説明

三次元ボールミル

【課題】充分な粉砕効果を得ることのできる三次元ボールミルを提供する。
【解決手段】三次元ボールミルは、第1軸芯を中心とする第1軸と、第1の軸芯の回りを回転するように第1軸に取り付けられた第1回転体と、第1回転体に取り付けられ第1軸芯の方向とは異なる方向に延びる第2の軸芯を中心とする第2軸と、第1の軸芯の回りを回転するように第2軸にり付けられた第2回転体と、第2回転体と一体回転するミルポットと、第1回転体および第2回転体を回転させる駆動装置と、を含めて構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元回転する三次元ボールミルに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、三次元回転する三次元ボールミルは存在しなかった。単一のミルポットを持ったボールミルとして、たとえば、特許文献1に開示されたボールミル(以下、「従来のボールミル」という)がある。従来のボールミルが有するミルポットは円筒形であって、1対のローラー上に平行かつ水平に設置されている。両ローラーの回転は、円筒形のミルポットをその円周方向に二次元回転するように構成されている。一方、ミルポットの両端面の内面は、ミルポット内方へ膨出した形状となっている。ミルポットの回転時に内部のボールの動きを複雑にして粉砕を効率よく行わせようとするためである(特許文献1参照)。
【0003】
他方、特許文献2には、三次元回転機構を備えたクリノスタッドが開示されている。そもそもボールミルは擬似的な無重力状態を作るために10rpm以下の低速でランダムに回転するものであり、さらにミルポットなどを備えていないなどボールミルとは、その目的、構成さらに作用効果を全く異にする。このため先行技術として挙げるまでもないが、3次元回転機構が本発明のそれと若干の類似性があるので念のために記載しておく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−196117号公報(段落0014、0025、図1参照)
【特許文献2】特開2008−273276号公報(段落0011、0012、図1、2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ミルポットの回転は円周方向のみであるから、その回転により遠心力を受けたボールはミルポット上位の円筒内壁に向かって移動する。このため、上記膨出部と衝突する機会は必ずしも多くない。このため、その作用を受けたボールが粉砕に寄与する機会は少ない。したがって、二次元回転する円筒状のミルポットでは、充分な粉砕効果を得ることができない。本発明が解決しようとする課題は、この点を改良し充分な粉砕効果を得ることのできる三次元ボールミルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、次項以下に示す構成を備えている。なお、いずれかの請求項記載の発明を説明するに当たって行う用語の定義等は、その記載順に関わらず可能な範囲において他の請求項記載の発明にも適用があるものとする。
【0007】
(請求項1記載の発明の特徴)
請求項1記載の発明に係る三次元ボールミル(以下、適宜「請求項1のミル」という)は、第1の軸芯を中心とする第1軸と、前記第1の軸芯の回りを回転するように前記第1軸に取り付けられた第1回転体と、前記第1回転体に取り付けられ前記第1軸芯の方向とは異なる方向に延びる第2の軸芯を中心とする第2軸と、前記第1の軸芯の回りを回転するように前記第2軸に取り付けられた第2回転体と、前記第2回転体と一体回転するミルポットと、前記第1回転体および前記第2回転体を回転させる駆動装置と、を含めて構成してある。なお、第1回転軸と第2回転軸とは直交させるのが一般的であるが、これにこだわるものではない。
【0008】
請求項1のミルによれば、第1軸の中心である第1軸芯の回りを第1回転体が回転する。第1回転体に取り付けられた第2軸の中心である第2軸芯の回りを第2回転体が回転する。これらの回転の駆動源は駆動装置である。ここで第2回転体と一体回転するミルポットに着目すると、ミルポットも第2軸芯の回りを回転しながら第1軸芯の回りを回転する。すなわち、三次元回転する。三次元回転により、ミルポット収容物が二次元回転に比べ複雑な運動を繰り返すのでより効率のよい撹拌粉砕(破砕)が実現する。
【0009】
(請求項2記載の発明の特徴)
請求項2記載の発明に係るボールミル(以下、適宜「請求項2のミル」という)は、請求項1のミルであって、前記ミルポットの内壁面は、それが囲む空間がほぼ球形となるように形成してある。
【0010】
請求項2のミルによれば、請求項1のミルの作用効果に加え、ミルポットの内壁面を上記のように形成することにより、被粉砕物の駆け上がりが円滑になる。すなわち、遠心力を受けた被粉砕物は重力に逆らいながら内壁面に沿って上昇するが、その上昇を円滑にすることによって内壁面を満遍なく有効活用することができる。その結果、粉砕効率を高めることができる。
【0011】
(請求項3記載の発明の特徴)
請求項3記載の発明に係るボールミル(以下、適宜「請求項3のミル」という)は、請求項2のミルの構成を前提に、次のように構成してある。つまり、前記ミルポットの内壁面の一部は、前記内壁面の曲率よりも小さな曲率の曲面もしくは平面に形成してある。
【0012】
請求項3のミルによれば、請求項2のミルの作用効果に加え、内壁面の一部に係る曲面もしくは平面によって被粉砕物が同曲面もしくは平面から離れる方向に蹴り放たれ、その結果、被粉砕物の運動方向に変化を生じさせる。運動方向の変化により、変化のない場合に比べ被粉砕物の粉砕効果をよりよくすることができる。
【0013】
(請求項4記載の発明の特徴)
請求項4記載の発明に係るボールミル(以下、適宜「請求項4のミル」という)は、請求項1ないし3いずれかのミルの構成を前提に、次のように構成してある。つまり、前記ミルポットは、被粉砕物を収容するインナーポットと、前記インナーポットを保護包囲するアウターポットを含めて構成してある。インナーポットとアウターポットは、互いに違う素材で構成してもよいし、同じ素材で構成してもよい。
【0014】
請求項4のミルによれば、請求項1ないし3いずれかのミルの作用効果に加え、アウターポットの保護包囲によりインナーポット、ひいては、ミルポット全体の安全性をより高めることができる。そもそもミルポット自体が破損することは考えられない事態ではあるが、念には念を入れた安全対策である。さらに、インナーポット自体を外力から保護する意味もある。
【0015】
(請求項5記載の発明の特徴)
請求項5記載の発明に係るボールミル(以下、適宜「請求項5のミル」という)は、請求項4のミルの構成を前提に、前記インナーポットはジルコニアにより構成してある。
【0016】
請求項5のミルによれば、請求項4のミルの作用効果に加え、インナーポットはジルコニアを用いることにより、コンタミネーションを防ぐことができる。
【0017】
(請求項6記載の発明の特徴)
請求項6記載の発明に係るボールミル(以下、適宜「請求項6のミル」という)は、請求項1ないし5いずれかのミルの構成を前提に、前記駆動装置が、前記第1回転体を回転させる駆動源と、前記第1回転体の回転力によって前記第2回転体を前記第2軸の回りで回転させる駆動力伝達装置と、を備えている。
【0018】
請求項6のミルによれば、請求項1ないし5いずれかのミルの作用効果に加え、駆動源は第1回転体を回転させ、この第1回転体の回転は駆動力伝達装置を介して第2回転体を回転させる。すなわち、上記構成によれば1個の駆動源でミル全体を駆動することができる。駆動源が1個であれば、複雑な制御も必要ない。
【0019】
(請求項7記載の発明の特徴)
請求項7記載の発明に係るボールミル(以下、適宜「請求項7のミル」という)は、請求項6のミルの構成を前提に、前記駆動力伝達装置は、前記第1軸に回転不能に同軸固定された主動円板と、前記第2軸に回転不能に同軸固定された従動円板と、を具備し、前記第2軸は、その軸芯が前記第1軸の軸芯と直交するように配され、前記主動円板周縁が前記従動円板の板面に圧接する(押し付ける)よう構成されてなる。
【0020】
請求項7のミルによれば、請求項6のミルの作用効果に加え、駆動力伝達装置の作用効果が次のようになる。すなわち、主動円板が第1軸と一体回転する。一体回転による主動円板の回転はその円板周縁が圧接された従動円板の板面に伝達され、これによって従動円板が回転する。従動円板の回転は第2軸を回転させ、第2軸の回転により第2回転体(ミルポット)を回転させる。第2回転軸用の駆動原を第1回転軸用の駆動装置とは別に設けることを妨げる趣旨ではないが、上述した主動従動の関係を形成することにより、単一の駆動装置によって三次元回転を実現することができるので、構造的にたいへんシンプルなものとすることができる。
【0021】
(請求項8記載の発明の特徴)
請求項8記載の発明に係るボールミル(以下、適宜「請求項8のミル」という)は、請求項7の構成を前提に、次のように構成してある。つまり、前記主動円板と前記従動円板との圧接は、前記主動円板周縁もしくは前記従動円板板面のいずれか、または、前記主動円板周縁と前記従動円板板面の両者に設けられた弾性体(エラストマー材)を介して行うように構成してある。
【0022】
請求項8のミルによれば、請求項7のミルの作用効果に加え、次の作用効果を生じる。つまり、主動円板周縁の従動円板板面に対する圧接が弾性体を介して行われる場合は行われない場合に比べ、弾性体の弾性変形によって圧接力と摩擦力が増加し、これにより駆動力伝達のロスが少なくなる。つまり、効率よく伝達されるようになる。弾性体は、主動円板周縁だけ、もしくは従動円板板面だけのいずれに設けてもよいし、両者に設けてもよいが、その形状や材質等は駆動力伝達に都合よいものを選択すべきことは言うまでもない。
【0023】
(請求項9記載の発明の特徴)
請求項9記載の発明に係るボールミル(以下、適宜「請求項9のミル」という)は、請求項1ないし5いずれかのミルの構成を前提に、次のように構成してある。つまり、前記駆動装置が、前記第1回転体を回転させる第1駆動源と、前記第2回転体を回転させる第2駆動源と、を備えている。
【0024】
請求項9のミルによれば、請求項1ないし5いずれかのミルの作用効果に加え、駆動源を個別にしたことにより、第1回転体と第2回転体を個別駆動することができるようになる。単一の駆動源にくらべ制御は複雑になるが、個別駆動することにより第1回転体と第2回転体の回転にバリエーション(たとえば、一方と他方の回転速度を変える)を付加することができる。回転バリエーションは被粉砕物の性質(固い柔らかいなど)や粉砕状態(粗粉砕、微粉砕など)などに応じたミル粉砕を可能とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、二次元回転する円筒状のミルポットに比べ、粉砕効果をよりよくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態になるボールミルの概略正面図である。
【図2】図1に示すボールミルの右側面図である。
【図3】図1に示すボールミルの右側面図である。
【図4】図1に示すボールミルにおいて、第1回転体、第2回転体およびミルポットを取り出して示す正面図である。
【図5】主動円板および従動円板の関係を示す図である。
【図6】図1に示すボールミルに駆動装置の変形例を用いた正面図である。
【図7】ミルポットの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1および3を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下、適宜「本実施形態」という)について説明する。
【0028】
(ボールミルの概略構造)
図1ないし3を参照しながら説明する。本実施形態に係るボールミル1は、床面上に設置される直方体形状のベース部51と、ベース部51上で起立する2本の支持柱53,55と、支持柱53,55の頂部を連結する渡し板57によって外観が形成されている。さらにボールミル1は、第1軸3と、第2軸9と、第1回転体5と、第1回転体5の内側に設けられた第2回転体11と、駆動装置7(例えば、電動モータ)を主要部品として具備する。ここで、図2ではベース51および支持柱55を実線で表し、図3では内部構造を示すためにこれらを二点鎖線で示す。
【0029】
(軸の構造)
参照図面は、図1ないし3である。本実施形態の第1軸3は、第1の軸芯3Lを中心とし水平方向に延びている。第1軸3は、支持柱53に固定された固定軸3aと支持柱55に回転可能に固定された回転軸3bとにより構成してある。本明細書では、軸全体を示す場合は第1軸3と表し、軸を個別に示す場合は固定軸3aもしくは回転軸3bと記すことにする(第2軸9でも同じ)。一方、本実施形態の第2軸9は、第2の軸芯9Lを中心とし垂直方向に延びている。第2軸9は、一対の回転軸9a、回転軸9bにより構成してある。回転軸9a,9bは、後述するようにいずれも回転自在となるように第1回転体5に固定してある。なお、本実施形態の第1軸3と第2軸9は、互いに直交させてあるが、これを異なる角度に交差させることを妨げない。
【0030】
(回転体の構造)
図1ないし4に示すように第1回転体5は、矩形の枠体であって、第1軸3(固定軸3a、回転軸3b)に取り付けられ、第1軸3の軸芯3Lの回りを回転するように構成してある。第1軸3の取付位置は、第1回転体5の縦方向ほぼ中央である。矩形を選択したのは、後述する駆動力伝達装置21との関係から都合よいのでそうしたに過ぎない。たとえば、円形その他の形状を選択することなんら問題はない。第1回転体5は、その一方が軸受5aを介して固定軸3aに対して回転可能に支持されている。第1回転体5の他方は一体回転するように回転軸3bの一端側に固定してある。回転軸3bは軸受5bを介して支持柱55に対して回転可能に支持されており、その他端は支持柱55の外側に突き出している。以上により、第1回転体5を第1軸3の軸芯3Lの回りで回転させることができる。ここで、図4は図1記載のベース51、支持柱53および55、渡し板57等を省略し、第1回転体、第2回転体およびミルポットを取り出して示す。
【0031】
第1回転体5の横方向ほぼ中央には軸受11aおよび軸受11bを設けてある。軸受11aおよび軸受11bを介して回転自在となるように回転軸9a、回転軸9bが第1回転体5に支持されている。回転軸9a、回転軸9bは、第1回転体5の内側に向かって突き出ており、その突き出たそれぞれの突出端を第2回転体11に回転不能に固定してある。以上により、第2回転体11を第2軸9の軸芯9Lの回りで第1回転体に対して回転させることができる。
【0032】
支持柱55から突き出した回転軸3bの他端は、モータ(駆動装置)7の軸との間にベルト8がかけられ、モータ7の回転力によって回転軸3bおよび第1回転体5が軸芯3Lの回りで回転するようになっている。
【0033】
第2回転体11は、第1回転体5によって仕切られた空間の中で回転できる大きさの矩形の枠体11cを基本構造とする。第2回転体11は、さらに、枠体11cの両面を挟み取り外しし易いようにネジ固定された2枚の支持板11d,11dと、を備えている。各支持板11d、11dには、その中心に円形の支持孔11h,11hを貫通形成してある。支持孔11hは、支持されるミルポット31の直径よりも小さく形成され、その周縁にはゴム製のリングパッキン11p,11pをはめ込んである。第2回転体11は、前述したように、回転軸9aと回転軸9bによって回転自在となるように第1回転体5に支持されている。第2回転体11の駆動源については後述する。
【0034】
(ミルポットの形状)
図1ないし4が示すようにミルポット31は外観ほぼ球形に形成してある。具体的にはステンレス製のフランジ31b、31b付きの半球体31a,31aのフランジ31b,31bを重ね合わせてミルポット31の形を作る(図3および4参照)。粉砕用ボールと被粉砕物は、この重ね合わせの前にミルポット31の中に入れておく。ミルポット31は、その外観と同じくその内壁面も、内壁面が囲む空間もほぼ球形となる。球形以外の形状を妨げる趣旨ではないが、球形にすることにより他の形状に比べ回転に伴う被粉砕物の壁面に沿った駆け上がりの効率がよい。効率よく駆け上がるから、被粉砕物の粉砕を効率よく行うことができる。この駆け上がり効果に加え蹴り揚げ効果を生じさせるために本実施形態のミルポット31は、内壁面の一部を内壁面曲率よりも小さな曲率の平面(平面部3f)に形成してある。すなわち、一部を平らにしてある。平面の部分の回転により被粉砕物が蹴りあげられ、さらに粉砕効率を高めることができる。
【0035】
(ミルポットの取り付け)
図1、3および4が示すように球形のミルポット31は、支持板11d,11dに挟まれ固定されるようになっている。すなわち、一方の支持板11dを枠体11cに取り付けた状態で、その支持版11dの支持孔11hにミルポット31を入れる。このとき、フランジ31b,31bは、支持版11d,11dの間に入るように入れる。そのようにして入れると、リングパッキン11pがミルポット31に当接して片支持される。その状態を保持しながら他方の支持板11dを枠体11cに取り付けようとすると他方の支持孔11hからミルポット31の一部がはみ出して他方のリングパッキン11pに当接支持される。ここで、他方の支持板11dを枠体11cにネジ固定すれば、ミルポット31を回転体11に取り付けることができる。
【0036】
(駆動力伝達装置の構造)
第2回転体11の駆動源となる駆動力伝達装置21は、例えば下記のような構造を備えている。まず第1例として挙げられる駆動力伝達装置21は、第1軸3(水平軸)と一体回転するように回転不能に同軸固定された主動円板23をまず具備する。さらに、第2軸9(垂直軸)に回転不能かつ第2の軸芯に対して垂直に取り付けられた従動円板25を具備している。第2軸9は、その軸芯(第2軸芯)が第1軸3の第1軸芯と直交するように配され、主動円板23周縁24が従動円板25の板面26に圧接するよう構成されている。これにより、駆動装置7によって第1軸3の回り(第1軸3の軸芯の回り)を回転する第1回転体5の回転力が第2回転体11に伝達され第2軸9(垂直軸)の回り(第2軸9の軸芯の回り)を回転するようになる。
【0037】
なお、本実施形態では、主動円板23の周縁24には弾性体27を設けてある。この弾性体27は、その弾性変形によって従動円板25の板面26に対する圧接力と摩擦力を増加させ、これにより駆動力伝達のロスを少なくするためのものである。周縁24とともに板面26にも弾性体(図示を省略)を設けてもよいし、周縁24には設けず板面26にだけ弾性体(図示を省略)を設けてもよい。もっとも、弾性体27は必須ではなく必要ないと判断するのであれば、これを省略して周縁24を板面26に直接圧接するように構成した。
【0038】
(補助円板)
図1において、二点鎖線で補助円板29を示す。補助円板29は、第1回転体5に固定した固定軸30に対して回転自在に取り付けた小円板である。補助円板は、主動円板23とほぼ平行に、かつ、第2軸9を間に挟んで主動円板23と反対側の位置に配してある。第2回転体11における片側端においてのみ主動円板23が当接していると(補助円板29がないとすると)、第2回転体11(従動円板25)のバランスが崩れ円滑な回転ができなくなる恐れも有る。これを未然防止し主動円板23から第2回転体11に対して加わる力とのバランスを取って円滑回転を確保するために、第2回転体11に圧接し、転がり接触する補助円板29を設けた。しかし、これを不要と考えるのであれば、補助円板29を省略することができる。
【0039】
(本実施形態の作用効果)
図1ないし5を参照しながら、本実施形態の作用効果を説明する。モータ7の回転は、ベルト8を介して回転軸3bを回転させる。回転軸3bの回転は、それと一体の第1回転体5を回転させる。このとき第1回転体5は、固定軸3aに対しても回転している。これで、第1回転体5が第1軸芯3Lの回りを回転する。固定軸3aに同軸固定された主動円板23は、第1回転体5が回転しても回転しない(図5(1)〜(4))。従動円板25は第2軸9と同軸一体回転し、第2軸9は第1回転体5に対して回転するようになっている。これに加え従動円板25は第1回転体5と一緒に第1軸芯3Lの回りを回転する。
【0040】
ここで、図5に示すように従動円板25が第1軸芯3Lの回りを回転(この回転を「公転」という)すると、その板面26はそれが圧接している主動円板23の周縁24(弾性体27)と転がり接触して第2軸芯9Lの回りを回転(この回転を「自転」という)する。つまり、主動円板23と従動円板25のそれぞれに目印のために付けた黒点の位置を見れば分かるように、主動円板23の黒点の位置は変化しないが自転しながら公転する従動円板25の黒点の位置が変化する。したがって従動円板25と一体の第2回転体11(ミルポット31)も、自転しながら公転する。
【0041】
(駆動装置の変形例)
第1回転体5は、駆動装置7を制御することで、その回転速度を制御(可変)できる。しかしながら、上述した構成の駆動力伝達装置21では、第2回転体11の回転速度(V2)は、第1回転体5の回転速度(V1)と常に一定の関係にならざるを得ない。例えば、V2=kV1(kは定数)である。一方、単一の駆動源にくらべ制御は複雑になるが、個別駆動することにより第1回転体5と第2回転体11の回転にバリエーション(たとえば、一方と他方の回転速度を変える)を付加することができる。回転バリエーションは被粉砕物の性質(固い柔らかいなど)や粉砕状態(粗粉砕、微粉砕など)などに応じたミル粉砕を可能とする。すなわち、図6に示すボールミル1´は、回転軸3´aと一体同軸回転するように固定された主動円板23´をモータ7´の回転によって回転させ、その回転力により従動円板25を第2軸芯9Lの回りで自転させるように構成してある。その他の点については、ボールミル1の構造と同じである。
【0042】
(ミルポットの変形例)
図7を参照しながら、ミルポットの変形例について説明する。ミルポット60は、被粉砕物を収容するインナーポット61と、インナーポット61を保護包囲するアウターポット71を含めて構成してある。インナーポット61は筒状で上部開口の筒状のポット本体63と上部開口を塞ぐ蓋体65とから構成され、前者のフランジ部63fと後者のフランジ部65fとを重ね合わせた後ネジ固定して密封するようになっている。インナーポット61の材質は物理的・化学的に使用可能なものであれば何でもよいが、本実施形態ではジルコニアである。ジルコニアを採用した理由はコンタミネーションを防ぐために好都合だからである。
【0043】
アウターポット71は筒状で上部開口の筒状のポット本体73と上部開口を塞ぐ蓋体75とから構成され、前者のフランジ部73fと後者のフランジ部75fとを重ね合わせた後ネジ固定して密封するようになっている。アウターポット71の材質は物理的・化学的に使用可能なものであれば何でもよいが、本実施形態ではステンレスである。ステンレスを採用した理由はインナーポット61を保護するために好適だからである。
【0044】
ミルポット60を二重構造にした理由は、アウターポット71の保護包囲によりインナーポット61、ひいては、ミルポット全体の安全性をより高めるためである。そもそもミルポット自体が破損することは考えられない事態ではあるが、念には念を入れた安全対策である。さらに、インナーポット自体を外力から保護する意味もある。
【符号の説明】
【0045】
1 ボールミル
3 第1軸
3a 固定軸
3b 回転軸
3f 平面部
3L 軸心
5 第1回転体
5a,5b 軸受
7 駆動装置
8 ベルト
9 第2軸
9L 軸心
9a,9b 回転軸
9L 軸心
11 第2回転体
11a,11b 軸受
11c 枠体
11d 支持板
11h 支持孔
11p パッキン
21 駆動力伝達装置
23 主動円板
24 周縁
25 従動円板
26 板面
27 弾性体
29 補助円板
31 ミルポット
31a 半球体
31b フランジ
51 ベース部
53,55 支持柱
56 渡し板
60 ミルポット
61 インナーポット
71 アウターポット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸芯を中心とする第1軸と、
前記第1の軸芯の回りを回転するように前記第1軸に取り付けられた第1回転体と、
前記第1回転体に取り付けられ前記第1軸芯の方向とは異なる方向に延びる第2の軸芯を中心とする第2軸と、
前記第1の軸芯の回りを回転するように前記第2軸にり付けられた第2回転体と、
前記第2回転体と一体回転するミルポットと、
前記第1回転体および前記第2回転体を回転させる駆動装置と、を含めて構成してある
ことを特徴とする三次元ボールミル。
【請求項2】
前記ミルポットの内壁面は、それが囲む空間がほぼ球形となるように形成してあること
を特徴とする請求項1記載の三次元ボールミル。
【請求項3】
前記ミルポットの内壁面の一部は、前記内壁面の曲率よりも小さな曲率の曲面もしくは平面に形成してある
ことを特徴とする請求項2記載の三次元ボールミル。
【請求項4】
前記ミルポットは、被粉砕物を収容するインナーポットと、前記インナーポットを保護包囲するアウターポットを含めて構成してある
ことを特徴とする1ないし3いずれか記載の三次元ボールミル。
【請求項5】
前記インナーポットはジルコニアにより構成してある
ことを特徴とする請求項4記載の三次元ボールミル。
【請求項6】
前記駆動装置が、前記第1回転体を回転させる駆動源と、前記第1回転体の回転力によって前記第2回転体を前記第2軸の回りで回転させる駆動力伝達装置と、を備えている
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか記載の三次元ボールミル。
【請求項7】
前記駆動力伝達装置は、
前記第1軸に回転不能に同軸固定された主動円板と、
前記第2軸に回転不能に同軸固定された従動円板と、を具備し、
前記第2軸は、その軸芯が前記第1軸の軸芯と直交するように配され、
前記主動円板周縁が前記従動円板の板面に圧接するよう構成されてなる
ことを特徴とする請求項6記載の三次元ボールミル。
【請求項8】
前記主動円板と前記従動円板との圧接は、前記主動円板周縁もしくは前記従動円板板面のいずれか、または、前記主動円板周縁と前記従動円板板面の両者に設けられた弾性体を介して行うように構成してある
ことを特徴とする請求項7の三次元ボールミル。
【請求項9】
前記駆動装置が、前記第1回転体を回転させる第1駆動源と、前記第2回転体を回転させる第2駆動源と、を備えている
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか記載の三次元ボールミル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−55860(P2012−55860A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203565(P2010−203565)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名 平成22年度春季大会(第105回講演大会) 主催者名 社団法人 粉体粉末冶金協会 開催日 平成22年5月25日
【出願人】(596096320)有限会社ナガオシステム (7)
【Fターム(参考)】