説明

ワーク保持装置

【課題】治具を交換することなく、ワークの全ての面を、特定方向に向けて加工等を施すことができるようにした、ワーク保持装置を提供する。
【解決手段】ワーク保持治具2は、ワークWの取付面に設けた挿通口4と、ワークWの取付面の裏面側と外周縁部とに設けた、ベース部3と嵌合するための嵌合穴7と、ワークWの保持部位に設けた、ワークWの脱落防止用の支持補助具6と、ワーク保持治具2を反転した状態で、ベース部3上に支持可能とする支持脚5とを備え、ベース部3は、ワーク保持治具2における嵌合穴7に嵌合する位置決めピン10を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品組み立て、加工装置又は工作機械に係り、より特別には被工作部品等であるワーク(W)を保持し、搬送および位置決めし、組付け等の加工を行うためのワーク保持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機械装置、電気装置等の種々の装置又はそれを構成する部分は、多数の要素又は部品から構成されており、組み立てにおいて、装置又は部分を加工したり、装置又は部分に要素又は部品を組み付けたりして製作される。即ち、加工又は組み付けされる被工作物であるワーク(W)には、複数の加工等の作業が実施される。例えばワーク(W)に種々の部品を組み付ける場合、ワーク(W)は一般的に、ワーク保持装置により保持され、部品を部品組み付けロ−ダにより組み付けられる。
【0003】
例えば、特許文献1参照。ここでは、部品を取付ける方向が多方向になるワーク(W)であっても、常に組付け方向が上に来るように簡単に方向を変えることができるワーク保持装置を開示している。
すなわち、このワーク保持装置では、ワーク(W)を保持するための正六面体のワーク保持治具と、ワーク保持治具を着脱可能であってワーク保持治具等のベースとなるベース部と、ワーク保持治具にワーク(W)を押圧保持する押圧部とを具備する。
このような構成によって、ワーク保持治具が正六面体で、一つの面はワーク(W)を保持し、他の五面で、ベース部の同一箇所に取付け可能であることにより、一旦ワーク保持治具に取付けたワーク(W)を取り外すことなく、ワーク保持治具を回転して取付けることにより容易にワーク(W)の向きを変更できるとしている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−358633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のワーク保持装置では、ワーク(W)の取付面(ワーク(W)の裏面)の組付け加工が困難である。
すなわち、上述のワーク保持装置では、正6面体の外側にワーク(W)を取付けているので、ワーク(W)取付面では、ワーク(W)が邪魔になって、搬送具に取付けることができない。
本発明は上述した課題を克服するために提案されたものであって、治具を交換することなく、搬送具に対し、ワーク保持部の取付け向きを変えることができ、ワークの全ての面に対し組付け加工を可能とした、ワーク保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、特定方向から、部品組付け又は加工を施すべく多面体状のワーク(W)を保持するためのワーク保持装置(1)において、ワーク(W)を着脱可能に保持するためのワーク保持治具(2)と、このワーク保持治具(2)にワーク(W)を保持した状態で、ワーク(W)の全ての面を、部品組付け又は加工を施す特定方向に向けるべく、ワーク保持治具(2)を、支持姿勢を変えて、着脱可能に支持してなるベース部(3)とを備えたことを特徴とする。
【0007】
これにより、ワーク(W)を保持した状態で、ワーク保持治具(2)を、支持姿勢を変えて、ベース部(3)に支持させることで、ワーク(W)の全ての面を、部品組付けや、加工を施す、特定の方向に向けることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、ワーク保持治具(2)は、ワーク(W)の取付面に設けた挿通口(4)と、ワーク(W)の取付面の裏面側と外周縁部とに設けた、ベース部(3)と嵌合するための嵌合穴(7)と、ワーク(W)の保持部位に設けた、ワーク(W)の脱落防止用の支持補助具(6)と、ワーク保持治具(2)を反転した状態で、ベース部(3)上に支持可能とする支持脚(5)とを備え、ベース部(3)は、ワーク保持治具(2)における嵌合穴(7)に嵌合する位置決めピン(10)を備えたことを特徴とする。
【0009】
この様に構成することにより、ワーク(W)を保持した状態で、脱落することなく、ベース部(3)に対し、ワーク保持治具(2)の支持方向を変えることで、ワーク(W)の全ての面を部品組付けや、加工を施す、特定の方向に向けることができる。
すなわち、ワーク保持治具(2)は、取付けたワーク(W)を取り外すことなく、ベース部(3)に対し、ベース部(3)の位置決めピン(10)を、ワーク(W)の取付面の裏面側の嵌合穴(7)と嵌合して支持することができる。
また、ワーク保持治具(2)は、ベース部(3)の位置決めピン(10)を、ワーク(W)の外周縁部の嵌合穴(7)と嵌合して支持することができる。
さらに、ワーク保持治具(2)は、支持脚(5)によりベース部(3)上に、反転した状態で支持することができる。
【0010】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に、ワーク保持装置1を示す。
ワーク保持装置1は、ワークWを保持するためのワーク保持治具2と、ワーク保持治具2を着脱可能に且つ、搬送可能に支持してなるベース部3とを備える。
ワーク保持治具2は、ワークWの保持部位に挿通口4と、ワーク保持治具2を反転した状態で、ベース部3上において保持可能とする支持脚5とを備える。
そして、ワーク保持治具2には、ワークWの保持部位に、ワークWの脱落防止用の支持補助具6を配設している。
なお、ここでのワークWは、外形上、二点鎖線で示しているように、略六面体形状のもので、一体構造のものであれば、実質的な構造、構成は適宜である。かかるワークWの外寸に対応して、後述する保持手段を構成している。
【0012】
ワーク保持治具2は、略正方形状の板体であり、中心に所定径の挿通口4が形成されている。また、ワーク保持治具2の隅角部には、支持脚5を固設している(図2参照)。
挿通口4は、少なくともワークWのワーク保持治具2への取付面の面積に比較して小さい寸法であり、かかる挿通口4を介して、加工を施すべき加工機における工具(図示省略)他、組み付けるべき部品をワークWの組付け箇所にもたらす、例えば組付けローダ等(図示省略)を臨入可能としている。
一方、支持脚5は、少なくともワークWの取付高さに比較して大きい寸法としている。
また、支持脚5のうち、対角線上の一対の支持脚5先端には、後述するベース部3に設けた位置決め嵌合穴に嵌合可能な嵌合先端部5aを設けている。
【0013】
さらに、ワーク保持治具2には、ワークWの取付面と反対側の面に、中央の挿通口4の周縁部近傍に、90度ごと、後述するベース部3に設けた位置決めピンと嵌合する嵌合穴7を設けている。
また、ワーク保持治具2の外周縁部にも、ベース部3に設けた位置決めピンと嵌合する嵌合穴7を設けている。
【0014】
次に、ベース部3は、周知のラインを構成する搬送手段に載置され、所定の加工位置や、組付け位置にワークWを、ワーク保持治具2と共に、搬送するようにしている。
ベース部3は、前述のワーク保持治具2の外寸に適合する寸法の方形状の板体であり、中心部に方形状の挿通穴8を設けている(図2参照)。
また、かかるベース部3の隅角部には、ワーク保持治具2を反転させた際に、ワーク保持治具2を支える支持脚5が嵌合することで、ワークWを保持した状態で、脱落しないように支持する、位置決め嵌合穴9を形成している。
さらに、ベース部3の挿通穴8を挟んで、対向する挿通穴8の両縁近傍には、ワーク保持治具2の外周縁部における嵌合穴7と嵌合する位置決めピン10が設けられている。
【0015】
次に、ワーク保持治具2におけるワークWの保持部位に設けられる、ワークWの脱落防止用の支持補助具6について説明する。
支持補助具6は、ワークWの保持部位に設けられる挿通口4を挟んで、一対、配設されている。すなわち、支持補助具6は、基軸6aに対し頭部に回動範囲が規制された回動係止片6bを有している(図2、図3参照)。回動係止片6bは、先端側を中央の挿通口4に向けて突出させている。なお、回動係止片6bは、適宜な付勢手段により、常時、先端側を中央の挿通口4に向けて突出させる構成とすることができる。かかる回動係止片6bは、ワークWの側方、下縁部Weに係止することでワークWを保持するようにしており、図示しない作動手段によって、付勢手段の付勢力に抗して回動係止片6bを回動させ、ワークWの下縁部Weから退動させて、ワークWの保持状態を解除する構成である(図3参照)。
【0016】
以上のようなワーク保持装置1を用いて、ワークWの複数の面を、それぞれ組付け面に向けて、複数の部品を組み付ける作業工程について、説明する。
先ず、対象とするワークWを、ベース部3上のワーク保持治具2のワーク取付面に取付ける(図1参照)。このとき、ワーク保持治具2は、図1に示すように、ベース部3上に、ワーク取付面を図中、上(組付け方向)に向けて、一体的に支持されている。
すなわち、ワーク保持治具2は、ベース部3に対し、ベース部3の挿通穴8を挟んで配置した位置決めピン10が、ワーク保持治具2の外周縁部における嵌合穴7と嵌合することで一体的に結合している。
なお、中央箇所においては、ベース部3側の挿通穴8と、ワーク保持治具2側の挿通口4とが連通して、上下に貫通する空間が構成される。
【0017】
かかる状態で、ワーク保持治具2におけるワークWの保持部位に設けられる挿通口4を挟んで配設されている支持補助具6を、作動手段によって、付勢手段の付勢力に抗して回動係止片6bを回動させておき、ワークWを、ワークWの保持部位にもたらして、回動係止片6bを再び付勢力により復帰させれば、回動係止片6bが、先端側を中央の挿通口4に向けて突出して、ワークWの側方、下縁部Weに係止することでワークWを保持することができる(図2、図3参照)。
【0018】
この状態において、ワークWは、中央箇所の、ベース部3側の挿通穴8と、ワーク保持治具2側の挿通口4とが形成する、上下に貫通する空間に位置することになるので、図中、部品の組付け方向である上方向から、例えば部品組み付けローダ(図示省略)により、部品を組み付けることができる。
【0019】
このようにして、ワークWの一面から部品が組み付けられると、次の工程に進むことになるが、搬送手段により、ワーク保持治具2を載置したベース部3が、次工程の位置に搬送されると、ワークWの別面(一側面)からの組付けを可能とするために、ワークWの別面を組付け方向である上面に向ける必要がある。このために、ワーク保持治具2を例えばワーク保持治具反転装置により、その別面が上を向くように90度回転させる(図4参照)。
これにより、ワーク保持治具2は、一外周縁部における嵌合穴7が、ベース部3における挿通穴8を挟んで配置した位置決めピン10に嵌合し、ベース部3上で起立した状態で保持される(図4参照)。ワークWは、ワーク保持治具2と共に、90度持上げられた状態となるが、ワークWは、支持補助具6によって、側方、下縁部Weを支えた状態にあるので、脱落することはない。これにより、ワークWは、上に向けた別面に対し、図中、矢印方向から組付け加工を行うことができる。
【0020】
同様にして、さらに別の面(別側面)から組付け加工を施すには、さらに、ワーク保持治具反転装置により90度回転させて、ワーク保持治具2と共に、ワークWにおけるその別の面を上に向け、対応する組付け加工を施すことができる(図5参照)。
【0021】
そして、ワークWの取付面から加工を施すには、ワークWの取付面を上面に向ける必要があり、このため、ワーク保持治具反転装置によりワーク保持治具2を180度反転させ、ベース部3にセットする(図6参照)。
ワーク保持治具2は、ワークWの保持面側の隅角部における支持脚5のうち、対角線上の一対の支持脚5先端の嵌合先端部5aが、ベース部3における位置決め嵌合穴9に嵌合することで、ワークWを保持した状態で、脱落しないように支持することができる。
このようにして、ワーク保持治具2がベース部3上で反転支持されると、ワーク保持治具2中央の挿通口4が上方にもたらされるため、保持されるワークWの取付面が上方にきて、挿通口4を介して上方から、ワークWの取付面に対し、組付け加工を施すことができるのである。
【0022】
以上のようにして、ワークWのうち、上面、側面は、図1の状態から、90度ずつ、ワーク保持治具2を変位させていくことで、組付け加工方向である上方に向け、加工を施すことができ、しかもワークWの取付面に対しても、組付け加工方向である上方に向け、加工を施すことができるので、ワーク保持治具2を交換することは不要となり、ワークWの全ての面に対し組付け加工を可能とすることができる。
【0023】
以上、上述の実施形態では、ワーク保持治具2を板体と、支持脚5とで構成し、立方体であるワークWの全ての面を、ワーク保持治具2を交換することなく、一定方向から加工することができるとしたが、ワーク保持装置1はワークWへの複数の部品組み付け作業に限定されず、複数の方向からの機械加工、化学的又は電気的加工や処理等をワークWに施す作業への応用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明にかかるワーク保持装置の一実施形態の概略的な構成を示す、模式的な斜視図である。
【図2】図1に示すワーク保持装置において、ワークを保持する際の組立て構成を示した、分解斜視説明図である。
【図3】本発明にかかるワーク保持装置の対象とするワークを保持するための支持補助具の機能を示した、平面説明図である。
【図4】図1に示すワーク保持装置において、ワーク保持治具を90度、起立させた状態を示す、模式的な斜視図である。
【図5】図4に示すワーク保持装置のワーク保持治具の状態から、さらに90度、回転させた状態を示す、模式的な斜視図である。
【図6】本発明にかかるワーク保持装置において、ワーク保持治具を180度、反転させた状態を示す、模式的な斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ワーク保持装置
2 ワーク保持治具
3 ベース部
4 挿通口
5 支持脚
5a 嵌合先端部
6 支持補助具
6a 基軸
6b 回動係止片
7 嵌合穴
8 挿通穴
9 嵌合穴
10 位置決めピン
W ワーク
We 下縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定方向から、部品組付け又は加工を施すべく多面体状のワーク(W)を保持するためのワーク保持装置(1)において、
前記ワーク(W)を着脱可能に保持するためのワーク保持治具(2)と、
このワーク保持治具(2)に前記ワーク(W)を保持した状態で、前記ワーク(W)の全ての面を、部品組付け又は加工を施す特定方向に向けるべく、前記ワーク保持治具(2)を、支持姿勢を変えて、着脱可能に支持してなるベース部(3)と、
を備えたことを特徴とするワーク保持装置。
【請求項2】
前記ワーク保持治具(2)は、前記ワーク(W)の取付面に設けた挿通口(4)と、
前記ワーク(W)の取付面の裏面側と外周縁部とに設けた、前記ベース部(3)と嵌合するための嵌合穴(7)と、
前記ワーク(W)の保持部位に設けた、前記ワーク(W)の脱落防止用の支持補助具(6)と、
前記ワーク保持治具(2)を反転した状態で、前記ベース部(3)上に支持可能とする支持脚(5)と、
を備え、
前記ベース部(3)は、前記ワーク保持治具(2)における嵌合穴(7)に嵌合する位置決めピン(10)を備えたことを特徴とする請求項1に記載のワーク保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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