ワーク保持具
【課題】電線を保持したまま持ち運ぶことが可能であるとともに、電線の変形や傷付きを防止し、しかも電線をしっかりと保持することが可能なワーク保持具を提供する。
【解決手段】電線を挟んで保持する保持ユニット301aは、電線の直径よりも狭い間隔で対峙し電線を挟んだ状態で押圧する一対の挟持片315と、夫々の挟持片315を互いに離間する方向に弾性変形可能に支持する支持片316とを備えた薄板状の挟持板312を有し、その挟持板312を複数枚積層して構成されている。また、夫々の挟持片315の下部には、相反方向に膨らむ略半円状の膨出部319が形成され、膨出部319の間に一対の挟持片315の間隔を変化させる開閉ピン320が嵌挿されている。
【解決手段】電線を挟んで保持する保持ユニット301aは、電線の直径よりも狭い間隔で対峙し電線を挟んだ状態で押圧する一対の挟持片315と、夫々の挟持片315を互いに離間する方向に弾性変形可能に支持する支持片316とを備えた薄板状の挟持板312を有し、その挟持板312を複数枚積層して構成されている。また、夫々の挟持片315の下部には、相反方向に膨らむ略半円状の膨出部319が形成され、膨出部319の間に一対の挟持片315の間隔を変化させる開閉ピン320が嵌挿されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク保持具に関するものであり、特に、電線等の線材の挟持に適したワーク保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
端末処理装置として、電線の端部の被覆材を除去し、その端部に端子を圧着するとともに、電線を所定の長さに切断する端子圧着装置が知られている。具体的には、図15に示すように、端子圧着装置501は、電線癖取装置502と、電線Lの先端側及び後端側に端子を圧着させるための第一圧着機構503,第二圧着機構504と、電線Lを切断するとともに電線Lの端部の被覆材を除去する切断機構505と、電線Lの先端側を第一圧着機構503に送り込む電線送込み機構506と、切断後の電線Lを保持し電線Lの後端側を第二圧着機構504に送り込むチャック機構(図示しない)と、端子を圧着し終えた電線Lを蓄えた後に所定数の電線Lを纏めて外部へ排出する排出装置(図示しない)とを備えている。
【0003】
第一圧着機構503と第二圧着機構504とは基本的な構成が等しく、端子を圧着するためのアプリケータ509がフレーム部材510に取付けられている。つまり、フレーム部材510の側面には、切欠き511が形成され、その切欠き511内にアプリケータ509が取付けられている。詳しくは、切欠き511の上方にはアプリケータ509の上側ユニット512が、また、切欠き511の下方には、アプリケータ509の下側ユニット513が夫々取付けられている。
【0004】
また、電線送込み機構506は、電線取込みガイド557、電線Lの長さを測長するエンコーダ558、及び、所定距離離間して配置される一対のローラ559等から構成されている。(特許文献1参照)。
【0005】
ところで、電線を送る際や、被覆材を除去する際には、電線を保持する必要がある。このため、上記の端子圧着装置は、例えば図16に示すような、電線保持具を備えている。この電線保持具は、例えば電線を挟む一対の押圧手段651(651a,651b)と、それぞれの押圧手段651を回転させるグリップ可動機構652とを具備して構成されている。つまり、グリップ可動機構652を動作させると、右側に配設された押圧手段651aが軸653を中心として反時計方向に回転するとともに、左側に配設された押圧手段651aが軸654を中心として時計方向に回転する。これにより、電線Lは、それぞれの押圧手段651の当接面655(655a,655b)に挟まれた状態で保持される。
【0006】
一方、本願出願人は、作業者の負担を軽減するとともに、多品種少量生産に適した電線供給を可能にした電線処理システムを先に提案している。これは、互いに異なる線種の電線が巻かれた複数の電線ドラムと、複数の電線ドラムの中から一つの電線ドラムを選択しその電線ドラムを所定の取出位置まで移動させるドラム移動手段とを有する電線供給装置を備えるものであり、取出位置の電線ドラムに巻かれた電線を引張って繰出させることを可能にしている。
【0007】
ところで、上記の電線供給装置を用いたシステムでは、電線処理システムから順次繰出される複数の電線を、整列させた状態で、端子圧着装置まで持ち運ぶことが望まれている。なお、この場合、繰出される電線の種類が互いに異なることもあり得ることから、繰出された順序を維持したまま運搬することが必要となる。
【0008】
【特許文献1】特開2005−166399号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来周知の電線保持具は、何れも持ち運ぶのに適したものではなく、特に複数の電線を整列させた状態のまま持ち運ぶことは困難とされていた。具体的に説明すると、上記の端子圧着装置のように、押圧部材とそれを可動させる可動機構とを備えた電線保持具では、モータ等の動力源が必要となることから、電線を保持したまま持ち運ぶことが極めて困難であった。しかも複数の電線を整列させた状態で保持するには、比較的大型の押圧部材を複数組具備しなければならず、これによれば全体の大きさが極めて大きくなるとともに、重量も増大し、運搬のし難さが助長されることになる。
【0010】
そこで、クリップ(書類を止める金具)のように、被保持物を挟んだ状態で保持する一対の挟持部を備え、これらの挟持部を弾性変形可能に支持することにより、被保持物を保持するようにした簡易保持具を採用することも考えられる。これによれば、挟持部の弾性力(挟持力)に抗して電線を挿入し、弾性力によって電線を挟持することから、動力源等を備えることなく比較的簡単な構成で電線を保持することが可能になる。
【0011】
しかしながら、上記の簡易保持具では、電線が保持具から抜けないように、比較的大きな保持力が必要となり、大きな締付け力を有する弾性部材を用いなければならない。そして、大きな締付力で電線を保持した場合には、電線が変形してしまい、被覆材が潰れて元の形状に戻らないことや、被覆材に押圧の形跡が残ることが懸念される。
【0012】
また、保持具で保持されている電線が、挟持部に対して垂直方向、すなわち挟持部を離間させる方向に引張られた場合には、比較的大きな締付け力を有する保持具を採用した場合でも、一方の挟持部が比較的小さな力で変位してしまい、一対の挟持部の間に隙間が生じることとなる。つまり、垂直方向に引張られた場合には、比較的小さな引張り力であっても、その電線が保持具から容易に抜けてしまう虞がある。
【0013】
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、ワーク(電線等)を保持したまま持ち運ぶことが可能であるとともに、ワークの変形や傷付きを防止し、しかもワークをしっかりと保持することが可能なワーク保持具の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明にかかるワーク保持具は、「ワークを挟んで保持する保持ユニットを備え、
該保持ユニットは、
前記ワークの幅よりも狭い間隔で対峙し前記ワークを挟んだ状態で押圧する一対の挟持片と、
夫々の該挟持片を互いに離間する方向に弾性変形可能に支持する支持片と
を備えた薄板状の挟持板を有し、該挟持板を複数枚積層して構成されている」ことを特徴とするものである。
【0015】
ここで、「ワーク」としては特に限定されるものではないが、電線等の線材を例示することができる。なお、線材を保持する場合には、複数の挟持板が線材の長手方向に沿って積層されることが好ましい。また、一つの保持ユニットに一対の挟持片を一組のみ備えるようにしてもよく、二組またはそれ以上の挟持片を備えるようにしてもよい。また、「挟持片」と「支持片」とは一体で形成してもよく、別部材で形成してもよい。
【0016】
本発明のワーク保持具によれば、薄板状の挟持板を、複数枚積層して構成された保持ユニットを備え、夫々の挟持板には、ワークの幅よりも狭い間隔で対峙しワークを挟んだ状態で押圧する一対の挟持片と、夫々の挟持片を互いに離間する方向に弾性変形可能に支持する支持片とが設けられている。このため、一対の挟持片の間にワークが挿入されると、一対の挟持片の間隔が僅かに広がるとともに、ワークを挟持する方向に弾性力が作用し、ひいてはワークを側方から押圧した状態で保持することが可能になる。特に、本発明では、複数枚の挟持板を積層して構成しており、しかも夫々の挟持片が個々に弾性変形可能であるため、たとえワークが湾曲した形状であったり、ワークの表面に凹凸があっても、全ての挟持片をワークの側面に確実に圧接させ、強固に保持することが可能になる。つまり、一個あたりの挟持片の押圧力が比較的弱い場合でも、その力を加え合せることにより、極めて強い保持力を発生させる。また、換言すれば、夫々の挟持片における押圧力が小さくなることから、ワークに与える影響が少なくワークの変形等を防止することができる。
【0017】
また、夫々の挟持片が別々に弾性変形することから、保持ユニットで保持されたワークが、保持ユニットに対して略垂直方向に引張られ、端部側に配置された挟持板における挟持片が離間する方向に変位しても、残りの挟持板における挟持片は変位することなく、ワークを押圧し続ける。したがって、運搬中に、ワークに引張り力が加わってもワークが保持ユニットから抜けることを防止できる。
【0018】
また、本発明のワーク保持具において、「前記挟持板は、前記支持片を固定するとともに前記複数の挟持板の連結部分となるベース部をさらに備え、
前記記挟持片、前記支持片、及び前記ベース部を一体成形してなる」ように構成してもよい。
【0019】
これによれば、夫々の挟持板は、挟持片、支持片、及びベース部を一体成形して構成されているため、夫々の部材同士を接続する構造が不要となり、挟持板の厚みを比較的薄く形成することが可能になる。また、支持片を固定するためのベース部を用いて複数の挟持板を連結することから、積層された状態で一体的に構成されているにも拘らず、支持片から延出される挟持片を、個々に弾性変形させることが可能である。
【0020】
また、本発明のワーク保持具において、「夫々の前記挟持片における前記支持片側の部位には、相反方向に膨らむ略半円状の膨出部が形成され、
一対の該膨出部の間に嵌挿され、一対の前記挟持片の間隔を変化させる開閉ピンをさらに備え、
該開閉ピンは、前記保持ユニットにおける積層方向の長さの約二倍以上の長さを有し、長手方向の一方の側に直径の大きな径大部が形成され、長手方向の他方の側に前記径大部よりも直径の小さな径小部が形成されている」ように構成してもよい。
【0021】
これによれば、一対の挟持片に、相反方向に膨らむ半円状の膨出部が形成されており、対向する膨出部の間に、一対の挟持片を強制的に開閉させる開閉ピンが挿入されている。この開閉ピンは、保持ユニットにおける積層方向の長さの、約二倍以上の長さを有し、特に、長手方向の一方側には直径の大きな径大部、他方の側には径大部よりも直径の小さな径小部が形成されている。なお、径大部と径小部との境界部分に、直径が滑らかに変化するようにテーパーを形成するようにしてもよい。そして、径大部の直径は、一対の膨出部の間に挿入された際に、一対の挟持片の間隔を広げることが可能な大きさに設定され、一方、径小部の直径は、一対の膨出部の間に挿入させても、間隔を広げることのない大きさに設定されている。このため、径小部が一対の膨出部の間に位置した状態では、一対の挟持片が閉じられた状態となり、ワークを挟持することが可能になる。一方、開閉ピンを長手方向に摺動させることによって、径大部が一対の膨出部の間に位置した状態では、一対の挟持片の間隔が広がり、一対の挟持片の間にワークを容易に挿入したり、逆にワークを容易に取出したりすることが可能になる。特に、開閉ピンにおける長手方向の移動のみによって、挟持片の間隔を変化させることができるため、保持ユニットを大型化することなくワークの着脱を容易に行わせることが可能になる。
【0022】
また、本発明のワーク保持具において、「複数の前記保持ユニットが、前記挟持板の積層方向に対して垂直となる方向に並設されている」ように構成してもよい。
【0023】
これによれば、複数の保持ユニットが一列に並んだ状態で配置されているため、複数のワークを並列状態で保持することが可能になる。特に、上記の「開閉ピン」を採用した場合には、開閉ピンの長手方向(すなわち挟持板の積層方向)に対して垂直となる方向に沿って配設されることから、全体の長さを比較的短くすることができ、小型化を図ることが可能となる。また、比較的短い間隔で複数のワークを並行状態に保持することが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
このように、本発明のワーク保持具によれば、駆動源等を備えることなく簡易で小形に構成できるため、ワークを保持したまま持ち運ぶことができる。また、複数枚の挟持板を積層して構成しているため、全ての挟持片をワークの側面に確実に圧接させ、強固に保持することができる。また、夫々の挟持片における押圧力が小さくなることから、ワークに与える影響が少なくワークの変形等を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態である電線保持具を電線処理システムに適用した例について、図1乃至図14に基づき説明する。図1は電線処理システムの概略構成を示す模式であり、図2は図1における要部の拡大図であり、図3は電線供給装置の最下部に配置された回転式供給ユニットの構成を示す平面図であり、図4は電線供給装置の構成を示す正面図であり、図5は電線供給装置における受箱部とカセット式電線繰出し部との構成を示す分解斜視図であり、図6はカセット式電線繰出し部の構成を示す平面図である。また、図7は電線保持具がセットされた電線受取りユニットを示す縦断面図であり、図8は電線保持具の構成を示す斜視図であり、図9は電線保持具における要部の構成を示す拡大斜視図であり、図10は電線保持具の開放状態及び使用状態を示す拡大斜視図である。また、図11は端子圧着装置の概略構成を示す模式図であり、図12は端子圧着装置におけるアプリケータの構成を示す正面図であり、図13は端子圧着装置における機能的構成を示すブロック図であり、図14は電線供給装置における機能的構成を示すブロック図である。
【0026】
図1に示すように、電線処理システム1は、予め入力されたデータに基づいて複数の種類の電線の中から選択された電線を供給することが可能な電線供給装置2と、電線の端部の被覆材を除去するとともにその端部に端子を圧着する複数の端子圧着装置3を備えた圧着システム4と、電線供給装置2から繰出された電線を受取り所定の配列に保持したまま持ち運び可能とする電線保持具5と、電線供給装置2に対して電線保持具5を摺動可能に支持する電線受取りユニット6と、を具備して構成されている。ここで、電線保持具5が本発明のワーク保持具に相当する。また、電線が本発明のワークに相当する。
【0027】
まず、電線供給装置2について詳細に説明する。電線供給装置2は、図3及び図4に示すように、平面視が横長の八角形である金属製の架台枠100内に収容されており、主に、電線供給積層体101と、電線供給積層体101を昇降させる昇降装置102と、架台枠100の底面中央から立設された支持枠部材103と、を具備する供給装置本体105から構成されている。電線供給積層体101は、複数の回転式供給ユニット106を所定の間隔で上下方向に積層したものであり、直方体形状の支持枠部材103を囲むように設けられている。
【0028】
回転式供給ユニット106について詳細に説明する。図3に示すように、この回転式供給ユニット106は、枠状の内側載置面108及び格子状の外側載置面109からなる板状の載置板110と、外側載置面109上に載置された複数の受箱部111と、内側載置面108上に載置され受箱部111を可動させる駆動機構112とを備えている。駆動機構112は、外側載置面109の外縁に沿ってループ状に配列された複数の受箱部111を、ループ状を維持したまま旋回させるとともに、複数の受箱部111の中から選択された一つの受箱部111を所定の取出位置、例えば、図2においては「A」位置まで移動させるものである。詳しく説明すると、電線供給装置2は、夫々の受箱部111における挿入口113(詳細は後述する)が所定の回転軸心を中心として遠心方向を向くように、複数の受箱部111を外側載置面109に沿って放射状に配列しており、選択された所定の受箱部111が取出位置Aに位置するように、放射状を維持したまま水平面上で回転させる構成となっている。具体的に、駆動機構112は、水平面に沿って配設された四つのスプロケット114と、それらのスプロケット114に巻き掛けられた無端のチェーン115と、いずれか一つのスプロケット114を介してチェーン115に回転力を付与するモータ116とを有している。なお、モータ116の回転軸117と一つのスプロケット114とが無端のベルト118によって連結されており、モータ116の回転力がベルト118を介してチェーン115に伝達されるようになっている。
【0029】
なお、夫々の受箱部111は、連結金具119を介してチェーン115に連結されている。図示しないが、チェーン115は、一対のローラと、これらのローラを夫々ピンを介して回転可能に支持する外側リンクと、これらを互いに連結する内側リンクとからなる、一般的なローラチェーンが使用されている。連結金具119は、チェーン115の外側から嵌合された断面略コ字形の部材からなり、チェーン115における複数のローラを上下から挟むように取付けられている。このように、複数のローラにわたって連結金具119を取付けることから、受箱部111が接続される部分は、スプロケット114に螺合させながらも直線状に保持され、受箱部111を安定して支持させることを可能にしている。つまり、受箱部111を回転させる際に、受箱部111が連結金具119を中心に振れたり、傾いたりすることを防止している。なお、連結金具119がスプロケット114の周囲に位置した状態(すなわち駆動機構112の四隅に位置した状態)と、スプロケット114から離れた状態とでは、チェーン115における全周の長さが僅かに変化する場合があるが、本例では、スプロケット114を水平方向に摺動可能に支持するとともに、そのスプロケット114を外側に向って付勢する長さ調節機構(図示しない)を備えており、チェーン115の長さに拘らず、チェーン115に適度のテンションを加えている。
【0030】
また、内側載置面108には、チェーン115の内周面に接するように、複数のチェーン受けローラ120が所定間隔で配置されており、チェーン受けローラ120は鉛直方向を軸方向として夫々回転するようになっている。つまり、受箱部111にカセット式電線繰出し部121(後述する)を挿入する際でも、このチェーン受けローラ120によって、チェーン115の撓みを防止している。また、内側載置面108には、複数の回転式供給ユニット106を所定の間隔で積層するために、複数のスペーサ122が、内側載置面108の内周縁に沿って所定の間隔で配置されている。このスペーサ122は、内側載置面108の上面から立設されており、受箱部111の高さよりも高く形成されることにより、受箱部111の上面と、その上段の回転式供給ユニット106における載置板110とが当接しないようになっている。
【0031】
一方、図4に示すように、昇降装置102は、載置板110を貫通するとともに載置板110に固定された四つの軸受部123と、夫々の軸受部123に螺合され回転によって軸受部123を昇降させることが可能な四本の送りネジ部124と、これらの送りネジ部124を任意の方向に回転させる一対のモータ125とを具備して構成されている。なお、送りネジ部124は、上端が支持枠部材103の上面に取付板126を介して支持され、下端は架台枠100の底板127を貫通して支持されている。なお、図示しないが、底板127を貫通する送りネジ部124の下端にはプーリが嵌着されており、底板127を貫通するモータ125の回転軸と無端のベルトによって連結されている。このため、二つのモータ125が動作すると、ベルトを介して四本の送りネジ部124が同一速度で同一方向に回転し、軸受部123が取付けられた載置板110を昇降させる。なお、軸受部123が設けられている回転式供給ユニット106は、電線供給積層体101の最下段に配置された回転式供給ユニット106のみであり、その他の回転式供給ユニット106には、送りネジ部124が挿通する貫通孔(図示しない)が穿設されている。つまり、昇降装置102によって駆動力が付与されるのは最下段の回転式供給ユニット106のみであり、その回転式供給ユニット106が昇降すると、その上に積層された全ての回転式供給ユニット106、すなわち電線供給積層体101全体が一体的に上下方向に移動するようになっている。
【0032】
図5及び図6に示すように、受箱部111は、略直方体形状を呈する筒状の部材であり、一端側の側面にはカセット式電線繰出し部121を挿入させるための挿入口113が設けられている。また、受箱部111の挿入口113側には、固定部131を支点として外方に弾性変形可能な係止部材132が設けられており、弾性力に抗して係止部材132を手で外方に撓ませることによりカセット式電線繰出し部121の挿脱が可能となり、カセット式電線繰出し部121を受箱部111内に挿入した後、係止部材132から手を離すと、係止部材132は弾性力によって元の状態に戻り、先端の爪部133によって受箱部111からカセット式電線繰出し部121(以下、単に「カセット部121」と称す)が脱離することが防止されるようになっている。
【0033】
また、受箱部111の内底面には、カセット部121の挿入位置を規制するストッパー134が突設されている。このストッパー134は、略G字形の部材であり、端部側135のみが固定され、一端が切欠かれた中央側の片部136は挿脱方向に対して弾性変形可能となっている。つまり、受箱部111内にカセット部121が挿入されると、その端部が片部136に当接し、片部136を弾性変形させた状態、すなわちカセット部121を挿入口113側に向って押圧した状態となる。なお、この際、カセット部121の先端は係止部材132によって係止されるため、受箱部111が挿入口113から飛び出すことはなく、カセット部121の先端が挿入口113に一致した状態で保持される。一方、解除操作によって係止部材132が弾性変形すると、係止部材132の係止状態が解消され、カセット部121はストッパー134における片部136の弾性力によって挿入口113から押し出される。これにより、カセット部121を容易に引き出しことが可能になる。
【0034】
また、受箱部111の底面には、複数のローラ130(図4参照)が転動可能に設けられており、複数の受箱部111を載置板110上で滑らかに移動させることが可能となっている。
【0035】
一方、カセット部121は、図5及び図6に示すように、底板138とその両側から立設された一対の側面板139とを有する断面略コ字形のケース部140と、一対の側面板139の上面に架け渡され、電線Lが巻かれた電線ドラム142を回動可能に支持するドラム支持部141とを具備して構成されている。なお、電線ドラム142の大きさは特に限定されるものではないが、本例では、直径が約15〜20cmで、幅が約5〜10cmである比較的小型のドラムが用いられている。
【0036】
また、図6に示すように、カセット部121は、電線ドラム142に圧接し電線ドラム142の回転を制動する制動部材143と、電線Lを繰出す際、電線ドラム142に対する制動部材143の圧接状態を解除する制動解除機構144とを具備している。具体的には、制動部材143は、電線ドラム142に圧接し電線ドラム142との間で摩擦力を発生させる圧接部145を備えている。圧接部145は、全体的に逆U字形の形状を呈した板バネ状の部材からなり、一端側が取付部材146を介して底板138に固定され、他端側が側面板139に沿って延出された操作杆147に連結されている。操作杆147は、長手方向に摺動可能な状態で支持されており、圧接部145が電線ドラム142に当接する位置(制動位置)と、電線ドラム142から離れる位置(解除位置)との間でスライドさせることが可能になっている。また、一定方向(圧接部145が電線ドラム142に圧接する方向)に付勢する弾性体(図示しない)が取付けられている。
【0037】
制動解除機構144は、操作杆147上で回動可能に支持された可動ローラ148から構成されている。そして、電線ドラム142から延出された電線Lは、可動ローラ148を経由してガイドローラ149に掛けられているため、電線Lをカセット部121から繰出す際、電線Lに引張り力が作用すると、可動ローラ148には電線ドラム142側に向う力が作用し、その力によって操作杆147は、弾性体の弾性力に抗して変位することとなる。つまり、電線Lを繰出す際の引張り力が所定量よりも大きくなると、操作杆147が変位して圧接部145によるロック状態が解除される。換言すれば、電線Lの繰出し操作が行われるまでは、制動状態が維持され電線ドラム142の回転が防止されるが、電線Lの繰出し操作が行われると、制動状態が解除され電線ドラム142の回転負荷が軽くなる。
【0038】
また、カセット部121には、ケース部140内に、ガイドローラ149と癖取り部150とが設けられている。癖取り部150は複数のローラを組合せてなり、夫々のローラ間で張力を作用させることにより、電線Lのねじり癖や曲がり癖を矯正している。また、ケース部140には、電線ドラム142に巻かれた電線Lをケース部140の先端部分から一定方向に繰出させる電線ガイド部151が設けられている。この電線ガイド部151は円錐筒状であり、先端から真直ぐに電線Lを突出させることが可能となっている。
【0039】
さらに、カセット部121におけるケース部140の先端側(図6では上端側)には、カセット部121を持ち運ぶ際に把持される円柱状の把持部152が設けられ、把持部152の表面には、夫々のカセット部121に付与された識別番号を記憶したバーコード153が貼着されている。このバーコード153に記憶された識別番号は、電線Lの種別に関する情報、具体的には、夫々の電線ドラム142に巻かれた電線の色、電線の径、及び被覆材の材質と、対応付けられており、後述する情報読出制御手段154(具体的にはバーコードリーダー)によって識別番号を読出すことにより、電線Lの種別に関する情報を認識することが可能となっている。なお、バーコード153の代りにICチップを設け、電線Lの種別に関する情報を書込み及び読出し可能に記憶させるようにしてもよい。なお、ICチップでは、高周波などの電波を受信すると、その電波を電気に変換して蓄え、その電力が所定量に達すると、ICチップの記憶部に情報を書込んだり、情報を発信したりすることが可能になる。
【0040】
一方、図2に示すように、電線供給装置2には、所定の取出位置に配置された電線ドラム142から電線を引張って繰出させる電線繰出機構157が設けられている。電線繰出機構157は、送り機構本体158とガイドユニット159とを具備して構成されている。送り機構本体158は、所定の取出位置Aとガイドユニット159との間に配置されるとともに、矢印Yの方向に摺動可能に支持された可動ベース板160と、可動ベース板160を駆動させる動力源(図示しない)と、可動ベース板160上で鉛直方向の軸を中心として回転する一対の送りローラ161とを備えている。なお、一対の送りローラ161は、所定距離離間して配置され、電線Lを挟持しながら繰出させるものである。また、一対の送りローラ161は、互いに接近および離反するように移動可能とされ、離反させることにより一対の送りローラ161の間に電線Lを挿脱させることが可能になり、接近させて回転させることにより電線Lを繰出させることが可能になる。
【0041】
また、可動ベース板160には、一対の第二切断刃162が配設されており、繰出された電線Lを切断するようになっている。これによれば、電線供給装置2から繰出された電線Lを根元側である電線供給装置2内で切断することにより、電線Lを交換する場合でも、既に繰出されている電線Lを電線ドラム142に巻き戻す等の処理が不要となり、カセット部121内での構成を簡素化することが可能である。
【0042】
また、可動ベース板160には、電線Lの先端位置を検出する先端検出センサ163が設けられており、この先端検出センサ163で電線Lが検出された時点を基準として、繰出される電線Lが測長されるようになっている。
【0043】
さらに、可動ベース板160の先端面には、取出位置Aのカセット部121に向って突出した突起部が形成されており、その先端部分に位置決めローラ164が回転可能に支持されている。この位置決めローラ164は、可動ベース板160をカセット部121側に摺動させた際に、ケース部140の底板138に形成された略三角形状の切り欠165(図9参照)内に挿入されるものであり、取出位置Aにおけるカセット部121を、位置決めローラ164を基準とした正規の位置までスライドさせることにより、カセット部121から突出する電線Lを、一対の送りローラ161に対向させることが可能になる。なお、切り欠165に位置決めローラ164が挿入された状態では、受箱部111の位置も固定されることから、位置決めローラ164は受箱部111の回転止めとしても機能している。
【0044】
ところで、詳細は後述するが、電線供給装置2の筐体前面には、表示盤170(図1参照)が配設されており、電線供給装置2から繰出される電線に対応する端子圧着装置3の識別番号が表示されるようになっている。
【0045】
次に、圧着システム4について詳細に説明する。圧着システム4は、図1に示すように、コ字形または直線上に並設された複数台の端子圧着装置3から構成されており、それらの前方には、作業者が圧着操作及び移動することが可能なスペースが確保されている。本実施形態の端子圧着装置3は、圧着端子の供給、電線Lの送込み、被覆材の除去、圧着端子の圧潰、及び電線Lの切断を一連の動作として行い、圧着端子が圧着された所定長さの電線Lを連続して生成するものである。この端子圧着装置1は、図11に示すように、電線Lの先端側に圧着端子を圧着させる圧着機本体202と、電線Lの先端側を圧着機本体202に送り込む電線送り機構203と、圧着機本体202及び電線送り機構203の間に配設され、電線Lを切断するとともに電線Lの端部の被覆材を除去する切断機構204とを備えている。
【0046】
圧着機本体202は、図12に示すように、電線の先端または後端に圧着端子を圧着するアプリケータ205を備えている。アプリケータ205は、上下方向への往復運動により圧着端子を押圧する上側ユニット206と、新たな圧着端子を順次供給するとともに供給された圧着端子を保持する下側ユニット207とから構成されている。上側ユニット206及び下側ユニット207は、互いに分離されており、個々に交換可能な状態で取付けられている。なお、上側ユニット206と下側ユニット207との間には空間が形成されているため、紙面手前側から紙面後方側に向って電線Lを送ることが可能である。
【0047】
上側ユニット206は、動力機構(図示しない)と、動力機構の動作により上下運動するスライド部材(図示しない)と、スライド部材に連結された昇降部材211と、昇降部材211の先端に取付けられ圧着端子を押圧する押圧部材212とを具備している。スライド部材は、圧着機本体202に固定された支持部材(図示しない)によって左右両端を支持され、上下方向にのみ摺動可能となっている。
【0048】
動力機構は、図示しないが、電動機でクランク軸を回転させることにより、スライド部材を摺動させるものである。スライド部材の上部側中央には、左右方向に延びる長孔状のガイド孔が穿設されており、ガイド孔には、高さがガイド孔に略等しい砲金からなる摺動部材が、平行移動可能に嵌め込まれている。また、摺動部材は、電動機の駆動軸に連結されたクランク軸の端部に回動可能に軸支されている。
【0049】
また、スライド部材の下部には、昇降部材211を着脱可能に取り付けるための取付突部(図示しない)が、表面から突出して形成されている。これに対し、昇降部材211には、四角筒状の連結部224が設けられており、連結部224内に取付突部が嵌挿され、ボルト等の締結手段(図示しない)によって互いに連結されるようになっている。連結部224の下方には、調整機構225を介して押圧部材212が取付けられている。
【0050】
調整機構225は、ステッピングモータ等を有し、ステッピングモータの駆動軸の回転方向、及び回転角度を所定の範囲内で自在に数値制御することにより、押圧部材212の移動量(すなわち下方への突出長さ)を調整する。すなわち、この調整機構225により、押圧部材212の先端と後述するアンビルとの距離が調整されるようになっている。なお、調整部材225には、移動量を設定するための調整ダイヤル226が設けられており、手動での調整を可能にしている。
【0051】
一方、下側ユニット207は、図12に示すように、圧着機本体202に形成された取付突部230に対して着脱可能な四角筒状の連結部231と、連結部231に固定され上面にアンビル232が形成された基台233と、連結部231の上方に位置するとともに水平方向に延出された端子搬送手段234とを具備している。なお、アンビル232が形成された基台233は、押圧部材212の下方に配置される。
【0052】
端子搬送手段234は、板状のキャリアによって一連に繋がれた圧着端子(図示しない)を基台233のアンビル232上に順次供給するものであり、ベース部材240と、ベース部材240の上面に形成された溝状のガイド部241と、ガイド部241の開口部分を部分的に塞ぎキャリアの逸脱を防止する逸脱防止機構242と、キャリアによって繋がれた複数の圧着端子を移送させる移送機構243とから構成されている。
【0053】
一方、電線送り機構203は、図11に示すように、電線取込みガイド270、一対のローラ271、及びガイドパイプ272等から構成されている。なお、ローラ271がローラ駆動手段(図示しない)により駆動され、回転方向及び回転数を制御することにより、電線Lを任意の長さだけ送ることを可能にしている。電線取込みガイド270を介して取込まれた電線Lは、ローラ271により、ガイドパイプ272内に送り込まれ、さらにガイドパイプ272の先端へと導かれる。ガイドパイプ272の先端には、切断機構204が配設されており、ローラ271により電線Lを送り込むと、戦線Lの先端が切断機構204の上刃と下刃との間に挿入される。
【0054】
また、図示しないが、切断機構204は、電線Lの切断や、電線Lの端部の被覆材を除去するものであり、上下方向に配設された一対の切断刃(上刃及び下刃)と、上刃を下刃に対して上下方向に移動させる移動手段(図示しない)とを備えている。つまり、上刃と下刃との間に電線Lを挿入した状態で、上刃が下刃に当接するように移動手段を動作させることにより、電線Lが切断される。また、電線Lの端部が所定長さ突出するように、上刃と下刃との間に電線Lを挿入した状態で、上刃と下刃との間隔が電線Lの芯線の大きさに対応した距離になるように移動手段を動作させ、続いて電線送り機構203によって電線Lを引っ張ることにより、電線Lの端部の被覆材が除去される。
【0055】
このように圧着機本体202は、圧着端子が、端子搬送手段234によってアンビル232上に送られ、その後、電線Lの先端がアンビル232上の圧着端子に送り込まれると、動力機構を動作しスライド部材及び昇降部材211を下死点側へ変位させ、押圧部材212とアンビル232との間で圧着端子を圧潰する。また、この際、切断部(図示しない)によって、圧潰される圧着端子がキャリアから切り離される。そして、圧着端子が圧着された電線Lは、電線送り機構203によってさらに直線状に送られる。
【0056】
ところで、夫々の端子圧着装置3では、アプリケータ205、及び端子搬送手段234によって送られる圧着端子が、互いに異なるように個別に設定されている。つまり、圧着システム4には、複数の種類のアプリケータ205と複数の種類の圧着端子とを組合せた、複数の端子圧着装置3が並設されている。このため、多品種少量生産によりコネクタや電線の種類が頻繁に変化しても、アプリケータ205や圧着端子を交換することなく、夫々の電線の先端または後端に圧着端子を圧着させることが可能になる。なお、図1に示すように、夫々の端子圧着装置3には識別番号(例えば「1」〜「100」)が付与されており、識別番号によって夫々の端子圧着装置3を区別することが可能になっている。
【0057】
また、図1に示すように、夫々の端子圧着装置3には、情報表示装置250が配置されており、電線供給装置2から送信された情報(詳細は後述する)が個別に表示されるようになっている。また、夫々の端子圧着装置3には、ランプ251が設けられており、電線供給装置2から圧着処理を行うことが指示された場合、すなわち、端子圧着装置3から繰出された電線の処理先として特定された場合に点灯するようになっている。さらに、夫々の端子圧着装置3の前側には、複数のコネクタ(図示しない)を収容するコネクタ収容箱252が設けられており、端子圧着装置3において圧着された電線の先端を、その場でコネクタに接続させることが可能になっている。
【0058】
続いて、電線保持具5及び電線受取りユニット6について、図7〜図10に基づいて詳細に説明する。電線保持具5は、電線供給装置2から順次繰出される複数本の電線Lを順番に受け取るとともに、受け取った複数の電線Lを一列に整列させたまま持ち運ぶことを可能にするものである。電線保持具5は、図8に示すように、水平方向に延びる金属製または樹脂製の基台300と、基台300の上面に取付けられ複数の電線を並列状態に保持する多連式保持部301とから構成され、全体的に櫛状の形状を呈している。なお、この電線保持具5における長手方向の長さは、容易に持ち運ぶことが可能な大きさ、例えば20cmに設定されており、この中で20本の電線を保持することが可能になっている。
【0059】
基台300は、直方体形状の本体と、その左右側面から直角方向に突出したフランジ状の突出部305とを具備して構成され、底面には、内側面にラック307が連続して形成された溝部306が設けられている。なお、突出部305は後述する電線受取りユニット6の溝部340に挿入可能な厚みに形成されており、ラック307には後述するピニオンに噛合するように所定のピッチで形成されている。
【0060】
多連式保持部301は、図8に示すように、電線を二本ずつ保持することが可能な複数の保持ユニット301aを一列に配置してなり、夫々の保持ユニット301aは、図9に示すように、一体成形された薄板状の挟持板312を複数枚(例えば10枚)、厚み方向に積層して構成されている。なお、複数枚の挟持板312は、下部側(ベース部311)を貫通するボルト313と、それに螺合するナット314とによって締結され、一体的に組付けられている。
【0061】
夫々の挟持板312は、全て同一の形状を呈しており、基台300上に取り付けられるベース部311と、ベース部311上で互いに対峙して電線を挟持する二対の挟持片315と、ベース部311の上面の凹部内において折れ曲げられた状態で配置されるとともに、ベース部311の上面と挟持片315の下端とを繋ぎ、挟持片315を離間する方向に弾性変形可能に支持する支持片316と、挟持片315の上端から延出され、上方に向かって開口し電線の挿入をガイドする受取ガイド片317と、を具備して構成されている。なお、互いに対向する挟持片315の内面には凹凸部318が形成されており、電線が上下方向に滑動することを抑制している。また、一対の挟持片315の間隔は電線の直径よりも狭くなっている。また、ベース部311、支持片316、挟持片315、及び受取ガイド片317は、一体成形により形成されている。
【0062】
このため、一対の挟持片315の間に電線が挿入されると、一対の挟持片315の間隔が僅かに広がるとともに、電線を挟持する方向に弾性力が作用し、ひいては電線を側方から押圧した状態で保持することが可能になる。特に、本例の保持ユニット301aでは、複数枚の挟持板312を積層して構成しており、しかも夫々の挟持片315が個々に弾性変形可能であるため、たとえ電線が曲がっていたり、電線の表面に凹凸があっても、全ての挟持片315を電線の周面に確実に圧接させ、強固に保持することが可能になる。つまり、一個あたりの挟持片315の押圧力が比較的弱い場合でも、その力を電線の長手方向で加え合せることにより、極めて強い保持力を発生させる。また、逆に、夫々の挟持片315における押圧力が小さくなることから、電線に与える影響が少なく電線の変形や断線を防止することができる。
【0063】
しかも、夫々の挟持片315が別々に弾性変形することから、図10(b)に示すように、保持ユニット301aで保持された電線が、保持ユニット301aに対して略垂直方向に引張られ、端部側に配置された挟持板312における挟持片315が離間する方向に変位しても、残りの挟持板312における挟持片315は変位することなく、電線を押圧し続ける。したがって、電線保持具5を運ぶ途中で、電線に引張り力が加わっても電線が保持ユニット301aから抜けることを防止できる。
【0064】
ところで、保持ユニット301aには、挟持片315の先端側に受取ガイド片317が形成されているため、一対の挟持片315の上方から電線を差し込むことが可能であるが、差し込む際、一対の挟持片315に挟持されたまま嵌入することとなるため、被覆材の表面に傷が付く虞がある。特に、挟持片315の内面には、凹凸部318が形成されているため、傷が付き易い状況となっている。
【0065】
そこで、本例では、図9に示すように、一対の挟持片315の下部側に、相反方向に膨らむ半円状の膨出部319が形成されており、対向する膨出部319の間に、一対の挟持片315を強制的に開閉させる開閉ピン320が挿入されている。詳しく説明すると、この開閉ピン320は、保持ユニット301aにおける積層方向の長さの、約二倍の長さを有する円棒状の軸部321と、軸部321の両端に形成され開閉ピン320が膨出部319の間から抜けるのを防止する抜止め部322とから構成されている。特に、軸部321は、長手方向の中央部分から一方側と、中央部分から他方側とで直径の大きさが互いに異なっており、一方側が直径の大きな径大部321a、他方側が直径の小さな径小部321bとなっている。なお径大部321aと径小部321bとの境界部分は、直径が滑らかに変化するようにテーパーが形成されている。そして、径大部321aの直径は、一対の膨出部319の間に挿入された際に、一対の挟持片315を離間させることが可能な大きさに設定され、一方、径小部321bの直径は、一対の膨出部319の間に挿入させても、離間させることのない大きさに設定されている。このため、図9のように、径小部321bが一対の膨出部319の間に位置した状態では、一対の挟持片315が閉じられた状態となり、電線を挟持することが可能になる。一方、開閉ピン320の突出側を押圧操作することによって、径大部321aが一対の膨出部319の間に位置した状態では、図10(a)に示すように、一対の挟持片315が広がり、上方から電線を容易に挿入したり、圧着処理の終わった電線を容易に取出したりすることが可能になる。特に、開閉ピン320における軸方向の移動のみによって、挟持片315を開閉させることができるため、保持ユニット301aを大型化することなく電線の着脱を容易に行わせることができる。
【0066】
なお、挟持片315を開閉させるにあたって、開閉ピン320の切替えを手動で行わせるようにしてもよいが、本例では、電線保持具5を、電線受取りユニット6または所定の部材に固定した状態で、並設する複数の開閉ピン320の一端側から、シリンダー等の駆動手段(図示しない)を用いて一斉に押圧するようにしている。つまり、複数の開閉ピン320に対して同時に当接可能な直方体形状の押圧部材(図示しない)と、その押圧部材を変位させる駆動手段とを備えており、押圧部材を開閉ピン320の長手方向に押圧することにより、全ての開閉ピン320を同時に変位させるようにしている。これによれば、全ての挟持片315を同時に且つ速やかに開閉させることができ、作業効率を一層向上させることができるとともに、作業者の負担を軽減することができる。
【0067】
一方、電線受取りユニット6は、図7に示すように、電線保持具5を支持するとともに、電線供給装置2に対して電線保持具5を水平方向に、所定の距離(詳しくは並設する一対の挟持片315のピッチ)ずつ移動させるものである。具体的には、電線保持具5の突出部305が挿入される溝部340を内側壁面に有し、電線保持具5を長手方向に摺動可能に支持する支持レール341と、支持レール341に支持された電線保持具5に対し進行方向に動力を付与する駆動機構345と、駆動機構345を制御する制御手段(図示しない)とを具備して構成されている。なお、駆動機構345には、電線保持具5に形成されたラック307と噛合する複数のピニオン342、及び夫々のピニオン342に回転力を付与するステッピングモータ等の駆動源(図示しない)が備えられており、ピニオン342を回転させることにより、電線保持具5を直線上で一方向に移動させることを可能にしている。なお、電線保持具5の移動量を認識する移動量認識手段(図示しない)が設けられており、電線供給装置2から電線が供給されるごとに、一定のピッチずつ移動するように、駆動源の回転制御が行われている。このため、電線保持具5に設けられた複数組の挟持片315に対し、一端側から他端側に向かって順に電線を挿入することが可能になり、複数の電線が繰出された順序で並列に並べられることとなる。なお、ピニオン342としては、電線保持具5の進行方向に沿って配列された少なくとも三つのピニオン342を備えており、上流側のピニオン342は搬入用として動作し、下流側のピニオン342は搬出用として動作し、中央のピニオン342がステップ送り用として動作している。また、夫々のピニオン342が回転しているか否かを判定する回転判定手段(図示しない)を備えており、停止状態から回転状態に変化した際に、電線保持具5がそのピニオン342の部位まで到達したと認定している。つまり、複数の電線が挿入された電線保持具5が、排出用のピニオン342によって排出されたことが検出されると、待機中の電線保持具5が、搬入用のピニオン342によってステップ送り用のピニオン342に送り込まれるとともに、その送り用ピニオン342の回転によって、電線保持具5の初期位置が認識され、所定のピッチずつ送られるように制御がなされる。
【0068】
また、夫々の電線保持具5には、互いに異なる識別情報が付与されており、その識別情報が、識別情報記憶手段350(図8参照)によって読み出し可能な状態で記憶されている。なお、識別情報記憶手段350としては、バーコードやICチップを例示することができる。
【0069】
続いて、電線処理システム1の制御装置における機能的構成を、図13及び図14のブロック図を基に説明する。図14に示すように、電線供給装置2の制御装置は、予め電線の種類(径,長さ,材質,色等)、及び圧着端子の種類等の加工情報を入力する情報入力手段171と、情報入力手段171によって入力された加工情報、及び予め記憶された加工条件等に基づいて加工処理情報を出力する加工処理指令手段172と、加工処理指令手段172の出力に基づいて電線の供給を制御する電線供給制御手段173とを有している。ここで、加工処理指令手段172及び電線供給制御手段173は、演算及び制御を行う中央情報処理装置(CPU)と、読み出し専用メモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)からなる補助記憶装置とを備えており、予め入力されたプログラムに従って、指定された電線を順に繰出させる。
【0070】
電線供給制御手段173は、回転位置制御手段175によってモータ116を駆動するとともに、昇降位置制御手段177によってモータ125を駆動し、選択された受箱部111が所定の取出位置に位置するように制御する。なお、特定された受箱部111が、取出位置に対向する回転式供給ユニット106に含まれている場合には、モータ125を駆動させることなく(すなわち電線供給積層体101を昇降させることなく)、モータ116のみを駆動し、受箱部111が含まれる回転式供給ユニット106を回転させる。また、選択された受箱部111と取出位置との高さのみが異なる場合には、モータ116を駆動させることなく(すなわち回転式供給ユニット106を回転させることなく)、モータ125のみを駆動し、受箱部111が含まれる回転式供給ユニット106を取出位置に対向する高さまで昇降させる。
【0071】
なお、モータ116は正転及び反転が可能であり、現在取出位置に位置する受箱部111と、選択された受箱部111との位置関係を基に回転方向を決定する。すなわち、回転角度が少なくなるように回転方向を決定する。なお、各受箱部111の位置はモータ116及びモータ125の回転量を検出するエンコーダ(図示しない)によって認識されるようになっている。
【0072】
また、電線供給装置2には、カセット部121のケース部140に取付けられたバーコード153から識別番号を読出す情報読出手段(バーコードリーダを有する)が設けられており、取出位置の受箱部111に収容されている電線ドラム142(または電線)に関しての情報(具体的には電線の色、電線の径、及び被覆材の材質、さらには電線ドラム142に巻かれた電線Lの初期長さ)を、バーコード153に記録された識別番号と、その識別番号に対応付けて予め記憶されている情報とを基に取得する。なお、電線ドラム142に関する情報は、電線ドラム142に電線が巻かれる毎に、識別番号と対応づけて記憶させるようにしてもよいが、電線Lの初期長さのみが毎回変化し、その他の情報が一定の場合には(すなわち、夫々のカセット部121に収容される電線Lの種類が変化しない場合には)、電線Lの初期長さに関する情報のみを更新するようにしてもよい。
【0073】
また、電線供給装置2には、送りローラ161を回転させるモータ202(ステッピングモータ)を駆動し電線Lの繰出しを制御する電線送り制御手段179と、第二切断刃162を駆動して電線Lを切断する切断制御手段183とが備えられている。
【0074】
また、電線供給装置2には、電線供給装置2から順次繰出された電線、すなわち電線保持具5に保持された複数の電線に対し、夫々の圧着処理に用いられる端子圧着装置3を、圧着システム4に備えられた複数の端子圧着装置3の中から、加工処理指令手段172の出力に基づいて特定する圧着装置特定手段187を備えている。そして、圧着装置特定手段187の出力は送信制御手段190に送られ、特定された端子圧着装置3に対し、特定されたことを示す情報を通知する。なお、電線保持具5に保持された夫々の電線に対応する端子圧着装置3が互いに異なる場合には、複数の端子圧着装置3が特定されることになるが、この場合、特定された全ての端子圧着装置3に対し同時に通知することは行わず、最初に圧着処理が行われる端子圧着装置3、すなわち最初に送り込まれた電線に対応する端子圧着装置3に対してのみ通知を行い、その後、その端子圧着装置3において圧着処理が終了したことを示す情報が端子圧着装置3から送信された時に、次に圧着処理が行われる端子圧着装置3に対して通知を行う。つまり、圧着加工が終了する毎に、順に通知を行うように制御される。
【0075】
また、電線供給装置2には、圧着装置特定手段187によって特定された端子圧着装置3の識別番号を、電線保持具5の持ち運び先として表示する誘導制御手段185が備えられている。なお、最初に圧着処理が行われる端子圧着装置3の識別番号(以下、「最初の識別番号」という)は、電線供給装置2に設けた表示盤170において表示され、二番目以降に圧着処理が行われる端子圧着装置3の識別番号(以下、「二番目以降の識別番号」という)は、送信制御手段190によって端子圧着装置3に送信され、圧着処理が終了した端子圧着装置3の情報表示装置250において表示されるようになっている。具体的に図1に基づき説明すると、電線保持具5によって保持された複数の電線に対応する端子圧着装置3が、圧着装置特定手段187によって、「31」,「66」,「86」…と特定された場合、まず、表示盤170に最初の識別番号である「31」を表示する。これにより、作業者はそれらの電線が保持された電線保持具5を持って31番の端子圧着装置3に向かい、電線保持具5に保持された複数の電線の中から一番端の電線の先端に圧着端子を圧着することとなる。31番の端子圧着装置3による圧着処理が終了すると、次に圧着処理が行われる66番の端子圧着装置3の識別番号「66」を、31番の端子圧着装置3に設けられた情報表示装置25に表示する。このため、作業者はその電線保持具5を持ったまま66番の端子圧着装置3に向かい、電線保持具5に保持された複数の電線の中から二番目の電線に圧着端子を圧着することとなる。また、同様に、66番の端子圧着装置3による圧着処理が終了すると、その次に圧着処理が行われる86番の端子圧着装置3の識別番号「86」を、66番の端子圧着装置3に設けられた情報表示装置25に表示する。このように、最初は電線供給装置2側において移動先が表示され、その後は圧着処理が終了する毎にその場で移動先が表示されるため、圧着処理を行うべき端子圧着装置3を間違えることなく認識でき、速やかに移動することが可能になる。
【0076】
また、電線供給装置2には、圧着端子の接続先であるコネクタの種類及びピン番号を含むコネクタ情報を、電線保持具5に供給された電線に対応付けて送信するコネクタ情報送信手段188を備えている。さらに、電線供給装置2には、電線保持具5の識別情報記憶手段350に記憶されている識別情報を読取って認識する第一識別情報認識手段189が備えられている。コネクタ特定手段188及び第一識別情報認識手段189の出力も送信制御手段190に送られ、特定された端子圧着装置3に送信される。
【0077】
一方、図13に示すように、夫々の端子圧着装置3は、運転制御手段271を備えている。運転制御手段271は、演算及び制御を行う中央情報処理装置(CPU)と、読み出し専用メモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)からなる補助記憶装置とを備えており、予め入力されたプログラムに従って、一連の圧着処理を行う。
【0078】
運転制御手段170の出力ポートには、動力機構制御部273、電線搬送制御部275、及び電線切断制御部276が接続されている。動力機構制御部273は、圧着機構206の動力部を制御するものであり、運転制御手段271の出力に基づいて、圧着機構206の電動機272を駆動する。電線搬送制御部275は、電線送込み機構209を制御するものであり、運転制御手段271の出力に基づいて、ローラ駆動手段274を駆動する。また、電線切断制御部276は、運転制御手段271の出力に基づいて切断機構208を制御し、電線Lの切断、または被覆材の除去を行う。
【0079】
また、運転制御手段271には、送受信制御手段279が接続されている。送受信制御手段279は、電線供給装置2に備えられた送信制御手段190と双方向の通信を行うものである。
【0080】
また、端子圧着装置3には、電線供給装置2の送信制御手段190から送信された識別情報、すなわち電線供給装置2において読取られた電線保持具5の識別情報を受信する識別情報受信手段280と、端子圧着装置3の近傍に位置する電線保持具5から識別情報を直接読取って認識する第二識別情報認識手段281とが備えられている。また、第二識別情報認識手段281によって認識された識別情報と識別情報受信手段280によって受信した識別情報とが一致しているか否かを判定し、一致している場合にのみ、運転制御手段271に信号を出力しアプリケータ205による圧着処理を許可する圧着処理許可手段282も備えられている。つまり、端子圧着装置3では、持ち運ばれた電線保持具5の識別情報を直接読取るとともに、その識別情報と、受信によって把握した識別情報とが一致しているか否かを判定し、一致していると判定された場合にのみ、圧着処理を許可する。
【0081】
また、端子圧着装置3には、圧着情報認識手段284及びコネクタ情報認識手段283が備えられている。圧着情報認識手段284は、送信制御手段190から送信された圧着情報、すなわち特定された端子圧着装置3であることを示す通知と、次に圧着処理を行う端子圧着装置3の識別番号、とを読取る。そして、特定された(選択された)端子圧着装置3であることを認識した場合には、ランプ制御手段285によってランプ252を点灯させ、圧着処理を行うべき端子圧着装置3であることを作業者に報知する。このため、遊技者は、案内された識別番号の端子圧着装置3を一層速やかに見つけることができるとともに、間違った端子圧着装置3へ向かうことを抑制できる。また、圧着情報認識手段284によって、二番目以降の識別番号を認識した場合には、圧着処理の終了後、情報表示装置250にその識別番号を表示する。
【0082】
また、コネクタ情報認識手段283は、送信制御手段190によって送信されたコネクタ情報を認識するものであり、端子圧着装置3による圧着処理の終了後、認識されたコネクタ情報を、接続先案内手段286によって情報表示装置250に出力する。なお、本例では、対応するコネクタの絵を情報表示装置250に表示し、ピン番号の位置を指標で示すようにしている。このように、夫々の端子圧着装置3の近傍にコネクタを収容するとともに、コネクタ情報を表示させることにより、作業者は、圧着端子が圧着された後の電線の接続先、すなわちコネクタの種類とピン番号とを、その場で把握することが可能となり、コネクタへの接続作業を速やかに且つ間違いなく行わせることが可能になる。特に、電線保持具5における電線の配列と、コネクタにおけるピンの配置とを一致させるようにしておけば、並列状態に保持されている複数の電線を、順序を変えることなくそのままコネクタに接続させることができるため、コネクタへの接続作業を極めて短時間で行うことが可能になる。
【0083】
以上のように、本例の電線保持具5によれば、一対の挟持片315の間に電線が挿入されると、一対の挟持片315の間隔が僅かに広がるとともに、電線を挟持する方向に弾性力が作用し、ひいては電線を側方から押圧した状態で保持することが可能になる。特に、保持ユニット301aは複数枚の挟持板312を積層して構成しており、しかも夫々の挟持片315が個々に弾性変形可能であるため、たとえ電線が湾曲した形状であったり、電線の表面に凹凸があっても、全ての挟持片315を電線の側面に確実に圧接させ、強固に保持することができる。つまり、一個あたりの挟持片315の押圧力が比較的弱い場合でも、その力を加え合せることにより、極めて強い保持力を発生させることができる。また、夫々の挟持片315における押圧力が小さくなることから、電線に与える影響が少なく電線の変形等を防止することができる。
【0084】
また、本例の電線保持具5によれば、夫々の挟持片315が別々に弾性変形することから、保持ユニット301aで保持された電線が、保持ユニット301aに対して略垂直方向に引張られ、端部側に配置された挟持板312における挟持片315が離間する方向に変位しても、残りの挟持板312における挟持片315は変位することなく、電線を押圧し続けることができる。したがって、運搬中に、電線に引張り力が加わっても電線が保持ユニット301aから抜けることを防止できる。
【0085】
また、本例の電線保持具5によれば、夫々の挟持板312は、一体成形されているため、夫々の部材同士を接続する構造が不要となり、挟持板312の厚みを比較的薄く形成することができる。また、挟持片315を固定するためのベース部311を用いて複数の挟持板312を連結することから、積層された状態で一体的に構成されているにも拘らず、支持片316から延出される挟持片315を、個々に弾性変形させることができる。
【0086】
また、本例の電線保持具5によれば、開閉ピン320における長手方向の移動のみによって、挟持片315の間隔を変化させることができるため、保持ユニット301aを大型化することなく電線の着脱を容易に行わせることができる。また、比較的短い間隔で複数の電線を並行状態に保持することができる。
【0087】
以上、本発明を実施するための最良の形態を挙げて説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、以下に示すように本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良および設計の変更が可能である。
【0088】
すなわち、上記実施形態では、電線保持具5を電線処理システム1に適用するもの、すなわち、電線供給装置2から繰出される複数の電線を保持し、所定の端子圧着装置3まで移動させるもの、を示したが、複数の電線を整列させた状態で運搬する作業においては、システムの内容に拘らず好適に用いることができる。
【0089】
また、上記実施形態では、電線保持具5を電線受取りユニット6にセットして摺動させながら自動的に電線を差し込むものを示したが、作業者が手作業で電線を差し込むようにしてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、一つの保持ユニット301aに二組の挟持片315を備えるもの、すなわち二本の電線を保持可能とするものを示したが、一組の挟持片315のみであってもよく、あるいは三組以上の挟持片315を備えるようにしてもよい。
【0091】
さらに、上記実施形態では、ワークとして電線を保持するものを示したが、電線以外の線材を保持するようにしてもよく、さらには線材以外の被保持物を保持するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本実施形態の電線保持具を適用した電線処理システムの概略構成を示す模式図である。
【図2】図1における要部の拡大図である。
【図3】電線供給装置の最下部に配置された回転式供給ユニットの構成を示す平面図である。
【図4】電線供給装置の構成を示す正面図である。
【図5】電線供給装置における受箱部とカセット式電線繰出し部との構成を示す分解斜視図である。
【図6】カセット式電線繰出し部の構成を示す平面図である。
【図7】電線受取りユニットの構成を示す縦断面図である。
【図8】電線保持具の構成を示す斜視図である。
【図9】電線保持具における要部の構成を示す拡大斜視図である。
【図10】(a)は電線保持具の開放状態を示す斜視図であり、(b)は電線保持状態を示す斜視図である。
【図11】端子圧着装置の概略構成を示す模式図である。
【図12】端子圧着装置におけるアプリケータの構成を示す正面図である。
【図13】端子圧着装置における機能的構成を示すブロック図である。
【図14】電線供給装置における機能的構成を示すブロック図である。
【図15】従来の端子圧着装置の構成を示す斜視図である。
【図16】従来の電線保持具の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0093】
5 電線保持具(ワーク保持具)
301a 保持ユニット
311 ベース部
312 挟持板
315 挟持片
316 支持片
319 膨出部
320 開閉ピン
321a 径大部
321b 径小部
L 電線(ワーク)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク保持具に関するものであり、特に、電線等の線材の挟持に適したワーク保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
端末処理装置として、電線の端部の被覆材を除去し、その端部に端子を圧着するとともに、電線を所定の長さに切断する端子圧着装置が知られている。具体的には、図15に示すように、端子圧着装置501は、電線癖取装置502と、電線Lの先端側及び後端側に端子を圧着させるための第一圧着機構503,第二圧着機構504と、電線Lを切断するとともに電線Lの端部の被覆材を除去する切断機構505と、電線Lの先端側を第一圧着機構503に送り込む電線送込み機構506と、切断後の電線Lを保持し電線Lの後端側を第二圧着機構504に送り込むチャック機構(図示しない)と、端子を圧着し終えた電線Lを蓄えた後に所定数の電線Lを纏めて外部へ排出する排出装置(図示しない)とを備えている。
【0003】
第一圧着機構503と第二圧着機構504とは基本的な構成が等しく、端子を圧着するためのアプリケータ509がフレーム部材510に取付けられている。つまり、フレーム部材510の側面には、切欠き511が形成され、その切欠き511内にアプリケータ509が取付けられている。詳しくは、切欠き511の上方にはアプリケータ509の上側ユニット512が、また、切欠き511の下方には、アプリケータ509の下側ユニット513が夫々取付けられている。
【0004】
また、電線送込み機構506は、電線取込みガイド557、電線Lの長さを測長するエンコーダ558、及び、所定距離離間して配置される一対のローラ559等から構成されている。(特許文献1参照)。
【0005】
ところで、電線を送る際や、被覆材を除去する際には、電線を保持する必要がある。このため、上記の端子圧着装置は、例えば図16に示すような、電線保持具を備えている。この電線保持具は、例えば電線を挟む一対の押圧手段651(651a,651b)と、それぞれの押圧手段651を回転させるグリップ可動機構652とを具備して構成されている。つまり、グリップ可動機構652を動作させると、右側に配設された押圧手段651aが軸653を中心として反時計方向に回転するとともに、左側に配設された押圧手段651aが軸654を中心として時計方向に回転する。これにより、電線Lは、それぞれの押圧手段651の当接面655(655a,655b)に挟まれた状態で保持される。
【0006】
一方、本願出願人は、作業者の負担を軽減するとともに、多品種少量生産に適した電線供給を可能にした電線処理システムを先に提案している。これは、互いに異なる線種の電線が巻かれた複数の電線ドラムと、複数の電線ドラムの中から一つの電線ドラムを選択しその電線ドラムを所定の取出位置まで移動させるドラム移動手段とを有する電線供給装置を備えるものであり、取出位置の電線ドラムに巻かれた電線を引張って繰出させることを可能にしている。
【0007】
ところで、上記の電線供給装置を用いたシステムでは、電線処理システムから順次繰出される複数の電線を、整列させた状態で、端子圧着装置まで持ち運ぶことが望まれている。なお、この場合、繰出される電線の種類が互いに異なることもあり得ることから、繰出された順序を維持したまま運搬することが必要となる。
【0008】
【特許文献1】特開2005−166399号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来周知の電線保持具は、何れも持ち運ぶのに適したものではなく、特に複数の電線を整列させた状態のまま持ち運ぶことは困難とされていた。具体的に説明すると、上記の端子圧着装置のように、押圧部材とそれを可動させる可動機構とを備えた電線保持具では、モータ等の動力源が必要となることから、電線を保持したまま持ち運ぶことが極めて困難であった。しかも複数の電線を整列させた状態で保持するには、比較的大型の押圧部材を複数組具備しなければならず、これによれば全体の大きさが極めて大きくなるとともに、重量も増大し、運搬のし難さが助長されることになる。
【0010】
そこで、クリップ(書類を止める金具)のように、被保持物を挟んだ状態で保持する一対の挟持部を備え、これらの挟持部を弾性変形可能に支持することにより、被保持物を保持するようにした簡易保持具を採用することも考えられる。これによれば、挟持部の弾性力(挟持力)に抗して電線を挿入し、弾性力によって電線を挟持することから、動力源等を備えることなく比較的簡単な構成で電線を保持することが可能になる。
【0011】
しかしながら、上記の簡易保持具では、電線が保持具から抜けないように、比較的大きな保持力が必要となり、大きな締付け力を有する弾性部材を用いなければならない。そして、大きな締付力で電線を保持した場合には、電線が変形してしまい、被覆材が潰れて元の形状に戻らないことや、被覆材に押圧の形跡が残ることが懸念される。
【0012】
また、保持具で保持されている電線が、挟持部に対して垂直方向、すなわち挟持部を離間させる方向に引張られた場合には、比較的大きな締付け力を有する保持具を採用した場合でも、一方の挟持部が比較的小さな力で変位してしまい、一対の挟持部の間に隙間が生じることとなる。つまり、垂直方向に引張られた場合には、比較的小さな引張り力であっても、その電線が保持具から容易に抜けてしまう虞がある。
【0013】
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、ワーク(電線等)を保持したまま持ち運ぶことが可能であるとともに、ワークの変形や傷付きを防止し、しかもワークをしっかりと保持することが可能なワーク保持具の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明にかかるワーク保持具は、「ワークを挟んで保持する保持ユニットを備え、
該保持ユニットは、
前記ワークの幅よりも狭い間隔で対峙し前記ワークを挟んだ状態で押圧する一対の挟持片と、
夫々の該挟持片を互いに離間する方向に弾性変形可能に支持する支持片と
を備えた薄板状の挟持板を有し、該挟持板を複数枚積層して構成されている」ことを特徴とするものである。
【0015】
ここで、「ワーク」としては特に限定されるものではないが、電線等の線材を例示することができる。なお、線材を保持する場合には、複数の挟持板が線材の長手方向に沿って積層されることが好ましい。また、一つの保持ユニットに一対の挟持片を一組のみ備えるようにしてもよく、二組またはそれ以上の挟持片を備えるようにしてもよい。また、「挟持片」と「支持片」とは一体で形成してもよく、別部材で形成してもよい。
【0016】
本発明のワーク保持具によれば、薄板状の挟持板を、複数枚積層して構成された保持ユニットを備え、夫々の挟持板には、ワークの幅よりも狭い間隔で対峙しワークを挟んだ状態で押圧する一対の挟持片と、夫々の挟持片を互いに離間する方向に弾性変形可能に支持する支持片とが設けられている。このため、一対の挟持片の間にワークが挿入されると、一対の挟持片の間隔が僅かに広がるとともに、ワークを挟持する方向に弾性力が作用し、ひいてはワークを側方から押圧した状態で保持することが可能になる。特に、本発明では、複数枚の挟持板を積層して構成しており、しかも夫々の挟持片が個々に弾性変形可能であるため、たとえワークが湾曲した形状であったり、ワークの表面に凹凸があっても、全ての挟持片をワークの側面に確実に圧接させ、強固に保持することが可能になる。つまり、一個あたりの挟持片の押圧力が比較的弱い場合でも、その力を加え合せることにより、極めて強い保持力を発生させる。また、換言すれば、夫々の挟持片における押圧力が小さくなることから、ワークに与える影響が少なくワークの変形等を防止することができる。
【0017】
また、夫々の挟持片が別々に弾性変形することから、保持ユニットで保持されたワークが、保持ユニットに対して略垂直方向に引張られ、端部側に配置された挟持板における挟持片が離間する方向に変位しても、残りの挟持板における挟持片は変位することなく、ワークを押圧し続ける。したがって、運搬中に、ワークに引張り力が加わってもワークが保持ユニットから抜けることを防止できる。
【0018】
また、本発明のワーク保持具において、「前記挟持板は、前記支持片を固定するとともに前記複数の挟持板の連結部分となるベース部をさらに備え、
前記記挟持片、前記支持片、及び前記ベース部を一体成形してなる」ように構成してもよい。
【0019】
これによれば、夫々の挟持板は、挟持片、支持片、及びベース部を一体成形して構成されているため、夫々の部材同士を接続する構造が不要となり、挟持板の厚みを比較的薄く形成することが可能になる。また、支持片を固定するためのベース部を用いて複数の挟持板を連結することから、積層された状態で一体的に構成されているにも拘らず、支持片から延出される挟持片を、個々に弾性変形させることが可能である。
【0020】
また、本発明のワーク保持具において、「夫々の前記挟持片における前記支持片側の部位には、相反方向に膨らむ略半円状の膨出部が形成され、
一対の該膨出部の間に嵌挿され、一対の前記挟持片の間隔を変化させる開閉ピンをさらに備え、
該開閉ピンは、前記保持ユニットにおける積層方向の長さの約二倍以上の長さを有し、長手方向の一方の側に直径の大きな径大部が形成され、長手方向の他方の側に前記径大部よりも直径の小さな径小部が形成されている」ように構成してもよい。
【0021】
これによれば、一対の挟持片に、相反方向に膨らむ半円状の膨出部が形成されており、対向する膨出部の間に、一対の挟持片を強制的に開閉させる開閉ピンが挿入されている。この開閉ピンは、保持ユニットにおける積層方向の長さの、約二倍以上の長さを有し、特に、長手方向の一方側には直径の大きな径大部、他方の側には径大部よりも直径の小さな径小部が形成されている。なお、径大部と径小部との境界部分に、直径が滑らかに変化するようにテーパーを形成するようにしてもよい。そして、径大部の直径は、一対の膨出部の間に挿入された際に、一対の挟持片の間隔を広げることが可能な大きさに設定され、一方、径小部の直径は、一対の膨出部の間に挿入させても、間隔を広げることのない大きさに設定されている。このため、径小部が一対の膨出部の間に位置した状態では、一対の挟持片が閉じられた状態となり、ワークを挟持することが可能になる。一方、開閉ピンを長手方向に摺動させることによって、径大部が一対の膨出部の間に位置した状態では、一対の挟持片の間隔が広がり、一対の挟持片の間にワークを容易に挿入したり、逆にワークを容易に取出したりすることが可能になる。特に、開閉ピンにおける長手方向の移動のみによって、挟持片の間隔を変化させることができるため、保持ユニットを大型化することなくワークの着脱を容易に行わせることが可能になる。
【0022】
また、本発明のワーク保持具において、「複数の前記保持ユニットが、前記挟持板の積層方向に対して垂直となる方向に並設されている」ように構成してもよい。
【0023】
これによれば、複数の保持ユニットが一列に並んだ状態で配置されているため、複数のワークを並列状態で保持することが可能になる。特に、上記の「開閉ピン」を採用した場合には、開閉ピンの長手方向(すなわち挟持板の積層方向)に対して垂直となる方向に沿って配設されることから、全体の長さを比較的短くすることができ、小型化を図ることが可能となる。また、比較的短い間隔で複数のワークを並行状態に保持することが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
このように、本発明のワーク保持具によれば、駆動源等を備えることなく簡易で小形に構成できるため、ワークを保持したまま持ち運ぶことができる。また、複数枚の挟持板を積層して構成しているため、全ての挟持片をワークの側面に確実に圧接させ、強固に保持することができる。また、夫々の挟持片における押圧力が小さくなることから、ワークに与える影響が少なくワークの変形等を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態である電線保持具を電線処理システムに適用した例について、図1乃至図14に基づき説明する。図1は電線処理システムの概略構成を示す模式であり、図2は図1における要部の拡大図であり、図3は電線供給装置の最下部に配置された回転式供給ユニットの構成を示す平面図であり、図4は電線供給装置の構成を示す正面図であり、図5は電線供給装置における受箱部とカセット式電線繰出し部との構成を示す分解斜視図であり、図6はカセット式電線繰出し部の構成を示す平面図である。また、図7は電線保持具がセットされた電線受取りユニットを示す縦断面図であり、図8は電線保持具の構成を示す斜視図であり、図9は電線保持具における要部の構成を示す拡大斜視図であり、図10は電線保持具の開放状態及び使用状態を示す拡大斜視図である。また、図11は端子圧着装置の概略構成を示す模式図であり、図12は端子圧着装置におけるアプリケータの構成を示す正面図であり、図13は端子圧着装置における機能的構成を示すブロック図であり、図14は電線供給装置における機能的構成を示すブロック図である。
【0026】
図1に示すように、電線処理システム1は、予め入力されたデータに基づいて複数の種類の電線の中から選択された電線を供給することが可能な電線供給装置2と、電線の端部の被覆材を除去するとともにその端部に端子を圧着する複数の端子圧着装置3を備えた圧着システム4と、電線供給装置2から繰出された電線を受取り所定の配列に保持したまま持ち運び可能とする電線保持具5と、電線供給装置2に対して電線保持具5を摺動可能に支持する電線受取りユニット6と、を具備して構成されている。ここで、電線保持具5が本発明のワーク保持具に相当する。また、電線が本発明のワークに相当する。
【0027】
まず、電線供給装置2について詳細に説明する。電線供給装置2は、図3及び図4に示すように、平面視が横長の八角形である金属製の架台枠100内に収容されており、主に、電線供給積層体101と、電線供給積層体101を昇降させる昇降装置102と、架台枠100の底面中央から立設された支持枠部材103と、を具備する供給装置本体105から構成されている。電線供給積層体101は、複数の回転式供給ユニット106を所定の間隔で上下方向に積層したものであり、直方体形状の支持枠部材103を囲むように設けられている。
【0028】
回転式供給ユニット106について詳細に説明する。図3に示すように、この回転式供給ユニット106は、枠状の内側載置面108及び格子状の外側載置面109からなる板状の載置板110と、外側載置面109上に載置された複数の受箱部111と、内側載置面108上に載置され受箱部111を可動させる駆動機構112とを備えている。駆動機構112は、外側載置面109の外縁に沿ってループ状に配列された複数の受箱部111を、ループ状を維持したまま旋回させるとともに、複数の受箱部111の中から選択された一つの受箱部111を所定の取出位置、例えば、図2においては「A」位置まで移動させるものである。詳しく説明すると、電線供給装置2は、夫々の受箱部111における挿入口113(詳細は後述する)が所定の回転軸心を中心として遠心方向を向くように、複数の受箱部111を外側載置面109に沿って放射状に配列しており、選択された所定の受箱部111が取出位置Aに位置するように、放射状を維持したまま水平面上で回転させる構成となっている。具体的に、駆動機構112は、水平面に沿って配設された四つのスプロケット114と、それらのスプロケット114に巻き掛けられた無端のチェーン115と、いずれか一つのスプロケット114を介してチェーン115に回転力を付与するモータ116とを有している。なお、モータ116の回転軸117と一つのスプロケット114とが無端のベルト118によって連結されており、モータ116の回転力がベルト118を介してチェーン115に伝達されるようになっている。
【0029】
なお、夫々の受箱部111は、連結金具119を介してチェーン115に連結されている。図示しないが、チェーン115は、一対のローラと、これらのローラを夫々ピンを介して回転可能に支持する外側リンクと、これらを互いに連結する内側リンクとからなる、一般的なローラチェーンが使用されている。連結金具119は、チェーン115の外側から嵌合された断面略コ字形の部材からなり、チェーン115における複数のローラを上下から挟むように取付けられている。このように、複数のローラにわたって連結金具119を取付けることから、受箱部111が接続される部分は、スプロケット114に螺合させながらも直線状に保持され、受箱部111を安定して支持させることを可能にしている。つまり、受箱部111を回転させる際に、受箱部111が連結金具119を中心に振れたり、傾いたりすることを防止している。なお、連結金具119がスプロケット114の周囲に位置した状態(すなわち駆動機構112の四隅に位置した状態)と、スプロケット114から離れた状態とでは、チェーン115における全周の長さが僅かに変化する場合があるが、本例では、スプロケット114を水平方向に摺動可能に支持するとともに、そのスプロケット114を外側に向って付勢する長さ調節機構(図示しない)を備えており、チェーン115の長さに拘らず、チェーン115に適度のテンションを加えている。
【0030】
また、内側載置面108には、チェーン115の内周面に接するように、複数のチェーン受けローラ120が所定間隔で配置されており、チェーン受けローラ120は鉛直方向を軸方向として夫々回転するようになっている。つまり、受箱部111にカセット式電線繰出し部121(後述する)を挿入する際でも、このチェーン受けローラ120によって、チェーン115の撓みを防止している。また、内側載置面108には、複数の回転式供給ユニット106を所定の間隔で積層するために、複数のスペーサ122が、内側載置面108の内周縁に沿って所定の間隔で配置されている。このスペーサ122は、内側載置面108の上面から立設されており、受箱部111の高さよりも高く形成されることにより、受箱部111の上面と、その上段の回転式供給ユニット106における載置板110とが当接しないようになっている。
【0031】
一方、図4に示すように、昇降装置102は、載置板110を貫通するとともに載置板110に固定された四つの軸受部123と、夫々の軸受部123に螺合され回転によって軸受部123を昇降させることが可能な四本の送りネジ部124と、これらの送りネジ部124を任意の方向に回転させる一対のモータ125とを具備して構成されている。なお、送りネジ部124は、上端が支持枠部材103の上面に取付板126を介して支持され、下端は架台枠100の底板127を貫通して支持されている。なお、図示しないが、底板127を貫通する送りネジ部124の下端にはプーリが嵌着されており、底板127を貫通するモータ125の回転軸と無端のベルトによって連結されている。このため、二つのモータ125が動作すると、ベルトを介して四本の送りネジ部124が同一速度で同一方向に回転し、軸受部123が取付けられた載置板110を昇降させる。なお、軸受部123が設けられている回転式供給ユニット106は、電線供給積層体101の最下段に配置された回転式供給ユニット106のみであり、その他の回転式供給ユニット106には、送りネジ部124が挿通する貫通孔(図示しない)が穿設されている。つまり、昇降装置102によって駆動力が付与されるのは最下段の回転式供給ユニット106のみであり、その回転式供給ユニット106が昇降すると、その上に積層された全ての回転式供給ユニット106、すなわち電線供給積層体101全体が一体的に上下方向に移動するようになっている。
【0032】
図5及び図6に示すように、受箱部111は、略直方体形状を呈する筒状の部材であり、一端側の側面にはカセット式電線繰出し部121を挿入させるための挿入口113が設けられている。また、受箱部111の挿入口113側には、固定部131を支点として外方に弾性変形可能な係止部材132が設けられており、弾性力に抗して係止部材132を手で外方に撓ませることによりカセット式電線繰出し部121の挿脱が可能となり、カセット式電線繰出し部121を受箱部111内に挿入した後、係止部材132から手を離すと、係止部材132は弾性力によって元の状態に戻り、先端の爪部133によって受箱部111からカセット式電線繰出し部121(以下、単に「カセット部121」と称す)が脱離することが防止されるようになっている。
【0033】
また、受箱部111の内底面には、カセット部121の挿入位置を規制するストッパー134が突設されている。このストッパー134は、略G字形の部材であり、端部側135のみが固定され、一端が切欠かれた中央側の片部136は挿脱方向に対して弾性変形可能となっている。つまり、受箱部111内にカセット部121が挿入されると、その端部が片部136に当接し、片部136を弾性変形させた状態、すなわちカセット部121を挿入口113側に向って押圧した状態となる。なお、この際、カセット部121の先端は係止部材132によって係止されるため、受箱部111が挿入口113から飛び出すことはなく、カセット部121の先端が挿入口113に一致した状態で保持される。一方、解除操作によって係止部材132が弾性変形すると、係止部材132の係止状態が解消され、カセット部121はストッパー134における片部136の弾性力によって挿入口113から押し出される。これにより、カセット部121を容易に引き出しことが可能になる。
【0034】
また、受箱部111の底面には、複数のローラ130(図4参照)が転動可能に設けられており、複数の受箱部111を載置板110上で滑らかに移動させることが可能となっている。
【0035】
一方、カセット部121は、図5及び図6に示すように、底板138とその両側から立設された一対の側面板139とを有する断面略コ字形のケース部140と、一対の側面板139の上面に架け渡され、電線Lが巻かれた電線ドラム142を回動可能に支持するドラム支持部141とを具備して構成されている。なお、電線ドラム142の大きさは特に限定されるものではないが、本例では、直径が約15〜20cmで、幅が約5〜10cmである比較的小型のドラムが用いられている。
【0036】
また、図6に示すように、カセット部121は、電線ドラム142に圧接し電線ドラム142の回転を制動する制動部材143と、電線Lを繰出す際、電線ドラム142に対する制動部材143の圧接状態を解除する制動解除機構144とを具備している。具体的には、制動部材143は、電線ドラム142に圧接し電線ドラム142との間で摩擦力を発生させる圧接部145を備えている。圧接部145は、全体的に逆U字形の形状を呈した板バネ状の部材からなり、一端側が取付部材146を介して底板138に固定され、他端側が側面板139に沿って延出された操作杆147に連結されている。操作杆147は、長手方向に摺動可能な状態で支持されており、圧接部145が電線ドラム142に当接する位置(制動位置)と、電線ドラム142から離れる位置(解除位置)との間でスライドさせることが可能になっている。また、一定方向(圧接部145が電線ドラム142に圧接する方向)に付勢する弾性体(図示しない)が取付けられている。
【0037】
制動解除機構144は、操作杆147上で回動可能に支持された可動ローラ148から構成されている。そして、電線ドラム142から延出された電線Lは、可動ローラ148を経由してガイドローラ149に掛けられているため、電線Lをカセット部121から繰出す際、電線Lに引張り力が作用すると、可動ローラ148には電線ドラム142側に向う力が作用し、その力によって操作杆147は、弾性体の弾性力に抗して変位することとなる。つまり、電線Lを繰出す際の引張り力が所定量よりも大きくなると、操作杆147が変位して圧接部145によるロック状態が解除される。換言すれば、電線Lの繰出し操作が行われるまでは、制動状態が維持され電線ドラム142の回転が防止されるが、電線Lの繰出し操作が行われると、制動状態が解除され電線ドラム142の回転負荷が軽くなる。
【0038】
また、カセット部121には、ケース部140内に、ガイドローラ149と癖取り部150とが設けられている。癖取り部150は複数のローラを組合せてなり、夫々のローラ間で張力を作用させることにより、電線Lのねじり癖や曲がり癖を矯正している。また、ケース部140には、電線ドラム142に巻かれた電線Lをケース部140の先端部分から一定方向に繰出させる電線ガイド部151が設けられている。この電線ガイド部151は円錐筒状であり、先端から真直ぐに電線Lを突出させることが可能となっている。
【0039】
さらに、カセット部121におけるケース部140の先端側(図6では上端側)には、カセット部121を持ち運ぶ際に把持される円柱状の把持部152が設けられ、把持部152の表面には、夫々のカセット部121に付与された識別番号を記憶したバーコード153が貼着されている。このバーコード153に記憶された識別番号は、電線Lの種別に関する情報、具体的には、夫々の電線ドラム142に巻かれた電線の色、電線の径、及び被覆材の材質と、対応付けられており、後述する情報読出制御手段154(具体的にはバーコードリーダー)によって識別番号を読出すことにより、電線Lの種別に関する情報を認識することが可能となっている。なお、バーコード153の代りにICチップを設け、電線Lの種別に関する情報を書込み及び読出し可能に記憶させるようにしてもよい。なお、ICチップでは、高周波などの電波を受信すると、その電波を電気に変換して蓄え、その電力が所定量に達すると、ICチップの記憶部に情報を書込んだり、情報を発信したりすることが可能になる。
【0040】
一方、図2に示すように、電線供給装置2には、所定の取出位置に配置された電線ドラム142から電線を引張って繰出させる電線繰出機構157が設けられている。電線繰出機構157は、送り機構本体158とガイドユニット159とを具備して構成されている。送り機構本体158は、所定の取出位置Aとガイドユニット159との間に配置されるとともに、矢印Yの方向に摺動可能に支持された可動ベース板160と、可動ベース板160を駆動させる動力源(図示しない)と、可動ベース板160上で鉛直方向の軸を中心として回転する一対の送りローラ161とを備えている。なお、一対の送りローラ161は、所定距離離間して配置され、電線Lを挟持しながら繰出させるものである。また、一対の送りローラ161は、互いに接近および離反するように移動可能とされ、離反させることにより一対の送りローラ161の間に電線Lを挿脱させることが可能になり、接近させて回転させることにより電線Lを繰出させることが可能になる。
【0041】
また、可動ベース板160には、一対の第二切断刃162が配設されており、繰出された電線Lを切断するようになっている。これによれば、電線供給装置2から繰出された電線Lを根元側である電線供給装置2内で切断することにより、電線Lを交換する場合でも、既に繰出されている電線Lを電線ドラム142に巻き戻す等の処理が不要となり、カセット部121内での構成を簡素化することが可能である。
【0042】
また、可動ベース板160には、電線Lの先端位置を検出する先端検出センサ163が設けられており、この先端検出センサ163で電線Lが検出された時点を基準として、繰出される電線Lが測長されるようになっている。
【0043】
さらに、可動ベース板160の先端面には、取出位置Aのカセット部121に向って突出した突起部が形成されており、その先端部分に位置決めローラ164が回転可能に支持されている。この位置決めローラ164は、可動ベース板160をカセット部121側に摺動させた際に、ケース部140の底板138に形成された略三角形状の切り欠165(図9参照)内に挿入されるものであり、取出位置Aにおけるカセット部121を、位置決めローラ164を基準とした正規の位置までスライドさせることにより、カセット部121から突出する電線Lを、一対の送りローラ161に対向させることが可能になる。なお、切り欠165に位置決めローラ164が挿入された状態では、受箱部111の位置も固定されることから、位置決めローラ164は受箱部111の回転止めとしても機能している。
【0044】
ところで、詳細は後述するが、電線供給装置2の筐体前面には、表示盤170(図1参照)が配設されており、電線供給装置2から繰出される電線に対応する端子圧着装置3の識別番号が表示されるようになっている。
【0045】
次に、圧着システム4について詳細に説明する。圧着システム4は、図1に示すように、コ字形または直線上に並設された複数台の端子圧着装置3から構成されており、それらの前方には、作業者が圧着操作及び移動することが可能なスペースが確保されている。本実施形態の端子圧着装置3は、圧着端子の供給、電線Lの送込み、被覆材の除去、圧着端子の圧潰、及び電線Lの切断を一連の動作として行い、圧着端子が圧着された所定長さの電線Lを連続して生成するものである。この端子圧着装置1は、図11に示すように、電線Lの先端側に圧着端子を圧着させる圧着機本体202と、電線Lの先端側を圧着機本体202に送り込む電線送り機構203と、圧着機本体202及び電線送り機構203の間に配設され、電線Lを切断するとともに電線Lの端部の被覆材を除去する切断機構204とを備えている。
【0046】
圧着機本体202は、図12に示すように、電線の先端または後端に圧着端子を圧着するアプリケータ205を備えている。アプリケータ205は、上下方向への往復運動により圧着端子を押圧する上側ユニット206と、新たな圧着端子を順次供給するとともに供給された圧着端子を保持する下側ユニット207とから構成されている。上側ユニット206及び下側ユニット207は、互いに分離されており、個々に交換可能な状態で取付けられている。なお、上側ユニット206と下側ユニット207との間には空間が形成されているため、紙面手前側から紙面後方側に向って電線Lを送ることが可能である。
【0047】
上側ユニット206は、動力機構(図示しない)と、動力機構の動作により上下運動するスライド部材(図示しない)と、スライド部材に連結された昇降部材211と、昇降部材211の先端に取付けられ圧着端子を押圧する押圧部材212とを具備している。スライド部材は、圧着機本体202に固定された支持部材(図示しない)によって左右両端を支持され、上下方向にのみ摺動可能となっている。
【0048】
動力機構は、図示しないが、電動機でクランク軸を回転させることにより、スライド部材を摺動させるものである。スライド部材の上部側中央には、左右方向に延びる長孔状のガイド孔が穿設されており、ガイド孔には、高さがガイド孔に略等しい砲金からなる摺動部材が、平行移動可能に嵌め込まれている。また、摺動部材は、電動機の駆動軸に連結されたクランク軸の端部に回動可能に軸支されている。
【0049】
また、スライド部材の下部には、昇降部材211を着脱可能に取り付けるための取付突部(図示しない)が、表面から突出して形成されている。これに対し、昇降部材211には、四角筒状の連結部224が設けられており、連結部224内に取付突部が嵌挿され、ボルト等の締結手段(図示しない)によって互いに連結されるようになっている。連結部224の下方には、調整機構225を介して押圧部材212が取付けられている。
【0050】
調整機構225は、ステッピングモータ等を有し、ステッピングモータの駆動軸の回転方向、及び回転角度を所定の範囲内で自在に数値制御することにより、押圧部材212の移動量(すなわち下方への突出長さ)を調整する。すなわち、この調整機構225により、押圧部材212の先端と後述するアンビルとの距離が調整されるようになっている。なお、調整部材225には、移動量を設定するための調整ダイヤル226が設けられており、手動での調整を可能にしている。
【0051】
一方、下側ユニット207は、図12に示すように、圧着機本体202に形成された取付突部230に対して着脱可能な四角筒状の連結部231と、連結部231に固定され上面にアンビル232が形成された基台233と、連結部231の上方に位置するとともに水平方向に延出された端子搬送手段234とを具備している。なお、アンビル232が形成された基台233は、押圧部材212の下方に配置される。
【0052】
端子搬送手段234は、板状のキャリアによって一連に繋がれた圧着端子(図示しない)を基台233のアンビル232上に順次供給するものであり、ベース部材240と、ベース部材240の上面に形成された溝状のガイド部241と、ガイド部241の開口部分を部分的に塞ぎキャリアの逸脱を防止する逸脱防止機構242と、キャリアによって繋がれた複数の圧着端子を移送させる移送機構243とから構成されている。
【0053】
一方、電線送り機構203は、図11に示すように、電線取込みガイド270、一対のローラ271、及びガイドパイプ272等から構成されている。なお、ローラ271がローラ駆動手段(図示しない)により駆動され、回転方向及び回転数を制御することにより、電線Lを任意の長さだけ送ることを可能にしている。電線取込みガイド270を介して取込まれた電線Lは、ローラ271により、ガイドパイプ272内に送り込まれ、さらにガイドパイプ272の先端へと導かれる。ガイドパイプ272の先端には、切断機構204が配設されており、ローラ271により電線Lを送り込むと、戦線Lの先端が切断機構204の上刃と下刃との間に挿入される。
【0054】
また、図示しないが、切断機構204は、電線Lの切断や、電線Lの端部の被覆材を除去するものであり、上下方向に配設された一対の切断刃(上刃及び下刃)と、上刃を下刃に対して上下方向に移動させる移動手段(図示しない)とを備えている。つまり、上刃と下刃との間に電線Lを挿入した状態で、上刃が下刃に当接するように移動手段を動作させることにより、電線Lが切断される。また、電線Lの端部が所定長さ突出するように、上刃と下刃との間に電線Lを挿入した状態で、上刃と下刃との間隔が電線Lの芯線の大きさに対応した距離になるように移動手段を動作させ、続いて電線送り機構203によって電線Lを引っ張ることにより、電線Lの端部の被覆材が除去される。
【0055】
このように圧着機本体202は、圧着端子が、端子搬送手段234によってアンビル232上に送られ、その後、電線Lの先端がアンビル232上の圧着端子に送り込まれると、動力機構を動作しスライド部材及び昇降部材211を下死点側へ変位させ、押圧部材212とアンビル232との間で圧着端子を圧潰する。また、この際、切断部(図示しない)によって、圧潰される圧着端子がキャリアから切り離される。そして、圧着端子が圧着された電線Lは、電線送り機構203によってさらに直線状に送られる。
【0056】
ところで、夫々の端子圧着装置3では、アプリケータ205、及び端子搬送手段234によって送られる圧着端子が、互いに異なるように個別に設定されている。つまり、圧着システム4には、複数の種類のアプリケータ205と複数の種類の圧着端子とを組合せた、複数の端子圧着装置3が並設されている。このため、多品種少量生産によりコネクタや電線の種類が頻繁に変化しても、アプリケータ205や圧着端子を交換することなく、夫々の電線の先端または後端に圧着端子を圧着させることが可能になる。なお、図1に示すように、夫々の端子圧着装置3には識別番号(例えば「1」〜「100」)が付与されており、識別番号によって夫々の端子圧着装置3を区別することが可能になっている。
【0057】
また、図1に示すように、夫々の端子圧着装置3には、情報表示装置250が配置されており、電線供給装置2から送信された情報(詳細は後述する)が個別に表示されるようになっている。また、夫々の端子圧着装置3には、ランプ251が設けられており、電線供給装置2から圧着処理を行うことが指示された場合、すなわち、端子圧着装置3から繰出された電線の処理先として特定された場合に点灯するようになっている。さらに、夫々の端子圧着装置3の前側には、複数のコネクタ(図示しない)を収容するコネクタ収容箱252が設けられており、端子圧着装置3において圧着された電線の先端を、その場でコネクタに接続させることが可能になっている。
【0058】
続いて、電線保持具5及び電線受取りユニット6について、図7〜図10に基づいて詳細に説明する。電線保持具5は、電線供給装置2から順次繰出される複数本の電線Lを順番に受け取るとともに、受け取った複数の電線Lを一列に整列させたまま持ち運ぶことを可能にするものである。電線保持具5は、図8に示すように、水平方向に延びる金属製または樹脂製の基台300と、基台300の上面に取付けられ複数の電線を並列状態に保持する多連式保持部301とから構成され、全体的に櫛状の形状を呈している。なお、この電線保持具5における長手方向の長さは、容易に持ち運ぶことが可能な大きさ、例えば20cmに設定されており、この中で20本の電線を保持することが可能になっている。
【0059】
基台300は、直方体形状の本体と、その左右側面から直角方向に突出したフランジ状の突出部305とを具備して構成され、底面には、内側面にラック307が連続して形成された溝部306が設けられている。なお、突出部305は後述する電線受取りユニット6の溝部340に挿入可能な厚みに形成されており、ラック307には後述するピニオンに噛合するように所定のピッチで形成されている。
【0060】
多連式保持部301は、図8に示すように、電線を二本ずつ保持することが可能な複数の保持ユニット301aを一列に配置してなり、夫々の保持ユニット301aは、図9に示すように、一体成形された薄板状の挟持板312を複数枚(例えば10枚)、厚み方向に積層して構成されている。なお、複数枚の挟持板312は、下部側(ベース部311)を貫通するボルト313と、それに螺合するナット314とによって締結され、一体的に組付けられている。
【0061】
夫々の挟持板312は、全て同一の形状を呈しており、基台300上に取り付けられるベース部311と、ベース部311上で互いに対峙して電線を挟持する二対の挟持片315と、ベース部311の上面の凹部内において折れ曲げられた状態で配置されるとともに、ベース部311の上面と挟持片315の下端とを繋ぎ、挟持片315を離間する方向に弾性変形可能に支持する支持片316と、挟持片315の上端から延出され、上方に向かって開口し電線の挿入をガイドする受取ガイド片317と、を具備して構成されている。なお、互いに対向する挟持片315の内面には凹凸部318が形成されており、電線が上下方向に滑動することを抑制している。また、一対の挟持片315の間隔は電線の直径よりも狭くなっている。また、ベース部311、支持片316、挟持片315、及び受取ガイド片317は、一体成形により形成されている。
【0062】
このため、一対の挟持片315の間に電線が挿入されると、一対の挟持片315の間隔が僅かに広がるとともに、電線を挟持する方向に弾性力が作用し、ひいては電線を側方から押圧した状態で保持することが可能になる。特に、本例の保持ユニット301aでは、複数枚の挟持板312を積層して構成しており、しかも夫々の挟持片315が個々に弾性変形可能であるため、たとえ電線が曲がっていたり、電線の表面に凹凸があっても、全ての挟持片315を電線の周面に確実に圧接させ、強固に保持することが可能になる。つまり、一個あたりの挟持片315の押圧力が比較的弱い場合でも、その力を電線の長手方向で加え合せることにより、極めて強い保持力を発生させる。また、逆に、夫々の挟持片315における押圧力が小さくなることから、電線に与える影響が少なく電線の変形や断線を防止することができる。
【0063】
しかも、夫々の挟持片315が別々に弾性変形することから、図10(b)に示すように、保持ユニット301aで保持された電線が、保持ユニット301aに対して略垂直方向に引張られ、端部側に配置された挟持板312における挟持片315が離間する方向に変位しても、残りの挟持板312における挟持片315は変位することなく、電線を押圧し続ける。したがって、電線保持具5を運ぶ途中で、電線に引張り力が加わっても電線が保持ユニット301aから抜けることを防止できる。
【0064】
ところで、保持ユニット301aには、挟持片315の先端側に受取ガイド片317が形成されているため、一対の挟持片315の上方から電線を差し込むことが可能であるが、差し込む際、一対の挟持片315に挟持されたまま嵌入することとなるため、被覆材の表面に傷が付く虞がある。特に、挟持片315の内面には、凹凸部318が形成されているため、傷が付き易い状況となっている。
【0065】
そこで、本例では、図9に示すように、一対の挟持片315の下部側に、相反方向に膨らむ半円状の膨出部319が形成されており、対向する膨出部319の間に、一対の挟持片315を強制的に開閉させる開閉ピン320が挿入されている。詳しく説明すると、この開閉ピン320は、保持ユニット301aにおける積層方向の長さの、約二倍の長さを有する円棒状の軸部321と、軸部321の両端に形成され開閉ピン320が膨出部319の間から抜けるのを防止する抜止め部322とから構成されている。特に、軸部321は、長手方向の中央部分から一方側と、中央部分から他方側とで直径の大きさが互いに異なっており、一方側が直径の大きな径大部321a、他方側が直径の小さな径小部321bとなっている。なお径大部321aと径小部321bとの境界部分は、直径が滑らかに変化するようにテーパーが形成されている。そして、径大部321aの直径は、一対の膨出部319の間に挿入された際に、一対の挟持片315を離間させることが可能な大きさに設定され、一方、径小部321bの直径は、一対の膨出部319の間に挿入させても、離間させることのない大きさに設定されている。このため、図9のように、径小部321bが一対の膨出部319の間に位置した状態では、一対の挟持片315が閉じられた状態となり、電線を挟持することが可能になる。一方、開閉ピン320の突出側を押圧操作することによって、径大部321aが一対の膨出部319の間に位置した状態では、図10(a)に示すように、一対の挟持片315が広がり、上方から電線を容易に挿入したり、圧着処理の終わった電線を容易に取出したりすることが可能になる。特に、開閉ピン320における軸方向の移動のみによって、挟持片315を開閉させることができるため、保持ユニット301aを大型化することなく電線の着脱を容易に行わせることができる。
【0066】
なお、挟持片315を開閉させるにあたって、開閉ピン320の切替えを手動で行わせるようにしてもよいが、本例では、電線保持具5を、電線受取りユニット6または所定の部材に固定した状態で、並設する複数の開閉ピン320の一端側から、シリンダー等の駆動手段(図示しない)を用いて一斉に押圧するようにしている。つまり、複数の開閉ピン320に対して同時に当接可能な直方体形状の押圧部材(図示しない)と、その押圧部材を変位させる駆動手段とを備えており、押圧部材を開閉ピン320の長手方向に押圧することにより、全ての開閉ピン320を同時に変位させるようにしている。これによれば、全ての挟持片315を同時に且つ速やかに開閉させることができ、作業効率を一層向上させることができるとともに、作業者の負担を軽減することができる。
【0067】
一方、電線受取りユニット6は、図7に示すように、電線保持具5を支持するとともに、電線供給装置2に対して電線保持具5を水平方向に、所定の距離(詳しくは並設する一対の挟持片315のピッチ)ずつ移動させるものである。具体的には、電線保持具5の突出部305が挿入される溝部340を内側壁面に有し、電線保持具5を長手方向に摺動可能に支持する支持レール341と、支持レール341に支持された電線保持具5に対し進行方向に動力を付与する駆動機構345と、駆動機構345を制御する制御手段(図示しない)とを具備して構成されている。なお、駆動機構345には、電線保持具5に形成されたラック307と噛合する複数のピニオン342、及び夫々のピニオン342に回転力を付与するステッピングモータ等の駆動源(図示しない)が備えられており、ピニオン342を回転させることにより、電線保持具5を直線上で一方向に移動させることを可能にしている。なお、電線保持具5の移動量を認識する移動量認識手段(図示しない)が設けられており、電線供給装置2から電線が供給されるごとに、一定のピッチずつ移動するように、駆動源の回転制御が行われている。このため、電線保持具5に設けられた複数組の挟持片315に対し、一端側から他端側に向かって順に電線を挿入することが可能になり、複数の電線が繰出された順序で並列に並べられることとなる。なお、ピニオン342としては、電線保持具5の進行方向に沿って配列された少なくとも三つのピニオン342を備えており、上流側のピニオン342は搬入用として動作し、下流側のピニオン342は搬出用として動作し、中央のピニオン342がステップ送り用として動作している。また、夫々のピニオン342が回転しているか否かを判定する回転判定手段(図示しない)を備えており、停止状態から回転状態に変化した際に、電線保持具5がそのピニオン342の部位まで到達したと認定している。つまり、複数の電線が挿入された電線保持具5が、排出用のピニオン342によって排出されたことが検出されると、待機中の電線保持具5が、搬入用のピニオン342によってステップ送り用のピニオン342に送り込まれるとともに、その送り用ピニオン342の回転によって、電線保持具5の初期位置が認識され、所定のピッチずつ送られるように制御がなされる。
【0068】
また、夫々の電線保持具5には、互いに異なる識別情報が付与されており、その識別情報が、識別情報記憶手段350(図8参照)によって読み出し可能な状態で記憶されている。なお、識別情報記憶手段350としては、バーコードやICチップを例示することができる。
【0069】
続いて、電線処理システム1の制御装置における機能的構成を、図13及び図14のブロック図を基に説明する。図14に示すように、電線供給装置2の制御装置は、予め電線の種類(径,長さ,材質,色等)、及び圧着端子の種類等の加工情報を入力する情報入力手段171と、情報入力手段171によって入力された加工情報、及び予め記憶された加工条件等に基づいて加工処理情報を出力する加工処理指令手段172と、加工処理指令手段172の出力に基づいて電線の供給を制御する電線供給制御手段173とを有している。ここで、加工処理指令手段172及び電線供給制御手段173は、演算及び制御を行う中央情報処理装置(CPU)と、読み出し専用メモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)からなる補助記憶装置とを備えており、予め入力されたプログラムに従って、指定された電線を順に繰出させる。
【0070】
電線供給制御手段173は、回転位置制御手段175によってモータ116を駆動するとともに、昇降位置制御手段177によってモータ125を駆動し、選択された受箱部111が所定の取出位置に位置するように制御する。なお、特定された受箱部111が、取出位置に対向する回転式供給ユニット106に含まれている場合には、モータ125を駆動させることなく(すなわち電線供給積層体101を昇降させることなく)、モータ116のみを駆動し、受箱部111が含まれる回転式供給ユニット106を回転させる。また、選択された受箱部111と取出位置との高さのみが異なる場合には、モータ116を駆動させることなく(すなわち回転式供給ユニット106を回転させることなく)、モータ125のみを駆動し、受箱部111が含まれる回転式供給ユニット106を取出位置に対向する高さまで昇降させる。
【0071】
なお、モータ116は正転及び反転が可能であり、現在取出位置に位置する受箱部111と、選択された受箱部111との位置関係を基に回転方向を決定する。すなわち、回転角度が少なくなるように回転方向を決定する。なお、各受箱部111の位置はモータ116及びモータ125の回転量を検出するエンコーダ(図示しない)によって認識されるようになっている。
【0072】
また、電線供給装置2には、カセット部121のケース部140に取付けられたバーコード153から識別番号を読出す情報読出手段(バーコードリーダを有する)が設けられており、取出位置の受箱部111に収容されている電線ドラム142(または電線)に関しての情報(具体的には電線の色、電線の径、及び被覆材の材質、さらには電線ドラム142に巻かれた電線Lの初期長さ)を、バーコード153に記録された識別番号と、その識別番号に対応付けて予め記憶されている情報とを基に取得する。なお、電線ドラム142に関する情報は、電線ドラム142に電線が巻かれる毎に、識別番号と対応づけて記憶させるようにしてもよいが、電線Lの初期長さのみが毎回変化し、その他の情報が一定の場合には(すなわち、夫々のカセット部121に収容される電線Lの種類が変化しない場合には)、電線Lの初期長さに関する情報のみを更新するようにしてもよい。
【0073】
また、電線供給装置2には、送りローラ161を回転させるモータ202(ステッピングモータ)を駆動し電線Lの繰出しを制御する電線送り制御手段179と、第二切断刃162を駆動して電線Lを切断する切断制御手段183とが備えられている。
【0074】
また、電線供給装置2には、電線供給装置2から順次繰出された電線、すなわち電線保持具5に保持された複数の電線に対し、夫々の圧着処理に用いられる端子圧着装置3を、圧着システム4に備えられた複数の端子圧着装置3の中から、加工処理指令手段172の出力に基づいて特定する圧着装置特定手段187を備えている。そして、圧着装置特定手段187の出力は送信制御手段190に送られ、特定された端子圧着装置3に対し、特定されたことを示す情報を通知する。なお、電線保持具5に保持された夫々の電線に対応する端子圧着装置3が互いに異なる場合には、複数の端子圧着装置3が特定されることになるが、この場合、特定された全ての端子圧着装置3に対し同時に通知することは行わず、最初に圧着処理が行われる端子圧着装置3、すなわち最初に送り込まれた電線に対応する端子圧着装置3に対してのみ通知を行い、その後、その端子圧着装置3において圧着処理が終了したことを示す情報が端子圧着装置3から送信された時に、次に圧着処理が行われる端子圧着装置3に対して通知を行う。つまり、圧着加工が終了する毎に、順に通知を行うように制御される。
【0075】
また、電線供給装置2には、圧着装置特定手段187によって特定された端子圧着装置3の識別番号を、電線保持具5の持ち運び先として表示する誘導制御手段185が備えられている。なお、最初に圧着処理が行われる端子圧着装置3の識別番号(以下、「最初の識別番号」という)は、電線供給装置2に設けた表示盤170において表示され、二番目以降に圧着処理が行われる端子圧着装置3の識別番号(以下、「二番目以降の識別番号」という)は、送信制御手段190によって端子圧着装置3に送信され、圧着処理が終了した端子圧着装置3の情報表示装置250において表示されるようになっている。具体的に図1に基づき説明すると、電線保持具5によって保持された複数の電線に対応する端子圧着装置3が、圧着装置特定手段187によって、「31」,「66」,「86」…と特定された場合、まず、表示盤170に最初の識別番号である「31」を表示する。これにより、作業者はそれらの電線が保持された電線保持具5を持って31番の端子圧着装置3に向かい、電線保持具5に保持された複数の電線の中から一番端の電線の先端に圧着端子を圧着することとなる。31番の端子圧着装置3による圧着処理が終了すると、次に圧着処理が行われる66番の端子圧着装置3の識別番号「66」を、31番の端子圧着装置3に設けられた情報表示装置25に表示する。このため、作業者はその電線保持具5を持ったまま66番の端子圧着装置3に向かい、電線保持具5に保持された複数の電線の中から二番目の電線に圧着端子を圧着することとなる。また、同様に、66番の端子圧着装置3による圧着処理が終了すると、その次に圧着処理が行われる86番の端子圧着装置3の識別番号「86」を、66番の端子圧着装置3に設けられた情報表示装置25に表示する。このように、最初は電線供給装置2側において移動先が表示され、その後は圧着処理が終了する毎にその場で移動先が表示されるため、圧着処理を行うべき端子圧着装置3を間違えることなく認識でき、速やかに移動することが可能になる。
【0076】
また、電線供給装置2には、圧着端子の接続先であるコネクタの種類及びピン番号を含むコネクタ情報を、電線保持具5に供給された電線に対応付けて送信するコネクタ情報送信手段188を備えている。さらに、電線供給装置2には、電線保持具5の識別情報記憶手段350に記憶されている識別情報を読取って認識する第一識別情報認識手段189が備えられている。コネクタ特定手段188及び第一識別情報認識手段189の出力も送信制御手段190に送られ、特定された端子圧着装置3に送信される。
【0077】
一方、図13に示すように、夫々の端子圧着装置3は、運転制御手段271を備えている。運転制御手段271は、演算及び制御を行う中央情報処理装置(CPU)と、読み出し専用メモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)からなる補助記憶装置とを備えており、予め入力されたプログラムに従って、一連の圧着処理を行う。
【0078】
運転制御手段170の出力ポートには、動力機構制御部273、電線搬送制御部275、及び電線切断制御部276が接続されている。動力機構制御部273は、圧着機構206の動力部を制御するものであり、運転制御手段271の出力に基づいて、圧着機構206の電動機272を駆動する。電線搬送制御部275は、電線送込み機構209を制御するものであり、運転制御手段271の出力に基づいて、ローラ駆動手段274を駆動する。また、電線切断制御部276は、運転制御手段271の出力に基づいて切断機構208を制御し、電線Lの切断、または被覆材の除去を行う。
【0079】
また、運転制御手段271には、送受信制御手段279が接続されている。送受信制御手段279は、電線供給装置2に備えられた送信制御手段190と双方向の通信を行うものである。
【0080】
また、端子圧着装置3には、電線供給装置2の送信制御手段190から送信された識別情報、すなわち電線供給装置2において読取られた電線保持具5の識別情報を受信する識別情報受信手段280と、端子圧着装置3の近傍に位置する電線保持具5から識別情報を直接読取って認識する第二識別情報認識手段281とが備えられている。また、第二識別情報認識手段281によって認識された識別情報と識別情報受信手段280によって受信した識別情報とが一致しているか否かを判定し、一致している場合にのみ、運転制御手段271に信号を出力しアプリケータ205による圧着処理を許可する圧着処理許可手段282も備えられている。つまり、端子圧着装置3では、持ち運ばれた電線保持具5の識別情報を直接読取るとともに、その識別情報と、受信によって把握した識別情報とが一致しているか否かを判定し、一致していると判定された場合にのみ、圧着処理を許可する。
【0081】
また、端子圧着装置3には、圧着情報認識手段284及びコネクタ情報認識手段283が備えられている。圧着情報認識手段284は、送信制御手段190から送信された圧着情報、すなわち特定された端子圧着装置3であることを示す通知と、次に圧着処理を行う端子圧着装置3の識別番号、とを読取る。そして、特定された(選択された)端子圧着装置3であることを認識した場合には、ランプ制御手段285によってランプ252を点灯させ、圧着処理を行うべき端子圧着装置3であることを作業者に報知する。このため、遊技者は、案内された識別番号の端子圧着装置3を一層速やかに見つけることができるとともに、間違った端子圧着装置3へ向かうことを抑制できる。また、圧着情報認識手段284によって、二番目以降の識別番号を認識した場合には、圧着処理の終了後、情報表示装置250にその識別番号を表示する。
【0082】
また、コネクタ情報認識手段283は、送信制御手段190によって送信されたコネクタ情報を認識するものであり、端子圧着装置3による圧着処理の終了後、認識されたコネクタ情報を、接続先案内手段286によって情報表示装置250に出力する。なお、本例では、対応するコネクタの絵を情報表示装置250に表示し、ピン番号の位置を指標で示すようにしている。このように、夫々の端子圧着装置3の近傍にコネクタを収容するとともに、コネクタ情報を表示させることにより、作業者は、圧着端子が圧着された後の電線の接続先、すなわちコネクタの種類とピン番号とを、その場で把握することが可能となり、コネクタへの接続作業を速やかに且つ間違いなく行わせることが可能になる。特に、電線保持具5における電線の配列と、コネクタにおけるピンの配置とを一致させるようにしておけば、並列状態に保持されている複数の電線を、順序を変えることなくそのままコネクタに接続させることができるため、コネクタへの接続作業を極めて短時間で行うことが可能になる。
【0083】
以上のように、本例の電線保持具5によれば、一対の挟持片315の間に電線が挿入されると、一対の挟持片315の間隔が僅かに広がるとともに、電線を挟持する方向に弾性力が作用し、ひいては電線を側方から押圧した状態で保持することが可能になる。特に、保持ユニット301aは複数枚の挟持板312を積層して構成しており、しかも夫々の挟持片315が個々に弾性変形可能であるため、たとえ電線が湾曲した形状であったり、電線の表面に凹凸があっても、全ての挟持片315を電線の側面に確実に圧接させ、強固に保持することができる。つまり、一個あたりの挟持片315の押圧力が比較的弱い場合でも、その力を加え合せることにより、極めて強い保持力を発生させることができる。また、夫々の挟持片315における押圧力が小さくなることから、電線に与える影響が少なく電線の変形等を防止することができる。
【0084】
また、本例の電線保持具5によれば、夫々の挟持片315が別々に弾性変形することから、保持ユニット301aで保持された電線が、保持ユニット301aに対して略垂直方向に引張られ、端部側に配置された挟持板312における挟持片315が離間する方向に変位しても、残りの挟持板312における挟持片315は変位することなく、電線を押圧し続けることができる。したがって、運搬中に、電線に引張り力が加わっても電線が保持ユニット301aから抜けることを防止できる。
【0085】
また、本例の電線保持具5によれば、夫々の挟持板312は、一体成形されているため、夫々の部材同士を接続する構造が不要となり、挟持板312の厚みを比較的薄く形成することができる。また、挟持片315を固定するためのベース部311を用いて複数の挟持板312を連結することから、積層された状態で一体的に構成されているにも拘らず、支持片316から延出される挟持片315を、個々に弾性変形させることができる。
【0086】
また、本例の電線保持具5によれば、開閉ピン320における長手方向の移動のみによって、挟持片315の間隔を変化させることができるため、保持ユニット301aを大型化することなく電線の着脱を容易に行わせることができる。また、比較的短い間隔で複数の電線を並行状態に保持することができる。
【0087】
以上、本発明を実施するための最良の形態を挙げて説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、以下に示すように本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良および設計の変更が可能である。
【0088】
すなわち、上記実施形態では、電線保持具5を電線処理システム1に適用するもの、すなわち、電線供給装置2から繰出される複数の電線を保持し、所定の端子圧着装置3まで移動させるもの、を示したが、複数の電線を整列させた状態で運搬する作業においては、システムの内容に拘らず好適に用いることができる。
【0089】
また、上記実施形態では、電線保持具5を電線受取りユニット6にセットして摺動させながら自動的に電線を差し込むものを示したが、作業者が手作業で電線を差し込むようにしてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、一つの保持ユニット301aに二組の挟持片315を備えるもの、すなわち二本の電線を保持可能とするものを示したが、一組の挟持片315のみであってもよく、あるいは三組以上の挟持片315を備えるようにしてもよい。
【0091】
さらに、上記実施形態では、ワークとして電線を保持するものを示したが、電線以外の線材を保持するようにしてもよく、さらには線材以外の被保持物を保持するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本実施形態の電線保持具を適用した電線処理システムの概略構成を示す模式図である。
【図2】図1における要部の拡大図である。
【図3】電線供給装置の最下部に配置された回転式供給ユニットの構成を示す平面図である。
【図4】電線供給装置の構成を示す正面図である。
【図5】電線供給装置における受箱部とカセット式電線繰出し部との構成を示す分解斜視図である。
【図6】カセット式電線繰出し部の構成を示す平面図である。
【図7】電線受取りユニットの構成を示す縦断面図である。
【図8】電線保持具の構成を示す斜視図である。
【図9】電線保持具における要部の構成を示す拡大斜視図である。
【図10】(a)は電線保持具の開放状態を示す斜視図であり、(b)は電線保持状態を示す斜視図である。
【図11】端子圧着装置の概略構成を示す模式図である。
【図12】端子圧着装置におけるアプリケータの構成を示す正面図である。
【図13】端子圧着装置における機能的構成を示すブロック図である。
【図14】電線供給装置における機能的構成を示すブロック図である。
【図15】従来の端子圧着装置の構成を示す斜視図である。
【図16】従来の電線保持具の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0093】
5 電線保持具(ワーク保持具)
301a 保持ユニット
311 ベース部
312 挟持板
315 挟持片
316 支持片
319 膨出部
320 開閉ピン
321a 径大部
321b 径小部
L 電線(ワーク)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを挟んで保持する保持ユニットを備え、
該保持ユニットは、
前記ワークの幅よりも狭い間隔で対峙し前記ワークを挟んだ状態で押圧する一対の挟持片と、
夫々の該挟持片を互いに離間する方向に弾性変形可能に支持する支持片と
を備えた薄板状の挟持板を有し、該挟持板を複数枚積層して構成されていることを特徴とするワーク保持具。
【請求項2】
前記挟持板は、前記支持片を固定するとともに前記複数の挟持板の連結部分となるベース部をさらに備え、
前記挟持片、前記支持片、及び前記ベース部を一体成形してなることを特徴とする請求項1に記載のワーク保持具。
【請求項3】
夫々の前記挟持片における前記支持片側の部位には、相反方向に膨らむ略半円状の膨出部が形成され、
一対の該膨出部の間に嵌挿され、一対の前記挟持片の間隔を変化させる開閉ピンをさらに備え、
該開閉ピンは、前記保持ユニットにおける積層方向の長さの約二倍以上の長さを有し、長手方向の一方の側に直径の大きな径大部が形成され、長手方向の他方の側に前記径大部よりも直径の小さな径小部が形成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワーク保持具。
【請求項4】
複数の前記保持ユニットが、前記挟持板の積層方向に対して垂直となる方向に並設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載のワーク保持具。
【請求項1】
ワークを挟んで保持する保持ユニットを備え、
該保持ユニットは、
前記ワークの幅よりも狭い間隔で対峙し前記ワークを挟んだ状態で押圧する一対の挟持片と、
夫々の該挟持片を互いに離間する方向に弾性変形可能に支持する支持片と
を備えた薄板状の挟持板を有し、該挟持板を複数枚積層して構成されていることを特徴とするワーク保持具。
【請求項2】
前記挟持板は、前記支持片を固定するとともに前記複数の挟持板の連結部分となるベース部をさらに備え、
前記挟持片、前記支持片、及び前記ベース部を一体成形してなることを特徴とする請求項1に記載のワーク保持具。
【請求項3】
夫々の前記挟持片における前記支持片側の部位には、相反方向に膨らむ略半円状の膨出部が形成され、
一対の該膨出部の間に嵌挿され、一対の前記挟持片の間隔を変化させる開閉ピンをさらに備え、
該開閉ピンは、前記保持ユニットにおける積層方向の長さの約二倍以上の長さを有し、長手方向の一方の側に直径の大きな径大部が形成され、長手方向の他方の側に前記径大部よりも直径の小さな径小部が形成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワーク保持具。
【請求項4】
複数の前記保持ユニットが、前記挟持板の積層方向に対して垂直となる方向に並設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載のワーク保持具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−204779(P2008−204779A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39197(P2007−39197)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(593098646)株式会社小寺電子製作所 (22)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(593098646)株式会社小寺電子製作所 (22)
【Fターム(参考)】
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