説明

三次元表示システム

【課題】観察者によって異なる奥行き感を考慮した三次元表示システムを提供する。
【解決手段】三次元表示システム1は、色差データとフロント輝度データに基づいて二次元像を表示するフロントモニターFMを備える。フロントモニターFMの背面で且つフロントモニターFMの表示面に垂直な方向に配置された複数のリヤモニター(第1〜第4リヤモニターRM〜RM)を備える。複数のリヤモニターのうち、使用するリヤモニターを選択するために使用される操作部40を備える。複数のリヤモニターのうち、操作部40を介して選択されたリヤモニターは、色差データとリヤ輝度データに基づいて二次元像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元表示システムに関し、前後に配置したフロントモニターとリヤモニターで2つの二次元像を表示する三次元表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1のように、前後2面の画像の輝度比(明るさの割合)を変化させることで2面の間の任意の位置に奥行き位置を知覚出来る立体錯視現象(DFD:Depth-Fused 3-D)を使った三次元表示システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−197240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前後のモニターのそれぞれに二次元像を表示させて、画像が立体的に見えるかどうかは、観察者の感覚によって異なり、間隔の近い2台のモニターの組み合わせで表示しても、画像が立体的に見える(奥行き感のある画像に見える)観察者も居るし、立体的に見えない(奥行き感のある画像に見えない)観察者も居る。
【0005】
したがって本発明の目的は、観察者によって異なる奥行き感を考慮した三次元表示システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る三次元表示システムは、色差データとフロント輝度データに基づいて二次元像を表示するフロントモニターと、フロントモニターの背面で且つフロントモニターの表示面に垂直な方向に配置された複数のリヤモニターと、複数のリヤモニターのうち、使用するリヤモニターを選択するために使用される操作部とを備え、複数のリヤモニターのうち、操作部を介して選択されたリヤモニターは、色差データとリヤ輝度データに基づいて二次元像を表示する。
【0007】
共通の色差データと、別々の輝度データに基づいて、一直線上に配置した複数のモニターのそれぞれに二次元像を表示させる場合、画像が立体的に見えるかどうかは、観察者の感覚によって異なり、間隔の近い2台のモニターの組み合わせで表示しても、画像が立体的に見える(奥行き感のある画像に見える)観察者も居るし、立体的に見えない(奥行き感のある画像に見えない)観察者も居る。フロントモニターからの距離が異なる複数のリヤモニターから、観察者が最適なリヤモニターを選択することを可能にすることで、観察者にとって立体的に見える2つの二次元像表示が可能になる。
【0008】
好ましくは、操作部を介して選択されたリヤモニターよりも前面に設けられたモニターの透過率に基づいて、フロント輝度データとリヤ輝度データの少なくとも一方を補正する輝度データ補正部を更に備える。
【0009】
リヤモニターの前に配置されたフロントモニターなど別のモニターを透過する際に、リヤモニターで表示される二次元像の輝度が減衰するおそれがある。このため、輝度データ補正部が、選択されたリヤモニターに関する情報に基づき、リヤ輝度データ(またはフロント輝度データ)を補正する。フロントモニターなどを透過する際の輝度の減衰をも考慮した、観察者にとって立体的に見える2つの二次元像表示が可能になる。
【0010】
本発明に係る三次元表示システムは、色差データとフロント輝度データに基づいて二次元像を表示するフロントモニターと、フロントモニターの背面に配置され、色差データとリヤ輝度データに基づいて二次元像を表示するリヤモニターと、リヤモニターと、フロントモニターとの距離を設定するために使用される操作部と、操作部を介して設定された情報に基づいて、リヤモニターを、フロントモニターの表示面に垂直な方向に移動させるアクチュエータとを備える。
【0011】
共通の色差データと、別々の輝度データに基づいて、一直線上に配置した複数のモニターのそれぞれに二次元像を表示させる場合、画像が立体的に見えるかどうかは、観察者の感覚によって異なり、間隔の近い2台のモニターの組み合わせで表示しても、画像が立体的に見える(奥行き感のある画像に見える)観察者も居るし、立体的に見えない(奥行き感のある画像に見えない)観察者も居る。フロントモニターからの距離が異ならしめることで、観察者にとって立体的に見える2つの二次元像表示が可能になる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明によれば、観察者によって異なる奥行き感を考慮した三次元表示システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態における複数のリヤモニターを使った三次元表示システムの構成図である。
【図2】リヤ輝度データを補正する手順を示すフローチャートである。
【図3】本実施形態における移動可能なリヤモニターを使った三次元表示システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態について、図を用いて説明する。本実施形態における三次元表示システム1は、パソコンなどの画像データ出力部10、フロント表示制御部20、リヤ表示制御部30、操作部40、第1〜第4スイッチSW〜SW、フロントモニターFM、及び複数のリヤモニター(第1〜第4リヤモニターRM〜RM)を備える。
【0015】
フロントモニターFM、第1〜第4リヤモニターRM〜RMは、フロントモニターFMの表示面に垂直な方向に一直線上に並べられ、フロントモニターFMに表示された二次元像と、第1〜第4リヤモニターRM〜RMのいずれか1つに表示された二次元像とで、立体的に見える画像を表示する。なお、リヤモニターの数は、一例であって、4台に限られるものではなく、2台以上あれば良い。
【0016】
画像データ出力部10は、フロントモニターFMと、第1〜第4リヤモニターRM〜RMのいずれか1つで二次元像を表示するために使用される画像データとして、色差データと輝度データを、フロント表示制御部20、及びリヤ表示制御部30に出力する。
【0017】
画像を立体的に見せる、すなわちフロントモニターFMとリヤモニターとの間の空間に画像が表示されているように見せるために、フロントモニターFMと、リヤモニターは、共通の色差データを使用し、別々の輝度データ(フロント輝度データ、リヤ輝度データ)を使用する。
【0018】
例えば、モニターの正面から見て同じ位置(表示領域)に、フロントモニターFMの輝度が高く、リヤモニターの輝度が低くなるような輝度データを使って、モニターのそれぞれに二次元像を表示させた場合、かかる位置に表示される画像は、観察者にとって、フロントモニターFMの近く(観察者から見て手前側)に表示されているように見え、フロントモニターFMの輝度が低く、リヤモニターの輝度が高くなるような輝度データを使って、モニターのそれぞれに二次元像を表示させた場合、かかる位置に表示される画像は、観察者にとって、リヤモニターの近く(観察者から見て奥側)に表示されているように見える。
【0019】
フロント表示制御部20は、画像データ出力部10から出力されたフロント輝度データと、色差データとに基づいて、フロントモニターFMで表示可能な画像信号を生成し出力する。リヤ表示制御部30は、画像データ出力部10から出力されたリヤ輝度データと、色差データとに基づいて、リヤモニターで表示可能な画像信号を生成し出力する。
【0020】
各モニターは、観察者側から見て、フロントモニターFM、第1〜第4リヤモニターRM〜RMの順に等間隔で並べられる。フロントモニターFMと、第1〜第3リヤモニターRM〜RMは、観察者側からみて背面のモニターの画像を透過出来る透過型の表示装置である。第4リヤモニターRMは、観察者側から見て背面にモニターが配置されないため、透過型表示装置であっても非透過型表示装置であってもよい。
【0021】
第1〜第4スイッチSW〜SWは、リヤ表示制御部30からの画像信号の出力先を、第1〜第4リヤモニターRM〜RMのいずれかに切り替えするために使用される。操作部40は、かかる切り替えを観察者による手動で行うために使用される操作部材である。観察者が、操作部40を使って、第1〜第4リヤモニターRM〜RMのいずれかを使用する選択を行うと、選択されたリヤモニターに関する情報が操作部40から画像データ出力部10に送信され、画像データ出力部10から選択されたスイッチの番号n(1≦n≦4)に関する情報が第1〜第4スイッチSW〜SWに送信される。第1〜第4スイッチSW〜SWは、かかる情報に基づいて、オンオフ状態を切り替える。例えば、観察者が操作部40を使って第2リヤモニターRMをリヤモニターとして選択した場合には、選択されたスイッチの番号nは2に設定され、第2スイッチSWはオン状態にされ、第1、第3、第4スイッチSW、SW、SWはオフ状態にされる(図1参照)。
【0022】
共通の色差データと、別々の輝度データに基づいて、一直線上に配置した複数のモニターのそれぞれに二次元像を表示させる場合、画像が立体的に見えるかどうかは、観察者の感覚によって異なり、間隔の近い2台のモニター(例えば、フロントモニターFMと第1リヤモニターRM)の組み合わせで表示しても、画像が立体的に見える(奥行き感のある画像に見える)観察者も居るし、立体的に見えない(奥行き感のある画像に見えない)観察者も居る。本実施形態では、フロントモニターFMからの距離が異なる複数のリヤモニターから、観察者が最適なリヤモニターを選択することを可能にすることで、観察者にとって立体的に見える2つの二次元像表示が可能になる。
【0023】
なお、画像データ出力部10から出力されるフロント輝度データ、リヤ輝度データは、フロントモニターとリヤモニターとが所定の距離に配置された状態で、二次元像を表示させた時に、奥行き感のある画像を表示出来るようなデータが用意されるが、かかるフロント輝度データとリヤ輝度データの組み合わせが、かかる所定の距離に配置されていないフロントモニターとリヤモニターとの組み合わせで、奥行き感のある画像を表示出来るとは限らない。この場合、フロントモニターと、リヤモニターとの距離に合わせて、フロント輝度データやリヤ輝度データを補正する形態が考えられるが、補正演算に時間がかかる上、補正演算ではデータの圧縮を伴うため画質の劣化のおそれもある。
【0024】
これに対して、本実施形態では、リヤモニターを複数台用意し、表示された画像を見ながら、奥行き感のある画像を得るのに最適なリヤモニターを選択出来るため、輝度データをフロントモニターとリヤモニターとの間隔に合わせて補正する必要はない。このため、補正演算にかかる時間ロスや、データの圧縮を伴う補正演算を行わないため、画質の劣化も生じない。
【0025】
なお、リヤモニターの前に配置されたフロントモニターなど別のモニターを透過する際に、リヤモニターで表示される二次元像の輝度が減衰するおそれがある。このため、画像データ出力部10は、輝度データ補正部として、選択されたリヤモニターに関する情報に基づき、リヤ輝度データを補正してもよい。具体的には、選択されたリヤモニターよりも前面(観察者側)に配置されたモニターの透過率に基づいて、前に配置されたモニターを透過することによる輝度の減衰率を算出し、その分だけ輝度を上げるように、リヤ輝度データを補正する。
【0026】
例えば、フロントモニターFM、第1〜第4リヤモニターRM〜RMが等間隔に並べられ、且つ同じ透過率Tの表示装置である場合に、第nリヤモニターRM(1≦n≦4)がリヤモニターとして使用する場合には、1/T倍に輝度を上げるように、リヤ輝度データを補正する。透過率Tが50%で、第1リヤモニターRMをリヤモニターとして使用する場合には、リヤ輝度データの輝度を、2倍に補正し、第2リヤモニターRMをリヤモニターとして使用する場合には、リヤ輝度データの輝度を、4倍に補正する。なお、輝度を上げるようにリヤ輝度データを補正する代わりに、輝度を下げるようにフロント輝度データを補正する形態であってもよい。
【0027】
かかるリヤ輝度データを補正する手順を、図2のフローチャートを用いて説明する。かかる制御は、三次元表示システム1がオン状態にされている時に一定時間(例えば1ms)ごとに行われる。ステップS11で、画像データ出力部10(の制御部)は、観察者による操作部40を介して使用するリヤモニターを変更する指示があったか否か、すなわち、選択されたリヤモニターに関する情報の送信が行われたか否かを判断する。行われない場合は、かかる制御を終了する。行われた場合には、ステップS12で、画像データ出力部10は、オン状態にするスイッチの番号nを変更し、オン状態にするスイッチの番号nに関する情報を第1〜第4スイッチSW〜SWに送信する。
【0028】
ステップS13で、画像データ出力部10は、観察者による操作部40を介してリヤ輝度データの補正を行う指示があったか否かを判断する。指示があった場合は、ステップS14で、画像データ出力部10は、前述のようなリヤ輝度データの補正を行った後、フロント輝度データ、補正後のリヤ輝度データ、及び色差データの出力を行う。指示が無かった場合は、ステップS15で、画像データ出力部10は、リヤ輝度データの補正を行わずに、フロント輝度データ、リヤ輝度データ、及び色差データの出力を行う。ステップS16で、第1〜第4スイッチSW〜SWはオフ状態にされ、ステップS17で、オン状態にするスイッチの番号nに対応するスイッチ(図1では、第2スイッチSW)がオン状態にされ、使用するリヤモニターの切り替えが完了する。
【0029】
これにより、フロントモニターFMなどを透過する際の輝度の減衰をも考慮した、観察者にとって立体的に見える2つの二次元像表示が可能になる。
【0030】
なお、本実施形態では、4つのリヤモニター(第1〜第4リヤモニターRM〜RM)を選択的に使用する形態を説明したが、アクチュエータ60を用いて、1台のリヤモニターRMを、フロントモニターFMの表示面に垂直な方向に移動させる形態であってもよい(図3参照)。この場合、観察者は、操作部40を使って、リヤモニターRMをフロントモニターFMに近づけるか遠ざけるかの指示を行い、かかる指示に応じて画像データ出力部10は、アクチュエータ60を制御して、リヤモニターRMを移動させる。
【符号の説明】
【0031】
1 三次元表示システム
10 画像データ出力部
20 フロント表示制御部
30 リヤ表示制御部
40 操作部
60 アクチュエータ
FM フロントモニター
RM リヤモニター
RM〜RM 第1〜第4モニター
SW〜SW 第1〜第4スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色差データとフロント輝度データに基づいて二次元像を表示するフロントモニターと、
前記フロントモニターの背面で且つ前記フロントモニターの表示面に垂直な方向に配置された複数のリヤモニターと、
前記複数のリヤモニターのうち、使用するリヤモニターを選択するために使用される操作部とを備え、
前記複数のリヤモニターのうち、前記操作部を介して選択されたリヤモニターは、前記色差データとリヤ輝度データに基づいて二次元像を表示することを特徴とする三次元表示システム。
【請求項2】
前記操作部を介して選択されたリヤモニターよりも前面に設けられたモニターの透過率に基づいて、前記フロント輝度データと前記リヤ輝度データの少なくとも一方を補正する輝度データ補正部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の三次元表示システム。
【請求項3】
色差データとフロント輝度データに基づいて二次元像を表示するフロントモニターと、
前記フロントモニターの背面に配置され、前記色差データとリヤ輝度データに基づいて二次元像を表示するリヤモニターと、
前記リヤモニターと、前記フロントモニターとの距離を設定するために使用される操作部と、
前記操作部を介して設定された情報に基づいて、前記リヤモニターを、前記フロントモニターの表示面に垂直な方向に移動させるアクチュエータとを備えることを特徴とする三次元表示システム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−283784(P2010−283784A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137617(P2009−137617)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】