説明

ワークのレーザ加工方法、ワーク運搬用トレー、ワーク加工用具、及びレーザ加工機

【課題】 ワークのレーザ加工を含む一連の作業工程における作業効率を高めることがで
き、ワークの装着不良等に伴う仕損品の発生を防止することができるワークのレーザ加工
方法を提供すること。
【解決手段】 ワーク嵌合部11を有する透明なシート形成体からなるワーク運搬用トレ
ー10のワーク嵌合部11にワークを嵌め込み(S1)、ワーク嵌合部11にワークが嵌
め込まれたワーク運搬用トレー10をレーザ加工機50に設置されたトレー保持具30に
装着し(S2)、トレー保持具30に装着されたワーク運搬用トレー10にワーク位置決
め用プレート40を装着し(S3)、その状態でワーク運搬用トレー10上の各ワークを
レーザ加工機50にてレーザ加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークのレーザ加工方法、ワーク運搬用トレー、ワーク加工用具、及びレー
ザ加工機に関し、より詳細にはワーク(加工対象物)のレーザ加工を含む一連の工程の作
業効率を向上させることができるワークのレーザ加工方法、ワーク運搬用トレー、ワーク
加工用具、及びレーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用のナビゲーション装置やオーディオ装置などの電子機器には、前面パネルに各種
の操作ボタンが配設されている。これらの操作ボタンは、夜間やトンネル内等の暗い状況
でもユーザが操作及び視認しやすいように工夫がなされており、例えば、CDやFM等の
操作ボタンの機能名をボタン内側から照射した光で浮かび上がらせるようにした光透過型
の操作ボタン等が使用されている。
【0003】
このような光透過型の操作ボタンの機能名のマーキングは、通常、レーザ加工機を用い
て行われている。図6は、従来のレーザ加工機を用いた操作ボタン等のワークのレーザ加
工方法の手順を説明するための図である。
【0004】
従来、ワークをレーザ加工機を用いてマーキングを行う場合には、まず、ワーク運搬用
トレー(ワークを個々に収納可能なもの)100にラフな形で収納されたワーク1を、レ
ーザ加工機の加工治具(位置決め精度要)101に一つずつ移し替えて装着する(S10
1)。
【0005】
装着後レーザ加工を行い、加工終了後、加工治具101からワーク運搬用トレー100
にワーク1を一つずつ移し替える作業を行い(S102)、その後、ワーク1へのマーキ
ングの良否を検査する透過検査工程に進む。
【0006】
ワーク1の透過検査工程では、ワーク運搬用トレー100から透過検査用トレー103
にワーク1を一つずつ移し替えて装着し(S103)、その後透過検査を行い、検査終了
後、透過検査用トレー103からワーク運搬用トレー100にワーク1を一つずつ移し替
える作業を行い(S104)、次の工程に進むようになっている。
【0007】
このように、従来のワークのレーザ加工方法では、ワーク運搬用トレー100から加工
治具101や透過検査用トレー103へ、加工治具101や透過検査用トレー103から
ワーク運搬用トレー100へのワーク1の移し替え作業が4回(S101〜S104)も
行われており、作業工数が多く、作業効率が低いという問題があった。
【0008】
このような問題に対する対策として、下記の特許文献1には、ワークを柔軟な材質で形
成されたソフトトレーに収納し、該ソフトトレーを剛性を有する材質で形成されたソフト
トレー保持具に位置決めして保持させ、その状態でソフトトレーとソフトトレー保持具と
を介して、ワークを自動処理装置に供給する方法が開示されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1記載の方法では、ソフトトレーに収納されたワークに対して
は、特に位置決め保持する対策がなされていないため、収納状態が不完全なワークが含ま
れている場合には、加工不良が発生してしまうという問題があり、同様に、上記レーザ加
工において、加工治具101へのワーク1の装着状態が不完全なものが含まれていた場合
、作業者が気付かなければ、そのままレーザ加工が実施されるため、加工不良が発生しや
すいという問題があった。
【0010】
また、従来のレーザ加工機では、作業者が加工プログラムの設定変更等の実施を間違え
場合、違う文字等がワークにマーキングされることとなり、人為的な加工プログラムの設
定ミスを防止する対策がなされていなかった。また、レーザ加工機の加工治具は、繰り返
し使用による経年劣化によって位置決め精度が低下してくるが、その交換時期等の判定が
難しく、判断を誤った場合、加工不良が多発してしまうという問題があった。
【特許文献1】特開平10−229096号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段及びその効果】
【0011】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、ワークのレーザ加工を含む一連の作業
工程における作業効率を高めることができ、ワークの装着不良や人為的な設定ミス等に伴
う加工不良(仕損品)の発生を防止することができ、また、レーザ加工時の位置決め精度
の低下を防止することができるワークのレーザ加工方法、ワーク運搬用トレー、ワーク加
工用具、及びレーザ加工機を提供することを目的としている。
【0012】
上記目的を達成するために本発明に係るワークのレーザ加工方法(1)は、ワーク嵌合
部を有する透明なシート形成体からなるワーク運搬用トレーの前記ワーク嵌合部にワーク
を嵌め込み、前記ワーク嵌合部にワークが嵌め込まれたワーク運搬用トレーをレーザ加工
機に設置されたトレー保持具に装着し、該トレー保持具に装着されたワーク運搬用トレー
にワーク位置決め用プレートを装着し、該装着状態で前記ワーク運搬用トレー上の各ワー
クを前記レーザ加工機にてレーザ加工することを特徴としている。
【0013】
上記ワークのレーザ加工方法(1)によれば、前記複数のワーク嵌合部にワークが嵌め
込まれたワーク運搬用トレーが、前記レーザ加工機に設置されたトレー保持具によって位
置決めして保持されるとともに、前記ワーク運搬用トレーのワーク嵌合部に嵌め込まれた
ワークが前記ワーク位置決め用プレートによって位置決めして保持された状態でレーザ加
工が行われるので、従来のようにワーク運搬用トレーからレーザ加工専用の加工治具へワ
ークを一つずつ移し替える作業を行う必要がなく、レーザ加工の作業効率を向上させるこ
とができる。また、前記ワーク位置決めプレートによりワークの位置決めを簡単かつ確実
に行うことができ、レーザ加工によるの仕損品の発生を少なくすることができる。
【0014】
また上記ワークのレーザ加工方法(1)において、前記レーザ加工の前に、前記位置決
め用プレートの装着状態の良否を検出し、該位置決め用プレートの装着状態が良と検出さ
れた場合にレーザ加工を開始するようにしてもよい。
係る方法によれば、前記位置決め用プレートの装着状態が不良の場合、前記レーザ加工
が開始されないので、前記ワークの位置ずれ等に伴う前記位置決め用プレートの装着不良
によるワークの加工不良を未然に防止することができ、仕損品の発生を防止することがで
きる。
【0015】
また上記ワークのレーザ加工方法(1)において、前記レーザ加工の前に、前記ワーク
運搬用トレーに印刷されたワーク識別コードを前記レーザ加工機で読み取り、該読み取っ
たワーク識別コードに対応した加工プログラムでレーザ加工を行うようにしてもよい。
係る方法によれば、前記レーザ加工を実施する前に、前記ワーク運搬用トレーに印刷さ
れたワーク識別コードを前記レーザ加工機で読み取り、該読み取ったワーク識別コードに
対応した加工プログラムに基づきレーザ加工を行うので、人為的な加工プログラムの設定
変更ミス等をなくすことができ、加工プログラムの設定変更ミスによる仕損品の発生を防
止することができる。
【0016】
また上記ワークのレーザ加工方法(1)において、前記レーザ加工の後、前記レーザ加
工機から取り外したワーク運搬用トレーを照明装置に設置してワークの透過検査を行うよ
うにしてもよい。
係る方法によれば、前記レーザ加工の後、前記レーザ加工機から取り外したワーク運搬
用トレーを照明装置に設置してワークの透過検査を行うので、従来のようにワーク運搬用
トレーから透過検査用トレーへ、また該透過検査用トレーからワーク運搬用トレーへワー
クを一つずつ移し替える作業を行う必要がなく、透過検査工程の作業効率を向上させるこ
とができる。
【0017】
また本発明に係るワーク運搬用トレー(1)は、上記ワークのレーザ加工方法(1)の
ワークのレーザ加工方法に使用されるワーク運搬用トレーであって、ワークを所定の向き
に嵌め込み可能な複数のワーク嵌合部と、これらワーク嵌合部の形成面の周縁部から下方
に延設された枠部とを有する透明なシート形成体で構成されていることを特徴としている

【0018】
上記ワーク運搬用トレー(1)によれば、ワークの移し替え作業を行わずにレーザ加工
から透過検査までの一連の作業を効率よく行うことが可能なワーク運搬用トレーを安価に
提供することができる。
【0019】
また上記ワーク運搬用トレー(1)において、前記ワーク嵌合部の形成面に、前記レー
ザ加工機で読み取り可能なワーク識別コードが印刷可能な構成としてもよい。
係る構成によれば、前記ワーク嵌合部の形成面に、前記レーザ加工機で読み取り可能な
ワーク識別コードを印刷することにより、人為的な加工プログラムの設定変更ミス等をな
くしたり、加工プログラムの設定変更ミスによる仕損品の発生を防止することが可能なワ
ーク運搬用トレーとすることができる。
【0020】
また上記ワーク運搬用トレー(1)において、前記ワーク嵌合部の形成面に、前記レー
ザ加工機で照射されたレーザ痕からトレーの使用期限を判断するためのマーキング部が設
けられた構成としてもよい。
係る構成によれば、前記マーキング部にマーキングされたレーザ痕からトレーの使用期
限を判断することが可能となり、トレーの繰り返し使用に伴う劣化により位置決め精度が
低下した状態のままでの使用を防止することができ、仕損品の発生を防止することができ
る。
【0021】
また本発明に係るワーク加工用具(1)は、上記ワークのレーザ加工方法(1)のワー
クのレーザ加工方法に使用されるワーク加工用具であって、前記ワーク運搬用トレーを位
置決めして保持するためのトレー保持具と、該トレー保持具に位置決めして保持されたワ
ーク運搬用トレー上の各ワークを位置決めして保持するためのワーク位置決め用プレート
とを含んで構成されていることを特徴としている。
【0022】
上記ワーク加工用具(1)によれば、前記トレー保持具によって、前記ワーク運搬用ト
レーを位置決めした状態で保持することができ、さらに前記ワーク位置決め用プレートに
よって、前記ワーク運搬用トレー上の各ワークを位置決めした状態で保持することができ
、従来のようにワーク運搬用トレーからレーザ加工専用の加工治具へワークを一つずつ移
し替える作業を行う必要がなく、レーザ加工の作業効率を向上させることができる。また
、前記ワーク位置決めプレートによりワークの位置決めを簡単かつ確実に行うことができ
、レーザ加工によるの仕損品の発生を少なくすることができる。
【0023】
また上記ワーク加工用具(1)において、前記トレー保持具が、前記ワーク運搬用トレ
ーの枠部、及び前記複数のワーク嵌合部の間に位置するように立設された、位置決め保持
用のガイドを備えている構成としてもよい。
係る構成によれば、前記位置決め保持用のガイドにより、前記ワーク運搬用トレーの枠
部を位置決めして保持することができ、また前記複数のワーク嵌合部の高さ位置を水平に
保持することができ、ワークのレーザ加工の位置精度を高めることができる。
【0024】
また上記ワーク加工用具(1)において、前記ワーク位置決めプレートが、前記ワーク
運搬用トレーのワーク嵌合部に嵌合される各ワークに対応した位置にワーク位置決め孔を
有し、これらワーク位置決め孔には、前記ワーク嵌合部に嵌合された各ワークの動きを規
制するための位置規制手段が配設されている構成としてもよい。
係る構成によれば、前記ワーク位置決めプレートのワーク位置決め孔に前記ワーク運搬
用トレーの各ワークを挿嵌させて装着することにより、ワークのZ軸方向の動きを規制で
きるとともに、前記ワーク位置決め孔に配設された位置規制手段により各ワークの、例え
ばX軸方向及び/又はY軸方向の動きを規制して位置決めすることができ、ワークの位置
決めを確実に行うことができる。なお、前記位置規制手段としては、ばね部材等の弾性部
材を適用することができる。
【0025】
また本発明に係るレーザ加工機(1)は、上記ワークのレーザ加工方法(1)のワーク
のレーザ加工方法に使用されるレーザ加工機であって、前記位置決め用プレートの装着状
態の良否を検出する装着状態検出手段と、該装着状態検出手段により前記位置決め用プレ
ートの装着状態が良と検出された場合に、ワークのレーザ加工を開始する加工制御手段と
を備えていることを特徴としている。
【0026】
上記レーザ加工機(1)によれば、前記装着状態検出手段により前記位置決め用プレー
トの装着状態が良と検出された場合に、前記加工制御手段によりワークのレーザ加工が開
始される。したがって、前記位置決め用プレートの装着状態が不良の場合、前記レーザ加
工が開始されないので、前記ワークの位置ずれ等に伴う前記位置決め用プレートの装着不
良によるワークの加工不良を未然に防止することができ、仕損品の発生を防止することが
できる。
【0027】
また上記レーザ加工機(1)において、前記装着状態検出手段により前記位置決め用プ
レートの装着状態が不良と検出された場合、前記位置決め用プレートの装着不良を告知す
る告知手段を備えている構成としてもよい。
係る構成によれば、前記装着状態検出手段により前記位置決め用プレートの装着状態が
不良と検出された場合、前記告知手段により、前記位置決め用プレートの装着不良を作業
者に告知することができ、該作業者に装着状態の確認等を速やかに行わせることができる

【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に係るワークのレーザ加工方法、ワーク運搬用トレー、ワーク加工用具、
及びレーザ加工機の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、実施の形態に係るワ
ークのレーザ加工方法に使用されるワーク運搬用トレーとワーク加工用具との構成を示し
た斜視図である。
【0029】
ワーク運搬用トレー10は、ワーク1を所定の向き(この場合、ワーク1の加工面を上
向き)に嵌め込み可能な複数のワーク嵌合部11と、これらワーク嵌合部11の形成面1
2の周縁部から下方に延設された枠部13とを有し、外形形状が略矩形の透明なシート形
成体で構成されている。ワーク1は、例えば、車載用のオーディオ機器の前面パネルに配
設される樹脂性の操作ボタンであり、ワーク運搬用トレー10は、例えば、200×20
0×10mm程度の寸法を有するポリプロピレン(PP)等を使用した透明な樹脂性トレ
ーであり、この場合、一つのワーク運搬用トレー10に10個のワーク1を嵌め込むこと
が可能となっている。
【0030】
また、ワーク嵌合部11の形成面12の所定箇所には、後ほど説明するレーザ加工機5
0(図3参照)で読み取り可能なワーク識別コード(バーコード)14が印刷されており
、ワーク1に対応したワーク識別コード14が印刷されるようになっている。
【0031】
また、ワーク嵌合部11の形成面12には、レーザ加工機50(図3参照)で照射され
たレーザ痕からトレーの使用期限を判断するための塗装が施されたマーキング部15が設
けられており、所定回数のレーザ照射により塗装が除去されるように構成されている。な
お照射されるレーザ強度などは、レーザ加工機50で調整可能となっている。
【0032】
また、ワーク加工用具20は、ワーク運搬用トレー10を位置決めして保持するための
トレー保持具30と、トレー保持具30に装着されたワーク運搬用トレー10上の各ワー
ク1を位置決めして保持するためのワーク位置決め用プレート40とを含んで構成されて
いる。
【0033】
トレー保持具30は、例えば、200×250×10mm程度の寸法を有する、外形形
状が略矩形の金属製のプレート31と、ワーク運搬用トレー10の枠部13に対応する位
置に立設された位置決め保持用のガイド32と、複数のワーク嵌合部11間に対応する位
置に立設された位置決め保持用のガイド33とを備えている。
【0034】
また、ワーク位置決め用プレート40は、例えば、180×190×3mm程度の寸法
を有する、外形形状が略矩形の金属製プレートから構成され、該プレートのワーク運搬用
トレー10のワーク嵌合部11に嵌合される各ワーク1に対応した位置にワーク1を嵌挿
させるワーク位置決め孔41が形成され、これらワーク位置決め孔41には、ワーク嵌合
部11に嵌合された各ワーク1を一方向(X軸方向)に押圧するための板ばね42と、板
ばね42とは異なる方向(Y軸方向)に押圧するための板ばね43とが配設されている。
これら板ばね42、43の各一端側は、ワーク位置決め用プレート40の上面にねじ等(
図示せず)により固着されており、各他端側は、ワーク位置決め孔41内にJ字形状に(
但し、遊端部が内側に向くように)折曲げられた状態で配設されている。
【0035】
また、ワーク位置決め用プレート40における、ワーク運搬用トレー10のワーク認識
コード14とマーキング部15とに対応する位置には、ワーク認識コード14を読み取り
、またマーキング部15にレーザを照射するための読取・照射孔44が形成されている。
【0036】
なお、トレー保持具30のガイド32、33の形状や配設位置、及びワーク位置決め用
プレート40のワーク位置決め孔41の形成位置や個数等は、ワーク運搬用トレー10の
ワーク嵌合部11の形状や個数等に合わせて、所望の位置決め状態が保持できるように設
計すればよい。
【0037】
図2は、ワーク運搬用トレー10とワーク加工用具20との組付状態を示した断面図で
ある。トレー保持具30のガイド32にワーク運搬用トレー10の枠部13が係合されて
位置決めして保持されるようになっている。また、ワーク運搬用トレー10上にワーク位
置決め用プレート40が装着されており、ワーク運搬用トレー10のワーク嵌合部11に
嵌め込まれた各ワーク1は、ワーク位置決め用プレート40により縦方向(Z軸方向)に
対する動きが規制されて位置決めされるとともに、ワーク位置決め用プレート40のワー
ク位置決め孔41に配設された板ばね42及び板ばね43(図1参照)により横方向(X
Y軸方向)に対する動きが規制されて位置決めして保持されるようになっている。
【0038】
図3は、ワークのレーザ加工方法に使用されるレーザ加工機の概略構成を示したブロッ
ク図である。図中50は、レーザ加工機を示しており、レーザ加工機50のトレー載置台
51上には、トレー保持具30が設置されており、トレー保持具30にワーク運搬用トレ
ー10が装着され、さらにワーク運搬用トレー10にワーク位置決め用プレート40が装
着されるようになっている。
【0039】
トレー載置台51は、駆動部52を介して制御部53により駆動制御が行われるように
なっている。また、トレー載置台51の上方には、ワーク1の塗装を文字形状に除去する
ためのレーザマーカ54と、ワーク運搬用トレー10に印刷されたワーク識別コード14
等を読み取るためのバーコード読取機55とが装備されており、それぞれ制御部53に接
続されている。制御部53は、バーコード読取機55で読み取られたワーク識別コードの
信号を取り込み、該バーコード信号に応じたワーク加工用プログラムを読み出し、該ワー
ク加工用プログラムに応じた加工を行うようにレーザマーカ54を制御するようになって
いる。
【0040】
また、レーザ加工開始位置に移動させたワーク運搬用トレー10に装着されたワーク位
置決め用プレート40の装着位置の良否を検出するための位置検出センサ56が、ワーク
位置決め用プレート40の側方位置に配設されている。位置検出センサ56で検出された
信号は制御部53に入力され、制御部53では、ワーク位置決め用プレート40の装着位
置の良否を判断し、該装着位置が良である場合に、レーザ加工を開始する処理を行うよう
になっている。また、装着状態が不良である場合には、告知手段57を通じて、作業者に
装着不良を知らせるようになっている。
【0041】
位置検出センサ56には、例えば、受光素子と発光素子とを組み合わせた光センサ等が
採用され、ワーク位置決め用プレート40の側面に当たって反射してきた光を検出し、該
検出された反射光が示す信号に基づいて、ワーク位置決め用プレート40の装着位置の良
否を判断することが可能となっている。
【0042】
また、制御部53は、CPU、RAM、ROM(いずれも図示せず)を含むマイクロコ
ンピュータから構成されており、ROMには、ワーク識別コードに対応したワーク加工用
プログラム等が記憶されている。また、レーザ加工のスタートボタン等が含まれる操作部
54が制御部53に接続され、ワーク位置決め用プレート40の装着位置の不良を作業者
に知らせる告知手段57が制御部53に接続されている。なお、告知手段57には、装着
不良を知らせる警告灯や警告音を発する装置などが採用され得る。
【0043】
次に実施の形態に係るワークのレーザ加工方法を図4に示したフロ−チャ−トに基づい
て説明する。また、図5は、レーザ加工方法の作業手順を示した図であり、図中Sは、図
4に示したフローチャートのステップSの番号に対応している。
【0044】
まず、ワーク運搬用トレー10の各ワーク嵌合部11にワーク1を嵌め込み(ステップ
S1)、次に、ワーク1が嵌め込まれたワーク運搬用トレー10を、レーザ加工機50の
トレー載置台51に設置されたトレー保持具30に装着し(ステップS2)、トレー保持
具30に装着されたワーク運搬用トレー10にワーク位置決め用プレート40を装着し(
ステップS3)、ワーク運搬用トレー10のレーザ加工機50への装着を完了する。
【0045】
次に、レーザ加工機50での加工処理へ進む。なお、ステップS4からS14まではレ
ーザ加工機50での処理動作である。ステップS4では、操作部54のスタートボタンの
入力があったか否か判断し、スタートボタンの入力があったと判断すれば、トレー載置台
51を所定の加工開始位置にセットして、バーコード読取機55を介してワーク運搬用ト
レー10に印刷されたワーク識別コード14を読み取り(ステップS5)、今回読み取っ
たワーク識別コード14が前回読み取ったものと同じか否かを判断し(ステップS6)、
前回読み取ったもの同じと判断すれば、ワーク加工用プログラムを変更せずに、すなわち
、前回使用したワーク加工用プログラムを使用する設定とし(ステップS7)、その後ス
テップS9に進む。
【0046】
一方、ステップS6において、前回読み取ったものと異なると判断すれば、今回読み取
ったワーク識別コード14に対応するワーク加工用プログラムに変更する処理を行い、そ
の後ステップS9に進む。ステップS9では、ワーク位置決め用プレート40の装着位置
を検出するための位置検出センサ56からの信号を取り込み、次にワーク位置決め用プレ
ート40の装着位置の良否を判断し(ステップS10)、ワーク位置決め用プレート40
の装着位置が良である(すなわち、位置ずれなく装着されている)と判断すれば、ワーク
1に対するレーザ加工を開始し(ステップS11)、ワーク1に対するレーザ加工の終了
後、次にワーク運搬用トレー10に設けられたマーキング部15に、所定強度のレーザを
照射し(ステップS12)、その後レーザ加工を終えてステップS15へ進む。
【0047】
一方、ステップS10において、ワーク位置決め用プレート40の装着位置が不良であ
る(すなわち、位置ずれした状態で装着されている)と判断すれば、告知手段57を作動
させて、ワーク位置決め用プレート40の装着位置が不良であることを作業者に警告音や
警告灯等で知らせる処理を行い(ステップS13)、トレー載置台51をワーク運搬用ト
レー10の装着を行う位置まで移動させて(ステップS14)、ステップS3以降の処理
を繰り返す。
【0048】
ステップS15では、トレー載置台51をワーク運搬用トレー10の装着を行う位置ま
で移動させて、レーザ加工機50からワーク運搬用トレー10を取り外し、次に、レーザ
加工を終えたワーク運搬用トレー10を、透過検査用の照明装置50に装着し(ステップ
S16)、各ワーク1の透過検査とワーク運搬用トレー10の使用期限の判定検査(マー
キング部15の透過検査)を行い(ステップS15)、次の工程へ進む。
【0049】
上記実施の形態に係るワークのレーザ加工方法によれば、複数のワーク嵌合部11にワ
ーク1が嵌め込まれたワーク運搬用トレー10が、レーザ加工機50に設置されたトレー
保持具30によって位置決めして保持されるとともに、ワーク運搬用トレー10のワーク
嵌合部11に嵌め込まれた各ワーク1がワーク位置決め用プレート40によって位置決め
して保持された状態でレーザ加工が行われるので、従来(図6参照)のようにワーク運搬
用トレー100からレーザ加工専用の加工治具101へ、また加工治具101からワーク
運搬用トレー100へワーク1を一つずつ移し替える作業を行う必要がなく、レーザ加工
の作業効率を向上させることができる。また、ワーク位置決め用プレート40によりワー
ク1の位置決めを簡単かつ確実に行うことができ、レーザ加工によるの仕損品の発生を少
なくすることができる。
【0050】
また、レーザ加工を実施する前に、ワーク運搬用トレー10に印刷されたワーク識別コ
ード14をレーザ加工機50で読み取り、該読み取ったワーク識別コード14に対応した
加工プログラムに基づきレーザ加工を行うので、人為的な加工プログラムの設定変更ミス
等をなくすことができ、加工プログラムの設定変更ミスによる仕損品の発生を防止するこ
とができる。
【0051】
また、ワーク位置決め用プレート40の装着状態が不良の場合、レーザ加工が開始され
ないので、ワーク1の位置ずれ等に伴うワーク位置決め用プレートの装着不良によるワー
ク1の加工不良を未然に防止することができ、仕損品の発生を防止することができる。
【0052】
また、レーザ加工の後、レーザ加工機50から取り外したワーク運搬用トレー10を照
明装置60に設置してワーク1の透過検査を行うので、従来(図6参照)のようにワーク
運搬用トレー100から透過検査用トレー103へ、また透過検査用トレー103からワ
ーク運搬用トレー100へワーク1を一つずつ移し替える作業を行う必要がなく、透過検
査工程の作業効率を向上させることができる。
【0053】
またワーク運搬用トレー10によれば、ワーク1の移し替え作業を行わずにレーザ加工
から透過検査までの一連の作業を効率よく行うことが可能なトレーを安価に提供すること
ができる。また、ワーク嵌合部11の形成面12に、レーザ加工機50で読み取り可能な
ワーク識別コードが印刷されているので、人為的な加工プログラムの設定変更ミス等をな
くすことができ、加工プログラムの設定変更ミスによる仕損品の発生を防止することがで
きる。また、マーキング部15にマーキングされたレーザ痕からトレーの使用期限を判断
することが可能となり、トレーの繰り返し使用に伴う劣化により位置決め精度が低下した
状態のままでの使用を防止することができ、仕損品の発生を防止することが可能なトレー
とすることができる。
【0054】
また、ワーク加工用具20によれば、トレー保持具30のガイド32により、ワーク運
搬用トレー10の枠部13を位置決めして保持することができ、またガイド33により、
複数のワーク嵌合部11の高さ位置を水平に保持することができ、ワーク運搬用トレー1
0の位置決めを確実に行うことができる。また、ワーク位置決め用プレート40のワーク
位置決め孔41にワーク運搬用トレー10の各ワーク1を挿嵌させて装着することにより
、ワーク1のZ軸方向の動きを規制できるとともに、ワーク位置決め孔41に配設された
板ばね42、43により各ワーク1のX軸方向及びY軸方向の動きを規制して位置決めす
ることができ、各ワーク1の位置決めを確実に行うことができる。
【0055】
また、レーザ加工機50によれば、ワーク位置決め用プレート40の装着状態が良と検
出された場合に、各ワーク1のレーザ加工が開始される。したがって、ワーク位置決め用
プレート40の装着状態が不良の場合、レーザ加工が開始されないので、ワーク1の位置
ずれ等に伴うワーク位置決め用プレート40の装着不良によるワークの加工不良を未然に
防止することができ、仕損品の発生を防止することができる。また、ワーク位置決め用プ
レート40の装着状態が不良と検出された場合、告知手段57を通じて、ワーク位置決め
用プレート40の装着不良を作業者に告知することができ、該作業者に装着状態の確認等
を速やかに行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態に係るワークのレーザ加工方法に使用されるワーク運搬用トレーとワーク加工用具とを示した斜視図である。
【図2】ワーク運搬用トレーとワーク加工用具との組付状態を示した断面図である。
【図3】実施の形態に係るワークのレーザ加工方法に使用されるレーザ加工機の概略構成を示したブロック図である。
【図4】実施の形態に係るワークのレーザ加工方法を示したフロ−チャ−トである。
【図5】実施の形態に係るワークのレーザ加工方法の作業手順を示した図である。
【図6】従来のワークのレーザ加工方法の作業手順を示した図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ワーク
10 ワーク運搬用トレー
11 ワーク嵌合部
30 トレー保持具
40 ワーク位置決め用プレート
41 ワーク位置決め孔
42、43 板ばね
50 レーザ加工機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク嵌合部を有する透明なシート形成体からなるワーク運搬用トレーの前記ワーク嵌
合部にワークを嵌め込み、
前記ワーク嵌合部にワークが嵌め込まれたワーク運搬用トレーをレーザ加工機に設置さ
れたトレー保持具に装着し、
該トレー保持具に装着されたワーク運搬用トレーにワーク位置決め用プレートを装着し

該装着状態で前記ワーク運搬用トレー上の各ワークを前記レーザ加工機にてレーザ加工
することを特徴とするワークのレーザ加工方法。
【請求項2】
請求項1記載のワークのレーザ加工方法に使用されるワーク運搬用トレーであって、
ワークを所定の向きに嵌め込み可能な複数のワーク嵌合部と、これらワーク嵌合部の形
成面の周縁部から下方に延設された枠部とを有する透明なシート形成体で構成されている
ことを特徴とするワーク運搬用トレー。
【請求項3】
請求項1記載のワークのレーザ加工方法に使用されるワーク加工用具であって、
前記ワーク運搬用トレーを位置決めして保持するためのトレー保持具と、
該トレー保持具に位置決めして保持されたワーク運搬用トレー上の各ワークを位置決め
して保持するためのワーク位置決め用プレートとを含んで構成されていることを特徴とす
るワーク加工用具。
【請求項4】
請求項1記載のワークのレーザ加工方法に使用されるレーザ加工機であって、
前記位置決め用プレートの装着状態の良否を検出する装着状態検出手段と、
該装着状態検出手段により前記位置決め用プレートの装着状態が良と検出された場合に
、ワークのレーザ加工を開始する加工制御手段とを備えていることを特徴とするレーザ加
工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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