説明

一液型湿気硬化性組成物

【課題】具体的には、接着性、耐候性、耐塗装性等に優れ、作業性が良く、大気中等の水分により硬化してゴム状弾性体となる一液型湿気硬化性組成物を提供すること
【解決手段】(A)尿素結合及びウレタン結合を有し、且つ、末端又は側鎖に加水分解性シリル基を有するプレポリマー;及び(B)主鎖がポリエーテル構造及び/又はポリアクリル構造を含み、且つ、末端又は側鎖に加水分解性シリル基を有するポリマーを含む、一液型湿気硬化性組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気により容易に硬化し、接着性に優れ、且つ、硬化後に容易に塗装可能な一液型湿気硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築、土木工事、自動車等の用途のシーリング材、接着剤等に使用される湿気硬化性組成物中の樹脂成分として、作業性及び接着性に優れている点から、変性シリコーン乃至ポリウレタン等が広く使用されている。
【0003】
近年、建築、土木工事、自動車等の分野において、初期性能を長期に亘って維持する、いわゆる「超」寿命化のニーズが高まっており、これらの用途に使用されるシーリング材、接着剤等に対しても、接着性、耐候性、耐塗装性等の長期性能維持が求められている。
【0004】
しかしながら、変性シリコーン用プレポリマーを含有するシーリング材、接着剤等は低粘度で作業性が良く、また、硬化後の組成物のモジュラスが低くなるためシーリング用途に適しているものであるが、特にウレタンに比べて硬化速度がやや遅く、また、耐塗装性に劣るという欠点を有する。
【0005】
一方、ポリウレタン用プレポリマーを含有するシーリング材、接着剤等は、接着性、耐水性及び耐塗装性に優れており、比較的安価であるという利点を有している。
【0006】
そこで、変性シリコーン用プレポリマーの性質とポリウレタン用プレポリマーの性質とを兼ね備えるものとして、欧州特許公開第596360号明細書に記載されるように、ポリイソシアネートと、活性水素及び架橋性シリル基を含有する化合物とからなるプレポリマーが知られている。このプレポリマーは合成が比較的容易であり、このプレポリマーによりもたらされるシーリング材、接着剤等は変性シリコーンに比べ耐塗装性が上回る利点を有している。しかし、このポリマーを使用する際に、プレポリマー自身の粘度が高いため作業性が劣る。また、硬化後の組成物のモジュラスが高くなるため、特にシーリング用途に適応しにくい問題がある。
【特許文献1】欧州特許公開第596360号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決することを意図したものであり、具体的には、接着性、耐候性、耐塗装性等に優れ、作業性が良く、大気中等の水分により硬化して適度なモジュラスを有するゴム状弾性体となる一液型湿気硬化性組成物を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、
(A)尿素結合及びウレタン結合を有し、且つ、末端又は側鎖に加水分解性シリル基を有するプレポリマー;及び
(B)主鎖がポリエーテル構造及び/又はポリアクリル構造を含み、且つ、末端又は側鎖に加水分解性シリル基を有するポリマー、
を含む、一液型湿気硬化性組成物によって達成される。
【0009】
前記(A)プレポリマーは、末端にイソシアネート基を有し、且つ、ウレタン結合を有する第1の化合物;及び、加水分解性シリル基及びアミノ基を有する第2の化合物の反応物であることが好ましい。前記第1の化合物はポリエーテル構造を含むことが好ましい。
【0010】
前記(B)ポリマーの主鎖はポリエーテル構造及びポリアクリル構造の両方を含む方が好ましい。
【0011】
前記(A)プレポリマーの配合量は組成物の全質量を基準として5〜40質量%であることができる。また、前記(B)ポリマーの配合量は組成物の全質量を基準として5〜40質量%であることができる。
【0012】
本発明の一液型湿気硬化性組成物はシーリング材又は接着剤の主成分として使用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一液型湿気硬化性組成物は、接着性、耐候性及び耐塗装性に特に優れている。したがって、本発明の組成物を例えばシーリング材又は接着剤の成分として建築、土木工事、自動車等の分野において使用すると、シーリング及び接着に関する初期性能を長期に亘って維持することができる。また、本発明の組成物の硬化物はシロキサン結合を含むにもかかわらず、塗装との密着性が強い。したがって、シーリング部分及び接着部分に良好に塗装を施すことができ、塗装状態を長期に亘って維持することができる。
【0014】
特に、前記(B)ポリマーの主鎖がポリエーテル構造及びポリアクリル構造の両方を含む場合に、接着性、耐候性及び耐塗装性を更に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の組成物の必須成分の一つである(A)尿素結合及びウレタン結合を有し、且つ、末端又は側鎖に加水分解性シリル基を有するプレポリマーの構造は特に限定されるものではないが、線状の主骨格中に尿素結合及びウレタン結合を有し、分子末端、特に両端に加水分解性シリル基を有することが好ましい。
【0016】
加水分解性シリル基は、ケイ素原子に直接結合した加水分解性基を少なくとも1つ有するものであり、加水分解性基はアルコキシ基が好ましく、C1-6アルコキシ基がより好ましく、特にメトキシ基が好ましい。
【0017】
前記(A)プレポリマーの合成方法は特に限定されるものではないが、例えば、末端にイソシアネート基を有し、且つ、ウレタン結合を有する第1の化合物と、加水分解性シリル基及びアミノ基を有する第2の化合物とを反応させることによって合成することができる。
【0018】
前記第1の化合物の構造は特に限定されるものではないが、線状の主骨格中にウレタン結合を有し、分子末端、特に両端にイソシアネート基を有するものが好ましい。第1の化合物は、例えば、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応させて調製することができる。前記ポリイソシアネート成分は、NCO(イソシアネート)基を20%〜60%含有することが好ましい。前記ポリイソシアネート成分は、任意の、脂肪族、脂環式及び/又は芳香族ポリイソシアネートであることができる。
【0019】
好ましいポリイソシアネート成分の例としては、トルエンジイソシアネート(TDI);ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI);トリフェニルメタントリイソシアネート;ジフェニルスルホンジイソシアネート;3,3'−ジメチル−4、4'−ビフェニレンジイソシアネート;1,4−フェニレンジイソシアネート;キシレンジイソシアネート(XDI);テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI);ナフチレンジイソシアネート;ノルボルナンジイソシアネート(NBDI);ビス−(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン;粗製TDI;ポリメチレン・ポリフェニルイソシアネート(ポリメリックMDI);1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−イソシアネートメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート=IPDI);エチレンジイソシアネート;プロピレンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI);1,4−テトラメチレンジイソシアネート;1,5−ペンタメチレンジイソシアネート;2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート;1−イソシアネート−1−メチル−4(3)−イソシアネートメチルシクロヘキサン;水素化キシレンジイソシアネート;1,3−ジイソシアネート−6−メチルシクロヘキサン;1,3−ジイソシアネート−2−メチルシクロヘキサン;ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート;及び、これらの異性体が挙げられる。さらに、これらの2量体(例えばウレトジオンジイソシアネート)又は3量体(例えばイソシアヌレートトリイソシアネート)等も挙げられる。更に、これらのイソシアヌレート化物、カルボジイミド化物、ビューレット化物等も使用可能である。また、これらの混合物を使用してもよい。これらの中では、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、及び、これらの混合物が特に好ましい。
【0020】
前記ポリオール成分は、3000〜20000(37.3〜5.6のOH価と対応)の、好ましくは4000〜150000の平均分子量(28〜7.5のOH価と対応)を有することが好ましい。ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、へキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、糖アルコール、及び、これらのオリゴグリコール類等、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0021】
前記ポリオール成分は、ポリエーテル構造を含むことが好ましい。ポリエーテル構造を有するポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレンジオールが挙げられる。ポリオキシアルキレンジオールとしては、ポリウレタン化学の分野において既知の種類のジオールを使用することができ、例えば、適当な出発分子量のジオールのアルコキシル化、例えば工トキシル化及びプロポキシル化、により製造し得る。ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等、及び、これらの混合物が挙げられる。ポリオキシアルキレンジオールとしては、特に、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリブチレングリコールが好ましい。
【0022】
前記ポリオキシアルキレンジオールは、アルキレンオキシドのアルコキシル化によっても製造することができる。好ましいアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びこれらの混合物が挙げられる。アルコキシル化に使用可能なアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ショ糖等の多価アルコールが挙げられる。
【0023】
前記ポリオール成分は、少なくとも2つのN-H結合を有する脂肪族アミンのアルコキシル化によっても製造することができる。前記脂肪族アミンとしては、エチルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
【0024】
この他にも、前記ポリオール成分は、低分子量アルコール、ならびに、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、これらの無水物、及び、これらの混合物及び/又は酸無水物のような多塩基性カルボン酸から調製することができる。例えば、ポリエチレンアジペート等のポリエステルポリオールが挙げられる。ヒドロキシル基を有するポリラクトン類(特にポリ−ε−カプロラクトンポリオール)もポリオール成分として好適である。また、ポリブタジエンポリオール類並びにヒマシ油等のヒドロキシル基を有する高級脂肪酸エステル類もポリオール成分として使用可能である。
【0025】
また、前記ポリオール成分として、ポリビニルアルコールのような、複数のヒドロキシ基を有するポリマーを使用することもできる。複数のヒドロキシ基を有するポリマーとしては、ヒドロキシル基を有するポリカーボネート、並びに、ポリエステルポリオールにビニルモノマーをグラフト化したポリマーポリオールを使用することもできる。
【0026】
前記第1の化合物は、ポリイソシアネート成分及びポリオール成分を、40〜120℃、好ましくは50〜100℃の温度で、NCO/OH当量比が1.3:1〜20:1、好ましくは1.4:1〜10:1の範囲となるように反応させることにより製造することができる。第1の化合物の製造中にウレタン基を介した鎖延長を望む場合、NCO/OH当量比は1.3:1〜2:1の範囲内で選ぶことが好ましい。鎖延長を望まない場合、過剰量のポリイソシアネートを使用することが好ましく、それは、例えば、NCO/OH当量比が4:1〜20:1、好ましくは5:1〜10:1に相当する。過剰量のジイソシアネートは、反応が終了したときに例えば蒸留により除去される。アミン又は有機金属触媒のような公知触媒を、必要に応じて第1の化合物の製造に使用してよい。
【0027】
加水分解性シリル基及びアミノ基を有する第2の化合物の構造は特に限定されるものではないが、加水分解性シリル基は、ケイ素原子に直接結合した加水分解性基を少なくとも1つ有する必要がある。加水分解性基はアルコキシ基が好ましく、C1-6アルコキシ基がより好ましく、特にメトキシ基が好ましい。
【0028】
好ましい第2の化合物は、以下の式(I):
【化1】

(式中、
R及びR'は、1〜8個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を含む、同一の又は異なったアルキル基を示し、
X、Y及びZは、これらの基の少なくとも1つがアルコキシ基を表すことを条件に1〜4個の炭素原子を含む同一の又は異なったアルキル基又はアルコキシ基を示し、
nは2〜4の整数を示す)
で表される化合物である。
【0029】
式(I)の構造を有する第2の化合物は、例えば、欧州特許公開第596360号明細書に記載されるように、以下の式(II):
【化2】

(式中、
X、Y、Z及びnは、上記のとおりである)
に相当するアミノアルキルアルコキシシランと、以下の式(III):
【化3】

(式中、
R及びR'は、上記のとおりである)
に相当するマレイン酸及び/又はフマル酸エステルとを反応させることにより得ることができる。
【0030】
好ましいアミノアルキルアルコキシシランとしては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、及び、3−アミノプロピル−メチル−ジエトキシシランが挙げられる。3−アミノプロピルトリメトキシシラン及び3−アミノプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0031】
第1の化合物と第2の化合物は、0〜60℃、好ましくは20〜50℃で反応させることができる。第1の化合物のNCO基1モルあたり0.95〜1.1モルの第2の化合物を使用する。好ましくは、第1の化合物のNCO基1モルあたり第2の化合物1モルを使用する。これにより、15000〜50000の平均分子量を有する(A)プレポリマーを得ることができる。
【0032】
本発明の組成物における前記(A)プレポリマーの配合量は、例えば、組成物の全質量を基準として5〜40質量%、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは10〜20質量%の範囲とすることができる。
【0033】
本発明の組成物の必須成分の他方である、(B)主鎖がポリエーテル構造及び/又はポリアクリル構造を含み、且つ、末端又は側鎖に加水分解性シリル基を有するポリマーの構造も特に限定されるものではないが、線状の主鎖中にポリエーテル構造及び/又はポリアクリル構造を含み、主鎖の末端、特に両端に加水分解性シリル基を有することが好ましい。加水分解性シリル基は、ケイ素原子に直接結合した加水分解性基を少なくとも1つ有する必要がある。加水分解性基はアルコキシ基が好ましく、C1-6アルコキシ基がより好ましく、特にメトキシ基が好ましい。
【0034】
前記(B)ポリマーは、その主鎖が本質的に、ポリエーテルからなるもの、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルの(共)重合体からなるもの、並びに、ポリエーテルと(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルの(共)重合体とからなるもの、が好ましい。
【0035】
特に、主鎖が本質的にポリエーテルからなる(B)ポリマーは、主鎖が本質的に、一般式(1):
【化4】

(式中、
は炭素数1〜4であるアルキレン基を示し、
nは10〜10000の整数を示す)
で表される化学的に結合された繰り返し単位を含み、かつ末端に架橋可能な加水分解性シリル基を含有するものが好ましい。
【0036】
上記の主鎖が本質的にポリエーテルからなる(B)ポリマーは、例えば、末端にアリル基を有するポリアルキレンオキシドをVIII族遷移金属の存在下で下記式(2)
【化5】

(式中、
5は1価の炭化水素基及びハロゲン化された1価の炭化水素基から選択される基、
nは0、1又は2の整数、
Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基及びケトキシメート基より選択される原子又は基を意味する)により表されるヒドロシラン化合物を反応させることによって合成することができる。
【0037】
上記ポリアルキレンオキシドとしては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド等が挙げられるが、組成物が室温で硬化し、また、その硬化物が耐水性に優れ、かつシーリング材としての弾性を確保できるという点でポリプロピレンオキシドが好ましい。
【0038】
(B)ポリマーの数平均分子量が小さくなると硬化物の伸びが十分でなくなり、目地面に対する追従性が低下し、大きくなると硬化前の粘度が高くなり、配合工程の作業性が悪くなる恐れがある。従って、好ましくは、(B)ポリマーの数平均分子量は、4000〜30000が好ましく、10000〜30000がより好ましい。また、分子量分布は1.6以下が望ましい。
【0039】
上記の主鎖が本質的にポリエーテルからなる(B)ポリマーとしては、例えば、商品名「MSポリマー」(鐘淵化学工業株式会社製)として、MSポリマーS−203、S−303等が、商品名「サイリルポリマー」(鐘淵化学工業株式会社製)として、サイリルSAT−030、サイリルSAT−200、SAT−350、SAT−400等が、商品名「エクセスター」(旭硝子株式会社製)として、エクセスターESS−3620、ESS−3430、ESS−2420、ESS−2410等が市販されている。
【0040】
本発明の組成物の接着性、耐候性、耐塗装性等の更なる向上のためには、(B)ポリマーの主鎖がポリエーテルと(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルの(共)重合体との両方を含むことが好ましい。このようなアクリル変性したMSポリマー(以下、「アクリルMSポリマー」という)としては、鐘淵化学工業株式会社製のMA903、MA943等が挙げられる。
【0041】
本発明の組成物における前記(B)ポリマーの配合量は、例えば、組成物の全質量を基準として5〜40質量%、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは10〜20質量%の範囲とすることができる。特に、(B)ポリマーの配合量と(A)プレポリマーとの配合量の比は10:1〜1:10とすることができ、5:1〜1:5が好ましく、3:1〜1:3がより好ましく、2:1〜1:2がより好ましく、1:1が特に好ましい。
【0042】
本発明の一液型湿気硬化型組成物は、上記の成分の他、本発明の目的を損なわない範囲で、充填材、可塑剤、チキソトロピー剤、溶剤、顔料、カップリング剤、硬化触媒、水分吸収剤(脱水剤)、安定剤等の添加剤を適宜含有することができる。これらの添加剤の配合量は、組成物全体の質量を基準として、例えば1〜80質量%、好ましくは1〜60質量%の範囲内とすることができる。
【0043】
充填剤としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリカ、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、カーポンブラック、ガラスバルーン、プラスチックバルーン、珪藻土、ゼオライト等が挙げられる。上記充填剤は単独で使用してもよく、又は、2種類以上を併用してもよい。
【0044】
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジラウリルフタレート(DLP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジオクチルアジペート(DOA)、ジイソノニルアジペート(DINA)、ジイソデシルアジペート、トリオクチルホスフエート、トリス(クロロエチル〉ホスフェート、トリブチルトリメリテート(TBTM)、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル、エポキシステアリン酸アルキル、エポキシ化大豆油等があげられる。上記可塑剤は単独で使用してもよく、又は、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
チキソトロピー剤(揺変性付与剤)としては、例えば、コロイド状シリカ、水素添加ヒマシ油、有機ペントナイト、トリペンジリデンソルビトール、表面処理した沈降炭酸力ルシウム、脂肪酸アミドワックス、ポリエチレンワックス、ポリ尿素化合物等が挙げられる。上記チキソトロピー剤は単独で使用してもよく、又は、2種類以上を併用してもよい。
【0046】
溶剤は、作業性調整の為に添加することができるが、例えば、芳香族系炭化水素、ミネラルスピリット、メチルエチルケトン等が挙げられる。上記溶剤は単独で使用してもよく、又は、2種類以上を併用してもよい。
【0047】
顔料としては、酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等が挙げられる。上記顔料は単独で使用してもよく、又は、2種類以上併用してもよい。
【0048】
カップリング剤としては、例えば、N-(β-アミノエチル)−γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルトリメトキシンラン等が挙げられる。また、アミノシラン、エポキシシラン等の2種類以上のカップリング剤の反応生成物(例えば、各種のアミノシランとエポキシシランの反応生成物、アルコキシ基を有する2分子以上のカップリング剤の縮合反応生成物)等も挙げられる。上記カップリング剤は単独で使用してもよく、又は、2種類以上を併用してもよい。
【0049】
硬化触媒としては、(A)プレポリマーに対しては、例えば、N-メチルモルホリン、トリエチルアミン、N,N,N',N'-テトラメチルプロパンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル等の第3級アミン類、及び、ジブチル錫ジラウレート、ビスマスオクテート等の有機金属化合物が挙げられる。(B)ポリマーに対しては、例えば、有機スズ化合物、有機ビスマス化合物、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルとアミンとの反応物、飽和又は不飽和の多価力ルボン酸又はその酸無水物、アルミニウムキレート化合物、有機チタネート化合物等の公知のシラール縮合触媒が挙げられる。硬化触媒は、1種又は2種以上を必要に応じて用いてもよい。前記有機スズ化合物の具体例としては、例えば、ジプチル錫ラウレート、ジオクチル錫マレート、ジプチル錫アセテート、ジブチル錫ナフタレート、オクチル酸第一錫、ジブチル錫メルカプテート、ジブチル錫ジアセチルアセトネート、ジプチル錫パーサテート等が挙げられる。前記有機チタネート化合物としては、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、トリエタノールアミンチタネート等のチタン酸エステルが挙げられる。
【0050】
水分吸収剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等のシラン化合物、及び、オクタデシルイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、リシンエステルトリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートオクタン等のイソシアネート化合物が挙げられる。上記水分吸収剤は単独で使用してもよく、又は、2種類以上を併用してもよい。
【0051】
安定剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の公知の紫外線吸収剤、或いは、酸化防止剤、ヒンダードアミン系の光安定剤、その他のラジカル安定剤が挙げられ、上記安定剤は単独で使用してもよく、又は、2種類以上を併用してもよい。
【0052】
本発明の一液型湿気硬化型組成物には、この他にも、必要に応じて、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、分散剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0053】
本発明の一液型湿気硬化性組成物は、従来から採用されているような湿分(湿気)の影響を極力抑えた環境下(例えば真空下)で周知の方法により製造することができる。例えば、各種の充填材、可塑剤、チキソトロピー剤等と共に(A)プレポリマー及び(B)ポリマーをバッチ式二軸混練ミキサー等を用いて混合攪拌し、その後、カップリング剤、水分吸収剤、紫外線吸収剤、溶剤、硬化触媒、及び、他の添加剤を適宜配合し、さらに混合・脱泡することにより、目的とする組成物を製造することができる。
【0054】
本発明の一液型湿気硬化性組成物は、接着性、耐候性、耐塗装性に優れているので、長期間の性能維持を求められる用途に好適に使用することができる。したがって、本発明の一液型湿気硬化性組成物は、建築、土木工事、自動車、鉄道車両、船舶等の用途のシーリング材、接着剤等の成分として好ましく使用することができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づき説明する。
【0056】
[実施例1]
バッチ式2軸攪拌混練ミキサーに、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及び分子量約12000のポリプロピレングリコールの反応物(IPDIプレポリマー)と、式(I)の化合物でX、Y、Z、が全てメトキシ基で、R、R’が共にメチル基で、n=3に相当するものを反応させて得られたシリル基末端ポリマー以下、「シリル基PUプレポリマー」という)、アクリルMSポリマー(MA903:鐘淵化学工業(株)製)、重質炭酸カルシウム(NN500:日東粉化工業(株)製)、ポリ尿素化合物からなるチキソトロピー剤、酸化チタン(TCR−10:堺化学工業(株)製)、及び、フタル酸系可塑剤(DIDP:Jプラス(株)製)を室温において順次投入した。次に、減圧・加熱状態で、攪拌混練を行った。次に、ミキサー内の温度を約70℃まで上昇させて攪拌混練を継続して脱水を行い、その後、アミノシラン(アミノトリメトキシシラン/KBE−903:信越化学工業(株)製)、脱水剤(メチルトリメトキシシラン/KBM−13:信越化学工業(株)製)、紫外線吸収剤(LA−62:旭電化工業(株)製)、及び、触媒(ECS−501:旭硝子ウレタン(株)製)を反応釜に加え、冷却しつつ攪拌混練を行い、脱泡することにより、一液型湿気硬化性組成物を得た。
【0057】
[実施例2]
アクリルMSポリマーに代えてMSポリマー(エクセスターS2420:旭硝子(株)製)を使用する以外は実施例1と同様にして一液型湿気硬化性組成物を得た。
【0058】
[比較例1]
シリル基PUプレポリマーに代えてMSポリマーを使用する以外は実施例1と同様にして一液型湿気硬化性組成物を得た。
【0059】
[比較例2]
アクリルMSポリマーに代えてシリル基PUプレポリマーを使用する以外は実施例1と同様にして一液型湿気硬化性組成物を得た。
【0060】
実施例及び比較例の組成物のそれぞれについて、以下の示すように「塗膜密着性」、「接着性」、[作業性(吐出性)]、[モジュラス強度]及び[硬化性/タックフリータイム]について評価試験を行った。
【0061】
[塗膜密着性]
ブリキ板の上に厚さ約2〜3mmになるように実施例及び比較例の組成物をそれぞれ塗布し、塗布後8時間と24時間後に、日本ペイント(株)製のアクリルウレタン塗料(商品名:スペリオ)を塗布し、45℃で30分間乾燥後に、塗膜の密着性をJISK5400(塗料一般試験方法)に準じて評価した。具体的には、塗膜と組成物との間での接着性が特に良好な場合を○(>90%)、接着状態が中程度のものを△(75%〜30%)、接着不良を×(<30%)として目視により評価を行った。
【0062】
[接着性]
アルミニウム板に実施例及び比較例の組成物をそれぞれビード状に塗布し、その後、カッターナイフで切り込みを入れて、アルミニウムに対する接着性を目視により確認した。良好に接着しているものはCf100(Cf:凝集破壊)、良好に接着していないものはAf100(Af:界面剥離)、両方が混在しているものはCf/Afとした。Cf/Afの場合のCf及びAfの各数値は凝集破壊及び界面剥離の混在比率を示す。
【0063】
[作業性(吐出性)]
JIS A 1439:2004 5.14試験用カートリッジによる押出し試験に準じて行い、その吐出量を測定した。押出し秒数が4秒以下のものを○、4秒を超えるものをXとして評価を行った。
【0064】
[モジュラス強度]
温度20℃、湿度65%の雰囲気中で、実施例1、2及び比較例1、2の組成物を厚さ約2mmになるようにシート状に作製し、7日後に50%モジュラス測定を行い、0.4MPa以下のものを○、0.4MPaを超えるものをXとして評価を行った。なお、ISO11600シーリング材分類で、クラス20LMは60%モジュラスが0.4MPa以下となっている。
【0065】
[硬化性/タックフリータイム]
温度20℃、湿度65%の雰囲気中で、実施例1、2及び比較例1、2の組成物をガラス板に約0.1から3.0mm厚に塗布し、表面状態を指接触により観察した。指に付着しなくなるまでの時間が60分以下のものを○とし、60分を超えるものを×とした。
【0066】
結果を表に示す。表中の組成の数値は質量部である。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)尿素結合及びウレタン結合を有し、且つ、末端又は側鎖に加水分解性シリル基を有するプレポリマー;及び
(B)主鎖がポリエーテル構造及び/又はポリアクリル構造を含み、且つ、末端又は側鎖に加水分解性シリル基を有するポリマー、
を含む、一液型湿気硬化性組成物。
【請求項2】
前記(A)プレポリマーが、
末端にイソシアネート基を有し、且つ、ウレタン結合を有する第1の化合物;及び
加水分解性シリル基及びアミノ基を有する第2の化合物
の反応物である、請求項1記載の一液型湿気硬化性組成物。
【請求項3】
前記第1の化合物がポリエーテル構造を含む、請求項2記載の一液型湿気硬化性組成物。
【請求項4】
前記(B)ポリマーの主鎖がポリエーテル構造及びポリアクリル構造の両方を含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の一液型湿気硬化性組成物。
【請求項5】
前記(A)プレポリマーの配合量が組成物の全質量を基準として5〜40質量%である、請求項1乃至4のいずれかに記載の一液型湿気硬化性組成物。
【請求項6】
前記(B)ポリマーの配合量が組成物の全質量を基準として5〜40質量%である、請求項1乃至5のいずれかに記載の一液型湿気硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかの一液型湿気硬化性組成物からなるシーリング材又は接着剤。

【公開番号】特開2007−211107(P2007−211107A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31530(P2006−31530)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】