説明

一つの画像をもう一つの画像の上に重ね合わせる方法、その画像重ね合わせ方法を用いてデータ媒体をある個人専用のものにする方法と個人専用化を施されたデータ媒体

【課題】データ媒体の機密保護のために第一の画像を第二の画像の上に重ね合わせるに際して、データ媒体の個人専用化について変造や改竄に対する安全を確保しつつ、第一の画像が第二の画像の上で見えなくなってしまわないようにする。
【解決手段】第二の画像の上に重ね合わせることになる第一の画像の画素と位置が対応する、第二の画像の目標画素を変更する。当該変更は、第二の画像の目標画素の数あるうちの幾つかの値を、新しい値に変更することである。かかる新しい値のそれぞれは、第二の画像の少なくとも一つの画素の当初の値に基づいている。かかる画像重ね合わせ方法を含む個人専用化方法と、それにより個人専用化を施されたデータ媒体も、併せて開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一つの画像をもう一つの画像の上に重ね合わせる方法に関するものである。更に詳細には、本発明は、データ媒体をある個人専用のものにする(パーソナライズする)方法で用いられる、身分証明用の画像の上に機密保護用のパターン画像を重ね合わせ、個人専用化の後、その身分証明用画像を容易に偽造することができないようにする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運転免許証、IDカード、会員証、バッジまたは通行証、パスポート、割引カード、銀行カード、マネー・カード、マルチアプリケーション・カード、及びその他の有価証書そして銀行券のような有価証券などのデータ媒体は広く用いられている。このようなデータ媒体のそれぞれに金銭的価値や重要事項が付随しているので、無断でコピーされたり、改変されたり、偽造されたりすることがよくある。
【0003】
そのようなデータ媒体に上記のような不正が行われるのを多少なりとも防止する為に、様々な機密保護機能がデータ媒体において用いられている。そのような機密保護機能の一つは、身分証明用画像の上に網縄模様の複数の線からなるパターンを重ね合わせることである。
典型的には、第一の画像を第二の画像の上に重ね合わせるというのは、要するに、ただ第二の画像の画素を、第一の画像の画素のうちの、その各位置に対応しているもので、それぞれ、置き換えることに過ぎない。個人専用化を行う過程で、そのような方法により、黒い網縄模様の複数の線のあつまりを、白黒の肖像写真のような身分証明用画像の上に重ね合わせると、そのような網縄模様の複数の線が身分証明用画像の暗くなっているところでは見えなくなってしまうことになりかねない。このように、身分証明用画像の上で網縄模様の複数の線が見えなくなってしまうというのは、個人専用化を行った後に身分証明用画像を修正しても容易に検出することができないので、容認できない。
【0004】
このような問題は、基板の上に網縄模様の複数の線からなるパターンを印刷した従来のデータ媒体に見られる。個人専用化を行っている最中に、そのような網縄模様の複数の線の印刷は、その肖像写真の画像に先立って、行われる。肖像写真の画像を印刷する際には、個人専用化システムで、網縄模様の複数の線の位置を検出するか、その個人専用化システムのメモリーに保存された、そのような網縄模様の複数の線の位置に関する情報が得られるようにしてもよい。肖像写真の画像で、そのような網縄模様の複数の線に重なることになる部位は、その肖像写真の画像から取り除くか、無視して印刷しないようにする。肖像写真の画像で、網縄模様の複数の線に重ならない部位だけを印刷する。それゆえ、肖像写真の画像は、網縄模様の複数の線を上書きせず、そのような網縄模様の複数の線とはかかわらずに印刷されることになる。それゆえ、網縄模様の複数の線が、その肖像写真の画像と一体をなすものとして色調も同じであることも考えられるので、その肖像写真の画像のそのような箇所では見えなくなっていることもありうる。
【0005】
更に、以上に説明した個人専用化方法では、またもう一つの不利に悩まされることになる。網縄模様の複数の線のそれぞれを、約100ミクロンの太さでレーザー印刷することも考えられる。現行の個人専用化システムで、そのような太さの網縄模様の線を検出し、そのような網縄模様の線を浸食しないような精度で、その肖像写真の画像をレーザー印刷することは可能である。しかしながら、レーザーによっては、印刷する線が、10から20ミクロンの範囲で、もっと細くなってしまうこともある。線が細くなれば、そのような線を精確に検出するのは、偽造の過程では不可能になるかもしれず、ということは精巧な偽造を行うのは困難になるので、好都合ではある。ところが困ったことに、個人専用化を行う過程で、そのような網縄模様の複数の線の上一面に肖像写真の画像を精度の高いレーザー印刷で写そうとすると、その肖像写真の画像がそのような網縄模様の複数の線の上を浸食しないようにするのが更に難しくなってしまう。もっと精度が高くて、つまりは高価なレーザー印刷用機材が必要になってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえ、できれば、第一の画像を第二の画像の上に重ね合わせるに際して、そのような第一の画像が第二の画像の上で見えなくなってしまわないようにでき、データ媒体を個人専用化する個人専用化方法において、そのような画像重ね合わせ方法を用いつつ、変造や改竄に対する安全の確保を危うくすることなしに、先行技術と比較しても間違いの起きにくいものにできることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴の一つとして、第一の画像を第二の画像の上に重ね合わせる方法があり、それぞれの画像は複数の画素で規定される。そのような方法の一環として、その第二の画像の上に重ね合わせる第一の画像の複数の画素と位置が対応する第二の画像の目標となる画素(ターゲット画素)を変更するということがある。例えば、その第一の画像には、背景に一つのパターンが含まれていてもよい。その第二の画像の画素で、その第一の画像のパターンを規定している画素と位置が対応しているものが、変更の対象となる目標画素である。その第二の画像のそのような目標画素を変更することの一環として、その第二の画像の、そのような目標画素のうちの幾つかの値を、それぞれ新しい画素値に変更するということが行われる。そのような新しい画素値のそれぞれは、その第二の画像の少なくとも一つの画素の当初の値に基づいている。残りの目標画素のうちの幾つかの値は、そのような画素と位置的に対応する第一の画像のそれぞれの画素の値であってもよい。このような画像重ね合わせ方法は、テレビ、電子ディスプレイ装置、デジタルカメラ、ビデオカメラなどで、ある画像をもう一つの画像の上に重ね合わせるのに用いることができる。
【0008】
一つの目標画素を変更するに際して考慮の対象となる第二画像の少なくとも一つの画素には、その目標画素自体の当初の値及び/またはその目標画素のすぐ隣にある少なくとも一つの隣接画素の当初の値が含まれる。言い換えると、一つの目標画素の新しい値は、1)その目標画素の当初の値のみに基づいたものでもよいし、2)その目標画素の当初の値とその目標画素の周囲の一つまたは複数の画素の当初の値とに基づいたものでもよいし、あるいは3)その目標画素自体の値は考慮に入れずにその目標画素の周囲の一つまたは複数の画素の当初の値に基づいたものでもよい。
【0009】
数ある実施例の中には、その目標画素の値を変更する際に考慮に入れるのは、その目標画素の当初の値のみというものも幾つかある。そのような場合にその目標画素の値を変更するには、その一環として、その当初の目標画素の値を閾値と比較するということも行われる。その当初の目標画素の値が閾値と比べてどういう値かにより、その目標画素の値をある値だけ増やすか減らすかして、その新しい値を得る。このようにして、そのように修正された画素とその当初の画素との間にコントラストが生み出される。この目標画素のすぐ隣にある隣接画素が、その当初の目標画素と外観が似ていきそうな見込みがもっとも大きいので、そのように修正された画素は、その周りの隣接画素の中で際だって見えることができる。つまり、そのように修正された目標画素とその隣接画素との間にコントラストがあるということである。このような実施例の利点は、その目標画素の当初の値のみが考慮されていることによる。それゆえ、限定的な処理を行いさえすれば、その目標画素の新しい値が得られる。
【0010】
一つの実施例によると、当初の目標画素の値に付加すべき、もしくはそこから差し引くべき値は所定の値である。当初の目標画素の値が閾値よりも低いものなら、目標画素の値を所定の値だけ増やす。当初の目標画素の値が閾値よりも高いものなら、目標画素の値をその所定の値だけ減らす。当初の目標画素の値が閾値に等しいものについては、その当初の目標画素の値をその所定の値だけ増やすか減らすかして、その当初の目標画素の値を新しい値にすることができる。
【0011】
他のやり方として、その目標画素の値を、その当初の目標画素の値の所定のパーセンテージだけ増減させるというのも考えられる。このように、その当初の目標画素の値のその値を変更することで変えていけば、その第二の画像の上に重ね合わせられる第一の画像は、第二の画像と色調または色彩についてある一定の関係を有することになり、それにより、個人専用化の後で修正をしても検出が容易になる。
【0012】
他のもう一つの実施例によると、目標画素の値を上記に説明したように所定の値だけ、増やし、減らしあるいは増やすか減らすかどちらかを行う各ステップは、第一の画像の画素とそれに対応する第二の画像の目標画素との間の値の差がその所定の値よりも小さいことが確認される場合に限って、行うようにしている。つまり、その所定の値が、その当初の目標画素の値に足されるか、そこから引いたりされる場合に、その目標画素をその第一の画像の対応する画素で置き換えるよりも、さらにはっきりしたコントラストをもたらすことになるということである。しかしながら、その第一の画像の画素とその第二の画像のそれに対応する目標画素との間の値の差がその所定の値よりも大きいことが確認される場合には、その目標画素の値を、その第一の画像のそれに対応する画素の値に設定するのだが、それは、それがより大きな値の差をもたらし、その分、そのようにして修正された目標画素とその当初の目標画素との間に更にはっきりしたコントラストが現れるからである。
【0013】
その目標画素のみに関わるその他の実施例によると、その目標画素の値を変更するには、その一環として、一つの画素が取りうる最大値を限度として、その目標画素の値とそれに位置が対応する第一の画像の画素の値の平均もしくは合計となるようにその目標画素の値を設定する。その目標画素の値は、その目標画素とその第一の画像の画素の加重値(weighted values)の合計にしてもよい。その目標画素の為のウェイトは、その第一の画像の画素のウェイトと異なっていてもよい。その目標画素の値が、その目標画素の値とそれに対応する第一の画像の画素の値との間の値の差になることも考えられる。
【0014】
他の幾つかの実施例によると、その目標画素の値を変更する際には、その目標画素のすぐ隣にある二つ以上の画素の値を考慮に入れる。このような実施例の利点は、その第二の画像の上に重ね合わせたとき、その第一の画像の外観またはコントラストが強調されることである。このような実施例の中には、その値を変更する際に、その一環として、その第二の画像の二つ以上の画素の値の平均を閾値と比較することを行ってもよいものもある。その平均値が、その閾値と比べてどのくらいの値かにより、その目標画素の値をある値だけ増やすか減らすかどちらかをしてその新しい値を得る。このような実施例では、そのようにして変更された目標画素とそれのすぐ隣にある複数の隣接画素との間にコントラストが生じるのが確実になる。
【0015】
このような実施例のうちの一つによると、その目標画素の値をある値だけ増やすか減らすかどちらかをしてその新しい値を得る際に、その一環として、その平均値がその閾値よりもよりも低ければ、所定の値だけその目標画素の値を増やすというのがある。その平均値がその閾値よりも高ければ、所定の値だけその目標画素の値を減らす。その閾値に等しい平均値については、その当初の目標画素の値をその所定の値だけ増やすか減らすか、どちらかをしてその新しい値を得ることができる。
【0016】
その目標画素の値を変更するに際してその目標画素の値のみを考慮に入れる場合について上記に説明したように、その目標画素の値を増やす、減らす、あるいは増やすか減らすか、どちらかをするという各ステップを行うのは、その第一の画像の画素とその第二の画像のそれに対応する目標画素との間の値の差が、その所定の値よりも小さいことが確認される場合に限られる。同様に、その第一の画像の画素とその第二の画像のそれに対応する目標画素との間の値の差が、その所定の値よりも大きいことが確認される場合には、その目標画素の値をその第一の画像のそれに対応する画素の値に設定する。
【0017】
第二の画像の二つ以上の画素の値を用いてその目標画素の値を決定する実施例のうちのもう一つのものによると、その目標画素の値を、できるだけ、その第二の画像の二つ以上の画素の値のそれぞれとは、少なくとも一つの所定の値だけ隔たった値に変更することにしている。例えば8ビット表記で輝度の値がそれぞれ35、150そして200のグレースケールの画素が三つある場合には、その目標画素の新しい値は240でもよいし、それはその三つの画素のそれぞれの値から少なくとも40隔たっている。例えばそのような三つの画素の値が35、150そして230なら、その目標画素の新しい値は190でもよいし、それは150と230から40隔たっている。その所定の値の設定は、その第二の画像の画素の値としてどのような数値を用いるかに応じて行ってもよい。例えば、隣接する八つの画素をすべて考慮に入れる場合は、このような八つの画素についての最悪のケースの値は0、35、70、105、140、175、210、255である。この場合、その目標画素の新しい値は、その複数の値のうちのいずれか二つの間の値、つまり17、43、87、122などでよい。つまり、その所定の値は、一つの画素の最大値の15分の1にあたる少なくとも17となり、そしてその場合、その目標画素の新しい値は、そのような八つの隣接する画素のそれぞれから少なくともこの所定の値だけ隔たった値となる。同様に、四つの隣接する画素を考慮に入れる場合は、その所定の値は少なくとも32であり、それは最大値の8分の1である。このようにして、その目標画素の新しい値は、それと隣接する複数の画素との間に、一定の色調的もしくは色彩的関係を帯びることになる。他の方法として、その目標画素の新しい値をその第二の画像の二つ以上の画素の値の中央値に設定することがある。一つの色彩画素について言うと、その目標画素の値をその第二の画像の二つ以上の画素の値のそれぞれから可能な限り遠く隔たったところに設定することも可能と考えうる。
【0018】
以上に説明したすべての実施例について、第一と第二の画像は白黒でもモノクロームでもカラーでもよい。言い換えると、第一と第二の画像の画素は、グレースケールで規定されるものでも、カラーで規定されるものでもよい。カラー画素については、明度と色成分の値のうち少なくとも一つを変更してもよい。
【0019】
カラー画素の表示は、例えば国際照明委員会LAB(CIEL)フォーマットや、3チャンネルRGBフォーマット、あるいは他のカラー・フォーマットのような色彩計フォーマット(colorimetric format)で行ってよい。CIELフォーマットで表示する場合には、一つの画素の明度成分の輝度、色合い、そして彩度のような下位成分の一つまたは複数の値を、以上に説明した方法のいずれで変更してもよい。他の方法として、または追加的な方法として、色成分の値のいずれかを変更して、例えばその画素の値を周囲の画素の色の補色になるような色に調節して、機密保護用のパターンを鮮明に際立たせることも考えられる。明度成分のみを変更する際に、そのように変更された身分証明用画像のカラー・バランスが重要となる場合、その個人専用化方法の一環として更に、その複合画像のフォーマットを3チャンネルRGBフォーマットに変換することも考えられる。そうすれば、その複合画像の当初のカラー・バランスを維持できることになる。そしてそのような画素の表示を3チャンネルRGBフォーマットで行うなら、一つの画素の色チャンネルのうちの一つを以上に説明したように変更してもよい。別の方法として、色チャンネルのうちの二つもしくは三つすべてを変更してもよい。その方法を3チャンネルRGBフォーマットの画素の三つのチャンネルすべてに適用することで、図形を表す複数の画素のカラー・バランスにもたらされることになるのはわずかな変化である。
【0020】
本発明のもう一つの特徴によると、第一の画像を第二の画像の上に重ね合わせる為にコンピュータ装置で実行可能なソフトウエア・プログラムが用意される。そのソフトウエア・プログラムには、以上に説明した方法により各ステップを実行する為の命令も含まれている。
【0021】
本発明のもう一つの特徴によると、コンピュータ装置で読み出し可能なプログラム保存装置が用意され、該プログラム保存装置には各種命令のプログラムが実際に組み込まれており、該命令のプログラムは、以上に説明したように、第一の画像を第二の画像の上に重ね合わせるための方法を実施するために、該コンピュータ装置で実行可能なものである。
【0022】
本発明の更にもう一つの特徴によると、データ媒体を個人専用化する方法が用意される。その個人専用化方法は、その一環として、そのデータ媒体で機密保護用のパターン画像と身分証明用の画像とを描き出すことを行うものである。この方法の特徴は、その方法が、その機密保護用のパターン画像を第一の画像とし、その身分証明用の画像を第二の画像として、以上に説明した方法により、その機密保護用のパターン画像をその身分証明用の画像の上に重ね合わせる方法だということである。したがって、その機密保護用のパターン画像を描き出し、そしてその身分証明用の画像を描き出すには、その一環として、その身分証明用の画像をその上に重ね合わせた機密保護用のパターン画像と合わせた複合画像を印刷することを行う。このようにすると、ただ一組のデータのみを印刷用に用いることになる。忘れてならないのは、その第二の画像は身分証明用の画像に限らないことである。その第二の画像は、例えば宣伝用の画像のように、身分証明用とは関係のない、どんな画像であってもかまわない。
【0023】
大部分の実施例において、データ媒体は、一まとまりのデータ媒体のうちの一つであり、しかも、その一まとまりの各データ媒体を個人専用化するのに異なった身分証明用画像を使用する。同様に、身分証明用とは関係のない画像もデータ媒体ごとに変わってもよい。
【0024】
印刷に含まれるものとしては、レーザー印刷、レーザー・エッチング、レーザー誘起(laser inducing)、インク・ジェット印刷、昇華型印刷(dye sublimation printing)、熱転写及びその他の従来既知の印刷方法が考えられる。そのような個人専用化方法が完了するまでの時間が短くて済むのは、先行技術で必要とされる前もって印刷された網縄模様の複数の線の位置を検出するステップがもはや必要とされないからである。その印刷の解像度がその複合画像を印刷するに足るほど高度なものであれば、個人専用化システムの機材を取り替えたり、より高性能なものにしたりする必要もない。ソフトウエアを取り替えるのが必要なだけである。更に、機密保護用のパターンにおける線の太さも、その個人専用化システムの解像度で印刷可能な太さにまで細くしてよいので、非常に細い線が印刷可能になる。線が細いということは、個人専用化の後で、その身分証明用画像を偽造することがよりうまくいきにくくなるということになる。そして、その身分証明用画像と機密保護用画像とを合わせて印刷してただ一枚の通行証にするのだから、その機密保護用のパターンを上書きするリスクは免れることになる。その身分証明用画像に含まれるものとしては、肖像写真の画像、ロゴ、または階級、部署などを示す文章などが考えられる。その機密保護用のパターン画像に含まれるものとしては、網縄模様の複数の線のパターン、デジタル・スタンプ、ロゴ、署名、一個人の誕生日、社会保障番号、氏名などを示す文章などが考えられる。インク・ジェット印刷は、まず第二の画像全体を印刷し、つぎに、その新しい値の画素で目標画素の上に印刷することからなるものでもよい。言い換えると、その第二の画像のそのような目標画素のうちの幾つかの値をそれぞれの新しい値に変更するのは、その第二の画像の当初の目標画素の上に印刷を行うことに他ならない。
【0025】
本発明の更にもう一つの特徴によると、一つのデータ媒体が用意される。そのデータ媒体に含まれるのは、そこに印刷された身分証明用画像と機密保護用のパターン画像であり、その身分証明用画像はその機密保護用のパターン画像と適合するものである。つまり、その機密保護用のパターン画像は、その身分証明用画像と少なくとも実質的に同じサイズでアスペクト比も同じであり、少なくとも一部がその身分証明用画像に重なるものである。そのデータ媒体の特徴は、その機密保護用のパターン画像を規定するのが二つ以上の画素であり、そのうちの少なくとも幾つかの値が少なくとも実質的には、それとコントラストをなすことになるその身分証明用画像の隣接する複数の画素の値に基づくものであることである。言い換えると、そのような画素のそれぞれの外観は、そのような画素にそれぞれ隣接する、その身分証明用画素の複数の画素とある関係を有するということである。例えば、白黒の身分証明用画像には白い部分と黒い部分がある。以上に説明したような画像を重ね合わせる方法によると、その白い部分に重なる機密保護用パターン画像は薄い灰色で、黒い部分に重なる機密保護用パターン画像は濃い灰色になるかもしれない。このようにして、その身分証明用画像の上に重ね合わせられる機密保護用パターン画像は、その身分証明用画像に左右されるのであり、それゆえに、その身分証明用画像とある関係を有することになる。例えば、その白い部分とその黒い部分との間で、その身分証明用画像の外観に変化がある場合には、この例では薄い灰色と濃い灰色の間で、機密保護用パターン画像にも同様の変化があることになる。言い換えると、その機密保護用パターン画像の中には、様々な部分があり、そのそれぞれを規定するのは、一つの画素または少なくとも実質的には同じ値の複数の画素である。しかしながら、その一つまたは複数の画素の値は、そこのすぐ隣の身分証明用画像の画素の値に応じて、部分ごとに変わっていく。このようにして、その機密保護用パターン画像の外観はその身分証明用画像との対比で強調され、両者の間に最適なコントラストが生み出される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の他の特徴と利点は、本発明の原理を例示として明らかにする添付図面を参照しつつ、以下の詳細な説明を読むことにより、明らかになっていく。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明は、以下の図面を参照することにより、さらによく理解される。
【図1】身分証明書のようなデータ媒体を製造する為のステップの流れを示す流れ図で、その流れに、製造ステップと個人専用化ステップが含まれる。
【図2】図1のステップの流れを用いて製造された身分証明書カードの断面図であり、その身分証明書カードにはレーザー感知層が内蔵されている。
【図3】図2の身分証明書カードのレーザー感知層にレーザー印刷を行う為の肖像写真の画像を示す図である。
【図4】図2の身分証明書カードのレーザー感知層にレーザー印刷を行う為の網縄模様の複数の線のパターンを示す図である。
【図5】図1の個人専用化ステップにおけるステップの流れを示す流れ図であり、そのステップの流れの中に、図4の網縄模様の複数の線を図3の肖像写真の画像の上に重ね合わせるステップが含まれている。
【図6】図3の肖像写真の画像を図4の網縄模様の複数の線の画像を含むように変えられた複合画像を示す図である。
【図7】網縄模様の線の画像を含むように変えられた図3の肖像写真の画像の、例示的な一部分を示す図である。
【図8】網縄模様の複数の線を肖像写真の画像に重ね合わせるステップを実行する為のコンピュータ処理サブシステムのブロック図である。
【0028】
説明用の図面に示すように、本発明は、具体的にはデータ媒体を個人専用化する方法及びその方法を用いて製造したデータ媒体において実現される。本発明の一つの実施例によると、その方法の一環として、機密保護用のパターン画像と身分証明用の画像とをそのデータ媒体の一つの層に印刷するということを行う。その機密保護用のパターンと身分証明用の画像とが、それぞれ画像データとして規定される。その身分証明用の画像は、その機密保護用のパターンと適合するものである。その層に印刷する前に、その機密保護用のパターン画像と身分証明用の画像とを表現するデータを、その機密保護用のパターン画像をその身分証明用の画像の上に重ね合わせることによりデジタル的に結合させて複合画像データを作り出す。その複合画像データの次の用途は、その身分証明用の画像を、その上に重ね合わされた機密保護用のパターン画像と一緒に、その層で印刷する為に用いることである。
【0029】
これ以降は、本発明の一実施例を、身分証明書(ID)カードのようなタイプのデータ媒体と、そのデータ媒体を個人専用化する方法という前提で、説明していくことにする。しかしながら、理解願いたいのは、本発明は、従来既知の印刷方法を用いる機密保護用のパターンと適合する身分証明用画像での個人専用化を必要とするデータ媒体ならどのようなものにでも応用可能だということである。そのようなデータ媒体に含まれるのは、運転免許証、バッジまたは通行証、パスポートのデータページ、割引カード、会員カード、銀行カード、クレジット・カード、マネー・カード、マルチアプリケーション・カード、銀行券及びその他の有価証券そして有価証書で、情報またはデータを有し、改変しようとする試みに対しては保護されており、しかもできれば通常の手段では簡単に模倣ができないようになっていることが望ましいものであるが、そのようなものに限らない。身分証明書カードでは、その身分証明用画像は肖像写真画像でもよいし、その機密保護用のパターン画像は網縄模様の複数の線の一つのあつまりでもよい。
【0030】
図1は、身分証明書(ID)カード4を製造して個人専用化するステップの主な流れ2を示す。主な流れ2の始まりは「カード製造」ステップ6で、身分証明書カード4を、なんらかの従来既知のカード製造方法によって製造する。図2は、そうして製造された身分証明書カード4を示すものである。そうして製造された身分証明書カード4は、ポリカーボネートのような、カードに応用する際の常套手段として用いられるプラスチックフィルム材質で作った基板8を含む。個人専用化の終わっていない情報10を基板8の表面12に印刷する。この個人専用化の終わっていない情報10に含まれるものとしては、続き番号や国章などが考えられるが、これらに限るというわけではない。機能搭載層9を基板8に付着させて動かないようにして、(図示されていない)他の個人専用化の終わっていない情報や機密保護機能を載せることができるようにする。この機能搭載層9をその基板8に付着させて動かないようにした後に外すと、できれば、その基板8の上の印刷された情報10が破損することになるというのが望ましい。レーザー感知層14を、例えば接着剤、熱接着、超音波接着などを用いて、その機能搭載層9に付着させて動かないようにする。このレーザー感知層14の材質は透明なポリカーボネートにして、その内部の炭素粒子で白黒の画像が作り出せるようにしてもよい。他の材質も、レーザー光線のエネルギーを吸収して、そこにマーキングを作り出せるものなら、用いてもよい。このような材質のうちの幾つかには、色付きの画像をレーザー印刷できるかレーザー誘導することのできるものが含まれる。
【0031】
ラミネーティングシート18は、保護層として働くもので、レーザー感知層14にラミネートして、そのレーザー感知層14、機能搭載層9と基板8を周囲の環境の影響や、機械的損傷及び磨耗、または変質から保護するものである。そのラミネーティングシート18の材質は透明なポリカーボネートである。特にラミネーションが不可能な場合に、(図示されていない)接着層を、そのラミネーティングシート18とそのレーザー感知層14との間に用いて、二つの層14、18が互いに動かないようにくっつけるようにしてもよい。二つの層14、18を付着させることにより、できれば、そのラミネーティングシート18がそのレーザー感知層14から剥がれないようになることが望ましい。個々の各層8、9、14、18を付着させる為に、特に熱溶融接着層などの、(図示されていない)複数の接着層を追加することも、任意の選択として行ってよい。
【0032】
基板8、機能搭載層9、レーザー感知層14とラミネーティングシート18の熱特性は、基板8、機能搭載層9とラミネーティングシート18が不可逆的破壊を被ることがなく、選択されたレーザーの影響を受けるのがレーザー感知層14だけになるように選択調整する。
【0033】
流れ2は、つぎにカードの個人専用化のステップ20に移り、そこで図3及び図4にそれぞれ示すように、レーザー感知層14において、肖像写真の画像22や、網縄模様の複数の線26からなる機密保護用パターン24のような、個人専用化の済んだマーキングの生成を行う。個人専用化作業の流れ20を実行するのに用いられる個人専用化システム80は図8に示すとおりである。その個人専用化システムに含まれるのは、プログラム可能なプロセッサー84とシステム・メモリー86の付いたコンピュータ装置82;そのコンピュータ装置で読み出し可能なプログラム保存装置88;そしてそのコンピュータ装置82で制御可能な光学的サブシステム90である。個人専用化作業の流れ30を実施する(図示されていない)一つまたは複数のコンピュータ・プログラムがプログラム保存装置88の中に保存される。プロセッサー84は、その一つまたは複数のコンピュータ・プログラムを読み出し実行して、その個人専用化作業の流れ30を実施する。そのコンピュータ・プログラムを実施するのに用いるコンピュータ・プログラム言語は、(マシン語、アセンブリ言語、高級手続き型言語あるいはオブジェクト指向言語も含めて)希望により、どのような言語でもよい。いずれの場合においても、その言語はコンパイラ型言語またはインタープリタ型言語であってよい。
【0034】
肖像写真の画像22と網縄模様の複数の線26の画素を規定するデータは、画素数としては、それぞれ同じサイズで、アスペクト比も同じJPEGファイルの形でシステム・メモリー86の中に保存される。そのファイルのフォーマットは、ビットマップやポータブル・ネットワーク・グラフィックス(PNG)フォーマットを例として、但し、それらに限ることなく、他のフォーマットにしてもよい。その肖像写真の画像22は、480×640画素のサイズの、国際民間航空機関(ICAO)規格による白黒の「トークンイメージ(token image)」でもよい。(図示されていない)その肖像写真の画像ファイルは写真をスキャンして得られるものでも、そのIDカード4の発行を受ける当人から直接に得られるものでもよい。その肖像写真の画像22の各画素のグレースケール値は、0が白、255が黒を示すものとして、8ビットの表示につき、0から255の間の範囲のものであり、その中間の値は、様々な濃淡の灰色を示す。網縄模様の複数の線26は、適当な数式を用いてソフトウエアで生成されるものである。その線の太さ、密度及びパターンは、その肖像写真の画像22に適するように選んでよい。網縄模様の複数の線26のこのパターン24は、個人専用化センターで秘密にしておく。各IDカードにつき異なるパターンを設けることも可能であるが、できれば、同一のパターン24を様々なIDカードを個人専用化するのに用いるのが望ましい。
【0035】
その肖像写真の画像ファイルの中の各画素につき、網縄模様の複数の線の画像ファイルの中に対応する画素が一つある。図5は、本発明の実施例によるカードの個人専用化ステップ20の詳細を示すものである。そのカードの個人専用化ステップ20には、複数の小ステップからなるカード個人専用化作業の流れ30が含まれる。そのカード個人専用化作業の流れ30にはまず、肖像写真画像データ複写ステップ32があり、そこでは、プロセッサー84がその肖像写真画像データをそのJPEGファイルから個人専用化システム80のシステム・メモリー86の中のもう一つのファイルにコピーし、その結果、その肖像写真画像のコピー33ができる。そのカード個人専用化作業の流れ30はつぎに、次の網縄模様画素読み取りステップ34に移り、そこで、プロセッサー84がその網縄模様の複数の線の画像ファイルから次の画素を読み取る。作業の流れ30はつぎに、EOF?決定ステップ36に移り、そこで、プロセッサー84がその網縄模様の複数の線の画像ファイルの終わりまで到達したかどうかを確認する。この決定ステップ36でそのファイルの終わりまでまだ到達していないと判断される場合には、カード個人専用化作業の流れ30はつぎに、網縄模様画素感知可能?決定ステップ38に移る。この決定ステップ38で、プロセッサー84は、その読み取り網縄模様画素が、裸眼か、もしくは適切な光学装置のどちらかで、視覚的に感知可能かどうかを判別する。例えば、そのグレースケール値を値ゼロまたはその他の適切な値と比較することにより、その画素が視覚的に感知可能かどうかの判定をしてもよい。そのパターン24において、網縄模様の複数の線26を規定する画素の値は、ゼロよりも大きいが、その白地の背景部分を規定する画素の値はゼロである。その読み取り網縄模様画素の値がゼロに等しい場合は、その画素は視覚的に感知可能でないものと判定される。そのような場合、作業の流れ30は、次の網縄模様画素読み取りステップ34に戻り、次の網縄模様画素を読み取ることになる。その読み取り網縄模様画素の値がゼロに等しくない場合は、その読み取り網縄模様画素は視覚的に感知可能なものと判定される。そのような場合、カード個人専用化作業の流れ30は肖像写真画像画素<閾値?決定ステップ40に進み、その網縄模様画素をその肖像写真の画像のコピー33の上に重ね合わせることを開始する。このステップ40で、プロセッサー84は、その読み取り網縄模様画素に位置が対応する、その目標肖像写真画素の値を、閾値と比較する。その目標肖像写真画像画素の値がその閾値よりも小さいと確認された場合には、その作業の流れ30は肖像写真画像画素の値を増やすステップ42に進み、そこでそのメモリーの中のその目標肖像写真画像画素の値を所定の値だけ増やす。しかしながら、その目標肖像写真画像画素の値がその閾値に等しいか、それを上回るものである場合は、その作業の流れ30は肖像写真画像画素の値を減らすステップ44に進み、そこでメモリーの中のその目標肖像写真画像画素の値をその所定の値だけ減らす。その所定の値は、その目標肖像写真画像画素の値にかかわらず、単一の値に固定してもよい。例えば、この所定の値を10から127の範囲内の一つの値に固定してもよい。他の方法として、その所定の値は、その目標肖像写真画像画素の値によって変わるようにしてもよい。例えば、その所定の値は、その目標肖像写真画像画素によって規定される白地の背景または黒い領域の値がそれぞれ0か255なら、127にしてもよい。そしてその目標肖像写真画像画素の値が例えば30なら、その所定の値ももっと小さく、例えば50でもよい。その目標肖像写真画像画素の値に足したり、引いたりすることになる値は、もはや見分けがつかなくなるくらいにその肖像写真の画像22を乱してしまうほど大きなものであってはならない。しかしながら、その値は、その肖像写真の画像22にほとんど変化がないか感知可能なほどの変化がないほど小さいものであってもならない。そのような場合には、個人専用化を行った後での偽造が、検出可能となることなく、容易に行われてしまいかねない。肖像写真画像画素の値を増やすステップ42と肖像写真画像画素の値を減らすステップ44とから、作業の流れ30は次の網縄模様画素を読み取るステップ34に戻る。
【0036】
プロセッサー84は、その網縄模様の複数の線の画像ファイルの終わりに到達するまで、ステップ34から44までを繰り返す。上記に説明した肖像写真の画像画素における変化により、システム・メモリー86の中の肖像写真の画像33は、当初の肖像写真の画像22及び網縄模様の複数の線26と異なっている部分で修正される。メモリー内の肖像写真の画像33のそのような各部分を修正すると、その網縄模様の複数の線26の視覚的に感知可能な部分に対応していないその肖像写真の画像33の他の部分とのコントラストを更に際立たせることになる。その肖像写真の画像33をこのように修正すると、その結果、網縄模様の複数の線26はそのメモリー内のその肖像写真の画像33に適用され、あるいは重ね合わされることになり、そして、その修正された肖像写真の画像33は、その肖像写真と網縄模様の複数の線との複合画像となる。このようにすると、網縄模様の複数の線のパターンが、その肖像写真の画像の上に重ね合わされる。その複合画像における網縄模様の複数の線を規定する画素の値は、その肖像写真の画像のそれぞれの当初の値に基づくものである。つまり、この実施例に限っては、網縄模様の複数の線の画像は、テンプレートとしてのみ用いられる。図6は、メモリー内の修正された肖像写真の画像33を示す。当初の肖像写真の画像22がどれほど変わったのかを完全に示すのは不可能なので、図4における網縄模様の複数の線26は、単に、肖像写真の画像22の位置的に対応する部分に代わるものとしてのみ、図6に示すにとどめる。しかしながら、忘れてならないのは、それは本発明の以上に説明した実施例により得られる複合画像にはあてはまらないということである。図7は、その当初の肖像写真の画像22に加えられた変更を更に精確に示すもう一つの図解である。図7は、白い領域52、灰色の領域54、そして黒い領域56と、領域52から56を通過する網縄模様の線26とを有する、メモリー内の図解用肖像写真の画像33の拡大部分50を示すものである。以上に説明した実施例によると、網縄模様の線26と重なる領域52から56のそれぞれの一部である部分58、60、62を変更して、その網縄模様の線26とは重ならないが、そのパターン24の視覚的に感知可能でない部分とは重なる隣接部分とのコントラストが際立つようにする。それらの部分58、60、62を表示する画素の値を、以上に説明した方法により変更して、それぞれに隣接する部分と色調もしくは色彩についての関係を有するようにし、その間にコントラストが生まれるようにする。その複合画像においては、そのような網縄模様の複数の線の画像画素の値は、そのようにして少なくとも実質的にはその肖像写真の画像の隣接する画素の値に基づいており、それとコントラストをなす。EOF?決定ステップ36において、ファイルの終わりに到達したことが確認された後は、カード個人専用化作業の流れ30は最後に、画像をレーザー印刷するステップ70に来て、そこで、コンピュータ装置がそのシステム・メモリー内の肖像写真の画像33のデータを用いてその光学的サブシステムを制御し、そのIDカード4のラミネーティングシート18を通してその(図示されていない)レーザー光線を発生させ、導き、集束させて、レーザー感知層14でその対応する画像72を印刷する。このレーザー感知層14は内部に炭素粒子を有しているので、その炭素粒子がレーザー光線から光子を吸収し、周囲の材質を焼いて、その材質を黒く変色させる。このような材質の黒色化は、そのレーザー感知層14の表面か、そのレーザー感知層14の内部空間の中で発生することが考えられる。他の実施例における他の方法として、そのレーザー感知層14に顔料、試薬、あるいはそのレーザー光に感応する既知の成分を含ませてもよい。このような他のレーザー感知層については、そのレーザー光線により、そのような顔料、試薬、あるいは既知の成分と反応が生じて、そのレーザー感知層14で複合画像が形成される。画像72が印刷された後は、個人専用化作業の流れ30は最後に肖像写真の画像データ削除ステップ74に来て、そこでプロセッサーがそのシステム・メモリーからその肖像写真の画像33のデータを削除する。
【0037】
本発明は以上に述べた実施例で実施されるものと説明しているが、それはそのような事例に限定されると解釈されるべきではない。他の材質、例えば写真紙、パスポートのデータページ、書類、有価証券、銀行券、小切手などの表面の性質の異なる紙やプラスチック材料も基板として用いてよい。
【0038】
もう一つ別の例として、その基板は別個の一層である必要はなく、そのレーザー感知層と一体をなすものでもよい。そのような場合には、その基板は、自立式レーザー感知層であり、それは、できれば、プラスチック製で、レーザー光線の波長について強い吸収性をもつ少量の物質を混入させることにより感光性を得ることのできるものであることが望ましい。
【0039】
更にもう一つの例として、まだ個人専用化をしていない情報とデータは、その基板の上に印刷されるものとして説明したが、それらをそのレーザー感知層で個人専用化された画像と一緒にまとめてレーザー印刷してもよい。そのまだ個人専用化をしていない情報とデータにはまた、会社のロゴや階級の記章などを含ませてもよい。その個人専用化した情報とデータにはまた、指紋と虹彩スキャン画像を含ませてもよい。更に、様々な各種の機密保護用印刷、糸、ホログラムなどを含む機密保護機能は、必ずしも、機能搭載層に載せるものに限るべきではない。このような機密保護機能は、可能なら、そのデータ媒体の様々な層に分散させてよい。
【0040】
更にもう一つの例として、そのレーザー感知層はまた、レーザーに感応する顔料や有機化合物を含む透明なコーティング・シートでもよいし、あるいは様々な色の付いた顔料の層を何枚も重ね合わせたもので構成されるものでもよい。
【0041】
更にもう一つの例として、そのレーザー感知層14にはまた、その表面をレーザーに感応するようにする為に、表面処理工程で、機能搭載層9の表面に塗布するニスの一層を含ませてもよい。
【0042】
一般的に言って、その第二の画像の目標画素の幾つかの値をそれぞれの新しい値に変更するのは、グレースケール用の最大スケール値の少なくとも15分の1を占めてよい。場合によっては、(色付き画素用の波長スケール、輝度スケールなどの)他のスケールの値を考慮に入れて、その値の変更により、変更された画素とその画像の目標画素(または最寄りの隣接画素)との間にはっきりした違いが生じることもある。この違いは、つまりはどれほど多くの異なる画素の色調または色彩をその画像及び/またはパターンの中に用いるかにより、そのスケールの及ぶ範囲全体の少なくとも2分の1もしくは5分の1もしくは10分の1または15分の1を占めることもある。比例的な規則としては、「n個」の異なる色調がその画像の中に含まれ、(互いの間に同じスペースを空けて)一つの数値のスケールにおいて一定間隔で広がっている場合には、本発明の方法により、変更された画素と目標になった画素(もしくはその目標とされた画素に近いその画像の最寄りの隣接画素)との間で、そのようにはっきりと大きくなった違いは、その数値のスケールの範囲の常にn分の1以上の大きさであってよい。
【符号の説明】
【0043】
4 身分証明書カード
8 基板
9 機能搭載層
14 レーザー感知層
18 ラミネーティングシート
22 肖像写真画像
24 機密保護用パターン
80 個人専用化システム
84 プロセッサー
86 システム・メモリー
82 コンピュータ装置
88 プログラム保存装置
90 光学的サブシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の画像(24)を第二の画像(22)の上に重ね合わせる方法(30)であって、各画像を規定するのは複数の画素であり、該方法は、該第二の画像(22)の上に重ね合わせることになる第一の画像(24)の画素と位置が対応する第二の画像の目標画素の変更を行うことからなり、その第二の画像の目標画素を変更することが、その第二の画像(22)のそのような目標画素のうちの幾つかの値を、その第二の画像(22)の少なくとも一つの画素の当初の値に基づいた新しい値にそれぞれ変更すること(42、44)からなることを特徴とする方法。
【請求項2】
その第二の画像(22)の少なくとも一つの画素の当初の値は、その目標画素の当初の値及び/またはその目標画素のすぐ隣の少なくとも一つの隣接画素の当初の値からなることを特徴とする、請求項1に記載の方法(30)。
【請求項3】
その第二の画像(22)の少なくとも一つの画素の当初の値は、その目標画素のみの当初の値からなり、そしてその目標画素の値を変更することが:その当初の目標画素の値を閾値と比較し(40);そしてその当初の目標画素の値がその閾値と比較してどのくらいのものかにより、その目標画素の値をある値だけ増やすか(42)減らすか(44)して、その新しい値を得ることからなることを特徴とする、請求項2に記載の方法(30)。
【請求項4】
その目標画素の値をある値だけ増やすか(42)減らすか(44)して、その新しい値を得ることが:その当初の目標画素の値がその閾値よりも低い場合には、所定の値だけその目標画素の値を増やし(42);その当初の目標画素の値がその閾値よりも高い場合には、所定の値だけその目標画素の値を減らし(44);そしてその当初の目標画素の値がその閾値に等しい場合には、その目標画素の値を増やすか(42)減らすか(44)のどちらかをすることからなることを特徴とする、請求項3に記載の方法(30)。
【請求項5】
その目標画素の値を増やす、その目標画素の値を減らす、そしてその目標画素の値を増やすか減らすかどちらかをするのは、その第一の画像(24)の画素とその第二の画像(22)の対応する目標画素との間の値の差がその所定の値よりも小さいことが確認される場合であり;そしてその目標画素の値をその第一の画像(24)の対応する画素の値に設定するのは、その第一の画像(24)の画素とその第二の画像(22)の対応する目標画素との間の値の差がその所定の値よりも大きいことが確認される場合であることを特徴とする、請求項4に記載の方法(30)。
【請求項6】
その第二の画像の少なくとも一つの画素の当初の値は、その第二の画像(22)の複数の画素の値からなり、そしてその目標画素の値を変更する(42、44)ことが:その第二の画像(22)の複数の画素の値の平均を閾値と比較し(40);そしてその平均値がその閾値と比較してどのような値かにより、ある値だけ、その目標画素の値を増やす(42)か、あるいは減らす(44)かして新しい値を得ることからなることを特徴とする、請求項2に記載の方法(30)。
【請求項7】
ある値だけ、その目標画素の値を増やす(42)か、あるいは減らす(44)かして新しい値を得ることが:その平均値がその閾値よりも低い値なら、その目標画素の値を所定の値だけ増やし(42);その平均値がその閾値よりも高い値なら、その目標画素の値を所定の値だけ減らし(44);そしてその平均値がその閾値に等しい値なら、その目標画素の値を増やすか(42)あるいは減らす(44)かすることからなることを特徴とする、請求項6に記載の方法(30)。
【請求項8】
その目標画素の値を増やす(42)、その目標画素の値を減らす(44)、そしてその目標画素の値を増やすか(42)減らすか(44)どちらかをするのは、その第一の画像(24)の画素とその第二の画像(22)の対応する目標画素との間の値の差がその所定の値よりも小さいことが確認される場合であり;そしてその目標画素の値をその第一の画像の対応する画素の値に設定するのは、その第一の画像の画素とその第二の画像の対応する目標画素との間の値の差がその所定の値よりも大きいことが確認される場合であることを特徴とする、請求項7に記載の方法(30)。
【請求項9】
その第二の画像(22)の少なくとも一つの画素の当初の値は、その第二の画像(22)の複数の画素の値からなり、そしてその目標画素の値を新しい値に変更することが:可能な場合は、その目標画素の新しい値を、その第二の画像(22)の複数の画素の値のそれぞれから一つの所定の値だけ隔たった値あるいは可能な限り遠く隔たった値に設定するか;さもなければ、その目標画素の新しい値を、その第二の画像(22)の複数の画素の値の中央値、一つの画素の最小値または一つの画素の最大値に設定することからなることを特徴とする、請求項2に記載の方法(30)。
【請求項10】
その第二の画像(22)の少なくとも一つの画素の当初の値は、その第二の画像(22)の複数の画素の値からなり、そしてその目標画素の値を新しい値に変更することが:その目標画素のその新しい値を、その第二の画像(22)の複数の画素の値のそれぞれから可能な限り遠く隔たった値に設定することからなることを特徴とする、請求項2に記載の方法(30)。
【請求項11】
画素の値を構成するのは、白黒の第二の画像についてはグレースケール値、あるいはカラーの第二の画像については明度及び色成分の値のうちの少なくとも一つであることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一つに記載の方法(30)。
【請求項12】
コンピュータ装置(82)で読み出し可能なプログラム保存装置(88)であって、
該プログラム保存装置には各種命令のプログラムが実際に組み込まれており、
該命令のプログラムは、請求項1から11のいずれか一つに記載の、第一の画像(24)を第二の画像(22)の上に重ね合わせる方法(30)を実施するために、該コンピュータ装置(82)によって実行可能なものであることを特徴とする、プログラム保存装置(88)。
【請求項13】
第一の画像(24)を第二の画像(22)の上に重ね合わせる為にコンピュータ装置(82)で実行可能なソフトウエア・プログラムであって、各画像を規定するのは複数の画素であり、該ソフトウエア・プログラムはその第二の画像(22)の上に重ね合わされることになる第一の画像(24)の画素と位置が対応するその第二の画像(22)の目標画素を変更することからなる各ステップを実行する為の命令を含み、その第二の画像の目標画素を変更することが、その第二の画像(22)のそのような目標画素のそれぞれの値を、その第二の画像(22)の少なくとも一つの画素の当初の値に基づく一つの新しい値に変更する(42、44)ことからなることを特徴とする、ソフトウエア・プログラム。
【請求項14】
機密保護用パターン画像(24)をデータ媒体(4)で描き出し、身分証明用画像(22)をデータ媒体(4)で描き出すことによってデータ媒体の個人専用化を行う方法であって、該方法は、前記請求項1から11のいずれか一つにより機密保護用パターン画像(24)を身分証明用画像(22)の上に重ね合わせる(30)ことからなり、そして機密保護用パターン画像(24)を描き出し、身分証明用画像(22)を描き出すことが、その身分証明用画像をその上に重ね合わせた機密保護用パターン画像と一緒に印刷(70)することからなることを特徴とする、データ媒体の個人専用化方法。
【請求項15】
該データ媒体(4)は一まとまりのデータ媒体のうちの一つであり、その一まとまりの中のそれぞれのデータ媒体を個人専用化する為に異なる身分証明用画像を用いることを特徴とする、請求項14に記載のデータ媒体の個人専用化方法。
【請求項16】
印刷は、レーザー印刷(70)、レーザー・エッチング、昇華型印刷およびインク・ジェット印刷、のうちの一つで行うことを特徴とする、請求項14または15に記載のデータ媒体の個人専用化方法。
【請求項17】
データ媒体(4)であって、そこに印刷された身分証明用画像(22)と機密保護用パターン画像(24)とを含み、そのような画像同士が少なくとも一部重なり合っており、その機密保護用パターン画像(24)を規定するのは複数の画素であり、それらの画素の外観のうちの少なくとも幾つかがそれぞれ、それらの画素にそれぞれ隣接する少なくとも一つの身分証明用画像(22)の画素と色調または色彩について関係を有することを特徴とするデータ媒体(4)。
【請求項18】
機密保護用パターン画像(24)の各画素と、該画素にそれぞれ隣接する少なくとも一つの身分証明用画像(22)の画素との間の色調または色彩の関係は、その機密保護用パターン画像の画素の値と該画素にそれぞれ隣接する少なくとも一つの身分証明用画像(22)の画素の値との間の少なくとも一つの所定の差からなることを特徴とする、請求項17に記載のデータ媒体(4)。
【請求項19】
その所定の値は一つの画素の最大値の少なくとも15分の1であることを特徴とする、請求項18に記載のデータ媒体(4)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−501130(P2010−501130A)
【公表日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524204(P2009−524204)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058590
【国際公開番号】WO2008/020080
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(509046136)
【氏名又は名称原語表記】GEMALTO OY
【Fターム(参考)】