説明

一酸化窒素放出ポリマー

本発明は、一酸化窒素(NO)を放出する疎水性ポリマーに結合した炭素系ジアゼニウムジオラートを含む組成物に関する。炭素系ジアゼニウムジオラートポリマーは、その後にニトロソアミンを形成せずに生理的条件下においてNOを自然発生的に放出する。本発明はまた、炭素系ジアゼニウムジオラートポリマーを製造する方法、このようなポリマーを含む組成物、このようなポリマーを使用する方法、およびこのようなポリマー組成物を使用する装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に、一酸化窒素-放出ポリマーに関する。さらに特に、本発明は、炭素-系ジアゼニウムジオラート一酸化窒素-放出ポリマーに関する。本発明はまた、NO-放出炭素-系ジアゼニウムジオラートが表面に共有結合されており、それによってNOの放出がコーティング面に高い生体適合性または他の有用な特性を与える新規クラスのコーティングのための方法を提供する。このクラスのコーティングの1つの可能な好ましい適用は医療用具においてであると思われる。
【0002】
本願は、米国特許法第120条に準拠して、各々全体の内容が参照として本明細書に組み入れられる、2004年2月9日提出の米国仮出願第60/542,277号および2004年2月9日提出の米国仮特許出願第60/542,298号の優先権を主張する。
【0003】
本発明の研究は、合衆国国立衛生研究所(National Institute of Health)の国立心臓・肺・血液研究所(National Heart Lung and Blood Institute)から米国公衆衛生局(U. S. Public Health Service)から付与番号R44 HL062729によって支援された。
【背景技術】
【0004】
一酸化窒素(NO)は、循環器系の恒常性、神経伝達および免疫応答において種々の機能的役割を有する生体機能調節分子である(Moncada et al., 1990: Marletta et al., 1990)。NOはこのような広大な範囲の生理的活動に影響を与えるので、薬物ならびに生理学的および薬学的研究ツールとして使用するために化合物にNOを放出させることが望ましい。治療的および臨床的適用のために生理的条件下においてNOを発生することができる無毒性で非発癌性の化合物がさらに望ましい。しかし、このような化合物は開発が困難であった。
【0005】
NOを放出する低分子(一般に、式量が600未満の分子と記載されている)は周知であり、有機硝酸塩などの一部のクラスが治療に数十年使用されている。しかし、これらは、生体全体に循環して、無数の生理的影響を生じ、恒常性の障害を生じることがあるので、投与することが困難である。多数の治療的適用のためには、さらに局在化したNOの放出が好ましいと思われる。
【0006】
さらに最近、NOドナー分子がポリマーマトリックスの一部である、ポリマーマトリックスに関連している、ポリマーマトリックスに組み込まれているまたはポリマーマトリックスに結合しているポリマー形態のNO-放出化合物が記載されている。ポリマーNOドナーの大部分は、米国特許第5,405,919号、KeeferおよびHrabie;同第5,525,357号、Keeferら;同第5,632,981号、Saavedraら;同第5,676,963、KeeferおよびHrabie;同第5,691,423号、Smithら;同第5,718,892号、KeeferおよびHrabie;同第5,962,520号、SmithおよびRao;同第6,200,558号、Saavedraら;同第6,270,779号、Fitzhughら;米国特許出願公報;公報番号US 2003/0012816 A1号、WestおよびMastersに開示されている窒素-またはN-系ジアゼニウムジオラートである。ジアゼニウムジオラートは、-[N(O)NO]-官能基を含むクラスの化合物であり、100年以上公知である(Traube, 1989)。
【0007】
N-系ジアゼニウムジオラートポリマーは、生理的条件下において自発的で、一般に制御可能なNOの局所的放出という利点を有するが、全てのN-系ジアゼニウムジオラートに関連する大きな欠点は、式1で示すように、分解の結果発癌性のニトロソアミンを形成する可能性があることである(Parzuchowski et al., 2002)。一部のニトロソアミンは極めて発癌性で、ニトロソアミン形成の可能性が、安全性の問題点からN-系ジアゼニウムジオラートクラスのNOドナーを治療薬として考慮することを制限している。

【0008】
S-ニトロソ化合物(米国特許第5,770,645号および同第6,232,434号、Stamlerら)およびC-ニトロソ化合物(米国特許第5,665,077号、Rosen et al;および米国特許第6,359,182号、Stamler ら)を含む他の非-ジアゼニウムジオラート型のポリマーNOドナーが記載されている。S-ニトロソ化合物に関しては、それらの治療的な可能性は、微量のCu(I)イオンおよびおそらくCu(II)イオンの存在下において迅速で予測不可能な分解(NOの放出)を生じることにより制限されている(Dicks et al., 1996; Al-Sa'doni et al., 1997)。さらに、S-ニトロソ化合物は、NOの還元型組織チオールへの直接転移によって分解することがある(Meyer et al., 1994; Liu et al., 1998)。最後に、多数の哺乳類酵素は、S-ニトロソ化合物からのNOの放出を触媒することがある(Jourd" heuil et al, 1999a; Joud" heuil et al., 1999b; Askew et al., 1995; Gordge et al., 1996; Freedman et al., 1995; Zai et al., 1999; Trujillo et al., 1998)。しかし、イオン、酵素およびチオールの組織および血中レベルは各個人の広範囲の変動を受けやすく、NOの放出を被験者ごとに予測不可能にする。NO放出の血液および組織成分への依存性および感受性は、医学におけるニトロソ化合物の治療的可能性を制限している。
【0009】
NOを放出する炭素-またはC-系ジアゼニウムジオラート低分子(低分子は、一般に、式量が600以下の分子と記載されている)へのいくつかの言及が開示されている(米国特許第6,232,336号;同第6,511,991号;同第6,673,338号;Arnoldら2000; Arnoldら2002a; Arnoldら2002b)。C-系ジアゼニウムジオラートは、N-系ジアゼニウムジオラートと異なり、構造的にニトロソアミンを形成することができないと同時に、生理的条件下において自発的にNOを放出する能力を維持しているので、C-系ジアゼニウムジオラートが望ましい。さらに、化合物1モルあたり2モルのNOを放出したNO-放出イミデート、1,4-ベンゾキノンジオキシムから誘導されるメタントリスジアゼニウムジオラートおよびビスジアゼニウムジオラートに関する報告が最近発表されている。(Arnold et al. 2000; Arnold et al. 2002a; Arnold et al. 2002b)。これらの低分子のNO-放出特性は望ましいが、低分子は投与後生体内で局在化することが非常に困難で、生体全体に容易に拡散する傾向があり、NOの全身の副作用を生じる可能性がある。イミデート-およびチオイミデート-由来分子に特有のさらに別の問題点は、イミデートは組織タンパク質と反応して共有結合を形成することがあるので、血液、血漿、細胞または組織との接触に関係する適用においてイミデートのタンパク質結合特性は望ましくないことがあるということである(以下参照)。
【0010】
最近、炭素-またはC-系ジアゼニウムジオラートポリマーが開示されている(米国特許第6,673,338号、Arnold ら,2004)。C-系ジアゼニウムジオラートは、N-系ジアゼニウムジオラートと異なり、構造的にニトロソアミンを形成することができないと同時に、生理的条件下においてNOを自発的に放出する能力を維持するので、C-系ジアゼニウムジオラートは望ましい。Arnoldらは、以下の一般式(I)のイミデートおよびチオイミデートを開示している:

式中、R1は、一態様において、ポリマーである。その発明者らは、イミデート官能基は、通常、タンパク質に結合するおよび/または架橋するために使用されるので、イミデート官能基がポリマーまたはバイポリマー(タンパク質)に分子を結合するために使用される態様も開示している(Sekhar et al., 1991; AhmadiおよびSpeakman, 1978)。しかし、イミデートはタンパク質組織と反応することがあるので、イミデートのタンパク質結合特性は、血液、血漿、細胞または組織との接触に関係する適用において望ましくないと思われる。
【0011】
従って、生理的条件下において自発的に、予測可能で、調節可能な量のNOを放出し、NO放出が金属、チオール、酵素またはNO放出の変動を生ずる可能性のある他の組織因子によって影響されず、ポリマーが分解してニトロソアミンを形成せず、タンパク質に共有結合しないNO-放出ポリマーの必要性が絶えることなく存在する。
【0012】
従って、本発明の目的は、生理的条件下において自発的に局在化した流れのNOを発生することができる、ポリマー骨格に共有結合したC-系ジアゼニウムジオラートを含む組成物を提供することである。本発明のさらに別の目的は、予測可能で、調節可能なNO放出速度を生ずるNO-放出ポリマーを提供することである。本発明のさらに別の目的は、分解してニトロソアミンを形成しないまたはタンパク質に共有結合しないジアゼニウムジオラートポリマーを提供することである。
【0013】
さらに、本発明の目的は、ポリマー結合C-系ジアゼニウムジオラートを合成する方法を提供する。本発明のさらに別の目的は、生物および医学においてC-系ジアゼニウムジオラートポリマーを使用する方法を提供することである。本発明のさらに別の目的および利点は以下の説明から明らかになる。
【発明の開示】
【0014】
発明の簡単な概要
本発明は、ニトロソアミンを形成する可能性なしに、生理的条件下においてNOを自発的に放出するポリマー組成物を提供することによって上記の目的を達成する。本発明は、フェニル-含有ポリマーに共有結合しているC-系ジアゼニウムジオラートからNOを発生するための組成物を提供する。本発明者らは、炭素原子を介してポリマーに-[N(O)NO]-基を付加することによって以下の一般式のようにポリマー骨格に-[N(O)NO]-官能基を導入する別の手段を開発した:
R3-C(R1)x(N2O2R2)y 式1
式中、yは1〜3であってもよく、xは0〜2であってもよく、xプラスyの合計は3に等しく、R1はイミデートまたはチオイミデートでない。R1は、シアノ基などであるが、これに限定されない電子吸引基;-OCH3、-OC2H5および-OSi(CH3)3などであるが、これに限定されないエーテル基;三級アミン;または-SC2H5および-SPh(置換されていてもよい)などであるが、これに限定されないチオエーテルによって表すことができる。R1基はまた、-N(C2H5)2などであるが、これに限定されないアミンであってもよい。R2はカウンターカチオン(countercation)または有機基であり、R3はフェニル基である。フェニル基は、ポリマー骨格の側基であっても(式2に示す)またはポリマー骨格の一部であってもよい(式3に示す)。従来技術を上回るこの技術の上記の利点以外に、式1のR1基の操作は放出されるNOの放出動態および量を変更することができる。放出されるNOの量および動態を変更するためのR1基の変更を以下に記載する。


【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、炭素原子に結合した-[N(O)NO]-官能基を含む新規クラスのポリマー材料を提供する。本発明のC-系ポリマージアゼニウムジオラートは数多くの理由により有用である。例えば、C-系ポリマージアゼニウムジオラートは、強力なニトロソアミン発癌物質を形成する可能性を生じないで、生理的条件下において薬理学的に関連のあるレベルの一酸化窒素を放出する能力により薬剤、調査ツールとしてまたは医療用具の一部として有用である。本発明のC-系ポリマージアゼニウムジオラートは不溶性である。この特性は、1)静止または流動している水溶液へのNOの送達;および2)一酸化窒素を送達後にろ過または分離によって溶液または懸濁液からポリマーを除去することができることを含むが、これらに限定されない数多くの用途および利点をこのクラスの材料に与えている。さらに、材料の不溶性のポリマー性により、本発明の態様をNO-放出医療用具を構成するために使用することができる。
【0016】
式1、2および3において、R1はイミデートまたはチオイミデートによって表されなくてもよい。R1は、シアノ基などであるが、これに限定されない電子吸引基;-OCH3、-OC2H5および-OSi(CH3)3などであるが、これに限定されないエーテル基;三級アミン;または-SC2H5および-SPh(ここで、Phは置換されていてもよい)などであるが、これに限定されないチオエーテルによって表すことができる。R1基はまた、-N(C2H5)2などであるが、これに限定されないアミンであってもよく、好ましい態様において、エナミン以外のアミンである。
【0017】
式1、2および3のR2基は、カウンターカチオンまたは共有結合している保護基であってもよい。R2基がカウンターカチオンである態様において、R2基は、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属;カルシウムおよびマグネシウムなどのIIa族金属;鉄、銅および亜鉛などの遷移金属ならびに銀および金などの他のIb族元素を含むが、これらに限定されない薬学的に許容されるまたは許容されない任意のカウンターカチオンであってもよい。使用することができる薬学的に許容される他のカウンターカチオンには、アンモニウム、コリン、ベンザルコニウムイオン誘導体などであるが、これに限定されない他の四級アミンが挙げられるが、それに限定されるわけではない。当業者によって理解されるように、負に荷電したジアゼニウムジオラート基は等価な正の荷電で均衡されるはずである。従って、式1を参照すると、カウンターカチオン(R2)の原子価数は、ジアゼニウムジオラート基の化学量論数に一致するはずであり、共にyで表される。2つ以上のジアゼニウムジオラートがベンジル炭素に結合しており、R2が1価である態様では、R2は同じ陽イオンであってもまたは異なる陽イオンであってもよい。
【0018】
R2は、置換されていてもよいアリール基およびスルホニル、グリコシル、アシル、アルキルまたはオレフィン基を含むが、これらに限定されないジアゼニウムジオラート官能基のO2-酸素に共有結合している任意の無機または有機基であってもよい。アルキルおよびオレフィン基は直鎖、分岐鎖または置換鎖であってもよい。R2は、メチルもしくはエチルなどのなどの飽和アルキルまたは(アリルもしくはビニルなどの)不飽和アルキルであってもよい。ビニル保護されたジアゼニウムジオラートは、チトクロームP-450による代謝により活性化されることが公知である。R2は、2-ブロモエチル、2-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシエチルまたはS-アセチル-2-メルカプトエチルなどであるが、これに限定されない官能基化(functionalized)アルキルであってもよい。後者の例はエステラーゼ感受性の保護基である。前者の例は、化学的官能基ハンドルを提供する。このような方法は、ペプチドをジアゼニウムジオラート分子に結合するための使用が成功している。メトキシメチル保護基を付加することによって加水分解を遅くすることができる。R2は、2,4-ジニトロフェニルなどのアリール基であってもよい。この種類の保護基は、グルタチオンおよび他のチオールなどの求核試薬に感受性である。いくつかの異なる保護基を使用することができるおよび/または保護基付加の化学量論は、全てのジアゼニウムジオラート部分が同じ保護基で保護されないまたは全てのジアゼニウムジオラート基が保護されないように調節することができることが当業者に明らかである。異なる保護基を使用することによってまたはジアゼニウムジオラートに対する保護基の化学量論比を変更することによって、実施者はNOの放出を望ましい速度に工作することができる。
【0019】
R3はフェニル基である。フェニル基は、(式2に示すように)ポリマー骨格の側基であってもまたは(式3に示すように)ポリマー骨格の一部であってもよい。非-ポリマー態様では、R3は置換されていてもよいフェニル基であってもよい。
【0020】
多種多様のポリマーのいずれかを本発明に関連して使用することができる。選択されるポリマーが生物学的に許容されることだけが必要である。本発明に使用するのに好適で、一般式において「ポリマー」、「ポリマー1」または「ポリマー2」(集合的に「ポリマー」)として使用されるポリマーの例には:ポリスチレン;ポリ(α-メチルスチレン);ポリ(4-メチルスチレン);ポリビニルトルエン;ポリビニルステアレート;ポリビニルピロリドン;ポリ(4-ビニルピリジン);ポリ(4-ビニルフェノール);ポリ(1-ビニルナフタレン);ポリ(2-ビニルナフタレン);ポリ(ビニルメチルケトン);ポリ(フッ化ビニリデン);ポリ(ビニルベンジルクロライド);ポリビニルアルコール;ポリ(酢酸ビニル);ポリ(4-ビニルビフェニル);ポリ(9-ビニルカルバゾール);ポリ(2-ビニルピリジン);ポリ(4-ビニルピリジン);ポリブタジエン;ポリブテン;ポリ(ブチルアクリレート);ポリ(1,4-ブチレンアジパート);ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート);ポリ(エチレンテレフタレート);ポリ(エチレンスクシネート);ポリ(ブチルメタクリレート);ポリ(エチレンオキシド);ポリクロロプレン;ポリエチレン;ポリテトラフルオロエチレン;ポリ塩化ビニル;ポリプロピレン;ポリジメチルシロキサン;ポリアクリロニトリル;ポリアニリン;ポリスルホン;ポリエチレングリコール;ポリプロピレングリコール;ポリアクリル酸;ポリアリルアミン;ポリ(ベンジルメタクリレート);ポリエチレンイミンなどの誘導体化ポリオレフィン;ポリ(エチルメタクリレート);ポリイソブチレン;ポリ(イソブチルメタクリレート);ポリイソプレン;ポリ(DL-ラクチド);ポリ(メチルメタクリレート);ポリピロール;ポリ(カーボネートウレタン);ポリ[ジ(エチレングリコール)アジパート];ポリエピクロロヒドリン;フェノール樹脂(ノボラックおよびレゾール);ポリ(エチルアクリレート)ならびにグラフトおよび共重合が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0021】
ポリマーは、アクリロニトリルブタジエンスチレンターポリマー;アクリロニトリル-塩素化ポリエチレン-スチレンターポリマー;アクリルスチレンアクリロニトリルターポリマー;スチレンアクリロニトリルコポリマー;オレフィン修飾スチレンアクリロニトリルコポリマー;およびスチレンブタジエンコポリマーを含むが、これらに限定されないスチレン樹脂によって表すこともできる。
【0022】
さらに、ポリマーは;ポリアクリルアミド;ポリ[4,4'-メチレンビス(フェニルイソシアネート)-アルト-1,4-ブタンジオール/ジ(プロピレングリコール)/ポリカプロラクトン];ポリ[4,4'-メチレンビス(フェニルイソシアネート)-アルト-1,4-ブタンジオール/ポリ(ブチレンアジパート)];ポリ[4,4'-メチレンビス(フェニルイソチオシアネート)-アルト-1,4-ブタンジオール/ポリ(エチレングリコール-コ-プロピレングリコール)/ポリカーボネート];ポリ[4,4'-メチレンビス(フェニルイソチオシアネート)-アルト-1,4-ブタンジオール/ポリテトラヒドロフラン];芳香族ポリアミドのテレフタル酸およびイソフタル酸誘導体(例えば、それぞれ、Nylon6TおよびNylon6I);ポリ(イミノ-1,4-フェニレンイミノカルボニル-1,4-フェニレンカルボニル);ポリ(m-フェニレンイソフタルアミド);ポリ(p-ベンズアミド);ポリ(トリメチルヘキサメチレンテレフタレータミド(terephthalatamide));ポリ-m-キシレンアジパミド;ポリ(メタ-フェニレンイソフタルアミド)(例えば、Nomex);ならびにそれらのコポリマーおよび組み合わせ等を含むが、これらに限定されないポリアミドによって表すこともできる。
【0023】
または、ポリマーは:ポリエステル;ポリアリーレート(polyarylate);ポリカーボネート;ポリエーテルイミド;ポリアミド(例えば、Kapton) ;ポリケトン(ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン等);ならびにこれらのコポリマーおよび組み合わせ等を含むが、これらに限定されないポリマーによって表すこともできる。
【0024】
ポリマーは、ポリ乳酸;ポリグリコール酸;ポリ(ε-カプロラクトン);コポリマー;ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、抗体および核酸などのバイオポリマー、星型デンドリマー(starburst dendrimer)ならびにそれらのコポリマーおよびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない生物分解性ポリマーによって表すことができる。
【0025】
ポリマーはまた、シランならびにシロキサン単層および多層によって表すことができる。
【0026】
フェニル側基の態様
ポリマーのフェニル環側基は置換基を有してもよい。置換フェニルは、化合物のNO-放出特性を妨害せず、ポリマー骨格への共有結合を維持する任意の部分で置換されていてもよい。適当な部分には、脂肪族、芳香族および非芳香族環状基が挙げられるが、それに限定されるわけではない。脂肪族部分は、炭素および水素を含むが、ハロゲン、窒素、酸素、硫黄またはリンも含有してもよい。芳香族環状基は少なくとも1つの芳香環を含む。非芳香族環状基は、芳香環を含有しない環構造を含む。フェニル環は多環系に組み込まれてもよく、その例には、アクリジン、アントラセン、ベンズアザピン(benzazapine)、ベンゾジオキセピン(benzodioxepin)、ベンゾチアジアザピン(benzothiadiazapine)、カルバゾール、シノリン(cinnoline)、フルオレセイン、イソキノリン、ナフタレン、フェナントレン、フェナントラジン(phenanthradine)、フェナジン、フタラジン(phthaladine)、キノリン、キノキサリンおよび多環式芳香族炭化水素のような他のものが挙げられるが、それに限定されるわけではない。フェニル環に置換されていてもよい追加の部分には、モノ-またはジ-置換アミノ、非置換アミノ、アンモニウム、アルコキシ、アセトキシ、アリールオキシ(aryloxy)、アセトアミド、アルデヒド、ベンジル、シアノ、ニトロ、チオ、スルホン基、ビニル、カルボキシル、ニトロソ、トリハロシラン(trihalosilane)、トリアルキルシラン(trialkylsilane)、トリアルキルシロキサン(trialkylsiloxane)、ジアゼニウムジオラート、ヒドロキシル、ハロゲン、トリハロメチル(trihalomethyl)、ケトン、ベンジルおよびアルキルチオ(alkylthio)が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0027】
本発明によるポリマーは、市販のクロロメチル化ポリスチレンから誘導してもよい。または、クロロメチル化ポリスチレンは、ルイス酸触媒の存在下でクロロメチルアルキルエーテルを使用する(Merrifield, 1963);塩化リチウムの存在下で酢酸コバルト(III)を使用してポリ(4-メチルスチレン)を酸化する(ShengおよびStover, 1997);または相間移動触媒の存在下でp-メチルスチレンを次亜塩素酸ナトリウム溶液で処理する(MohanrajiおよびFord, 1986;Le Carreら、2000)を含むが、これらに限定されない数多くの方法で合成してもよい。
【0028】
本発明の好ましい一態様において、スキーム1に概略するように、ポリマーは式2を使用して2-ステップ手法で合成することができる。第1の段階(1)において、当技術分野において公知の方法を使用してクロロメチル化ポリスチレンを処理して、-Cl原子を求核置換基で置換する。求核置換基は、ジアゼニウムジオラート官能基を導入するためにベンジル炭素プロトンを活性化することが望ましい。本発明の好ましい態様において、クロロメチル化ポリスチレンの-Cl原子を置換する原子は電気陰性ヘテロ原子である。-Cl原子を置換する求核基は電子吸引性であることが好ましい。置換基はシアノ基であることが最も好ましい。別の好ましい置換基は、-OR、-NR1R2および-SRを含む基から選択することができる。-OR基は、-OCH3、-OC2H5および-OSi(CH3)3であってもよいが、これらに限定されない。置換基は、-SC2H5および-SPh(式中、Ph基は置換されていてもよい)などであるが、これに限定されないチオール基であってもよい。置換基は、-N(C2H5)2などであるが、これに限定されないアミンであってもよい。
【0029】
スキーム1の第2の段階(2)は、NOガスの存在下においてポリマーを塩基で処理することを必要とする。反応の溶媒は、塩基の存在下においてNOと反応すべきではない(例えば、アセトニトリルまたはエタノール)。選択される溶媒はポリスチレンを膨潤するはずであることが好ましい。好適な溶媒には、THFおよびDMFが挙げられるが、それに限定されるわけではない。好適な塩基には、ナトリウムメトキシドおよびナトリウムトリメチルシラノレートが挙げられるが、それに限定されるわけではない。本発明の方法によると、これらの手法に従いクロロメチル化ポリスチレンから誘導され得られる樹脂は、水性媒体中で自発的にNOを放出する多数の-[N(O)NO]-官能基を含む。一般式およびスキーム1において言及されるR2置換基は、上記の薬学的に許容されるカウンターカチオン、加水分解可能な基または酵素的に活性化される加水分解可能な基を表す。

【0030】
シラン/シロキサンポリマーを使用する態様
本発明の別の好ましい態様において、ポリマーがシロキサンで表される式2を使用すると、NO-放出シロキサンポリマーは、まず材料にシラン/シロキサンをコーティングし、次いでNO-放出物質に改良するスキーム1に概略するものと同様の手法で合成することができる。表面調製およびシラン/シロキサン沈着の一般的な説明を以下に記載する。
【0031】
表面の調整
本発明の一態様である、基板表面に共有結合しているNO-放出コーティングを製造する方法のためには、ヒドロキシル側基を提示する表面を有することが重要である。当業者に公知であるように、多数の表面は、表面のヒドロキシル側基を含むように容易に改良する(酸化する)ことができる。このような表面処理には、濃NaOHもしくはKOHへの浸漬または濃過酸化水素溶液への接触が挙げられるが、それに限定されるわけではない(Srinivasan, 1988;Endo, 1995;Yoshida, 1999;Fitzhugh,米国特許第6,270,779号;Kern, 1995)。実施例のセクションは、表面のヒドロキシル基を製造する具体的な方法を記載している。
【0032】
表面が適当な化学的形態となったら、シロキサンコーティングを沈着することができる。密集した水平方向の単層を必要とする態様のためには、トリクロロシロキサン誘導体が好ましく、厚い垂直方向のコーティングのためには、アルコキシシロキサン誘導体が好ましい。各態様は具体的な化学的方法を必要とする。
【0033】
単層の形成
C-系ジアゼニウムジオラートコーティングが好ましい本発明の態様において、市販の4-シアノメチルフェニルトリエトキシシラン、4-クロロメチルフェニルトリクロロシランまたはベンジル炭素が、ベンジル炭素原子のジアゼニウムジオラート官能基の置換を可能にする任意の基で置換されていてもよいメチルフェニル側基を含む任意のトリクロロシランの沈着が好ましい。シアノ-置換ベンジル炭素が望ましい態様のためには、市販の4-シアノメチルフェニルトリエトキシシランを表面に沈着することが好ましい。他の全ての態様のためには、市販の4-クロロメチルフェニルトリクロロシランを表面に沈着し、その後の段階において、以下の「求核試薬の置換」のセクションに記載する適当な求核試薬を使用してクロロ原子を望ましい置換基と置換することが好ましい。この方法は、トリクロロシロキサン誘導体と望ましいベンジル炭素置換基の複雑であると思われる合成の必要性を排除する。同様の条件下においてトリアルコキシシラン(trialkoxysilane)を使用して単層を製造することができることは注目されるべきであるが(Bierbaum, 1995)、しかし、ごく少量の表面の水であるものに対するトリクロロシロキサン誘導体の高い反応性がトリクロロ誘導体を単層適用に好ましいものにしている。
【0034】
典型的には、トリクロロシランは、不活性雰囲気下においてトルエンまたはヘキサデカンなどの炭化水素系溶媒の0.1〜3%トリクロロシラン溶液を使用して、無水条件を使用して沈着される。トリクロロシラン溶液は、浸漬、蒸着、スプレーコーティング、フローコーティング、ブラッシングおよび当業者に公知の他の方法を含むが、これらに限定されない種々の方法によって、無水条件下および不活性雰囲気下において望ましい表面に適用することができる。重合は、通常、1〜24時間で完了する。次いで、物質を炭化水素系溶媒ですすぎ、110℃において20〜60分加熱硬化して、以下に記載するように表面のヒドロキシルと共有結合を形成し、さらに別の用途のために調製する。任意の特定の理論に結びつけるわけではないが、単層は以下のように形成される。トリクロロシラン誘導体の重合に必要な水は、ほとんどの基板の表面に見られる本質的な水によって提供される。この固有の表面の水は重合反応を誘導するために利用可能な唯一の水であるので、シラン誘導体の重合は物質の表面でのみ起こりうる。従って、水の表面への局在化が重合を表面の単層に限定しており、固体表面に接触しているトリクロロシラン分子だけが加水分解されて、密に充填された単層を形成する。溶媒の厳密な無水条件が観察されない場合などの大量すぎる水により、おそらく基板表面に沈着する機会を得る前にシランは迅速に重合する(Silberzan, 1991)。比較すると、95%アルコール溶液におけるアルコキシシランの加水分解により、コーティング対象の基板が溶液に導入される前にシランのかなりのオリゴマー化が生じる。数多くの報告がこのスキームを裏付けている(Ulman, 1996;Sagiv, 1980;Wasserman, 1989;Bierbaum, 1995)。
【0035】
トリクロロシラン誘導体の多数回の適用を使用してこの単層沈着過程を反復し、多数の以降の単層を構築することができることは注目すべきであり、当業者に公知である(Tillman, 1989)。
【0036】
三次元ネットワークの形成
垂直方向に多数重合された厚いC-系ジアゼニウムジオラートコーティングが好ましい本発明の態様において、アルコキシシランクラスのシロキサンが好ましい。シアノメチルフェニルアルコキシシラン誘導体、クロロメチルフェニルアルコキシシラン誘導体またはマトリックス内にクロロメチルフェニルまたはシアノメチルフェニル基を永久的に捕獲することができる任意のアルコキシシラン誘導体などであるが、これに限定されない適当なアルコキシシランが好ましい。一般に、95%エタノール5%水溶液を酢酸でpH 5±0.5に調節し、適当なアルコキシシランを1〜10%(v/v)濃度まで添加する。次の数分間のうちに、アルコキシシラン誘導体は加水分解を受けて、シラノールを形成し、縮合してオリゴマーを形成する。この時点において、基板を浸漬するまたは当業者に公知の方法によりコーティングすることができる。任意の特定の理論に結びつけるわけではないが、シラノールは縮合して長いオリゴマーを形成し、基板表面のヒドロキシルと水素結合し、表面の「毛」のように手を伸ばすことができる。シロキサンは継続して重合し、垂直方向のマトリックスを形成する。基板をアルコキシシラン誘導体に接触させる期間は、一般に、形成されるコーティングの厚さに比例する。望ましい時点において、コーティング材料をエタノールですすぎ、望ましい場合には110℃において20〜60分間加熱硬化し、さらなる用途のために調製する。
【0037】
適当なメチルフェニルシロキサン誘導体は、混合しないでまたは他のシロキサンと任意の分画で使用して、コーティングおよび他の適合可能なポリマーを形成することができる。
【0038】
望ましいシロキサンコーティングが沈着されたら、コーティングと酸化された基板表面との間の共有結合の形成を達成することができる。これは、典型的にであって、主にではないが、110℃において20〜60分の環式加熱の適用によって実施される。任意の特定の理論に結びつけるわけではないが、乾式加熱の適用に典型的な条件下において、基板のヒドロキシル化表面に水素結合しているシロキサンコーティングのヒドロキシル部分は脱水反応によって反応して、強力なケイ素-酸素共有結合を形成する。
【0039】
求核試薬との置換
シアノメチルフェニルシロキサンをコーティング段階に使用する場合には、シアノ基はすぐれた活性化基であるので、ベンジル炭素への求核試薬の付加は必要ない。シアノメチルフェニルシロキサンを使用することにより、実施者はジアゼニウムジオラート化段階に直接進行することができる。クロロメチルフェニルシロキサンまたは他のクロロメチルフェニル誘導体を使用する場合または実施者が、求核試薬を変更し、それによってジアゼニウムジオラート基の特徴を変更し、従ってコーティングからのNOの放出速度を変更することを望む場合には、クロロ基を、上記のジアゼニウムジオラート基の導入を可能にする求核試薬と交換しなければならない。この段階は以下のように実施される:コーティング後の基板を、触媒量のヨウ化カリウムおよびすぐれた求核試薬を含有するDMF溶液に浸す。溶液を80℃までの温度で最長24時間加熱する。この間に置換反応が生じる。次いで、基板を溶媒から取り出し、新鮮なDMFで洗浄し、窒素気流で乾燥させるまたは空気乾燥させる。
【0040】
ジアゼニウムジオラート段階
適当な求核試薬が適当なシロキサン誘導体のベンジル炭素に付加されたら、コーティング後の材料を、THF、DMFまたはMeOHなどの溶媒を含有するParr社製の圧力容器に入れる。トリメチルシラノール酸ナトリウムなどの立体障害のある塩基を添加する。シロキサンネットワークのケイ素-酸素結合は、水酸化物およびアルコキシドなどの攻撃的な求核試薬に感受性であるので、塩基の選択は重要である。不活性ガスで容器から大気を除去し、純粋なNOガス雰囲気に暴露する前に圧力をチェックする。1〜3日後、コーティングした材料を取り出し、洗浄し、空気乾燥してから、アルゴン雰囲気下で4℃において保存する。
【0041】
フェニル基を含むポリマー骨格の態様
上記の種々の例に記載されているポリマーNO放出樹脂は、ポリマー骨格の-[N(O)NO]-官能側基を有する。本発明はまた、ポリマー骨格に見られる任意のフェニル環を修飾する方法も提供する。従って、求核試薬を導入して式1に示す分子配列を得るための他の手段も本発明の範囲内であると考えられる。
【0042】
式3を考慮すると、ポリマー1およびポリマー2は互いに等価であってもまたは異なってもよく、ポリブチレンテレフタレート;ポリトリメチレンテレフタレート;およびポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートを挙げることができるが、それに限定されるわけではない。また、アラアミド(テレフタル酸とジアミンの反応から合成されるナイロンファミリーのクラスのポリマー)もポリマー1およびポリマー2で表すことができる。このようなアラミドの例には、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)およびポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)が挙げられるが、それに限定されるわけではない。上記の本発明の他の態様と同様に、求核置換は、ジアゼニウムジオラート官能基を導入するためにベンジル炭素プロトンを活性化することが望ましい。
【0043】
好ましい態様において、クロロメチル化ポリスチレンの-Cl原子と置換する原子は電気陰性ヘテロ原子である。-Cl原子と置換する求核基は電子吸引性であることが好ましい。R1の好ましい置換基は、シアノ基;-OCH3、-OC2H5および-OSi(CH3)3などであるが、これに限定されないエーテル基;三級アミン;または-SC2H5および-SPh(ここで、Phは置換されていてもよい)などであるが、これに限定されないチオエーテルによって表すことができる。R1基はまた、-N(C2H5)2などであるが、これに限定されないアミンであってもよい。
【0044】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は、式3のポリマー1およびポリマー2がエチレン-テレフタレートの反復構造を表す本発明の例示的な態様において使用される。テレフタル酸とエチレングリコールなどのジオールの縮合はポリエステルを生じる。ポリエステルの他の例はジオールを変更することによって製造することができる。このようなポリエステルは、4段階過程においてNO-放出材料に変換することができる。
【0045】
例としてであって、限定するものではないが、スキーム2に示すように、PETのポリマーに含まれる芳香環は、ホルムアルデヒドおよび酢酸で処理して、ベンジルアルコールを製造することができる(Yang, 2000)。塩化トシルによる処理は、ポリマーに効果的な離脱基を導入する。すぐれた求核試薬によるさらなる処理はトシレートを置換して、-[N(O)NO]-官能基の導入に必要な構造を提供する。従って、本発明の教示内容により、炭素-系ジアゼニウムジオラートに変換するために必要な化学構造を含むように修飾することができる芳香族フェニル基を含む多種多様のポリマーが存在する可能性があることが当業者に明らかになるはずである。

【0046】
NOの放出を制御するための一般的な化学および方法
任意の1つの理論に制約されるわけではないが、ベンジル構造(メチルフェニル基)の本発明にとっての重要性は3倍である。第一に、ベンジル炭素は比較的酸性のプロトンを有し、求核試薬の選択は、塩基がプロトンを容易に引きぬくことができるように、ベンジルプロトンの酸性度を増加しなければならない。塩基の非存在下においてベンジル化合物をNOガスに接触させても、ジアゼニウムジオラート官能基を生じるとは公知ではない。第二に、芳香環の共鳴は、塩基によるプロトンの引き抜きによって形成されるカルバニオンを安定化する。安定化されたカルバニオンはカルバニオンとNOの反応を可能にし、炭素中心ラジカルおよびニトロキシルアニオン(NO-)を生じる。炭素中心ラジカルとNOまたはNOダイマーとのさらなる反応はジアゼニウムジオラート官能基を生じる。アニオン性ジアゼニウムジオラート官能基は最後のベンジルプロトンの酸性度を増強し、追加のジアゼニウムジオラート基の炭素への付加を可能にする。この方法では、最高3つのジアゼニウムジオラート官能基がベンジル炭素を介してポリマーに導入される。第三に、芳香環における共鳴電子の存在は、水性媒体における-[N(O)NO]-基の自発的な分解の促進を助ける。他のビスジアゼニウムジオラート、すなわちメチレンビスジアゼニウムジオラート[H2C(N2O2Na)2]は、分解過程に関与する電子の共鳴力を欠損しており、従って溶液中で顕著な安定性を示す(NOを放出することができない)(Traube, 1898)。
【0047】
生理的条件下においてニトロソアミン発癌物質を形成しないで、NOを放出する利点以外に、いくつかの種類の操作を使用して、これらのポリマー材料のNO放出程度および速度を工作することができる。図1および2は、メチルポリスチレンに結合している2つの異なるC-系NO放出ヘッド基のNO放出プロファイルを示す。NO-放出ヘッド基の構造的な差は、R1置換基を生じる求核試薬を変更することによって生じた。図1の放出プロファイルはシアノ-修飾(R1)ベンジル炭素の結果であり、図2はエトキシ-修飾(R1)ベンジル炭素を示す。図の例は、シアノ-修飾ポリマーは迅速な放出プロファイルを示すが、エトキシ-修飾ポリマーは強力ではないが、長期のNO放出を示すことを示している。NO放出プロファイルに対するR1の操作の結果のさらにいくつかの例を実施例に記載する。隣接するポリマーが2つ以上の種類の求核置換基を含むことがあることは当業者に明らかであるはずである。スキーム3に示すように、ジビニルベンゼンで架橋したクロロメチル化ポリスチレンを2つの異なる求核試薬、R1aおよびR1bで修飾して、2つの異なる種類のNO-ドナー部分を生じることができる。R1を操作することによりNOの放出速度を制御することができることによって、マクロスケールによるポリマーからのNO放出を正確に制御することができる。

【0048】
マクロスケールによるNOの望ましい放出量および速度に達する別の好ましい方法は、個別に合成した2つ以上のポリマーをブレンドして、ポリマーからの望ましいNO放出速度を達成することである。この方法は、望ましい放出速度を達成するための合成化学の化学量論的な制御の必要性がないので、1つのポリマーのNO-放出ヘッド基におけるR1の操作を上回る利点を有する。しかし、この方法はミクロ-およびナノ-スケール適用に容易に応じないことがある。
【0049】
ポリマーからのNO放出速度および程度に影響を与える追加の方法は、1つは、特に、ポリスチレン-系ポリマーと関連があるが、ポリマーの架橋程度を変更することである。一般に、架橋程度が低いと多孔性の多いポリマー構造が提供される。これは求核置換およびジアゼニウムジオラート化の程度を変更しないが、活性なNO-放出部位は水性溶媒に接近しやすいので、ポリマーからのより迅速で、程度の大きいNO放出を提供する。ポリマーの架橋を増加するとポリマーの多孔性は減少し、水性溶媒の接近を阻止する働きをする。架橋程度が高いポリマーは長期間にわたってNOを放出する(例えば、米国特許出願公報番号第:US 2003/0077243 A1号参照)。従って、ポリマーの架橋程度によって-[N(O)NO]-官能基への水溶液の接近を制御することによって種々のNO-放出速度を得ることができる。
【0050】
本発明のC-系ジアゼニウムジオラートポリマーは、合成時間および発生されるNO量に関しても従来技術を上回る改善となる。例えば、米国特許第5,405,919号の教示内容によると、ポリアミンをクロロメチル化ポリスチレンに結合し、その後アミノポリスチレンのアセトニトリルスラリーをNOに接触させて、N-系ジアゼニウムジオラートを製造する。しかし、このようなN-系ジアゼニウムジオラートは合成に1週間を要し、生理的条件下において発生されるNOレベルは非常に低く、多数の適用に有用でない。本発明の方法は、樹脂を膨潤するのに好適な溶媒および求核置換反応を促進するための触媒としてのヨウ化カリウムの添加を使用し、米国特許第5,405,919号に開示されているものと比較したとき、反応時間(2日対8日)およびNO-放出レベル(ppm NO対超低レベル)に関して大きな改善である。
【0051】
NOを放出するポリマーは、特定の標的部位に局所的なNOの流動を提供するために望ましい。NOはインビボにおいて局在化されても、細胞、組織および臓器のエクスビボ適用にされても、またはインビトロにおいて試薬として使用されてもよい。NOを培養中の細胞に適用する適用において、ポリマー材料の使用は、ポリマー材料がサイズおよび/または密度により細胞懸濁液から容易に分離されるという点において別個の利点を提供する。
【0052】
ポリマー形態のジアゼニウムジオラート一酸化窒素ドナーは一酸化窒素の局所的な送達を提供するために使用することができるので、従って、ステント、人工器官、インプラントおよび種々の他の医療用具などの用具に有用である。ポリマー材料はインビトロおよびエクスビボにおける生物医学的適用にも使用することができる。
【0053】
医療用具のためのコーティングにおける本発明の用途
本発明は、NO-放出炭素-系ジアゼニウムジオラートを表面に共有結合することができ、それによってNOの放出がコーティング表面に高い生体適合性または他の有用な特性を与える新規クラスのコーティング方法を提供する。NOが治療用であるためには、NOが関心対象の部位に送達される/関心対象の部位において発生されることが最も好ましい。本明細書に記載するポリマーは、関心対象の望ましい領域において時間的および空間的にNOを発生する可能性を有する。従って、NO-放出ポリマーを含む医療用具は、低血圧などの任意の有害な全身作用を生じないで、NOの局所的な流動を提供することができる。NOの有用な生理学的特性は、望ましい適用部位に直接標的化することができる。本発明のNO-放出ポリマーの構造的および物理的特徴は、生物的な障害の治療に好適であるように操作することができる。ポリマーは、動脈ステント、人工血管、パッチまたはインプラントなどの用具の形態を取ることができる。NO-放出ポリマーは、摂取用にマイクロカプセル化または腸溶コーティング化することもできる。また、本発明のNO-放出ポリマーは、当業者によって実施される共重合、沈殿または沈着によって他のポリマー構造物に組み込むことができる。
【0054】
当業者が理解していると思われるように、本発明の例示的な態様は、生理学的な障害に応じて、多種多様の適用における利用性を見出している。このクラスのコーティングの可能な好ましい適用は、表面が、チタン、Ti6Al4Vおよびニチノールを含むチタンの合金、ニオブ、モリブデン、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、金、銀、白金、バナジウム、全ての合金およびそれらの組み合わせ、手術用を含む全ての種類のステンレス鋼ならびに表面酸化物基を形成することができる任意の金属を含む金属;ガラス、溶融石英ガラス、96%石英ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス、ソーダ石灰ガラスを含むが、これらに限定されないケイ酸塩;シラスティック、ヒドロキシル化ポリオレフィンまたはバイポリマーを含む表面ヒドロキシル側基を有する任意のプラスチックもしくはポリマー材料を含むが、これらに限定されないポリマー含むことができるが、これに限定されない医療用具においてであると思われる。
【0055】
血管ステント
毎年米国において、冠動脈硬化、心臓に向かう動脈の閉塞または狭窄に罹患している約700,000年の患者が、心臓への正常な循環を回復する手段として経皮経管的血管形成術(PTCA)を受ける。この手技は、冠動脈の狭窄領域においてバルーンカテーテルを膨張し、径を拡大し、罹患領域への血流を増加することに関係する。しかし、当時の約30〜50%において、動脈閉塞は再狭窄と呼ばれる過程に戻る。PTCA後の予防策は、動脈内の支持として作用する血管ステントを配置することである。この処置にもかかわらず、再狭窄は、ステントを導入された患者の15〜25%において生じ、追加の治療が必要になる。
【0056】
現在の最先端のステントは、再狭窄を阻止する手段としてシロリムスなどの抗-増殖剤を流出するように設計されている。しかし、これらの薬剤は抗血栓薬ではなく、患者は生死にかかわる血液凝固を形成している。さらに、抗-増殖剤は、血管形成後の治癒過程に有用である血管内皮細胞の増殖を阻止する。抗-増殖剤-流出ステントは、薬剤-流出ステントの開発の根本となる基礎的な問題を例示している。この疾病の効果的な治療として傑出している単一の薬剤は存在しない。
【0057】
再狭窄を治療する別の方法は、血小板凝集を阻止し、平滑筋細胞の増殖を防止し、損傷した血管の再-内皮形成およびステント表面の内皮形成を促進する天然産物を組み込むことである。一酸化窒素(NO)はこれらの生理学的機能を実施することができる。血管ステントに本発明をコーティングして、PTCAステント配置後の治癒過程を加速し、現在の最先端の薬剤流出ステントより患者の成果を改善すると思われる治療量のNOを流出することができる。
【0058】
例としてであって、限定するものではないが、本発明のNO-放出ポリマーを含むまたはそれをコーティングした心血管ステントは、血小板の接着に抵抗し、血小板凝集を防止し、血管平滑筋細胞の増殖を阻止し(Mooradianら、1995)、血管内皮細胞の増殖を刺激する能力を有する。現在の最先端の抗-増殖剤流出ステントは血液凝固形成を阻止しない。これらのステントを植え込まれた患者は、3ヶ月の抗-凝固剤療法を維持しなければならない。最近の報告は、この種類のステントを植え込まれた数ダースの患者において血液凝固が検出されることを開示している(Neergaard、2003)。当業者は、抗-増殖剤およびNOを共に同時に放出するコーティングを利用することができる。
【0059】
NOによる内皮細胞(EC)の増殖は、血管新生の第1段階であるので、非常に興味深い(Ausprunk、1977)。NOがEC増殖を刺激することができる場合には、本発明のNO-放出コーティングで改良された血管ステントまたは移植片は、内皮組織による用具の過成長を促進することができると思われる。この方法では、血液と用具の接触は、NO-放出コーティングから天然の細胞層に移動する。最近、ある研究グループは、人工血管上でのEC保持を増強する試みにおいて、内皮一酸化窒素シンターゼ(eNOS)を過剰発現するように内皮細胞を遺伝子的に工作している(Kader、2000)。
【0060】
他の血管用具
循環器系におけるNOの種々の有用な影響を本発明を使用してさらに生かすことができる。抗-血小板作用は、人工血管へのコーティングとして適用される場合または本発明のポリマーを人工血管に形成する場合に有用であることを当業者は理解している。移植片に内皮細胞が過形成することができるまで、NO-放出ポリマーは、血液凝固事象を生じないようにする程度に十分なNOを十分な期間にわたって発生する。
【0061】
本発明のポリマーは、通常「人工心肺装置」として公知の人工肺(ECMO)サーキットに使用することができることも本発明者らは理解している。この手技の主要な合併症は、体外循環路を形成するために使用される管系の内側表面への接着による血小板の損失である。ポリマーマトリックスに植え込まれたN-系ジアゼニウムジオラート低分子から製造される抗血栓性表面は、ウサギECMOモデルにおいて血小板の損失を低下した(Annichら、2000)。しかし、この検討のポリマーは、N-系ジアゼニウムジオラートポリマーに関連する欠点(すなわち、発癌物質である可能性)を有する。本発明のポリマーは、N-系ジアゼニウムジオラートに関連する毒性の可能性がない。
【0062】
本発明の別の有用な適用は、血液透析を受けている患者用である。血液透析に使用されるシャント、体外管系および透析膜への本発明の適用は、表面への血小板の接着を減少して、患者の循環血小板を増加するために使用することができる。
【0063】
本発明の追加の適用には、経皮的針の開通性の増加、留置センサーおよび手術器具の抗血栓性の増加、新規血管形成の工作、高血圧の治療および患者に有用であると思われる治療レベルのNOを局在化する他の適用が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0064】
留置カテーテル
入院に関連する固有の問題は、カテーテル、シャントおよびプローブなどの医療用具の挿入に直接関連する感染症および死亡例の数において発現されている。血管内カテーテルにより獲得される感染症により毎年最高20,000例の死亡が生じていることが推定される。医療用具の挿入は、好都合な皮膚部生物にとって生体内への直接的なアクセスを提供している。これらの細菌は挿入される用具に接着して、コロニー形成し、その過程において、バイオフィルムとして公知の抗生物質耐性マトリックスを形成する。バイオフィルムが成長すると、浮遊細胞が自由になり、患者内にさらに感染を拡大する。感染を予防するためには、挿入される医療用具はバイオフィルムの形成を予防しなければならない。これは、細菌が医療用具にコロニー形成する前に細菌を死滅することによって実施してもまたはバイオフィルムが形成しないように、用具への細菌の接着を防止してもよい。
【0065】
NOは、血小板が種々の表面に接着するのを防止することができ、NOが抗微生物特性を有することは周知である。NOは細菌の接着も阻止することができることを最近の報告は実証している(Nabloら、2001)。ポリアミノシロキサンをガラススライドに沈着させ、NOドナーに誘導体化する。P. エルジノーサ(P. aeruginosa)は、NO-放出ゾル-ゲルによって用量-依存的な方法で阻害された。細菌の接着は、NOを放出するように設計されている表面によって影響されうることをこの早期の報告は強力に示唆している。従って、本発明のNO-放出ポリマーをコーティングしたカテーテルはバイオフィルム形成を阻害し、患者のヘルスケアを改善することができる。
【0066】
コンタクトレンズケース
コンタクトレンズに関連する眼の感染症は毎年何百万人に影響している。レンズケアの標準的なガイドラインは眼の感染症を最小にすることができるが、レンズ装着者の約50%しか適当なガイドラインに従っていないことが示されている。推奨されているガイドラインに従っているコンタクトレンズ装着者においても、レンズに関連する感染症は発生する。通常の使用中および保管手順中に、微生物はコンタクトレンズに接着する。毎日のレンズ洗浄はこれらの微生物のほとんどを除去する;しかし、微生物はレンズにバイオフィルムを確立することができる。現在利用可能なシステムによる消毒および洗浄にもかかわらず、このようなバイオフィルムは満足に除去されないことが多い。多くの場合において、微生物源はレンズケースである(McLaughlinら、1998)。無症状のレンズ装着者にとっても、レンズケースは細菌のバイオフィルムを含み、消毒および洗浄液の使用にもかかわらず、この起源がレンズの重要な汚染経路として働く可能性が高い(McLaughlinら、1998)。また、病原体によって形成されるバイオフィルムは、抗生物質に対する耐性および宿主の免疫応答ならびに留置医療用具上で形成する能力により臨床的重要性が増加している。
【0067】
医療用具を製造する際の本発明の用途
医療用具をコーティングする能力以外に、本発明はまた、NO-放出ポリマーを使用して医療用具または医療用具の要素を製造する方法も提供する。本発明の例示的な態様の多く、全て医療用具全体またはその要素を製造するために使用することができるPET、PS、シロキサン-系ポリマーなどであるが、これに限定されない出発材料の用途。
【0068】
NOを放出し、医療用具を含む開口部のない(solid)用具または用具要素を製造するための当業者に公知の方法を使用して、本発明のNO-放出ポリマーを合成し、押出、成形、射出成形、ブロー成形、熱成形またはその他の方法で完全な用具またはその要素に成形することができる。
【0069】
別の方法において、用具または用具要素は、適当なNO-非放出ポリマーを使用して製造し、実施例8に記載するようにNOを放出するように用具または用具要素を改良する。
【0070】
血小板保存適用における用途
NO-放出ポリマーの利用性の限定するものではない一例は血小板のエクスビボにおける阻止にある。一酸化窒素は、血小板凝集の強力な阻害剤であることが示されている(Moncadaら、1991)。血小板にNOを適用すると、アゴニストに対する細胞内カルシウム応答の減少(Raulli、1998)および顆粒成分の放出などのカルシウムに依存する他の細胞内過程も生じるBarrettら、1989)。実施例12は、アゴニスト誘導性の血小板凝集を阻止するNO-放出ポリマーの能力を示している。
【0071】
エクスビボにおいて血小板の活性化を阻止するNO-放出ポリマーのこの能力は血小板貯蔵病変(Platelet Storage Lesion)(PSL)の治療においてかなり有用となりうる。血小板貯蔵病変は、血小板の採取、調製および保存後に血小板に生じる変化の和として規定され(Chrenoff, 1992)、保存期間の延長と共に血小板機能の損失が大きくなる原因となる。これらの変化には、細胞骨格および表面抗原構造の変化、密およびα顆粒成分の放出、リソソーム成分の放出、膜強度の損失ならびに代謝の欠陥が挙げられる(Klinger、1996)。PSLを生ずる機序は十分に理解されていないが、一般的な統一見解は、PSLは、保存期間中の血漿活性化の結果に(少なくとも部分的に)関連するということである(Snyder(編)、1992)。NOは、血小板活性化(Moncadaら、1991)および保存顆粒の活性(Barrettら、1989)の公知の阻害剤であるので、保存中の血小板をNO-放出剤で処理するとPSLの程度を低下することができ、活性化可能な血小板数、例えば、αおよび密顆粒を無傷のまま有する血小板数を増加し、細胞残屑を減少し、保存血漿のオータコイド濃度を低下し、血小板の性能に影響を与える可能性のある形態的な変化を少なくする。
【0072】
当業者は、保存中の血小板をNO-放出ポリマーで処理するための数多くの方法を工夫することができる。本発明の例示的な態様は、血液保存コンパートメントへの事前添加により製造される炭素-系一酸化窒素-放出ポリマーを使用する。ポリマーは、特定の量の多血小板血漿(PRP)、濃縮血小板(PC)、血小板アフェレーシス(APP)または従来保存されると思われる他の血小板製品の血小板の活性化を部分的または完全に阻止するのに適当な量および放出速度であるべきである。ポリマーは、血小板製品の予測される期間全体をカバーするのに十分な期間にわたって阻止レベルの一酸化窒素を放出するべきであるが、保存期間全体に阻止流の一酸化窒素が存在する必要はないパラダイムを想定することもできる。
【0073】
NO-放出ポリマーは、最適の放出速度およびNO放出期間に達するように設計されている単一の物質またはポリマーのブレンドであってもよい。さらに、ポリマーは、血小板保存容器内での血小板の撹拌を妨害しないで、表面積を最大にするように設計することができる。また、ポリマーは保存容器に固定されても、遊離状態であっても、または血液細胞および血漿と適合性の任意の材料を含む透過性もしくは半透過性膜内に含まれてもよい。遊離のポリマー態様は、血液製品をレシピエントに送達する出口ポートに流入しないまたは詰まらせないように、適当なサイズおよび形状でなければならない。好ましい態様は、炭素-系ジアゼニウムジオラート側基を含むポリマーを使用すると思われるが、これに限定されない。米国暫定特許出願第60/471,724号、Raulliら、血液製品の病原体を減少させるシステムおよび方法(Systems and Methods for Pathogen Reduction in Blood Products)に記載されているように、NO-放出ポリマーは血小板保存用に製造された完全なシステムの一部であってもよいことを当業者は理解している。
【0074】
本発明のNO-放出ポリマーの用途は、血小板阻害剤としての他の適用においても有用となりうる。ヒト血小板を低温に接触させると、血小板細胞内カルシウムレベルの急激な上昇(Oliverら、1999)および形態の変化(WinokurおよびHartwig、1995)によって特徴づけられる「低温-誘導性」活性化を生じることは周知である。最近の検討は、血小板をフリーズ-ドライする方法を記載している(米国特許第5,827,741号、Beattieら)。フリーズ-ドライし、再構成した最終製品は、生存血小板数の15〜30%の低下を示す(Wolkersら、2002)。これは、最初の凍結乾燥過程中の血小板の低温-誘導性活性化または融解過程の結果による場合がある。凍結乾燥過程の前、最中または後に本発明のNO-放出ポリマーに血小板を接触させると、任意の低温-誘導性活性化を低下または排除することができ、結果として、フリーズ-ドライした血小板の生存度を増加することができる。
【0075】
当業者は、血小板製剤を冷却し、凍結し、フリーズ-ドライする方法に本発明のC-系NO-放出ポリマーを組み入れる種々の方法を開発することができる。例示的な態様は、保存中の血小板の阻止について上記するものと同様であると思われる。
【0076】
保存中のヒト血小板の病原体を減少させる際の用途
一酸化窒素が種々の細菌、真菌およびウイルス病原体を死滅することができることは十分に確立されている(DeGrooteおよびFang、1995)。本発明の例示的な態様は、血液製品を汚染している可能性のある種々の微生物を減少または排除するのに十分なレベルの一酸化窒素を送達する一酸化窒素-放出ポリマーを血液保存コンパートメント内に使用する(米国暫定特許出願第60/471,724号、Raulliら、血液製品の病原体を減少させるシステムおよび方法(Systems and Methods for Pathogen Reduction in Blood Products))。実施例13は、血液保存容器の病原体に対するNO-放出ポリマーの能力を示す。
【0077】
ポリマーは、血液製品を汚染する病原体を死滅する、不活性化するまたは病原体のさらなる増殖を遅延するのに十分なレベルの一酸化窒素を適当な速度で、十分な期間にわたって放出する。さらに、ポリマーは、血液細胞および血漿と適合性の材料を含む。ポリマーはまた、血小板保存容器のケース内で血小板の撹拌を妨害しないで、表面積を最大にするように設計することもできる。例示的な態様において、ポリマーは、保存容器に固定されても、浮遊していてもまたは血液細胞および血漿と適合性の任意の材料を含む透過性または半-透過性膜内に含まれてもよい。浮遊ポリマー態様は、血液製品をレシピエントに送達する出口ポートに流入しないまたは詰まらせないように、適当なサイズおよび形状でなければならない。好ましい態様は、C-系ジアゼニウムジオラート側基を含むポリマーを使用すると思われる。
【0078】
虚血、保存および移植の治療のための臓器および組織の灌流の際の用途
一酸化窒素は、哺乳類の血管に対して強力で、顕著な血管拡張作用を有する(Palmerら、1989)。NOのこの薬理学的特性および化学的抗酸化特性(Espeyや、2002)が移植医学においてNOを有用にしている。灌流中の臓器に適用すると、一酸化窒素は、血管拡張剤として作用し、臓器の深い部分の組織の十分な灌流を可能にし、組織に酸素および栄養素を運ぶ。灌流液の深部への侵入は、深部組織により多くのNOを運び、再灌流傷害に典型的な酸化的損傷を防止する一酸化窒素の抗酸化能力をさらに増強する上で臓器の利益となる(FerdinandyおよびSchultz、2003;Winkら、1993およびそこに記載されている参照文型)。
【0079】
数多くの種類のNOドナーが血管拡張剤として効果的であるが、ニトロプルシッドナトリウム(Kowalukら、1992)およびニトロソチオール(Dicksら、1996)のような多くは代謝活性化を必要とし、予想し難いものにしている。灌流液が、血液と比較したとき、これらの化合物の活性化に必要とされる必要因子を含有しない可能性があるということを考慮すると、これは特に関連する。活性化に組織チオールまたは金属を必要とする場合には、組織自体は、虚血-関連損傷によりこれらの因子が予測できないことに欠損または豊富である場合がある。さらに、これらのNOドナーは好ましい抗酸化種(NO・)を放出しない、または放出種をNO・に変換するためにCuなどの追加の因子を必要とする。最後に、一般的なNO-放出血管拡張剤であるニトロプルシッドナトリウム(SNP)は、NOを供与後シアン化物を発生する可能性がある。このような問題は、本発明の例示的な態様の利点の一部を強調している、すなわち、用具はNOだけを発生し、灌流液に存在するドナー分子で消費されるものはない。
【0080】
放出されるNOの酸化還元状態は特に興味深いことがある。SNPなどの多数のNOドナーはニトロソニウムイオン(NO+)を放出し、一部はニトロキシルイオン(NO-)を生ずる。両種は、活性酸素種(ROS)の影響を悪化し、最終的に虚血再灌流傷害の酸化的組織損傷の原因になることが示されている。本発明によって放出される一酸化窒素種はNO・であり、ROSを相殺することが示されている(Winkら、1996)。
【0081】
本発明のポリマーがNO・を自発的で、予測可能的に放出する能力は、臓器灌流過程における可能な処理としての可溶性NOドナーを上回る利点を示している。NO-放出ヘッド基およびそれが結合しているポリマーマトリックスは、静止または流動している水溶液中にあるとき、不溶性のままであるが、溶液に可溶性NOを放出する能力を維持しているので、NOのこの「ドナーレス(donorless)」送達は可能である。好ましい抗酸化剤である酸化還元種のNOを送達する本発明の本質的な利点以外に、このドナーレス方法は、ドナー分子が循環中に消費されるという問題を排除する。
【0082】
本発明によるポリマーは、インライン装置に含まれてもよく、それによって、装置を流動する灌流液が、臓器の血管系を拡張し、灌流中の臓器のROSを中和するように、灌流液に十分なNOを放出する。例としてであって、限定するものではない態様を図3に示す。装置300は、円筒形または他の適当な形状であってもよいチャンバー310を含む。チャンバー310は、セルフ-シールするまたはガスケット340を用いて密閉するフリット付きディス330を使用して両端が閉じられる。円筒形チャンバー310は、流体を小型ノズル350に導くロート形コレクター320が両端に付いており、装置300の両端の灌流ライン360への取り付けの促進を可能にしている。
【0083】
本発明による固体ポリマー370はチャンバー310内に含まれる。ポリマー370は任意の望ましい形状であってもよく、チャンバー310の壁に取り付けられてももしくは固定されても、またはチャンバー内で遊離状態であってもよい。ポリマー370のサイズも変わってもよい。しかし、ポリマー370は、チャンバー310の両端のフリット付きディスク330によって容易に入れられるサイズでなければならない。チャンバー310内のポリマー370の密度は、灌流液が装置300を通過して自由流動を可能にするようであることが好ましい。
【0084】
フリット付きディスク330のメッシュサイズも、灌流液の自由流動を可能にするように最適化されるべきである。所定の流速に対してチャンバーが大きいほど、NO-放出ポリマーへの灌流液の接触時間が長くなり、大量のNOが灌流液に溶解するので、チャンバー310のサイズは、任意の所定の流速に対して灌流液に放出されるNOレベルに影響を与えることがあることを当業者は理解していると思われる。装置300のサイズ、形状および幾何学は例示的なものにすぎず、容易に変更することができ、灌流液内にNOを放出する際に有効性を保つことができることを当業者は理解することができる。このような変更は全て本発明の範囲内である。
【0085】
実施例14は、チャンバー内にNO-放出ポリマーを含むフリット付きチャンバーを含むインライン容器を流動する緩衝液に本発明によるポリマーがかなりの量のNOを送達する能力を実証している。流出液に含まれるNOの量は、大動脈ストリップを使用する組織浴実験において血管拡張作用を達成するのに必要なNOの濃度より1〜2桁大きい(Morleyら、1993)。
【0086】
各々全体の内容が参照により本明細書に組み入れられる、米国暫定特許出願第60/534,395号;同第60/575,421号および同第60/564,589号に記載されているように、本発明の化合物は携帯型滅菌のために製造された完全なシステムの一部であってもよいことも当業者は理解していると思われる。
【0087】
薬剤としての用途
本発明を使用して有効な量の一酸化窒素を提供するために、数多くの好適な投与経路がヒト、好ましくは哺乳類、特にヒトを治療するために使用することができる。経口および直腸剤形が好ましい。しかし、皮下、筋肉内、静脈内、経皮投与経路を使用することも可能である。可能な固体の経口剤形のうち、好ましい態様には、錠剤、カプセル、トローチ、カシェ、粉末、分散剤等が挙げられる。他の剤形も可能である。好ましい液体剤形には、非-水性懸濁液および水中油型エマルジョンが挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0088】
固体の経口剤形の一態様において、錠剤は、デンプン、糖および微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤および任意に他の治療成分などの薬学的に許容される担体も含んでもよい、作用成分としての本発明による薬学的組成物または薬学的に許容される塩を含む。ジアゼニウムジオラートの酸不安定性のために、胃が治療標的臓器でない場合には、胃内での全用量の一酸化窒素の放出を回避するために、経口固体剤形を腸溶コーティングまたは徐放性コーティングでコーティングすることが有利である。
【0089】
固体剤形をコーティングする好ましい方法には、コーティング過程中に一酸化窒素が剤形から放出される可能性を低くするために、剤形を腸溶コーティングまたは徐放性コーティングするための非-水性過程の使用が挙げられる。米国特許第6,576,258号に記載されているものなどのこれらの非-水性コーティング技術は当業者に公知である。徐放性コーティングは米国特許第5,811,121号に記載されており、固体剤形をコーティングするためにアルカリ性水溶液を使用している。このコーティング過程は、一酸化窒素の放出が高pHレベルにおいて大幅に阻害されるとき、剤形内のジアゼニウムジオラートのレベルを維持する働きもすると思われる。
【0090】
ジアゼニウムジオラートクラスの化合物の酸不安定性および中性pHの水溶液に対する感受性に留意して、直腸剤形および追加の剤形も当業者が開発することができる。望ましい製剤に好適である賦形剤に関する知識に基づいて、当業者は適当な剤形を開発することができると思われる。
【0091】
実施例
以下の実施例は本発明をさらに例示する。記載されている場合を除いて、全ての試薬および溶媒はAldrich Chemical Company(Milwaukee, WI)から入手する。一酸化窒素ガスはMatheson Gas Productsにより供給されるものである。NOガス雰囲気下で反応を実施するために使用される装置および技術の詳細な説明は報告されており(Hrabieら、1993)、全体の内容が参照により本明細書に組み入れられる。IRスペクトルはPerkin Elmer 1600シリーズFTIRで得る。発生するNOガスのモニタリングおよび定量は、保証されているNOガス標準を使用して毎日較正されているThermo Environmental Instruments Model 42C NO-NO2-NOx検出装置を使用して実施する。放出されるNOの量は10億分の1単位で測定し、以下のように求める:窒素ガスが定常的に流動しているチャンバーNO-放出材料をに入れる。窒素は、チャンバー内で発生される任意のNOを検出装置内に収集する働きをするキャリヤーガスである。100 ppbの測定値は、チャンバーを一掃する10億の窒素ガスあたり100分子のNOが発生されたことを意味する。
【0092】
実施例1
この実施例は、市販のクロロメチル化ポリスチレンを、ニトリル基を含む炭素-系ジアゼニウムジオラートに変換する方法を提供する。50 ml量のDMFを硫酸ナトリウムで乾燥し、次いで事前乾燥した溶媒を使用して2.37 g(1gあたり4.42 mmol のCl)のクロロメチル化ポリスチレンを膨潤する。30分後、3.39 g(52 mmol)のKCNおよび0.241 g(1.4 mmol)のKIを添加する。溶液を60℃までの温度で終夜加熱する。この間に、樹脂は色がオフホワイトから赤レンガ色に変わる。20 ml部のDMF、DMF:H2O、H2O、EtOHおよびEt2Oで樹脂を連続して洗浄し、空気乾燥させる。1265 cm-1の-CH2-Cl伸縮の消失および2248 cm-1のニトリル吸収の出現が置換を示している。
【0093】
ジアゼニウムジオラート化:Parr社製圧力容器において、修飾樹脂-CNを20 mlのDMFに添加する。この溶液をゆっくり撹拌し、20 ml(20 mmol)の1.0 Mトリメチルシラノール酸ナトリウムのTHF溶液で処理する。容器を脱気し、54 psiのNOガスを充填する。ヘッドスペースにアルゴンを通気し、樹脂を水、メタノールおよびエーテルで洗浄した。黄褐色/淡橙色の生成物を空気乾燥させた。このジアゼニウムジオラート化方法は、塩基としてアルコキシドを使用する場合に生ずるイミデート形成の可能性を回避する。この材料は、図1に示すように、NOの大量噴出を生じる。
【0094】
実施例2
この実施例は、市販のクロロメチル化ポリスチレンを、-OCH3基を含む炭素-系ジアゼニウムジオラートに変換する方法を提供する。
【0095】
1:1 DMF/MeOHの50 ml溶液に以下を添加する:1.0 gクロロメチル化ポリスチレン(4.38 mmol Cl/g)、0.014 g KI(0.08 mmol)および1.0 ml 25% NaOMe(4.37 mmol)。溶液を室温において終夜撹拌する。次いで、それを真空ろ過し、MeOHおよびエーテルで洗浄する。生成物の総重量1.0 gは理論的な重量0.979 gよりわずかに大きい。
【0096】
ジアゼニウムジオラート化:樹脂-OCH3をParr社製の圧力容器に入れ、1:1 DMF/MeOHの50 mlを添加する。撹拌しながら、2.0 mlの25% NaOMe(8.76 mmol)を添加する。不活性ガス加圧/排出サイクルを交互に行うことによって脱気してから、50 psiのNOガスに接触させる。ガスと樹脂の反応の指標であるNOガスの消費は翌日測定する。一例において、10 psiのNOガスが消費されることが観察された。真空ろ過し、洗浄し、空気乾燥後、増量が観察される。増量が観察されない場合でも、生成される組成物は、化学発光によって検出するとき、Greiss反応陽性(Greiss反応はSchmidtおよびKelm、1996年参照)およびNO放出を示すことがある。
【0097】
実施例3
この実施例は、市販のクロロメチル化ポリスチレンを、OC2H5基を含む炭素-系ジアゼニウムジオラートに変換する方法を提供する。1:1 DMF/EtOHの50 ml溶液に、以下を添加する:1.0 g クロロメチル化ポリスチレン(4.38 mmol Cl/g)、0.016 g KI(0.09 mmol)および1.7 ml 24% KOEt(4.38 mmol)。溶液は室温において終夜撹拌する。次いで、それを真空ろ過し、EtOHおよびエーテルで洗浄する。一例において、観察される重量は1.22 gであり、予想される1.04 gよりわずかに多かった。
【0098】
ジアゼニウムジオラート化:1:1 DMF/MeOHの50 ml溶液を添加したParr社製の圧力容器に樹脂-OC2H5を入れ、2.0 mlの25% NaOMe(8.76 mmol)を添加する。容器を脱気し、60 psiのNOガスに終夜接触させる。次いで、樹脂をメタノールおよびエーテルで洗浄し、空気乾燥する。一例において、図2に示すように、この材料は、NOガス検出装置で検出するとき、Greiss反応陽性を示し、生理的条件下において自発的にNOを発生する。
【0099】
実施例4
この実施例は、市販のクロロメチル化ポリスチレンを、-SC2H5基を含む炭素-系ジアゼニウムジオラートに変換する方法を提供する。
【0100】
ドラフト内で、50 mlの乾燥DMFに以下を添加する:1.00 gのクロロメチル化ポリスチレン(4.42 mmol Cl/g)、40 mg(0.24 mmol)ヨウ化カリウムおよび372 mg(4.42 mmol)エタンチオレート。この混合物を室温において72時間撹拌する。それをろ過し、25 ml部の1:1 DMF:MeOH、MeOHおよびEt2Oで洗浄し、空気乾燥する。
【0101】
ジアゼニウムジオラート化:Parr社製の圧力容器の1グラムの樹脂-SC2H5に以下を添加する:25 mlのTHFおよび2.0 ml(8.84 ミリモル)の25%ナトリウムメトキシド。圧力容器へのアルゴンの充填および流出を交互に行うことによって混合物を脱気してから、60 psiのNOガスに終夜接触させる。樹脂をろ過し、50 mlの0.01M NaOH、エタノールおよびジエチルエーテルで洗浄する。得られる樹脂はGreiss反応陽性を生じる。化学発光NO検出装置で測定すると、100 mgの樹脂は、室温において1時間にpH 7.4緩衝液中で4.1×10-11 モル NO/mg樹脂/minを発生した。
【0102】
実施例5
この実施例は、市販のクロロメチル化ポリスチレンを、-OSi(CH3)3基を含む炭素-系ジアゼニウムジオラートに変換する方法を提供する。50 mlの乾燥DMFに、以下を添加する:1.00 gのクロロメチル化ポリスチレン(4.42 mmol Cl/g)、10 mlの1.0 M(10 ミリモル)トリメチルシラノール酸ナトリウムおよび100 mg(0.6 ミリモル)ヨウ化カリウム。混合物を100℃までの温度で24時間加熱する。その後、樹脂をろ過し、20 ml部のDMF、MeOHおよびジエチルエーテルで洗浄し、空気乾燥させる。
【0103】
ジアゼニウムジオラート化:以下をParr社製圧力容器に入れる:1.0 gの修飾樹脂、30 mlのDMFおよび2.0 ml(8.84 ミリモル)の25%ナトリウムメトキシド。圧力容器を脱気し、次いで60 psiのNOに24時間接触させる。次いで、樹脂をろ過し、DMF、MeOHおよびジエチルエーテルで連続して洗浄する。その後、樹脂を空気乾燥し、Greiss反応陽性を生じる。化学発光NO検出装置で測定するとき、100 mgの樹脂は室温において40分間にpH 7.4緩衝液中で4.1×10-11 モル NO/mg樹脂/minを発生した。
【0104】
実施例6
この実施例は、市販のクロロメチル化ポリスチレンを、ジエチルアミン基を含む炭素-系ジアゼニウムジオラートに変換する方法を提供する。
【0105】
2.17 gのクロロメチル化ポリスチレン(4.42 mmol Cl-/g)試料を50 mlのDMFに添加する。この懸濁液に、以下を添加する:0.123 g(0.74 mmol) KIおよび5 ml(72 mmol)ジエチルアミン。懸濁液を45℃において24時間撹拌し、ろ過し、DMF、MeOHおよびエーテルで2回洗浄する。樹脂を空気乾燥させる。
【0106】
ジアゼニウムジオラート化:Parr社製容器に以下を添加する:100 ml MeOH、1.0 g修飾樹脂および2.0 ml(8.7 mmol)25% NaOMe。脱気後、溶液を60 psi NOガスに24時間接触させる。次いで、樹脂をろ過し、メタノールおよびエーテルで洗浄し、空気乾燥させる。150分間で、100 mgの樹脂は室温においてpH 7.4緩衝液中で9.3×10-11 モル NO/mg樹脂/minを発生した。
【0107】
実施例7
この実施例は、樹脂由来のNOは、樹脂に結合しているNOドナー基から発生し、隙間に捕獲された遊離のNOガス分子を移動させていないことを実証する。
【0108】
これらの材料に生じる一般的な懸念は、樹脂内の隙間にNOが捕獲され、樹脂から発生される総NO量を歪曲する可能性である。対照実験として、0.50 gのメリフィールド樹脂を40 mlの1:1 DMF/MeOH溶液に入れ、脱気し、80 psiのNOガスに24時間接触させる。次いで、樹脂をろ過し、MeOH、アセトンおよびエーテルで数回洗浄した。空気乾燥後、NOを速やかに亜硝酸塩に酸化して、任意の亜硝酸塩の存在を比色により明らかにすると思われる5 mlのGreiss試薬に50 mgの試料を入れた。試薬は、亜硝酸塩の存在を示す特徴的な紫色に変わらなかった。従って、樹脂から検出されるNOはNOドナーの形成によるものであって、捕獲されたNOによるものではない。
【0109】
実施例8
この実施例は、ポリマー、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)の骨格に芳香環を含むポリマーを炭素-系ジアゼニウムジオラートに変換する方法を提供する。
【0110】
150 mlビーカーにおいて、2.0 gのPETペレット(Sigma-Aldrich、Milwaukee、 WI)を10 mlの酢酸および10 mlの37重量%ホルムアルデヒドで処理する。反応液を24時間撹拌させる。次いで、ヒドロキシル化PETをろ過し、25 ml部の水で3回洗浄し、100℃において1時間乾燥させる。
【0111】
次いで、ヒドロキシル化したPETを50 mlのピリジンに懸濁し、氷浴で冷却し、4.67 g(2.4×10-2 mol)の塩化p-トルエンスルホニルで処理する。塩化p-トルエンスルホニルの添加の2分後、反応液を室温に加温させる。24時間後、反応液をろ過し、2部(25 ml)の乾燥DMFで洗浄する。
【0112】
次いで、トシル化したPETを25 mlの乾燥DMFに入れ、ゆっくり撹拌しながら2.03 g(3.1 ×10-2 mol)のKCNを添加する。24時間後、シアノメチル化したPETをろ過し、DMF(25 ml)、1:1 DMF:H2O(25 ml)、H2O(2×25 ml)およびMeOH(2×25 ml)で洗浄する。
【0113】
次いで、シアノメチル化したPETを、25 mlのMeOHを添加した300 mlのParr社製圧力容器に入れる。懸濁液をゆっくり撹拌し、1.0 Mトリメチルシラノール酸ナトリウムのテトラヒドロフラン溶液1.0 mlを懸濁液に添加する。圧力容器をアルゴンで10回通気および換気し、次いでNO(80 psi)を充填する。24時間後ジアゼニウムジオラート化したPETをろ過し、25 mlのEtOHおよび25 mlのEt2Oで洗浄する。この化合物の放出特性を実施例14に記載する。
【0114】
実施例9
この実施例では、金属にシロキサンをコーティングして、NO-放出剤に変換する。
【0115】
最初に、1片のニチノール、5 mm×25 mmを紙やすりで研磨する。次いで、1.0 M HClと30% H2O2の1:1混合物からなる酸化液に10分浸漬する。水およびアセトンで洗浄してから、アルゴン通気で乾燥する。酸化し、きれいにしたニチノールストリップをアルゴン雰囲気下で6 mlの無水ヘキサデカンに浸漬する。これに0.2 mlドデシルトリクロロシラン、0.2 mlクロロメチルフェニルトリクロロシランおよび50μlのn-ブチルアミンを添加する。24時間後、ニチノールストリップを取り出し、エタノールに浸漬して、未結合粒子を除去し、110℃のオーブンに15分間入れて硬化する。次いで、シロキサン修飾ニチノールストリップを、7 mlの無水ヘキサデカンを含む丸底フラスコに入れ、80℃まで加熱する。これに0.3 mlのクロロトリメチルシランを添加し、これを1時間反応させる。エンド-キャップ付きニチノールストリップをエタノールに浸漬して、任意の粒子を除去してから110℃で20分乾燥する。
【0116】
次に、クロロメチルフェニルシロキサンニチノール片を15 mlのDMFに入れ、80℃に加熱し、10 mgのシアン化カリウム、80 gの臭化テトラブチルアンモニウムおよび触媒用の数粒のヨウ化カリウムを添加する。反応を終夜進行させる。ニチノールストリップをエタノールで洗浄してから、50 ml DMFを含むParr社製圧力容器に浸漬する。これに250μlのトリメチルシラノール酸ナトリウムを添加する。ゆっくり撹拌しながら、(ニチノールストリップの衝突を回避する)容器を脱気し、60 psi NOガスに24時間接触させる。次いで、ニチノール片をエタノールおよびエーテルで洗浄し、アルゴンガス気流下で乾燥する。この方法で処理したニチノール片をGreiss試薬に浸漬すると陽性反応を生じる。遊離NOが亜硝酸塩に酸化されるので、ニチノール片は色が紫になる。
【0117】
実施例10
この実施例では、シリカゲルにシロキサンをコーティングし、NO-放出剤に変換する。50 mlのトルエンに2.01 gのシリカゲルを入れる。ヘッドスペースにアルゴンを通気する。次いで、0.45 mlのクロロメチルフェニルトリクロロシランを添加する。懸濁液を室温において終夜ゆっくり撹拌する。次いで、シリカをろ過し、トルエンで洗浄し、空気乾燥する。次いで、シロキサン修飾シリカを50 ml DMFに入れ、1.0 g KIおよび1.0 g KCNで処理する。次いで、温度を110℃に上昇し3時間維持する。この間にシリカはダークオフ-レッド色に変わる。次いで、シリカをろ過して、DMF、H2Oおよびメタノールで洗浄する。次いで、110℃のオーブンで20分間乾燥し、50 mL THFを添加したParr社製の圧力容器に入れる。これに2.0 mlの1.0 M NaOSi(CH3)3を添加する。容器を脱気し、60 psi NOガスに24時間接触させる。シリカをろ過し、THF、MeOHおよびEt2Oで洗浄し、空気乾燥させる。修飾シリカゲルはGreiss反応が陽性である。
【0118】
実施例11
この実施例では、実施例9のNO-放出金属を保護基で処理して、NO-放出期間を延長する。実施例9のニチノール片を、DMFを含有するバイアルに浸漬する。これに50μlのSanger試薬;2,4-ジニトロフルオロベンゼンを添加する。反応は室温において終夜進行させる。翌日ニチノール片を取り出し、エタノールで洗浄し、空気乾燥する。
【0119】
実施例12
この実施例は、ヒト血小板をエクスビボにおいて阻止する際の炭素-系ジアゼニウムジオラートポリマーの用途を実証する。最近の10日間にアスピリンを消費していないまたは最近の48時間に任意のNSAID(non-steroidal anti-inflammatory drug)を消費していない健康なボランティアから0.105 Mクエン酸ナトリウム入りバキュテイナーに採血する。クエン酸全血をSorvall臨床遠心分離で2000 rpmで10分間遠心分離することによって多血小板血漿(PRP)を単離する。PRPを微小遠心管で7000 rpmで5分間遠心分離することによって乏血小板血漿(PPP)を調製する。PRPは、ゆっくり振とうしながら37℃の温浴で維持する。
【0120】
凝集測定:5.0 mlのPRPを14 mlのポリプロピレンチューブに入れ、20 mg/mlのNO-放出ポリマーを添加する。ゆっくり振とうしながら、血小板を37℃において15分インキュベーションする。500μl量を凝集キュベットに入れ、Chronolog Aggregometer(37℃、900 rpm)におけるPPPに対するブランクとする。ベースライントレースを1分間取り、10μlのコラーゲン(1 mg/ml)を添加する。Aggro-linkソフトウェア(Chronolog)を使用して、5分トレース後の凝集応答率%を算出する。結果を以下のように表にする。

【0121】
実施例13
この実施例は、炭素-系ジアゼニウムジオラートポリマーが、保存中のヒト血小板中の病原体レベルを低下する能力を実証する。
【0122】
PediPak血小板保存容器に、滅菌技法を使用して、実施例1の3 gmのシアノ-修飾クロロメチル化ポリスチレンジアゼニウムジオラート、実施例3の2 gmのエトキシ-修飾クロロメチル化ポリスチレンジアゼニウムジオラート(処理群)を充填する、またはそのままで使用する(対照)。滅菌接続ラインを使用して、ヒト濃縮血小板の血小板を各バッグに添加する(容器あたり25 ml)。各群に1 mlあたり102コロニー-形成単位(CFU/ml)の表皮ブドウ球菌(S. epidermides)の終夜培養物を接種する。CFU/mlの評価のために各群の少量を速やかに取り出す。次いで、22℃の典型的な保存条件下においてわずかに撹拌しながら血小板を保存する。24時間後、さらに少量をCFU/mlの評価のために取り出す。
【0123】
滅菌ブロスで少量を連続希釈し、滅菌寒天で希釈液を平板培養し、37℃において24時間のインキュベーション後に平板に形成するコロニーの数を計数することによってCFU/mlを求める。結果を以下のように表にする:

【0124】
実施例14
この実施例は、PET-由来の炭素-系ジアゼニウムジオラートポリマーを含む用具が用具を流動する液体にNOを添加する能力を示す。
【0125】
径0.5 cmおよび長さ10 cmのFPLCカラムに、実施例8の1.2446 gの炭素系ジアゼニウムジオラートニトリルポリ(エチレンテレフタレート)(表面積1914 mm2/gを有すると大まかに推定される)を添加する。最大量の充填を確実にするために、カラムを軽くたたきながらポリマーを挿入する。
【0126】
充填後のカラムをTygon管系の長さ方向に取り付け、40 mlの7.4リン酸緩衝液を5 ml/minの流速でカラムを介してくみ上げる。1分分画を20 mlバイアルに回収する。各分画から少量(0.5 ml)を取り出し、Griessアッセイを使用して亜硝酸塩についてアッセイする(亜硝酸塩のアッセイは、NO測定のすぐれた代替法である)。Griess試薬の1 mlを3 mlのキュベットの分画に添加し、546 nmにおいて吸光度を読む。結果は最初の分画においてNOの最初の噴出を示し、残りの分画はNOの低下するが、安定した放出を示す。

【0127】
実験15
この実施例は、実施例14において検討したものと同様の用具が、保存および/または移植のために単離された哺乳類の臓器または虚血事象を経験したインビボにおける臓器に対して与える影響を検討するために使用される実験を詳細に記載する。
【0128】
ドナーレスNOを送達するように設計された用具が臓器の血管緊張に与える影響を検討するために。インサイチューまたは単離して臓器を試験する。動物を麻酔し、ヘパリン処理し、腹部切開を実施して腎臓を露出させる。腎動脈および静脈をカニュレーションし、臓器を、85〜95 mmHgの一定流量の蠕動ポンプを使用して含酸素緩衝液を約2時間灌流する。臓器の近位および遠位の流量計ならびに臓器の近位の圧力計でシステムをモニターする。流動および圧力が安定するまで臓器を灌流する。次いで、2つの三方活栓を使用して流動回路を変更し、ドナーレスNO-放出用具に灌流液を流動させる。灌流液が用具を流動し、流出液が溶解したNO(技術的にはNO・)を臓器に送達すると、血管は拡張し、流動(増加)および圧力(低下)の読み値が記録できるほど変化する。
【0129】
ドナーレスNO送達が臓器の酸化状態に与える影響を検討するために、止血帯で30〜90分腎茎(pedicule)を結紮することによって虚血-再灌流損傷を形成する。この間に、結紮部位の近位の腎動脈をカニュレーションし、適当な時点に達したとき臓器に灌流液を送達するシステムに接続する。望ましい時点において、止血帯を除去し、腎静脈を切断し、85〜95 mmHgの一定流量のローラーポンプを使用して約2時間灌流液を臓器に流動させる。腎皮質組織を切開し(虚血/再灌流損傷の影響は近位細管レベルにおいてより顕著であるので)、ホモジナイズする。次いで、以下の抗酸化酵素および細胞成分を測定する:還元グルタチオン、スーパオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ。これらの酵素のレベルは再灌流損傷により低下することが公知である(Dobashiら、2000)。虚血/再灌流損傷によって生じる酸化的損傷からの防御は、NOを与えられていない対照腎臓のレベルに対してNO-処理群の上記の抗酸化酵素パネルのレベルは統計学的に大きいことによって示される。
【0130】
本発明の好ましい態様の上記の開示は例示および説明の目的のために提供されている。包括的であることまたは本発明を開示されている正確な形態に限定することを意図していない。本明細書に記載する態様の多数の変更および改良は、上記の開示の点から当業者に明らかである。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物によってのみ規定されるべきである。
【0131】
さらに、本発明の代表的な態様を記載する際に、明細書は本発明の方法および/または過程を特定の順序の段階として提供している場合がある。しかし、方法または過程が本明細書に記載する特定の順番の段階を使用しない範囲では、方法または過程は記載されている特定の順番の段階に限定されるべきではない。当業者が理解していると思われるように、他の順序の段階が可能である場合もある。従って、明細書に記載されている特定の順序の段階は特許請求の範囲の限定と解釈されるべきではない。また、本発明の方法および/または過程に関する特許請求の範囲は、段階を書かれている順序で実施することに限定するべきではなく、順序は変わってもよく、本発明の精神および範囲内にあることを当業者は容易に理解することができる。
【0132】
実施例16
PETから製造され、本明細書に記載されているように修飾されたコンタクトレンズケースの製造および抗菌特性の分析
PETを使用し、当業者に公知の最も適当な方法を使用して標準的なコンタクトレンズケースを製造する。実施例8に記載されているように、ケースを酢酸および37重量%ホルムアルデヒドで処理する。ケースをピリジンに懸濁し、氷浴で冷却し、少なくとも4.67 gの塩化p-トルエンスルホニルで処理する。塩化p-トルエンスルホニルの添加の2分後、反応を室温に加温させる。24時間後、コンタクトレンズケースを取り出し、2部の乾燥DMFで洗浄する。
【0133】
次いで、トシル化したPETを適当な容量の乾燥DMFに入れ、ゆっくり撹拌しながら少なくとも2.03 g(3.1×10-2 mol)のKCNを添加する。24時間後、シアノメチル化したPETをろ過し、DMF、1:1 DMF:H2O、H2OおよびMeOHで洗浄する。
【0134】
次いで、シアノメチル化したPETを、適当な容量のMeOHを添加した300 mlのParr社製の圧力容器に入れる。懸濁液をゆっくり撹拌し、1.0 Mトリメチルシラノール酸ナトリウムのテトラヒドロフラン溶液少なくとも1.0 mlを懸濁液に添加する。圧力容器をアルゴンで10回通気および換気し、NO(80 psi)を充填する。24時間後、ジアゼニウムジオラート化したPETコンタクトレンズケースを取り出し、十分量のEtOHおよびEt2Oで洗浄する。
【0135】
ジアゼニウムジオラート化した数個のコンタクトレンズケースおよび等しい数の対照ケースを、NOの代わりに80 psiの窒素でガス処理し、次いで、P. エルギノーサ(P. aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)、バチルス種属(Bacillus spp.)、プロピオニバクテリウム種属(Propionibacterium spp.)、コリネバクテリウム種属(Corynebacterium spp.)およびマイコバクテリウム種属(Mycobacterium spp.)を含むが、これらに限定されないコンタクトレンズケースを通常汚染する細菌を染色液で調べたた。24時間のインキュベーション期間後、レンズケースをマイルドな緩衝液で3回ゆっくりすすぎ、細菌コロニー形成の程度について定量的に評価し、このような評価には、当業者に公知の走査型電子顕微鏡、物理的(超音波)もしくは化学的(洗剤による除去)手段による付着細菌の除去および/または顕微鏡もしくは分光光度法による微生物の計数が挙げられるが、それに限定されるわけではない。ジアゼニウムジオラート化したコンタクトレンズケースの抗菌作用は、対照コンタクトレンズケースに見られる量に対する付着細菌の量の統計学的に有意な低下によって示される。
【0136】
実施例17
生存している微生物バイオフィルム形成に対するNO-放出表面の抵抗性の分析。ガラスディスク(5 mm)に、本発明のシロキサン-系NO-放出ポリマーをコーティングする。対照ディスクはコーティングするが、NOの代わりに窒素でガス処理する。ジアゼニウムジオラート化ディスクおよび対照ディスクを96ウェルマイクロタイタープレートのウェルに入れ、次いで以前に記載されているように(Yarwoodら、2004;Hassetら、1999;Pittsら、2003)、細菌のバイオフィルムを増殖させる。Tryptic Soy Broth(TSB)(または種特異的培地)における細菌の終夜培養液を滅菌PSBで10倍希釈する。コンディショニングフィルムを作製するために、96ウェルプレートにウシ胎仔血清をコーティングし、PBSで2回洗浄する。その後、ウェルに180μlのTBSを充填する。次いで、ウェルに検討中の細菌の懸濁液20μlを接種する。プレートを37℃において24時間インキュベーションする。浮遊細胞および培地を吸引によって除去し、その後ウェルを滅菌PBSで2回洗浄する。
【0137】
以前に記載されている方法(Pittsら、2003)をわずかに調整して、細胞を含むバイオフィルムの生存度をアッセイする。1%グルコース、0.5μg/mlの3-(4,5-ジメチル-2-ジアゾリル)-2,5-ジフェニル-2H-テトラゾリウムブロミド(MTT)(5 mg/mlのPBSストック液、-20℃において少量ずつ保存する)、1μMメナジオン(1 mMアセトンストック液)を含む事前に加温しておいた100μlのPBSを各ウェルに添加する。プレートを37℃において1時間静かにインキュベーションし、その後ウェルを吸引する。次いで、100μlの酸性イソプロパノール(5% 1 N HCl)を添加して、ホルマザン結晶を溶解する。プレートを周囲温度において振とうしながら10分インキュベーションする。次いで、溶液を移して96ウェルプレートをきれいにし、分光光度法によるプレートリーダーを使用して550 nmの吸光度を測定して、バイオフィルム中の代謝的に活性な細菌の数を測定する。
【0138】
対照ディスクコーティングに対してNO-放出ディスクコーティングを含むウェルにおける550 nmの吸光度の読み値の統計学的に有意な低下がバイオフィルムの生存度の低下を示す。真菌バイオフィルムおよび細菌/真菌混合バイオフィルムを用いて同様の実験を実施する。
【0139】
実施例18
血小板接着に対するNO-放出表面の耐性。実施例10に記載するものと同じ種法を使用して、ガラスカバースリップをコーティングする。対照カバースリップは、NOの代わりに窒素でガス処理する。ビデオレコーディングカメラ付き蛍光顕微鏡のステージに取り付けられたフローセルに対照スライドおよびNO-放出スライドを密閉し、高剪断条件(1000s-1)で37℃においてヒト全血をセルに循環させ、蛍光をモニターする。表面への血小板の沈着はビデオイメージの白色蛍光スポットによって示される。NO-放出および対照コーティングを使用して同一の血液ドナーが試験されるように実験を制御する。効果的な抗血小板コーティングは、対照コーティングでは強力な蛍光イメージで、被覆面積は20%を超えるのに対してNO-放出コーティングでは蛍光はゼロで、被覆面積は5%未満であることによって示される。
【0140】
実施例19
NO-放出コーティングが人工表面上で内皮細胞の増殖を増強する能力の実証。ガラススライドにニトリル-修飾(実施例1参照)シロキサンジアゼニウムジオラート単層ポリマー(実施例9と同様)またはNOの代わりに窒素でガス処理した同一のポリマー(NOを放出しない対照として)をコーティングする。スライドをアルカリ性70%エタノール中で少なくとも20分間滅菌する。スライドをそれぞれ滅菌したペトリ皿に入れる。4つのモールを使用して、1×104細胞/mlのC166ウシ内皮細胞をペトリ皿に接種する。試料を5%CO2雰囲気下で37℃においてインキュベーションする。24時間後、コーティングしたスライドに接着した内皮細胞の数を以下の方法で計数する。スライドを新鮮なペトリ皿に移し、EDTAおよびトリプシン処理による抽出を使用して細胞をスライドから遊離させ、その後洗浄、染色し、遠心分離して細胞を濃縮し、血球計数器を使用して計数する。これらの実験は、NO-放出コーティングが、異種表面の内皮形成を促進する能力を実証している。

【0141】
実施例20
本願に記載するNO-放出コーティングをコーティングした心臓血管ステントの評価。本発明に記載するようにステントをコーティングする。SchwartzおよびEdelman、2002年のガイドラインおよび手法により、ブタ冠動脈再狭窄モデルを使用してステントを植え込む。NO-放出コーティングステント、NO-非放出コーティングステント(すなわち、本発明によりコーティングされているが、NOガスに接触されていない)および未処理の金属ステントを含む3つの実験群を、抗血小板剤(アスピリンおよびクロピドグレル、手術の24時間前から持続的)で処理した動物に植え込む。ステント:動脈比1.0〜1.1のステントを使用する。ステントの植え込みは麻酔下で実施する。実験群あたり約10のステントを植え込んだ動脈を7日目、28日目および3ヶ月経過時に評価する。
【0142】
NO-放出コーティングの有効性は、SchwarzおよびEdelmanに記載されている定量的および半-定量的方法を使用して、血栓が存在しないことおよび未処理のステントと比較して新生内膜増殖が統計学的に有意に減少していることによって判定される。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】5.5 mgのシアノ-修飾クロロメチル化ポリスチレンジアゼニウムジオラートからpH 7.4において15分間にわたって放出されるNOの量を示す。この期間において、樹脂1mgあたり0.49μモルのNOが発生された。放出されるNOの量は10億分の1(ppb)で測定し、本明細書に記載するように評価し、測定する。
【図2】エトキシ-修飾クロロメチル化ポリスチレンジアゼニウムジオラートからのNO-放出量を示す。このポリマー組成物を4 mmの透析膜(MWCO 3500)に充填し、反応容器に入れ、pH 7.4の緩衝液に沈めた。26分後、透析チューブを取り出し、NO-放出物質の浸出がないことを実証した。35分経過時に、チューブを反応容器に再度挿入し、次の2時間にわたってNOを放出させ、5.3×10-11モルNO/樹脂1mg/分の速度でNOを発生した。
【図3】一酸化窒素を流動中の灌流液に送達するための装置の一態様の断面図を例示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのフェニル-含有ポリマーに結合したC-系ジアゼニウムジオラート(C-based diazeniumdiolate)化合物を含む組成物であって、ポリマーがポリマー骨格を含み、フェニルがポリマーの骨格の側基かまたはポリマーの骨格の一部であり、かつ化合物がイミデート(imidate)またはチオイミデート(thioimidate)でない組成物。
【請求項2】
フェニル-含有ポリマーに結合した炭素-系ジアゼニウムジオラート化合物を含み、生理的条件下において予測可能な量のNOを放出する組成物であって、該化合物が生理的条件下においてニトロソアミンを発生しない組成物。
【請求項3】
少なくとも1つのフェニル-含有ポリマーに結合しているC-系ジアゼニウムジオラート化合物を含み、以下の式を有する組成物:
R3-C(R1)x(N2O2R2)y
式中、xは0〜2の整数であり、yは1〜3の整数であり、xプラスyの合計は3に等しく;
R1はイミデートまたはチオイミデートでなく;
R2は、末端酸素のカウンターカチオン(countercation)および保護基からなる群から選択され;かつ、
R3は、該フェニル-含有ポリマーのフェニルである。
【請求項4】
ポリマー骨格を含む少なくとも1つのフェニル-含有ポリマーに結合したC-系ジアゼニウムジオラート化合物を含む組成物であって、該フェニル-含有ポリマーのフェニルが該ポリマーの骨格の側基であり、以下の一般式を有する組成物:

式中、R1はイミデートまたはチオイミデートでなく;かつ
R2は、末端酸素のカウンターカチオンおよび保護基からなる群から選択される。
【請求項5】
ポリマー骨格を含む少なくとも1つのフェニル-含有ポリマーに結合したC-系ジアゼニウムジオラート化合物を含む組成物であって、フェニル-含有ポリマーのフェニルがポリマーの骨格の一部であり、以下の一般式を有する組成物:

式中、R1はイミデートまたはチオイミデートでなく;
R2は、末端酸素のカウンターカチオンおよび保護基からなる群から選択され;かつ、
ポリマー1およびポリマー2は同じであっても、異なってもよい。
【請求項6】
フェニルがポリマーの骨格の側基であるかまたはポリマーの骨格の一部である、請求項2または請求項3記載の組成物。
【請求項7】
フェニルがポリマーの骨格の側基である、請求項1、請求項2、または請求項3記載の組成物。
【請求項8】
フェニルが置換フェニルである、請求項4または請求項7記載の組成物。
【請求項9】
フェニルが、脂肪族、芳香族、および非芳香族環状基からなる群から選択される1つまたはそれ以上の部分で置換された、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
フェニルが、モノ-またはジ-置換アミノ、非置換アミノ、アンモニウム、アルコキシ、アセトキシ、アリールオキシ(aryloxy)、アセトアミド、アルデヒド、ベンジル、シアノ、ニトロ、チオ、スルホン基、ビニル、カルボキシル、ニトロソ、トリハロシラン(trihalosilane)、トリアルキルシラン(trialkylsilane)、トリアルキルシロキサン(trialkylsiloxane)、トリアルコキシシラン(trialkoxysilane)、ジアゼニウムジオラート、ヒドロキシル、ハロゲン、トリハロメチル(trihalomethyl)、ケトン、ベンジル、およびアルキルチオ(alkylthio)からなる群から選択される1つまたはそれ以上の部分で置換された、請求項8記載の組成物。
【請求項11】
フェニルが多環系に組み込まれている、請求項4または請求項7記載の組成物。
【請求項12】
多環系が、アクリジン、アントラセン、ベンズアザピン(benzazapine)、ベンゾジオキセピン(benzodioxepin)、ベンゾチアジアザピン(benzothiadiazapine)、カルバゾール、シノリン(cinnoline)、フルオレセイン、イソキノリン、ナフタレン、フェナントレン、フェナントラジン(phenanthradine)、フェナジン、フタラジン(phthaladine)、キノリン、およびキノキサリンからなる群から選択される、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
R1が、電子吸引基、シアノ基、エーテル、チオエーテル、および非エナミンアミンからなる群から選択される、請求項3〜請求項5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項14】
エーテルが、-OCH3、-OC2H5、および-OSi(CH3)3からなる群から選択される、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
チオエーテルが、-SC2H5、置換-SPh、および非置換-SPhからなる群から選択される、請求項13記載の組成物。
【請求項16】
アミンが三級アミンである、請求項13記載の組成物。
【請求項17】
アミンが-N(C2H5)2である、請求項13記載の組成物。
【請求項18】
R2が、アルカリ金属、IIa族金属、遷移金属、およびIb族元素からなる群から選択されるカウンターカチオンである、請求項3〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項19】
R2が、アンモニウムおよび他の四級アミンからなる群から選択されるカウンターカチオンである、請求項3〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項20】
R2が、アリール、スルホニル、グリコシル、アシル、アルキル、およびオレフィン基からなる群から選択される保護基である、請求項3〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項21】
アリール基が2,4-ジニトロフェニルである、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
アルキル基が、飽和アルキル、不飽和アルキル、および官能基化(functionalized)アルキルからなる群から選択される、請求項20記載の組成物。
【請求項23】
官能基化アルキルが、2-ブロモエチル、2-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシエチル、およびS-アセチル-2-メルカプトエチルからなる群から選択される、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
アルキル基がビニル基である、請求項20記載の組成物。
【請求項25】
ポリマーが、ポリアルキレート、ポリアリーレート(polyarylate)、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリケトン、スチレン樹脂、ならびにこれらのコポリマーおよび組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項26】
スチレン樹脂が、アクリロニトリルブタジエンスチレンターポリマー、アクリロニトリル-塩素化ポリエチレン-スチレンターポリマー、アクリルスチレンアクリロニトリルターポリマー、スチレンアクリロニトリルコポリマー、オレフィン修飾スチレンアクリロニトリルコポリマー、およびスチレンブタジエンコポリマーからなる群から選択される、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
ポリアミドポリマーが、ポリアクリルアミド、ポリ[4,4'-メチレンビス(フェニルイソシアネート)-アルト-1,4-ブタンジオール/ジ(プロピレングリコール)/ポリカプロラクトン]、ポリ[4,4'-メチレンビス(フェニルイソシアネート)-アルト-1,4-ブタンジオール/ポリ(ブチレンアジパート)]、ポリ[4,4'-メチレンビス(フェニルイソシアネート)-アルト-1,4-ブタンジオール/ポリ(エチレングリコール-コ-プロピレングリコール)/ポリカプロラクトン]、ポリ[4,4'-メチレンビス(フェニルイソシアネート)-アルト-1,4-ブタンジオール/ポリテトラヒドロフラン]、芳香族ポリアミドのテレフタル酸誘導体およびイソフタル酸誘導体、ポリ(イミノ-1,4-フェニレンイミノカルボニル-1,4-フェニレンカルボニル)、ポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)、ポリ(p-ベンズアミド)、ポリ(トリメチルヘキサメチレンテレフタレートアミド)、ポリ-m-キシリレンアジパミド(xylyene adipamide)、ポリ(メタ-フェニレンイソフタルアミド)、ならびにそれらのコポリマーおよび組み合わせからなる群から選択される、請求項25記載の組成物。
【請求項28】
ポリマーが、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリ(4-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルステアレート、ポリビニルピロリドン、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリ(4-ビニルフェノール)、ポリ(1-ビニルナフタレン)、ポリ(2-ビニルナフタレン)、ポリ(ビニルメチルケトン)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(ビニルベンジルクロライド)、ポリビニルアルコール、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(4-ビニルビフェニル)、ポリ(9-ビニルカルバゾール)、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリブタジエン、ポリブテン、ポリ(ブチルアクリレート)、ポリ(1,4-ブチレンアジパート)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンスクシネート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリクロロプレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、ポリスルホン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアリルアミン、ポリ(ベンジルメタクリレート)、ポリエチレンイミンなどの誘導体化ポリオレフィン、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリイソブチレン、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリイソプレン、ポリ(DL-ラクチド)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリピロール、ポリ(カーボネートウレタン)、ポリ[ジ(エチレングリコール)アジパート]、ポリエピクロロヒドリン、フェノール樹脂(ノボラックおよびレゾール(resole))、ポリ(エチルアクリレート)、ならびにグラフトおよび共重合を含む、それらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項29】
ポリマーが、シランおよびシロキサンからなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項30】
シロキサンが、アルコキシシランまたはトリハロシランから誘導される、請求項29記載の組成物。
【請求項31】
ポリマーが、生物分解性ポリマーである、請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項32】
生物分解性ポリマーが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ε-カプロラクトン)、それらのコポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項31記載の組成物。
【請求項33】
ポリマー1およびポリマー2が、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、およびポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートからなる群から別々に選択される、請求項5記載の組成物。
【請求項34】
ポリマー1およびポリマー2の一方または両方がアラミドである、請求項5記載の組成物。
【請求項35】
アラミドが、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)およびポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)からなる群から選択される、請求項34記載の組成物。
【請求項36】
ポリマー1およびポリマー2がポリエチレンテレフタレートである、請求項5記載の組成物。
【請求項37】
フェニル-含有ポリマー;
イミデートまたはチオイミデートでない炭素-系ジアゼニウムジオラート一酸化窒素ドナー分子;および
ポリマーに一酸化窒素ドナー分子を共有結合させて、炭素-系ジアゼニウムジオラート部分を製造するための手段
を含む、標的部位に一酸化窒素を局所的に放出するシステムであって、一酸化窒素を発生する炭素-系ジアゼニウムジオラート部分の分解が生理的条件下で生じ、ドナー分子からニトロソアミンを発生しないシステム。
【請求項38】
哺乳類の組織を一酸化窒素-放出ポリマー組成物に曝露させる段階を含む、該組織に静菌的または殺菌的な量のNOを送達するための方法。
【請求項39】
臓器を灌流するために使用する灌流システム内で、大量の灌流液を一酸化窒素-放出ポリマー組成物に接触させる段階;および
灌流中の臓器の生化学および/または生理機能に影響を与えるのに十分な量の一酸化窒素-放出ポリマー組成物由来の一酸化窒素を灌流液中に放出する段階
を含む、灌流中の臓器に一酸化窒素を送達する方法。
【請求項40】
一酸化窒素-放出ポリマー組成物が請求項1〜36のいずれか1項記載の組成物である、請求項38または請求項39記載の方法。
【請求項41】
ポリマー組成物からの一酸化窒素の放出によって静菌的および/または殺菌的レベルの一酸化窒素が血小板に送達されるように、血小板保存容器に十分な量の一酸化窒素-放出ポリマー組成物を入れる段階を含む、保存されたヒト血小板中の病原体を減少させる、または排除する方法。
【請求項42】
血小板懸濁液を保存するために使用する容器に十分な量の一酸化窒素-放出ポリマー組成物を入れる段階を含み、血小板懸濁液とポリマー組成物の接触により、血小板の活性化を阻止するのに十分な一酸化窒素を発生する、血小板懸濁液の血小板の活性化を防止する血小板保存方法。
【請求項43】
血小板懸濁液を入れるために使用する容器に十分な量の一酸化窒素-放出ポリマー組成物を入れる段階を含み、血小板懸濁液とポリマー組成物の接触により、血小板の活性化を阻止するのに十分な一酸化窒素を発生する、血小板懸濁液の活性化を防止する方法。
【請求項44】
入れる段階が、ポリマー組成物を含む容器を使用することによって、または血小板を容器に導入する前、導入と同時もしくは導入後に容器にポリマー組成物を添加することによって達成される、請求項41〜43のいずれか1項記載の方法。
【請求項45】
一酸化窒素-放出ポリマー組成物が、請求項1〜36のいずれか1項記載の組成物である、請求項41〜43のいずれか1項記載の方法。
【請求項46】
ポリマー組成物が一酸化窒素-放出ポリマー組成物のブレンドである、請求項41〜43のいずれか1項記載の方法。
【請求項47】
許容される薬学的担体および一酸化窒素-放出ポリマー組成物の有効量を導入して、動物に治療的に有効な量の一酸化窒素を放出する段階を含む、動物を治療する方法。
【請求項48】
一酸化窒素-放出ポリマー組成物が請求項1〜36のいずれか1項記載の組成物である、請求項47記載の方法。
【請求項49】
請求項1〜36のいずれか1項記載の組成物である一酸化窒素-放出ポリマーを含む医療用具コーティング。
【請求項50】
一酸化窒素-放出ポリマーが請求項29または請求項30記載の組成物である、請求項49記載の医療用具コーティング。
【請求項51】
医療用具が、血管ステント、人工血管、カテーテル、創傷被覆剤、包帯、採血バッグ、血液成分保存バッグ、人工肺(ECMO)サーキット、内部モニタリング装置、外部モニタリング装置およびインビボ、インビトロまたはエクスビボにおいて哺乳類組織に接触する用具からなる群から選択される、請求項49記載の医療用具コーティング。
【請求項52】
用具の全てまたは一部が、請求項1〜36のいずれか1項記載の一酸化窒素-放出ポリマーを含む医療用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−522324(P2007−522324A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553121(P2006−553121)
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/000174
【国際公開番号】WO2005/081752
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(506272460)アミュレット ファーマシューティカルズ インコーポレイティッド (1)
【Fターム(参考)】