説明

ワーク検出装置

【課題】光源からワークまでの距離が変化する場合であっても、ワークの材質や仕様の判定を行うことができる。
【解決手段】表面の光の反射特性が異なるワーク3が複数積み重ねられ、ワーク3の取り出し毎に最上部に位置するワーク3の種類を判定するワーク検出装置1であって、ワーク3を載置するパレット6と、パレット6から所定距離隔てて配置されると共に、所定の光量でワークの表面を撮像するカメラ8−1、8−2と、ワーク3の種類及び積層高さに対応した複数のワーク3の基準画像を記憶するメモリ13と、カメラ8−1、8−2により撮像された撮像画像と基準画像との照合を行う画像処理装置9とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの表面の材質や仕様を判定するワーク検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワークの誤組み付け等を防止するために、ワークの表面の材質を判定するワーク検出装置が知られている。
特許文献1に記載されるワーク検出装置は、ワークと、ワークとの比較の基準となる基準プレートとが同一のパレットに搭載されて生産ラインを移動しており、所定の位置においてラインの周囲に設置された光源から光が照射されて、その反射光の明度を光センサにより取得する。そして、ワークと基準プレートそれぞれについて取得された反射光の明度を比較して、ワークの材質を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−72076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように構成されるワーク検出装置では、例えば、積み重ねられた状態のワークの材質を判定する場合には、判定の終わったワークを順次取り除いて下方のワークの判定を行うことになるが、下方のワークと基準プレートとの位置にずれが生じる。このワークと基準プレートと位置のずれにより、反射光の明度取得の条件が異なってくる。このため、特許文献1記載のワーク検出装置においては、ワークの材質を判定することができない。また、ワークと基準プレートとの反射光の明度の取得条件を同一にするために、ワークの位置に合わせて基準プレートを移動させるように構成することもできるが、基準プレートを移動させる機構を備える必要があり、装置の大型化や複雑化等の新たな問題が生じる。
【0005】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、光源からワークまでの距離が変化する場合であっても、ワークの材質の違いや仕様の違いの判定を行うことができるワーク検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るワーク検出装置は、上記課題を解決するために、表面の光の反射特性が異なるワークが複数積み重ねられ、ワークの取り出し毎に最上部に位置するワークの種類を判定するワーク検出装置であって、前記ワークを載置するワーク載置部と、前記ワーク載置部から所定距離隔てて配置されると共に、所定の光量が照射されて前記ワークの表面を撮像する撮像部と、前記ワークの種類及び積層高さに対応した複数のワークの基準画像を記憶する基準画像記憶部と、前記撮像部により撮像された撮像画像と前記基準画像のそれぞれとの照合を行う画像処理装置とを有することを特徴とする。
【0007】
また、上記撮像部は、少なくとも2種類有することを特徴とすることが好ましい。
【0008】
また、上記画像処理装置は、複数の撮像部で得られた画像を独立して判定すると共に、両者を比較して総合評価を行うことを特徴とすることが好ましい。
【0009】
また、上記画像処理装置は、生産計画に予定されたワークと異なるワークが検出された場合には、警告を発することを特徴とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光源からワークまでの距離が変化する過程でのワークの材質や仕様の判定において、各過程でワークの材質や仕様の判定を行うことができるワーク検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ワーク検出装置を示す図で、(a)は生産ラインのパネル取り付け工程に設置されたワーク検出装置を示す図、(b)はワーク検出装置の詳細を示す図である。
【図2】ワーク検出装置の機能を示す機能ブロック図である。
【図3】ワークの表面の材質の違いとライトからの距離の違いによる光の反射率を示す図である。
【図4】基準モデルを示す図である。
【図5】画像判定を示す模式図である。
【図6】露光量と材質の異なるワークの含有率を示す図である。
【図7】ワークの検出方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のワーク検出装置1は、例えば、図1(a)に示すように、自動車の生産ラインP1で車体本体2にワーク3となるパネルを組み付けるパネル組み付け工程において、車体本体2への組み付け前に行うワーク3の材質の違いや仕様(取り付けられる車種における形状や品質等のワークの性質)の違い判定に用いられる。
【0013】
このパネル組み付け工程においては、図1(a)、(b)に示すように、パレット6に複数の材質の異なるワーク3が積み重ねられた台車4が外部から待機スペースP2に搬入される。その後、生産ラインP1を流れてくる車体本体2に合わせて、後述するロボット5により最上段に位置するワーク3が1枚ずつ取り出されて、車体本体2へのワーク3の組み付けが順次行われる。なお、本実施形態においては、ロボット5のアーム5aによりパレット6からのワーク3の取り出しを行ったがこれに限られず、判定結果に基づいて、ユーザによりパレット6からの取り出しを行ってもよい。
【0014】
自動車の生産は、生産ラインP1において事前に決定される生産計画に基づいて行われる。この生産計画によって自動車の組み立てが管理される。本発明のワーク検出装置1を用いたワーク3の検出においては、この生産計画に基づいて、車体本体2に組み付けられるワーク3の材質及び仕様を判定する。
【0015】
次に、本実施形態において用いられるワーク3について説明する。ワーク3は、車体本体2に取り付けられるボディパネルであり、鋼板により形成される。また、ワーク3は、材質の違いにより、普通鋼板(以下、SP材という。)と、電気亜鉛めっき等の亜鉛めっき処理をワーク3の表面に施した表面処理鋼板(以下、ZN材という。)とが用いられる。なお、本実施形態においては、SP材とZN材を用いたがこれに限られず、表面の材質により光の反射率が異なるワーク3を用いることができる。
【0016】
また、ワーク検出装置1は、図1(a)、図1(b)及び図2に示すように、パレット6(ワーク載置部)と、パレット6を搭載する台車4と、ライト7と、第1のカメラ8−1(撮像部)と、ライト7、ロボット5(詳細には、ロボット5のアーム5a付近)に取り付けられた第2のカメラ8−2(撮像部)、第1のカメラ8−1と第2のカメラ8−2を制御する画像処理装置9と、ロボット5とを備える。
【0017】
パレット6は、複数積み重ねられたワーク3を搭載可能に構成されるものであり、図示しないフォークリフト等で搬送可能に構成される。
【0018】
台車4は、図1(a)に示すように、複数積み重ねられたワーク3を載せたパレット66を外部からワーク3の判定場所である待機スペースP2までユーザ等により搬送可能に、台座4a、持ち手4b及び車輪4cを備える。
【0019】
台車4の台座4aに搭載されるパレット6には、本実施形態においては、図1(b)に示すように、最大で70枚のワーク3が積み重ねられる。つまり、パレット6には、厚さ6mmのワーク3が70枚で420mmの高さのワーク3が積み重ねられる。なお、パレット6に積み重ねられるワークの最大枚数は70枚に限られない。
【0020】
ライト7は、光源として所定の光量(本実施形態においては300ルクス程度)を照射可能に構成される。また、ライト7は、台車4が待機スペースP2に設置された際に、ワーク3の表面に光を照射可能な位置に配置される。本実施形態において、ライト7は最上部に位置するワーク3を直上から照射可能な位置で、最大積載状態におけるワーク3から4500mm程度(パレット6から4920mm程度)離れた位置に配置される。
【0021】
第1のカメラ8−1は、ライト7近傍に配置され、露光量を絞り又はシャッタースピードを変化させることにより調節可能であり、撮像した画像をデジタルデータとして保存可能に構成される。第1のカメラ8−1は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサを搭載したデジタルカメラ等により構成される。
【0022】
なお、ライト7及び第1のカメラ8−1は、パレット6の直上に配置したがこれに限られず、ライト7から照射される光の反射光とワーク3を撮像可能な場所に互いに配置できればよい。
【0023】
また、第2のカメラ8−2は、ロボット5に取り付けられ、露光量を絞り又はシャッタースピードを変化させることにより調節可能であり、撮像した画像をデジタルデータとして保存可能に構成される。第2のカメラ8−2は、例えば、CCDイメージセンサを搭載したデジタルカメラ等により構成される。この第2のカメラ8−2は、ロボット5の動作により、ワーク3から所定の位置離れた場所から撮像と可能なる。つまり、第2のカメラ8−2は、図1(b)に示すように、パレット6からワークが取り除かれて、ワークの高さが変わってしまっても、ロボット5により所定の高さに調整されて撮像を行う。
本実施形態においては、第1のカメラ8−1及び第2のカメラ8−2の2台のカメラを用いて、材質の違いや仕様の違いを判定する。このため、2台のカメラのうち、一方のカメラが故障した場合でも、他方のカメラにより判定を行うことができる。また、2台のカメラからの画像を用いて判定を行うために、1台のカメラからの画像を用いて判定を行う場合に比べて、判定精度を高めることができる。
【0024】
画像処理装置9は、図1(b)及び図2に示すように、ディスプレイ10と、スピーカ11と、操作部12と、メモリ13と、CPU14とを備え、具体的にはコンピュータにより構成される。
ディスプレイ10は、出力デバイスであり、少なくとも、判定結果を表示可能に構成される。
スピーカ11は、出力デバイスであり、少なくとも、判定結果に基づいて、警告音等を発生可能に構成される。
操作部12は、CPU14等を操作可能な入力デバイスであり、マウスやキーボードで構成される。
メモリ13は、少なくとも、車種や組み付け手順や各ワークの情報等の生産に関する生産計画の情報(生産計画情報)と後述する基準モデルの画像(基準モデル情報)を記憶可能に構成され、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)又はハードディスクドライブにより構成することができる。また、本実施形態においては、メモリ13は、ALC(Assembly Line Control)システムに設けられる。ALCシステムは、生産ラインを総合的に管理するシステムであり、生産計画情報に基づいて、車両の生産に伴うワークの供給等を管理する。本ワーク検出装置1は、ACLシステムから受けた生産計画情報及び基準モデル情報に基づいて、判定を行うワーク3の材質や仕様を決定する。
CPU14(Central Processing Unit)は、中央演算処理装置として構成されワーク検出装置全体を制御する。
【0025】
ロボット5は、アーム5aによりワーク3をパレット6から取り出して、生産ライン等に移動可能に構成される。また、ロボット5は、第2のカメラ8−2が設けられ、第2のカメラ8−2がワーク3から所定の位置で撮像可能に動作するように構成される。ロボット5は、第2のカメラ8−2がワーク3から所定の位置で撮像可能に動作することについては、単に第2のカメラ8−2による撮像時に所定の位置に移動するように構成することもできるが、アーム5aによりワーク3を保持した際に、第2のカメラ8−2により撮像を行うようにする等の処理により構成することもできる。
【0026】
このように構成されるワーク検出装置1は、ライト7からワーク3までの距離が変化する過程でのワーク3の材質の判定において、各過程で確実にワーク3の材質の判定を行うことができる機能を有する。以下に、この機能を発揮するための構成と動作について、図2を用いて説明する。
【0027】
ワーク検出装置1において、メモリ13は、所定の光量及び所定の露光量の条件下での反射光の強度が異なる複数のワーク3の基準モデル(基準画像)を、ワーク3の種類毎に記憶する。
また、CPU14には、第1のカメラ8−1及び第2のカメラ8−2により撮像された撮像画像と基準モデルとの一致不一致を判定する画像判定部16を備える。
また、CPU14は、ワーク3がパレット6から取り出されることにより、照射対象となるワーク3を撮像するように第1のカメラ8−1を制御する。また、CPU14は、ワーク3がパレット6から取り出されることにより、照射対象となるワーク3を所定位置から撮像できるようにロボット5を制御し、さらに、ロボット5の制御に基づいて、ワーク3を撮像するように第2のカメラ8−2を制御する。
【0028】
また、ワーク検出装置1は、複数のカメラで得られた画像を独立して判定すると共に、両者を比較して総合評価を行うように構成される。具体的には、画像判定部16は、第1のカメラ8−1により撮像された撮像画像と基準モデルの一致不一致を判定する(第1の判定)。そして、画像判定部16は、第2のカメラ8−2により撮像された撮像画像と基準モデルの一致不一致を判定する(第2の判定)。画像判定部16は、第1の判定結果と第2の判定結果を比較して、最終判定(総合評価)を行うように構成される。
【0029】
このように構成されるワーク検出装置1は、ユーザ等により台車4が待機スペースP2に搬入されることにより、ワーク3の検出を行う。まず、ワーク検出装置1は、パレット6に搭載されたワーク3の表面にライト7により所定の光を照射する。次に、ワーク検出装置1は、ワーク3の表面に照射された光の反射光含めてワーク3の表面を第1のカメラ8−1により撮像する。第1のカメラ8−1により撮像された撮像画像は、メモリ13に記憶された所定の光量及び所定の露光量の条件下での反射光の強度が異なる複数のワーク3の基準モデルと比較(照合)されて一致不一致が判定される。
ワーク3の撮像画像と基準モデルが一致している場合には、例えば、パレット6からワーク3が取り出され、車体本体2へ取り付けられる。また、ワーク3の撮像画像と基準モデルが一致していない場合には、例えば、パレット6からワーク3が取り除かれる。
【0030】
ワーク検出装置1においては、ワーク3の判定が行われるとパレット6に積み重ねられたワーク3がアーム5aにより上段から順に取り出されるため、ライト7からの距離が少しずつ離れることになる。撮像画像は、ワーク3が積み重ねられる枚数が減り、ライト7からパレット6までの距離が離れることにより、反射光の光量が減るために徐々に暗い画像になる(図3参照)。しかし、ワーク検出装置1においては、所定の光量及び所定の露光量の条件下での反射光の強度が異なる複数のワーク3の基準モデルを用いるために、積み重ねの状態に関係なくワーク3の検出を行うことができる。
【0031】
また、ワーク検出装置1は、撮像画像と材質や仕様の判定の基準となる画像(基準モデル)を用いて、画像同士の一致不一致を判定しているので、ワーク3の材質に加えて、ワーク3の形状等の性質(ワーク3の仕様)も同時に判定することができる。
【0032】
ここで、パレット6に積み重ねられたワーク3とライト7との距離とついて図1(b)及び図3を用いて説明する。
ワーク3は、ライト7とパレット6との距離が一定であるために、パレット6での積載量により光源との距離が異なる。なお、本実施形態においては、パレット6にワーク3が70枚積載された状態(パレット6へのワーク3の積載量が最大となる状態)を「上段」といい、パレット6にワーク3が35枚積載された状態(ワーク3のパレット6への最大積載量の半分となる状態)を「中段」といい、パレット6にワーク3が1枚積載された状態(パレット6へのワーク3積載量が最小となる状態)を「下段」という。
【0033】
また、ワーク3は、ライト7からの距離が異なることにより、光の反射率が異なり、ライト7とワーク3からの距離が離れることにより光の反射率が低下する。さらに、ワーク3は、材質毎に固有の反射率を有する。なお、本実施形態において用いられるワーク3(SP材及びZN材)は、それぞれの材質毎に反射率が異なる。
【0034】
具体的には、SP材の反射率は、図3に示すように、上段の場合には80%となり、中段の場合には70%となり上段に比べて低い値となり、下段の場合には、60%となり中段に比べて低い値となる。
一方、ZN材の反射率は、図3に示すように、上段の場合には50%となり、中段の場合には40%となり上段に比べて低い値となり、下段の場合には、30%となり中段に比べて低い値となる。
【0035】
本実施形態において用いられる基準モデルについて、図1(b)及び図4を用いて説明する。基準モデルは、画像マッチング(画像の照合)により撮像画像との一致不一致を行うために用いられる画像データである。本実施形態においては、異なる材質毎(SP材及びZN材)にライト7からの距離を変えて実際に撮像した画像データを用いる。
【0036】
基準モデルは、図4に示すように、パレット6からの積層高さに対応して、第1のカメラ8−1から異なる材質毎にライト7からの距離によりライト(Light)基準モデルとノーマル(Normal)基準モデルとダーク(Dark)基準モデルとに分かれる。
【0037】
ライト基準モデルは、ライト7からの距離が最も近い画像(明るい色の画像)であり、パレット6に70枚のワーク3を積載した状態(パレット6の最大積載量、上段)に対応する画像である。
【0038】
ノーマル基準モデルは、ライト7からの距離がライト基準モデルに次いで近く、パレット6に35枚のワーク3を積載した状態(パレット6の最大積載量の半分、中段)に対応する画像である。
【0039】
また、図3に示すように、第1のカメラ8−1は、固定された状態(パレット6から)所定の位置から撮像を行う。つまり、第1のカメラ8−1からの撮像画像は、ワークの枚数が減ることにより、ワーク3との距離が遠くなる画像(暗めの色の画像)となる。一方、第2のカメラ8−2は、ロボット5によりワーク3からの距離が一定となるように位置が調整されて撮像を行う。つまり、第2のカメラ8−2からの撮像画像は、ワークの枚数が減った場合でも、ワーク3との距離が一定となる画像となる。第2のカメラ8−2とワーク3との距離は、本実施形態においては、400mmとなるようにロボット5がロボット制御部15により制御される。
【0040】
また、上述した基準モデルと撮像画像とは、図4に示すように、形状に変化のある部分、つまり、ワーク3における特徴形状(特徴部分)が撮像対象となる。
このように構成することにより、ワーク検出装置1は、特徴部分を基準モデルと撮像画像との形状の判定をし易くすることができる。ワーク3の特徴部分の撮像は、台車4が判定のためにセットされる位置を想定して第1のカメラ8−1及び第2のカメラ8−2を配置することにより可能となる。なお、特徴形状は、ワーク3の一部分に限られずに、ワーク3の全体形状(外形)であってもよいため、ワーク3の全体形状が撮像できる位置に第1のカメラ8−1及び第2のカメラ8−2を設定してもよい。
【0041】
ダーク基準モデルは、ライト7からの距離が最も遠く、パレット6に1枚のワーク3を積載した状態(パレット6の最小積載量、下段)に対応する画像(暗い色の画像)である。
【0042】
また、画像判定部16は、第1のカメラ8−1により撮影される撮像画像と基準モデルとの一致不一致を判定する第1の画像判定と、第2のカメラ8−2により基準モデルとの判定を行う第2の画像判定とを行い、各画像判定の判定結果により、ワーク3の材質及び仕様を判定する。
【0043】
このように構成されるワーク検出装置は、第1の画像判定で基準モデルとの一致不一致の判定をして、ワーク3の材質及び仕様を推定することができ、第2の画像判定で基準モデルとの一致不一致の判定をして、ワーク3の材質及び仕様を推定することができる。このため、判定精度を高めることができる。
【0044】
本実施形態における画像判定の詳細について図5を用いて説明する。本実施形態の画像判定は、基準モデルと撮像画像とを照合(マッチング)して、基準モデルと撮像画像の一致不一致を判定する。具体的には、基準モデルと第1のカメラ8−1により撮像された撮像画像の一致不一致を判定する第1の画像判定と、基準モデルと第2のカメラ8−2により撮像された撮像画像の一致不一致を判定する第2の画像判定の各判定結果を比較して最終判定を行う。
【0045】
第1の画像判定は、第1のカメラ8−1により撮像された撮像画像と基準モデルとを照合して、基準モデルと撮像画像の一致不一致を判定する。本実施形態においては、3つのSP材の基準モデル(ライト・ノーマル・ダークの基準モデル)と3つのZN材の基準モデル(ライト・ノーマル・ダークの基準モデル)と第1のカメラ8−1により撮像された撮像画像との一致不一致を判定する。
【0046】
第2の画像判定は、第2のカメラ8−2により撮像された撮像画像と基準モデルとを照合して、基準モデルと撮像画像の一致不一致を判定する。本実施形態においては、3つのSP材の基準モデル(ライト・ノーマル・ダークの基準モデル)と3つのZN材の基準モデル(ライト・ノーマル・ダークの基準モデル)と第2のカメラ8−2により撮像された撮像画像との一致不一致を判定する。
【0047】
本実施形態における画像判定は、これら第1の画像判定及び第2の画像判定における判定結果を比較して、最終判定を行う。この最終判定の結果により、ワーク3の材質や仕様を判定する。
【0048】
画像の判定を具体例と共にさらに詳細に説明する。まず、画像判定は、第1の画像判定として、生産計画により車体本体2にZN材のワーク3を取り付けることになっている場合には、図5に示すように、ZN材の基準モデルと第1のカメラ8−1により撮像された撮像画像とを照合し、一致不一致が判定される。
【0049】
ZN材の第1の画像判定において基準モデルと撮像画像とが一致していると判定された場合(OK)には、撮像されたワーク3がZN材であると推定され、次いで、ZN材の基準モデルと第2のカメラ8−2により撮像された撮像画像とを照合し、画像判定(第2の画像判定)を行う(図5中央参照)。
【0050】
この際、第2の画像判定において、各基準モデルとの一致が判定され、撮像画像に対応するワーク3がZN材であると判定が推定される(図5右下参照)。
【0051】
また、ZN材のノーマル基準モデル(1の基準モデル)と撮像画像とが一致していないと判定された場合(NG)には、撮像されたワーク3がSP材である可能性があるために、SP材のライト基準モデル、ノーマル基準モデル及びダーク基準モデルとの画像判定(第2の画像判定)を行う(図5中央参照)。
【0052】
この際、第2の画像判定において、各基準モデル(例えば、SP材のノーマル基準モデル)と一致していると判定され、撮像画像に対応するワーク3がSP材であると判定が確定する(図5右上参照)。
【0053】
ワーク検出装置1においては、上述したように各基準モデルとの判定を行うことにより、ライト7からワーク3までの距離が変化する過程でのワーク3の材質及び仕様の判定において、各過程で確実にワーク3の材質の判定を行うことができる。
【0054】
なお、ワーク検出装置1においては、取り付けるワーク3と異なるワーク3であると判定された場合には、ディスプレイ10において表示を行ったり、スピーカ11において音を鳴らしたりして、ユーザに、ワーク3が異なる旨を警告する。
【0055】
また、ワーク検出装置1においては、CPU14には第1のカメラ8−1及び第2のカメラ8−2の露光量を設定するカメラ設定部17を備える。本実施形態において、第1のカメラ8−1及び第2のカメラ8−2の露光量は、シャッタースピードを調節することにより行うがこれに限られない。例えば、絞りの調整することにより、露光量を調整してもよい。また、ワーク検出装置1は、さらに、ロボット制御部15を備える。ロボット制御部15は、パレット6からのワーク3の取り出しや除去を行うようにロボット5を制御する。また、本実施形態においては、ワーク3の取り出しや除去はロボット5により行ったがこれに限られず、ユーザにより行うように構成してもよい。
【0056】
また、メモリ13には、生産計画情報を記憶する。生産計画情報とは、生産ラインP1における車体の生産を予め決定した情報であり、車体の組み付け手順や車体本体2に取り付ける各パーツ(ワーク3)の情報である。ワーク3の検出判定は、生産計画情報に基づいて行われ、生産ラインP1を流れてくる車体本体2とこの車体本体2に組み付けるべきワーク3が対応付けられている。
【0057】
また、CPU14は、メモリ13に記憶される生産計画情報に基づいて、判定を行うワーク3の材質及び仕様を特定し、ワーク3の材質に適した露光量となるように第1のカメラ8−1及び第2のカメラ8−2を制御する。
【0058】
このように構成することにより、ワーク検出装置1は、材質の光の反射率に適した露光量に設定して撮像することにより、異なる光の反射率の材質からなるワーク3を検出することができ、材質の判定精度を高めることができる。
【0059】
本実施形態の判定対象となるSP材及びZN材からなるワーク3の露光量の違いによる画像検出の割合について、図6を参照して説明する。
【0060】
ZN材では、図6に示すように、130ルクス付近をピークにして、115ルクス付近から145ルクス付近まで好適な画像となる。ZN材は、含有率のピークとなる130ルクス付近から120ルクス付近に向かって露光量を変化させることにより暗い画像となり、含有率のピークとなる130ルクス付近から145ルクスに向かって露光量を変化させることにより明るい画像となる。また、ZN材の検出可能範囲は、89.8ルクスから236ルクスであり、89.8ルクスを下回る光量で撮像すると黒ずみ画像となり、236ルクスを上回る露光量で撮像するとハレーション画像となる。
【0061】
一方のSP材では、図6に示すように、200ルクス付近をピークにして、190ルクス付近から210ルクス付近まで好適な画像となる。SP材は、含有率のピークとなる200ルクス付近から190ルクス付近に向かって露光量を変化させることにより暗い画像となり、含有率のピークとなる200ルクス付近から210ルクスに向かって露光量を変化させることにより明るい画像となる。また、SP材の検出可能範囲は、180ルクスから225ルクスであり、180ルクスを下回る光量で撮像すると黒ずみ画像となり、225ルクスを上回る露光量で撮像するとハレーション画像となる。
【0062】
本実施形態においては、ZN材に好適な露光量で撮像を行うと、SP材はハレーション画像となる。つまり、露光量を変えて撮像することにより、ZN材からなるワーク3とSP材からなるワーク3の撮像画像に明確な違いが生じるために判定を容易に行うことが可能となる。
【0063】
以上説明したようにワーク3は、反射強度の異なり、撮像の際の好適な露光量が異なる鋼材(本実施形態においては、SP材)とめっき処理した鋼材(本実施形態においては、ZN材)が用いられる。このため、ワーク検出装置1では、判定基準が明確に分かれることになるために、確実にワーク3の材質違いやワークの仕様を判定することができる。
【0064】
次に、ワーク検出装置1の動作について図7を用いて説明する。本実施形態におけるワーク検出装置1は、図1に示すように、生産ラインP1を移動してくる車体本体2にワーク3を取り付ける際に、ワーク3の材質違いや仕様違いによる誤組み付けを防止するために、ワーク3の判定を行う。ワーク検出装置1においては、ワーク3が外部から生産ラインP1の近傍の待機スペースP2に搬入される。その後、ワーク3は、ロボット5により、パレット6から取り出されて、車体本体2に組み付けられる。
ワーク3の検出判定は、ワーク3がパレット6から取り出される前の台車4上に積載された状態で行われる。積載された最上段(最上部)のワーク3の表面にロボット5により判定を終えたワーク3が取り除かれることにより、順次最上段に位置するワーク3の検出判定を行う。
【0065】
ステップS1において、ワーク検出装置1は、生産計画情報の確認を行い、ステップS2に進む。具体的には、CPU14は、メモリ13に記憶された生産計画情報の確認を行い、生産計画情報から現在の生産ラインP1上にある車体本体2の情報とこの車体本体2に取り付けるべきワーク3の情報(ワーク3の材質の情報)を取得する。
【0066】
ステップS2において、ワーク検出装置1では、台車4の搬入が行われ、ステップS3に進む。本工程では、複数のワーク3が積載された台車4が外部から判定位置となる待機スペースP2に搬入される。そして、ワーク検出装置1は、判定結果に応じて、ロボット5等の搬出手段により、車体本体2が流れてくる生産ラインP1又は退避場所に搬出される。また、ワーク検出装置1は、台車4に積載されたワーク3がすべて搬出されると、台車4が判定位置から搬出され、次の複数のワーク3が積載された新たな台車4が判定位置に搬入される。これら搬送(搬入と搬出)及びワーク3の取り出しは、予め定められた車両の生産計画情報に基づいて行われる。
本実施形態においては、生産計画情報に基づいて、ZN材のワーク3が車体本体2に取り付けられる。
【0067】
ステップS3において、ワーク検出装置1は、露光量(シャッタースピード)の設定を行い、ステップS4に進む。具体的には、CPU14は、生産計画情報に基づいて、第1のカメラ8−1の露光量がステップS2において特定されたワーク3の種類(ワーク3の材質、ZN材)に合わせて予め決定された露光量となるように、CPU14のカメラ設定部17によりシャッタースピードの設定を行う。
【0068】
ステップS4において、ワーク検出装置1は、ライト7による照射を行い、ステップS5に進む。本実施形態においては、300ルクスの光量により照射を行う。
この際、ライト7は予め台車4の設置場所に照射がされるように固定されているために、照射を行うことで、台車4、詳細にはパレット6に積載された最上段のワーク3の表面に照射が行われる。
【0069】
ステップS5において、ワーク検出装置1は、第1のカメラ8−1及び第2のカメラ8−2においてワーク3の撮像を行い、ステップS6に進む。具体的には、第1のカメラ8−1は、ステップS3で設定されたシャッタースピードでワーク3の表面の撮像が行われる。また、第2のカメラ8−2は、ロボット5により、ワーク3との位置が調整された状態(本実施形態においては、ワーク3からの距離が400mmとなる位置)で、ステップS3で設定されたシャッタースピードでワーク3の表面の撮像が行われる。
この際、第1のカメラ8−1は予め台車4が設置される場所、詳細には台車4が設置されることによりワーク3の一部分を撮像可能に位置が固定される。また、第2のカメラ8−2は、第1のカメラ8−1と同じワーク3の一部分を撮像可能にロボット5により位置が調節される。また、第1のカメラ8−1及び第2のカメラ8−2は、撮像時にはピントや露光を自動的に設定する機能は停止されて撮影を行う。
【0070】
ステップS6において、ワーク検出装置1は、第1の画像判定を行い、ステップS7に進む。具体的には、CPU14の画像判定部16は、図5に示すように、ステップS5において第1のカメラ8−1により撮像された画像(撮像画像)とメモリ13に記憶されたZN材とSP材の各基準モデル(ライト・ノーマル・ダーク)との画像の一致不一致の判定を行う。また、ワーク3の仕様についても判定を行い、ワーク3の仕様を推定する。
撮像画像がZN材の基準モデルと一致していると判定された場合には、ZN材として材質が推定される。撮像画像とSP材の基準モデルとが一致していると判定された場合には、異なる材質(SP材)として推定する。また、撮像画像がどの基準モデルとも一致していないと判定された場合には、材質不明と推定される。また、ワーク3の仕様についても判定を行い、ワーク3の仕様を推定する。
【0071】
ステップS7において、ワーク検出装置1は、第2の画像判定を行い、ステップS8に進む。具体的には、CPU14の画像判定部16は、図5に示すように、第2のカメラ8−2により撮像された撮像画像とメモリ13に記憶されたZN材とSP材の各基準モデル(ライト・ノーマル・ダーク)との画像の一致不一致の判定を行う。
【0072】
撮像画像がZN材の基準モデル(例えば、ZN材のノーマル基準モデル)と一致していると判定された場合には、ZN材として材質が推定される。撮像画像とSP材の基準モデル(例えば、SP材のノーマル基準モデル)とが一致していると判定された場合には、異なる材質(SP材)として推定される。また、撮像画像がどの基準モデルとも一致していないと判定された場合には、材質不明と推定される。また、ワーク3の仕様について同様に形状等から判定する。
【0073】
ステップS8において、ワーク検出装置1は、総合判定結果の出力を行い、ステップS9に進む。具体的には、画像判定部16は、第1の画像判定及び第2の画像判定の各判定結果に基づいて、総合評価を行って総合判定結果(ワーク3の材質の違いや仕様の違いの決定)を出力する。総合判定結果においては、例えば、第1の画像判定結果と第2の画像判定結果がすべてSP材(ZN材)と一致すると判定された場合には、ワーク3の材質をSP材として決定する。また、第1の画像判定結果と第2の画像判定結果いずれか、又はすべてにおいて、SP材(ZN材)でないと判定された場合には、材質不明として決定する。
総合判定結果は、CPU14により、例えば、ディスプレイ10での表示やスピーカ11での発呼等の処理が行われる。これにより、第1の画像判定及び第2の画像判定の各判定結果に基づいた精度の高い総合判定結果から、ユーザやワーク検出装置1は後述する各種処理を行うことができる。
また、本工程においては、例えば、第2の画像判定により判定された基準モデルがダークの基準モデルである場合には、ユーザに台車4の交換が近い旨を報知することができる。
【0074】
ステップS9において、ワーク検出装置1は、出力された総合判定結果の確認を行う。ステップS6及びステップS7において、撮像画像と各基準モデルとが一致していると判定されている場合(画像一致あり)には、ステップS10に進む。ステップS6及びステップS7において、撮像画像と各基準モデルとが一致していないと判定されている場合(画像一致なし)には、ステップS11に進む。
【0075】
ステップS10において、ワーク検出装置1は、ワーク3の取り出しを行い、ステップS12に進む。具体的には、CPU14のロボット制御部15により、ロボット5が制御されて、台車4からワーク3が取り出されて、生産ラインP1の車体本体2に取り付けられる。
【0076】
ステップS11において、ワーク検出装置1は、ワーク3の除去を行い、ステップS12に進む。具体的には、CPU14のロボット制御部15により、ロボット5及びアーム5aが制御されて、台車4上のパレット6からワーク3が取り除かれる。
【0077】
ステップS12において、ワーク検出装置1は、生産計画情報の確認を行う。具体的には、CPU14はメモリ13に記憶される生産計画情報を確認して、生産予定がある場合(生産予定あり)には、ステップS3に進む。また、生産予定がない場合(生産予定なし)には、ワーク3の検出判定処理を終了する。
【0078】
したがって、ワーク検出装置1においては、光源からワーク3までの距離が変化する過程でのワーク3の材質の判定において、各過程で確実にワーク3の材質やワーク3の仕様の判定を行うことができ、ワーク3の材質違いや仕様違いによる車体本体2へのワーク3の誤組み付けを低減することができる。
【0079】
以上、本発明に係るワーク検出装置1の好適な実施形態について説明したが、本発明に係るワーク検出装置1は、上述した実施形態に限定されることなく種々の形態で実施することができる。
【0080】
また、本実施形態においては、ワーク3の基準モデルを材質毎に上段と中段と下段の3種類を用いていたがこれに限られない。例えば、本実施形態のようにパレット6に最大70毎のワーク3が積み重ねられる場合には70枚の光源からの距離が異なる画像を用いたり、1の画像から明度等の反射率を画像処理により変化させたものを用いたりしてもよい。
【0081】
なお、本実施形態において、ワーク検出装置1は、固定式(ワーク3が載置されるパレットからの距離が一定、すなわち、ワーク3の積載量が変わることによりワーク3からの距離が変わる)の第1のカメラ8−1と可動式(ロボット5によるカメラ位置の調整によりワーク3からの距離が一定となる)の第2のカメラ8−2の撮像方式の異なる2台のカメラの撮像画像を用いて、第1の画像判定及び第2の画像判定を行うがこれに限られない。1のカメラや複数のカメラや撮影結果の異なる複数のカメラを用いてもよい。また、ワーク検出装置1は、例えば、カメラ毎に撮像環境(撮像角度やライトの照度を変える等)を変えて撮像した画像を用いて判定を行ってもよい。また、ワーク検出装置1は、第1のカメラ8−1及び第2のカメラ8−2のメリットデメリットが互いに相補的になるように設定等をして構成してもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 ワーク検出装置
3 ワーク
6 パレット(ワーク載置部)
8−1、8−2 カメラ(撮像部)
9 画像処理装置
13 メモリ(基準画像記憶部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の光の反射特性が異なるワークが複数積み重ねられ、ワークの取り出し毎に最上部に位置するワークの種類を判定するワーク検出装置であって、
前記ワークを載置するワーク載置部と、
前記ワーク載置部から所定距離隔てて配置されると共に、所定の光量が照射されて前記ワークの表面を撮像する撮像部と、
前記ワークの種類及び積層高さに対応した複数のワークの基準画像を記憶する基準画像記憶部と、
前記撮像部により撮像された撮像画像と前記基準画像のそれぞれとの照合を行う画像処理装置とを有することを特徴とするワーク検出装置。
【請求項2】
前記撮像部は、少なくとも2種類有することを特徴とする請求項1記載のワーク検出装置。
【請求項3】
前記画像処理装置は、複数の撮像部で得られた画像を独立して判定すると共に、両者を比較して総合評価を行うことを特徴とする請求項1記載のワーク検出装置。
【請求項4】
前記画像処理装置は、生産計画に予定されたワークと異なるワークが検出された場合には、警告を発することを特徴とする請求項1記載のワーク検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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