説明

三次元画像の作成方法および装置

【課題】多数のオブジェクト画像からなる三次元画像をより容易に作成できかつより自然な三次元画像を作成すること。
【解決手段】基本画像に含まれる複数のオブジェクト画像を構成要素とする三次元画像の作成方法であって、複数のオブジェクト画像についてそれぞれの奥行き方向の位置を濃淡によって示す濃淡画像を作成し、基本画像に示される濃淡のそれぞれのレベルに対応した画素群によってそれぞれの画像レイヤを形成し、それぞれの画像レイヤを、その濃淡のレベルに応じた視差が得られるように移動させて三次元画像を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のオブジェクト画像を構成要素とする三次元画像の作成方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、三次元画像(立体画像)は種々の方法で作成されている。伝統的には、風景または人物などの被写体に対して、カメラを水平方向に一定の距離ずつ移動させながら複数回の撮影を行い、これによって複数枚の一連の画像を作成する。これらの画像を用いて、各画像と印画材料との平行方向位置を一定距離ずつ異ならせて露光し現像することによって立体写真が得られる。
【0003】
また、複数のカメラを線型に配列して1回の撮影によって複数枚の画像を同時に得ることのできる特殊なカメラも用いられている。しかし、特殊なカメラを用いた場合は、カメラ間のピッチを可変することができないため、立体効果が得られる範囲が狭い。また、被写体の存在する場所で撮影する必要があるため多くの時間と労力とを要する。
【0004】
そこで、複数個の平面的な画材であるオブジェクト画像を用い、これら各オブジェクト画像を移動させてそれらの相互位置の互いに異なる合成画像を作成し、作成した合成画像とレンチキュラースクリーンとを用いて三次元画像を作成することが提案されている(特許文献1)。これによって、被写体の種類に関係なく、平面的な画像から任意に三次元画像を作成することができる。また、これを改良してより自然な三次元画像を作成する方法も提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平2−293733
【特許文献2】特開平8−147495
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上に述べた特許文献1および2の方法による場合に、オブジェクト画像を移動させる際にどの程度移動させれば所望の立体感が得られるかについて、作成者の勘と経験によってその場で決められていた。
【0006】
したがって、オブジェクト画像が2〜3個程度の簡単な三次元画像であれば余り問題はないが、オブジェクト画像の個数が多くなった場合には極めて多くの時間と労力を要し、しかも自然な満足のいく三次元画像を得ることが困難であった。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、多数のオブジェクト画像からなる三次元画像をより容易に作成できかつより自然な三次元画像を作成することの可能な方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る方法は、基本画像に含まれる複数のオブジェクト画像を構成要素とする三次元画像の作成方法であって、前記複数のオブジェクト画像についてそれぞれの奥行き方向の位置を濃淡によって示す濃淡画像を作成し、前記基本画像に示される濃淡のそれぞれのレベルに対応した画素群によってそれぞれの画像レイヤを形成し、それぞれの画像レイヤを、その濃淡のレベルに応じた視差が得られるように移動させて三次元画像を形成する。
【0009】
また、前記複数のオブジェクト画像についてそれぞれの奥行き方向の位置を濃淡によって示す濃淡画像を作成してこれを奥行き指定画像とする第1ステップと、前記奥行き指定画像に示される濃淡のそれぞれのレベルに対応した画素群によって構成され当該画素群の本来の画像が表示された画像レイヤをそれぞれ形成する第2ステップと、それぞれの画像レイヤをそれぞれの濃淡のレベルに応じた視差が得られるように移動させて合成することによって複数の有視差画像を取得する第3ステップと、前記複数の有視差画像を合成して三次元画像を形成する第4ステップと、を有する。
【0010】
好ましくは、前記第3ステップにおいて、1つのオブジェクト画像が複数の画像レイヤにわたっている場合に、その複数の画像レイヤにわたるオブジェクト画像の形状が維持されるように補間修正を行って前記有視差画像を取得する。
【0011】
また、前記第4ステップにおいて、複数の有視差画像を、レンチキュラーレンズを介して観察される圧縮画像として配置することにより合成する。
【0012】
また、前記第4ステップにおいて、複数の有視差画像を、ステレオ眼鏡を介し右眼または左眼で観察される画像として描画することにより合成する。
【0013】
また、前記第4ステップにおいて、複数の有視差画像を、グリッドバリアを介し右眼または左眼で観察される画像として描画することにより合成する。
【0014】
また、複数のオブジェクト画像を含む基本画像について、前記基本画像を構成する各画素の奥行き方向の位置を濃淡によって示す濃淡画像を作成し、前記基本画像に示される濃淡のそれぞれのレベルに対応した画素を抽出し、それぞれのレベルに対応した画素群からなる画像レイヤを形成し、それぞれの画像レイヤを、その濃淡のレベルに応じた視差が得られるように移動させて三次元画像を形成する。
【0015】
本発明に係る装置は、基本画像に含まれる複数のオブジェクト画像を構成要素とする三次元画像の作成装置であって、前記複数のオブジェクト画像についてそれぞれの奥行き方向の位置を濃淡によって示す濃淡画像を作成する手段と、前記基本画像に示される濃淡のそれぞれのレベルに対応した画素群によってそれぞれの画像レイヤを形成する手段と、それぞれの画像レイヤを、その濃淡のレベルに応じた視差が得られるように移動させて三次元画像を形成する手段と、を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は基本画像KG1の例を示す図、図2は基本画像KG1に含まれる各オブジェクト画像JG1〜3の奥行き方向の位置を示す図、図3は奥行き方向の位置と濃淡レベルNLと移動量MLとの関係を示す図、図4はオブジェクト画像JG1〜3についての濃淡画像NG1の例を示す図、図5は画像レイヤGL1〜3を示す図、図6は画像レイヤGL1〜3を空間的に配置した状態を示す図、図7は各画像レイヤGL1〜3の移動量MLを示す図である。
【0017】
図1において、基本画像KG1は3つのオブジェクト画像JG1〜3を含んでいる。つまり、正方形のオブジェクト画像JG1、円形のオブジェクト画像JG2、三角形のオブジェクト画像JG3の3つから基本画像KG1が構成されている。
【0018】
以下において、この基本画像KG1から三次元画像DGを作成する方法について説明する。
【0019】
まず、これら3つのオブジェクト画像JG1〜3について、それぞれの奥行き方向の位置を決める。奥行き方向の位置は、基本画像KGを三次元画像DGとして見たときにの奥行き方向において見える位置である。通常、奥行き方向の位置は、無限の遠方から最接近位置までの間にある。しかし、任意の有限の2つの距離の間とすることも可能である。
【0020】
いずれにしても、奥行き方向の位置の最も遠方の位置から最も接近した位置までの距離範囲を、階調レベルKLで表現する。例えば、256階調のレベルで表現し、奥行き方向の位置を0〜255の階調レベルKLのどこかに割り当てる。この場合に、「0」の階調レベルKLは最も遠方の位置であり、「255」の階調レベルKLは最も接近した位置である。
【0021】
また、奥行き方向の位置を視覚的に表すために、0〜255の階調レベルKLが濃淡レベル(グレースケール)NLであるとし、オブジェクト画像JG1〜3に割り当てられた奥行き方向の位置をその濃淡レベルNLによる濃淡画像として表現する。つまり、三次元画像DGの作成に当たって、それぞれのオブジェクト画像JGの奥行きをグレースケールで表現する。
【0022】
図2に示す例では、オブジェクト画像JG1〜3には、それぞれ、「51」「153」「230」の階調レベルKLが割り当てられている。つまり、3つのオブジェクト画像JGのうち、オブジェクト画像JG1は最も遠く、オブジェクト画像JG3は最も近く、オブジェクト画像JG2はその中間である。
【0023】
しかも、それぞれのオブジェクト画像JG1〜3は、それぞれの全体が同じ階調レベルKLであり、したがってそれ自体には奥行きを持たない。
【0024】
図3に示すように、階調レベルKLと濃淡レベルNL(グレースケールGS)とは対応しており、また、0〜255の階調レベルKLに対応して移動量MLが決定される。図3において、移動量MLは、それぞれの階調レベルKLに対応する水平方向位置における三角図形の横幅で示される。
【0025】
図4には、図2で示される階調レベルKLに応じた濃淡レベルNLによって表現された濃淡画像NG1である。この濃淡画像NG1では、オブジェクト画像JG1は真っ黒に近い濃度で表され、オブジェクト画像JG3は真っ白に近い濃度で表され、オブジェクト画像JG2はその中間の濃度で表されている。この濃淡画像NG1は、奥行き指定画像YG1でもある。
【0026】
つまり、奥行き指定画像YG1は、それぞれのオブジェクト画像JG1〜3の濃淡レベルNLがそのオブジェクト画像JGの奥行き方向の位置を示している。したがって、ユーザにとっては、濃淡によって各オブジェクト画像JGの奥行き方向の位置を直感的に認知することができる。すなわち、図1に示す基本画像KG1に対して、それぞれのオブジェクト画像JG1〜3に濃淡を与えることによって、それらのオブジェクト画像JG1〜3の奥行き方向の位置を指定することができる。
【0027】
また、オブジェクト画像JGの濃淡を修正することによって、奥行き方向の位置を容易に修正することができる。
【0028】
なお、濃淡画像NG1または奥行き指定画像YG1の作成に当たって、実物をカメラで撮影し、かつ撮影位置を変えて複数の異なる位置から撮影し、得られた複数の画像から写っているオブジェクトの移動量を測定し、測定した移動量に基づいて濃淡画像NG1を作成してもよい。このようにするとより正確に奥行き方向の位置を指定することが可能である。
【0029】
次に、奥行き指定画像YG1に基づいて、図5に示す画像レイヤGL1〜3をそれぞれ形成する。つまり、画像レイヤGL1〜3は、奥行き指定画像YG1に示されるそれぞれの濃淡レベルNLに対応した画素群によって構成され、当該画素群の本来の画像が表示されたものである。
【0030】
すなわち、図4に示す奥行き指定画像YG1において、オブジェクト画像JG1、JG2、JG3は、それぞれ均一な濃淡レベルNLとなっているから、オブジェクト画像JG1、2、3をそれぞれ構成する画素群がそれぞれの画像レイヤGL1〜3を構成することとなる。
【0031】
なお、各画像レイヤGL1〜3において、オブジェクト画像JG以外の部分は透明である。したがって、画像レイヤGL1〜3としては、必ずしも一定のサイズの画像フレームの形となっていなくてもよく、例えばオブジェクト画像JGについてその奥行き方向の位置を指定したものであってもよい。
【0032】
さて、図5(A)に示す画像レイヤGL1は、基本画像KG1の中のオブジェクト画像JG1のみを含んでいる。図5(B)に示す画像レイヤGL2は、基本画像KG1の中のオブジェクト画像JG2のみを含んでいる。図5(C)に示す画像レイヤGL3は、基本画像KG1の中のオブジェクト画像JG3のみを含んでいる。
【0033】
このように、奥行き指定画像YG1に基づいて、画像レイヤGL1〜3を作成することができる。各オブジェクト画像JGが均一な濃淡レベルNLからなっている場合には、オブジェクト画像JGの個数に等しい数の画像レイヤGLが作成される。
【0034】
これらの画像レイヤGL1〜3は、それぞれ、1つの濃淡レベルNLの画素群からなっているので、各画像レイヤGL1〜3に含まれる画素群の濃淡レベルNLに応じて階調レベルKLに対応付けることができる。
【0035】
なお、基本画像KG、濃淡画像NG、奥行き指定画像YG、画像レイヤGL、およびオブジェクト画像JGなどは、デジタル画像処理によって生成し保存することができるものであり、それぞれの画像を画素または画素群から構成することができる。
【0036】
図6において、3つの画像レイヤGL1〜3が、それぞれの濃淡レベルNLに応じた階調レベルKLに配置された状態が示されている。この状態におけるオブジェクト画像JG1〜3の奥行き方向の位置は、奥行き指定画像YG1によって指定された位置に基づいている。
【0037】
そして、このような画像レイヤGL1〜3を、それぞれの濃淡レベルNLに応じた視差が得られるように移動させて合成し、これによって複数の有視差画像UGを取得する。画像レイヤGLの移動は、その配置位置を移動量MLだけずらせることによって行うことができる。
【0038】
さて、濃淡レベルNLと移動量MLとの関係が図3に示されているので、濃淡レベルNLから移動量MLを導き出すことができる。図3においては、移動量MLは、0〜MLmaxの範囲の中にあり、その範囲内において、濃淡レベルNLに比例して決定される。なお、本実施形態においては、移動量MLが濃淡レベルNLに比例しているが、単純に比例するのではなく、所定の一次関数や2次関数、その他の関数で示されるものであってもよい。
【0039】
図7(A)に示す有視差画像UG1は、図1に示す基本画像KG1と同じである。有視差画像UG1において、それぞれのオブジェクト画像JG1〜3の位置が、左端からの距離L1〜3でそれぞれ示されている。
【0040】
図7(B)に示す有視差画像UG2は、図7(A)に示す有視差画像UG1に対して、それぞれのオブジェクト画像JG1〜3の位置が、それぞれ、a,b,cずつ右方へ移動している。このa,b,cが、各オブジェクト画像JG1〜3の移動量MLである。移動量MLである「a」「b」「c」の比は、オブジェクト画像JG1〜3の濃淡レベルNLの比に等しい。
【0041】
このように、移動量MLは、有視差画像UGを作成するに当たっての、2つの有視差画像UGの間におけるオブジェクト画像JGの位置の水平方向の距離差である。または距離差に相当するパラメータである。移動量MLの大きさによって、2つの有視差画像UGをユーザが左右の眼で見たときに視差が生じ、立体感を得ることができる。移動量MLが0のオブジェクト画像JGは、両眼で見たときに前後方向の位置がそのオブジェクト画像JGの実際の位置に見えることとなり、移動量MLが正のオブジェクト画像JGは実際の位置よりも飛び出し、移動量MLが負のオブジェクト画像JGは実際の位置よりも後退する。
【0042】
したがって、奥行き方向の位置と移動量MLとの関係は、奥行き方向の位置が近い程、移動量MLを正の方向に大きくすればよいこととなる。上のように奥行き方向の中間に存在するオブジェクト画像JGの移動量MLを0とすれば、それより奥に存在するオブジェクト画像JGは移動量MLが負となり、それより手前に存在するオブジェクト画像JGは移動量MLが正となる。最も奥に存在するオブジェクト画像JGの移動量MLを0とすれば、他のオブジェクト画像JGは移動量MLが正となり、手前のものほど移動量MLが大きくなる。
【0043】
通常、基本画像KGの中の最も重要なオブジェクト画像JGをキー画像とし、キー画像を鮮明に見せるためにその移動量MLを「0」とする。そして、キー画像よりも奥に配置するオブジェクト画像JGの移動量MLを負とし、キー画像よりも手前に配置するオブジェクト画像JGの移動量MLを正とする。
【0044】
なお、有視差画像UGの作成に当たって、ここでの例ではオブジェクト画像JGつまり画像レイヤGLを移動させた。しかし、画像レイヤGL1〜3を図6に示すようにその奥行き方向の位置に対応して配置しておき、これを前方からカメラで撮影するとともに、そのカメラの位置を移動して異ならせて撮影してもよい。つまり、画像レイヤGL1〜3を、複数の異なる位置から撮影することによって複数の有視差画像UGを取得することができ、その場合のそれぞれのカメラの撮影位置の変位量として、移動量MLを用いることができる。
【0045】
図7(C)に示す有視差画像UG3は、図7(A)に示す有視差画像UG1に対して、それぞれのオブジェクト画像JG1〜3の位置が、それぞれ、2a,2b,2cずつ右方へ移動している。つまり、図7(B)に示す有視差画像UG2に対して、それぞれのオブジェクト画像JG1〜3の位置が、それぞれ、さらにa,b,cずつ右方へ移動している。
【0046】
これらの有視差画像UG1〜3から実際に三次元画像DGを得るために、次に示す種々の方法を採用することができる。
(1) 複数の有視差画像UG1〜3を、レンチキュラーレンズを介して観察される圧縮画像として配置することにより合成する。
(2) 複数の有視差画像UG1〜3を、ステレオ眼鏡を介し右眼または左眼で観察される画像として描画することにより合成する。
(3) 複数の有視差画像UG1〜3を、グリッドバリアを介し右眼または左眼で観察される画像として描画することにより合成する。
【0047】
これらの方法以外の方法を用いることも可能である。なお、上記(1)〜(3)の方法それ自体は公知であり、必要に応じて適用することができる。
【0048】
例えば、上記(1)については、有視差画像UG1〜3を用いて、レンチキュラーレンズを有した立体写真用の印画フィルムに露光を行って画像を焼きつけ、立体写真を作成する。その焼きつけにおいて、有視差画像UG1〜3の作成のときにキーとなるオブジェクト画像JGを移動させた場合には、印画フィルムへの露光の際には、そのオブジェクト画像JGの移動距離に相当する分だけ印画フィルム上で逆方向に移動させる。こうすることによって、立体写真においてキーとなるオブジェクト画像JGが固定され、立体画像が鮮明に現れる。詳しくは上に述べた特許文献1および2などを参照することができる。
【0049】
なお、図7において、各オブジェクト画像JG1〜3の位置を、各画像レイヤGL1〜3の左端からの距離L1〜3で示したが、右端からの距離、または各画像レイヤGL1〜3の中央に位置する中心線からの距離で示してもよい。
【0050】
また、有視差画像UGを3つ示したが、三次元画像DGを得る方法の種類などによって、2つのみでもよく、また4つ以上であってもよい。また、上の例では、基本画像KG1が3つのオブジェクト画像JGを含んでいるが、2つのオブジェクト画像JG、または4つ以上のオブジェクト画像JGを含んでいてもよい。
【0051】
また、上の例では、それぞれのオブジェクト画像JGが1つの画像レイヤGLに納まっているが、1つのオブジェクト画像JGが複数の画像レイヤGLにわたっていてもよい。その場合には、その複数の画像レイヤGLにわたるオブジェクト画像JGの形状が維持されるように補間修正を行って有視差画像UGを取得する。
【0052】
つまり、例えば、1つのオブジェクト画像JGを平面的にとらえて1つの奥行き方向の位置に配置するのでなく、1つのオブジェクト画像JGそれ自体が奥行きを持つように斜め方向にまたは奥行き方向に沿って配置してもよい。その場合に、オブジェクト画像JG自体は連続体であるにもかかわらず、画像レイヤGLは連続的でなく離散的であるので、複数の画像レイヤGLにわたっているオブジェクト画像JGの画像レイヤGLの間の部分については画像がなく、正面から観察した場合にその部分が欠けたり細くなったりしてオブジェクト画像JGを正確に再現することができない。これを避けるため、画像レイヤGLにわたるオブジェクト画像JGの形状が維持されるように補間修正を行い、補間修正を行った有視差画像UGを取得する。
【0053】
上に述べた例では、基本画像KGとして3つのオブジェクト画像JG1〜3からなる簡単なものを示したが、基本画像KGとしてどのような画像でもよい。オブジェクト画像JGとしては、写真、絵画、印刷物、イラスト、グラフィクス、文字など、種々のものを用いることができる。
【0054】
例えば、基本画像が、飲料用の缶を中心として、その缶の周囲に水しぶきがかかり、水玉や水しぶきが跳ねている画像とした場合に、オブジェクト画像JGは、缶、水玉、水しぶきなどである。この場合に、缶はキー画像であり、例えば奥行き方向の中央位置に配置し、缶自体に立体感を出すために、缶を奥行き方向に沿って斜めに配置する。
【0055】
上に示した実施形態では、図4のような濃淡画像NG1によって各オブジェクト画像JG1〜3の奥行き方向の位置を指定した。この図4で示すオブジェクト画像JGの奥行き方向の位置は、図2に示すように階調レベルKLに対応した位置である。この場合に、オブジェクト画像JG2が例えば球であった場合には、図2においてオブジェクト画像JG2は、横線ではなく、円で表すようにしてもよい。その場合に、その円には、階調レベルKLに応じた濃淡を付与してもよい。また、一番奥の位置に背景画像が配置される場合には、その背景画像の階調レベルKLは0となるので、真っ黒で表されることとなる。なお、「0」の階調レベルKLを最も遠方としたが、この逆にこれを最も接近した位置としてもよい。また、「0」の階調レベルKLを黒としたが、これとは逆に、「0」の階調レベルKLを白としてもよい。
【0056】
上の実施形態において、階調レベルKLを256階調、つまり8ビットで表したが、これ以外の値でもよい。例えば、8階調、16階調、32階調、64階調、128階調、512階調、それ以上であってもよい。
【0057】
次に、基本画像KGから三次元画像DGの作成方法をフローチャートで説明する。
【0058】
図8は基本画像KGから三次元画像DGの作成の流れを示すフローチャートである。
【0059】
図8において、まず、基本画像KGを準備する(#11)。基本画像KGは、複数のオブジェクト画像JGとその配置位置によって決定される。基本画像KGを元に、複数のオブジェクト画像についてそれぞれの奥行き方向の位置を濃淡によって示す濃淡画像NGを作成する(#12)。作成した濃淡画像NGを奥行き指定画像YGとする。
【0060】
奥行き指定画像YGに示される濃淡のそれぞれのレベルに対応した画素群によって構成され当該画素群の本来の画像が表示された画像レイヤGLをそれぞれ形成する(#13)。
【0061】
それぞれの画像レイヤGLをそれぞれの濃淡のレベルに応じた視差が得られるように移動させて合成することによって複数の有視差画像UGを取得する(#14)。複数の有視差画像UGを合成して三次元画像DGを形成する(#15)。
【0062】
図9は基本画像KGから三次元画像DGを作成する作成装置1の構成を示すブロック図である。
【0063】
図9において、作成装置1は、濃淡画像作成部21、画像レイヤ作成部22、有視差画像作成部23、および三次元画像作成部24を有する。
【0064】
濃淡画像作成部21は、基本画像KGに含まれる複数のオブジェクト画像JGについて、それぞれの奥行き方向の位置を濃淡によって示す濃淡画像を作成する。
【0065】
画像レイヤ作成部22は、基本画像KGに示される濃淡のそれぞれのレベルに対応した画素群によってそれぞれの画像レイヤGLを形成する。
【0066】
有視差画像作成部23は、それぞれの画像レイヤGLを、その濃淡のレベルに応じた視差が得られるように移動させて有視差画像UGを作成する。
【0067】
三次元画像作成部24は、有視差画像UGに基づいて、上に述べたようにレンチキュラーレンズ、ステレオ眼鏡、またはグリッドバリアなどを介して観察することのできる画像として合成することにより三次元画像DGを作成する。
【0068】
このような作成装置1は、その一部または全体にコンピュータシステムを用いることができる。そのような作成装置1の例について説明する。
【0069】
図10は作成装置1のハードウエア構成を示すブロック図である。
【0070】
図10において、作成装置1は、処理装置11、イメージスキャナ12、磁気ディスク装置13、光磁気ディスク装置14、ディスプレイ装置15、プリンタ装置16、キーボード17、マウス18などから構成されている。
【0071】
磁気ディスク装置13及び光磁気ディスク装置14は、種々のオブジェクト画像JG、基本画像KG、濃淡画像NG、画像レイヤGL、有視差画像UG、または三次元画像DGなどを格納する。イメージスキャナ12から読み取られた画像、ビデオカメラまたはスチルカメラによって撮影して得られた画像、コンピュータグラフィックスによって作成された画像などが、オブジェクト画像JGとして用いることができる。
【0072】
ディスプレイ装置15には、磁気ディスク装置13又は光磁気ディスク装置14に格納された画像、その他の画像やデータが表示される。
【0073】
プリンタ装置16は、画像などをフィルムにプリントする。フィルムには、用紙、印画紙なども含まれる。プリンタ装置16によるプリントには、フィルムなどに画像を焼き付ける処理が含まれる。
【0074】
キーボード17およびマウス18は、処理装置11に対するコマンドの入力、メッセージの入力、フレームメモリまたは画面上の画像の位置の指定などを行う。また、濃淡画像NGの作成に当たって、濃淡レベルの指示をユーザが入力装置を操作して指示する。
【0075】
処理装置11は、ROMなどに格納されたプログラムを実行して種々の処理を行う。処理装置11には、複数個のフレームメモリ、画像データを格納するためのメモリなどが設けられている。
【0076】
このようなハードウエア構成によって、ソフトウエア的にまたはハードウエア的に、図9に示す各部が機能的に形成される。
【0077】
上に述べた作成装置1を用いた三次元画像の作成方法によると、基本画像KGにおける種々のオブジェクト画像JGの奥行き方向の位置を濃淡画像NGによって表し、奥行き方向の位置を濃淡によって指示するので、多数のオブジェクト画像JGからなる三次元画像DGをより容易に作成でき、かつより自然な三次元画像DGを作成することができる。
【0078】
上に述べた実施形態において、作成装置1の全体または各部の構成、各画像の内容、構成、形状、位置関係、寸法、個数、材質などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】基本画像の例を示す図である。
【図2】基本画像に含まれる各オブジェクト画像の奥行き方向の位置を示す図である。
【図3】奥行き方向の位置と濃淡レベルと移動量との関係を示す図である。
【図4】オブジェクト画像についての濃淡画像の例を示す図である。
【図5】画像レイヤを示す図である。
【図6】画像レイヤを空間的に配置した状態を示す図である。
【図7】各画像レイヤの移動量を示す図である。
【図8】基本画像から三次元画像の作成の流れを示すフローチャートである。
【図9】基本画像から三次元画像を作成する作成装置の構成を示すブロック図である。
【図10】作成装置のハードウエア構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0080】
1 作成装置
11 処理装置
21 濃淡画像作成部
22 画像レイヤ作成部
23 有視差画像作成部
24 三次元画像作成部
JG オブジェクト画像
KL 階調レベル
NL 濃淡レベル
ML 移動量
KG 基本画像
NG 濃淡画像
YG 奥行き指定画像
GL 画像レイヤ
UG 有視差画像
DG 三次元画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本画像に含まれる複数のオブジェクト画像を構成要素とする三次元画像の作成方法であって、
前記複数のオブジェクト画像についてそれぞれの奥行き方向の位置を濃淡によって示す濃淡画像を作成し、
前記基本画像に示される濃淡のそれぞれのレベルに対応した画素群によってそれぞれの画像レイヤを形成し、
それぞれの画像レイヤを、その濃淡のレベルに応じた視差が得られるように移動させて三次元画像を形成する、
ことを特徴とする三次元画像の作成方法。
【請求項2】
複数のオブジェクト画像を構成要素とする三次元画像の作成方法であって、
前記複数のオブジェクト画像についてそれぞれの奥行き方向の位置を濃淡によって示す濃淡画像を作成してこれを奥行き指定画像とする第1ステップと、
前記奥行き指定画像に示される濃淡のそれぞれのレベルに対応した画素群によって構成され当該画素群の本来の画像が表示された画像レイヤをそれぞれ形成する第2ステップと、
それぞれの画像レイヤをそれぞれの濃淡のレベルに応じた視差が得られるように移動させて合成することによって複数の有視差画像を取得する第3ステップと、
前記複数の有視差画像を合成して三次元画像を形成する第4ステップと、
を有することを特徴とする三次元画像の作成方法。
【請求項3】
前記第3ステップにおいて、1つのオブジェクト画像が複数の画像レイヤにわたっている場合に、その複数の画像レイヤにわたるオブジェクト画像の形状が維持されるように補間修正を行って前記有視差画像を取得する、
請求項2記載の三次元画像の作成方法。
【請求項4】
前記第4ステップにおいて、複数の有視差画像を、レンチキュラーレンズを介して観察される圧縮画像として配置することにより合成する、
請求項2または3記載の三次元画像の作成方法。
【請求項5】
前記第4ステップにおいて、複数の有視差画像を、ステレオ眼鏡を介し右眼または左眼で観察される画像として描画することにより合成する、
請求項2または3記載の三次元画像の作成方法。
【請求項6】
前記第4ステップにおいて、複数の有視差画像を、グリッドバリアを介し右眼または左眼で観察される画像として描画することにより合成する、
請求項2または3記載の三次元画像の作成方法。
【請求項7】
複数のオブジェクト画像を含む基本画像について、前記基本画像を構成する各画素の奥行き方向の位置を濃淡によって示す濃淡画像を作成し、
前記基本画像に示される濃淡のそれぞれのレベルに対応した画素を抽出し、それぞれのレベルに対応した画素群からなる画像レイヤを形成し、
それぞれの画像レイヤを、その濃淡のレベルに応じた視差が得られるように移動させて三次元画像を形成する、
ことを特徴とする三次元画像の作成方法。
【請求項8】
基本画像に含まれる複数のオブジェクト画像を構成要素とする三次元画像の作成装置であって、
前記複数のオブジェクト画像についてそれぞれの奥行き方向の位置を濃淡によって示す濃淡画像を作成する手段と、
前記基本画像に示される濃淡のそれぞれのレベルに対応した画素群によってそれぞれの画像レイヤを形成する手段と、
それぞれの画像レイヤを、その濃淡のレベルに応じた視差が得られるように移動させて三次元画像を形成する手段と、
を有することを特徴とする三次元画像の作成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−90750(P2008−90750A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273324(P2006−273324)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(591243893)株式会社フオトクラフト社 (26)
【Fターム(参考)】