説明

一時染毛料

【課題】本発明は一時染毛料に関するもので、顔料の分散性に優れ、二次汚着もなく、特に、塗布時の液の飛び散りがなく、均一な付着性および塗布後のゴワツキ感が少なく、速乾性に優れた染毛料を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために、エタノールを50〜80重量%と、揮発性油分を5〜39重量%と、有機変成粘土鉱物を1〜23重量%と、を含有し、また、粘度が100〜5,000mPa・sであり、更には、塗布部がブラシ、クシ、チップから選ばれる塗布具を用いて毛髪に塗布することを特徴とする一時染毛料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一時染毛料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
染毛料は、毛髪に着色した色の持続性の観点から一時染毛料、半永久染毛料、永久染毛料に分類される。半永久染毛料や永久染毛料はシャンプーしても色落ちし難いという長所があるが、操作が煩雑になるという側面を有する。一方、一時染毛料は、その使用方法が簡単で目的とする部位に塗布するだけでよく、スピーディに染毛できる利点があり、外出前の使用などには最適である。また、一時染毛料はシャンプーで簡単に洗い落とすことができるので染めた色に不満があるときや他の色に変更したいときなどに便利であり、市場でのその需要も高いものである。
【0003】
従来、一時染毛料は、隠蔽性の高いカーボンブラックやチタンブラックなどの無機顔料を中心とした色材、色材を毛髪に固着し衣服などへの二次汚着を防ぐための皮膜剤、エタノールなどの速乾性の揮発性溶剤で構成されている。特許文献1では揮発性油分と撥水性ポリマーにて二次汚着を改善し、更に特許文献2では特定の顔料とゲル化剤およびフィルム形成ポリマーとを特定比率で配合することよりベタツキやゴワツキ等を改善する試みがなされている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−265354号公報
【特許文献2】特開平11−49651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の一時染毛料は、顔料分散性に問題があり、特許文献2では顔料が限定されたり、さらにこれらの特許文献では速乾性や均一付着性やゴワツキ感などの使用性においても、まだ、充分に満足のいくものではなかった。
【0006】
ところで、一時染毛料は、生え際などの白髪が目立つ部位を部分的に染毛することが一般的に広く行われている。このためには、ジェル状の染毛料を、ブラシやクシなどを用いて目的とする部位に確実に塗布する方法が最適である。
【0007】
このようなタイプの一時染毛料では、特に、液のタレ落ちや飛び散りがなく、液の均一な毛髪への付着性、塗布後の自然な髪の感触などが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、本発明は、エタノールを50〜80重量%と、揮発性油分を5〜39重量%と、有機変成粘土鉱物を1〜23重量%と、を含有する一時染毛料とすることにより顔料の分散性に優れ、二次汚着もなく、特に、塗布時の液の飛び散りがなく、液の伸ばしやすさ、均一な付着性および塗布後のゴワツキ感が少なく、速乾性に優れた染毛料を提供することができる。
【0009】
更に、本発明の一時染毛料は、粘度が100〜5,000mPa・sであることが好ましい。かかる粘度範囲にある本発明の一時染毛料によれば、ブラシ、クシまたは、チップのいずれかを用いて毛髪に塗布する場合に、一時染毛料を毛髪の目的とする部位に確実に塗布でき、上述した本発明の効果をより有効に発揮できる。
【発明の効果】
【0010】
顔料の分散性に優れ、二次汚着もなく、特に、塗布時の液の飛び散りがなく、均一な付着性および塗布後のゴワツキ感が少なく、速乾性に優れた染毛料を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を実施するための最良の形態について詳述する。
なお、以下の%は重量%を示し、以後%のみ表示する。
【0012】
本発明では、エタノールを50〜80%と、揮発性油分を5〜39%と、有機変成粘土鉱物を1〜23%と、を含有することを特徴とする一時染毛料である。
【0013】
本発明に用いられるエタノールは、特に限定されず、化粧料で一般的に汎用されるものでよく、市販のものを使用できる。
【0014】
本発明では、エタノールの含有量は50〜80%であればよく、50%未満では液が毛髪に均一に付着しにくくなり、好ましくない。また、80%を越えると粘度が得られにくく、好ましくない。
【0015】
本発明に用いられる揮発性油分は、常温(25℃)・常圧(1気圧)で揮発する油分であればよく、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどの環状シリコーン油、デカメチルテトラシロキサン、ヘキサメチルジシロキサンなどの鎖状シリコーン、イソドデカンなどの炭化水素油、軽質流動パラフィンなどが使用でき、市販品としては、TSF−405(モメンティブ・パフォーマンス・ジャパン社)、KF995(信越化学工業)、パールリーム4(日本油脂)、IPソルベント1620MU(出光興産)、アイソパー(エッソ化学)等が挙げられる。本発明における揮発性油分は、1種又は2種以上が任意に選択される。
【0016】
本発明では、揮発性の油分の含有量は5〜39%であればよく、好ましくは、5〜25%である。揮発性油分の含有量が5%未満では、塗布時に液が毛髪に伸ばしにくくなり好ましくなく、39%を越えると粘度が得られにくくなり好ましくない。
【0017】
本発明に用いられる有機変成粘土鉱物は、珪酸層の層間に有機化剤を挿入したもので、具体的にはジステアルジモニウムヘクトライト、ステアラルコニウムヘクトライト、クオタニウム−18ベントナイト、ステアラルコニウムベントナイトなどが挙げられ、市販品としてエレメンチススペシャリティズ社製のベントン38Vやベントン27V、サザン・クレイ社製のクレイトーン40、クレイトーンAFなどが挙げられる。
【0018】
本発明では、有機変成粘土鉱物の含有量は1〜23%であればよく、好ましくは、1〜10%である。有機変成粘土鉱物の含有量が1%未満では、顔料分散性が悪く、好ましくない。また、23%を越えると毛髪に均一に付着しにくく、好ましくない。
【0019】
本発明に用いられる着色剤として、所望される色調に応じて、一般的に一時染毛料に使用されるものでよく、具体的には、カーボンブラック、黒酸化チタン、黒酸化鉄、黄酸化鉄、ベンガラ、群青、紺青などの無機顔料や、マイカ、雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、黒酸化鉄被覆雲母チタン、ベンガラ被覆雲母などのパール顔料や、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号の(1)、赤色106号、赤色227号、黄色4号、黄色5号、黄色203号、緑色3号、緑色201号、緑色205号、青色1号、青色2号、青色202号、青色205号、だいだい色207号などのバリウム、カルシウムもしくはアルミニウムのレーキ顔料や、赤色201号、赤色202号、赤色207号、黄色201号、黄色204号、黄色205号、緑色202号、青色201号、青色204号、だいだい色201号、だいだい色204号、紫色201号などの有機顔料が挙げられる。
【0020】
更に、本発明に用いられるその他の成分としては、任意成分として化粧料で通常使用される油分、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、薬剤、香料等も適宜配合することができる。
【0021】
これらの任意成分は1種又は2種以上を組み合わせて効果を損なわない範囲にて配合することができる。
【0022】
本発明の一時染毛料の製造方法は、例えば、顔料、油分、有機変成粘土鉱物を混合し、ロールにて分散した後、エタノールを加え、ディスパーなどで均一分散させる方法が挙げられる。
【0023】
また、本発明の一時染毛料は、粘度が100〜5,000mPa・sであることが好ましい。なお、粘度は、B型粘度計を使用し、測定適応範囲に応じたローター、回転速度を設定し、温度25±1℃で測定したときの値(mPa・s)をいう。具体的には、粘度が50mPa・s以下ではローターNo.1、60rpm、50〜200mPa・sの範囲ではローターNo.2、60rpm、200〜2000mPa・sの範囲ではローターNo.2、12rpm、2000〜8000mPa・sの範囲ではローターNo.3、12rpm、8000mPa・s以上の範囲ではローターNo.3、6rpmの条件にて測定する。
【0024】
本発明について以下に実施例を挙げて更に詳述するが、本発明はこれにより限定されるものでない。
【実施例】
【0025】
実施例に先立ち、各実施例で採用した各評価項目の評価方法について説明する。
【0026】
[分散性]
サンプル30gを遠心分機(国産遠心機KK,H−103N)の付属容器(50CC)に充填し、前記遠心機にてローターRF−110−B、1500rpmの条件下、10分間かけた後、サンプルの充填された本容器を上下に強く振り、50回毎にサンプルの分散性を目視にて観察した。サンプルの分散性を以下の4段階の基準で評価した。
◎・・・50回で完全に均一分散していた
○・・・100回で完全に均一分散していた
△・・・100回でもわずかに底部に凝集物認められた
×・・・100回でも底部に多くの凝集物認められた
【0027】
[液の飛び散り]
塗布部がブラシからなるマスカラ用容器にサンプルを充填し、白い紙の上でブラシを引き出したときのサンプルの飛び散り具合を下記基準にて目視により評価した。
◎・・・全く、液の飛び散りを認めない
○・・・2〜3滴の液の飛び散りが見られた
△・・・4〜10滴の液の飛び散りが見られた
×・・・11滴以上の液の飛び散りが見られた
【0028】
[速乾性]
ブラシにてヤギ毛束(長さ10cm、重量1g)の先端から5cmまでサンプル0.2gを塗布し、室温(25±1℃)に放置し、毛束に手を触れたときのサンプルの転着しなくなるまでの時間を測定し、下記の基準にて目視にて評価した。
◎ ・・・乾燥時間が1分以内
○・・・乾燥時間が1分を超え3分以内
△・・・乾燥時間が3分を超え10分以内である
×・・・乾燥時間が10分を超える
【0029】
[二次汚着性]
ブラシにて前記のヤギ毛束の先端から5cmまでサンプル0.2gを塗布し、室温(25±1℃)で15分間乾燥した後、毛束をティシュペーパーで擦ったときの顔料の転着度合いを下記の基準にて目視にて評価した。
◎・・・転着が全く認められない
○・・・薄い転着がわずかに認められる
△・・・ところどころに濃い色移りが認められる
×・・・濃い色移りが多く認められる
【0030】
[塗布時の伸ばしやすさ、均一付着性、ゴワツキ感]
20名のパネラーに、ブラシにて前記ヤギ毛束にサンプルを塗布したときのサンプルの伸ばしやすさ、均一付着性、ゴワツキ感につきそれぞれ官能評価してもらい、この評価結果をもとに下記基準にて評価した。
◎ ・・・18名以上が良好と回答
○・・・14名以上、18名未満が良好と回答
△・・・10名以上、14名未満が良好と回答
× ・・・10名未満が良好と回答
【0031】
表1、2に示す組成物からなる一時染毛料を調整し、これを評価試料として、前記評価方法に基づき、各評価項目の判定を実施した。結果を併せて表1、表2に示す。
【0032】
(調整法)
顔料、油分、有機変成粘土鉱物を混合し、ロールにて分散した後、エタノールを加え、ディスパーで均一分散させた。
【0033】
なお、表1および表2で示される(注1)〜(注3)の原料については、それぞれ下記の市販品を使用した。
(注1):コニシ無水エタノール(コニシ(株))
(注2):TSF−405(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社)
(注3):ベントン38V(エレメンチススペシャリティズ社)
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
表1からわかるように本発明に関わる実施例1〜6は、全ての評価項目において良好であった。
【0037】
一方、表2では、エタノールが少ないと均一付着性、速乾性に問題があり、多いと液の飛び散り、伸ばしやすさに問題があった。また、有機変性粘土鉱物が適正範囲にないと均一付着性、分散性、液の飛び散り等に問題があり、更に有機変性粘土鉱物の代わりにシリル化シリルを使用したものでは、均一付着性、ゴワツキ感などに問題があった。
【0038】
以下に処方例として実施例 7〜8 を示す。
【0039】
[実施例7]
(配合成分) (重量%)
(1)カルボキシベタイン樹脂(注1) 9.00
(2)エタノール 55.00
(3)黒酸化鉄 3.50
(4)赤色202号 0.80
(5)硫酸バリウム 1.20
(6)黄色4号アルミニウムレーキ 6.50
(7)リンゴ酸ジイソステアリル 5.00
(8)セスキイソステアリン酸ソルビタン 3.00
(9)シクロメチコン(注2) 11.00
(10)ステアラルコニウムベントナイト(注3) 5.00
注1:ユカフォーマー202(三菱化学)
注2:KF995(信越化学工業)
注3:クレイトーンAF(サザン・クレイ社)
(製法)
(7)、(8)を混合し、これに(3)、(4)、(5)、(6)を添加し、ロールにて分散したもの、(9)に(10)を添加しロール分散したもの、(2)に(1)を混合したもの、を混合してディスパーにて分散することにより一時染毛料を得た。
【0040】
[実施例8]
(配合成分) (重量%)
(1)アクリル系樹脂(注1) 9.00
(2)エタノール 55.00
(3)黒酸化チタン 3.50
(4)赤色202号 0.80
(5)硫酸バリウム 1.20
(6)黄色4号アルミニウムレーキ 6.50
(7)リンゴ酸ジイソステアリル 5.00
(8)イソステアリン酸PEG−20グリセリル 3.00
(9)イソドデカン(注2) 13.00
(10)ジステアルジモニウムヘクトライト(注3) 3.00
注1:プラスサイズL−50P(互応化学工業)
注2:マルカゾールR(丸善石油化学)
注3:ベントン38V(エレメンチススペシャリティズ)
(製法)
実施例7に準じて一時染毛料を得た。
【0041】
以上の実施例のいずれも顔料の分散性に優れ、二次汚着もなく、特に、塗布時の液の飛び散りがなく、均一な付着性および塗布後のゴワツキ感が少なく、速乾性に優れた染毛料であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノールを50〜80重量%と、揮発性油分を5〜39重量%と、有機変成粘土鉱物を1〜23重量%と、を含有する一時染毛料。
【請求項2】
粘度が100〜5,000mPa・sである請求項1記載の一時染毛料。
【請求項3】
塗布部がブラシ、クシ、チップから選ばれる塗布具を用いて毛髪に塗布する請求項1または請求項2記載の一時染毛料。
















【公開番号】特開2009−67706(P2009−67706A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236253(P2007−236253)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(591147339)株式会社トキワ (141)
【Fターム(参考)】