説明

一液湿気硬化型道床安定剤

【課題】安全性が高く短期間の線路の保守が容易な一液湿気硬化型道床安定剤を提供する。
【解決手段】(a)ポリ又はモノイソシアネートと(b)活性水素含有モノマー又はポリマーとを反応させて得られるイソシアネート含有ポリウレタンプレポリマー、分解促進剤、及び減粘剤を含有する一液湿気硬化型道床安定剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一液湿気硬化型道床安定剤に関する。
【背景技術】
【0002】
バラスト軌道では、主に枕木及びバラストにより道床が構成される。従来、バラストに道床安定剤を散布してバラストを固定することにより、道床抵抗力を高め、またバラストの飛散を防止している。夏のレール膨張を抑え、冬の降雪、凍結、暴風等の自然災害からレールを守るためにもバラストの固定は重要である。一方、半年程度経過後の短期間での保守作業においては、バラストの突き崩しが容易であることが求められる。
道床安定剤として、ポリウレタンプレポリマーを含有する一液湿気硬化型のものが周知である(例えば、特許文献1〜3)。しかし、これらの道床安定剤では、ポリウレタンの湿気硬化の速度、硬化方法をコントロールするために、ポリウレタンプレポリマーにオキシエチレン基を含有するポリオールあるいはモノオールの導入や、親水性を持った希釈剤を使用するなどの使用原料に制限があり、第3級アミン類や有機金属化合物のような人体に有毒なウレタン化触媒が添加されていたりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−112912号公報
【特許文献2】特許第3813114号公報
【特許文献3】特許第3813115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、非水溶性のため降雨時などにも自然界に溶け出さないため安全性が高く、バラストの突き崩しが容易となる一液湿気硬化型道床安定剤を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決するために研究を重ね、以下の知見を得た。即ち、(a)ポリ又はモノイソシアネートと(b)活性水素含有モノマー又はポリマーとを反応させて得られるイソシアネート含有ポリウレタンプレポリマー、分解促進剤、及び減粘剤を含有する道床安定剤を用いることにより、空気中の湿分を用いたポリウレタンの湿気硬化反応をコントロールすることができると共に、硬化したウレタンプレポリマーの分解を促進する効果を生じさせることを知見した。当該道床安定剤は、引火点が高い非水溶性の減粘剤を使用することができ、人体に有毒な触媒を添加する必要がないので、安全性も高いという利点を有する。
【0006】
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、下記の一液湿気硬化型道床安定剤を提供する。
[1] (a)ポリ又はモノイソシアネートと(b)活性水素含有モノマー又はポリマーとを反応させて得られるイソシアネート含有ポリウレタンプレポリマー、分解促進剤、及び減粘剤を含有する一液湿気硬化型道床安定剤。
[2] 塩を含有するモノマーまたはポリマーをさらに含有することを特徴とする[1]記載の一液湿気硬化型道床安定剤。
[3] 分解促進剤が有機金属化合物であることを特徴とする[1]又は[2]記載の一液湿気硬化型道床安定剤。
[4] 減粘剤が、炭素数6〜22の高級脂肪酸エステル、植物油もしくは動物油脂肪酸の炭素数1〜22のアルキルエステル、炭素数6〜22の高級脂肪酸のモノ、ジもしくはトリグリセライド、炭素数6〜22の多塩基酸もしくは酸無水物のエステル、並びに炭素数6〜22の多塩基酸もしくは酸無水物のモノ、ジもしくはトリグリセライドからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、20℃での水に対する溶解度が1.0重量%未満の疎水性であることを特徴とする[1]〜[3]記載の一液湿気硬化型道床安定剤。
[5] 活性水素含有モノマー又はポリマーがオキシエチレン基を含有しないことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の一液湿気硬化型道床安定剤。
[6] 20℃での水に対する溶解度が1.0重量%未満の疎水性であり、引火点が200℃を越え、消防法上の危険物第4類第4石油類であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の一液湿気硬化型道床安定剤。
[7] 湿気硬化に際してウレタン化触媒を含有しないことを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の一液湿気硬化型道床安定剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、安全性が高く、バラストの突き崩しが容易となる一液湿気硬化型道床安定剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一液湿気硬化型道床安定剤は、(a)ポリ又はモノイソシアネートと(b)活性水素含有モノマー又はポリマーとを反応させて得られるイソシアネート含有ポリウレタンプレポリマー、分解促進剤、及び減粘剤を含有する。
【0009】
[ポリ又はモノイソシアネート]
ポリ又はモノイソシアネートとしては、例えば分子中に平均1個以上、好ましくは平均1〜3個程度のイソシアネート基を有する脂肪族、芳香族、脂環族、等のポリ又はモノイソシアネートが挙げられる。具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート等のポリイソシアネート;フェニルイソシアネート、p−クロロフェニルイソシアネート、ベンゼンスルホニルイソシアネート、p−トルエンスルホニルイソシアネート、イソシアネートエチルメタクリレート等のモノイソシアネートが挙げられる。これらのポリ又はモノイソシアネートは、単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0010】
[活性水素含有ポリマー又はモノマー]
活性水素含有ポリマー又はモノマーとしては、例えば、水酸基、アミノ基、メルカプト基等の活性水素含有基を平均1個以上、好ましくは平均1〜4個程度含有するポリマー又はモノマーが用いられる。具体的には、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、ジメチロールプロピオン酸等のアルキルポリオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA、ペンタエリスリトール、DPPA等のポリエーテルポリオール;多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、トリシクロデカンジメチロール等)と多塩基酸(例えば、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等)との反応によって得られるポリエステルポリオール;ポリカーボネートポリオール等のポリオール、ポリアミン、ポリチオール等が挙げられる。これらの活性水素含有ポリマー又はモノマーは、単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
活性水素含有ポリマー又はモノマーはオキシエチレン基を含有しないことが好ましい。
(a)ポリ又はモノイソシアネートと(b)活性水素含有モノマー又はポリマーとの反応は、例えば、重量比100:100〜100:1程度、好ましくは100:50〜100:10程度で行えばよい。
【0011】
[塩を含有するモノマーまたはポリマー]
塩を含有するモノマーまたはポリマーとしては、例えば無機酸の塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等)、有機酸の塩(例えば、酢酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム等)を含有するモノマーまたはポリマーが使用できる。好ましくは、ウレタンプレポリマーとの溶解性から、有機酸の塩を含有するモノマーまたはポリマーを用いるが、雨などにより自然界に溶け出さないためにはウレタン化する必要があり、ヒドロキシ酸の塩を含有するモノマーまたはポリマー用いるのがより好ましい。
ヒドロキシ酸としては、具体的には、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸、リシノール酸、リシネライジン酸、セレブロン酸、キナ酸、シキミ酸等の脂肪族ヒドロキシ酸;サリチル酸、クレオソート酸、バニリン酸、シリング酸、ピロカテク酸、レソルシル酸、プロトカテク酸、ゲンチジン酸、オルセリン酸、没食子酸、マンデル酸、ベンジル酸、アトロラクチン酸、メリロト酸、フロレト酸、クマル酸、ウンベル酸、コーヒー酸、フェルラ酸、シナピン酸等の芳香族ヒドロキシ酸等が挙げられる。塩としては、具体的には、アルカリ金属塩(カリウム、ナトリウム等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)、アンモニューム塩等が挙げられる。
塩を含有するモノマーまたはポリマーの含有量は、ウレタンプレポリマー全体に対して0.1〜30重量%程度、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%である。上記範囲であれば、空気中からの吸湿量が適切であり、ウレタンプレポリマーの硬化が均一に行われるので、バラスト固定力の低下が抑えられる。
【0012】
[イソシアネート基を含有するポリウレタンプレポリマー]
イソシアネート基を含有するポリウレタンプレポリマーとしては、例えばイソシアネート基含有量を2〜50%程度、好ましくは5〜20%程度含有するポリウレタンプレポリマーが挙げられる。上記範囲であれば、フリーのイソシアネート基の量が適切であり、道床安定剤の貯蔵安定性に優れる。また、バラストに散布した後、イソシアネート基と水との反応による副生成物の炭酸ガスが多量に発生して、樹脂がスポンジ状に固まることもない。
一液湿気硬化型道床安定剤中のポリウレタンプレポリマーの含有量は、道床安定剤全体に対して、例えば30〜95重量%程度、好ましくは50〜90重量%程度、より好ましくは50〜80重量%程度にすればよい。
【0013】
[分解促進剤]
分解促進剤としては、例えば、日光、紫外線、熱、水、酵素、微生物の作用によって熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の分子結合を分断し最終的には水や二酸化炭素、コンポストなどの無害な物質にまで分解を促進させる重合体組成物を用いることができる。具体的には、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂成分の分解を促進するための、脂肪酸、脂肪酸エステル、天然脂肪、天然もしくは合成ゴム、またはこれらの混合物から選ばれた酸化可能な成分と、酸化反応を開始させる遷移金属成分と、分解過程の開始を遅延させる非金属安定化成分とからなる酸化分解促進剤(特許第2961138号公報)等が挙げられる。具体的には、デグラノボンやS−AWシロップ(ノボンジャパン株式会社製)等を用いることができる
一液湿気硬化型道床安定剤中の分解促進剤の含有量は、道床安定剤全体に対して、例えば0.1〜10重量%程度、好ましくは0.1〜5重量%程度、より好ましくは0.1〜2重量%程度にすればよい。上記範囲であれば、分解促進速度が適切となり、バラスト固定から数ヵ月経過後の突き崩しが容易となる。
【0014】
[減粘剤]
減粘剤としては、例えば、炭素数6〜22の高級脂肪酸、植物油又は動物油脂肪酸のエステル、モノグリセライド、ジグリセライド、トリグリセライド、多塩基酸又はその酸無水物等の炭素数1〜22のアルキルエステル、脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素これらの混合物等で、水に対する溶解度が1.0重量%未満の非水溶性かつ性状が常温液体であるものが挙げられる。
高級脂肪酸としては、例えば、直鎖又は分岐鎖をもつ炭素数6〜22の飽和又は不飽和の高級脂肪酸が挙げられ、具体的にはカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ノナデカン酸、ベヘニン酸、エルカ酸、12−ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸等が挙げられる。
植物油若しくは動物油脂肪酸としては、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸、ババス脂肪酸、パーム核油脂肪酸、大豆油脂肪酸、あまに油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、鯨油脂肪酸等の植物油又は動物油脂肪酸等が挙げられる。
多塩基酸としては、蟻酸、マロン酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、安息香酸、フタル酸、コハク酸、アジピン酸等が挙げられる。
脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素としては、イソ、ノルマルパラフィン、石油ナフサ、メチルシクロヘキサン、イソホロン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が上げられる。
減粘剤は、天然品又は天然品を常法により適宜精製した天然品由来のものでもよく、また石油由来などの合成品であってもよい。地球温暖化防止への取り組みが世界的規模で取り組まれ始めている昨今、炭酸ガスを排出しない天然素材を出発原料とした製品の開発が国内外から求められているという点から、天然品又は天然品由来のものが好ましい。
一液湿気硬化型道床安定剤中の減粘剤の含有量は、道床安定剤全体に対して、例えば5重量%以上、好ましくは10〜50重量%程度、より好ましくは20〜50重量%程度にすればよい。上記範囲であれば、道床安定剤の粘度が適切となり、バラスト表面にポリウレタン樹脂が適切量付着するので、バラストの固定強度に優れる。
【0015】
本発明の一液湿気硬化型道床安定剤は、20℃での水に対する溶解度が1.0重量%未満の疎水性であり、引火点が200℃を越え、消防法上の危険物第4類第4石油類であることが好ましい。また、湿気硬化に際して従来用いられる第3級アミン類、有機金属化合物などのウレタン化触媒を含有しないことが好ましい。
本発明の一液湿気硬化型道床安定剤は、イソシアネート含有ポリウレタンプレポリマー、分解促進剤、及び減粘剤を公知の方法で混合することにより製造可能である。道床安定剤は、じょうろ等の公知の散布器により散布が可能である。
【実施例】
【0016】
以下に、本発明の実施例及び比較例を提示する。
【0017】
実施例1
攪拌羽根、還流装置、温度計を設置した加温装置付き四つ口セパラブルフラスコに窒素ガス雰囲気下、ポリメリックMDIを72重量部投入し、液温を50℃に調整した。次に攪拌しながらポリエーテルポリオール(株式会社ADEKA製P−3000=平均数分子量3000、2官能ポリプロピレングリコール)15重量部、リシノール酸トリグリセリド10重量部、リシノール酸Na2重量部を投入し80℃で3時間反応させた。反応終了後液温を50℃まで下げた後、分解促進剤1重量部を投入して15分間攪拌後ポリサイザー W−230−H(DIC株式会社製、引火点250℃以上) 67重量部投入して15分間攪拌した。得られたウレタンプレポリマー溶液は25℃で粘度が500mPa・s、固形分60%のやや霞のある褐色粘稠液であった。
【0018】
比較例1
実施例1と同様に加温装置付き四つ口セパラブルフラスコに窒素ガス雰囲気下、ポリメリックMDIを65重量部投入し、液温を50℃に調整した。次に攪拌しながらポリエーテルポリオール(株式会社ADEKA製P−3000=平均数分子量3000、2官能ポリプロピレングリコール)12重量部、ポリオキシエチレン含有ポリエーテルポリオール(株式会社ADEKA製PR−3007=数平均分子量3000、2官能、ポリオキシエチレン:ポリオキシプロピレンの重量比7:3のランダム重合ポリエーテルポリオール)20重量部、リシノール酸Na2重量部を投入し、80℃で3時間反応させた。反応終了後液温を50℃まで下げた後、分解促進剤1重量部を投入して15分間攪拌後、プロピレンカーボネート43重量部投入して15分間攪拌した。得られたウレタンプレポリマー溶液は25℃で粘度が200mPa・s、固形分70%のやや霞のある褐色粘稠液であった。
【0019】
比較例2
実施例1と同様に加温装置付き四つ口セパラブルフラスコに窒素ガス雰囲気下、ポリメリックMDIを68重量部投入し、液温を50℃に調整した。次に攪拌しながらポリエーテルポリオール(株式会社ADEKA製P−3000=平均数分子量3000、2官能ポリプロピレングリコール)12重量部、ポリオキシエチレン含有ポリエーテルポリオール(株式会社ADEKA製PR−3007=数平均分子量3000、2官能、ポリオキシエチレン:ポリオキシプロピレンの重量比7:3のランダム重合ポリエーテルポリオール)20重量部を投入し、80℃で3時間反応させた。反応終了後液温を50℃まで下げた後、プロピレンカーボネート43重量部投入して15分間攪拌した後、硬化促進のためウレタン化触媒としてDMDEEを0.3重量部混合した。得られたウレタンプレポリマー溶液は25℃で粘度が200mPa・s、固形分70%でやや霞のある褐色粘稠液であった。
【0020】
比較例3
実施例1と同様に加温装置付き四つ口セパラブルフラスコに窒素ガス雰囲気下、ポリメリックMDIを68重量部投入し、液温を50℃に調整した。次に攪拌しながらポリエーテルポリオール(株式会社ADEKA製P−3000=平均数分子量3000、2官能ポリプロピレンポリオール)12重量部、ポリオキシエチレン含有ポリエーテルポリオール(株式会社ADEKA製PR−3007=数平均分子量3000、2官能、ポリオキシエチレン:ポリオキシプロピレンの重量比7:3のランダム重合ポリエーテルポリオール)20重量部を投入し80℃で3時間反応させた。反応終了後液温を50℃まで下げた後、キシレン21重量部、ソルフィットAC22重量部の混合液を投入して15分間攪拌した後、硬化促進のためのウレタン化触媒DMDEEを0.3重量部混合した。得られたウレタンプレポリマー溶液は25℃で粘度が500mPa・s、固形分70%の褐色透明な粘稠液であった。
【0021】
評価方法
*樹脂の性状:ガラス容器を通して目視にて確認した。24時間後に樹脂が分離、固化及び沈降物が発生していない場合を合格とした。
*硬化性:5〜10mm程度の花崗岩乾燥砕石を厚み20mmに敷き、各樹脂を2kg/mの量で均一に散布し2時間後完全に固着しているか否かを指蝕にて確認した。
*接着性:5〜10mm程度の花崗岩乾燥砕石を巾45mm、厚み20mmに敷き、各樹脂を2kg/mの量で均一に散布し、24時間後の圧縮破壊強度が20Kgf/cm以上の場合を合格とした。
*経時分解性:5〜10mm程度の花崗岩乾燥砕石を巾45mm、厚み20mmに敷き、各樹脂を2kg/mの量で均一に散布し、サンシャインウエザーメーター(スガ試験機株式会社製;型式;WEL−SUN−HCH−B、放電電圧;電流50V;60A、ブラックパネル温度;63℃、スプレーサイクル;18/120分)にて、300時間、400時間、500時間暴露した後、圧縮破壊強度を測定した。初期強度の50%以下になった時間が、300から500時間以内である場合を合格とした。結果を下記表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
結果から明らかなように、比較例1、2の場合、樹脂の親水性が強く樹脂の含水量が多くなりすぎて、炭酸ガスの発生が多くなり樹脂が発泡して接着強度低下を引き起こしている。また、比較例2、3から明らかなように、分解促進剤を含有しない場合、経時分解の促進が図られず、当初の目的である線路の保守作業性の向上が図れていない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の方法によれば、(a)ポリ又はモノイソシアネートと(b)活性水素含有モノマー又はポリマーとを反応させて得られるイソシアネート含有ポリウレタンプレポリマー、分解促進剤、及び減粘剤を用いることにより、安全性が高く短期間の線路の保守が容易な一液湿気硬化型道床安定剤を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリ又はモノイソシアネートと(b)活性水素含有モノマー又はポリマーとを反応させて得られるイソシアネート含有ポリウレタンプレポリマー、分解促進剤、及び減粘剤を含有する一液湿気硬化型道床安定剤。
【請求項2】
塩を含有するモノマーまたはポリマーをさらに含有することを特徴とする請求項1記載の一液湿気硬化型道床安定剤。
【請求項3】
分解促進剤が有機金属化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の一液湿気硬化型道床安定剤。
【請求項4】
減粘剤が、炭素数6〜22の高級脂肪酸エステル、植物油もしくは動物油脂肪酸の炭素数1〜22のアルキルエステル、炭素数6〜22の高級脂肪酸のモノ、ジもしくはトリグリセライド、炭素数6〜22の多塩基酸もしくは酸無水物のエステル、並びに炭素数6〜22の多塩基酸もしくは酸無水物のモノ、ジもしくはトリグリセライドからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、20℃での水に対する溶解度が1.0重量%未満の疎水性であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の一液湿気硬化型道床安定剤。
【請求項5】
活性水素含有モノマー又はポリマーがオキシエチレン基を含有しないことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の一液湿気硬化型道床安定剤。
【請求項6】
20℃での水に対する溶解度が1.0重量%未満の疎水性であり、引火点が200℃を越え、消防法上の危険物第4類第4石油類であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の一液湿気硬化型道床安定剤。
【請求項7】
湿気硬化に際してウレタン化触媒を含有しないことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の一液湿気硬化型道床安定剤。

【公開番号】特開2010−31280(P2010−31280A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2009−177677(P2009−177677)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(591195592)大同化成工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】