説明

一液型オルガノポリシロキサンゲル組成物

【課題】 室温における付加反応が有効に抑制され、保存安定性が長期にわたって維持され、更に従来と比較して、低温で短時間の硬化が可能である一液型オルガノポリシロキサンゲル組成物を提供する。
【解決手段】 分岐構造のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンと、分子鎖末端に珪素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、付加反応を促進する白金系触媒を含む一液型オルガノポリシロキサンゲル組成物において、付加反応触媒として、アルケニル基含有シラン又はアルケニル基含有オルガノシロキサンを配位子とする白金錯体と、亜リン酸エステルと、珪素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの特定量からなる混合物を30℃〜120℃の温度で加熱熟成したものを用い、更に有機過酸化物を併用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一液型オルガノポリシロキサンゲル組成物に関し、特に室温において良好な長期保存安定性を有し、従来と比較して、低温で短時間硬化可能な一液型オルガノポリシロキサンゲル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、珪素原子に結合した水素原子(SiH基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、珪素原子に結合したビニル基等のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、及び白金系触媒を含み、前記SiH基のビニル基等への付加反応(ヒドロシリル化反応)により硬化物を得る付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物(以下、単に「組成物」という)に、白金系触媒とともに、種々の付加反応抑制剤を配合し、室温における付加反応による硬化の進行を抑制して長期保存安定性を向上させ、かつ、使用時には加熱によって付加反応を促進させて硬化するようにさせることは周知である。例えば、付加反応抑制剤としてアセチレン系化合物(米国特許第3,445,420号明細書:特許文献1)、スルホキシド化合物(米国特許第3,453,234号明細書:特許文献2)、又はハイドロパーオキサイド化合物(米国特許第4,061,609号明細書:特許文献3)を配合することが知られている。
【0003】
しかし、分子鎖末端にSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用する場合、上記の反応抑制剤を配合しても、組成物の室温における付加反応による硬化の進行を有効に抑制することができないため、組成物の保存安定性が十分ではなかった。更に、上記の分子鎖末端にSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、分岐状構造のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとの組み合わせである組成物の場合には、室温における長期保存安定性を図ることが一層困難であった。
【0004】
これらの問題を解決するために、米国特許第4,584,361号明細書(特許文献4)には、ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサンと分子鎖末端にSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを含む組成物の室温における付加反応抑制剤として、n−ブチルアミン、N,N−ジブチルアミノプロピルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等のアミン化合物を用いることが記載されている。しかし、これらのアミン化合物は、その沸点が低いために開放系での保存安定性に劣り、また組成物中に無機充填剤が配合されていると、その無機充填剤表面に吸着されてしまい、その付加反応抑制効果が著しく低下するという欠点を有しているため、未だ有効なものではなかった。
【0005】
一方、亜リン酸エステルを付加反応抑制剤として配合した組成物は、米国特許第3,188,300号明細書(特許文献5)、特表2001−508096号公報(特許文献6)、及び特表2001−527111号公報(特許文献7)に記載され、特開昭56−20051号公報(特許文献8)には、付加反応抑制剤としてリン化合物と有機過酸化物とを用いることが記載されている。
また、特開2004−204225号公報(特許文献9)には、亜リン酸エステルと有機過酸化物の組み合わせにより、分子鎖末端にSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、分岐状構造のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとの組み合わせを含む組成物の室温における付加反応制御について提案している。しかしながら、この組成物は長期の保存安定性は発現するものの、低温で短時間硬化の実現において、なお改良の余地があった。
【0006】
【特許文献1】米国特許第3,445,420号明細書
【特許文献2】米国特許第3,453,234号明細書
【特許文献3】米国特許第4,061,609号明細書
【特許文献4】米国特許第4,584,361号明細書
【特許文献5】米国特許第3,188,300号明細書
【特許文献6】特表2001−508096号公報
【特許文献7】特表2001−527111号公報
【特許文献8】特開昭56−20051号公報
【特許文献9】特開2004−204225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、分子鎖末端にSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、分岐状構造のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとの組み合わせを含む組成物の場合であっても、更に、組成物中に無機充填剤が配合されている場合にも、室温における付加反応が有効に抑制され、保存安定性が長期にわたって維持され、更に従来と比較して、低温で短時間の硬化が可能である一液型オルガノポリシロキサンゲル組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、分岐構造のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンと、分子鎖末端に珪素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、付加反応を促進する白金系触媒を含む一液型オルガノポリシロキサンゲル組成物において、付加反応触媒として、アルケニル基含有シラン又はアルケニル基含有オルガノシロキサンを配位子とする白金錯体と、亜リン酸エステルと、珪素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの特定量からなる混合物を30℃〜120℃の温度で加熱熟成したものを用いること、更に有機過酸化物を併用することにより、室温における付加反応が有効に抑制され、保存安定性が長期にわたって維持され、更に、従来と比較して、低温で短時間の硬化が可能となり得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
なお、前記文献の何れにも、亜リン酸エステルを付加反応抑制剤として用いた場合に、分子鎖末端にSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む組成物において、室温における付加反応が有効に抑制できることについて記載されていない。更に、分子鎖末端にSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、分岐状構造のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとの組み合わせを含む組成物の場合に、亜リン酸エステル、又は亜リン酸エステルと有機過酸化物との組み合わせにより、室温における付加反応抑制が可能であることについては全く記載されていないものである。
【0010】
従って、本発明は、
(A)R2SiO単位:80.0〜97.0モル%、
RSiO1.5単位:1.0〜10.0モル%、
(CH32(CH2=CH)SiO0.5単位:0.1〜4.0モル%、及び
(CH33SiO0.5単位:0.5〜10.0モル%
[但し、これらの単位の合計は100モル%であり、これらの単位を表す前記各単位式において、Rはメチル基、フェニル基、又は式:RfCH2CH2−(Rfは、鎖中にエーテル結合性酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキル基である。)で表される基である。]
からなり、1分子中に含まれる複数のRは同一又は異なる、オルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)下記平均組成式(1)
1abSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R1は脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、また、aは0.7〜2.2、bは0.001〜1.0で、かつa+bが0.8〜3.0を満足する正数である。)
で表され、分子鎖末端に珪素原子に直結した水素原子を少なくとも1個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分中のビニル基1個に対して、珪素原子に結合した水素原子を0.1〜5個与える量、
(C)下記(C−1)〜(C−3)からなる混合物を、30℃〜120℃の温度で加熱熟成した付加反応触媒:(A)及び(B)成分の合計質量に対して、白金原子として0.1〜1,000ppm与える量、
(C−1)アルケニル基含有シラン又はアルケニル基含有オルガノシロキサンを配位子とする白金錯体:白金錯体中の白金原子として1当量、
(C−2)下記一般式(2)
P(OR23 (2)
〔式中、R2は独立に非置換もしくは置換の1価炭化水素基及び式:−R3−[O−P(OR22x(式中、R2は前記の通り、xは1〜3の整数であり、R3は鎖中にエーテル結合性酸素原子を有していてもよい炭素数2〜20の2〜4価の炭化水素基である。)から成る群より選ばれる少なくとも1種の基である。〕
又は下記一般式(2’)
【化1】

(式中、R2は前記の通り、R4は鎖中にエーテル結合性酸素原子を有していてもよい炭素数1〜20の4価の炭化水素基である。)
で表される亜リン酸エステル:リン(P)原子として1〜10当量、
(C−3)下記平均組成式(3)
4cdSiO(4-c-d)/2 (3)
(式中、R4は脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、また、cは0.7〜2.2、dは0.001〜1.0で、かつc+dが0.8〜3.0を満足する正数である。)
で表され、珪素原子に結合した水素原子を少なくとも1個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:珪素原子に結合した水素原子として1〜100当量
(D)有機過酸化物:(C)成分の亜リン酸エステル1当量に対して2当量以上
を含有して成ることを特徴とする一液型オルガノポリシロキサンゲル組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、従来、室温における長期間の保存が不可能であった、分子鎖末端に珪素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、珪素原子に結合した脂肪族不飽和基を有する分岐状のオルガノポリシロキサン及び付加反応を促進する白金系触媒を含む一液型オルガノポリシロキサンゲル組成物に、長期保存安定性を付与するとともに、従来と比較して優れた硬化性を付与することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[(A)ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン]
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、本発明組成物の主剤(ベースポリマー)として使用されるものであり、上記の通り、R2SiO単位:80.0〜97.0モル%、RSiO1.5単位:1.0〜10.0モル%、(CH32(CH2=CH)SiO0.5単位:0.1〜4.0モル%、及び(CH33SiO0.5単位:0.5〜10.0モル%(これらの単位の合計は100モル%である)の各単位から成るものである。
【0013】
前記Rは、同一でも異なっていてもよく、メチル基、フェニル基、又は式:RfCH2CH2−(Rfは、鎖中にエーテル結合性酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキル基である)で表される基である。
【0014】
Rfのパーフルオロアルキル基としては、鎖中にエーテル結合性酸素原子を有していないものである場合、炭素数が好ましくは1〜12、更に好ましくは1〜8のものがよく、具体的には、例えば、式:CF3−、C49−、C817−等で表される基を例示することができる。
【0015】
また、Rfが鎖中にエーテル結合性酸素原子を有している場合には、例えば下記一般式(i):
R’O−(R’’O−)eR’’’− (i)
(式中、R’は炭素数1〜4のパーフルオルアルキル基であり、R’’及びR’’’は独立に炭素数1〜3のパーフルオロアルキレン基であり、eは0〜10の整数である。)
で表される基が用いられ、具体的には、下記式で表されるものを例示することができる。
25O−(CF2CF2O)f−CF2−、
37O−(CF2CF2CF2O)g−CF2CF2−、
37O−[CF(CF3)CF2O]g−CF(CF3)−
(上記式中、fは0〜4の整数であり、gは0〜10の整数である。)
【0016】
本(A)成分中の上記式:RSiO1.5で表される3官能性単位は、(A)成分のオルガノポリシロキサンを分岐状構造のものとし、かつ、本発明の組成物に低温特性と速硬化性能を付与する上で重要な単位である。この単位の含有量は、上記の通り、1.0〜10.0モル%、好ましくは1.5〜10.0モル%であり、前記含有量が少なすぎると(A)成分の直鎖状構造が多くなるため、前記特性及び性能の付与が不十分となり、逆に多すぎると粘度の制御が困難になるという問題が生じる。
【0017】
また、上記式:(CH32(CH2=CH)SiO0.5、及び式:(CH33SiO0.5で表される1官能性単位は、いずれも末端基となる単位である。前者の含有量は0.1〜4.0モル%、好ましくは0.5〜3.0モル%であり、前記含有量が少なすぎると付加反応による硬化特性が乏しいものとなり、逆に多すぎると硬化物の耐熱性に劣るという問題が生じる。また、後者の含有量は0.5〜10.0モル%、好ましくは0.8〜8.0モル%であり、前者と後者との合計の含有量は、上記式:RSiO1.5で表される3官能性単位の含有量(即ち、(A)成分の分岐状構造)に基づき、自ずと定まるものである。
【0018】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、公知の方法で製造することができる。例えば、上記各単位に対応するクロルシラン類を必要なモル比で混合し、共加水分解及び縮合に供する方法、或いは、上記各単位の構造を有するポリシロキサン及び/又は環状シロキサン化合物の平衡化反応によって製造される。
【0019】
なお、この(A)成分のオルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が、通常、100〜100,000mPa・s、好ましくは300〜10,000mPa・s、より好ましくは400〜5,000mPa・s、特に500〜3,000mPa・sの範囲にあることが好適である。なお、本発明において、粘度は回転粘度計により測定した25℃における値である。
【0020】
以下に(A)成分のオルガノポリシロキサンの具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
[(CH32(CH2=CH)SiO0.5h[(CH33SiO0.5j[(CH32SiO]k[CH3SiO1.5m
[(CH32(CH2=CH)SiO0.5h[(CH33SiO0.5j[(CH32SiO]k[CH3SiO1.5m[Ph2SiO]n
[(CH32(CH2=CH)SiO0.5h[(CH33SiO0.5j[(CH32SiO]k[CH3SiO1.5m[(CH3)PhSiO]p
[(CH32(CH2=CH)SiO0.5h[(CH33SiO0.5j[(CH32SiO]k[PhSiO1.5q
[(CH32(CH2=CH)SiO0.5h[(CH33SiO0.5j[CH3SiO1.5m[(CH3)(CF3CH2CH2)SiO]r
[(CH32(CH2=CH)SiO0.5h[(CH33SiO0.5j[CH3SiO1.5m[(CH3)(C37O−{CF(CF3)CF2O}s−CF(CF3)−CH2CH2)SiO]t
[(CH32(CH2=CH)SiO0.5h[(CH33SiO0.5j[(CH32SiO]k[PhSiO1.5q
(上記各式中、h、j、k、m、n、p、q、r、s及びtは、それぞれ上記粘度を満足するように選ばれる正の整数、Phはフェニル基(C65)を示す。)
【0021】
これらのオルガノポリシロキサンは、1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0022】
[(B)分子鎖末端にSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン]
次に、本発明の(B)成分は、分子鎖末端、好ましくは両末端それぞれの珪素原子に直結した水素原子(即ち、R12(H)SiO1/2単位中の珪素原子に結合した水素原子(SiH基))を1分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上(通常、2〜300個)、より好ましくは2〜150個程度有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(R1は後記の通り)で、上記(A)成分と反応し、架橋剤として作用するものである。その分子構造には、前記条件を除いて特に制限はなく、分子鎖末端の珪素原子に結合した水素原子以外に、分子鎖途中(非末端)の珪素原子に結合した水素原子(SiH基)を任意に含んでいてもよく、従来より知られている、例えば直鎖状、分岐状、三次元網状(樹脂状)構造等の各種構造が使用可能である。(B)成分中の全ての珪素原子結合水素原子(SiH基)の数は、1分子中に、通常1〜300個、好ましくは2〜300個、より好ましくは2〜150個程度であることが望ましい。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(1)で示されるものが好適に用いられる。
1abSiO(4-a-b)/2 (1)
【0023】
上記平均組成式(1)中、R1は、脂肪族不飽和結合を除く、好ましくは炭素数1〜10の珪素原子に結合した非置換又は置換の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、へキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられる。中でも好ましくはアルキル基、アリール基、3,3,3−トリフルオロプロピル基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基であることが望ましい。また、aは0.7〜2.2、bは0.001〜1.0で、かつa+bが0.8〜3.0を満足する正数であり、好ましくは、aは1.0〜2.1、特には1.0〜2.0、bは0.005〜1.0、特には0.01〜1.0、a+bが1.0〜2.5、特には1.5〜2.2を満足する正数である。
【0024】
また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、得られるシリコーンゲルの特性、組成物の取扱作業性の点から、1分子中の珪素原子の数(又は重合度)は、通常、3〜1,000個、好ましくは5〜400個、より好ましくは10〜300個程度のものが望ましく、25℃における粘度が、通常、1〜10,000mPa・s、好ましくは3〜5,000mPa・s、より好ましくは5〜3,000mPa・s程度の室温(25℃)で液状のものが好適に使用される。
【0025】
上記平均組成式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、具体的には、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C653SiO1/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。これらのオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0026】
この(B)成分の添加量は、(A)成分中のアルケニル基1個に対し、(B)成分の珪素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を0.1〜5個与える量であり、特には、0.3〜3個与える量であることが好ましい。珪素原子に結合した水素原子(SiH基)が0.1個より少ない場合は、架橋密度が低くなりすぎ、組成物が硬化しなかったり、硬化物の耐熱性に悪影響を与え、また、5個より多い場合は、脱水素反応による発泡の問題が生じたり、耐熱性に悪影響を与える。
【0027】
[(C)付加反応触媒]
(C)成分の付加反応触媒は、後述する(C−1)〜(C−3)からなる混合物を他の成分と混合する前に、予め加熱熟成してなるものであり、上記(A)成分中のビニル基と上記(B)成分中のSiH基との付加反応を促進し、本発明組成物の硬化物を得るために配合される成分で、室温での長期保存性と低温での硬化性を両立させる必須の成分である。
【0028】
(C−1)成分の白金錯体は、これ自体は従来公知のものであり、例えば、特公昭46−28795号公報、特公昭51−8926号公報、特公昭55−423号公報、特公昭56−136655号公報に開示されているようなアルケニル基含有オルガノシロキサン又はアルケニル基含有オルガノシロキサンを配位子とする白金錯体で、その具体例としては、例えば、白金/1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、白金/1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、上記白金錯体は、1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0029】
次に、(C−2)成分である亜リン酸エステルは、下記一般式(2)又は(2’)で表される亜リン酸トリエステルであり、この亜リン酸エステルは、白金又は白金系化合物からなる触媒の室温における付加反応に対する触媒能を抑制する機能を有するものである。
【0030】
P(OR23 (2)
〔式中、R2は独立に非置換もしくは置換の1価炭化水素基及び式:−R3−[O−P(OR22x(式中、R2は前記の通り、xは1〜3の整数であり、R3は鎖中にエーテル結合性酸素原子を有していてもよい炭素数2〜20、好ましくは2〜15、より好ましくは2〜12の2〜4価の炭化水素基である。)から成る群より選ばれる少なくとも1種の基である。〕
【0031】
【化2】

(式中、R2は前記の通り、R4は鎖中にエーテル結合性酸素原子を有していてもよい炭素数1〜20の4価の炭化水素基である。)
【0032】
上記式中、R2の一価炭化水素基としては、非置換又は置換の炭素数が好ましくは1〜20、更に好ましくは1〜15のものであり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、β−フェニルプロピル基等のアラルキル基;又は、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基等が挙げられる。また、R3の2〜4価の炭化水素基のうち、2価炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基等のアルキレン基、1,2−フェニレン基、1,8−ナフチレン基等のアリーレン基などが挙げられる。
4は鎖中にエーテル結合性酸素原子を有していてもよい炭素数1〜20、好ましくは5〜20、より好ましくは5〜15の4価の炭化水素基である。
【0033】
本発明の亜リン酸エステルの具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
トリエチルホスファイト:(EtO)3P、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト:[MeC36CH(Et)CH2O]3P、トリフェニルホスファイト:(PhO)3P、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト:(PhO)2(MeC36CH(Et)CH2O)P、トリス(2,4−ジターシャリブチルフェニル)ホスファイト:
【化3】

、テトラフェニルジプロピレングリコールジフォスファイト:(PhO)2PO−[CH(Me)−CH2O]2−P(OPh)2、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト:[(PhO)(C1327O)P−OCH24C、テトラ(トリデシル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト:(C1327O)2PO−Ph−C(Me)2−Ph−OP(OC13272、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト:
【化4】

(上記式中、Me、Et、Bu、Phは、それぞれ、メチル基、エチル基、ブチル基、フェニル基を示す。)
【0034】
これらの亜リン酸エステルは、1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0035】
この亜リン酸エステルの配合量は、白金原子1当量に対してリン(P)原子として1〜10当量、好ましくは1.5〜6当量(即ち、白金原子1モルに対して、リン原子(P)として1〜10モル、好ましくは1.5〜6モル)である。前記配合量が1当量未満では室温における白金系触媒の付加反応に対する触媒能を完全に抑制できない。また、10当量を超えた場合、本発明の目的である低温短時間硬化が実現できない。
【0036】
次に、(C−3)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(B)成分の架橋剤として作用するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとは異なり、前もって(C−1)、(C−2)成分と共に加熱熟成されることによって、予め白金、又は白金系化合物に作用することにより、付加反応を促進するもので、本発明の目的である低温短時間硬化を実現するのに必須の成分である。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは下記平均組成式(3)
4cdSiO(4-c-d)/2 (3)
(式中、R4は脂肪族不飽和結合を有さない置換又は非置換の1価炭化水素基であり、また、cは0.7〜2.2、dは0.001〜1.0で、かつc+dが0.8〜3.0を満足する正数である。)
で表され、珪素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を1分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上(通常、2〜300個)、より好ましくは3個以上(特に3〜150個程度)有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0037】
上記平均組成式(3)中、R4は、脂肪族不飽和結合を除く、好ましくは炭素数1〜10の珪素原子に結合した非置換又は置換の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、へキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられる。中でも好ましくはアルキル基、アリール基、3,3,3−トリフルオロプロピル基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基であることが望ましい。また、cは0.7〜2.2、dは0.001〜1.0で、かつc+dが0.8〜3.0を満足する正数であり、好ましくは、cは1.0〜2.1、特には1.0〜2.0、dは0.005〜1.0、特には0.01〜1.0、c+dが1.0〜2.5、特には1.5〜2.2を満足する正数である。
【0038】
また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、得られるシリコーンゲルの特性、組成物の取扱作業性の点から、1分子中の珪素原子の数(又は重合度)は、通常、3〜1,000個、好ましくは5〜400個、より好ましくは10〜300個程度のものが望ましく、25℃における粘度が、通常、1〜10,000mPa・s、好ましくは3〜5,000mPa・s、より好ましくは5〜3,000mPa・s程度の、室温(25℃)で液状のものが好適に使用される。珪素原子に結合した水素原子(SiH基)は、分子鎖末端、分子鎖途中(非末端)のいずれに位置したものであっても、両方に位置したものであってもよい。
【0039】
上記平均組成式(3)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、具体的には、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C653SiO1/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。これらのオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。なかでも、分子鎖末端に珪素原子に結合した水素原子(SiH基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが望ましい。
なお、この(C−3)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンと同一のものを用いても、異なったものを用いてもよい。
【0040】
この(C−3)成分の添加量は、(C−1)成分の白金原子1当量に対して、(C−3)成分中の珪素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を1〜100当量与える量であり、好ましくは1.5〜50当量(即ち、白金原子1モルに対してSiH基として1〜100モル、好ましくは1.5〜50モル)与える量である。白金原子1当量に対して、珪素原子に結合した水素原子(SiH基)が1当量より少ない場合、組成物の低温での硬化性が低下し、逆に100当量より多い場合は、組成物の室温での保存性が低下する。
【0041】
本発明の(C)成分である付加反応触媒は、上記(C−1)、(C−2)、(C−3)成分の所定量を混合し、この混合物を30℃〜120℃の温度、好ましくは40〜100℃の温度で加熱熟成することにより得ることができ、この付加反応触媒を用いた組成物は、保存安定性と低温短時間での硬化を実現できる。ここで、この加熱熟成温度が30℃より低い場合、組成物の硬化性が低下する要因となる。また、120℃を超える加熱熟成温度では、白金錯体自身の失活がおこる。なお、加熱熟成時間としては、1〜200時間、特に4〜100時間とすることが好ましい。加熱熟成時間が短すぎると付加反応触媒の保存安定性が低下する場合があり、長すぎると組成物の保存安定性が低下する場合がある。
【0042】
本発明の組成物に対する(C)成分の配合量は、触媒として有効量であればよく、特に制限されないが、上記(A)及び(B)成分の合計質量に対して、白金原子の質量として、通常、0.1〜1,000ppm、好ましくは0.5〜100ppm、より好ましくは1〜50ppm程度の範囲で配合すればよい。前記配合量が少なすぎると付加反応が著しく遅くなるか、又は硬化しなくなり、逆に多すぎると硬化後のポリシロキサン組成物の耐熱性が低下し、また、白金は高価であることからコスト面で不利となる。
【0043】
[(D)有機過酸化物]
(D)成分の有機過酸化物は、室温における組成物の長期保存においては、上記(C−2)成分とともに白金系触媒の付加反応に対する触媒能を効果的に抑制する機能を有し、しかも、加熱硬化段階においては、その分解温度で分解して自らの前記抑制作用を失うとともに、上記(C−2)成分を酸化させることで(C−2)成分の前記抑制作用を失活させる機能をも有するものであり、白金系触媒による組成物の硬化を速やかで確実なものとすることができるものである。
【0044】
この有機過酸化物としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール;1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、m−トルイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート;t−ブチルパーオキシ・3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ・イソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ・2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル等が例示される。これらは、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0045】
この(D)成分の配合量は、用いる有機過酸化物に含まれるパーオキサイド結合(−OO−結合)の数を基準として、上記(C−2)成分の亜リン酸エステル1当量に対して2当量以上、好ましくは3当量以上(即ち、リン原子1モルに対して例えば、−OO−結合を1個有する有機過酸化物の場合は、2モル以上、好ましくは3モル以上、また、−OO−結合を2個有する有機過酸化物の場合は、1モル以上、好ましくは3/2モル以上)である。前記配合量が2当量未満では、室温における白金系触媒の付加反応に対する触媒能を完全に抑制できず、また、加熱硬化段階において上記(D)成分の上記触媒能抑制作用を完全に失活させることができない。なお、前記有機過酸化物の配合量の上限は、特に限定されないが、分解残渣による硬化特性への影響があることから500当量程度とすればよい。
【0046】
[その他の配合成分]
本発明組成物において、上記(A)〜(D)成分以外の任意の成分として、例えば、ヒュームドシリカ、結晶性シリカ、沈降性シリカ、中空フィラー、シルセスキオキサン、ヒュームド二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、層状マイカ、カーボンブラック、ケイ藻土、ガラス繊維等の無機質充填剤;及び、これらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機珪素化合物により表面処理した充填剤を配合してもよい。また、シリコーンゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー等を配合してもよい。
【0047】
更に、本発明組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、任意の成分として、例えば、アルケニル基を含有する直鎖状のオルガノポリシロキサン、珪素原子結合水素原子及びアルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサン、耐熱性付与剤、難燃性付与剤、チクソ性付与剤、顔料、染料等を配合してもよい。
【0048】
本発明のオルガノポリシロキサンゲル組成物は、上記(A)〜(D)成分、必要によりその他の成分の所定量を常法に準じて混合することにより得ることができる。また、本発明のオルガノポリシロキサンゲル組成物の成形方法も特に限定されず、常法により行うことができるが、硬化条件としては、60〜200℃、特に80〜160℃で0.1時間〜48時間、特に0.5時間〜24時間とすることが好ましい。
【実施例】
【0049】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において部及び%はそれぞれ質量部と質量%を示す。また、下記例において、粘度は回転粘度計により測定した25℃における値を示す。
【0050】
[実施例1]
塩化白金酸/1,3ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を白金原子含有量として1%含有するジメチルポリシロキサン溶液5部に対し、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト0.21部(白金原子1当量に対して2当量)、下記一般式(4)
【化5】

で表され、25℃における粘度が20mPa・sの両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン0.5部(白金原子1当量に対して、珪素原子に結合した水素原子2.6当量)からなる混合物を80℃で24hr加熱熟成することにより、付加反応触媒を得た。
【0051】
次に、CH2=CH(CH32SiO0.5単位/(CH33SiO0.5単位/(CH32SiO単位/CH3SiO1.5単位=0.75モル%/1.75モル%/95モル%/2.5モル%のモル比を有し、25℃における粘度が900mPa・sのオルガノポリシロキサン100部に、上記式(4)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを8部(このとき、珪素原子に結合した水素原子と珪素原子に結合したアルケニル基の比〔SiH基/アルケニル基〕は、1.0であった。)、1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを0.03部、及び上記付加反応触媒を白金原子の質量として5ppmとなる量をそれぞれ均一に混合したシリコーンゲル組成物を得た。
【0052】
得られたシリコーンゲル組成物について、100℃/1hr、120℃/30min、150℃/30minでそれぞれ硬化させ、JIS K−2220(1/4コーン)稠度試験法に準じて硬さ(針入度)を測定した。また、40℃で3週間保存後の保存性を評価した。
【0053】
[実施例2]
実施例1において、(C−3)成分としての式(4)で表される両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン0.5部の代わりに、下記一般式(5)
【化6】

で表され、25℃における粘度が5mPa・sである両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン0.4部(白金原子1当量に対して、珪素原子に結合した水素原子19当量)を用いる以外は同様にして付加反応触媒を調製し、更に均一に混合したシリコーンゲル組成物を得た後、同様に針入度や保存性を評価した。
【0054】
[実施例3]
実施例1において、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイトの代わりに、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト0.27部(白金原子1当量に対して3当量)を用い、加熱熟成を40℃/6日間行う以外は同様にして付加反応触媒を調製し、均一に混合したシリコーンゲル組成物を得、同様に針入度や保存性を評価した。
【0055】
[比較例1]
実施例1において、80℃で加熱熟成する代わりに、25℃の室温雰囲気下で24hr放置する以外は同様にして付加反応触媒を調製し、均一に混合したシリコーンゲル組成物を得、同様に針入度や保存性を評価した。
【0056】
[比較例2]
実施例1において、熟成条件を150℃/4hrにする以外は同様にして付加反応触媒を調製し、均一に混合したシリコーンゲル組成物を得、同様に針入度や保存性を評価した。
【0057】
[比較例3]
実施例1において、(C−3)成分としての式(4)で表される両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンを用いない以外は同様にして付加反応触媒を調製し、均一に混合したシリコーンゲル組成物を得、同様に針入度や保存性を評価した。
【0058】
[比較例4]
実施例1において、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイトを添加しない以外は同様にして付加反応触媒を調製し、均一に混合したシリコーンゲル組成物を得、同様に針入度や保存性を評価した。
【0059】
[比較例5]
実施例1において、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイトの添加量を1.5部(白金原子1当量に対して14当量)にする以外は同様にして付加反応触媒を調製し、均一に混合したシリコーンゲル組成物を得、同様に針入度や保存性を評価した。
【0060】
[比較例6]
実施例2において、式(5)で表される両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンの添加量を3.0部(白金原子1当量に対して、珪素原子に結合した水素原子146当量)として用いる以外は同様にして付加反応触媒を調製し、均一に混合したシリコーンゲル組成物を得、同様に針入度や保存性を評価した。
【0061】
得られた9種類のシリコーンゲル組成物の硬化性及び保存性を表1に示した。
【0062】
【表1】

1)白金原子1当量あたり
2)亜リン酸エステル1当量に対するパーオキサイド結合の数
3)JIS K−2220(1/4コーン)稠度試験法に準じて測定した硬さ(針入度)で評価
4)40℃の雰囲気下で、促進劣化した場合の増粘の有無
○:初期粘度に対して保存後の粘度値が1.0倍から2倍未満である場合
×:初期粘度に対して保存後の粘度値が2倍以上に増加した場合

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)R2SiO単位:80.0〜97.0モル%、
RSiO1.5単位:1.0〜10.0モル%、
(CH32(CH2=CH)SiO0.5単位:0.1〜4.0モル%、及び
(CH33SiO0.5単位:0.5〜10.0モル%
[但し、これらの単位の合計は100モル%であり、これらの単位を表す前記各単位式において、Rはメチル基、フェニル基、又は式:RfCH2CH2−(Rfは、鎖中にエーテル結合性酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキル基である。)で表される基である。]
からなり、1分子中に含まれる複数のRは同一又は異なる、オルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)下記平均組成式(1)
1abSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R1は脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、また、aは0.7〜2.2、bは0.001〜1.0で、かつa+bが0.8〜3.0を満足する正数である。)
で表され、分子鎖末端に珪素原子に直結した水素原子を少なくとも1個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分中のビニル基1個に対して、珪素原子に結合した水素原子を0.1〜5個与える量、
(C)下記(C−1)〜(C−3)からなる混合物を、30℃〜120℃の温度で加熱熟成した付加反応触媒:(A)及び(B)成分の合計質量に対して、白金原子として0.1〜1,000ppm与える量、
(C−1)アルケニル基含有シラン又はアルケニル基含有オルガノシロキサンを配位子とする白金錯体:白金錯体中の白金原子として1当量、
(C−2)下記一般式(2)
P(OR23 (2)
〔式中、R2は独立に非置換もしくは置換の1価炭化水素基及び式:−R3−[O−P(OR22x(式中、R2は前記の通り、xは1〜3の整数であり、R3は鎖中にエーテル結合性酸素原子を有していてもよい炭素数2〜20の2〜4価の炭化水素基である。)から成る群より選ばれる少なくとも1種の基である。〕
又は下記一般式(2’)
【化1】

(式中、R2は前記の通り、R4は鎖中にエーテル結合性酸素原子を有していてもよい炭素数1〜20の4価の炭化水素基である。)
で表される亜リン酸エステル:リン(P)原子として1〜10当量、
(C−3)下記平均組成式(3)
4cdSiO(4-c-d)/2 (3)
(式中、R4は脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、また、cは0.7〜2.2、dは0.001〜1.0で、かつc+dが0.8〜3.0を満足する正数である。)
で表され、珪素原子に結合した水素原子を少なくとも1個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:珪素原子に結合した水素原子として1〜100当量
(D)有機過酸化物:(C)成分の亜リン酸エステル1当量に対して2当量以上
を含有して成ることを特徴とする一液型オルガノポリシロキサンゲル組成物。
【請求項2】
(C)成分中の一般式(3)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが、分子鎖末端に珪素原子に結合した水素原子を有することを特徴とする請求項1記載の一液型オルガノポリシロキサンゲル組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)R2SiO単位:80.0〜97.0モル%、
RSiO1.5単位:1.0〜10.0モル%、
(CH32(CH2=CH)SiO0.5単位:0.1〜4.0モル%、及び
(CH33SiO0.5単位:0.5〜10.0モル%
[但し、これらの単位の合計は100モル%であり、これらの単位を表す前記各単位式において、Rはメチル基、フェニル基、又は式:RfCH2CH2−(Rfは、鎖中にエーテル結合性酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキル基である。)で表される基である。]
からなり、1分子中に含まれる複数のRは同一又は異なる、オルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)下記平均組成式(1)
1abSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R1は脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、また、aは0.7〜2.2、bは0.001〜1.0で、かつa+bが0.8〜3.0を満足する正数である。)
で表され、分子鎖末端に珪素原子に直結した水素原子を少なくとも1個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分中のビニル基1個に対して、珪素原子に結合した水素原子を0.1〜5個与える量、
(C)下記(C−1)〜(C−3)からなる混合物を、30℃〜120℃の温度で加熱熟成した付加反応触媒:(A)及び(B)成分の合計質量に対して、白金原子として0.1〜1,000ppm与える量、
(C−1)アルケニル基含有シラン又はアルケニル基含有オルガノシロキサンを配位子とする白金錯体:白金錯体中の白金原子として1当量、
(C−2)下記一般式(2)
P(OR23 (2)
〔式中、R2は独立に非置換もしくは置換の1価炭化水素基及び式:−R3−[O−P(OR22x(式中、R2は前記の通り、xは1〜3の整数であり、R3は鎖中にエーテル結合性酸素原子を有していてもよい炭素数2〜20の2〜4価の炭化水素基である。)から成る群より選ばれる少なくとも1種の基である。〕
又は下記一般式(2’)
【化1】

(式中、R2は前記の通り、R4は鎖中にエーテル結合性酸素原子を有していてもよい炭素数1〜20の4価の炭化水素基である。)
で表される亜リン酸エステル:リン(P)原子として1〜10当量、
(C−3)下記平均組成式(3)
5cdSiO(4-c-d)/2 (3)
(式中、5は脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、また、cは0.7〜2.2、dは0.001〜1.0で、かつc+dが0.8〜3.0を満足する正数である。)
で表され、珪素原子に結合した水素原子を少なくとも1個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:珪素原子に結合した水素原子として1〜100当量
(D)有機過酸化物:(C)成分の亜リン酸エステル1当量に対して2当量以上
を含有して成ることを特徴とする一液型オルガノポリシロキサンゲル組成物。
【請求項2】
(C)成分中の一般式(3)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが、分子鎖末端に珪素原子に結合した水素原子を有することを特徴とする請求項1記載の一液型オルガノポリシロキサンゲル組成物。

【公開番号】特開2006−63142(P2006−63142A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245345(P2004−245345)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】