説明

一般ゴミ焼却灰を利用したブロック体

【課題】
焼却灰と特定組成物とを混合させて、該組成物との間で固化作用を促すことで、透水性に優れると共に汚染物質の漏洩を防止することのできるブロック体を提供する。
【解決手段】
本発明一般ゴミ焼却灰を利用したブロック体は、(a)平均粒子径10mm以下の山砂100重量部と、平均粒子径5mm以下の炭5〜15重量部と,ポルトランドセメント60〜65重量部、パーライト4〜10重量部および若干のノニオン系界面活性剤とを混合して成る組成混合物と、(b)一般ゴミ焼却灰とを、(c)1:0.8〜1.2の割合で混合撹拌したものに水分を含ませて固化したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般ゴミ焼却灰の再利用の技術に関し、更に詳細には、重金属等の汚染物質を含むおそれのある一般ゴミ焼却灰を処理して、舗装材用等のブロック体に利用することのできる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみ等を焼却した際に発生する焼却灰は、従来、そのほとんどを最終処分場で埋め立て処理しているが、その理由は、焼却灰には、鉛等の重金属や、テロラクロロエチレン等の揮発性有機化合物(VOC)等のいわゆる汚染物質を環境基準を上回って含むものも多く、指定された最終処分場に埋め立てしなければならないからである。しかし、この処理を行うには最終処分場の建設や埋め立て地の確保等費用と時間の要するものであった。
又近年、最終処分場の枯渇のおそれに鑑み、焼却灰をセメント原料としてリサイクルしているが、しかし、溶融スラグはプラズマを使い、省力化のために水砕するので細かく強度の無い砂状物質になり、高温でガラス状の物質になるので強度も弱く、鋭利な破片が作業性に悪影響を及ぼすため、ほとんど再生資源としての利用価値が無いものになってしまう。
【0003】
そこで、近年、上記焼却灰を含む廃棄物のセメント原料化又は燃料化によるリサイクルが推進され、廃棄物の処理量が増加するに従い、セメントキルンに持ち込まれる塩素、硫黄、アルカリ等の揮発成分の量も増加し、塩素バイパスダストの発生量も増加している。そのため、塩素バイパスダストをすべてセメント粉砕工程で利用することができず、塩素バイパスダストについても水洗処理されていた。
【0004】
特許文献1に記載のセメント原料化処理方法では、従来水洗処理されている塩素バイパスダスト等を脱塩処理し、塩素を含む廃棄物に水を添加して廃棄物中の塩素を溶出させてろ過し、得られた脱塩ケークをセメント原料として利用するとともに、排水を浄化処理してセレン等の重金属類を除去し、環境汚染を引き起こすことなく、塩素バイパスダストの利用を図っている。
しかし、廃棄物中の塩素を水に溶出させる工程や、重金属の沈殿工程を含むもので、工程が複雑であると共に処理に時間と費用の嵩むものであった。
【特許文献1】特開平11−100243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、特定組成物と焼却灰とを混合させて、該組成物との間で固化作用を促すことで、透水性に優れると共に汚染物質の漏洩を防止することのできるブロック体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明ブロック体は、(a)平均粒子径10mm以下の山砂100重量部と、平均粒子径5mm以下の炭5〜15重量部と,ポルトランドセメント60〜65重量部、パーライト4〜10重量部および若干のノニオン系界面活性剤とを混合して成る組成混合物と、(b)一般ゴミ焼却灰とを、(c)1:0.8〜1.2の割合で混合撹拌したものに水分を含ませて固化したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のブロック体は、組成混合物に汚染物質を含んだ焼却灰が混入されると、ポルトランドセメント等が水と反応を起こし、汚染物質を含んだ土壌の周囲をポルトランドセメントが囲繞した状態のままに固化されるので、汚染物質の漏洩、拡散を防止する。このとき、重金属、農薬等の薬品は土壌に溶解し易く、その重金属、農薬等を含んだ土壌がポルトランドセメントによって囲繞、固化されるので、そこからの漏洩、拡散が防止され、一方、VOCは土壌に溶解され難い性状を有するが、混合された炭の多孔質部分に吸着され、その炭をポルトランドセメントが囲繞するので同様に漏洩、拡散が抑制される。
上記焼却灰が過剰の水分を含んでいる場合には、パーライトが余分な水分を吸水し、固化反応に必要な最低限の水分量を調整することが出来る。
上記組成混合物に含まれるノニオン系界面活性剤によって、ポルトランドセメントの分散は均一且つ良好になされるので、山砂、土壌等の囲繞は効率的で可及的に薄い層で可能となり、固化反応後には、各粒子との間に間隙(空孔)を形成する。この結果、固化後の土壌をポーラスな状態とすることができ、透水性に優れたブロック体とすることができる。
又、山砂は一種の骨材として機能し、固化後の土壌に一定の強度を付与することができ、土壌の上に建築物等を建てる際の基礎としての強度を保持する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
そこで、この発明の実施の形態を、図1〜2及び表1〜表3に基づいて説明する。
本発明は、重金属、薬品、VOC等の汚染物質を含むおそれのある一般焼却灰を対象とし、透水性、吸着性を保有するブロック体を形成するが、その選定材料としては山砂、炭、無機系顔料およびポルトランドセメントを用い、添加剤としてノニオン系界面活性剤を混合して組成混合物を成している。
以下、該選定材料の特徴について説明し、形成される無機質組成物の特徴について説明する。
【0009】
本発明で対象とする一般焼却灰は、一般廃棄物を焼却処理した後の灰をいい、SiO,CaO,Al,Fe,P,NaO,KO,MgO等を含むものである。ここには汚染物質が含まれることがあり、汚染物質とは重金属、農薬等の薬品、VOC(揮発性有機化合物)等いう。重金属とは、カドミウム、シアン、鉛、六価クロム、ヒ素、水銀、セレン、フッ素、ホウ素等をいい、農薬には、シマジン、チラウム、チオペンカルフ、有機リン、PCBが含まれ、VOCには、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、ベンゼン等が含まれる。
【0010】
山砂は、主として花崗岩等が風化して出来た土で、山で採取できる砂であり、火山灰等の粘土質を除いた骨材である。岩石を破砕して分粒し組骨材相当の砕石も含まれる。その粒度は、10mm以下のふるい目で主に2mm以下のものが用いられ採用した。
該山砂は、上記焼却灰と混合された際の硬化後にポーラス構造とすると共に、骨材として機能させるものである。
【0011】
ポルトランドセメントは、水の存在下で汚染土壌及び山砂の各粒子を結合して一体的に固化し、焼却灰及び山砂の表面を実質的に囲繞して、多数の空隙を形成しているが、ポルトランドセメントは骨材間の接合力を大きく保持できる一方で、それ自体が団子状、塊状になり易く、空間を埋め易いので、使用量は可及的に少量でかつ汚染物質を封鎖できる厚みの量とする。
【0012】
組成混合物の次の組成である炭は、多孔質の性状を備え、その多孔質部分にVOC等の汚染物質を吸着することができ、且つ比表面積が大きいので、少量でも多くのVOCを吸着でき、該組成混合物の内部に多くの汚染物質を担持する働きをなす。
【0013】
界面活性剤はノニオン系が使用される。その性状は山砂及び焼却灰の濡れ性を高め、該山砂及び焼却灰の表面にポルトランドセメントを均一に分散させ、水の表面において均一に分散されると、水分と反応して適度な強度が現れるが、ポルトランドセメントが山砂及び焼却灰の表面において不均一であると、団子状や塊状となり、強度が強くなり過ぎる部分と脆い部分が発生してしまい、不適である。しかし、該ノニオン系界面活性剤によって、ポルトランドセメントの分散は均一且つ良好になされるので、山砂、土壌等の囲繞は効率的で可及的に薄い層で可能となり、固化反応後には、各粒子との間に間隙(空孔)を形成する。
該ノニオン系界面活性剤としては、ノニルフェニルエーテル系重合体で炭素数6〜7のものを利用する事が出来る。
【0014】
パーライトは、黒曜石を砂状に砕き、1000℃で燃成加工した独立気泡の発泡体で、無機質超軽量礫状骨材である。この多孔質性は十分に吸水させても完全には水飽和することが無く、常に空気が相当量含まれている材料である。
上記焼却灰に過剰の水分が含まれた場合、パーライトが余分な水分を吸水することが出来る。
【0015】
以上に記述した各材料の特徴を踏まえ、本発明汚染土壌の改良方法を説明する。
先ず、透水性、吸着性、化学反応性及び汚染物質溶出の防止を保有した組成混合物の配合例を示すと表1の如くとなる。
【0016】
【表1】

【0017】
上記配合に基づいて組成混合物を得るには、山砂とポルトランドセメントを一定量計量し、撹拌機で攪拌しながら界面活性剤を滴下する。その後、炭及び無機系顔料及びパーライトを添加し山砂、ポルトランドセメント、炭、無機系顔料、パーライト、ノニオン系界面活性剤のサラサラ状態の組成混合物を形成する。
【0018】
より詳細には、平均粒子径10mm以下の山砂100重量部と、平均粒子径5mm以下の炭5〜15重量部と,ポルトランドセメント60〜65重量部、無機系顔料5〜6重量部、パーライト4〜10重量部および若干のノニオン系界面活性剤とを混合して成る組成混合物を形成する。
山砂100重量部に対し、ポルトランドセメント60〜65重量部としたのは、60部以下では固化後の強度が弱く、又山砂、焼却灰を十分に囲繞することができなくなり、65部以上では固化後の空隙が少なくなるからである。
平均粒子径5mm以下の炭を5〜15重量部としたのは、5部以下では吸着量が少なく、15部以上では固化後の強度が弱くなるからである。
パーライトを4〜10重量部としたのは、4部以下では吸水量が少なく、10部以上では炭と同様固化後の強度が弱くなるからである
無機系顔料を5〜6重量部としたのは、着色量としてこれで十分だからである。
【0019】
次いで、図2に示す如く、焼却灰と、上記組成混合物とを、1:0.8〜1.2の割合で大型のミキサー等で混合撹拌する。ここで、焼却灰と組成混合物との混合比を1:0.8〜1:1.2の割合としたのは、汚染の度合いによって、汚染が重い場合には、焼却灰の割合を少なくして1:0.8程度とし、逆に汚染の度合いが軽い場合には焼却灰の割合を多くして1:1.2程度とし、且つ、この1:0.8〜1:1.2の範囲であるなら、山砂との関係で固化後にポーラスな間隙を形成できると共に強度を維持することができるからである。
上記混合の際、水を添加し、その割合は重量比約10〜30%とするのが好ましい。30%以上ではドロドロ状態で固まりが遅くなり、10%以下では、固まり難いからである。
【0020】
次いで、上記撹拌混合したものを、型枠に投入しブロック体とするが、8〜10時間程度で固化が始まり、約2〜5日程度で固化が完了する。
【0021】
該ブロック体は、主に歩道、園道等の舗装用ブロック体として使用するが、その他のブロック体としても利用することができる。
【0022】
次に、本発明ブロック体の作用効果について、以下に説明する。
本発明ブロック体は、一般焼却灰と上記組成混合物と混合撹拌すると、ポルトランドセメント等と水とが反応を起こし、汚染物質を含んだ焼却灰をポルトランドセメントが全周域に渡って囲繞した状態のままに固化され、汚染物質の漏洩、拡散を防止する。
このとき、重金属、農薬等の薬品は組成混合物の山砂に吸着され、その焼却灰がポルトランドセメントによって囲繞、固化され、そこからの漏洩、拡散を防止する。一方で、VOCは混合された炭の多孔質部分に吸着され、その炭をポルトランドセメントが囲繞するので同様に漏洩、拡散が抑制される。
又、焼却灰は、過剰の水分を含んでいる場合があるが、このときパーライトが作用し、該パーライトが余分な水分を吸水し、その後の固化反応に必要な最低限の水分量に調整することが出来る。
上記の通りノニオン系界面活性剤によって、ポルトランドセメントの分散が均一且つ良好になされると、山砂、土壌等の囲繞は効率的で可及的に薄い層で可能となり、固化反応後には、各粒子との間に間隙(空孔)が形成される。即ち、ノニオン系界面活性剤によって十分に分散されたポルトランドセメントは、山砂、土壌等を十分に囲繞し、固化した後にその周囲に土壌をポーラスな状態とすることができる。その結果、透水性と吸着性を維持することができ、例えば、舗装材として透水性等に優れたブロック体とすることができる。
又、山砂は一種の骨材として機能するので、固化後の土壌に一定の強度を付与することができ、ブロック体としての強度を保持する。
又、土壌に無機系顔料を配合すれば、色彩を付与することができる。
【実施例】
【0023】
この発明の実施例を、上記実施の形態に基づいて製作した。その実施状況を以下に説明する。
【0024】
上記の形態に基づいて組成混合物を製造するに当たり、次の配合で実施した。
組成混合物は、山砂600kg、炭40kg、ポルトランドセメント345kg、無機系顔料6kg、パーライト20kg及びノニオン系界面活性剤(ノニルフェニルエーテル系重合体)3kgを混合した。上記配合によって製造された粒状混合物は、図2に混合状態を示し、一般ゴミ焼却灰を該組成混合物と重量比1対1で混合し、該組成混合物を型枠に充填し、舗装用ブロックとした。
【試験例】
【0025】
上記実施例に基づいて製作したこの発明の試料を、一般ゴミ焼却灰と組成混合物を重量比1対1で混合し、河川健康項目環境基準環境庁告示第59号に基づき溶出試験を行なった。測定方法およびその結果を以下に説明する。
【0026】
埼玉県狭山市産一般ゴミ焼却灰と組成混合物を重量比1対1で混合したもの、秋田県角館市産一般ゴミ焼却灰と組成混合物を重量比1対1で混合したもの、それぞれを10cm×10cmの型枠の中に上記混合物を詰め込み、散水をして組成混合物と水を反応させ固化をさせた後に、2mm以下に破砕し純水に7日間浸した後にろ過し、環境庁告示第59号に基づく溶出試験方法にて溶出試験を行なった。実際の機関については財団法人栃木県環境技術協会にて検査を行なった。
【0027】
その結果が、図3、図4に示す通りであり、本発明の試料による溶出試験結果が河川健康項目環境基準の環境基準である26項目対し、全て基準値以下にすることができ、汚染物質が組成混合物により溶出防止が可能であることを示すと共に、組成混合物の配合量が妥当であることが証明された。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、舗装材その他のブロック体として広く利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明ブロック体を示す斜視図である。
【図2】図2は、混合する対象物と該組成混合物の混合状況を示す模式図である。
【図3】図3は、狭山産ゴミ焼却灰の溶出試験の結果を示す表図である。
【図4】図4は、角館産ゴミ焼却灰の溶出試験の結果を示す表図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)平均粒子径10mm以下の山砂100重量部と、平均粒子径5mm以下の炭5〜15重量部と,ポルトランドセメント60〜65重量部、パーライト4〜10重量部および若干のノニオン系界面活性剤とを混合して成る組成混合物と、(b)一般ゴミ焼却灰とを、(c)1:0.8〜1.2の割合で混合撹拌したものに水分を含ませて固化したことを特徴とする一般ゴミ焼却灰を利用したブロック体。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−281003(P2009−281003A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132301(P2008−132301)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(596180423)日本硝子工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】