説明

ワーク吸着搬送装置

【課題】 複雑で細かい形状のワークを好適に吸着し、入り組んだ場所にワークを好適に搬送すること。
【解決手段】ヘッド本体51に設けられた複数の吸着手段55と、各吸着手段55に設けられ、軸心方向に他の吸着手段55とは独立した形で移動自在に支持された棒状のスライド部56と、各スライド部56の先端に互いに隣接する形で密集配置された吸着部57と、各吸着部57に接続されたエア吸引手段56、60、62、63及び、各吸着部57に対するエアの吸引動作を個別的にオン/オフ制御可能な吸引断続制御手段65で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工設備等で板状等のワークを吸着搬送する際に使用するワーク吸着搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ加工設備等においては、板状等のワークを吸着搬送する際に、真空パッド等を利用したワーク吸着搬送装置が使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし従来のワーク吸着搬送装置では複雑で細かい形状のワークをうまく吸着できないことが多かった。また吸着したワークを、既に積層されているワークの山のすぐ横などといった入り組んだ場所に搬送しようとする際には、吸着ヘッドがワークの山などに干渉してうまく搬送できないといった問題が生じていた。
【0004】
そこで本発明は上記事情に鑑み、複雑で細かい形状のワークでも好適に吸着することができ、また入り組んだ場所にもワークを好適に搬送することのできるワーク吸着搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち本発明のうち第1の発明は、少なくとも水平方向に移動駆動自在に設けられた第1のフレームを有し、前記第1のフレームに第2のフレームを昇降自在に設け、
前記第2のフレームに、吊下フレームを上下方向に伸びた第1の回転軸を中心に回転位置決め自在に設け、
該吊下フレームに複数のアームを、上下方向に伸びた第2の回転軸を中心に回転位置決め自在にそれぞれ設け、
前記アームの長さは、前記第1の回転軸とそれぞれのアームの前記第2の回転軸との間の距離よりも少しだけ短くなるように、それぞれ設定されており、
前記各アームに、吸着ヘッドを、該アーム上を該アームに沿って水平方向に移動駆動位置決め自在に設け、
前記吸着ヘッドは、
ヘッド本体(51)、
前記ヘッド本体(51)に設けられた複数の吸着手段(55)、 前記各吸着手段(55)に設けられ、前記ヘッド本体(51)に対して軸心方向に、他の吸着手段(55)とは独立した形で移動自在に支持された棒状のスライド部(56)、
前記各スライド部(56)の先端に、対象物(70)の非吸着状態で互いに隣接する形で密集配置された吸着部(57)、
前記各吸着部(57)に接続されたエア吸引手段(56、60、62、63)、及び、
前記エア吸引手段(56、60、62、63)に設けられ、各吸着部(57)に対するエアの吸引動作を個別的にオン/オフ制御可能な吸引断続制御手段(65)、を有する。
【0006】
また本発明のうち第2の発明は、第1の発明において、前記棒状のスライド部(56)は、内部にエア流路(56c)が形成された形で中空管状に形成されており、前記エア流路(56c)は、前記各吸着部(57)からエアを吸引する前記エア吸引手段(56、60、62、63)の一部を構成する。
【0007】
また本発明のうち第3の発明は、第1の発明において、前記各吸着部(57)は前記棒状のスライド部(56)に対して全方向に回動自在に支持されている。
【0008】
また本発明のうち第4の発明は、第1の発明において、前記ヘッド本体(51)には、該ヘッド本体(51)の移動手段(52)が設けられている。
【0009】
また本発明のうち第5の発明は、第1の発明において、前記各吸着部(57)はそれぞれの吸着部(57)をカバーするカバー手段(59)を有しており、前記カバー手段(59)のヘッド本体(51)側には、テーパ部(59a)が形成されている。
【0010】
なお、括弧内の番号等は、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0011】
以上の構成により第1の発明では、吸着ヘッドが、互いに隣接し密集した吸着部を有しており、これら吸着部のそれぞれにエア吸引手段が接続されているので、個々の吸着部によりワークの吸着が独立して行えるようになっている。従って、吸着の対象物が、複雑で細かいワークであり、しかも吸着ヘッドのうちいくつかの吸着部が該ワークの細かい部位からはみ出していたとしても、このワーク上にはみ出さずに位置している残りの吸着部を介してワークの吸着が有効に行えるので、該ワークを問題なく吸着することができる。つまり本発明によると、複雑で細かい形状のワークでも好適に吸着することができる。また吸着したワークを、既に積層されているワークの山のすぐ横などといった入り組んだ場所に搬送しようとする際には、ワークを吸着していない吸着手段が移動途中で他のワークの山などの障害物に当たるようなことがあるが、各吸着手段のスライド部は他の吸着手段とは独立して移動自在となっているので、障害物に当たった吸着手段は当たった状態で移動を停止する一方で、ワークを吸着している吸着手段は支障なく移動し、吸着していた前記ワークを搬送すべき位置まで問題なく搬送することができる。このように本発明では、入り組んだ場所にもワークを好適に搬送することができる。更に、本発明では、例えばいくつかの吸着手段がワークからはみ出すような場合には、ワークからはみ出した吸着手段に関してのみ、吸引断続制御手段を介して該吸着手段の吸着部に対するエアの吸引動作をオフとし該吸着部における吸着状態を断つようにする。これにより、ワークに対して有効な吸着力を発生できない吸着手段まで作動させて無駄なエネルギーを消費するようなことを避け、エネルギーの節約が実現する。更に、吸着手段で塵埃などワーク以外のものを吸着吸引してしまうといった不都合を排除できるので好都合である。
【0012】
また本発明のうち第2の発明では、第1の発明による効果に加えて、スライド部がエア吸引手段の一部を兼ねるので、その分、部材の節約ができ好都合である。また吸着部には、スライド部以外に別の配管等が施されないので、このような配管がワーク等と干渉するようなこともなく好都合である。
【0013】
また本発明のうち第3の発明では、例えばプレス加工等により凹凸の形成されたようなワーク(図示せず)でも、その凹凸のある表面に対して各吸着部を適宜回動させることにより整合させ、これら吸着部と該ワークとの間で有効な吸着力を発生させることができる。従って、第1の発明による効果に加えて、凹凸の形成されたようなワークの吸着が可能となり便利である。
【0014】
また本発明のうち第4の発明では、移動手段によりヘッド本体を移動させることにより、複雑なワークの形状に合わせて、該ワークにおける好適な吸着位置に吸着ヘッドを移動させることができるので、第1の発明による効果に加えて、より複雑なワークの吸着が可能となり好都合である。
【0015】
また本発明のうち第5の発明では、第1の発明による効果に加えて、カバー手段により複数の吸着部どうしがぶつかって破損するようなことを防止する。また、吸着部において吸引力を発生させている際に外部の塵埃等を不用意に吸引してしまうことを防止する。また、隣り合う吸着部どうしでの互いの位置が軸心方向にずれた後、ヘッド本体側を移動させることで、ずれたうちの一方の吸着部をそのスライド部を介して移動させ、前記隣り合う吸着部どうしの位置を再び揃えるような場合には、一方のカバー手段の端側が他方のカバー手段のテーパ部に当たり、このテーパ形状に沿って滑り移動するので、カバー手段どうしのひっかかりが防止され好都合である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。図1はレーザ加工設備全体を模式的に示した斜視図、図2はパレタイジングロボットを示した側断面図、図3は図2のI矢視図、図4は図2のII矢視図(一部断面図)、図5は吊下フレーム及びヘッドユニット等を示した斜視図、図6はヘッドユニットの1つを詳細にを示した側面図(一部断面図)、図7は図6のIII矢視図(一部断面図)、図8はヘッドユニットを上から見た図(一部断面図)、図9はヘッドフレームのヘッド支持部だけを示した平面図、図10は吸着ヘッド集合体を下から見た図、図11は吸着ヘッド集合体により加工済ワークを吸着している様子を示した斜視図、図12は搬送してきた加工済ワークをパレット上に受け渡している様子を示した斜視図、図13は吸着ヘッド集合体により加工済ワークを吸着しようとしている様子を示した側面図、図14は搬送してきた加工済ワークをパレット上に受け渡している様子を示した側面図、図15は4つの吸着ヘッド集合体の位置決め可能範囲を示した模式平面図、図16乃至図22は4つの吸着ヘッド集合体の位置決めパターンの例を示した模式平面図である。
【0017】
レーザ加工設備1は、図1に示すように、多数の板状の素材ワーク70Aを積層貯蔵し、これら積層貯蔵された多数の素材ワーク70Aの中から加工すべき素材ワーク70Aを適宜取り出すことのできる公知の素材ストッカ2を有しており、素材ストッカ2の側方(図1の紙面右側)には、レーザ光を利用して上述した素材ワーク70Aを切断加工することのできる公知のレーザ加工機3が2台設けられている(レーザ加工機3の台数は2台でなくてもよい)。2台のレーザ加工機3、3の更に側方(図1の紙面右側)にはレーザ加工機3で切断加工されてできた加工済ワーク70を載置することのできる公知の仕分け台5が2台設けられている(この仕分け台5の台数も2台でなくてもよい)。なお、これら素材ストッカ2、レーザ加工機3、3、仕分け台5、5は水平な所定の搬送方向(図の矢印A、B方向)に一列に並んで配置されている。
【0018】
これら素材ストッカ2、レーザ加工機3、3、仕分け台5、5の上方には前記搬送方向(図の矢印A、B方向)に伸延した形のガイドレール6が、これら素材ストッカ2、レーザ加工機3、3、仕分け台5、5の相互間を連絡する形で設置されており、ガイドレール6には搬送ロボット7が、該ガイドレール6に沿って前記搬送方向(矢印A、B方向)に移動駆動自在に設けられている。この搬送ロボット7は公知のものであり、真空パッド等を介して素材ワーク70Aを素材ストッカ2から各レーザ加工機3に搬送自在であり、またフォーク等を介して加工済ワーク70を各レーザ加工機3から各仕分け台5に搬送自在となっている。
【0019】
一方、2台の仕分け台5、5の更に側方(図1の紙面右側、従って図の矢印B側)には、公知のワークストッカ9が前記搬送方向(矢印A、B方向)に沿って整列配置された形で複数台(本実施例では4台であるがこの台数は4台でなくてもよい)設けられている。各ワークストッカ9上には、複数の加工済ワーク70を積層して載置すると共に、多数の加工済ワーク70を積層してできたワーク山700を並べて載置することのできる板状のパレット10が着脱自在に設置されている。上述した仕分け台5、5及び複数のワークストッカ9の上方には、図1に示すように前記搬送方向(図の矢印A、B方向)に伸延した形の平行な一対のガイドレール11、11が、適宜な支持部材11a、11aを介して、上述した仕分け台5、5及び複数のワークストッカ9の相互間を連絡する形で設置されている。これらガイドレール11、11には、パレタイジングロボット20が設けられている。
【0020】
パレタイジングロボット20は、図2乃至図4(但し図4ではガイドレール11、11等を省略している。)に示すように前記ガイドレール11、11に懸架された形の懸架フレーム21を有しており、該懸架フレーム21はガイドレール11、11に沿って前記搬送方向(矢印A、B方向)に移動自在になっている。懸架フレーム21にはモータ22a及び該モータ22aによって回転駆動されるギア22b、22b等からなる走行駆動装置22が設けられており、また前記支持部材11aにはガイドレール11、11に沿った形でラック11b、11bが設けられている。走行駆動装置22の各ギア22bは各ラック11bに噛合している。
【0021】
懸架フレーム21には平行な一対の移動用レール23、23が、前記搬送方向(矢印A、B方向)とは直角な水平方向である図の矢印C、D方向に伸延形成されている。これら移動用レール23、23には、第1フレーム25が懸架されて設けられており、該第1フレーム25は移動用レール23、23に沿って矢印C、D方向に移動自在になっている。第1フレーム25には、図4に示すようにモータ26a及び該モータ26aによって回転駆動されるギア26b等からなる移動駆動装置26が設けられており、また前記懸架フレーム21には、移動用レール23に沿った形でラック23aが設けられている。移動駆動装置26のギア26aはラック23aに噛合している。
【0022】
第1フレーム25には,図2に示すように上下に貫通した形の複数のガイド穴25aが形成されており(本実施例では図3に示すように4つ形成されている)、各ガイド穴25aには、図2及び図3に示すように、上下に伸延したロッド27が摺動自在に挿嵌されている。これらロッド27の下端側には第2フレーム29が接続されており、従ってこの第2フレーム29は第1フレーム25に対して上下方向(図の矢印E、F方向)に移動自在となっている。なお第1フレーム25と第2フレーム29の間には、図2乃至図4に示すように、空気圧シリンダ装置であるバランサ28(本実施例では2つ)が設けられており、このバランサ28によって第2フレーム29側の荷重が第1フレーム25において支持されている。また第2フレーム29には、図2或いは図3に示すように上方に伸延した棒状のネジ部材30(本実施例では2本)が、第1フレーム25を貫通した形で設けられており、第1フレーム25にはナット部材31(本実施例では2個)が該第1フレーム25に対して上下方向にのみ固定した形で設けられている。これら各ナット部材31はそれぞれ前記各ネジ部材30にボールネジ装置を構成する形で螺嵌されている。
【0023】
更に第1フレーム25には、モータ32aを有し、該モータ32aからの動力により前記各ナット部材31を回転駆動自在なナット駆動装置32が設けられている。更に第2フレーム29には、該第2フレーム29より下方(矢印F方向)に突出する形で上下方向に伸延した軸33が、上下に伸びた回転軸CT1を中心に矢印R1、R2方向に軸回転自在に設けられており、該軸33の下端側には吊下フレーム35が吊下され設けられている。なお第2フレーム29と軸33の間には回転駆動装置36が設けられている。回転駆動装置36は、図2に示すように第2フレーム29側に設けられたモータ36a及び、該モータ36aによってベルト等を介して回転駆動されるプーリ36b等からなリ、このプーリ36bは軸33に固設されている。そしてプーリ36bの回転により軸33が矢印R1、R2方向に回転駆動され得るようになっている。
【0024】
本実施例の吊下フレーム35は、図2及び図5に示すように基本的に略水平な板状であると共に、その平面形状は略十字型をしている。吊下フレーム35のうち十字型の4つの腕部先端付近に相当する各端部35aにはヘッドユニット45がそれぞれ設けられている(吊下フレーム35の形状は任意であり、ヘッドユニット45の数は1つ以上であればいくつでもよい)。各ヘッドユニット45は、図5、図6、図8に示すように、端部35aの下側に固定されたブラケット46を有しており、ブラケット46には水平で略直状なアーム47が上下方向(矢印E、F方向)に伸びた回転軸CT2を中心に図の矢印S、T方向に旋回自在に枢着されている。なおブラケット46部分には駆動モータ49が設けられており、この駆動モータ49の出力軸49a側は、前記回転軸CT2と同心状に配置されかつ前記アーム47に接続されている。
【0025】
アーム47にはスライド用レール50、50が、該アーム47に沿って、該アーム47の伸延方向である図の矢印P、Q方向(水平な方向)に伸延して設けられており、このスライド用レール50、50を介して吸着ヘッド58が設けられている。吸着ヘッド58はヘッドフレーム51を、上述したスライド用レール50、50に沿って矢印P、Q方向にスライド移動自在に有している(なお図5では簡単のためスライド用レール50は省略し、ヘッドフレーム51等も簡略化して直方体の形で示している)。ヘッドフレーム51には、モータ52a及び該モータ52aによって回転駆動されるギア52b等からなるスライド駆動装置52が設けられており、アーム47には、該アーム47に沿ってラック47aが設けられている。このラック47aにはスライド駆動装置52のギア52bが噛合している。
【0026】
またヘッドフレーム51には、図6、図7、図9に示すように、水平板状となったヘッド支持部53が形成されており、ヘッド支持部53には、上下に伸延したブシュ53a等を介して複数の吸着セット55(本実施例では19個であるが、この個数は複数であれば19個に限定されない)が支持されている。なお1つのヘッド支持部53に支持されている複数の吸着セット55は1まとまりとして吸着ヘッド集合体550を構成している。各吸着セット55は上下に伸延した棒状の管体56を有しており、この管体56が、上述したようにブシュ53a等を介してヘッド支持部53に貫通されている。即ち、管体56はヘッド支持部53に対して上下方向(矢印E、F方向)にスライド移動自在となっている。管体56の上端付近には前記ブシュ53a等を通過できない大きさのストッパ56aが設けられており、このストッパ56aが、ヘッド支持部53上に係止された形で管体56は該ヘッド支持部53に支持されている。
【0027】
管体56の下端には、図6、図7、図10、図11に示すように、笠形状の真空パッドであるパッド57が下方(矢印F方向)を向いて設けられており、また管体56の下端付近には、下方に開口した略円筒型のパッド保護部材59(図11では簡単のためパッド保護部材59は、一部の吸着セット55についてのみ二点鎖線で示している)が前記パッド57の側方周囲を覆い保護する形で設けられている。パッド保護部材59はその上側部分が、上方に細くなるテーパ状のテーパ部59aとなっている。なお、パッド57内は管体56の内部であるエア流路56c(図6)と該管体56の下端を介して接続連通しており、管体56の上端側には継手56bを介して伸縮自在なスパイラルチューブ等からなるチューブ60(各図面では簡単のため一点鎖線等の直線で示す)が、これらエア流路56aとチューブ60の内部が連通する形で接続されている。
【0028】
またヘッドフレーム51には、図6乃至図8に示すように、前記ヘッド支持部53の上方に、該ヘッド支持部53と上下に対向した形で水平な板状のチューブ支持部61が形成されており、各吸着セット55のチューブ60の端部はこのチューブ支持部61に適宜な継手61a(図7では省略)を介して接続支持されている。これにより多数のチューブ60のからまりは防止されている。なお、各チューブ60には上述した継手61aを介して更に別のチューブ等からなる気圧伝達部材62がそれぞれ接続されており、これら気圧伝達部材62の先は真空ポンプ63に接続されている(気圧伝達部材62及び真空ポンプ63は図6でのみ示す)。また各気圧伝達部材62の途中には、図6に示すように、該気圧伝達部材62の内部を開閉自在なバルブ65が設けられており、各バルブ65は図示しない所定のバルブ駆動装置等により選択的に駆動自在となっている。以上のように構成された複数の吸着セット55からなる吸着ヘッド集合体550は、図10に示すようにこれらのパッド57が円形の輪郭をなす形で互いに隣接して密集配置されている。
【0029】
レーザ加工設備1及びパレタイジングロボット20は以上のように構成されているので、該レーザ加工設備1では次のようにワークの加工及び仕分けが進められる。即ち図1に示すように、素材ストッカ2では積層貯蔵していた素材ワーク70Aが順次取り出され、取り出された素材ワーク70Aが搬送ロボット7によって各レーザ加工機3に順次搬送される。各レーザ加工機3では順次搬送されてきた素材ワーク70Aを順次切断加工し、各レーザ加工機3で加工が完了した加工済ワーク70は搬送ロボット7によって各仕分け台5に順次搬送される。一方、各仕分け台5に搬送された加工済ワーク70は、パレタイジングロボット20を介して以下詳述する手順で各ワークストッカ9の各パレット10上に順次搬送される。
【0030】
即ちパレタイジングロボット20は、懸架フレーム21に設けられた走行駆動装置22においてモータ22aを作動させギア22b、22bを回転駆動させることにより、これらギア22b、22b及びこれらと噛合したラック11b、11bを介して懸架フレーム21をガイドレール11、11に沿って矢印A方向に移動駆動させ、走行駆動装置22のブレーキ機能により所望の位置で位置決めさせる。これにより懸架フレーム21は、仕分け台5上にある、これから搬送すべき加工済ワーク70に対応した位置(該加工済ワーク70の上方で矢印A、B方向に揃った位置)に位置決めされた。
【0031】
次いで第1フレーム25に設けられた移動駆動装置26においてモータ26aを作動させギア26bを回転駆動させることにより、該ギア26b及びこれらと噛合したラック23aを介して第1フレーム25を懸架フレーム21に対し移動用レール23に沿って矢印C、D方向に移動駆動させ、移動駆動装置26のブレーキ機能により所望の位置で位置決めさせる。これにより第1フレーム25は、仕分け台5上にある、これから搬送すべき加工済ワーク70の略真上の位置に位置決めされた。
【0032】
次いで、4つのヘッドユニット45の各吸着ヘッド集合体550を、例えば図5に示すように目的の加工済ワーク70の形状に合う形で、まず該加工済ワーク70の上方で水平な2次元方向で移動位置決めさせる。この移動位置決めは以下説明する(a)吊下フレーム35の回転・位置決め、(b)アーム47の旋回・位置決め、(c)ヘッドフレーム51のスライド移動・位置決め、を行うことにより実行される。
【0033】
(a)吊下フレーム35の回転・位置決め。これはまず、第2フレーム29と軸33の間の回転駆動装置36においてモータ36aを作動させこれによりプーリ36bを回転駆動させることにより軸33を第2フレーム29に対して回転軸CT1を中心に図の矢印R1、R2方向に回転駆動させるようにする。こうして軸33の回転により吊下フレーム35側は第2フレーム29側に対して図の矢印R1、R2方向に回転駆動される。そして吊下フレーム35側が所望の位置まで回転したところで該吊下フレーム35側を回転駆動装置36側のブレーキ機能により停止位置決めさせる。
【0034】
(b)アーム47の旋回・位置決め。これは各ヘッドユニット45において個別に行うようにする。即ち各ヘッドユニット45において、ブラケット46に設けられた駆動モータ49を作動させ出力軸49aを介してアーム47を回転軸CT2を中心に図の矢印S、T方向に旋回駆動させる。このようにしてアーム47が所望の位置まで旋回したところで駆動モータ49のブレーキ機能によりアーム47を停止位置決めさせる。
【0035】
(c)ヘッドフレーム51のスライド移動・位置決め。これも各ヘッドユニット45において個別に行う。即ち各ヘッドユニット45においてヘッドフレーム51に設けられたスライド駆動装置52のモータ52aを作動させてギア52bを回転駆動させ、該ギア52bに噛合したラック47aを介してヘッドフレーム51をスライド用レール50、50に沿って矢印P、Q方向にスライド移動させる。こうしてヘッドフレーム51を所望の位置までスライド移動させたところで駆動装置52のブレーキ機能によりヘッドフレーム51を停止位置決めさせる。
【0036】
以上説明した(a)、(b)、(c)をそれぞれ行うことにより、或いは(a)、(b)、(c)のうちどれか1つ又は2つを行うことにより、また(b)、(c)を行う場合には4つのうち少なくとも1つのヘッドユニット45について(b)、(c)を行うことにより、4つのヘッドユニット45の各吸着ヘッド集合体550が、静止している第2フレーム29側に対し、従って仕分け台5上の加工済ワーク70に対して、水平な2次元方向に移動位置決めされ、例えば図5に示すようにこれから搬送しようとしている加工済ワーク70の形状に揃った形で位置決めされた。その後、第1フレーム25のナット駆動装置32においてモータ32aを作動させ該モータ32aにより各ナット部材31を回転駆動させることにより、これら各ナット部材31が螺嵌している各ネジ部材30を下方に駆動する。これにより第2フレーム29側は、複数のロッド27及びこれらが挿嵌したガイド穴25aを介してガイドされる形で、第1フレーム25側に対して下方向(図の矢印F方向)に移動駆動される。
【0037】
第1フレーム25側に対する第2フレーム29側の移動駆動を更に続け、従って4つのヘッドユニット45の吸着ヘッド集合体550を下降させ、図5に示すようにこれら吸着ヘッド集合体550の各パッド57が仕分け台5上の加工済ワーク70に当接した状態でナット駆動装置32の作動を停止し第1フレーム25側に対する第2フレーム29側の移動を停止させる。なおこの場合、吸着ヘッド集合体550の各パッド57が加工済ワーク70に当接した後も第1フレーム25側に対する第2フレーム29側の下降を多少続けてもよい。例えば、各パッド57が加工済ワーク70に当接した後に第1フレーム25側に対する第2フレーム29側の下降を続けると、図13(図13ではパッド保護部材59等は省略している)に示すように複数の吸着セット55を支持しているヘッド支持部53が下降することになる。しかし、各吸着セット55は管体56がスライド移動する形でヘッド支持部53に対して相対的に上方に移動自在となっており、従ってヘッド支持部53は各吸着セット55に対して相対的に下方に移動自在となっている。これにより、複数の吸着セット55が加工済ワーク70に当接し、この状態でこれら吸着セット55が加工済ワーク70に対して留まっていても、ヘッド支持部53側はこれら吸着セット55に対して不用意な力を与えること無くスムーズに下降する。このように第1フレーム25側に対する第2フレーム29側の移動量が特に正確でなくても、吸着ヘッド集合体550の各パッド57を加工済ワーク70に当接させる作業は正確かつ安全に行える。
【0038】
既に上述したように4つのヘッドユニット45の各吸着ヘッド集合体550が、例えば図5に示すように目的の加工済ワーク70の形状に揃って位置決めされていたので、上述したようにこれら吸着ヘッド集合体550が加工済ワーク70まで下降されることで、これら吸着ヘッド集合体550の多数のパッド57が、例えば図5に示すように加工済ワーク70に好適に当接した状態となった。
【0039】
ところで、本実施例の4つのヘッドユニット45は、図15に示すように、各アーム47の旋回中心である回転軸CT2が吊下フレーム35を吊下している軸33の回転軸CT1を中心に90度間隔で同一円周上に配置されており、それぞれのアーム47の長さは回転軸CT1、CT2間の距離よりも少しだけ短くなっている。また、各アーム47の吸着ヘッド集合体550は、該アーム47の回転軸CT2付近から該アーム47の先端付近まで移動自在となっているため、各吸着ヘッド集合体550を水平な2次元方向(水平面内)で位置決めできる範囲RF1〜RF4は、それぞれの回転軸CT2を基準にすると例えば図15の斜線で示すような範囲となる(図15中の二点鎖線はアーム47や吸着ヘッド集合体550の移動する軌跡を示す)。これに加えて、既に説明したように第2フレーム29に対する吊下フレーム35側の回転軸CT1を中心とした回転移動により各ヘッドユニット45全体が回転軸CT1を中心に回転移動するので、回転軸CT1を基準にした場合の、各吸着ヘッド集合体550を水平な2次元方向(水平面内)で位置決めできる範囲RGは、例えば図15に示すように、回転軸CT1を中心とした円内の範囲(図15の一点鎖線で示す)となる。つまり、搬送すべき加工済ワーク70が、吊下フレーム35の下方の範囲RG内にある限りどのような形状であったとしても、この加工済ワーク70に対する各吸着ヘッド集合体550の位置決めは適切に行える。
【0040】
例えば図16(図5)や図18に示すように、各アーム47の先端を回転軸CT1付近に集める形で、これらアーム47の吸着ヘッド集合体550を回転軸CT1付近に移動し位置決めすることにより、回転軸CT1付近にある小さなコの字型のワーク70(図16)や、回転軸CT1付近にある円形のワーク70(図18)に対する吸着ヘッド集合体550の位置決めが実現する。また例えば図17に示すように、図18の状態より1つの吸着ヘッド集合体550(図中紙面下側の吸着ヘッド集合体550)を更に回転軸CT1に近づける形で位置決めすることにより、回転軸CT1付近の小さな三角形型のワークに対する吸着ヘッド集合体550の位置決めが実現する。
【0041】
また図19や図21に示すように、図18の状態より1つのアーム47(図中紙面下側のアーム47)を旋回移動させて回転軸CT1より遠ざけ、該アーム47とは別のアーム47(図中紙面右側のアーム47)の吸着ヘッド集合体550を該アーム47に沿って移動させ回転軸CT1より遠ざけることにより、図中紙面左右方向に長細く複雑な形状(長細く突起のある形状)のワーク70に対する吸着ヘッド集合体550の位置決めが実現する。
【0042】
また図20に示すように、図19の状態よりも2つのアーム47(図中紙面下側及び紙面右側のアーム47、47)を旋回移動させて回転軸CT1より遠ざけることにより図19での形状よりも更に複雑な形状のワーク70に対する吸着ヘッド集合体550の位置決めが実現する。また図22に示すように、図18の状態よりも2つのアーム47(図中紙面下側及び紙面右側のアーム47、47)を旋回移動させて回転軸CT1より遠ざけることにより図18での形状よりも図中紙面左右等に大きく複雑な形状のワーク70に対する吸着ヘッド集合体550の位置決めが実現する。その他図示しないが4つの吸着ヘッド集合体550を様々なパターンで位置決めして、多種多様な複雑な形状のワークに対する位置決めが実現可能である。
【0043】
以上のように図5に示すように4つの吸着ヘッド集合体550を加工済ワーク70に位置決めした後、該ワーク70の吸着を行う。予め、真空ポンプ63(図6)は作動されており各気圧伝達部材62のバルブ65は閉塞状態になっている。そこでワーク70の吸着を行うため、各気圧伝達部材62のバルブ65を駆動して開放状態にする。これにより、気圧伝達部材62、チューブ60、管体56を介して真空ポンプ63と接続した各パッド57内が減圧され吸引力が発生する。各パッド57は図5及び図13に示すように目的の加工済ワーク70上に当接しているので、パッド57とワーク70の間に吸着力が発生し該ワーク70を吸着する。なおこの際、図11に示すように1つの吸着ヘッド集合体550の複数のパッド57には、完全にワーク70上に位置しているパッド57(図中で模様をつけて示したパッド57)と、ワーク70からはみ出しているパッド57(完全にワーク70の外に出ていたり、パッド57の一部分がワーク70から外れているパッド57であり、図中で模様のないもの)があってもよい。即ち、各パッド57では互いに独立した形で吸引力を発生させるので、ワーク70からはみ出しているパッド57ではワーク70に対する吸着力が有効に発生しないが、これとは無関係に、完全にワーク70上に位置しているパッド57においてはパッド57とワーク70間に気密性が保たれ吸着力が有効に発生する。従って、吸着ヘッド集合体550の全てのパッド57が完全確実にワーク70上になくともワーク70を確実に吸着するのに必要な吸着力を得ることができるので、幅が吸着ヘッド集合体550よりも小さなワークや細かく複雑な形状のワークでも吸着力を有効に発生させて問題なくワークを吸着させることができるので好都合である。なおワークの吸着を行う際には、ワーク70からはみ出ているパッド57に対応する気圧伝達部材62においてバルブ65を駆動して閉鎖状態とする。これによりワーク70との間で有効な吸着力を発生させられないパッド57に対して無駄な吸引力を与えずに済みエネルギーを節約できる。また特にワーク70からはみ出しているパッド57が、仕分け台5や他のワーク70など吸着目的のワーク70以外のものを吸着してしまったり、塵埃を吸引してしまったりといった不都合も回避できるので好都合である。
【0044】
以上のように加工済ワーク70を吸着した後、ナット駆動装置32により第2フレーム29側を第1フレーム25側に対して上方向(図の矢印E方向)に移動駆動させ吸着した加工済ワーク70を所定の高さまで上昇させる。次いで、走行駆動装置22により懸架フレーム21をガイドレール11、11に沿って矢印B方向に移動駆動させてパレタイジングロボット20を所望の位置(吸着している加工済ワーク70を受け渡すべきワークストッカ9のパレット10と矢印A、B方向において揃った位置)に停止させる。
【0045】
次いで移動駆動装置26により第1フレーム25側を懸架フレーム21に対し移動用レール23に沿って矢印C、D方向に移動駆動させて、吸着している加工済ワーク70を所望の位置(該加工済ワーク70を受け渡すべきパレット10上の位置の略真上の位置)に移動させ第1フレーム25側を停止位置決めさせる。更に回転駆動装置36により軸33を第2フレーム29に対して回転軸CT1を中心に図の矢印R1、R2方向に回転駆動させ吊下フレーム35側を図の矢印R1、R2方向に回転駆動させることにより吸着している加工済ワーク70の向きを所望する方向に調整する。
【0046】
次いで、ナット駆動装置32により第2フレーム29側を第1フレーム25側に対して下方向(図の矢印F方向)に移動駆動させ吸着している加工済ワーク70をパレット10上に降下させる。更に第2フレーム29側を第1フレーム25側に対して下方向に移動駆動させて、吸着しているワーク70を更に降下させ、図12(なお図12では簡単のためパレタイジングロボット20側は吸着ヘッド集合体550及び簡略表示したヘッドフレーム51だけを示している)或いは図14(図14ではパッド保護部材59等は省略している)に示すように該ワーク70をパレット10上の所定の位置(図では既に積層載置されたワーク山700の上となっているがパレット10の表面であってもよい)に載置させる。載置の後、各気圧伝達部材62のバルブ65を閉鎖し、各パッド57とワーク70間の吸着力を解除し該ワーク70の吸着を解除する。これにより吸着搬送してきたワーク70はパレット10上のワーク山700の上に載置される形で受け渡された。
【0047】
なおこの際、吸着していた加工済ワーク70がパレット10側に載置された後も第1フレーム25側に対する第2フレーム29側の下方への移動駆動を多少続けてもよい。加工済ワーク70がパレット10側に載置された後に第1フレーム25側に対する第2フレーム29側の下方への移動駆動を続けると、図14(ワーク70を吸着していた吸着セット55は図中紙面中央の2本である)に示すように複数の吸着セット55を支持しているヘッド支持部53が更に下降することになる。しかし既に説明したようにヘッド支持部53は各吸着セット55に対して相対的に下方に移動自在となっているので、各吸着セット55がワーク70等に当たってこれ以上下方に移動せず停止している状態でありながらヘッド支持部53は、これら吸着セット55により妨げられることなく下降でき、吸着セット55もヘッド支持部53等により不用意な力を受けずに済む。つまり第1フレーム25側に対する第2フレーム29側の移動量が特に正確でなくても、吸着していた加工済ワーク70の載置受け渡しは適切に行えるので好都合である。また通常はパレット10上では複数のワーク70をワーク山700として積層載置するため、既にできているワーク山700の高さによって、その上に載置すべきワーク70の載置位置(高さレベル)が異なる。しかし本例のパレタイジングロボット20では、上述したように第1フレーム25側に対する第2フレーム29側の移動量が特に正確でなくても、吸着していたワーク70を所定の載置位置(高さレベル)に載置受け渡しできるので、例えばワーク70の下降時の上下方向における移動量を常に一定にしておいても、各場合に応じて異なる高さレベルでのワーク70の載置受け渡しが適切に行える。これにより上下方向における移動量の制御が簡単になり好都合である。
【0048】
なお、加工済ワーク70を載置し受け渡す際には、パレット10上の限られた空間を効率よく利用して多数のワークを仕分ける必要上、例えば図12及び図14に示すように、既に有るワーク山700の横にワーク山700を作る形で搬送してきたワーク70を載置し受け渡している。この例では、ワーク70を吸着していない吸着セット55(図14中の紙面左側2本の吸着セット55)の真下に、既に有る別のワーク山700が、吸着しているワーク70を載置すべき載置位置(高さレベル)よりも高くなって存在している。従って、吸着しているワーク70を下降させる際には、まずワーク70を吸着していない吸着セット55(図14中の紙面左側2本の吸着セット55)が前記別のワーク山700の上面に当接する。しかし、そのままワーク70の下降を続けると、ワーク山700に当接した吸着セット55がだけが当接した状態で留まりヘッド支持部53に対して相対的に上方にスライド移動する。これは1つの吸着ヘッド集合体550において各吸着セット55が独立してヘッド支持部53に対して相対的に上下に移動自在となっているからである。従って、ワーク山700に当接した吸着セット55はヘッド支持部53側の下降を妨げず、また逆にこれら吸着セット55はヘッド支持部53側から不用意な力を受けない。そしてワーク70を吸着している吸着セット55は支障なく下降し、該ワーク70を所定の載置位置に載置し受け渡しできる。このように狭い場所でもワーク70の受け渡しが好適に行えるようになっている。
【0049】
ところで、各吸着セット55におけるパッド保護部材59は、吸着ヘッド集合体550において複数のパッド57どうしがぶつかって破損するようなことを防止するほか、該パッド57において吸引力を発生させている際に外部の塵埃等を不用意に吸引してしまうことを防止する働きをなしている。また図14のように吸着ヘッド集合体550において各吸着セット55の位置が上下方向にずれた後、ヘッド支持部53側を上昇させることで該ヘッド支持部53に対して上方に移動していた吸着セット55が自重で下降し(バネ等を用いて強制的に下降させる構造でもよい)、図6等に示すように全ての吸着セット55が同じ高さに揃うようになる。ここで、互いに隣接した複数のパッド57のパッド保護部材59は、その上部側にテーパ部59aを有しているため、隣接するパッド保護部材59、59が上下にずれた後に再び同じ高さに戻る際には、上方から下降してくるパッド保護部材59の下端側が下方に有る隣のパッド保護部材59のテーパ部59aに当たり、このテーパ形状に沿って滑り落ちる。これによりパッド保護部材59、59どうしのひかかりが防止され好都合である。
【0050】
以降、上述したのと同様の手順で、パレタイジングロボット20を、次に搬送すべきワークが載置されている仕分け台5まで矢印A方向に走行移動させ、懸架フレーム21に対する第1フレーム25の矢印C、D方向への移動・位置決め及び、(a)吊下フレーム35の回転・位置決め、(b)アーム47の旋回・位置決め、(c)ヘッドフレーム51のスライド移動・位置決めにより4つの吸着ヘッド集合体550を仕分け台5上の目的の加工済ワーク70に合わせて位置決めし、第1フレーム25に対して第2フレーム29側を下降させることにより各吸着パッド集合体550の複数のパッド57を目的のワークに当接させた後、これらパッド57によりワークを吸着し、第1フレーム25に対して第2フレーム29側を上昇させてパレタイジングロボット20を、ワークストッカ9まで矢印B方向に走行移動させ、懸架フレーム21に対する第1フレーム25の矢印C、D方向への移動・位置決め及び、吊下フレーム35側の回転・位置決めにより吸着搬送されて来たワークをワークストッカ9のパレット10上の載置すべき位置に合わせて調整し、第1フレーム25に対して第2フレーム29側を下降させることにより吸着しているワークを載置位置に載置しパッド57による吸着を解除して受け渡しを完了する、といった一連の動作を繰り返すことにより各仕分け台5に順次載置された加工済ワーク70を順次吸着搬送して各ワークストッカ9のパレット10上に載置して受け渡す。
【0051】
既に述べたように本実施例のパレタイジングロボット20では、(a)吊下フレーム35の回転・位置決め、(b)アーム47の旋回・位置決め、(c)ヘッドフレーム51のスライド移動・位置決めにより、複数の吸着ヘッド集合体550がそれぞれ水平な2次元方向に移動位置決め自在に設けられているので、複雑な形状のワークに対しても各吸着ヘッド集合体550を適切に位置決めでき該ワークを問題なく吸着搬送できる。また、各吸着ヘッド集合体550ではパッド57が互いに隣接する形で設けられた複数の吸着セット55からなっており、各吸着セット55のパッド57で独立して吸引力が発生するので、吸着ヘッド集合体550のうちいくつかのパッド57がワークからはみ出していても残りのパッド57によりワークを好適に吸着できるので、例えば吸着ヘッド集合体550よりも幅が小さいような細かく複雑なワークでも自在に吸着できるので好都合である。
【0052】
なお上述した例では吸着セット55において、管体56とパッド57の間は固定的に接続されていたが、別の例として管体56とパッド57の間を図示しないユニバーサルジョイント等を介して接続し、パッド57を管体56に対して全方向(例えば図11の紙面右隅に示す矢印M1、M2、M3、M4方向など)に回動自在としてもよい。これにより、例えばプレス加工等により凹凸の形成されたようなワーク(図示せず)でも、その凹凸のある表面に対して各パッド57を適宜回動させることにより整合させ、これらパッド57と該ワークとの間で有効な吸着力を発生させることができ、凹凸の形成されたようなワークの吸着搬送が可能となる。
【0053】
なお上述した実施例では、吸着ヘッド集合体550が、軸33、吊下フレーム35、回転駆動装置36、アーム47、駆動モータ49、ヘッドフレーム51、スライド駆動装置52等からなる水平方向移動機構を介して水平な2次元方向に移動位置決め自在になっているが、前記水平方向移動機構はその他様々な構成が可能である。例えば複数個所に屈曲自在な関節部をもつアームを第2フレーム29等に設け、このアームの先端側に吸着ヘッド集合体550を設置することも可能である。
【0054】
また上述した実施例では吸着セット55において管体56が、ヘッド支持部53に対して上下方向に移動自在な形でパッド57を接続支持する部材であり、かつパッド57に対して真空ポンプ63側からの減圧を伝達する吸引手段でもあったが、別の例として管体56の代わりに吸引手段を兼ねない棒状のスライド部材を採用し、該スライド部材に接続されたパッド57には、真空ポンプ63側に接続されたチューブ等からなる吸引手段を直接接続してもよい。
【0055】
なお上述した各例では吸着ヘッドをレーザ加工設備において適用した例となっているが、本発明による吸着ヘッドはレーザ加工設備に限定されず、その他のタイプの工作機械設備において適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】レーザ加工設備全体を模式的に示した斜視図である。
【図2】パレタイジングロボットを示した側断面図である。
【図3】図2のI矢視図である。
【図4】図2のII矢視図(一部断面図)である。
【図5】吊下フレーム及びヘッドユニット等を示した斜視図である。
【図6】ヘッドユニットの1つを詳細にを示した側面図(一部断面図)である。
【図7】図6のIII矢視図(一部断面図)である。
【図8】ヘッドユニットを上から見た図(一部断面図)である。
【図9】ヘッドフレームのヘッド支持部だけを示した平面図である。
【図10】吸着ヘッド集合体を下から見た図である。
【図11】吸着ヘッド集合体により加工済ワークを吸着している様子を示した斜視図である。
【図12】搬送してきた加工済ワークをパレット上に受け渡している様子を示した斜視図である。
【図13】吸着ヘッド集合体により加工済ワークを吸着しようとしている様子を示した側面図である。
【図14】搬送してきた加工済ワークをパレット上に受け渡している様子を示した側面図である。
【図15】4つの吸着ヘッド集合体の位置決め可能範囲を示した模式平面図である。
【図16】4つの吸着ヘッド集合体の位置決めパターンの例を示した模式平面図である。
【図17】4つの吸着ヘッド集合体の位置決めパターンの例を示した模式平面図である。
【図18】4つの吸着ヘッド集合体の位置決めパターンの例を示した模式平面図である。
【図19】4つの吸着ヘッド集合体の位置決めパターンの例を示した模式平面図である。
【図20】4つの吸着ヘッド集合体の位置決めパターンの例を示した模式平面図である。
【図21】4つの吸着ヘッド集合体の位置決めパターンの例を示した模式平面図である。
【図22】4つの吸着ヘッド集合体の位置決めパターンの例を示した模式平面図である。
【符号の説明】
【0057】
51……ヘッド本体(ヘッドフレーム)
52……移動手段(スライド駆動装置)
55……吸着手段(吸着セット)
56……スライド部(管体)
56a……エア流路
57……吸着部(パッド)
58……吸着ヘッド
59……カバー手段(パッド保護部材)
59a……テーパ部
60……エア吸引手段(チューブ)
62……エア吸引手段(気圧伝達部材)
63……エア吸引手段(真空ポンプ)
65……吸引断続制御手段(バルブ)
70……対象物(ワーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水平方向に移動駆動自在に設けられた第1のフレームを有し、前記第1のフレームに第2のフレームを昇降自在に設け、
前記第2のフレームに、吊下フレームを上下方向に伸びた第1の回転軸を中心に回転位置決め自在に設け、
該吊下フレームに複数のアームを、上下方向に伸びた第2の回転軸を中心に回転位置決め自在にそれぞれ設け、
前記アームの長さは、前記第1の回転軸とそれぞれのアームの前記第2の回転軸との間の距離よりも少しだけ短くなるように、それぞれ設定されており、
前記各アームに、吸着ヘッドを、該アーム上を該アームに沿って水平方向に移動駆動位置決め自在に設け、
前記吸着ヘッドは、
ヘッド本体、
前記ヘッド本体に設けられた複数の吸着手段、
前記各吸着手段に設けられ、前記ヘッド本体に対して軸心方向に、他の吸着手段とは独立した形で移動自在に支持された棒状のスライド部、
前記各スライド部の先端に、対象物の非吸着状態で互いに隣接する形で密集配置された吸着部、
前記各吸着部に接続されたエア吸引手段、及び、
前記エア吸引手段に設けられ、各吸着部に対するエアの吸引動作を個別的にオン/オフ制御可能な吸引断続制御手段、
を設けて構成したワーク吸着搬送装置。
【請求項2】
前記棒状のスライド部は、内部にエア流路が形成された形で中空管状に形成されており、前記エア流路は、前記各吸着部からエアを吸引する前記エア吸引手段の一部を構成することを特徴とする請求項1記載のワーク吸着搬送装置。
【請求項3】
前記各吸着部は前記棒状のスライド部に対して全方向に回動自在に支持されていることを特徴とする請求項1記載のワーク吸着搬送装置。
【請求項4】
前記ヘッド本体には、該ヘッド本体の移動手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載のワーク吸着搬送装置。
【請求項5】
前記各吸着部はそれぞれの吸着部をカバーするカバー手段を有しており、前記カバー手段のヘッド本体側には、テーパ部が形成されていること特徴とする請求項1記載のワーク吸着搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−105878(P2007−105878A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−16117(P2007−16117)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【分割の表示】特願平10−315414の分割
【原出願日】平成10年10月19日(1998.10.19)
【出願人】(000114787)ヤマザキマザック株式会社 (80)
【Fターム(参考)】