説明

三次元曲線化方法及びシステム

【課題】ユーザによって二次元空間で入力された曲線を、三次元空間の立体の形状に沿って対応付けることができる方法及びシステムを提供すること。
【解決手段】三次元曲線化システム100は、三次元空間の曲線を構成する点の位置データと、Zバッファ値とを対応付けて予め記憶する既存曲線記憶部22と、ユーザによって表示平面に入力された二次元空間の曲線である入力曲線を受け付ける入力受付手段11とを備える。そして、三次元曲線化システム100は、受け付けた入力曲線31と、既存曲線記憶部22に記憶された三次元空間の曲線である既存曲線40とのパラメータ化を行い、パラメータ化によって、既存曲線40を構成する既存点に対応付けられた、入力曲線31を構成する入力点を求め、既存点のZバッファ値を取得し、入力点と、取得したZバッファ値とを対応付けて、三次元空間の新たな曲線41を構成する新規点を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが入力した二次元空間の曲線から三次元空間の曲線を作成する三次元曲線化方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デザイナは、紙に鉛筆やその他の筆記用具を用いて絵(デッサン)を描いて、工業製品の外観を表していた。また、デザイナ等は、その絵のデータを元に具体的にイメージするためにCAD(Computer Aided Design)を用いて三次元立体図を作成することが行われていた。このCADは、その操作等に関する知識を必要とするものであり、デザイナの感性をそのまま活かしにくいものであった。
【0003】
このような三次元立体図を作成する際に入力する線や、曲線の生成に関する開示として、特許文献1から特許文献3が知られている。
【0004】
特許文献1は、自由な曲線、曲面を有する形状設計方式を開示している。この形状設計方式は、物体モデル、又は数値モデルから得られた一群の点列をコンピュータに入力し、入力した点に基づいて曲線式を定めるための位置ベクトルを演算し、補間曲線を発生させ、曲線を有する形状を具現させる。そして、具現した形状に対して、図形入力装置を操作して得られた点の値を変更してその部分の曲線を修正するプロセスを繰り返すことにより、曲線を有する形状を設計する。
【0005】
特許文献2は、元モデルの元面をオフセット処理して得たオフセット面の交線を確実かつ速やかに決定する方法を開示している。この方法は、元モデルを構成する元面からオフセット面の算出を行う。元面S0,S1の交線を構成する点(交点)Piを通る元面S0の法線Ni0と、オフセット面OS0の交点を第1挟み打ち点OPi0とする。交点Piを通る元面S1の法線Ni1と、オフセット面OS1の交点を第2挟み打ち点OPi1とする。第1挟み打ち点OPi0を通り法線Ni1と平行な直線と、第2オフセット面OS1との交点を第3挟み打ち点OQi1とする。第2挟み打ち点OPi1を通り法線Ni0と平行な直線と、第1オフセット面OS0との交点を第4挟み打ち点OQi0とする。以上の4つの挟み打ち点から挟み打ち収束によって、オフセット面の交線の構成点(交点)を求める。このオフセット面の交点を複数決定し、これらの交点を結び交線を決定する。
【0006】
特許文献3は、デザイナの意図やイメージが反映された三次元形状データを作成することができる、三次元形状データの作成方法を開示している。この三次元形状データの作成方法は、アングル法又は3点法によりスケッチの三次元空間での配置位置と視点方向を決定し、更にスケッチに描かれた車両のドア断面とセンター断面との三次元空間での断面線を求め、得られたドア断面線とセンター断面線とに基づいて、三次元空間での車両の空間曲線を求め、立体歪みを修正し、曲面を創成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭50−125649号公報
【特許文献2】特開平11−73435号公報
【特許文献3】特開2007−179452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の方式は、図形入力装置を操作して得られた点の値を変更して曲線を修正するだけなので、例えば、図形入力装置に対して行われる手描き動作によって曲線を修正することはできない。特許文献2の方法は、オフセット面の交線を求めるだけなので、交線を二次元空間の手描き動作による曲線に基づいて修正することはできない。特許文献3の作成方法は、断面線の修正を行う場合に図面上の断面線を修正するだけなので、例えば、二次元空間の操作によって、三次元空間の立体の形状に沿って曲線を生成したり、修正したりすることはできない。
【0009】
そこで、二次元空間で曲線を描くことが、そのまま三次元空間の立体の形状に沿って描くことになる方法が求められている。
【0010】
本発明は、ユーザによって二次元空間で入力された曲線を、三次元空間の立体の形状に沿って対応付けることができる方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、具体的には次のようなものを提供する。
【0012】
(1) 三次元空間の曲線を構成する点の位置データと、当該点と当該点を表示する表示平面との奥行きの情報であるZバッファ値とを対応付けて予め記憶する既存曲線記憶手段を備えるコンピュータが、入力した二次元空間の曲線から三次元空間の新たな曲線を作成する三次元曲線化方法であって、ユーザによって前記表示平面に入力された二次元空間の曲線である入力曲線を受け付ける第1のステップと、受け付けた前記入力曲線と、前記既存曲線記憶手段に記憶された三次元空間の曲線である既存曲線とのパラメータ化を行う第2のステップと、前記パラメータ化によって、前記既存曲線を構成する既存点に対応付けられた、前記入力曲線を構成する入力点を求める第3のステップと、前記既存点の前記Zバッファ値を取得する第4のステップと、前記入力点と、取得した前記Zバッファ値とを対応付けて、三次元空間の新たな曲線を構成する新規点を作成する第5のステップと、複数の前記入力点に基づいてそれぞれ作成した複数の前記新規点から三次元空間の新たな曲線を作成する第6のステップと、を備えることを特徴とする三次元曲線化方法。
【0013】
(1)の構成によれば、本発明に係る三次元曲線化方法は、三次元空間の曲線を構成する点の位置データと、当該点と当該点を表示する表示平面との奥行きの情報であるZバッファ値とを対応付けて予め記憶する既存曲線記憶手段を備えるコンピュータが、入力した二次元空間の曲線から三次元空間の新たな曲線を作成する三次元曲線化方法であって、ユーザによって表示平面に入力された二次元空間の曲線である入力曲線を受け付け、受け付けた入力曲線と、既存曲線記憶手段に記憶された三次元空間の曲線である既存曲線とのパラメータ化を行い、パラメータ化によって、既存曲線を構成する既存点に対応付けられた、入力曲線を構成する入力点を求め、既存点のZバッファ値を取得し、入力点と、取得したZバッファ値とを対応付けて、三次元空間の新たな曲線を構成する新規点を作成する。そして、複数の入力点に基づいてそれぞれ作成した複数の新規点から三次元空間の新たな曲線を作成する。
【0014】
すなわち、本発明に係る三次元曲線化方法は、三次元空間の既存曲線を構成する既存点に対応する、入力された二次元空間の曲線を構成する入力点を求め、求めた入力点に既存点のZバッファ値を対応付け、三次元空間の新たな曲線を構成する新規点を作成する。ここで、三次元空間の既存曲線が三次元空間の立体形状を構成する場合に、新規点は、既存点のZバッファ値が対応付けられているので、三次元空間の立体形状に対応付けられる。よって、新規点によって構成される三次元空間の新たな曲線は、三次元空間の立体形状に対応付けられる。したがって、本発明に係る三次元曲線化方法は、ユーザによって二次元空間で入力された曲線を、三次元空間の立体の形状に沿って対応付けることができる。
【0015】
(2) (1)に記載の三次元曲線化方法であって、前記第1のステップは、デジタイザを用いたユーザの手描き動作に基づいて前記表示平面に入力された二次元空間の曲線を受け付けることを特徴とする三次元曲線化方法。
【0016】
(2)の構成によれば、本発明に係る三次元曲線化方法は、デジタイザを用いたユーザの手描き動作に基づいて表示平面に入力された二次元空間の曲線から、三次元空間の新たな曲線を作成する。したがって、本発明に係る三次元曲線化方法は、ユーザが手描き動作で入力した二次元空間の曲線を、三次元空間の立体の形状に沿って対応付けることができる。
【0017】
(3) (1)又は(2)に記載の三次元曲線化方法であって、前記第1のステップは、前記既存曲線が表示されている前記表示平面に入力された前記入力曲線を受け付けると共に表示することを特徴とする三次元曲線化方法。
【0018】
(3)の構成によれば、本発明に係る三次元曲線化方法は、既存曲線が表示されている表示平面に入力された入力曲線を受け付けると共に表示し、三次元空間の新たな曲線を作成する。したがって、本発明に係る三次元曲線化方法は、ユーザが入力した二次元空間の曲線を、立体形状を構成する既存曲線を見ながら三次元空間の立体の形状に沿って対応付けることができる。
【0019】
(4) 入力した二次元空間の曲線から三次元空間の新たな曲線を作成する三次元曲線化システムであって、三次元空間の曲線を構成する点の位置データと、当該点と当該点を表示する表示平面との奥行きの情報であるZバッファ値とを対応付けて予め記憶する既存曲線記憶手段と、ユーザによって前記表示平面に入力された二次元空間の曲線である入力曲線を受け付ける入力受付手段と、受け付けた前記入力曲線と、前記既存曲線記憶手段に記憶された三次元空間の曲線である既存曲線とのパラメータ化を行うパラメータ化手段と、前記パラメータ化によって、前記既存曲線を構成する既存点に対応付けられた、前記入力曲線を構成する入力点を求める入力点取得手段と、前記既存点の前記Zバッファ値を取得するZ値取得手段と、前記入力点と、取得した前記Zバッファ値とを対応付けて、三次元空間の新たな曲線を構成する新規点を作成する新規点作成手段と、複数の前記入力点に基づいてそれぞれ作成した複数の前記新規点から三次元空間の新たな曲線を作成する三次元曲線作成手段と、を備えることを特徴とする三次元曲線化システム。
【0020】
(4)の構成によれば、本発明に係る三次元曲線化システムは、三次元空間の曲線を構成する点の位置データと、当該点と当該点を表示する表示平面との奥行きの情報であるZバッファ値とを対応付けて予め記憶する既存曲線記憶手段と、ユーザによって表示平面に入力された二次元空間の曲線である入力曲線を受け付ける入力受付手段とを備える。そして、本発明に係る三次元曲線化システムは、受け付けた入力曲線と、既存曲線記憶手段に記憶された三次元空間の曲線である既存曲線とのパラメータ化を行い、パラメータ化によって、既存曲線を構成する既存点に対応付けられた、入力曲線を構成する入力点を求め、既存点のZバッファ値を取得し、入力点と、取得したZバッファ値とを対応付けて、三次元空間の新たな曲線を構成する新規点を作成し、複数の入力点に基づいてそれぞれ作成した複数の新規点から三次元空間の新たな曲線を作成する。
【0021】
よって、三次元空間の既存曲線が三次元空間の立体形状を構成する場合に、本発明に係る三次元曲線化システムが作成した新たな曲線を構成する新規点は、既存点のZバッファ値が対応付けられているので、三次元空間の立体形状に対応付けられる。したがって、本発明に係る三次元曲線化システムは、ユーザによって二次元空間で入力された曲線を、三次元空間の立体の形状に沿って対応付けることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ユーザによって二次元空間で入力された曲線を、三次元空間の立体の形状に沿って対応付けることができる。
【0023】
更に、本発明は、ユーザであるデザイナが二次元空間で入力した線を自動的に、対応する立体の三次元曲面にフィットさせるので、デザイナがフリーハンドで紙にデザインスケッチする感覚で線を入力することができる。その結果、本発明は、デザインの精度や多様性、反復性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態に係る三次元曲線化システム100の全体構成及び機能構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係るメイン処理のフローチャートである。
【図3】本実施形態に係る、既存曲線40のZバッファ値を用いた三次元座標リストの作成処理のフローチャートである。
【図4】本実施形態に係る三次元曲線化処理の具体例を示す図である。
【図5】図4に続く、三次元曲線化処理の具体例を示す図である。
【図6】図5に続く、三次元曲線化処理の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0026】
[三次元曲線化システム100の全体構成及び機能構成]
図1は、本実施形態に係る三次元曲線化システム100の全体構成及び機能構成を示す図である。本実施形態は、ユーザが入力した線を、既存の立体形状に沿った三次元空間の曲線に近い曲線にする。
【0027】
三次元曲線化システム100は、デジタイザ1と、モニタ5と、制御部10と、記憶部20とから構成され、それぞれ図示しないバスラインを介して接続されている。
【0028】
デジタイザ1は、入力装置であり、板状部材2と、ペン部材3とを組み合わせた構造である。板状部材2は、モニタ5の中での位置を検出するための板状の装置である。ペン部材3は、モニタ5に対する位置を指示するためのペン型の装置である。デジタイザ1は、モニタ5に対応する板状部材2の上でペン部材3により絶対位置を指定するため、細かい作業に向いている。デジタイザ1は、従来、鉛筆等の筆記用具を使用して紙にデザインしていたデザイナが、従来のデザイン作業と同等の感覚でデザイン作業ができることから選択された。デジタイザ1は、ペン部材3の進化に伴って、より紙に描く感じでデザイナに作業を行わせることができる。
【0029】
モニタ5は、例えば、デジタイザ1から入力された複数の線や、その複数の線から生成されたポリラインを表示するブラウン管表示装置(CRT)、液晶表示装置(LCD)等のディスプレイ装置である。
【0030】
制御部10は、情報の演算及び処理を行う情報演算処理装置(CPU)であり、当該三次元曲線化システム100の全体を制御するものである。制御部10は、記憶部20に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、三次元曲線化システム100のハードウェアと協働し、本発明に係る各種機能を実現している。
【0031】
制御部10は、入力受付手段11と、パラメータ化手段12と、入力点取得手段13、Z値取得手段14と、新規点作成手段15と、三次元曲線作成手段16と、表示制御手段17とを備える。三次元空間の既存曲線は、表示平面であるモニタ5に表示されていて、当該既存曲線の位置データ及びZバッファ値は、記憶部20の既存曲線記憶部22に予め記憶されている。
【0032】
ここで、三次元空間の既存曲線が複数存在する場合、例えば、モニタ5に表示されている立体形状を構成する曲線が複数の場合には、三次元曲線化システム100が対象とする、既存曲線記憶部22に記憶されている三次元空間の既存曲線は、例えば、ユーザによって選択される。ユーザによる曲線の選択は、例えば、ユーザがデジタイザ1のペン部材3を用いて、モニタ5に表示されている立体形状を構成する曲線のうちから1本の曲線を指定することにより行われる。また、入力受付手段11によって受け付けられた曲線と、受け付けられた曲線の周辺の曲線との距離を求め最も近い曲線を自動的に選択する。
【0033】
入力受付手段11は、デザイナであるユーザがデジタイザ1を用いて手描き動作によって描いた線、すなわちモニタ5に入力された二次元空間の曲線である入力曲線を受け付ける。ここで、二次元空間の曲線は、入力された線を構成する線分や円弧を一つの線の図形としたポリラインを含む。
【0034】
パラメータ化手段12は、入力受付手段11が受け付けた二次元空間の曲線と、予め既存曲線記憶部22に記憶された三次元空間の曲線とをパラメータ化する。パラメータ化は、例えば、曲線上の点を識別するための識別番号を付与することにより行われる。例えば、二次元空間の曲線をHPからHPとし、既存曲線記憶部22に予め記憶した三次元空間の曲線をVPからVPとする。
【0035】
入力点取得手段13は、パラメータ化手段12によるパラメータ化によって、既存曲線を構成する既存点に対応付けられた、入力曲線を構成する入力点を求める。例えば、既存点VPの識別番号である番号iを求め、二次元空間の曲線を構成するi番目の点HPを求める。
【0036】
Z値取得手段14は、既存曲線記憶部22に予め記憶した三次元空間の曲線を構成する既存点のZバッファ値を取得する。Zバッファ値は、三次元空間の曲線を構成する既存点と、当該既存点を表示する表示平面(例えば、モニタ5等)との奥行きの情報であり、既存点に対応付けて既存曲線記憶部22に記憶されている。例えば、VPのZバッファ値であるZを取得する。
【0037】
新規点作成手段15は、入力点取得手段13が求めた、二次元空間の曲線を構成する入力点と、Z値取得手段14が取得したZバッファ値とを対応付けて、三次元空間の新たな曲線を構成する新規点を作成する。例えば、HPのXY座標値に、Zを対応付けて、VP´を作成する。
【0038】
三次元曲線作成手段16は、複数の入力点に基づいてそれぞれ作成した複数の新規点から三次元空間の新たな曲線を作成する。例えば、上述のiを0から始めてnまで順次インクリメントしてVP´を求めることによって、三次元空間の新たな曲線を作成する。すなわち、三次元空間の曲線を構成する点VPからVPに対応した、二次元空間の曲線を構成する点HPからHPを求める。そして、点VPからVPのZバッファ値であるZからZを、求めた点HPからHPに対応付けた点であるVP´からVP´を求め、これらの求めた点で構成される三次元空間の新たな曲線を作成する。同様にして、三次元曲線化システム100は、二次元空間のポリラインから三次元空間の新たなポリラインを作成する。
【0039】
表示制御手段17は、モニタ5への表示を制御する。例えば、ユーザの指定により、表示している既存曲線の表示を消去し、対応する既存曲線記憶部22の記憶を消去する。
【0040】
記憶部20は、本発明の処理に必要なコンピュータプログラム21a等を記憶する記憶装置である。記憶部20は、制御部10と組み合わせてプログラムの実行に使用するメモリを含んでよい。
【0041】
記憶部20を実現するものとして、電気的、磁気的、光学的、電磁的に実現するものを含んでよい。より具体的には、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リード・オンリー・メモリ(ROM)等を含む半導体記憶装置、磁気ディスク等が含まれる。
【0042】
記憶部20は、プログラム記憶部21と、既存曲線記憶部22とを備える。プログラム記憶部21は、本発明の処理を実行するコンピュータプログラム21aを記憶する領域である。既存曲線記憶部22は、三次元空間の曲線を構成する点の位置データと、当該点のZバッファ値とを対応付けて記憶する。
【0043】
ここで、本発明でいうコンピュータとは、記憶装置、制御装置等を備えた情報処理装置をいい、三次元曲線化システム100は、記憶部20、制御部10等を備えた情報処理装置であり、本発明のコンピュータの概念に含まれる。
【0044】
なお、三次元曲線化システム100を構成するハードウェアの数に制限はなく、必要に応じて1又は複数のハードウェアで構成してよい。また、複数のハードウェアで構成する場合には、通信回線(図示せず)を介して各ハードウェアを接続してもよい。更に、三次元曲線化システム100を、例えば、クライアント・サーバ形式にして、入出力のインタフェースをクライアント側で行い、処理をサーバ側で行う構成にしてもよい。
【0045】
[メイン処理の処理フロー]
次に、処理の流れについて説明する。例えば、車両のデザインに関して、ユーザは、構造上又はデザイン上において特徴のあるラインを示すキャラクタラインを描く。このキャラクタラインの入力は、二次元平面におけるユーザの手描き動作によって描かれた線を入力することによって行われる。このフリーハンドで入力された線を立体形状の対応面の既存曲線に近い三次元曲線に変換する例を説明する。図2は、本実施形態に係るメイン処理のフローチャートである。ここで、既存曲線40(後述する図4参照)は、既存の立体形状を構成する曲線であってユーザによって選択された曲線であり、入力曲線31(後述する図4参照)は、ユーザによってフリーハンドで入力された曲線である。既存曲線40を構成する点の座標値及びZバッファ値は、既存曲線記憶部22に三次元座標値リストとして記憶されている。フリーハンドで入力された入力曲線31を構成する点の座標値は記憶部20に二次元座標値リストとして記憶されている。
【0046】
まず、ステップS(以下、単にSという。)1では、制御部10は、初期化処理を行う。例えば、記憶部20のプログラム記憶部21を除く記憶部内のクリア処理を行う。
【0047】
S2において、制御部10は、入力曲線31を構成する点の数が0であるか否かを判断する。入力曲線31を構成する点の数が0である場合、つまり、入力された線がない場合(S2:YES)には、制御部10は、本処理を終了する。他方、入力曲線31の点数が0ではない場合(S2:NO)には、制御部10は、処理をS3に移す。
【0048】
S3において、制御部10は、既存曲線40を構成する点の数が0であるか否かを判断する。既存曲線40を構成する点の数が0である場合、つまり、既存曲線がない場合(S3:YES)には、制御部10は、本処理を終了する。他方、既存曲線40を構成する点の数が0ではない場合(S3:NO)には、制御部10は、処理をS4に移す。
【0049】
S4において、制御部10は、入力曲線31を構成する点のパラメータ化を行う。例えば、入力曲線31をn等分し、構成する点を識別するための識別番号HPからHPを付与する。
【0050】
S5において、制御部10は、既存曲線40を構成する点のパラメータ化を行う。例えば、既存曲線40をn等分し、構成する点を識別するための識別番号VPからVPを付与する。
【0051】
S6において、制御部10は、既存曲線40のZバッファ値を用いた三次元座標リストの作成処理を行う。詳細については、図3において後述する。
【0052】
S7において、制御部10は、作成した三次元座標リストの点の数が0であるか否かを判断する。作成した三次元座標リストの点の数が0である場合、つまり、作成した三次元座標がない場合(S7:YES)には、制御部10は、本処理を終了する。他方、作成した三次元座標リストの点数が0ではない場合(S7:NO)には、制御部10は、処理をS8に移す。
【0053】
S8において、制御部10は、作成した三次元座標リストの点VP´からVP´に基づいて、三次元曲線を作成する。その後、制御部10は、処理を終了する。
【0054】
[既存曲線40のZバッファ値を用いた三次元座標リストの作成処理の処理フロー]
次に、図2のS6に示す三次元座標リストの作成処理について説明する。図3は、本実施形態に係る、既存曲線40のZバッファ値を用いた三次元座標リストの作成処理のフローチャートである。ここで、既存曲線40を構成する点のi番目をVPとする。既存曲線40を構成する点のi番目のZバッファ値をZとする。入力曲線31を構成する点のi番目をHPとする。
【0055】
図3のS11において、制御部10は、変数iのクリア処理を行う。この例では、変数iに0を記憶する。
【0056】
S12において、制御部10は、変数iと、既存曲線40を構成する点の数とを比較し、等しいか否かを判断する。変数iが、既存曲線を構成する点の数に等しい場合(S12:YES)には、制御部10は、処理を終了し、図2のS7にリターンする。変数iが、既存曲線を構成する点の数に満たない場合(S12:NO)には、制御部10は、処理をS13に移す。
【0057】
S13において、制御部10は、既存曲線40を構成する変数i番目の既存点VPの座標値を取得する(例えば、図5におけるVP0.0)。すなわち、既存曲線40は既存の立体形状を構成するので、取得したVPは既存の立体形状を構成する既存点である。
【0058】
S14において、制御部10は、入力曲線31を構成する変数i番目の点HPの座標値を取得する(例えば、図5におけるHP0.0)。すなわち、HPはフリーハンドで入力された入力曲線31を構成する点であって、既存曲線40を構成する既存点VPに対応する点である。
【0059】
S15において、制御部10は、既存曲線40を構成する点の変数i番目に対応付けられたZバッファ値であるZを取得する(例えば、図5におけるZ0.0)。すなわち、既存曲線40は既存の立体形状を構成するので、Zは既存の立体形状を構成する既存点VPのモニタ5からの奥行きを示す値である。
【0060】
S16において、制御部10は、入力曲線31の点HPの座標値に、取得したZバッファ値Zを対応付けてVP´を作成する(例えば、図5におけるVP´0.0)。すなわち、VP´は、フリーハンドで入力された入力曲線31を構成する点に、既存の立体形状を構成する点のモニタ5からの奥行きを示す値を付与した点である。よって、VP´は、フリーハンドで入力された入力曲線31を構成する点であって、既存の立体形状を構成する既存点VPに近い点である。
【0061】
S17において、制御部10は、作成したVP´を入力曲線31の三次元座標リストに追加する。すなわち、入力曲線31の三次元座標リストは、フリーハンドで入力された入力曲線31を構成する点を、既存の立体形状を構成する既存点VPに近い点としたリストである。
【0062】
S18において、制御部10は、変数iをインクリメントする。その後、制御部10は、処理をS12に移す。
【0063】
図4は、本実施形態に係る三次元曲線化処理の具体例を示す図である。図4(1)の曲線30は、モニタ5に表示された図4(2)の既存曲線40を示している。入力曲線31は、デジタイザ1を用いてユーザが描いた線を示し、モニタ5に表示されていることを示している。すなわち、ユーザが、モニタ5を見ながら、デジタイザ1を用いて線を入力し、曲線30を入力曲線31に修正していることを示している。二次元空間の入力曲線31は、HP0.0、HP0.2、HP0.7、及びHP1.0の点によって構成されている。図4(2)は、三次元空間の既存の立体形状を構成する既存曲線40を示している。既存曲線40は、既存曲線記憶部22に記憶され、VP0.0、VP0.3、VP0.6、VP0.8、及びVP1.0の点によって構成されている。
【0064】
図5は、図4に続く、三次元曲線化処理の具体例を示す図である。図5は、既存曲線40の点VP0.0のパラメータ(例えば、0.0)を求め、求めたVP0.0のパラメータによって対応する入力曲線31を構成する点であるHP0.0を求め、求めたHP0.0に、VP0.0のZバッファ値であるZ0.0を対応付けて、点VP´0.0を作成していることを示している。同様にして、VP´0.3、VP´0.6、VP´0.8、VP´1.0を作成していることを示している。視点50を想定すると、求めた点VP´0.0、VP´0.3、VP´0.6、VP´0.8、及びVP´1.0は、視点50から入力曲線31を見た場合に三次元空間に見える点である。
【0065】
図6は、図5に続く、三次元曲線化処理の具体例を示す図である。図6(1)はモニタ5に表示されている入力曲線31を示している。図6(2)は、図5によって求めたVP´0.0からVP´1.0の点によって構成される三次元空間の新たな曲線41が、入力曲線31に対応付けて作成されたことを示している。
【0066】
実施例によれば、三次元曲線化システム100は、三次元空間の曲線を構成する点の位置データと、当該点と当該点を表示する表示平面との奥行きの情報であるZバッファ値とを対応付けて予め記憶する既存曲線記憶部22と、ユーザによって表示平面に入力された二次元空間の曲線である入力曲線を受け付ける入力受付手段11(デジタイザ1を含む)とを備える。そして、三次元曲線化システム100は、受け付けた入力曲線31と、既存曲線記憶部22に記憶された三次元空間の曲線である既存曲線40とのパラメータ化を行い、パラメータ化によって、既存曲線40を構成する既存点に対応付けられた、入力曲線31を構成する入力点を求め、既存点のZバッファ値を取得し、入力点と、取得したZバッファ値とを対応付けて、三次元空間の新たな曲線41を構成する新規点を作成し、複数の入力点に基づいてそれぞれ作成した複数の新規点から三次元空間の新たな曲線41を作成する。ここで、作成した新たな曲線41を構成する点は、三次元空間の立体形状を構成する既存点のZバッファ値が対応付けられているので、三次元空間の立体形状に対応付けられる。したがって、三次元曲線化システム100は、ユーザによって二次元空間で入力された入力曲線31を、三次元空間の立体の形状に沿って対応付けることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 デジタイザ
2 板状部材
3 ペン部材
5 モニタ
10 制御部
11 入力受付手段
12 パラメータ化手段
13 入力点取得手段
14 Z値取得手段
15 新規点作成手段
16 三次元曲線作成手段
17 表示制御手段
20 記憶部
21 プログラム記憶部
21a コンピュータプログラム
22 既存曲線記憶部
100 三次元曲線化システム




【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元空間の曲線を構成する点の位置データと、当該点と当該点を表示する表示平面との奥行きの情報であるZバッファ値とを対応付けて予め記憶する既存曲線記憶手段を備えるコンピュータが、入力した二次元空間の曲線から三次元空間の新たな曲線を作成する三次元曲線化方法であって、
ユーザによって前記表示平面に入力された二次元空間の曲線である入力曲線を受け付ける第1のステップと、
受け付けた前記入力曲線と、前記既存曲線記憶手段に記憶された三次元空間の曲線である既存曲線とのパラメータ化を行う第2のステップと、
前記パラメータ化によって、前記既存曲線を構成する既存点に対応付けられた、前記入力曲線を構成する入力点を求める第3のステップと、
前記既存点の前記Zバッファ値を取得する第4のステップと、
前記入力点と、取得した前記Zバッファ値とを対応付けて、三次元空間の新たな曲線を構成する新規点を作成する第5のステップと、
複数の前記入力点に基づいてそれぞれ作成した複数の前記新規点から三次元空間の新たな曲線を作成する第6のステップと、
を備えることを特徴とする三次元曲線化方法。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元曲線化方法であって、
前記第1のステップは、デジタイザを用いたユーザの手描き動作に基づいて前記表示平面に入力された二次元空間の曲線を受け付けることを特徴とする三次元曲線化方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の三次元曲線化方法であって、
前記第1のステップは、前記既存曲線が表示されている前記表示平面に入力された前記入力曲線を受け付けると共に表示することを特徴とする三次元曲線化方法。
【請求項4】
入力した二次元空間の曲線から三次元空間の新たな曲線を作成する三次元曲線化システムであって、
三次元空間の曲線を構成する点の位置データと、当該点と当該点を表示する表示平面との奥行きの情報であるZバッファ値とを対応付けて予め記憶する既存曲線記憶手段と、
ユーザによって前記表示平面に入力された二次元空間の曲線である入力曲線を受け付ける入力受付手段と、
受け付けた前記入力曲線と、前記既存曲線記憶手段に記憶された三次元空間の曲線である既存曲線とのパラメータ化を行うパラメータ化手段と、
前記パラメータ化によって、前記既存曲線を構成する既存点に対応付けられた、前記入力曲線を構成する入力点を求める入力点取得手段と、
前記既存点の前記Zバッファ値を取得するZ値取得手段と、
前記入力点と、取得した前記Zバッファ値とを対応付けて、三次元空間の新たな曲線を構成する新規点を作成する新規点作成手段と、
複数の前記入力点に基づいてそれぞれ作成した複数の前記新規点から三次元空間の新たな曲線を作成する三次元曲線作成手段と、
を備えることを特徴とする三次元曲線化システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−271829(P2010−271829A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121924(P2009−121924)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】