説明

ワーク搬送装置

ワーク搬送体(2)は、ロータリフレーム(3)と駆動部(22)とを具備し、双方とも駆動軸(4)に対して回転可能である。前記ロータリフレーム(3)は、モータ(6)によって駆動され、ホルダ軸に対して回転可能なように駆動軸(4)周りに配設されている複数のワーク支持体(13)を搬送する。駆動部(22)に搭載されている取付部には、前記駆動軸(4)からの偏心距離にある出力ポイント(29)の中央において、固定型中央ホイール(21)と変速部(26)のリングギヤ(27)と噛合うピニオン(25)が取り付けられる。ワーク支持体(13)の駆動ピン(19)を介して、変速部(26)上の駆動開口部(28)は、前記ホルダ軸から偏心距離にある。ロータリフレーム(3)の回転に際し、駆動部(22)は駆動軸(4)を中心とし、さらに変速部(26)に負荷をかけ、前記ロータリフレーム(3)に付随的に回転し、出力ポイント(29)が駆動軸(4)周りに円運動するように偏心動作をなす。その結果、ワーク支持体(13)が対応して回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載されるようなワーク搬送装置に関するものである。かかる装置はワークの処理に用いられるもので、特に、真空装置において、さらに前記ワークのコーティングに用いられる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、一般的なタイプのワーク搬送装置が開示され、その装置における変速部は、変速部の対応する凹部により囲まれた、回転軸に偏心的に連結された駆動ディスクを有している。
ワークの回転とロータリフレームの回転との間の変速比は、駆動ディスクの動作を直接制御する補助ギヤセットを介してのみ、影響を及ぼすことができる。
【0003】
特許文献2において別のワーク搬送装置が開示されている。この場合、ロータリフレームに回転可能に取り付けたワークホルダは、ワークホルダ上の歯車がロータリフレームの駆動軸を同軸状に囲み、ベースフレームに対し捩れなくされているリングギヤと噛合うごとに回転されるようになっている。
この既知のワーク搬送装置は、比較的構造が複雑である。変速比は、狭い範囲でのみ選択可能である。
【0004】
特許文献3で開示されるワーク搬送装置の場合、ワークホルダの回転は、ベースフレームに固定され、ワークホルダに一時的に噛合う駆動部材によりもたらされる。この場合、回転は間欠的であり、通常、それ自体で不利であり、特に、複数の極薄の層からなるコーティングが施される場合、ワークの質を損なうものである。
【0005】
特許文献4では、ワーク搬送体が複数の同心リング内のロータリフレームに配列されるワーク搬送装置が開示されている。リングのそれぞれのワーク搬送体は、ロータリフレーム上の固定した中央ホイールと噛合う中間ギヤセットにより、回転せしめられる。リングに付属するワーク搬送体は、この回転が残余のワーク搬送体に伝達されるような方法で、作動的に連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2007/025 397
【特許文献2】欧州特許公開1 153 155
【特許文献3】ドイツ国特許公開198 03 278
【特許文献4】ドイツ国特許公開103 08 471
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、単純な構造で、信頼性があり、単純な手法で変速比を調整することができる、通常タイプのワーク搬送装置を開示することを目的としている。本目的は、請求項1の特徴箇所により達成される。
【0008】
本発明が達成する有利な点は、特に、ワークホルダの動作が、非常にシンプルであるにも関わらず、比較的広い範囲で変速比を選択することができるということである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明は、以下において一例としての実施形態を示す図面を参照して、よりよく説明される。
【図1】本発明にかかるワーク搬送装置の第1実施形態における、模式的な軸方向の図である。
【図2】図1の詳細図である。
【図3】図2の上方からの詳細図である。
【図4】本発明のワーク搬送装置の部分的な斜視図である。
【図5】本発明のワーク搬送装置の一部の上方からの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明にかかるワーク搬送装置の好適な実施形態を示している。固定されたベースフレーム1上に、垂直駆動軸4周りに回転可能なように前記ベースフレーム1上に取り付けられたロータリフレーム3を有し、下端部において、モータ6によって駆動される歯車7と噛合うリングギヤ5を外側に有するワーク搬送体2が配置されている。ロータリフレーム3は、閉じられたハウジングとして構成され、そのハウジングは、駆動軸4に対して回転対称であり、中央管状部8を備え、それらの間には駆動軸4に沿って配置され、連続的な突出部(最低部のみが図1に示されている。 さらに図4参照)を有し、それらはそれぞれ底部9、カバー10と、管状部8に対して同心のアウターリング11とから構成されており、アウターリング11は、底部9の外側端部に結合され、カバー10の外側縁部からいく分か突出している。
【0011】
ロータリフレーム3は、突出部のそれぞれに、ワーク支持体13の群12が、それぞれ同一高さに、駆動軸4を囲む円弧上に一様に分散配置されている。それぞれのワーク支持体13は、駆動軸4に平行なホルダ軸に対し回転可能であり、ロータリフレーム3の突出部に部分的に配設されるベース14と、ワーク16を保持する取付部15とを具備し、取付部15は、カバー10を通してもたらされている軸ピン17を介しベース14に取り付けられている。ベース14は、さらに下向きの円錐形状チップを有するベアリングピン18を具備する。ベアリングピン18の軸は、軸ピン17同様に、ホルダ軸と一致し、前記チップが対応する凹部に結合する底部9に回転可能に取り付けられている。
ベアリングピン18と軸ピン17とは、それぞれホルダ軸に平行に、しかし離隔した駆動ピン19を備えるクランク形状の中間部材によって連結されている。ベース14は、実質的に一定の断面の単純な曲げ部品である。取付部15は円筒状凹部を有し、ワーク16、例えばフライス削りヘッド、を受け入れるように頂部に向かって開口している。
【0012】
ベースフレーム1に回転不能に固定されたシャフト20は、外側歯部を有するベースフレーム1(図2、図3参照)に対し、捩れないようにされた中央ホイール21の群のそれぞれの高さで稼動する。
それぞれ同程度の高さに配置されている駆動部22は、駆動軸4に対して回転可能な取付部を具備し、中央ホイール21上に横設される上部アーム23と、中央ホイール21下に横設される同様の下部アーム24を備え、取付部に取り付けられる中間ギヤセットを有する。その中間ギヤセットは、この例では上部アーム23と下部アーム24間に取り付けられるピニオン25のみからなり、ピニオン25は、駆動軸4に平行なピニオン軸周りを回転可能であり、中央ホイール21の歯部と噛合う噛合い部を有している。
【0013】
ピニオン25は、中央ホイール21の高さにあるワーク支持体13の群12の駆動ピン19と、円形の中央カップリング切欠きを有する変速部26による駆動部22と連結している。切欠きの縁部は、ピニオン25の噛合い部と噛合う、内方に指向するリングギヤ27を運行する。さらに外側において、変速部26はそれぞれのワーク支持体13においてワーク支持体13の駆動ピン19の突出部を挿通する駆動開口部28を有している。変速部26は、それ故、それぞれ回転可能な状態、あるいはわずかな遊びを設けてワーク支持体13に結合され、駆動部22、さらに正確には、それのピニオン25と係合している。
【0014】
変速部26上のリングギヤ27の中心点が、駆動軸4から偏心距離E離れた出力ポイント29である。それぞれのホルダ軸から、それぞれのワーク支持体13の駆動ピン19までの距離は、同様に偏心距離Eに対応している。
図2、3にのみ模式的に示されている変速部26は、打ち抜き加工して形成され(図4に、大多数のワーク支持体13とシャフト20が省略されている、突出部がハウジングの部分として示されている)、カップリング切欠きを囲むインナーリング30と、同数のワーク支持体13と噛合う66個の駆動開口部28が、円周上に分配されて設けられているアウターリング31とを有する、
インナーリング30とアウターリング31とは、半径方向のスポーク32により連結されている。スポーク32は、例えば、各群12のワーク支持体13のうちの一つに障害が発生したときに破断するように予め決められた破断箇所を成す穴33によって、脆弱化されている。
【0015】
ロータリフレーム3がモータ6により、駆動軸4周りに回転されると、ロータリフレーム3に結合したワーク支持体13と噛合う変速部26は、ワーク支持体13を介して付随的に作動される。ピニオン25の歯部が、リングギヤ27と噛合うと、ピニオン25は回転せしめられ、中央ホイール21により駆動される。その結果、駆動部22が変速部26に対して回転して偏心動作をもたらし、その場合、駆動軸4から出力ポイント29に向かうベクトルは偏心距離Eに対応する長さを有するが、駆動軸4の周りに回転する。偏心動作は、駆動ピン19に伝達される。それぞれの偏心動作の回転は、ワーク支持体13の回転をもたらし、ホルダ軸から対応する駆動ピン19に向かうベクトルは、上述のベクトルに対し、常時平行である。
【0016】
変速部26と駆動部22の動作が、前記ベースフレーム1(図3、5参照、後者においてカバー10が省略されている)に固定する座標系で示され、そして中央噛合い部の歯数、すなわち、中央ホイール21の歯数を、Zzで示し、変速噛合い部、すなわちリングギヤ27の噛合い部の歯数をZuで示すとすれば、駆動部22の駆動軸4に対する時計回りの回転が得られ、変速部26の偏心動作の間の旋回に対応して、すなわちUu=1のとき、それの回転Uとロータリフレーム3は
=1+Zz/Zu………(1)
時計回りの回転となる。それ故、z=Zz/Zuのときは、以下のようになる。
:Uu=1+z………(1’)
【0017】
これは、変速部26が、一方では付随的に回転するということ、すなわち、時計回りにフル回転が達成されること、そして、他方では、中央ホイール21上で駆動されるピニオン25の回転によって、さらにZを通して回転するということから得られる。
ロータリフレーム3の1+Z回転後、さらに駆動部22の回転が伴う。このように、変速比、すなわち、一方は駆動部22の回転比、すなわち変速部26の偏心動作の回転比と他方はロータリフレーム3の回転比である比は、
u=U/U=1/1+Z………(2)
それ故、例えば、図4、5で示される実施形態のように、Z=46,Z=60,のとき、Zは略0.77でありuは略0.57となる。偏心動作は、ロータリフレーム3に対して後方に進行する。回転速度比はu−1、すなわち例えば略−0.43となる。
【0018】
変速比はZのみに依存し、例えば、中央ホイール21と駆動部22とを備えるシャフト20を変えることによって、容易に変更することができる。従って、例えば、より小さな中央ホイールを有する異なるシャフトを使用することができ、(2)式によってZを減ずることができ、また、変速比uを増大させることができる。その際、変速部のリングギヤとの噛合いは、大きなピニオンが要求されるが、これらのことは、変速比uに影響を及ぼすものではない。必要であれば、コストが嵩むがさらに変速部を変更し得る。
【0019】
しかしながら、ピニオンの代わりに、駆動の取付部に取り付けられる複数の歯車からなる、より複雑な中間ギヤセットを用いることも可能である。順次、中央ギヤと動力的に伝達可能に噛合わされた変速ギヤを用いることも可能である。変速比uは異なる中間ギヤセットおよび/または中央ホイールを具備するシャフトを用いた様々なワーク搬送体の群に応じて、相違するように設定し得る。
【0020】
以上、説明した具体的な実施形態は、本発明の目的から外れることなく、変形することが可能である。それ故、中央噛合い部は、ベースフレームに回転不能に結合される必要はない。例えば、ロータリフレームの動きにより作動する補助のギヤセットを介し、中央噛合い部がその都度円運動を達成することができるように主要ホイールをベースフレームに運行するシャフトに結合することができる。
このタイプの補助ギヤセットは、例えば、特許文献1において説明されるように構成しインストールすることができる。
さらに、変速比は上述したように、主要ホイールと駆動部を具備するシャフトを交換することで、容易に変更することができる。
前述の文献の図10において記載されている実施形態のように、実施形態で記載されていることに対応する、複数のワーク支持体は、ロータリフレームのリングギヤが固定型ギヤホイールに噛合い、噛合うことができる間、モータにより回転させることができるベースフレームについて主軸の周りに配置することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 ベースフレーム
2 ワーク搬送体
3 ロータリフレーム
4 駆動軸
5 リングギヤ
6 モータ
7 歯車
8 管状部材
9 底部
10 カバー
11 アウターリング
12 群
13 ワーク支持体
14 ベース
15 取付部
16 ワーク
17 軸ピン
18 ベアリングピン
19 駆動ピン
20 シャフト
21 中央ホイール
22 駆動部
23 上部アーム
24 下部アーム
25 ピニオン
26 変速部
27 リングギヤ
28 駆動開口部
29 出力ポイント
30 インナーリング
31 アウターリング
32 スポーク
33 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのワーク搬送体(2)を有するワーク搬送装置であって、
駆動軸(4)に回転可能にベースフレーム(1)に取り付けられたロータリフレーム(3)と、
前記ロータリフレーム(3)に関連して前記駆動軸(4)に同様に回転可能な駆動部(22)と、
さらに前記駆動軸(4)から所定距離をおいて、前記駆動軸(4)に平行なホルダ軸に対して回転可能に前記ロータリフレーム(3)に取り付けられている複数のワーク支持体(13)と、
そしてさらに、少なくとも前記ロータリフレーム(3)と関連して前記ワーク支持体(13)を回転させるための一つの固定した変速部(26)であって、
一方で、前記駆動軸(4)から偏心距離(E)にある出力ポイント(29)まわりの駆動部(22)に回転可能に噛合っており、他方で、前記ホルダ軸から等しい偏心距離(E)にあるドライブポイントのそれぞれについての少なくとも二つのワーク支持体(13)に噛合っている変速部(26)と、
を具備し、
前記装置は、前記ベースフレーム(1)に取り付けられ、前記駆動軸(4)を囲む中央噛合い部を具備し、前記変速部(26)は出力ポイント(29)を囲む変速噛合い部を備え、前記駆動部(22)は、前記駆動軸(4)周りに回転可能な取付部と、さらに前記取付部に配置され、前記中央噛合い部と前記変速噛合い部と噛合う中間ギヤセットとを具備する、
ことを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項2】
前記中間ギヤセットは、前記中央噛合い部と前記変速噛合い部双方に噛合うピニオン(25)を有している、ことを特徴とする請求項1に記載のワーク搬送装置。
【請求項3】
前記中央噛合い部は外側を向き、前記変速噛合い部は前記変速部(26)上に配置され、内側に向いたリングギヤ(27)を有している、ことを特徴とする請求項1または2に記載のワーク搬送装置。
【請求項4】
前記中央噛合い部は、捩れないように前記ベースフレーム(1)に結合していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のワーク搬送装置。
【請求項5】
前記中央噛合い部を形成する外部噛合い部を有する中央ホイール(21)を具備する、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のワーク搬送装置。
【請求項6】
それぞれのワーク支持体(13)は、断面円形の、前記ホルダ軸に平行であり、前記変速部(26)上の対応する駆動開口部(28)に係合する駆動ピン(19)を具備する、ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のワーク搬送装置。
【請求項7】
前記ロータリフレーム(3)はそれぞれの駆動部(22)とそれぞれの変速部(26)とを囲む閉じたハウジングとして実現され、さらに、前記ドライブポイントに位置しているワーク支持体(13)のそれぞれの部材において、前記ワーク(16)を固定するために取付部(15)を支持する前記ワーク支持体の軸ピン(17)は、前記ハウジングを通して外方にもたらされる、ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のワーク搬送装置。
【請求項8】
前記ワーク搬送体(2)は駆動軸(4)周りに同じ高さで配置されるワーク支持体(13)の群(12)を具備し、前記群(12)の全てのワーク支持体(13)に噛合う変速部(26)を具備する、
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のワーク搬送装置。
【請求項9】
前記群(12)のワーク支持体(13)は、前記駆動軸(4)を囲む円弧上に一様に分散配置され、そして前記変速部(26)は対応する同様な配置構成で分散配置される駆動開口部(28)を具備する、
ことを特徴とする請求項8に記載のワーク搬送装置。
【請求項10】
前記ワーク搬送体(2)は、前記駆動軸(4)に沿って配設されたワーク支持体(13)の複数の群(12)を具備する、
ことを特徴とする請求項8または9に記載のワーク搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−502211(P2011−502211A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528299(P2010−528299)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際出願番号】PCT/EP2008/008349
【国際公開番号】WO2009/046928
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(507317351)エルリコン トレーディング アクチェンゲゼルシャフト,トリューブバハ (7)
【Fターム(参考)】