
ワックス組成物薄膜2は、後述する防湿性(透湿度)と透明性のバランスを考慮すると厚みは10μm〜500μmが好ましく、15μm〜300μmがより好ましく、25μm〜200μmがさらに好ましい。
【0038】
ワックス組成物薄膜2のヘーズ値は、低い程好ましいが、上述の厚みと後述する防湿性(透湿度)とのバランスを考慮すると、60.0%以下が好ましく、50.0%以下がより好ましく、30.0%以下がさらに好ましい。ここで、ワックス組成物薄膜のヘーズ値は、以下の式により計算される(JIS K7105)。
H = (Td/Tt)×100
ここで、Hはヘーズ(%)、Tdは拡散透過率(%)、Ttは全光線透過率(%)である。
【0039】
ワックス組成物薄膜2は、40℃、90%RHにおける透湿度が3.0g・mm/(m2・24h)以下であることが好ましく、2.0g・mm/(m2・24h)以下であることがより好ましい。ここで、ワックス組成物薄膜の透湿度は、該ワックス組成物薄膜についてカップ法(JIS Z 0208 条件B)によって測定した透湿度を厚み1mmの薄膜に換算した値である。この透湿度の換算値は、透湿度が薄膜の厚みに反比例すると仮定し、カップ法で測定した透湿度に薄膜の厚みを乗じることにより算出される。
ただし、ワックス組成物のみからなる薄膜を作成し、その透湿度を上記の方法で測定することが困難である場合が多いため、その場合には透湿度が既知のシートと、ワックス組成物薄膜との積層シートを作製し、ワックス組成物薄膜の透湿度を求める。例えば、シート(A)/ワックス組成物薄膜(B)/シート(C)からなる3層複合シートを作製し、上記の方法で複合シート全体の透湿度を測定し、その透湿度をdとする。そして、別途、シート(A)および(C)の透湿度を同様に測定し、それぞれの透湿度をaおよびcとする。このとき、ワックス組成物薄膜(B)の透湿度をbとすると、下記の関係が成り立つ。ここで、a、b、c、dは、実際の厚みにおける透湿度であり、1mmの厚みに換算した透湿度ではない。
1/d=1/a+1/b+1/c
この式から、未知数であるワックス組成物薄膜(B)の透湿度bを求めることができる。
【0040】
前記シート3、4(図1参照)の材質は、複合シート1の用途に応じて選択される。シート3、4としては、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂が挙げられる。
具体的には、熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクトンとポリブチレンサクシネートとの混合物若しくは共重合物、ポリヒドロキシブチレートとポリヒドロキシバリレートとの共重合物、ポリブチレンサクシネートとポリブチレンアジペートとの混合物若しくは共重合物、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンサクシネートとの共重合物、ポリブチレンテレフタレートとポリブチレンアジペートとの共重合物が挙げられる。また、上記熱可塑性ポリエステル樹脂には、共重合成分として、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸、p−オキシ安息香酸、ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸や、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ナフタレンジオール等のグリコール成分の1種もしくは2種以上が、重合体中に以下共重合されていても良い。上記ポリオレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン−メタクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩、無水マレイン酸等で変性された酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン、酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体、グリシジルメタクリレート等を共重合したエポキシ変性ポリエチレン等のオレフィン系樹脂等、上記ポリ(メタ)アクリル系樹脂としては、メチルメタクリレート、メチルアクリレート(以下、両方を総称して、(メタ)アクリレートと称する)、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの低級アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル等の単独重合体またはこれらを共重合した共重合(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体等、上記ポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、ポリメチルスチレン等、上記ポリカーボネート系樹脂としては、ポリ(オキシカルボニルオキシビス(1,4−(3,5−ジクロロフェニレン))、ポリ(オキシカルボニルオキシ−1,4−フェニレンブチリデン−1,4−フェニレン)、ポリ(オキシカルボニルオキシ−1,4−フェニレンシクロヘキシリデン−1,4−フェニレン)、ポリ(オキシカルボニルオキシ−1,4−フェニレン−1,3−ジメチル−ブチリデン−1,4−フェニレン)、ポリ(オキシカルボニルオキシ−1,4−フェニレンジフェニル−メチレン−1,4−フェニレン)、ポリ(オキシカルボニルオキシ−1,4−フェニレンエチリデン−1,4−フェニレン)、ポリ(オキシカルボニルオキシ−1,4−フェニレンイソブチリデン−1,4−フェニレン)、ポリ(オキシカルボニルオキシ−1,4−フェニレンイソプロピリデン−1,4−フェニレン)、ポリ(オキシカルボニルオキシ−1,4−フェニレン−1−メチル−ブチリデン−1,4−フェニレン)、ポリ(オキシカルボニルオキシ−1,4−フェニレン−1−プロピル−ブチリデン−1,4−フェニレン)等のビスフェノール系の樹脂等、上記ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のポリアミド系樹脂が挙げられ、使用に際しては1種若しくは2種以上を併用して用いることができる。複合シート1を生分解性とする場合には、シート3、4にも生分解性のシートを用いる。この場合シート3、4の材質としては、生分解性を有する脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルとの共重合系樹脂、又は脂肪族ポリカーボネート系樹脂が好ましい。具体的には、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリカプロラクトンとポリブチレンサクシネートとの混合物若しくは共重合物(PCL/PBS)、ポリヒドロキシブチレートとポリヒドロキシバリレートとの共重合物(PHB/PHV)、ポリブチレンサクシネートとポリブチレンアジペートとの混合物若しくは共重合物(PBS/PBA)、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンサクシネートとの共重合物(PET/PES)、ポリブチレンテレフタレートとポリブチレンアジペートとの共重合物(PBT/PBA)等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は二以上を組み合わせて用いることができる。またシート3、4には、ガラス、セラミック、金属、布、不織布、紙などの樹脂以外の材質を使用することもできる。シート3、4は同じ材質としても異なる材質としてもよく、透明な樹脂フィルムと紙、ガラスと金属といった透明性や各種の物性の異なる材質の組み合わせでもよい。
【0041】
シート3、4の、透湿度、厚み及びヘーズ値は、複合シート1の用途に応じて設定される。複合シート1を包装材に用いる場合には、シート3、4の厚みは5μm〜4000μmが好ましく、10μm〜1000μmがより好ましく、ヘーズ値は、20.0%以下が好ましく、10.0%以下がより好ましい。
その他、用途に応じて、酸素などのガス透過度、光透過度、弾性率、衝撃強度、生分解性など各種物性が最適な複合シート1を得ることができる。
【0042】
複合シート1は、透明性が高く、薄くて防湿性に優れる点を利用することで種々の用途に用いることができる。例えば、容器本体表面の被覆に用いられるほか、各種包装材、板紙(生分解性の紙)と複合シート1とをラミネートしたラミネート紙等の防湿紙に用いられる。また、後述するような本発明の成形体にも用いることができる。該防湿紙からカップや箱等の形態に折曲加工や成形した容器等の各種成形体にも用いることができる。
また、複合シート1をプレス成形や真空圧空成形等により成形して単体でパウチ容器等の容器(成形体)としたり、該容器が内容器に用いられたいわゆるバッグ・イン・ボックスの形態の容器(成形体)にも用いることもできる。
【0043】
また、複合シート1や該複合シートからなる成形体自体を部分的に熱を加えて冷却することで、ワックスが融解して再び結晶化するときにその配向が乱れてワックス組成物薄膜(複合シート)の透明性(ヘーズ値)や透湿度が変化することを利用し、種々の用途に適用することができる。
【0044】
透明性の変化(低下)を利用する例としては、複合シートへの文字、記号、模様、絵柄の表示、包装体への賞味期限などの表示、部分的に中身が見えないようにした包装体、熱を加えて模様を表示できる記録素材や玩具などが挙げられる。できるまた、透湿度の変化を利用する例としては、部分的に透湿度を変化させて全体の透湿度を最適な値に調整した包装体、透湿度の高い部分と低い部分とを有する包装体、加熱により透湿度を変化させられる包装体などが挙げられるできる。
【0045】
複合シート1は、上述のような最終的な使用形態においても、前記その端部から前記ワックス組成物薄膜2の成分が外部にもれ出さないように上述の二つのシート3、4どうしの融着処理が施された形態とすることが好ましい。例えば、包装袋やパウチ容器の形態とする場合には、その封止部分において各シートの端部どうしを融着し、前記成分のもれを防止することが好ましい。また、容器本体に複合シート1を被覆する容器の場合には、容器を覆うように圧空成形や真空成形によって複合シート1を成形した後、不要な部分をカットする際に、加圧しながら溶断する等して二つの前記シートの融着処理を施し、前記成分のもれを防止することが好ましい。さらに、複合シート1を成形して単体で容器の形態とする場合にも、複合シート1による被覆の場合と同様に、不要部分のカット時に加圧しながら溶断する等して前記シート3、4の融着処理を施すことが好ましい。
【0046】
次に、本発明のワックス組成物薄膜を具備する複合シートの製造方法を、その好ましい実施形態に基づいて説明する。
【0047】
実施形態の複合シートの製造方法では、先ず、ワックス組成物薄膜の原料となるワックス組成物を次のようにして調製する。
【0048】
前記ワックスと前記被混合物とを該ワックスの融解完了温度未満の温度、好ましくはDSC測定により得た融解曲線から求めたワックスの溶融ピーク温度以下の温度で混練機によって混合して組成物を得るのが好ましい。溶融ピークが複数ある場合は、融解熱量の最も大きなピークのピーク温度以下で混合することが好ましい。
かかる条件で混合することで、ワックスの融解によるワックスの急激な粘度低下もなく、被混合物に十分な剪断力が加わり、均一なワックス組成物を得ることができる。ワックスの融解完了温度未満の温度で混合すると、未融解状態のワックスの結晶が残っているため、ワックスを見かけ上高粘度の流動体として扱うことができるので、一般的に行われているプラスチック材料のコンパウンドと同様の方法により、ワックスと被混合物の混合を行うことができる。
【0049】
より好ましい混合温度の選定方法を述べる。すなわち、DSC測定により得た図2に示すようなワックスの融解曲線から、融解ワックス成分の全吸熱量をΔHと、混合温度よりも低温側の吸熱量のΔH’の比ΔH’/ΔHが、好ましくは0.7以下となる温度範囲、より好ましくは0.5以下となる温度範囲、さらに好ましくは0.3以下となる温度範囲を選定することで、一層良好な混合が可能となる。ワックスの融解開始温度よりも低い温度で混合を行うことに支障は無いが、結晶性の高い硬いワックスなどの場合には、混合温度で粘性を有することが均一な混合物を得る上で好ましい場合があり、その場合にはΔH’/ΔHの下限の温度として、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上となるよう選択する。同様の考え方として、ワックスの融解開始温度近傍もしくはそれよりも低い温度で混合する場合に、ワックスの可塑化効果を有するオイル成分などを適量(ワックス組成物中に好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下となるように)を添加することも可能である。
【0050】
最適な混合温度は、被混合物の物性に合わせて、前記の混合温度の範囲から適宜選択することができる。例えば、被混合物が非晶性高分子である場合は、高分子化合物のガラス転移温度以上で混合することが好ましい。被混合物が結晶性高分子化合物である場合は、高分子化合物の融点以上の温度であることが好ましい。被混合物が無機又は有機の粉体である場合は、粉体の均一分散を行いやすいよう、ワックスの融解完了温度よりも十分に低い温度(例えば、ワックスの融解開始温度よりも低い温度)で混合することが好ましい。ただし、ワックスのガラス転移温度よりも低い温度での混合は、ワックスが硬過ぎて、分散状態が悪化したり、混合装置に過度の負荷がかかるなどの悪影響がでる場合があるので、ワックスのガラス転移温度以上で混合することが好ましい。また、ワックスや被混合物の温度依存性を考慮し、前記の好ましい範囲の中でも、両者の物性が混合に最適な状態になるように混合温度を調整することが好ましい。
【0051】
本実施形態におけるワックスの融解完了温度、融解ピーク温度、ΔHとΔH’の比ΔH’/ΔHは、例えば、以下の方法で求めることができる。
測定機:セイコー電子工業(株)の型式DSC220
試料容器:品番PN/50−020(アルミ製オープン型試料容器、容量15μl)および品番PN/50−021(アルミ製オープン型試料容器クリンプ用カバー)
試料重量:約10mg
昇温速度、降温速度:5℃/min
測定温度範囲:用いるワックスに応じて、最適な範囲を選択する。融解完了温度および融解ピーク温度は、一度融解させた後に5℃/minの速度で結晶化させた後、再度5℃/minの速度で昇温させたときのデータを使用して求める。
具体例を挙げると、[第1昇温過程]−30℃から130℃、[降温過程]130℃(5分間保持)から−30℃、[第2昇温過程]−30℃から130℃と連続して測定を行い、第2昇温過程のデータを使用する。
融解完了温度:図3に示すように、融解ピークの高温側のベースラインの接線と、ピークの高温側傾斜ラインの1/5ピーク高さに位置する点の接線とが交差する点の温度を融解完了温度とする。複数のピークが存在する場合は、最も高温側に位置するピークを選択して、融解完了温度を求める。
主ピーク温度:融解曲線のピークの温度を前記データから求める。複数のピークを持つ場合は、融解熱量の最も大きなピークを選択し、それを融解ピーク温度とする。
ΔH:全ての融解ピークの吸熱量の合計値
ΔH’:混合温度以下の吸熱量
【0052】
ワックス組成物の調整にあたり、特にワックスの含有量が体積分率で40%以上の場合や大容量のバッチ式混練機を用いる場合には、マスターバッチ調整工程を取り入れる事で、効率良く均一なワックス組成物を調整できる。そこで、本実施工程におけるワックス組成物の調整方法では、マスターバッチ法によるワックスの調整方法について説明する。マスターバッチ法におけるワックス組成物の調整方法は、マスターバッチ調整工程と本練工程とに大別される。
【0053】
ここでは、ワックスと高分子化合物からなるワックス組成物で、ワックスの含有量が50重量%を超える場合を例に、ワックス組成物の製造方法を説明する。マスターバッチ調製工程においては、本練り工程に先立ち予めマスターバッチを調製する。マスターバッチは、該マスターバッチの質量基準で5〜45質量%のワックス及び55〜95質量%の高分子化合物を含む。ここで留意すべきことは、マスターバッチの組成が、目的物であるワックス組成物の組成に対して逆転していることである。即ち、マスターバッチでは高分子化合物が主成分であり且つワックスが副成分であるのに対して、目的物であるワッスク組成物ではワックスが主成分であり且つ高分子化合物が副成分である。このような組成のマスターバッチを予め調製しておき、該マスターバッチにワックスを添加し混練することで、ワックスと高分子化合物とが均一に且つ短時間で混合されることを本発明者らは知見したものである。特に大容量のバッチ式混練機を用いて混練する場合には、初めからワックス組成物の組成通りにワックスと高分子化合物とを混練しても、つまり主成分たるワックスに副成分である高分子化合物を混練しても、混練物中に高分子化合物の小粒が残存してしまい両者を均一に混合させることができない。
【0054】
逆に、5〜45質量%のワックスと55〜95質量%の高分子化合物とを混練すると、つまり主成分たる高分子化合物に副成分たるワックスを混練すると、両者は容易に混合し、両者が均一に混合されたマスターバッチが得られることを本発明者らは知見した。そして、このようにして得られたマスターバッチにワックスを添加して、高分子化合物の濃度を希釈することで、ワックスと高分子化合物とが均一に混合して、目的物であるワックス組成物が得られる。したがって、ワックスの含有量が少ない場合には、マスターバッチ法を用いる必要はない。
【0055】
ワックス組成物の製造には、各種の混練機、例えばバッチ式の加圧ニーダー、オープンニーダー、二軸混練機、ロール混練機等を用いることができる。これらの混練機においては、混練時の温度制御の観点から、混合槽や、ローター及びスクリューなどの可動部を冷却できる仕様となっていることが好ましい。
【0056】
バッチ式の混練機を用いてワックスと高分子化合物とを混練する場合には、該混練機に投入するワックス及び高分子化合物の総容量が、該混練機の容量の60〜100%、特に75〜85%となるように、ワックス及び高分子化合物を該混練機に投入することが、十分な剪断力下に両者が混合されるようになる点から好ましい。混合槽の容量は、使用するバッチ式の混練機のタイプに応じて様々であり特に制限はない。目的物であるワックス組成物の生産量に応じて適切な容量を選択すればよい。
【0057】
マスターバッチの調製においては、ワックスの融解完了温度未満の温度で該ワックスと高分子化合物とを混練することが好ましい。ワックスの融解完了温度未満の温度であれば未融解状態のワックスの結晶が残っていることから、ワックスを見かけ上高粘度の流動体として扱うことができるので、一般的に行われているプラスチック材料のコンパウンドと同様の方法により、ワックスと高分子化合物とを混練させることができる。また、ワックスの融解に起因するワックスの急激な粘度低下がなく、高分子化合物に十分な剪断力が加わり十分な混練がなされる。
【0058】
マスターバッチの調製においては、ワックス及び高分子化合物を混練機に投入する手順に特に制限はない。例えば、ワッスクの全量と高分子化合物の全量を何れも一括して混練機に投入し混練する方法を採用することができる。しかし、この方法よりも、全量の高分子化合物を混練機に一括投入し、次いでワックスを混練機に分割投入する方法を採用する方が、両者を一層均一に混合させ得ることが判明した。
【0059】
ワックスを分割投入する場合には、一回当たりのワックスの投入量が、先に混練機に投入してある非晶性高分子の全量に対して1〜15質量%、特に2〜6質量%となるようにすることが好ましい。つまり一回当たりのワックス投入量を比較的少量とすることが好ましい。このような分割投入をすることで、ワックスと高分子化合物とを一層均一に混合させることができる。
【0060】
またワックスを分割投入する場合には、分割投入の初期においては、投入量を相対的に少量とし、後期においては相対的に多量とすることが好ましい。特に、ワックスの投入回数に連れてその投入量が漸次多くなるようにすることが好ましい。このような分割投入をすることで、混練時間を短縮化できる。混練時間の短縮は、製造コストの低減のみならず、剪断力等に起因する高分子化合物の分子量低下を防止する点から特に効果的である。
【0061】
以上の操作によってマスターバッチが得られる。次に得られたマスターバッチとワックスとを混練する本練り工程を行う。この場合、マスターバッチを混練機から一旦取り出し、別の混練機を用いて本練り工程を行うことができる。その場合の混練機としては、マスターバッチ調製工程において用い得るとして先に列挙したものと同様の混練機を用いることができる。或いは、マスターバッチ調製工程で用いた混練機を引き続き用いて本練り工程を行ってもよい。マスターバッチ調製工程で用いた混練機を引き続き用いる場合であっても、マスターバッチを混練機から一旦取り出し、その一部を用いることが好ましい。この理由は次の通りである。先に述べた通り、マスターバッチ調製工程において、十分な剪断力下にワックスと高分子化合物とを混合させるには、混練機に投入する両者の総容量を混練機の混合槽の容量の60〜100%とすることが好ましい。従って、マスターバッチが出来上がった時点においては、混練機の混合槽はマスターバッチでほぼ満たされている。それ故、マスターバッチを取り出さずに更にワックスを添加する余裕がないこともあるからである。
【0062】
マスターバッチ調製工程と同様に本練り工程においても、バッチ式の混練機に投入するワックス及びマスターバッチの総容量が、該混練機の容量の60〜100%、特に80〜90%となるように、ワックス及びマスターバッチを混練機に投入することが、十分な剪断力下に両者が混合されるようになる点から好ましい。
【0063】
混練時の温度条件もマスターバッチ調製工程の場合と同様とすることができる。つまりワックスの融解完了温度未満の温度で混練することが好ましく、またワックスのガラス転移温度以上で混練することも好ましい。更に高分子化合物のTm以上もしくはガラス転移温度以上で混合することも好ましい。
【0064】
本練り工程においては、ワックス及びマスターバッチを混練機に投入する手順に特に制限はない。例えば、ワッスクの全量とマスターバッチの全量を何れも一括して混練機に投入し混練する方法を採用することができる。また、全量のマスターバッチを混練機に一括投入し、次いでワックスを混練機に分割投入する方法を採用することもできる。後者の方法の方が、ワックスとマスターバッチとを一層均一に混合させることができる。この事情はマスターバッチ調製工程の場合と同様である。
【0065】
ワックスを分割投入する場合には、一回当たりのワックス投入量を比較的少量とすることが好ましい。具体的には、一回当たりのワックスの投入量が、先に混練機に投入してあるマスターバッチの全量に対して5〜50質量%、特に6〜30質量%となるようにすることが好ましい。このような分割投入をすることで、ワックスとマスターバッチとを一層均一に混合させることができる。
【0066】
またワックスを分割投入する場合には、分割投入の初期においては、投入量を相対的に少量とし、後期においては相対的に多量とすることが好ましい。特に、ワックスの投入回数に連れてその投入量が漸次多くなるようにすることが好ましい。このような分割投入をすることで、マスターバッチ調製工程の場合と同様に混練時間を短縮化できる。
【0067】
以上の本練り工程によって、ワックスと高分子化合物とが均一に混合したワックス組成物が得られる。得られたワックス組成物は、混練中に気泡を含むことがある。その気泡を抜くために脱泡を行ってもよい。脱泡には一般的な方法を用いることができる。例えば、減圧下にある恒温槽中でワックス組成物をワックスの融解完了温度以上の温度に保持する方法がある。また混練操作を、減圧手段を持つ混練装置を用いて減圧下でワックスの融解完了温度以上で混合する方法などが用いられる。
【0068】
二軸混練機などを用いて混練を行う場合には、ワックスの融解完了温度未満の温度に制御した混合ゾーンの後ろに、ワックスの融解完了温度以上の温度に加熱した減圧ゾーンを設けて脱泡するという方法も選択できる。複数の二軸押出機、または二軸押出機と単軸押出機を組み合わせて、それぞれで混合と脱泡を行うことも可能である。勿論ワックス組成物の具体的な用途や、本練り工程以降のワックス組成物の加工内容によっては、脱泡の必要がない場合もある。
【0069】
ワックス組成物中への有機物粉体や無機物粉体、可塑剤、酸化防止剤などを添加する場合は、添加する物質により適切なタイミングで、必要に応じて分割して投入すればよい。
【0070】
本実施形態におけるワックス組成物の調製方法によれば、前記ワックス組成物を短時間で収率よく製造することができ、被混合物をワックス中に均一に分散させることができる。特に、ワックスと天然ゴムもしくはイソプレンゴムとの混合を行った場合には、ワックスが未溶融の状態であっても極めて均一な分散が可能となる。
【0071】
次に、上述のようにして得られたワックス組成物をその99%融解温度以下においてシート3、4の間に挟んでワックス組成物を薄膜化しながら積層させる。
この様にしてワックス組成物が薄膜化される際、結晶が面方向に配向した構造になり、透明性が高く、防湿性がより向上したワックス組成物薄膜が得られる。なお、薄膜化時のワックス組成物の好ましい温度は、用いるワックスの種類によって異なる。
【0072】
ここで、ワックス組成物の99%融解温度とは、DSC測定により得たワックス組成物の融解曲線から、融解成分の全吸熱量ΔHと、薄膜化温度よりも低温側の吸熱量ΔH”の比ΔH”/ΔHが、0.99になる温度である。
【0073】
本実施形態では、図4に示すように、前記ワックス組成物をシート3、4の間に供給し、これらを所定温度に設定された一対のローラー5、6間に送り込んで圧延させ、ワックス組成物を薄膜化しながらシート3、4と積層させ、複合シート1とする。
【0074】
シート3、4に透明なシートを用いた場合、このようにして製造された複合シート1は、前記防湿性及び透明性を有するワックス組成物薄膜2を具備しているため、防湿性及び透明性に優れている。
【0075】
ワックス組成物薄膜2のみを得る場合には、前記シート3、4のワックス組成物との接触面に剥離性処理を施しておき、複合シート1を作製した後シート3、4を分離することによって得ることができる。剥離性処理には、シリコーン樹脂の塗布等の公知の処理方法が採用される。
【0076】
複合シート1は、必要に応じ、さらに部分的又は全体的に加熱し冷却することで、ワックスが融解し再び結晶化するときの配向の乱れを利用し、ワックス組成物薄膜の透明性(ヘーズ値)や透湿度を制御することができる。加熱温度としては、使用するワックスの種類や目的によりその最適値は異なるが、複合シートの圧延又は延伸を行った温度を上回る温度に加熱することで、ワックスの結晶の配向性を低下させることが可能である。配向性の低下の程度をより大きくするためには、複合シートの圧延又は延伸を行った温度よりも10℃以上高い温度が好ましく、ワックス組成物の99%融解温度以上であることがより好ましい。
【0077】
このようにして得られた複合シートは、透明性の変化(低下)を利用し、複合シートに文字、記号、模様、絵柄を表示したり、包装体への賞味期限などを表示したり、部分的に中身が見えないようにした包装体としたり、熱を加えて模様を表示できる記録素材や玩具などに応用することができる。
【0078】
できるまた、透湿度の変化を利用する例としては、部分的に透湿度を変化させて全体の透湿度を最適な値に調整した包装体、透湿度の高い部分と低い部分とを有する包装体、加熱により透湿度を変化させられる包装体などが挙げられるできる。
【0079】
ワックス組成物薄膜2及び複合シート1は、上述した実施形態の製造方法以外に、以下の実施形態によって製造することもできる。なお、得られたワックス組成物薄膜や複合シートのワックスの結晶の配向性、透明性及び透湿性の制御は前述の方法と同様にして行うことができる。
【0080】
この実施形態では、前記ワックス組成物を両側から前記シート3、4となる樹脂層で挟んだ構造の積層中間体を得る。この積層中間体は、前述の一対のローラーによって作製しても良いし、該樹脂層を形成する樹脂とワックス組成物を共押出しする事によって作製する等の方法もある。また、この積層中間体のワックス組成物層は、ワックスの結晶が配向している必要は無いので、成形温度等の条件は、積層中間体を作製するのに適した条件を選択すれば良い。積層中間体のワックス組成物薄膜層の厚みは、前記複合シート1の所望の厚みよりも1〜100%程度厚くしておく事が好ましく、3〜50%である場合がより好ましく、5〜30%である場合がさらに好ましい。該積層中間体のワックス組成物薄膜の両側の樹脂層に関しては、次の工程で厚みが減少する場合には、複合シート1のシート3、4が所望の厚みとなる様に、減少する分を見越した厚みとする。
【0081】
次に、積層中間体を前記ワックス組成物の99%融解温度以下において圧延又は延伸し、ワックスの結晶が面方向に配向した、所望の厚みの透明シートを得る。圧延する場合には、前記図4の様な一対のロールを使用しても良いし、プレス装置を使用する方法もある。
延伸する場合には、1軸延伸又は2軸延伸等の通常の方法が使用できる。延伸倍率は、延伸前後の面積比で1.1倍以上が好ましく、より好ましくは1.3倍以上、さらに好ましくは1.5倍以上である。この場合には、前記シート3、4の材質には、前記ワックス組成物の99%融解温度以下で延伸できることが可能なものを選択する必要がある。したがってシート3、4の材質には、ガラス転移温度が低く、融点もしくは結晶化度が低い樹脂を用いることが好ましい。
また、圧延又は延伸等を部分的に行うことによって、必要な部分にだけワックスの結晶が面方向に配向した領域を形成することも可能である。
【0082】
本実施形態の複合シートの製造方法は、上述のような積層中間体の作製工程と、積層中間体から複合シートへの加工工程を具備しているため、この加工工程を複合容器や複合シートの製造工程に組み込むことで、複合シートを備えた複合容器や複合シートを効率よく製造することができる。
【0083】
次に、本発明の成形体をその好ましい実施形態として前記実施形態の複合シートを用いた容器に基づいて説明する。
【0084】
複合シート1を用いた容器の実施形態としては、容器本体の表面に、前記複合シート1が被覆されてなる形態、複合シート1自体を、真空成形、圧空成形した形態、いわゆるパウチ容器のように複合シート1で容器の部材を形成しこれを組み立てた形態、複合シートをラミネートした板紙材を形成し、該板紙材で形成した形態等が挙げられる。
【0085】
本実施形態の容器の用途に特に制限はなく、食品容器のほか、洗剤等の日用品容器、各種工業素材の容器等の各種容器に適用することができる。
【0086】
本実施形態の容器は、複合シート1が防湿性及び透明性を有しているため、容器本体の外観や内容物の視認性を損なわずに高い防湿性を備えている。
【0087】
本発明は、前記実施形態に制限されない。
【実施例】
【0088】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は本実施例に何等制限されるものではない。
【0089】
下記実施例1〜5及び比較例1のようにしてワックス組成物薄膜及びそれを具備する複合シートを作製した。そして、得られた複合シートについて下記のような広角X線回折試験により前記回折強度の比Ib/Iaを求めるとともに、JIS K7105に準じてヘーズ値を測定し、さらに前述のカップ法(JIS Z0208 条件B)に準じた方法で透湿度を測定した。それらの結果を表1に示した。
【0090】
〔実施例1〕
<ワックス組成物の調製>
高分子化合物〔イソプレンゴム(日本ゼオン(株)製、品番Nipol−IR2200)〕40kgを75リットル加圧ニーダーに一括投入し、ワックス〔マイクロクリスタリンワックス(日本精蝋(株)製、品番「Hi−Mic−1070」、主ピーク温度44℃)〕12kgを10回に分割して前記加圧ニーダーに投入した。そして前記加圧ニーダーでこれらを合計23分間混練し、ワックス:高分子化合物=3:7(質量比)のマスターバッチを調製した。次いで、調製したマスターバッチ17.5kg及び前記ワックス50kgを12分割して加圧ニーダーに投入し、合計20.5分間混練してワックス:高分子化合物7:3(質量比)の生分解性のワックス組成物を調製した。得られたワックス組成物の99%融解温度は86℃であった。
【0091】
<複合シートの作製>
50℃に温度調節した一対のロールに厚み25μmの二軸延伸ポリ乳酸フィルムのシートをセットし、これらのシートの間に前記ワックス組成物を置いて5分間予熱した。予熱後の該ワックス組成物の温度は49℃であった。次いで50℃に温度調節した前記ロールを周速0.3m/分で回転させ、前記ワックス組成物を前記シートで挟んだ状態で前記ローラー間の隙間に送り込んで圧延し、該ワックス組成物を薄膜化しながら該シートと積層させ、該ワックス組成物層の厚み100μm、全積層シート厚み150μmの生分解性複合シートを得た。
【0092】
〔実施例2〕
実施例1で調製したワックス組成物を用い、ロールを60℃に温度調節した以外は実施例1と同様にして、生分解複合シートを得た。この際、予熱後の該ワックス組成物の温度は59℃であった。
【0093】
〔実施例3〕
実施例1で調製したワックス組成物を用い、ロールを70℃に温度調節した以外は実施例1と同様にして、生分解複合シートを得た。この際、予熱後の該ワックス組成物の温度は69℃であった。
【0094】
〔実施例4〕
実施例1で調製したワックス組成物を用い、ロールを80℃に温度調節した以外は実施例1と同様にして、生分解複合シートを得た。この際、予熱後の該ワックス組成物の温度は79℃であった。
【0095】
〔実施例5〕
<ワックス組成物の調製>
高分子化合物〔イソプレンゴム(日本ゼオン(株)製、品番Nipol−IR2200)〕81gを0.3リットル加圧ニーダーに一括投入し、ワックス〔ライスワックス(東亜化成(株)製、主ピーク温度81℃)〕189gを6回に分割して前記加圧ニーダーに投入し、合計7.5分間混練してワックス:高分子化合物7:3(質量比)の生分解性のワックス組成物を調製した。得られたワックス組成物の99%融解温度は89℃であった。
【0096】
<複合シートの作製>
ロールを70℃に温度調節した以外は実施例1と同様にして、生分解複合シートを得た。この際、予熱後の該ワックス組成物の温度は69℃であった。
【0097】
〔比較例1〕
実施例1で調製したワックス組成物を用い、ロールを95℃に温度調節した以外は実施例1と同様にして、生分解複合シートを得た。この際、予熱後の該ワックス組成物の温度は94℃であった。
【0098】
<広角X線回折測定>
作製した複合シートを、圧延方向を合わせて10枚重ね、その状態のまま圧延方向に2mm、長さ10mmで切り出して試料とした。試料は、複合シートの厚みをt(mm)とすると、2(mm)×10t(mm)×10(mm)の大きさとなる。試料を、長さ10mmの辺が鉛直方向となるように、装置付属の繊維試料台に固定した。そして、(株)RIGAKU社製、湾曲IPX線回折装置(型式RINT−RAPID)を用い、管電圧40kV、管電流36mAで発生させたCuKα線を、コリメータ(100μmφ)を用い、繊維試料台に固定した試料の圧延方向に垂直な切断面に、その断面の法線方向からX線を照射した。カメラ長は127.4mm、照射時間は500秒とし、透過回折像をイメージングプレートにより記録した。
【0099】
【表1】

【0100】
表1に示したように、X線回折強度比Ib/Iaが1.0以上である実施例1〜5の複合シートは、ヘーズ値が60以下と低い値となり、透明性のあるシートとなった。これに対して、X線回折強度比Ib/Iaの値が1.0以下である比較例1の複合シートは、ヘーズ値が80%以上あり、透明性が損なわれていた。透湿度に関しては、各実施例及び比較例の複合シート全て1.0g・mm/m2・24h以下であり、優れた防湿性を有しているが、実施例2、3、4に関しては、0.40g・mm/m2・24h以下と特に優れていた。この結果、本発明のワックス組成物薄膜及びそれを具備する複合シートが、透明性に優れ、薄くて高い防湿性を有していることが確認できた。
【0101】
〔実施例6〕
実施例1で作製した複合シートと同様にして、該ワックス組成物層の厚み50μm、全積層シート厚み100μmの生分解性複合シートを得た。この複合シートの上に、120℃に加熱した図柄が彫られたステンレス製の型を、5秒間放置した。型を取り去ると、図柄の部分が不透明になって表示された。
【0102】
〔参考例〕
25μmの二軸延伸ポリ乳酸シートの上に、実施例6と同様に型を放置した。型を取り去った後も、シートは透明のままであった。 実施例6及びこの参考例から明らかな様に、本発明のワックス組成物薄膜を具備した複合シートでは、複合シートを作製した後、部分的に加熱することにより、模様、文字、絵柄などを表示することが可能であることが確認できた。
【0103】
〔実施例7〕
実施例4で作製した複合シートの一部に120℃に加熱したステンレス製の板を置き5秒間放置した後、該板を取り去った。該板を置いて熱処理した部分は不透明となり、その部分の透湿度を測定したところ0.46g・mm/(m2・24h)に変化していた。複合シートの全面積に対して、熱処理を行ったのはその半分の面積であり、熱処理を行っていない部分の透湿度が0.14g・mm/(m2・24h)であることから、複合シート全体の透湿度が0.30g・mm/(m2・24h)に調整されたことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の複合シートの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明のワックス組成物薄膜を構成するワックス組成物の一実施形態についてのDSC曲線を示す図である。DSC測定結果から融解完了温度、融解ピーク温度を求める説明図である。
【図3】DSC測定結果から融解完了温度、融解ピーク温度を求める説明図である。
【図4】本発明の複合シートの製造工程の一部を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0105】
1 複合シート
2 ワックス組成物薄膜
3、4 シート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワックスを含有する組成物からなるワックス組成物薄膜であって、結晶化した前記ワックスの配向に伴い発現するX線回折ピークの前記ワックス組成物薄膜表面の法線方向の回折強度Ia及び該法線方向と90度をなす方向における回折強度Ibの比Ib/Iaが1.0より大きい値であるワックス組成物薄膜。
【請求項2】
前記X線回折ピークが、回折角2θの21°付近に発現するアルキル鎖由来の回折ピークである請求項1記載のワックス組成物薄膜。
【請求項3】
厚みが10μm〜500μmであり、へーズ値が60.0%以下である請求項1又は2に記載のワックス組成物薄膜。
【請求項4】
40℃、90%RHにおける透湿度が0.40g・mm/(m2・24h)以下である請求項1〜3の何れかに記載のワックス組成物薄膜。
【請求項5】
高分子化合物を含有する請求項1〜4の何れかに記載のワックス組成物薄膜。
【請求項6】
高分子化合物が天然ゴム又はポリイソプレンである請求項5記載のワックス組成物薄膜。
【請求項7】
生分解性を有している請求項1〜6の何れかに記載のワックス組成物薄膜。
【請求項8】
前記Ib/Iaの値が部分的に異なるように設けられている請求項1〜7の何れかに記載のワックス組成物薄膜。
【請求項9】
ヘーズ値が部分的に異なるように設けられている請求項1〜7の何れかに記載のワックス組成物薄膜。
【請求項10】
透湿度が部分的に異なるように設けられている請求項1〜7の何れかに記載のワックス組成物薄膜。
【請求項11】
請求項1〜10の何れかに記載のワックス組成物薄膜を具備する複合シート。
【請求項12】
ヘーズ値が60.0%以下である請求項11記載の複合シート。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の複合シートを用いた成形体。
【請求項14】
ワックスを含有するワックス組成物を該ワックス組成物の99%融解温度以下においてシートの間に挟んで薄膜化した後、該シートを分離するワックス組成物薄膜の製造方法。
【請求項15】
ワックスを含有するワックス組成物を該ワックス組成物の99%融解温度以下においてシートの間に挟んで薄膜化しながら該シートと積層させる複合シートの製造方法。
【請求項16】
積層させた後に部分的に加熱する請求項15に記載の複合シートの製造方法。
【請求項17】
ワックスを含有するワックス組成物を二枚のシート間に挟んで積層中間体を得た後、該積層中間体を前記ワックス組成物の99%融解温度以下においてさらに圧延又は延伸する複合シートの製造方法。
【請求項18】
圧延又は延伸した後に、部分的に加熱する請求項17に記載の複合シートの製造方法。
【請求項19】
請求項1に記載のワックス組成物薄膜を部分的に加熱し、加熱部分の前記回折強度の比Ib/Iaの値を変化させるワックス組成物薄膜の加工方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−1993(P2007−1993A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−180039(P2005−180039)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】