説明

ワークを製造する方法及び研削機械

【課題】スクリュコンプレッサロータ及び相応な成形部を安価に製造できるようにする。
【解決手段】円筒形の基本輪郭を有しかつ外輪郭に螺条形状の成形部2を備えたスクリュコンプレッサロータ1を製造する方法であって、a)最終輪郭に対して余剰寸法を有する成形部2を形成することによる、ワーク1の予備加工、b)余剰寸法の一部を除去するための、研削機械における荒削り作業工程での、成形部2の前研削、及びc)余剰寸法の残りを除去して成形部2の最終輪郭を形成するための、研削機械における仕上げ作業工程での、成形部2の仕上げ研削というステップを有する形式の方法において、前研削及び/又は仕上げ研削を、ウォーム形状の研削工具3を用いて連続的な転動研削法で実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形の基本輪郭を有していてかつ外輪郭に螺条形状の成形部を備えているスクリュコンプレッサロータの形のワークを製造する方法であって、下記のステップ:すなわち、a)最終輪郭に対して余剰寸法を有する成形部を形成することによる、ワークの予備加工、b)余剰寸法の一部を除去するための、研削機械における荒削り作業工程での、成形部の前研削、及びc)余剰寸法の残りを除去して成形部の最終輪郭を形成するための、研削機械における仕上げ作業工程での、成形部の仕上げ研削、というステップを有する形式の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリュコンプレッサにおいて必要となるロータは、ほぼ円筒形の外輪郭を有しており、この外輪郭に螺条形状の成形部が形成されている。成形部に関して相補形状をもって形成されている2つのロータ(「雄型」及び「雌型」)が、コンプレッサの運転時に互いに係合して、ロータの回転時に、過圧発生のために利用されるガス流が生ぜしめられるようになっている。
【0003】
コンプレッサの良好な効率のためには、ロータにおける成形部が高い精度をもって形成され、これにより漏れ損失が僅かに保たれることが、不可欠である。
【0004】
従って、冒頭に述べたようにロータを製造することが公知である。この場合ロータは初めに前加工ステップの枠内において、例えば中実な材料からの切削加工(旋削、フライス加工)によって又は初期形状を有する形状付与(鋳造)によって、前製造され、その結果成形部は既にある程度存在しているが、最終輪郭に対してはなお所定のゆとり寸法もしくは余剰寸法を有している。
【0005】
精密な形状付与は次いで、研削機械における2段階の研削過程によって行われる。この場合第1の研削作業ステップ(荒削り工程)において、余剰寸法の大部分が除去される。次に行われる別の研削作業ステップ(仕上げ工程)において、成形部の最終輪郭が形成され、この場合にはなお残っている余剰寸法の残りが研削除去される。荒削り研削及び仕上げ研削のために使用される成形といし車は、ワークにおける成形部溝を通して研削工具を案内することによって形成部の形状を模写もしくはプロファイリングする。
【0006】
加工を荒削り研削と仕上げ研削とに分けることは、歯列形成時においても公知である。DE202005014619U1には、斜めの歯列を備えた平歯車を製造するために、荒削り用歯切り工具と仕上げ用歯切り工具とを使用することが提案されている。
【0007】
DE20320294U1によれば歯車が未加工鋳造品から転動フライスのような歯切り工具(Waelzfraeser)を用いて前加工され、この場合に生じるばりは、ディスク形状のばり取り工具によって除去される。
【0008】
DE19918289A1に開示された発明では、歯列を備えたワークを製造するために第1のステップにおいて平フライス削りが行われ、次いで第2のステップにおいて精密加工法が行われる。この場合ワークは、両加工ステップの間中、同じ緊締装置に留まっている。
【0009】
荒削りと仕上げ削りとに研削加工を分割することによって、既に方法の経済性は著しく高められる。
【0010】
しかしながら、スクリュコンプレッサロータ又はこれに類したワークを製造するためには今なお高い製造コストが生じてしまう。それというのは、高い精度を得るために相応な時間を要するからである。さらに、研削されるロータは後加工を施すことが必要である。後加工において研削ばりを除去しなくてはならない。そのためには別体のばり取り機械が使用されるか、又は択一的に手によってばり取りが行われることになり、これによって製造コストは相応に高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】DE202005014619U1
【特許文献2】DE20320294U1
【特許文献3】DE19918289A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ゆえに本発明の課題は、冒頭に述べた形式の方法並びに相応な研削機械を改良して、スクリュコンプレッサロータ及び相応な成形部を安価に製造できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題を解決するために本発明の方法では、前研削及び/又は仕上げ研削を、ウォーム形状の研削工具を用いて連続的な転動研削法(Waelzschleifverfahren)で実施するようにした。
【発明の効果】
【0014】
転動研削もしくは平フライス削り(Waelzschleifen)は、スクリュコンプレッサロータ及びこれに類したワークの製造に際しては、従来知られていなかった。
【0015】
前研削だけを、ウォーム形状の研削工具を用いて連続的な転動研削法で実施し、仕上げ研削をならい削りといしを用いてならい削り法で行うと有利である。
【0016】
荒削り工具及び/又は仕上げ工具としては、ドレッシング可能な工具を使用することができる。しかしながらまた、荒削り工具及び/又は仕上げ工具として、研磨材、特に立方晶窒化硼素(CBN)の被覆層が配置されている鋼ベース体を備えた工具を使用することも可能である。
【0017】
本発明の別の方法では、荒削り工具及び仕上げ工具が1つの共通の工具スピンドルに配置されていて、該工具スピンドルを荒削り工具の係合と仕上げ工具の係合との間の交番時に軸線方向において移動させる。
【0018】
本発明の特に有利な方法では、仕上げ研削の実施後に、研削機械において、研削された成形部においてばり取り工程を実施する。ばり取り工程はこの場合単数又は複数の回転するブラシによって行うことができ、このようなブラシは、ワークのばり取りされる領域に位置決めされる。ばり取り工程中に、ワークをその軸線を中心にして回転させると有利である。
【0019】
このようなワーク、特にスクリュコンプレッサロータを研削するための研削機械は、研削機械が工具スピンドルを有しており、該工具スピンドルに互いに軸方向間隔をおいて、ウォーム形状の研削工具としての荒削り工具と、ならい削りといしとしての仕上げ工具とが配置されており、さらに、研削されたワークにおけるばりを除去するためのばり取り工具が設けられていて、該ばり取り工具が回転するブラシであることを特徴とする。
【0020】
荒削り工具及び/又は仕上げ工具は、ドレッシング可能な工具として形成されていてもよい。しかしながらまた、荒削り工具及び/又は仕上げ工具が、鋼ベース体を備えた工具として形成されていて、該鋼ベース体に研磨材、特に立方晶窒化硼素(CBN)の被覆層が配置されている構成も可能である。
【0021】
本発明の有利な構成では、荒削り工具と仕上げ工具とが1つの共通の工具スピンドルに配置されていて、該工具スピンドルが軸方向移動可能に研削機械に配置されている。
【0022】
つまり研削機械は、研削されたワークにおけるばりを除去するための単数又は複数のばり取り工具として、回転するブラシを有している。
【0023】
有利な構造形式としては、水平方向に延在するワークスピンドルが挙げられる。
【0024】
本発明による方法及び相応な研削機械によって、特にスクリュコンプレッサロータを従来よりも安価に製造することができる。本発明による方法は、ワークのほぼ円筒形のベース体の外周部に螺条形状の成形部を備えた同様のワークのためにも適している。
【0025】
本発明による方法は、ドレッシング可能な研削工具によっても又はドレッシングなしの研削工具によっても実施することができ、ドレッシングなしの研削工具において使用される鋼ベース体工具は、正確に製造された成形体に研磨材粒子が被覆されていて、この場合CBNを電気めっきによって結合すると有利である。
【0026】
この場合荒削り工具は、仕上げ工具よりも大きな(粗い)研削粒を備えている。仕上げ加工のための粒はこの場合、所望の表面品質が得られるように選択される。
【0027】
荒削り研削及び仕上げ研削は、ワークがただ一度緊締された状態において行われる。
【0028】
最後の作業工程は、ロータの端面のばり取りであり、この作業は、研削機械においてワークを緊締したままで引き続き、ばり取り工具(回転するブラシ)によって行われる。
【0029】
本発明のように、荒削りのための研削ウォームを用いた転動研削もしくは平フライス削りと仕上げのためのならい削りといしを用いてならい削りとを一度の緊締状態において組み合わせることによって、転動研削もしくは平フライス削りの短い加工時間の利点と、ならい削りの高い精度の利点との両方の利点が得られる。
【0030】
従って従来公知の製造方法に比べて、短い加工時間を得ることができ、しかもこの際に、精度及び表面品質に関する劣化を甘受する必要がない。
【0031】
研削機械に組み込まれたばり取り過程によって、別体のばり取り機械はもはや不要となる、もしくは手作業のばり取り過程が省かれる。これによってまた、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】最終加工されるスクリュコンプレッサロータと研削機械の作業室とを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に図面を参照しながら本発明の1実施例を説明する。
【0034】
図1には、スクリュコンプレッサロータの形をしたワーク1が示されており、このワーク1は、研削機械に到着する前に既に予備加工されている。ロータ1は従って既に、その円筒形の外輪郭の周囲に螺条形状の成形部2を有している。図示の研削機械においてロータ1は、荒削り工程、仕上げ研削工程及びばり取り過程から成る完全な仕上げ加工が行われる。
【0035】
図示の工具スピンドル5は2つの研削工具3,4を備えている。
【0036】
この場合荒削り工具である研削ウォーム(Schleifschnecke)3はその成形部が、ウォーム成形体の連続的な転動時に加工される成形体2において転動研削(Waelzschleifen)によって、存在する余剰寸法(Aufmass)の大部分が削り取られるように、構成されている。仕上げ工具であるならい削りといし(Profilschleifscheibe)4は、公知のように、成形部2の螺条形状を正確に仕上げ加工することができるような輪郭を有している。研削ウォーム3及びならい削りといし4は実施例では、鋼ベース体工具として形成されている。すなわち研削ウォーム3及びならい削りといし4は、正確に製造された鋼ベース体を有していて、この鋼ベース体は単層の立方晶窒化硼素(CBN)によって被覆されており、電気めっき工程を用いてCBN粒子が結合金属(ニッケル)を用いて鋼ベース体に固定されている。
【0037】
研削ウォーム3及びならい削りといし4はこの場合択一的に係合する。荒削りと仕上げ削りとの間の交番は、軸線方向aにおける工具スピンドル5の運動によって行われる。
【0038】
図1においては、荒削り研削過程の実施が示されている。ワーク1はワークスピンドル7において2つの先端の間に受容されている。工具スピンドル5及びワークスピンドル7は直接駆動される。つまり両スピンドルの回転は同期されて行われる(電気的な連結)。
【0039】
工具3による荒削りの後で、工具4を用いた仕上げ削りが公知のように行われる。次いで自動的に同じワーク緊締状態において、ワーク1のばり取りが、単数又は複数のばり取り工具6、図示の実施例では回転するブラシを用いて行われる。ブラシはこの場合回転するように、ワーク1の端面領域に、つまり成形部2の終端部に位置決めされていて、ワークスピンドル7は回転させられる。ばりはこれによって自動的に除去される。
【0040】
研削ウォーム3としては円筒研削ウォームが使用される。しかしながらまた、非円筒形のウォーム(グロボイドウォーム(Globoidschnecke))を使用することも可能である。
【0041】
ドレッシングなし(abrichtfrei)の研削工具3,4の使用は必ずしも必要ではない。ドレッシング可能な工具を使用することも可能であり、この場合にはさらに相応なドレッシング装置が研削機械に設ける必要がある。
【0042】
図示及び記載の実施形態、つまり研削ウォームによる荒削り及びならい削りといしによる仕上げ削りは有利である。しかしながらまた基本的には、研削ウォームもしくはならい削りといしによる荒削り及び/又は仕上げ削りを任意に組み合わせることが可能である。
【0043】
また、ドレッシングなしの研削工具とドレッシングされる研削工具とを組み合わせて使用することも可能である。
【0044】
また択一的に、両方の研削工具3,4を別体の工具スピンドルに配置することも可能である。
【0045】
別の有利な択一的な構成としては、ワークスピンドル7が鉛直に方向付けられている鉛直の構造形式がある。
【0046】
本発明による解決策は、可能な限り最大の節約効果を得るために、小型のロータのために特に有利に適している。
【符号の説明】
【0047】
1 ワーク(スクリュコンプレッサロータ)、 2 螺条形状の成形部、 3 荒削り工具/ウォーム形状の研削工具、 4 仕上げ工具/ならい削りといし、 5 工具スピンドル、 6 ばり取り工具(回転するブラシ)、 7 ワークスピンドル、 a 軸線方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形の基本輪郭を有していてかつ外輪郭に螺条形状の成形部(2)を備えているスクリュコンプレッサロータ(1)を製造する方法であって、下記のステップ:すなわち、
a)最終輪郭に対して余剰寸法を有する成形部(2)を形成することによる、ワーク(1)の予備加工、
b)余剰寸法の一部を除去するための、研削機械における荒削り作業工程での、成形部(2)の前研削、及び
c)余剰寸法の残りを除去して成形部(2)の最終輪郭を形成するための、研削機械における仕上げ作業工程での、成形部(2)の仕上げ研削
というステップを有する形式の方法において、
前研削及び/又は仕上げ研削を、ウォーム形状の研削工具(3)を用いて連続的な転動研削法で実施することを特徴とする、スクリュコンプレッサロータを製造する方法。
【請求項2】
前研削だけを、ウォーム形状の研削工具(3)を用いて連続的な転動研削法で実施し、仕上げ研削をならい削りといし(4)を用いてならい削り法で行う、請求項1記載の方法。
【請求項3】
荒削り工具(3)及び仕上げ工具(4)が1つの共通の工具スピンドル(5)に配置されていて、該工具スピンドル(5)を荒削り工具の係合と仕上げ工具の係合との間の交番時に軸線方向(a)において移動させる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
請求項1のステップc)の実施後に、研削機械において、研削された成形部においてばり取り工程を実施する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ワーク(1)のばり取りされる領域に位置決めされた単数又は複数の回転するブラシ(6)によって、ばり取り工程を行う、請求項4記載の方法。
【請求項6】
ばり取り工程中に、ワーク(1)をその軸線を中心にして回転させる、請求項4又は5記載の方法。
【請求項7】
ワーク(1)を請求項1のステップa)に記載の前加工の枠内において又は該ステップa)の前に、鋳造工程を用いて製造する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
円筒形の基本輪郭を有していてかつ外輪郭に螺条形状の成形部(2)を備えているワーク(1)、特にスクリュコンプレッサロータを研削する研削機械であって、ワーク(1)が、最終寸法に対して余剰寸法を有する、予備加工によって形成された成形部(2)を有している形式の研削機械、特に請求項1から7までのいずれか1項記載の方法を実施する形式の研削機械において、
研削機械が工具スピンドル(5)を有しており、該工具スピンドル(5)に互いに軸方向間隔をおいて、ウォーム形状の研削工具としての荒削り工具(3)と、ならい削りといしとしての仕上げ工具(4)とが配置されており、さらに、研削されたワーク(1)におけるばりを除去するためのばり取り工具(6)が設けられていて、該ばり取り工具(6)が回転するブラシであることを特徴とする、研削機械。
【請求項9】
荒削り工具(3)と仕上げ工具(4)とが1つの共通の工具スピンドル(5)に配置されていて、該工具スピンドル(5)が軸方向移動可能に研削機械に配置されている、請求項8記載の研削機械。

【図1】
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【公開番号】特開2010−30038(P2010−30038A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172798(P2009−172798)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(508124671)カップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (8)
【氏名又は名称原語表記】Kapp GmbH
【住所又は居所原語表記】Callenberger Strasse 52, D−96450 Coburg, Germany
【Fターム(参考)】