説明

ワークフロー制御装置

【課題】業務を処理すべきユーザ自身による適切なワークフローの構築を支援する。
【解決手段】ワークフロー制御装置は、ユーザのワークフローを管理・制御するための装置であり、各ユーザ端末にワークフロー画面220を表示させる。ユーザはワークフロー画面220に示される業務手順にしたがって業務処理を進める。ワークフロー制御装置は、ユーザが実行すべき業務手順として、複数種類の手続きの実行順序を示す順序情報と、各手続きの内容を示すオペレーション情報を保持し、順序情報にしたがって、各手続きの内容を順次画面表示させる。ユーザにより業務手順の変更が指示されたとき、ワークフロー制御装置は、各手続きの実行順序を変更する上で満たすべき条件が満足されるときに、指定された業務手順に基づき順序情報を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理技術に関し、特に、ユーザが処理すべき業務についてのワークフローを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータの普及に伴い、複数の業務の処理手順を示すワークフローをコンピュータに管理させることがある。ユーザは、ワークフローとして設定された順序で各業務を処理していくことで、処理すべき事項を忘れてしまう等の単純ミスを低減できる。
【特許文献1】特開2005−134937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現状、ユーザはシステム開発者により構築されたワークフローに従って業務の処理を進める。言い換えれば、ユーザはワークフローシステムそのものを構築しない。したがって、システム構築の際には、想定されるワークフローのバリエーション全てについて構築される必要がある。
【0004】
しかし、業務は多数存在し、これら業務の様々な組み合わせがあり得るため、想定されるワークフローのバリエーション数は膨大になり、ワークフローシステムの構築には多大な費用・期間がかかってしまう。実際に業務を行うユーザ自身が、実際に業務を行う場面で、適切なワークフローを構築できれば、あらかじめワークフローのバリエーションを多数用意する必要はないと本発明者は考えた。
【0005】
本発明は、本発明者による上記着目に基づいて完成された発明であり、その主たる目的は、業務を処理すべきユーザ自身による適切なワークフローの構築を支援する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のワークフロー制御装置は、ユーザが実行すべき業務手順として、複数種類の手続きの実行順序を示す順序情報を保持する順序情報保持部と、各手続きの内容を示すオペレーション情報を保持するオペレーション情報保持部と、順序情報にしたがって、順序情報に登録されている各手続きのオペレーション情報を順次画面表示させるオペレーション表示部と、オペレーション情報の画面表示中において、手続きの実行順序の変更を指示するためのユーザによる変更指示入力を検出する指示検出部と、変更指示入力が検出されたとき、順序情報を指定された実行順序に変更する順序情報制御部とを備える。オペレーション情報保持部は、各手続きと、各手続きの実行順序を変更する上で満たすべき条件とを対応づけて各オペレーション情報を保持し、順序情報制御部は、指定された実行順序と条件とが整合するとき順序情報を変更する。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置、方法、システム、プログラム、プログラムを格納した記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、業務を処理すべきユーザ自身による適切なワークフローの構築を支援できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態について説明する前に、まず、本発明の概要について説明する。これまでのシステムでは、システムを構築するシステム開発者と、そのシステムを利用するユーザとは分離されていることが一般的であった。ワークフロー制御システムの場合、システム開発者は、まず想定されるワークフローについてユーザにヒアリングし、ヒアリングの結果に基づいて複数のバリエーションを有するワークフローシステムを構築してきた。ユーザは、システム開発者により構築された複数のバリエーションのいずれかを使用して業務を処理していた。
【0010】
現在、ワークフローシステムで管理・制御される業務は多数存在し、その結果、想定されるワークフローのバリエーション数、つまり業務の組み合わせ数は多数存在する。図1は、ワークフローのバリエーションを示した模式図である。同図では、業務Aから業務Dまでの4業務を組み合わせるワークフローを示し、また、それぞれの業務には次の特性があるものとする。
【0011】
業務A:顧客から依頼を受けて実行される業務。
業務B:業務Aの中のオペレーションによって要否が決定される業務であり、業務Aの直後に実行される業務。
業務C:顧客から依頼を受けて実行される業務であり、業務Aとは別の業務。
業務D:顧客の契約状態によって要否が決定される業務であり、一連の業務の最後に実行される業務。
【0012】
上述した業務特性の場合、4業務の組み合わせであるワークフローには、図1で示したように15のバリエーションが存在する。このように、わずか4業務であっても、それら業務の特性により組み合わせ数は多数存在し、業務数が増えるほど組み合わせ数も増大する。またコールセンタのオペレータのように、顧客との会話の中で業務が決定される場合、顧客の突発的な指定により新たな業務が発生することもある。また、動的に変化しうる顧客の属性に基づき、特定の顧客に対してのみ実行すべき業務も存在する。したがって、あらかじめ定型的にワークフローを定めることが困難な場合もあり、また、定型的なワークフローにしたがって業務を進めることが適切でない場合もある。
【0013】
本発明の実施の形態では、業務を処理すべきユーザ自身に、実際に業務を処理する場面において、適切なワークフローを構築させるための技術について提案する。これにより、ワークフローの多数のバリエーションをあらかじめ構築する必要はなくなり、また、ユーザは顧客対応の状況等に応じて柔軟にワークフローを変更することが可能になる。以下、実施の形態を説明する。
【0014】
図2は、コールセンタと顧客との関係を示すハードウェア構成図である。
コールセンタ300は、地理的に分散された複数のコールセンタの集合として構成されてもよい。ここでは、証券会社において電話証券取引に対応するコールセンタを例として説明する。
【0015】
コールセンタ300には、オペレータごとにオペレータ電話202a、202b、202c(以下、単に「オペレータ電話202」と呼ぶ。)が設置される。各オペレータ電話202はアナログ回線の電話網204に接続される一般的な電話機である。顧客は、電話網204に接続される顧客電話206a、206b、206c(以下、単に「顧客電話206」と呼ぶ。)を介して、オペレータ電話202にコールする。顧客電話206も、携帯電話や固定電話等の一般的な電話機である。オペレータは、自らが担当するオペレータ電話202にて顧客からのコールを受け付け、顧客からの注文を代理実行する。以下、顧客からのコールを受け付け、顧客からの注文に対応し、電話を終了するまでの一連の業務を「顧客対応業務」とよぶ。
【0016】
コールセンタ300においては、更に、ワークフロー制御装置100とオペレータ端末200a、200b、200c(以下、単に「オペレータ端末200」と呼ぶ。)がLAN(Local Area Network)208を介して接続されている。各オペレータ端末200は、オペレータごとに設置される一般的なウェブ端末である。オペレータごとに、オペレータ電話202とオペレータ端末200が割り当てられることになる。
【0017】
LAN208には、業務システム210が接続される。業務システム210は、株式等の発注や決済を処理するためのシステムである。オペレータは、顧客との会話から顧客の注文内容を確認し、オペレータ端末200を介して業務システム210にアクセスして、顧客の注文を発注することにより、顧客対応業務が実現される。
【0018】
なお、オペレータ端末200とオペレータ電話202は一体として形成されてもよい。たとえば、オペレータは、IP(Internet Protocol)電話により顧客と会話してもよい。この場合には、オペレータ端末200がオペレータ電話202の機能を含んでもよい。
【0019】
ワークフロー制御装置100は、顧客対応業務における業務手順をオペレータに示すために、オペレータ端末200にワークフロー画面を表示させる。本実施の形態では、ワークフロー制御装置100は、ウェブページとしてワークフロー画面を表示させることとする。各オペレータは、ワークフロー画面に示される業務手順にしたがって顧客対応業務を行う。なお、オペレータがワークフロー画面に入力した売買情報等の業務データは、一旦ワークフロー制御装置100に送信され、ワークフロー制御装置100から業務システム210に送信される。
【0020】
ただし、電話証券取引における顧客対応業務の業務手順は、通常、確定的に定義できるものではない。たとえば、株式の売却を指示する顧客についての業務手順と債券の購入を指示する顧客についての業務手順は異なる。口座管理料が未払いとなっている顧客に対しては、口座管理料を請求すべきであるが、口座管理料を支払っている顧客に対しては、このような手続きは不要である。一方、「本人確認」という手続きは、後述する例外を除き、どのような顧客であっても原則実行すべき手続きである。ワークフロー制御装置100は、基本的にはオペレータの操作によるワークフローの変更を許容するが、業務の整合性を維持するため、後述する方法にて、顧客の属性や業務間の関係に応じた最適な業務手順となるようにワークフローの生成および変更を支援する。
【0021】
図3は、ワークフロー画面220の画面図である。
ワークフロー画面220は、ワークフロー制御装置100によって提供されるウェブページとして、オペレータ端末200に表示される。ワークフロー制御装置100は、オペレータ端末200ごとに異なる業務手順を設定し、それぞれ異なるワークフロー画面220を表示させることができる。
【0022】
顧客情報領域222は、顧客に関する情報を示す。オペレータは、オペレータ電話202にて顧客からの電話を受け付けると、オペレータ端末200に顧客の識別情報を入力する。オペレータ端末200は、顧客の識別情報をワークフロー制御装置100に送信する。ワークフロー制御装置100は、顧客の識別情報と対応づけて顧客に関するさまざまな情報を保持している。ワークフロー制御装置100は、受信した顧客の識別情報に対応づけられている顧客情報を顧客情報領域222に表示させる。同図に示す顧客情報領域222によれば、このワークフロー画面220は、「顧客ID:00010390」の「野々村太郎(46歳・男)」という顧客についての顧客対応業務において表示される画面であることがわかる。
【0023】
なお、IP電話であれば、発話元のIPアドレスにより、オペレータ端末200が顧客IDを自動的に特定してもよい。また、通常の電話回線であっても、発信元電話番号により顧客の識別情報を自動的に特定してもよい。また、オペレータとの会話の前にIVR(Interactive Voice Response:音声自動応答装置)による顧客認証が行われてもよく、この顧客認証により顧客の識別情報が特定されてもよい。
【0024】
フロー表示領域224には、顧客対応業務における業務手順が表示される。業務手順は、複数の「手続き」の連結により示される。ここでいう「手続き」とは、たとえば、「国内株の売却」、「日本国債の購入」、「住所変更」といったあらかじめ定義されたさまざまな顧客対応項目である。どのような手続きをどのような順序で実行すべきかは、「順序情報」として設定されている。この順序情報により業務手順が定義されることになる。オペレータは、電話応対中において適宜発生する顧客の注文に応じて、さまざまな手続きを順序情報に追加登録できる。すなわち、会話中に発生した顧客の要望を業務手順の一部として取り込むことができる。たとえば、会話の最中に、顧客が「国内株も買いたい」という要求をしてきたときには、オペレータは、順序情報に「国内株の購入」という手続きを追加登録する。また、顧客が「後で投資信託も買いたい」という要求をしてきたときには、更に、「投資信託の購入」という手続きを順序情報に追加登録する。フロー表示領域224には、業務手順として登録されている各手続きが実行順に並べて表示される。
【0025】
同図の場合、「国内株の購入」という顧客の注文に対応した後、「国内株を売却」、「顧客の指定口座への出金」という手続きを順次行うべきことが示されている。同図によれば、「国内株の購入」という手続きについて対応中である。なお、注文の対象となる銘柄まで業務手順として指定できてもよい。たとえば、「国内株(A銘柄)の購入」、「投資信託Bの購入」といった手続きとして業務手順に登録できてもよい。
【0026】
図3において対応中の「国内株の購入」という手続きには、更に、「選択」、「入力」、「確認」、「結果」という4つの手続き(以下、「サブ手続き」と呼ぶ。)が含まれる。「選択」は対象銘柄と取引数量を顧客に確認するサブ手続き、「入力」は業務システム210に発注するためのデータ入力をするサブ手続き、「確認」は入力内容を顧客に再確認して発注するサブ手続き、「結果」は注文の成否を顧客に伝えるサブ手続きである。「国内株の購入」という手続きが業務手順に登録されるときには、このようなあらかじめ定義されたサブ手続きも併せて登録される。このため、「国内株の購入」を指示されたときに、たとえば、サブ手続き「確認」だけを怠ってしまうという人為的ミスを防ぎやすくなっている。
【0027】
前ボタン226と後ボタン228は、フロー表示領域224において表示対象となる手続きを変更するためのボタンである。前ボタン226と後ボタン228のクリックにより、オペレータは業務手順全体を確認できる。
【0028】
オペレーション情報表示領域232には、対応中の手続きの内容が表示される。同図においては、「国内株の購入>確認」という手続きのための情報が表示されている。オペレータは、手続き「国内株の購入>確認」について顧客対応が完了したときには完了ボタン238をクリックする。完了ボタン238をクリックすると、次の手続きの情報が表示される。同図の場合、完了ボタン238がクリックされると「国内株の売却」という手続きの最初のサブ手続き(図示せず)である「選択」についての情報が表示されることになる。したがって、オペレータは、オペレーション情報表示領域232に表示される内容にしたがって顧客対応しながら、順次完了ボタン238をクリックしていくことにより業務手順全体を漏れなく確実に進めていくことができる。
【0029】
前遷移ボタン236をクリックすると、一つ前の手順として設定されている手続きの情報が表示される。同図の場合、前遷移ボタン236がクリックされると「国内株の購入>確認」が表示されることになる。次遷移ボタン240をクリックすると、次の手続きとして設定されている手続きの情報が表示される。同図の場合、次遷移ボタン240がクリックされると「国内株の売却>選択」についての情報が表示されることになる。ただし、次遷移ボタン240をクリックして、つまり完了ボタン238がクリックされることなく、次の手続きが表示されたとしても、現在の手続き「国内株の購入>確認」が完了したことにはならない。
【0030】
手続き一覧領域230は、業務手順の一部として登録可能な手続きを一覧表示する領域である。各手続きはカテゴリ分類されている。たとえば、「口座管理」というカテゴリをクリックすると、関連する「取引履歴」、「ポートフォリオ」、「株式手数料」といった手続きが一覧表示される。
【0031】
手続き制御領域234は、業務手順を動的に変更するための入力領域である。手続き一覧領域230からいずれかの手続きを選択し、追加ボタン242をクリックすると、選択された手続きが業務手順の一部として順序情報に追加登録される。たとえば、電話応対中に、顧客が「後で株式手数料について教えて欲しい」と要求してきたとき、オペレータは手続き一覧領域230から「株式手数料」という手続きを選択して、追加ボタン242をクリックする。このとき、順序情報に手続き「株式手数料」が追加登録される。フロー表示領域224に表示される業務手順の内容も、追加登録に対応して更新される。
【0032】
フロー表示領域224からいずれか未処理の手続きを選択して、キャンセルボタン244をクリックすると、選択された手続きが業務手順から外される。すなわち、順序情報から登録抹消される。たとえば、顧客が「国内株を買いたい」と指示したものの、実際に国内株を注文する前に、国内株購入を取りやめるよう再指示してきたとき、オペレータは「国内株の購入」という手続きを選択して、キャンセルボタン244をクリックする。このとき、順序情報から手続き「国内株の購入」は登録抹消される。
【0033】
更に、オペレータは、フロー表示領域224に表示されている「手続き」をドラッグアンドドロップすることにより、手続きの実行順序を変更することもできる。たとえば、「国内株買」という手続きをドラッグして、「出金処理」の後ろにもってくると、それにあわせて、「国内株買」手続きの実行順序は「出金処理」手続きの次として再設定される。
【0034】
オペレータは、順序情報にしたがってオペレーション情報表示領域232に示される手続き内容に応じて顧客対応しつつも、対応中に発生する顧客からの様々な要求を業務手順として適宜反映させることができる。このため、業務に未習熟なオペレータであっても、顧客からの要望に漏れなく的確に対応できる。また、このようなワークフロー制御装置100により指示を受けつつ顧客対応業務を実行することにより、オペレータの業務習熟を促進できる。
【0035】
図4は、ワークフロー制御装置100の機能構成を示すブロック図である。
ここに示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0036】
ワークフロー制御装置100は、ユーザインタフェース処理部110と、データ処理部120と、データ保持部130とを有する。
ユーザインタフェース処理部110は、オペレータとのユーザインタフェース処理を担当する。ユーザインタフェース処理部110は、オペレータ端末200にワークフロー画面220を表示させる。
【0037】
より具体的には、ユーザインタフェース処理部110は、ワークフロー画面220についてのHTMLファイルを生成し、オペレータ端末200に送信することにより、オペレータ端末200にインストールされたウェブブラウザがワークフロー画面220を表示させることになる。データ処理部120は、ユーザインタフェース処理部110やデータ保持部130、業務システム210から取得されたデータを元にして各種のデータ処理を実行する。データ処理部120は、ユーザインタフェース処理部110とデータ保持部130との間のインタフェースの役割も果たす。データ保持部130は、各種データを保持するための記憶領域である。
【0038】
ユーザインタフェース処理部110:
ユーザインタフェース処理部110は、オペレーション表示部112と、指示検出部114とを含む。オペレーション表示部112は、各オペレータ端末200に対してウェブページを送信することにより、オペレータ端末200にワークフロー画面220を表示させる。これにより、オペレーション表示部112は、業務手順や実行すべき手続きの内容をオペレータに示す。
【0039】
指示検出部114は、図3のワークフロー画面220に対するオペレータの各種指示を受信する。指示検出部114は、追加検出部114aと、削除検出部114bと、変更検出部114cとを含む。追加検出部114aは、追加ボタン242がクリックされたとき、オペレータ端末200から追加対象となる手続きを指定する「追加コマンド」を受信する。削除検出部114bは、キャンセルボタン244がクリックされたとき、オペレータ端末200から削除対象となる手続きを指定する「削除コマンド」を受信する。変更検出部114cは、フロー表示領域224に対する手続き順序変更のためのドラッグアンドドロップ操作がなされたとき、変更対象となる手続きとその変更後の実行順序を指定する「変更コマンド」を受信する。指示検出部114は、このほかにも、ワークフロー画面220に対するオペレータの様々な入力に対応した各種コマンドを受信する。
【0040】
データ保持部130:
データ保持部130は、順序情報保持部132と、オペレーション情報保持部134と、顧客属性保持部136とを含む。順序情報保持部132は、顧客対応業務ごとに実行すべき手続きとその実行順序を示す順序情報を保持する。例えば、図3のワークフロー画面220が表示されているとき、順序情報保持部132には、「本人確認」→「国内株式購入」→「国内株式売却」→「出金処理」→「最終確認」という手続きと実行順序が保持されている。オペレーション情報保持部134は、各手続きの内容や各手続きに対応づけられた属性情報を示すオペレーション情報を保持する。
【0041】
図5(a)は、オペレーション情報保持部134のデータ構造図である。
手続き欄138は、各手続きの名前を記録する。手続き欄138に示される手続きは、図3の手続き一覧領域230に一覧表示される。画面ID欄140は、各手続きに対応づけられた画面データの識別情報を記録する。画面ID欄140に示される画面IDは、図3のオペレーション情報表示領域232に表示されるウェブページのデータについての識別情報を示す。例えば、オペレータが図3のフロー表示領域224で「国内株式購入」を選択すると、その手続きに対応づけられた画面ID「7」のウェブページがオペレータ端末200に送信され、オペレーション情報表示領域232に表示される。
【0042】
顧客属性条件欄142は、ワークフロー画面220に手続きを表示させ、また、各手続きに対する実行順序の変更を許容する条件として、顧客属性にかかわる「顧客属性条件」を記録する。実行順序の変更とは、図3のフロー表示領域224に表示された業務手順を変更することであり、順序情報への手続きの追加、順序情報からの手続きの削除、各手続き間の前後関係の変更が含まれる。顧客属性条件が成立するとき、例えば、対応する手続きは業務手順の一部として順序情報に追加できる。
【0043】
図5(a)によれば、手続き「Aファンドを推奨」は、顧客の口座残高が2000万円以上であるとき、顧客属性条件が成立する。すなわち、資産的にある程度の余裕のある顧客に対しては、Aファンドを推奨するという手続きを業務手順に追加でき、または、Aファンドを推奨するという手続きが自動的に業務手順として追加されることになる。一方、手続き「住所変更」は、顧客から依頼されたときに実行すべき手続きであり、また顧客属性にかかわる前提条件を必要としないため、顧客属性条件は指定されていない。
【0044】
順序変更可否欄144は、各手続きの実行順序が変更可能か否かを示す「変更可否フラグ」を記録する。例えば、図5の手続き「本人確認」は、初期に設定された実行順序、例えば先頭から変更できないことを示している。一方で、手続き「国内株式購入」は、顧客の要望等に応じてオペレータが随時実行順序を変更可能であることを示している。
【0045】
図5(b)は、オペレーション情報保持部134のデータ構造図(続き)である。
順序条件欄146は、各手続きと別の手続きとの前後関係を規定する「順序条件」を記録する。例えば、手続き「本人確認」は、他の手続きより前、つまり先頭に設定される必要があることを示しており、手続き「住所変更」は、手続き「国内株式購入」等よりも前に設定される必要があることを示している。
【0046】
更新要否欄148は、オペレーション情報の更新の要否を示すフラグ情報を記録する。このフラグが設定された手続き、例えば手続き「最終確認」は、そのオペレーション情報が最新の状態を保つべき旨を示す。言い換えれば、手続き「最終確認」のオペレーション情報が、図3のオペレーション情報表示領域232に表示される際には、最新のオペレーション情報が表示されるべき旨を示す。なお、図5には図示していないが、オペレーション情報保持部134は、手続きに含まれる複数のサブ手続きとその組み合わせについても保持してよい。図4に戻る。
【0047】
顧客属性保持部136は、顧客の属性を示す顧客属性情報を保持する。顧客属性とは、たとえば、年齢や性別などの身体に関する属性、世帯構成や居住地、趣味などの生活に関する属性、年収や職種などの社会的地位に関する属性等、顧客に特有の情報であればよい。また、顧客の保有株式や預金残高等の資産情報や過去の取引情報を顧客属性として保持してもよい。また別の例として、上述したIVRに対する顧客の回答に基づく顧客指定情報、例えば顧客の電話における用件を顧客属性として保持してもよい。
【0048】
図6は、顧客属性保持部136のデータ構造図である。
顧客欄150は、顧客の名前を記録する。顧客欄150に示される顧客名は、図3の顧客情報領域222に表示される。なお、上述したように顧客属性保持部136は、図示しない「顧客ID」・「年齢」・「電話番号」等を保持してもよく、これらの属性情報も顧客情報領域222に表示されてもよい。
【0049】
本人確認要否欄152は、顧客対応において本人確認業務が必要であるかを示すフラグ情報を記録する。例えば、先に対応してから所定の時間内、例えば1時間以内に同一顧客へ対応する場合や、IVRにより本人確認済みの場合、図4に図示しない本人確認要否変更部により本人確認要否欄152が「不要」に更新される。なお、本人確認要否変更部は、先の業務完了時刻と、オペレータにより今回のワークフロー画面220が起動された時刻とを比較して変更の要否を判定する。
【0050】
中断手続き欄154は、顧客対応における手続きの実行が途中で中断されたとき、実行中であった手続きが記録される。中断順序情報欄156は、中断時において実行の対象であった順序情報が記録される。以下、実行中であった手続きと順序情報とを総称する場合、「中断情報」と呼ぶこととする。図6によれば、図3のワークフロー画面220による顧客「野々村」への対応において、手続き「国内株式売却」の途中で中断されたため、顧客「野々村」の中断手続き欄154には「国内株式売却」記録されている。また、中断順序情報欄156には、中断の際に設定されていた順序情報が記録されている。図4に戻る。
【0051】
データ処理部120:
データ処理部120は、順序情報初期化部122と、順序情報制御部124と、中断情報記録部126と、オペレーション情報更新部128とを含む。
【0052】
順序情報初期化部122は、顧客属性保持部136を参照して、初期の順序情報を作成し、順序情報保持部132に設定する。順序情報初期化部122は、まず、例えばオペレータが入力した顧客IDや顧客の発信元電話番号をもとに、顧客属性保持部136を参照して対応中の顧客の顧客属性を取得する。順序情報初期化部122は、次に、オペレーション情報保持部134を参照して、取得した顧客属性に整合する顧客属性条件を有する手続きを取得し、それらの手続きを含めて初期の順序情報を作成する。
【0053】
例えば、標準的な実行順序を示す順序情報として、順序情報保持部132に手続き「本人確認」→「最終確認」が事前に設定されているものとし、顧客「鈴木」の顧客属性として口座残高3000万円が記録されていたとする。このとき、順序情報初期化部122は、この顧客属性に整合する顧客属性条件を有する手続きとして「Aファンドを推奨」を取得する。次に、これを含めた「本人確認」→「Aファンドを推奨」→「最終確認」という実行順序を示す順序情報を順序情報保持部132に記録する。これにより、オペレータが最初にワークフロー画面220を表示させた際には、手続き「Aファンドを推奨」を含めたワークフローが表示される。
【0054】
また、順序情報初期化部122は、顧客属性保持部136より取得した顧客属性に含まれる本人確認要否が「必要」と設定されているとき、初期の順序情報に本人確認の手続きを含める。また、順序情報初期化部122は、顧客属性保持部136より取得した顧客属性に中断手続き欄154および中断順序情報欄156の中断情報が含まれるとき、中断順序情報欄156に記録された順序情報を初期の順序情報として設定する。または、中断順序情報欄156に記録された順序情報のうち、中断手続き欄154に記録された手続き以降の実行順序を示す順序情報を初期の順序情報として設定する。具体例は後述する。
【0055】
順序情報制御部124は、順序情報の変更を制御する。具体的には、順序情報保持部132に設定された順序情報をオペレータにより指定された実行順序に変更する。なお、実行順序の変更には、手続きの追加および削除も含まれる。実行順序の変更にあたって、順序情報制御部124は、オペレーション情報保持部134により保持される条件であって、各手続きの実行順序を変更する上で満たすべき条件を参照して、オペレータにより指定された変更にかかる手続きの実行順序と当該条件が整合するかを判定する。整合すると判定した場合、順序情報制御部124は、順序情報保持部132に記憶された順序情報をオペレータにより指定された実行順序に変更する。
【0056】
各手続きの実行順序を変更する上で満たすべき条件とは、例えば、図5(a)および(b)で既述した顧客属性条件欄142、順序変更可否欄144、順序条件欄146に設定された条件である。順序情報制御部124は、対応中の顧客の顧客属性が顧客属性条件欄142の顧客属性条件と整合するかを判定する。また、オペレータにより指定された実行順序が順序変更可否欄144の変更可否フラグと整合するか、また、当該実行順序が順序条件欄146の順序条件に整合するかを判定する。具体例は後述する。
【0057】
また、順序情報制御部124は、顧客対応の中断を検出して、後述する中断情報記録部126に通知する。この場合、順序情報制御部124は、指示検出部114を介して、オペレータから明示的に顧客対応が中断された旨を示すデータを取得してもよく、全ての手続きの完了前に、図2に図示しない交換機サーバから顧客との電話における呼の切断を示すデータを受信することで検出してもよい。なお、順序情報制御部124は、順序情報に登録されている各手続きの実行状態についても管理する。完了ボタン238がクリックされると、手続きの実行状態は魅了から完了状態に変更される。順序情報に登録されている全ての手続きが完了すると、顧客対応業務も完了となる。
【0058】
中断情報記録部126は、オペレータの顧客対応における手続きの実行が途中で中断されたとき、実行中であった手続きの情報を順序情報制御部124から取得し、実行中であった順序情報を順序情報保持部132から取得する。中断情報記録部126は、取得した手続きと順序情報とを顧客属性保持部136の中断手続き欄154および中断順序情報欄156に記録する。これにより、対応中であった顧客と中断情報とが対応づけられる。
【0059】
オペレーション情報更新部128は、オペレーション情報保持部134に記録される各手続きのオペレーション情報を外部装置、例えば業務システム210から取得して、オペレーション情報を更新する。特に、更新要否欄148が「必要」と設定された手続きがオペレーション表示部112により表示される際には、オペレーション情報更新部128は、当該手続きのオペレーション情報に設定すべき最新のデータを外部装置から取得する。例えば、更新要否欄148が「必要」と設定された手続き「最終確認」が表示される際には、オペレーション情報更新部128は、先に実行された手続き、例えば「国内株式購入」等の結果を業務システム210から取得して、当該手続きのオペレーション情報を更新する。
【0060】
以下、データ処理部120の各機能ブロックの機能について、生成および変更されるワークフローを模式図で示しながら、さらに説明する。
【0061】
図7は、顧客対応におけるワークフローの生成および変更について説明するための模式図である。同図の1段目に示すように、元々の順序情報として、手続き「最終確認」が順序情報保持部132に設定されている。顧客からの電話をオペレータが受け付けると、順序情報初期化部122は、顧客属性保持部136を参照して、電話をかけてきた顧客の顧客属性を取得する。ここで、顧客属性には本人確認が必要、口座残高3000万円と設定されていることとする。
【0062】
顧客属性において本人確認が必要であると設定されているため、順序情報初期化部122は、手続き「本人確認」を追加する。次にオペレーション情報保持部134を参照して、顧客属性と合致する顧客属性条件を有する手続きを追加する。この例では、顧客属性として口座残高が2000万円以上であるため、手続き「Aファンドを推奨」を追加する。このようにして作成された初期の順序情報が図7の2段目のワークフローであり、順序情報初期化部122は、このワークフローを順序情報保持部132に設定する。この結果、ワークフロー画面220のフロー表示領域224には、初期状態において、「本人確認」→「Aファンドを推奨」→「最終確認」というワークフローが表示されることになる。
【0063】
続いて、電話での会話において顧客から国内株式および外国株式の購入したい旨をオペレータが受け付けると、オペレータは、手続き「国内株式購入」および「外国株式購入」をフロー表示領域224に追加する。この操作は、手続きの実行順序の変更を指示する変更指示入力として、指示検出部114が検出する。順序情報制御部124は、この変更指示入力が検出されると、まず、手続き「国内株式購入」および「外国株式購入」の顧客属性条件を参照する。図5(a)で示すように、これらの手続きの顧客属性条件として証券口座が開設済みであることが設定されているため、順序情報制御部124は、対応中の顧客の顧客属性を参照して顧客属性条件と整合するかを判定する。つまり、対応中の顧客の属性情報に証券口座開設済みの情報があれば、変更指示入力により指定された実行順序を順序情報保持部132に反映する。
【0064】
対応中の顧客の顧客属性が顧客属性条件と整合しない場合、つまり、対応中の顧客の属性情報に証券口座開設済みの情報がない場合、順序情報制御部124は、この変更指示入力による変更を拒否する。順序情報制御部124は、ユーザインタフェース処理部110を介して、この拒否の理由をオペレータに通知してもよく、これにより、オペレータは顧客に対し、先に証券口座を開設すべき旨をアドバイスできる。
【0065】
さらに顧客から住所変更の登録をしたい旨をオペレータが受け付けると、オペレータは、手続き「住所変更」をフロー表示領域224に追加する。ただし、順序情報制御部124は、順序条件欄146の順序条件を参照し、手続き「住所変更」の設定位置が手続き「国内株式購入」等より前であることを条件に、変更指示入力により指定された実行順序を順序情報保持部132に反映する。そのため、オペレータは、手続き「国内株式購入」等より前に、手続き「住所変更」を追加する必要がある。このようにして変更された順序情報が図7の3段目のワークフローである。
【0066】
なお、手続き「国内株式購入」を実行中に、手続き「住所変更」や「外国株式購入」が追加されてもよく、それぞれの追加時において、顧客属性条件や順序条件が判定される。また、オペレータは、顧客の要望に応じて、手続き「外国株式購入」と手続き「国内株式購入」との実行順序を変更することもできるが、例えば手続き「本人確認」の実行順序を変更することはできない。前者の手続きが順序変更可能であり、順序条件にも制約がないのに対し、後者の手続きは、順序変更可否のフラグが「不可」に設定されているため、順序情報制御部124により変更が拒否されるためである。
【0067】
また、図7の2段目のワークフローにおける手続き「最終確認」の中に、口座管理料を請求する旨の指示があったとする。手続き「Aファンドを推奨」を実行中に、顧客から住所変更・国内株式購入・外国株式購入の要望が出ると、図7の3段目のワークフローに変更される。ここで、手続き「国内株式購入」のサブ手続きとして「口座管理料の確認」があり、このサブ手続きにおいて、オペレータは顧客に対し口座管理料を請求し、請求済みである旨を外部システムに登録したとする。この場合、当該ワークフローにおける手続き「最終確認」から、口座管理料を請求する旨の指示は削除される。
【0068】
これは、図5(b)で示したように、手続き「最終確認」の更新要否のフラグが「必要」に設定されているためである。すなわち当該設定により、手続き「最終確認」のオペレーション情報が表示される際には、オペレーション情報更新部128が、口座管理料を請求済みのデータを含む最新情報を外部装置から取得して当該オペレーション情報に反映する。これにより、口座管理料を請求する指示は削除される。
【0069】
図8(a)および(b)は、顧客対応におけるワークフローの生成および変更(続き)について説明するための模式図である。
図8(a)は、図7で示したワークフローにおいて対応された顧客が、Aファンドを購入するため短時間のうちに再度電話をしてきた場合に生成されるワークフローを示す。この場合、既述したように、顧客属性保持部136の本人確認要否欄152は、図示しない本人確認要否変更部により「不要」と設定される。したがって、順序情報初期化部122は、この本人確認要否欄152の設定を参照するため、手続き「本人確認」を初期の順序情報に含めない。したがって、初期のワークフロー画面220には「最終確認」のみが表示され、以降オペレータは、顧客の要望に基づき、手続き「投資信託購入」を追加した図8(a)の2段目のワークフローにより顧客に対応する。
【0070】
図8(b)は、図7で示したワークフローによる顧客対応業務が途中で中断された後、同一の顧客への顧客対応業務が再開されるときに生成されるワークフローを示す。この例においては、もともと同図の1段目のワークフローが実行されており、その中の手続き「外国株式購入」が実行中であったものとする。この場合、まず、順序情報制御部124は、ワークフローの実行が中断されたことを検出して、中断情報記録部126にその旨を通知する。中断情報記録部126は、顧客属性保持部136の中断手続き欄154に手続き「外国株式購入」を、中断順序情報欄156にこのワークフローの順序情報を記録する。
【0071】
続いて、中断されたワークフローの実行が再開されると、順序情報初期化部122は、顧客属性保持部136の中断手続き欄154および中断順序情報欄156を参照して、記録された順序情報のうち実行中であった手続き以降の順序情報を順序情報保持部132に設定する。このようにして生成された順序情報が図8(b)の2段目の順序情報である。
【0072】
図9は、コールセンタにおける顧客対応業務過程を示すフローチャートである。
オペレータは、顧客からの電話をオペレータ電話202にて受け付けると、オペレータ端末200に顧客IDを入力して、ワークフロー画面220を表示させる。順序情報初期化部122は、後述するように、初期の順序情報を生成し順序情報保持部132に設定する(S2)。表示すべき手続きに更新要否フラグが「必要」と設定されているとき(S4のY)、オペレーション情報更新部は、最新情報を外部装置より取得して当該手続きのオペレーション情報を更新する(S6)。更新要否フラグが「不要」であれば(S4のN)、表示の際にオペレーション情報の更新は行われない。
【0073】
オペレーション表示部112は、順序情報保持部132に設定された順序情報に従って、実行すべき手続きのオペレーション情報をオペレーション情報保持部より取得して、ワークフロー画面220を表示させる(S8)。オペレータの操作にしたがって、順序情報制御部124は後述するワークフロー制御処理を実行し(S10)、順序情報に登録された全ての手続きが完了すると(S12のY)、顧客対応業務が終了する。完了していなければ(S12のN)、S4に戻る。
【0074】
図10は、図9における初期の順序情報設定の処理を詳細に示すフローチャートである。
順序情報初期化部122は、顧客属性保持部136を参照して、顧客に対応づけられた顧客属性を取得する(S20)。顧客属性に中断情報の記録がある場合(S22のY)、順序情報初期化部122は、中断情報をもとに順序情報を作成し(S24)、順序情報保持部132に順序情報を設定する(S34)。顧客属性に中断情報の記録がない場合(S22のN)、次に、本人確認の要否を判定する。本人確認が必要な場合(S26のY)、順序情報初期化部122は、手続き「本人確認」を実行順序に追加する(S28)。本人確認が不要な場合(S26のN)、手続き「本人確認」は追加されない。
【0075】
続いて、順序情報初期化部122は、オペレーション情報保持部134を参照して、顧客属性と整合する顧客属性条件を有する手続きの有無を確認する。顧客属性と整合する手続きがある場合(S30のY)、順序情報初期化部122は、当該手続きを実行順序に追加する(S32)。顧客属性と整合する手続きがない場合(S30のN)、実行順序への手続きの追加は行われない。順序情報初期化部122は、最後に、作成した実行順序を示す順序情報を順序情報保持部132に設定する(S34)。
【0076】
図11は、図9におけるワークフロー制御処理を詳細に示すフローチャートである。
順序情報制御部124は、ワークフローの実行が途中で中断されたことを検出すると(S40のY)、中断情報記録部126にその旨を通知し、中断情報記録部126は、中断情報を顧客属性保持部136に記録する(S42)。手続きの中断を検出しないときに(S40のN)、ワークフロー画面220を介してオペレータによる操作を受け付けると、指示検出部114は、手続き完了の指示であるかを判定する。手続き完了の指示である場合(S44のY)、順序情報制御部124は、実行されていた手続きの処理を終了する。手続き完了の指示ではない場合(S44のN)、指示検出部114は順序変更指示入力であるかを判定する。順序変更指示入力でなければ(S46のN)、再びオペレータからの指示待ちの状態に戻る。
【0077】
順序変更指示入力であった場合(S46のY)、順序情報制御部124は、変更にかかる手続きの顧客属性条件と対応中の顧客の顧客属性とが合致するかを判定する。顧客属性条件に合致する場合(S48のY)、順序情報制御部124は、変更にかかる手続きの順序変更可否属性を判定する。当該手続きの順序変更が可能である場合(S50のY)、順序情報制御部124は、オペレータにより指定された実行順序が各手続きの順序条件に整合するかを判定する。順序条件に整合する場合(S52のY)、順序情報制御部124は、順序情報保持部132の順序情報を指定された実行順序で更新する(S54)。S48、S50およびS52における条件のいずれかを満たさない場合(S48のN、S50のNおよびS52のN)、順序情報制御部124は、順序情報の更新を拒否し、再びオペレータからの指示待ちの状態に戻る。
【0078】
本実施の形態によれば、実際に業務を処理すべきオペレータによるワークフロー構築を支援できる。これにより、システム構築の段階では、各手続きの内容をオペレーション情報として定義しておけばよく、想定される手続きの組み合わせ、つまりワークフローのバリエーションを多数構築する必要はなくなる。また、「最終確認」時における「国内株式購入」の追加のような、顧客の突発的な要望により生じた業務の追加・削除・変更にも容易に対応可能となる。また、各手続きの実行順序とその内容を順次ユーザに示すことで、オペレータは処理すべき業務や顧客の要望にもれなく確実に対応しやすくなる。
【0079】
また、本実施の形態によれば、オペレータによる適切なワークフローの構築を支援できる。具体的に、ワークフロー制御装置100は、基本的にはオペレータによるワークフローの変更を許容しながらも、変更内容や顧客属性と、各手続きの実行順序を変更する上で満たすべき条件とが整合するときに当該変更を反映する。これにより、各業務のあるべき前後関係を維持でき、業務間の整合性を維持できる。
【0080】
例えば、ワークフローの先頭等、特定の位置で実行されるべき手続きについては、順序変更可否フラグを「不可」と設定することで順序変更ができないようにできる。また、順序条件を設定することで各手続き間の前後関係を維持できる。また、特定の顧客にのみ提供可能な手続きについては、顧客属性条件を設定することでその条件に合致する顧客に対してのみ手続きを実行できる。
【0081】
さらにまた、本実施の形態によれば、顧客属性に応じて必要とされる手続きを自動的に設定することによりオペレータの負担を軽減できる。例えば、口座管理料を所定の期間以上未納の顧客に対応するときには、自動的に口座管理料の請求という手続きが設定される。別の例として、A社の社員である顧客がA社株の売却を指示してきたときには「インサイダー取引に当たらないかを確認する」という手続きが必要である。このような場合においても、属性条件の設定により、必要な手続きが漏れてしまうのを防ぐことができる。また、顧客属性に応じて手続きを自動に設定することにより、営業効果を高められる。例えば、所定の条件以上の口座残高を有する顧客に対し、特定の商品を推奨するような手続きを自動的に追加できる。
【0082】
さらにまた、本実施の形態によれば、オペレータおよび顧客に対してさらなる利便性を提供できる。例えば、顧客に対する本人確認は、原則ワークフローの先頭で実行すべき手続きであるが、所定の時間内に同一の顧客に対応する場合には、本人確認を省略できることでオペレータおよび顧客の負荷を低減できる。また、中断情報を記録しておくことで、顧客対応が再開されたときに、中断された手続き以降のワークフローが自動で設定され、中断された時点から顧客対応業務を再開できる。これにより、オペレータは顧客の要望を再度聞き出してワークフローを構築する必要が無くなり、オペレータおよび顧客の負荷を低減できる。また、手続きに更新要否フラグを「必要」と設定することで、表示されるオペレーション情報を最新の状態に保つことができる。これにより、オペレータは顧客対応に必要な最新情報を一元的にワークフロー画面220から取得できるため、負荷が低減されるとともに、過去のオペレーション情報を参照することに起因するオペレーションミスを低減できる。
【0083】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0084】
変形例として、順序情報制御部124は、順序情報に同一の手続きが含まれるときには、これらの同一の手続きを一つの手続きに集約してもよい。例として、順序情報に「国内株式購入」が含まれる状態で、「外国株式購入」が追加されたものとし、両方の手続きには、「口座管理料確認」という同一のサブ手続きが含まれることとする。なお既述したように、手続きに含まれる複数のサブ手続きとその組み合わせについては、オペレーション情報保持部134により保持されているとする。
【0085】
この場合、順序情報制御部124は、オペレーション情報保持部134を参照して、順序情報の中に同一のサブ手続きが複数存在することを検出すると、これら同一のサブ手続きを一つのサブ手続きに集約する。ワークフローで示すと、手続きのレベルでは、「国内株式購入」→「外国株式購入」の場合、サブ手続きのレベルではもともと「口座管理料確認」→「国内株式選択」→「国内株式購入確認」→「口座管理料確認」→「外国株式選択」→「外国株式購入確認」であった。順序情報制御部124による集約処理の結果、サブ手続きのレベルでは、「口座管理料確認」→「国内株式選択」→「国内株式購入確認」→「外国株式選択」→「外国株式購入確認」となる。
【0086】
本変形例によれば、同一の手続きが存在する場合に、同一の作業が繰り返されることで生じるオペレータおよび顧客の負荷を低減できる。特に、ワークフローに多数の手続きが含まれる場合、後半の手続き実行時には前半に実行した手続きを失念し、同一の作業を繰り返してしまうことも生じやすい。本変形例では、同一の作業の繰り返しを自動で排除することにより、オペレータおよびユーザの利便性を向上できる。
【0087】
なお、実施の形態では、コールセンタのオペレータによる顧客対応業務におけるワークフローを管理・制御するワークフロー制御装置100について提案した。しかし、本発明の技術思想は、コールセンタへの適用には限定されない。ワークフローを管理・制御する分野全般、例えば会社員の事務作業におけるワークフロー管理等にも適用した場合にも、同様の作用効果を奏することは当業者に理解されるところである。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】ワークフローのバリエーションを示した模式図である。
【図2】コールセンタと顧客との関係を示すハードウェア構成図である。
【図3】ワークフロー画面の画面図である。
【図4】ワークフロー制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【図5(a)】オペレーション情報保持部のデータ構造図である。
【図5(b)】オペレーション情報保持部のデータ構造図(続き)である。
【図6】顧客属性保持部のデータ構造図である。
【図7】顧客対応におけるワークフローの生成および変更について説明するための模式図である。
【図8】図8の(a)および(b)は、顧客対応におけるワークフローの生成および変更(続き)について説明するための模式図である。
【図9】コールセンタにおける顧客対応業務過程を示すフローチャートである。
【図10】図9における初期の順序情報設定の処理を詳細に示すフローチャートである。
【図11】図9におけるワークフロー制御処理を詳細に示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0089】
100 ワークフロー制御装置、110 ユーザインタフェース処理部、112 オペレーション表示部、114 指示検出部、120 データ処理部、122 順序情報初期化部、124 順序情報制御部、126 中断情報記録部、128 オペレーション情報更新部、130 データ保持部、132 順序情報保持部、134 オペレーション情報保持部、136 顧客属性保持部、138 手続き欄、140 画面ID欄、142 顧客属性条件欄、144 順序変更可否欄、146 順序条件欄、148 更新要否欄、150 顧客欄、152 本人確認要否欄、154 中断手続き欄、156 中断順序情報欄、200 オペレータ端末、202 オペレータ電話、204 電話網、206 顧客電話、208 LAN、210 業務システム、220 ワークフロー画面、222 顧客情報領域、224 フロー表示領域、226 前ボタン、228 後ボタン、230 手続き一覧領域、232 オペレーション情報表示領域、234 手続き制御領域、236 前遷移ボタン、238 完了ボタン、240 次遷移ボタン、242 追加ボタン、244 キャンセルボタン、300 コールセンタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが実行すべき業務手順として、複数種類の手続きの実行順序を示す順序情報を保持する順序情報保持部と、
各手続きの内容を示すオペレーション情報を保持するオペレーション情報保持部と、
前記順序情報にしたがって、前記順序情報に登録されている各手続きのオペレーション情報を順次画面表示させるオペレーション表示部と、
オペレーション情報の画面表示中において、前記手続きの実行順序の変更を指示するためのユーザによる変更指示入力を検出する指示検出部と、
前記変更指示入力が検出されたとき、前記順序情報を指定された実行順序に変更する順序情報制御部と、
を備え、
前記オペレーション情報保持部は、各手続きと、各手続きの実行順序を変更する上で満たすべき条件とを対応づけて各オペレーション情報を保持し、
前記順序情報制御部は、前記指定された実行順序と前記条件とが整合するとき、前記順序情報を変更することを特徴とするワークフロー制御装置。
【請求項2】
コールセンタにおける顧客対応業務を支援するための装置であって、
前記ユーザは顧客からの電話に対応するオペレータであり、
各顧客について、顧客属性を示す顧客属性情報を保持する顧客属性保持部と、
前記オペレータが顧客からの電話を受け付けたとき、初期の順序情報を作成して前記順序情報保持部に設定する順序情報初期化部と、
をさらに備え、
前記オペレーション情報保持部は、各手続きと、顧客属性に関する属性条件とを対応づけて各オペレーション情報を保持し、
前記順序情報初期化部は、前記対応中の顧客の顧客属性情報を参照し、その顧客属性情報と前記属性条件とが整合するとき、前記属性条件と対応づけられた手続きを含めて前記初期の順序情報を作成することを特徴とする請求項1に記載のワークフロー制御装置。
【請求項3】
前記順序情報制御部は、前記対応中の顧客の顧客属性情報を参照し、その顧客属性情報と前記属性条件とが整合する手続きについての変更指示入力が検出されたことを条件として、前記順序情報を変更することを特徴とする請求項2に記載のワークフロー制御装置。
【請求項4】
前記顧客属性保持部の顧客属性情報には、各顧客の本人確認が必要か否かを示すフラグ情報が含まれ、
前記順序情報初期化部は、前記対応中の顧客のフラグ情報を参照して、前記顧客の本人確認が必要であるとき、本人確認の業務を示す手続きを含めて前記初期の順序情報を作成することを特徴とする請求項2または3に記載のワークフロー制御装置。
【請求項5】
オペレータの顧客対応における手続きの実行が途中で中断されたとき、実行中であった手続きと順序情報とを示す中断情報を当該顧客に対応づけて前記顧客属性情報に記録する中断情報記録部をさらに備え、
前記順序情報初期化部は、前記中断された手続きの実行が再開されるときに前記実行中であった手続きからオペレータに実行させるために、前記顧客に対応づけられた中断情報を参照し、その中断情報に示される順序情報のうち前記実行中であった手続き以降の実行順序を示す順序情報を前記初期の順序情報として設定することを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載のワークフロー制御装置。
【請求項6】
前記オペレーション情報保持部は、各手続きと、各手続きの実行順序の変更可否を示す変更可否情報を対応づけて各オペレーション情報を保持し、
前記順序情報制御部は、前記変更可否情報を参照し、前記実行順序が変更可能な手続きについての変更指示入力が検出されたことを条件として、前記順序情報を変更することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のワークフロー制御装置。
【請求項7】
前記オペレーション情報保持部は、所定の手続きと別の手続きとの前後関係を規定する順序条件を対応づけて各オペレーション情報を保持し、
前記順序情報制御部は、前記所定の手続きについて実行順序の変更が指定されたとき、前記順序条件を参照して、前記指定された実行順序と前記順序条件とが整合することを条件として、前記順序情報を変更することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のワークフロー制御装置。
【請求項8】
前記順序情報制御部は、前記順序情報に複数の同一手続きが含まれるとき、前記複数の同一手続きを一の手続きに集約することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のワークフロー制御装置。
【請求項9】
前記オペレーション情報に設定するデータを外部装置から取得して、前記オペレーション情報を更新するオペレーション情報更新部をさらに備え、
前記オペレーション情報保持部は、前記画面表示されるオペレーション情報について最新の状態に保つべき旨を示す更新フラグを所定の手続きに対し対応づけて各オペレーション情報を保持し、
前記オペレーション情報更新部は、前記更新フラグに対応づけられた所定の手続きのオペレーション情報の表示に際しては、前記所定の手続きのオペレーション情報に設定すべき最新のデータを前記外部装置から取得することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のワークフロー制御装置。
【請求項10】
ユーザが実行すべき業務手順として、複数種類の手続きの実行順序を示す順序情報を保持する順序情報保持機能と、
各手続きの内容を示すオペレーション情報を保持するオペレーション情報保持機能と、
前記順序情報にしたがって、前記順序情報に登録されている各手続きのオペレーション情報を順次画面表示させるオペレーション表示機能と、
オペレーション情報の画面表示中において、前記手続きの実行順序の変更を指示するためのユーザによる変更指示入力を検出する指示検出機能と、
前記変更指示入力が検出されたとき、前記順序情報を指定された実行順序に変更する順序情報制御機能と、
をコンピュータに実現させ、
前記オペレーション情報保持機能は、各手続きと、各手続きの実行順序を変更する上で満たすべき条件とを対応づけて各オペレーション情報を保持し、
前記順序情報制御機能は、前記指定された実行順序と前記条件とが整合するとき、前記順序情報を変更することを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−80581(P2009−80581A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248012(P2007−248012)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000155469)株式会社野村総合研究所 (1,067)
【Fターム(参考)】