説明

三次元造形装置、三次元造形方法、三次元造形装置用の設定データ作成装置、三次元造形装置用の設定データ作成プログラム並びにコンピュータで読み取り可能な記録媒体

【課題】最終造形物からサポート材を容易に除去する作業性を損なうことなく、硬化後の樹脂にローラ部が接触して樹脂が掻き取られることを回避する。
【解決手段】水平駆動手段を駆動させて、一スライス分の造形材を造形材吐出手段で吐出させ硬化させた上で、垂直駆動手段を制御させて吐出位置を該硬化後のスライス上に移動させ、さらに次層のスライス分の造形材を吐出、硬化させてスライスを順次積層するよう制御する制御手段を備える。造形物に、積層方向においてモデル材MA又はサポート材SAが一方の造形材から他方に変化する異種界面に対応させて、造形材を吐出しない又は吐出量を減少させた中空部ESが、該当するスライス中に設けられている。制御手段は、造形物のスライス中に中空部ESを含むことを検知し、該中空部ESに対応する位置に造形材吐出手段から造形材を吐出しない、又は吐出量を減少するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式で立体造形物を作製する三次元造形装置、三次元造形方法、三次元造形装置用の設定データ作成装置、三次元造形装置用の設定データ作成プログラム並びにコンピュータで読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、造形物の基礎データである3次元データを、コンピュータの画面上で任意の姿勢に設定し、設定された姿勢に基づいて高さ方向に平行な複数の面で切断した各断面毎のデータを生成し、この各層に関する二次元データに基づいて、樹脂を順次積層することよって立体造形を行い、造形物の三次元モデルとなる造形物を生成する装置が知られている。
【0003】
製品開発において試作等に用いられるラピッド・プロトタイピング(Rapid Prototyping:RP)の分野で、三次元造型が可能な積層造形法が利用されている。積層造形法としては、積層造形法は、製品の三次元CADデータをスライスし、薄板を重ね合わせたようなものを製造の元データとして作成し、それに粉体、樹脂、鋼板、紙などの材料を積層して試作品を作成する。このような積層造形法としては、インクジェット法、粉末法、光造形法、シート積層法、押し出し法等が知られている。この内、インクジェット法は、液化した材料を噴射した後、紫外光(UV)を照射したり、冷却するなどによって層を硬化させて形成する。この方法によれば、インクジェットプリンタの原理を応用できることから、高精細化が容易となる利点が得られる。
【0004】
樹脂積層方式の三次元造形装置は、最終的な造形物となるモデル材と、モデルを支える基礎部分並びにモデル材の張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材を×Y方向に走査しながら造形プレート上に吐出し、高さ方向に積層していくことにより、造形を行う。モデル材とサポート材は紫外光を照射することにより、硬化する特性を有する樹脂からなり、紫外光を照射する紫外光ランプはモデル材とサポート材を吐出するノズルと共に、×Y方向に走査され、ノズルから吐出されたモデル材およびサポート材に紫外光を照射し、硬化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−535712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなインクジェット方式の三次元造型機では、各スライスに対応した各層の厚みを均一に保つことで、高さ方向の造形精度が維持される。しかし、各層の厚みを均一に保つために、複数のノズルが同時に吐出する樹脂の量を常に一定に制御するのは困難であることから、各層の造形に必要な樹脂量よりも多くしたマージンを設けて、モデル材やサポート材等の造形材料を余剰に吐出する。そして樹脂の吐出後には、ノズルから吐出された樹脂の余剰分を、回収機構で回収しながら造形を行う。このような回収機構には、ローラ部が用いられる。図31〜図33に、ローラ部25で造形材の余剰分を除去する状態の斜視図を示す。この例では、造形プレート40上に吐出された樹脂が流動可能な状態で、その表面をローラ本体26で均す状態を示している。ローラ部25は、回転体であるローラ本体26と、ローラ本体26の表面に対して突出するように配置されたブレード27と、ブレード27で掻き取られた造形材を溜めるバス28と、バス28に溜まった造形材を排出する吸引パイプ29とを備えている。ローラ本体26はヘッド部20の進行方向に対して逆回転(図33において時計回り)に回転され、流動可能な造形材を掻き上げる。掻き上げられた造形材は、ローラ本体26に付着してブレード27まで運ばれた後、ブレード27で掻き取られてバス28に案内される。このためブレード27は、バス28に向かって下り勾配の姿勢で固定される。また吸引パイプ29は廃液経路に接続されており、ポンプ等を用いてバス28に溜まった造形材を吸引して、廃液タンク(図示せず)に溜める。
【0007】
このようなローラ部25を用いた回収機構によって、図32に示すように樹脂の余剰分を回収しながら造形を行っている。しかしながら、本来であれば接触しないはずの硬化済みの樹脂にも、ローラ部25など機械部品の精度や、駆動部分の振動等により、図33に示すようにローラ部25が接触することがある。ローラ部25が硬化済みの樹脂に接触しても、図34に示すように該硬化済み樹脂が同種の硬化済みの樹脂と一体化しており、硬化層が十分厚い場合は、この硬化層が剥離されることはない。
【0008】
しかしながら、図35に示すように硬化層が薄い場合には、接触した部分からローラ部25に巻き取られてしまい、樹脂回収機構内に堆積し、廃液経路の詰まりなどにつながってしまうことがあった。あるいは、樹脂がすべて回収されないとしても、図36に示すようにローラ部25に接触して部分的に剥離されることにより、皺が生じてしまい、造形物の質を低下させてしまうという問題があった。
【0009】
このような硬化層が薄い場合は、層が形成され始めた部位や、図37において網目で示すように異なる樹脂同士の接合界面、すなわち層が切り替わる部位において発生する。ここで、層の変わり目においてこのような剥離を防止するため、異なる樹脂同士の界面において、これら異なる樹脂間の接合を強くすることが考えられる。この構成によれば、ローラ部25が接触しても異なる樹脂間の界面で接合が強いことから、剥離を生じ難くできる。しかしながら、この場合はサポート材SAとモデル材MAの接着力が強くなる結果、造形後に最終造形物からサポート材SAを除去する作業が却って困難になるという問題があった。
【0010】
逆に、異なる樹脂層の界面で接合を弱くすれば、造形後にサポート材SAを除去する作業が容易となり、作業性が良くなるものの、この場合は上述したローラ部25が接触することで簡単に剥離されてしまうという問題が残る。このように、ローラ部の衝突により容易に剥離される課題と、造形後のサポート材の除去し易さを確保しようとする課題とは、互いに相反しており、両立させることは困難であった。
【0011】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、最終造形物からサポート材を容易に除去する作業性を損なうことなく、硬化後の樹脂にローラ部が接触して樹脂が掻き取られることを回避可能とした三次元造形装置、三次元造形方法、三次元造形装置用の設定データ作成装置、三次元造形装置用の設定データ作成プログラム並びにコンピュータで読み取り可能な記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面に係る三次元造形装置によれば、造形プレート40上に、造形材として、最終的な造形物となるモデル材MAと、前記モデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAと、を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを層状に生成し、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形装置であって、造形物を載置するための前記造形プレート40と、前記モデル材MAを吐出するためのモデル材吐出ノズル21、及び前記サポート材SAを吐出するためのサポート材吐出ノズル22を、それぞれ一方向に複数個配列させた造形材吐出手段と、回転自在に支承され、前記モデル材MA又はサポート材SAが流動可能な状態でこれを上面から回転しながら押圧して、該モデル材MA又はサポート材SAの余剰分を掻き取るためのローラ部25と、前記造形材吐出手段及びローラ部25を備えるヘッド部20と、前記ヘッド部20を水平方向に往復走査させるための水平駆動手段と、前記ヘッド部20と造形プレート40との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段と、前記水平駆動手段を駆動させて、一スライス分の造形材を前記造形材吐出手段で吐出させ硬化させた上で、前記垂直駆動手段を制御させて吐出位置を該硬化後のスライス上に移動させ、さらに次層のスライス分の造形材を吐出、硬化させてスライスを順次積層するよう制御する制御手段10と、を備え、前記制御手段10は、造形物が積層時の高さ方向において前記モデル材MA又はサポート材SAが一方の造形材から他方の造形材に変化する異種界面を含む場合に、該異種界面に対応するスライス又はその近傍のスライスに、該一方の造形材又は他方の造形材のいずれかの造形材を吐出しない又は吐出量を減少させた中空部が形成されるように、前記造形材吐出手段を制御するよう構成できる。これにより、中空部に対応する位置に吐出された造形材は、ローラ部により掻き取られないように最上面をローラ部よりも下方に離間させることができ、層の剥離や誤回収等の問題を有効に回避できる。
【0013】
また第2の側面に係る三次元造形装置によれば、前記制御手段10は、前記造形物のスライス中に前記中空部ESが含まれ、該中空部ESに対応する位置に前記造形材吐出手段から造形材を吐出しない、又は吐出量を減少するように制御して該スライスの造形を終えた後、次層のスライスの造形時において、前記中空部ESに対応する位置に吐出された該他方の造形材の最上面と前記ローラ部25とが接触しないように、前記垂直駆動手段により前記ヘッド部20と造形プレート40との高さ方向の相対位置を移動させ、さらに次層以降のスライスの造形時において、前記中空部ESに対応する位置に吐出された該他方の造形材の最上面と、前記ローラ部25とを接触させて、該位置に吐出された該他方の造形材の余剰分が前記ローラ部25により掻き取られるように、前記造形材吐出手段及び前記垂直駆動手段を制御することができる。
【0014】
さらに第3の側面に係る三次元造形装置によれば、前記造形物中の中空部ESが、前記モデル材MA又はサポート材SAの内、他方の造形材に設けられる場合、異種界面に接した直上のスライスに設けることができる。
【0015】
さらにまた第4の側面に係る三次元造形装置によれば、前記造形物中の中空部ESが、前記モデル材MA又はサポート材SAの内、一方の造形材に設けられる場合、異種界面に接した直下、又は該位置からさらに所定のスライス分だけ下方に離間したスライスに設けることができる。
【0016】
さらにまた第5の側面に係る三次元造形装置によれば、造形プレート40上に、造形材として、最終的な造形物となるモデル材MAと、前記モデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAと、を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを層状に生成し、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形装置であって、造形物を載置するための前記造形プレート40と、前記モデル材MAを吐出するためのモデル材吐出ノズル21、及び前記サポート材SAを吐出するためのサポート材吐出ノズル22を、それぞれ一方向に複数個配列させた造形材吐出手段と、回転自在に支承され、前記モデル材MA又はサポート材SAが流動可能な状態でこれを上面から回転しながら押圧して、該モデル材MA又はサポート材SAの余剰分を掻き取るためのローラ部25と、前記造形材吐出手段及びローラ部25を備えるヘッド部20と、前記ヘッド部20を水平方向に往復走査させるための水平駆動手段と、前記ヘッド部20と造形プレート40との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段と、前記水平駆動手段を駆動させて、一スライス分の造形材を前記造形材吐出手段で吐出させ硬化させた上で、前記垂直駆動手段を制御させて吐出位置を該硬化後のスライス上に移動させ、さらに次層のスライス分の造形材を吐出、硬化させてスライスを順次積層するよう制御する制御手段10と、前記垂直駆動手段による垂直方向への移動後に、前記造形材吐出手段から吐出される造形材の種類が、モデル材MA又はサポート材SAの一方から他方に変化する際に、いずれかの造形材を所定数のスライス分吐出しないよう前記造形材吐出手段を制御する吐出制御手段13とを備えることができる。これにより、モデル材とサポート材という異なる造形材同士の界面において、いずれかの造形材を所定数のスライス分抜くことで、抜かれたスライス分の中空部分を高さ方向に生じさせて、ローラ部が造形材の表面に接触しないようにでき、硬化した造形材をローラ部で回収してしまうことを回避できる。
【0017】
さらにまた第6の側面に係る三次元造形装置によれば、前記吐出制御手段13が、前記垂直駆動手段による垂直方向への移動後に、前記造形材吐出手段から吐出される造形材の種類が、モデル材MA又はサポート材SAの一方から他方に変化する際に、該変化後の造形材を所定数のスライス分吐出しないよう前記造形材吐出手段を制御することができる。これにより、モデル材とサポート材という異なる造形材同士の界面において、直後に積層されるスライスを所定数分抜くことで、抜かれたスライス分の中空部分を高さ方向に生じさせて、ローラ部が造形材の表面に接触しないようにでき、硬化した造形材をローラ部で回収してしまうことを回避できる。
【0018】
さらにまた第7の側面に係る三次元造形装置によれば、さらに前記モデル材MA及びサポート材SAを硬化させるための硬化手段24を備え、前記制御手段10が、前記水平駆動手段で前記ヘッド部20を一方向に往復走査させて、該往復走査の往路又は復路の少なくともいずれか一方で、前記造形材吐出手段により前記モデル材MA又はサポート材SAの一方を前記造形プレート40上に吐出させ、該往復走査の復路又は往路の少なくともいずれか一方で、流動可能な状態にあるモデル材MA又はサポート材SAの一方の余剰分を、前記ローラ部25により回収し、該往復走査の往路又は復路の少なくともいずれか一方で、前記硬化手段24により前記モデル材MA又はサポート材SAの一方を硬化させることにより、さらに該往復走査の復路又は往路の少なくともいずれか一方で、前記造形材吐出手段により前記モデル材MA又はサポート材SAの他方を前記造形プレート40上に吐出させ、該往復走査の往路又は復路の少なくともいずれか一方で、流動可能な状態にあるモデル材MA又はサポート材SAの他方の余剰分を、前記ローラ部25により回収し、該往復走査の復路又は往路の少なくともいずれか一方で、前記硬化手段24により前記モデル材MA又はサポート材SAの他方を硬化させることにより、前記スライスを生成し、前記垂直駆動手段で高さ方向に前記造形プレート40とヘッド部20の相対位置を移動させて、前記スライスの積層を繰り返すことにより造形を実行するよう制御することができる。これにより、モデル材とサポート材とを個別に、余剰分の回収と硬化とを行わせることができ、これらの界面におけるモデル材とサポート材の混合を回避して、造形物の品質を向上させることができる。
【0019】
さらにまた第8の側面に係る三次元造形装置によれば、造形物の走査方向における前記モデル材MAとサポート材SAとが位置するラインにおいて、同一の往復走査で、前記モデル材MAとサポート材SAを同時に吐出させず、いずれか一方の造形材のみを吐出、硬化させることができる。これにより、同一の往復走査で、モデル材とサポート材を同時に吐出せず、いずれか一方のみを吐出、硬化させることで、同一ライン上で隣接するモデル材とサポート材との界面が共に未硬化となって混合する事態を回避でき、界面を綺麗に成形できる利点が得られる。
【0020】
さらにまた第9の側面に係る三次元造形装置によれば、造形物の走査方向における前記モデル材MAとサポート材SAとが位置するラインにおいて、同一の往復走査で、前記モデル材MAとサポート材SAとを吐出させ、又は硬化させることができる。これにより、同一の往復走査で、モデル材とサポート材を同時に形成でき、造形時間の短縮化を図ることができる。
【0021】
さらにまた第10の側面に係る三次元造形装置によれば、前記モデル材MAとサポート材SAとの界面における接合力を、前記モデル材MA同士又は前記サポート材SA同士の接合力よりも弱くすることができる。これにより、モデル材とサポート材との界面の接合を弱くして、最終造形物からサポート材を除去する作業を容易にする一方で、異種界面での樹脂の剥離や誤回収を回避できる。
【0022】
さらにまた第11の側面に係る三次元造形装置によれば、異なる種類の造形材が接合する界面において、該界面の上側に位置する造形材が吐出、硬化された層の厚さが、他の層の厚さよりも厚く形成させることができる。これによって、異なる樹脂同士の界面においても、層を厚くすることでローラ部による誤回収の可能性を低減できる。
【0023】
さらにまた第12の側面に係る三次元造形装置によれば、該いずれかの造形材を所定数のスライス分除去した中空部ESに、余剰分を回収しないで該いずれかの造形材が少なくとも2層分以上積層されるまで、該いずれかの造形材が前記ローラ部に接触しないように、前記スライスの所定数が前記吐出制御手段13によって設定することができる。これにより、造形材が仮にローラ部に接触しても、最早造形材が層ごと剥離されたり、あるいは硬化済みの造形材が誤回収されることがない程に、造形材の厚さが十分厚くなるまでは、造形材がローラ部に接触しないように、中空部の高さが設定されているため、このような事態を効果的に回避して安定的な造形が実現される。
【0024】
さらにまた第13の側面に係る三次元造形装置によれば、前記吐出制御手段13が、前記造形材吐出手段から吐出される造形材がサポート材SAからモデル材MAに切り替わった後の、モデル材MAを少なくとも1層分又は2層分吐出しないよう、前記造形材吐出手段を制御することができる。これにより、層を抜くことでローラが接触しないように高低差を設けることができ、硬化したモデル材をローラ部で回収してしまうことを回避できる。
【0025】
さらにまた第14の側面に係る三次元造形装置によれば、前記吐出制御手段13が、前記造形材吐出手段から吐出される造形材がモデル材MAからサポート材SAに切り替わった後の、サポート材SAを少なくとも1層分又は2層分吐出しないよう、前記造形材吐出手段を制御することができる。これにより、層を抜くことでローラが接触しないように高低差を設けることができ、硬化したサポート材をローラ部で回収してしまうことを回避できる。
【0026】
さらにまた第15の側面に係る三次元造形装置によれば、前記吐出制御手段13が、造形材を吐出しないスライスを決定するため、各スライスにおける吐出の有無の論理積を取って演算することができる。
【0027】
さらにまた第16の側面に係る三次元造形方法によれば、造形物を載置するための造形プレート40上に、造形材として、最終的な造形物となるモデル材MAと、前記モデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAと、を水平駆動手段で造形材吐出手段を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させ、垂直駆動手段で吐出位置を高さ方向に相対的に移動させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを生成しながら、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形方法であって、前記モデル材MA又はサポート材SAのいずれか一方の造形材を、該造形材を吐出するための造形材吐出手段により前記造形プレート40上に吐出させる工程と、該吐出された一方の造形材を、流動可能な状態で該造形材の余剰分を回収するため回転自在に支承されたローラ部25で所定速度にて回転させながら回収する工程と、該余剰分を回収された流動可能な状態にある造形材を、硬化させる工程と、前記垂直駆動手段で前記造形材吐出手段と造形プレート40との高さ方向の相対位置を移動させる工程と、前記造形材吐出手段による造形材の吐出、前記ローラ部25による造形材の余剰分の回収、造形材の硬化、及び前記垂直駆動手段による高さ方向への移動を繰り返しつつ、前記垂直駆動手段による移動後に、前記造形材吐出手段から吐出される造形材の種類が、モデル材MA又はサポート材SAの一方から他方に変化する場合に、いずれかの造形材を一以上のスライス分吐出しない、又は造形材の吐出量を減少するよう前記造形材吐出手段を制御する工程と、を含むことができる。これにより、モデル材とサポート材という異なる造形材同士の界面において、いずれかの造形材を所定数のスライス分を抜くことで、抜かれたスライス分の中空部分を高さ方向に生じさせて、ローラ部が造形材の表面に接触しないようにでき、硬化した造形材をローラ部で回収してしまうことを回避できる。特に、異種の造形材同士の接合部付近で、同種の層が薄いところでは、ローラ部が接触しないように高低差を設けることができ、ローラ部による誤回収や剥離を防止できる。また、このような誤回収や剥離を効果的に阻止できることから、モデル材とサポート材の接合力を弱くすることができ、造形後にサポート材を除去する作業を容易にできる利点も得られる。
【0028】
さらにまた第17の側面に係る三次元造形方法によれば、さらに積層時の高さ方向において、前記モデル材MA又はサポート材SAが一方の造形材から他方の造形材に変化する異種界面にて、前記造形材吐出手段から造形材を吐出しない、又は吐出量を減少するように制御して該スライスの造形を終えた後、前記垂直駆動手段により吐出位置を相対位置を、次層のスライスの造形位置に移動させ、該異種界面と対応する位置に該他方の造形材を吐出させ、該吐出された造形材の最上面と、前記ローラ部25とを離間させる工程と、さらに次層以降のスライスの造形時において、前記異種界面と対応する位置に該他方の造形材を吐出させ、該吐出された造形材の最上面と、前記ローラ部25とを接触させて、該吐出された該他方の造形材の余剰分を、前記ローラ部25により掻き取る工程と、を含むことができる。
【0029】
さらにまた第18の側面に係る三次元造形方法によれば、前記造形材吐出手段により、いずれかの造形材の吐出をしない又は吐出量を制限する位置が、前記モデル材MA又はサポート材SAの内、他方の造形材の吐出位置であって、前記異種界面に接した直上のスライスに設けることができる。
【0030】
さらにまた第19の側面に係る三次元造形方法によれば、前記造形材吐出手段により、いずれかの造形材の吐出をしない又は吐出量を制限する位置が、前記モデル材MA又はサポート材SAの内、一方の造形材の吐出位置であって、異種界面に接した直下、又は該位置からさらに所定のスライス分だけ下方に離間したスライスに設けることができる。
【0031】
さらにまた第20の側面に係る三次元造形方法によれば、前記垂直駆動手段による垂直方向への移動後に、前記造形材吐出手段から吐出される造形材の種類が、モデル材MA又はサポート材SAの一方から他方に変化する際に、該変化後の造形材を所定数のスライス分を吐出しないよう前記造形材吐出手段を制御することができる。これにより、モデル材とサポート材という異なる造形材同士の界面において、直後に積層されるスライスを所定数分抜くことで、抜かれたスライス分の中空部分を高さ方向に生じさせて、ローラ部が造形材の表面に接触しないようにでき、硬化した造形材をローラ部で回収してしまうことを回避できる。
【0032】
さらにまた第21の側面に係る三次元造形装置用の設定データ作成装置によれば、造形物を載置するための造形プレート40上に、造形材として、最終的な造形物となるモデル材MAと、前記モデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAと、を水平駆動手段で造形材吐出手段を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させ、垂直駆動手段で吐出位置を高さ方向に相対的に移動させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを生成しながら、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形装置用の設定データ作成装置であって、造形物の三次元データを取得するための入力手段と、造形物の垂直方向で、前記造形材吐出手段から吐出される造形材の種類が、モデル材MA又はサポート材SAの一方から他方に変化する部位において、いずれかの造形材を所定数のスライス分除去した、又は造形材の吐出量を減少させた中空部ESを生成する中空部生成手段と、備えることができる。これにより、モデル材とサポート材という異なる造形材同士の界面において、いずれかの造形材を所定数のスライス分抜くことで、抜かれたスライス分の中空部分を高さ方向に生じさせて、ローラ部が造形材の表面に接触しないようにでき、硬化した造形材をローラ部で回収してしまうことを回避できる。
【0033】
さらにまた第22の側面に係る三次元造形装置用の設定データ作成装置によれば、前記中空部ESを生成する位置を、前記モデル材MA又はサポート材SAが一方の造形材から他方の造形材に変化する異種界面に接した直上のスライスに設けることができる。
【0034】
さらにまた第23の側面に係る三次元造形装置用の設定データ作成装置によれば、前記中空部ESを生成する位置を、前記モデル材MA又はサポート材SAが一方の造形材から他方の造形材に変化する異種界面に接した直下、又は該位置からさらに所定のスライス分だけ下方に離間したスライスに設けることができる。
【0035】
さらにまた第24の側面に係る三次元造形装置用の設定データ作成プログラムによれば、造形物を載置するための造形プレート40上に、造形材として、最終的な造形物となるモデル材MAと、前記モデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAと、を水平駆動手段で造形材吐出手段を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させ、垂直駆動手段で吐出位置を高さ方向に相対的に移動させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを生成しながら、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形装置用の設定データ作成プログラムであって、造形物の三次元データを取得するための入力機能と、造形物の垂直方向で、前記造形材吐出手段から吐出される造形材の種類が、モデル材MA又はサポート材SAの一方から他方に変化する部位において、いずれかの造形材を所定数のスライス分除去した、又は造形材の吐出量を減少させた中空部ESを生成する中空部生成機能と、をコンピュータに実現させることができる。これにより、モデル材とサポート材という異なる造形材同士の界面において、いずれかの造形材を所定数のスライス分抜くことで、抜かれたスライス分の中空部分を高さ方向に生じさせて、ローラ部が造形材の表面に接触しないようにでき、硬化した造形材をローラ部で回収してしまうことを回避できる。
【0036】
さらにまた第25の側面に係る三次元造形装置用の設定データ作成プログラムによれば、前記中空部生成機能が、造形物の垂直方向で、前記造形材吐出手段から吐出される造形材の種類が、モデル材MA又はサポート材SAの一方から他方に変化する際に、該変化後の造形材を所定数のスライス分除去した中空部ESを生成することができる。これにより、モデル材とサポート材という異なる造形材同士の界面において、直後に積層されるスライスを所定数分抜くことで、抜かれたスライス分の中空部分を高さ方向に生じさせて、ローラ部が造形材の表面に接触しないようにでき、硬化した造形材をローラ部で回収してしまうことを回避できる。
【0037】
さらにまた第26の側面に係る三次元造形装置用の設定データ作成プログラムによれば、前記中空部ESを生成する位置を、前記モデル材MA又はサポート材SAが一方の造形材から他方の造形材に変化する異種界面に接した直上のスライスに設けることができる。
【0038】
さらにまた第27の側面に係る三次元造形装置用の設定データ作成プログラムによれば、前記中空部ESを生成する位置を、前記モデル材MA又はサポート材SAが一方の造形材から他方の造形材に変化する異種界面に接した直下、又は該位置からさらに所定のスライス分だけ下方に離間したスライスに設けることができる。
【0039】
さらにまた第28の側面に係るコンピュータで読み取り可能な記録媒体は、上記プログラムを格納したものである。記録媒体には、CD−ROM、CD−R、CD−RWやフレキシブルディスク、磁気テープ、MO、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、Blu−ray、HD DVD(AOD)等の磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリその他のプログラムを格納可能な媒体が含まれる。またプログラムには、上記記録媒体に格納されて配布されるものの他、インターネット等のネットワーク回線を通じてダウンロードによって配布される形態のものも含まれる。さらに記録媒体にはプログラムを記録可能な機器、例えば上記プログラムがソフトウエアやファームウエア等の形態で実行可能な状態に実装された汎用もしくは専用機器を含む。さらにまたプログラムに含まれる各処理や機能は、コンピュータで実行可能なプログラムソフトウエアにより実行してもよいし、各部の処理を所定のゲートアレイ(FPGA、ASIC)等のハードウエア、又はプログラムソフトウエアとハードウエアの一部の要素を実現する部分的ハードウエアモジュールとが混在する形式で実現してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例1に係る三次元造形装置を示すブロック図である。
【図2】変形例に係る三次元造形装置を示すブロック図である。
【図3】ヘッド部がXY方向に移動される様子を示す平面図である。
【図4】ヘッド部の外観を示す斜視図である。
【図5】ローラ部で造形材の余剰分を除去する状態を示す斜視図である。
【図6】ローラ部の吐出ノズルとローラ本体の幅を示す模式平面図である。
【図7】造形物の同一層を複数の領域に分けて造形した状態を示す模式断面図である。
【図8】図8(a)はローラ部で樹脂の余剰分を回収した直後の理論上の形態、図8(b)は図8(a)の樹脂が自重で変形する様子を示す模式断面図である。
【図9】複数層を積層する状態を示す模式断面図である。
【図10】モデル材とサポート材の界面の混ざりを軽減する様子を示す模式図である。
【図11】図10の手順を示すフローチャートである。ステップS1
【図12】評価試験で造形した造形材を示す斜視図である。
【図13】図13(a)は造形物を示す模式断面図、図13(b)は仮想的に中空部を設けた状態を示す模式断面図である。
【図14】図14(a)は、図13(a)の各スライスを同時造形で造形する際の造形順序を示す模式断面図、図14(b)は、図13(b)の造形物を実施例1に係る同時造形で造形する際の造形順序を示す模式断面図である。
【図15】図14(b)の造形物を、スライスS1〜S5まで造形した様子を示す模式断面図である。
【図16】図15の状態から、スライスS6を造形する様子を示す模式断面図である。
【図17】図16の状態から更にスライスS7及び8を造形する様子を示す模式断面図である。
【図18】図13(b)の造形物を実施例2に係る個別造形で、スライスS1〜S4まで造形した様子を示す模式断面図である。
【図19】図18の状態から、モデル材とサポート材を個別に造形する様子を示す模式断面図である。
【図20】図19の状態から更に、モデル材とサポート材を個別に造形する様子を示す模式断面図である。
【図21】図21(a)は、図13(a)の各スライスを個別造形でモデル材、サポート材を造形する順序を示す模式断面図、図21(b)は、図13(b)を実際に造形する際のモデル材、サポート材の造形順序を示す模式断面図である。
【図22】図22(a)は実施例3に係る、吐出量を制限した中空部を設けた造形物を示す断面図、図22(b)は図22(a)の造形物をスライスS1〜S4まで積層した状態を示す断面図、図22(c)は図22(b)に更にスライスS5を積層した状態を示す断面図、図22(d)は図22(c)に更にスライスS6を積層した状態を示す断面図である。
【図23】図23(a)は、造形物を示す断面図、図23(b)は図23(a)の造形物に実施例4に係るサポート材側に中空部を設ける例を示す断面図である。
【図24】図24(a)は、図23(b)に示す実施例4に係るサポート材側に中空部を設けた造形物の断面図、図24(b)は図24(a)の造形物のスライスS3を造形する様子を示す断面図、図24(c)は図24(b)に更にスライスS4を積層する様子を示す断面図、図24(d)は図24(c)に更にスライスS5を積層する様子を示す断面図、図24(e)は図24(d)に更にスライスS6を積層する様子を示す断面図である。
【図25】図25(a)は、実施例5に係る中空部ESを異種界面の下方に離間させて設けた造形物を示す断面図、図25(b)は、図25(a)の造形物のスライスS2を造形する様子を示す断面図、図25(c)は図25(b)に更にスライスS3を積層する様子を示す断面図、図25(d)は図25(c)に更にスライスS4を積層する様子を示す断面図、図25(e)は図25(d)に更にスライスS5を積層する様子を示す断面図である。
【図26】造形物データから吐出データを生成する手順の一例を示すフローチャートである。
【図27】中空部を演算するためスライスS3の吐出可否を演算する様子を示す模式断面図である。
【図28】中空部を演算するためスライスS4の吐出可否を演算する様子を示す模式断面図である。
【図29】中空部を演算するためスライスS5の吐出可否を演算する様子を示す模式断面図である。
【図30】造形材吐出手段が吐出可否を決定する手順を示すフローチャートである。
【図31】ローラ部の構造を示す斜視図である。
【図32】ローラ部で未硬化の樹脂の余剰分を回収する様子を示す模式図である。
【図33】ローラ部が硬化済みの樹脂に意図せず接触する様子を示す模式図である。
【図34】ローラ部が厚い既硬化層の樹脂に接触する様子を示す模式図である。
【図35】硬化済みの薄い樹脂層がローラ部に接触して巻き取られる様子を示す模式図である。
【図36】硬化済みの薄い樹脂層がローラ部に接触して皺が生じる様子を示す模式図である。
【図37】造形物の、異なる樹脂の接合界面を示す斜視図である。
【図38】三次元造形装置用の設定データ作成装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための三次元造形装置、三次元造形方法、三次元造形装置用の設定データ作成装置、三次元造形装置用の設定データ作成プログラム並びにコンピュータで読み取り可能な記録媒体を例示するものであって、本発明は三次元造形装置、三次元造形方法、三次元造形装置用の設定データ作成装置、三次元造形装置用の設定データ作成プログラム並びにコンピュータで読み取り可能な記録媒体を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(実施例1)
【0042】
図1に、本発明の実施例1に係る三次元造形システム100のブロック図を示す。ここでは、三次元造形装置の一例として、インクジェット方式の三次元造形装置に適用する例を説明する。この三次元造形システム100は、造形材を流動状態でインクジェット方式によって吐出、硬化させ、これを積層することによって任意の造形物を製造するものである。造形材には、最終的な造形物を構成するモデル材MAと、このモデル材MAが張り出した張り出し部分を支えるために造形され、最終的に除去されるサポート材SAとが利用される。
【0043】
図1に示す三次元造形システム100は、三次元造形装置2に造形物データならびに造形条件である設定データを送出する設定データ作成装置1(図1ではコンピュータPC)と、三次元造形装置2で構成される。三次元造形装置2は、制御手段10と、ヘッド部20と、造形プレート40とを備える。ヘッド部20は、造形材吐出手段として、モデル材MAを吐出するモデル材吐出ノズル21と、サポート材SAを吐出するサポート材吐出ノズル22を備えている。またこれらの吐出された造形材から余剰分を掻き取ることにより、その時点での造形物の最上層の厚みの適正化を図ると共に、造形材の表面を平滑化するためのローラ部25と、造形材を硬化させる硬化手段24も、ヘッド部20に備えられる。さらにヘッド部20を水平方向において、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から造形材を液体又は流体状態でインクジェット方式によって、造形プレート40上の適切な位置に吐出させるために、往復走査するX方向と、このX方向に直交するY方向に走査させるための水平駆動手段、及びヘッド部20と造形プレート40との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段として、XY方向駆動部31及びZ方向駆動部32を備えている。ここで、Y方向とはモデル材吐出ノズル21及びサポート材吐出ノズルが有する複数のオリフィスが配列した並び方向であり、X方向は水平面内においてこのY方向と直交する方向である。
【0044】
コンピュータPCは、三次元形状の造形物の基礎データ、例えば三次元CAD等で設計されたモデルデータの入力を外部から受けると、まずこのCADデータを、例えばSTL(Stereo Lithography Data)データに変換し、更にこのSTLデータを複数の薄い断面体にスライスして得られる断面データを生成し、そしてこのスライスデータを、一括又は各スライス層単位にて三次元造形装置2に対して送信を行う設定データ作成装置1として機能する。この際、三次元CAD等で設計されたモデルデータ(実際は、変換後のSTLデータ)の造形プレート40上における姿勢の決定に対応し、この姿勢におけるモデル材MAにて形成されるモデルを支持することが必要な空間又は箇所に対して、サポート材SAを設ける位置の設定が行われ、これらのデータを元に各層に対応するスライスデータが形成される。制御手段10は、コンピュータPCからの断面データを取り込み、そのデータに従ってヘッド部20、XY方向駆動部31及びZ方向駆動部32を制御する。この制御手段10の制御により、XY方向駆動部31が作動すると共に、ヘッド部20のモデル材吐出ノズル21及びサポート材吐出ノズル22より造形材としてのモデル材MAならびにサポート材SAを、小滴として造形プレート40上の適切な位置に吐出することにより、コンピュータPCから与えられた断面データに基づく断面形状が造形される。そして造形プレート40上に吐出された造形材の一であるモデル材MAは少なくとも硬化されて液体又は流体状態から固体に変化して硬化する。このような動作によって一層分の断面体すなわちスライスが作り出される。なお、スライスデータは、三次元造形装置2側で生成してもよいが、その際においても、各スライス層の厚み等のオペレータが決定しなくてはならない造形パラメータはコンピュータPC側から三次元造形装置2へ送信しなければならない。
(スライス)
【0045】
ここで「スライス」とは、造形物のz方向の積層単位であり、スライス数は高さを積層厚で除算した値となる。実際には、各スライスの厚みを決定する要件としては、各吐出ノズルからの吐出可能な最小限の単位吐出量やローラ部25のローラの上下方向における偏心によるばらつき等によって、設定可能な最小の厚みが決定される。このような観点に基づいて設定された値をスライスの最小値として、後は、ユーザが造形物に対して、求める、例えば、造形精度や造形速度の観点から各スライス量を最終的に決定できる。つまり、ユーザが造形精度を優先することを選択すれば、上述したスライス最小値又はその近傍の値にて各スライス量を決定し、一方造形速度を優先すれば、最低限の造形精度を維持した各スライス量を決定することができる。または、別の方法としては、造形精度と造形速度の比率をユーザに感覚的に選択させる方法や、ユーザに許容可能な最大造形時間を入力させることにより、いくつかの造形時間と造形精度の組み合わせを候補として表示し、その中からユーザが好む条件を選択させることも可能である。
【0046】
また、一つのスライスデータに対する造形行為は、少なくともヘッド部20をX方向(ヘッド部20の主走査方向)に往復動作する際の少なくとも往路又は復路にてモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から造形材を液体又は流体状態でインクジェット方式によって吐出させ、造形プレート40上に吐出された造形物が流動可能な状態にて、少なくとも往路又は復路にてその未硬化の造形物の表面を平滑化するためにローラ部25を作用させると共に、平滑化された造形物の表面に対して、硬化手段24から特定波長の光を照射することにより、造形物を硬化させる一連のステップを少なくとも一回行うことで行われるが、この回数は、スライスデータの厚みや要求される造形精度によって自動的に変更されることはいうまでもない。なお、造形に用いる造形材料が、所定の温度によって硬化するものであれば、本発明においては硬化手段24を冷却または加熱手段とすることもでき、また自然硬化できる場合には硬化手段を省略することもできる。
【0047】
一方、また少なくとも往路又は復路にてモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から吐出され、造形プレート上に形成される一回の最大の厚みは、吐出された液滴の着弾後の断面形状が略円形を留めることが可能な単位吐出量によって決まる。
(造形プレート40)
【0048】
造形プレート40は、Z方向駆動部32によって昇降自在としている。一スライスが形成されると、制御手段10によってZ方向駆動部32が制御され、造形プレート40は一スライス分の厚さに相当する距離だけ降下する。そして上記と同様な動作を繰り返し行うことにより一スライス目の上側(上表面)に新たなスライスが積層される。このように連続的に作り出された幾層もの薄いスライスが積層されて造形物が造形される。
【0049】
また、造形物がZ方向(つまり高さ方向)において、高さ方向で下方に位置する造形部分よりX−Y平面で張り出した、いわゆるオーバーハング形状を有するの場合には、コンピュータPCにおいて造形物をデータ化する際に必要に応じてオーバーハング支持部形状が付加される。言い換えれば、オーバーハング形状を有する造形物とは、既に成形されたモデル材のスライスが存在しない部分の上表面に新たなモデル材のスライスが成形される部分(オーバーハング部)を有する造形物である。そして制御手段10は、最終造形物を構成するモデル材MAの造形と同時に、そのオーバーハング支持部形状に基づいて、オーバーハング支持部SBを造形する。具体的には、モデル材MAとは別のサポート材SAを、サポート材吐出ノズル22から小滴として吐出させることにより、オーバーハング支持部SBを形成する。造形後に、オーバーハング支持部SBを構成するサポート材SAを除去することで、目的の三次元造形物を得ることができる。
【0050】
ヘッド部20は、図3の平面図に示すように、ヘッド移動手段30により水平方向、すなわちXY方向に移動される。ヘッド部20は、図において上下にそれぞれ配置された一対のX方向(主走査方向)ガイド機構であるX方向移動レール43に支持される。ヘッド部20を支持する基台側には、X方向への駆動部(図示せず)が、一方のX方向移動レール43に沿って設けられている。また、ヘッド部20をX方向移動レール43上に載置する門型のフレームに、ヘッド部20をY方向(副走査方向)に移動させるためのY方向移動レール44が設けられる。またヘッド部20をY方向移動レール44に沿って駆動するための駆動部(図示せず)が載置される。これらの駆動部によってヘッド部20は、XならびにY方向に移動することが可能となっている。
【0051】
さらに図4の例に示すヘッド部20は、吐出ノズルを設けた吐出ヘッドユニット20Aと、ローラ部及び硬化手段を設けた回収硬化ヘッドユニット20Bとに分割されている。吐出ヘッドユニット20Aと回収硬化ヘッドユニット20Bとの間には、ヘッド部20を移動させるためのY方向移動レール44を通すレールガイド45が設けられている。ヘッド部20は、図3の平面図に示すように、Y方向移動レール44に沿ってY方向に往復移動する。さらにY方向移動レール44の両端は、ヘッド移動手段30で支承されている。ヘッド移動手段30は、造形プレート40を上下方向に跨ぐように、造形プレートの上下に沿って平行に設けた一対のX方向移動レール43に沿ってX方向に往復移動する。これによってヘッド部20は、造形プレート上でXY平面上の任意の位置に移動できる。
【0052】
さらに造形プレート40が、図1に示すようにプレート昇降手段(Z方向駆動部32)によって高さ方向、すなわちZ方向に移動される。これによって、ヘッド部20と造形プレート40の相対高さを変更でき、立体的な造形が可能となる。より詳細には、まずヘッド部20は、ヘッド移動手段30によりモデル材吐出ノズル21及びサポート材吐出ノズル22より造形材としてのモデル材MAならびにサポート材SAをスライスデータに基づいた適切な箇所に吐出するために、X方向に往復動作され、各吐出ノズル21、22に各々設けられる複数のY方向に伸びるオリフィスから、モデル材MA及びサポート材SAが吐出される。さらに、図3に示すように、各吐出ノズル21、22のY方向の幅が、造形プレート40上の造形可能なY方向の幅より小さい場合で、且つ造形用のモデルデータのY方向の幅が、Y方向に伸びるオリフィスの全長より大きい場合は、各吐出ノズル21、22の所定の位置におけるX方向の往復動作の後、Y方向に各吐出ノズル21、22を所定量シフトさせ、その位置でのX方向の往復走査と共に、モデル材MA及びサポート材SAをスライスデータに基づいた適切な箇所に吐出させることを繰り返すことにより、設定された全ての造形物データに対応した造形物の生成を行う。
【0053】
なお図1の例では、Z方向駆動部32として造形プレート40を昇降させるプレート昇降手段を用いているが、この例に限られず、図2に示す三次元造形装置2’のように、造形プレート40側を高さ方向に固定し、ヘッド部側をZ方向に移動させるZ方向駆動部32’を採用することもできる。また、XY方向への移動も、ヘッド部側を固定して、造形プレート側を移動させてもよい。また、上述したような、ヘッド部20のY方向へのシフトは、各ノズルの幅を、実質的に造形プレート40の造形可能なY方向の幅と同じにすれば、その必要はないが、その際においても、例えばノズルに設けられるオリフィスの間隔で決定される造形物のY方向の解像度を高める目的として、ヘッド部20のY方向へのシフトにより、各オリフィスが、先の造形時におけるオリフィスとオリフィスの間に位置するようにシフトさせてもよい。
(制御手段10)
【0054】
制御手段10は、造形材の吐出パターンを制御する。すなわちモデル材MA及びサポート材SAを、X方向における往復走査の内、少なくとも往路又は復路の一方にて造形材吐出手段により造形プレート40上に吐出させながら、ヘッド部20をX方向に往復走査させて、造形材吐出手段により造形材が造形プレート上に吐出された後で、且つ往路又は復路の少なくともいずれか一方で、モデル材MA及びサポート材SAに対して硬化手段24で硬化させることにより、スライスを生成し、高さ方向に造形プレート40とヘッド部20の相対位置を移動させて、スライスの積層を繰り返すことにより造形を実行する。なお、詳細は後述するが、ローラ部25による造形材表面の平滑化は、造形材吐出手段により造形材が造形プレート上に吐出された後で、且つ硬化手段24にて造形材の表面が硬化させる前に、往路又は復路の少なくともいずれか一方で、行われる。
【0055】
この制御手段10は、一回のX方向への往復走査でモデル材MA又はサポート材SAのいずれか一方の造形材を吐出して、ローラ部25による造形材表面の平滑化と余剰分の除去を行い、更に硬化手段24により硬化させてから、次回以降の往復走査で、吐出されなかった他方の造形材を吐出して、造形材表面の平滑化を行い、硬化させる。これら一連の工程を少なくとも一回行うことにより、一枚のスライスの生成を行う。いうまでもなく、一層のスライスデータに対応した上記一連の工程は、例えばユーザの求める最終的なモデルの表面精度や造形時間に応じて、複数回繰り返すことが含まれる。これにより、モデル材MA又はサポート材SAのいずれか一方を未硬化の状態でその表面を平滑化し、そして硬化させた後、他方を吐出することで個別に硬化でき、これらモデル材MAとサポート材SAの界面における混合を効果的に回避できる利点が得られる。
【0056】
なお、この例では先にモデル材MAを吐出し、次いでサポート材SAを吐出させる例を説明したが、逆にサポート材を先に吐出させ、次いでモデル材を吐出させてもよい。また、この例ではいずれか一方の造形材をまず吐出して、これを硬化させた後に、他方の造形材を吐出して硬化させるという、モデル材とサポート材を個別に吐出、硬化させて造形する方法を説明した。ただ、この方法に限られず、モデル材とサポート材を同時に吐出させることも可能である。
(造形材)
【0057】
上述の通り、造形材には、最終的な造形物となるモデル材MAと、このモデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAが用いられる。
(硬化手段24)
【0058】
モデル材MAには、光硬化樹脂、例えば紫外線硬化樹脂が使用できる。この場合、硬化手段24は少なくともモデル材MAの材料が反応して硬化する特定波長を含む光を照射する光照射手段であり、例えば紫外線ランプ等の紫外線照射手段である。紫外光ランプには、ハロゲンランプや水銀灯、LED等が利用できる。またこの例では、サポート材SAも紫外線硬化樹脂としている。同じ波長の紫外線で硬化する紫外線硬化樹脂を使用する場合は、同じ紫外線照射手段を利用でき、光源を共通化できる利点が得られる。
(モデル材MA)
【0059】
またモデル材MAとして、熱可塑性樹脂を使用することもできる。この場合、硬化手段24は、冷却手段となる。なおモデル材とサポート材にいずれも熱可塑性樹脂を使用する場合は、モデル材の融点をサポート材の融点よりも高いものを採用することにより、積層完了後に造形物をサポート材の融点より高く、モデル材の融点より低い温度に加熱、保温することにより、サポート材を溶融除去することができる。さらに、モデル材とサポート材の一方を光硬化樹脂、他方を熱可塑性樹脂とすることもできる。
【0060】
あるいは、硬化材との化学反応により硬化可能な材料をモデル材に用いることもできる。さらにモデル材は、粘度や表面張力等の噴射特性を調整するために、必要に応じて液体改質剤を混合してもよい。また温度調整によって噴射特性を変更することもできる。モデル材の他の例としては、紫外線フォトポリマー、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン等が挙げられる。
(サポート材SA)
【0061】
サポート材SAは、基本的には、上述したモデル材と同様な材料を用いることができる。ただ、サポート材は最終的に容易に除去できる材料としたいとの観点から、モデル材と類似した材料に更に除去可能な材料を添加することが望ましい。このため、具体的には水膨潤ゲル、ワックス、熱可塑性樹脂、水溶性材料、溶解性材料等が使用できる。サポート材SAの除去には、サポート材の性質に応じて水溶、加熱、化学反応、水圧洗浄等の動力洗浄や電磁波の照射により溶解させる、熱膨張差を利用した分離等の方法が適宜利用できる。
(ヘッド部20)
【0062】
図4に、インクジェット方式の三次元造形装置のヘッド部20の一例を示す。この図に示すヘッド部20は、造形材吐出手段として、モデル材MAとサポート材SAの吐出を個別に行う専用の吐出ノズルを設けている。具体的には、モデル材MAを吐出するためのモデル材吐出ノズル21と、サポート材SAを吐出するためのサポート材吐出ノズル22を、平行に離間させて備えている。各吐出ノズルは、2つのノズル列23が設けられている。
【0063】
ヘッド部20では、左からサポート材吐出ノズル22、モデル材吐出ノズル21、ローラ部25、硬化手段24が一体的に設けられている。各吐出ノズルは、圧電素子方式のインクジェットプリントヘッドの要領で、インク状の造形材を吐出する。また造形材は、吐出ノズルから吐出可能な粘度に調整される。
【0064】
図4の例では、ヘッド部20が先にモデル材MAを吐出した後、サポート材SAを吐出している。またヘッド部20は往路(図において左から右)で造形材を吐出し、復路(図において右から左)では造形材の最表面からローラ部25にて余剰樹脂を掻き取り、平滑化を図った後、平滑化された樹脂を硬化手段24で硬化させている。
(ローラ部25)
【0065】
ヘッド部20はさらに、吐出されたモデル材MA及びサポート材SAの表面を未硬化の状態で押圧し、造形材の余剰分を除去することにより、造形材表面を平滑化するためのローラ部25を設けている。このようなローラ部25の動作の様子を、図5の模式図に基づいて説明する。この例では、吐出されたモデル材MAの表面を、未硬化の状態でローラ本体26で均す状態を示している。ローラ部25は、回転体であるローラ本体26と、ローラ本体26の表面に対して突出するように配置されたブレード27と、ブレード27で掻き取られた造形材を溜めるバス28と、バス28に溜まった造形材を排出する吸引パイプ29とを備えている。ローラ本体26は回転自在に支承されており、未硬化の樹脂を回転しながら押圧することにより、樹脂の表面を均しつつ、余剰分を掻き取って回収する。このローラ本体26はローラ本体26で余剰な樹脂を掻き取る際のヘッド部20の進行方向に対して逆回転(図5において時計回り)に回転され、未硬化の造形材を掻き上げる。掻き上げられた造形材は、ローラ本体26に付着してブレード27まで運ばれた後、ブレード27で掻き取られてバス28に案内される。このためブレード27は、ローラ本体26が樹脂表面に当接する際の進行方向に対して、ローラ本体26の後方の位置に配置され、バス28に向かって下り勾配の姿勢で固定される。同様に、バス(槽)28もローラ本体26に対してブレート27と同様な側に配置され、且つブレード27の下方に配置されている。また吸引パイプ29はポンプに接続されており、バス28に溜まった造形材を吸引して排出する。この例では、ローラ本体26の外形をφ20mm程度としている。
【0066】
このローラ部25は、図においてヘッド部20が右から左に進行する際に、掻き取りを行う。換言すると、左から右にヘッド部20が進行しつつ、スライスデータに基づいて、適切な位置にモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から各々モデル材MAとサポート材SAを吐出する際は、ローラ部25は造形材に接触せず、同様に硬化手段24の光源からの照明も行われない。図においてヘッド部20の左から右への主走査方向の例えでは、往路にて少なくとも造形材の吐出が各ノズル21、22から実行された後の右から左方向への復路としての主走査方向において、上述したローラ部25の掻き取り動作が実行されると共に、少なくともモデル材MAを硬化するための光を照射する光源としての硬化手段24も動作することになる。
【0067】
なお硬化手段24の光源は、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22より進行方向に対して前方に配置されるため、光源を点灯していても、吐出され、ローラ部25によって平滑化される前の流動可能な樹脂に照射を行うことはない。その一方で、硬化手段24の光源を積極的に必要なタイミング以外は消灯することはもちろん可能である。また一方で、硬化手段を複数設ける構成としてもよい。例えば、硬化手段として第一硬化手段と第二硬化手段とを設け、吐出後の樹脂に対して第一硬化手段で予備的に硬化を行い、次いで第二硬化手段で樹脂をより一層硬化させる。このように硬化手段を多段構成とすることで、樹脂の硬化能力を十分に発揮させることができる。またこのような場合において、第一硬化手段が予備的な硬化に留まり、第一硬化手段を経ても樹脂に未だ十分な流動性が残っている場合は、第一硬化手段による予備硬化後に、ローラ部で樹脂余剰分の掻き取りを行い、その後に第二硬化手段で硬化を行うように構成してもよい。すなわち、すべての硬化手段がローラ部の次段側に配置されることを必ずしも要しない。
【0068】
図1、図4に示すように、ヘッド部20の進行方向に対してローラ部25は硬化手段24の前方、図において左側に配置されている。この結果、先に未硬化の造形材をローラ部25で掻き取った後、硬化手段24が造形材を硬化させる。このような配置によって、同一のパスで造形材の掻き取りと硬化を行うことができ、効率よく処理できる利点が得られる。
【0069】
なお、X軸方向に沿うサポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出ノズル21、ローラ部25及び硬化手段24の配列の基本的な考え方は、以下の通りである。ヘッド部20の主走査方向の往路方向をベースに考えると、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21は、いずれか一方が他方の前方に位置すればよい。このようなノズルのレイアウトに対して、ローラ部25ならびに硬化手段24は、ローラの作用を往路で行いたい場合は、往路進行方向において、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21の後方にローラ部25、硬化手段24の順で配置し、ローラの作用を復路で行いたい場合は、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21の復路の進行方向において後方にローラ部25、硬化手段24の順で配置すればよい。
【0070】
また、上記実施例においては、ヘッド部20から新たな最上層となるための樹脂を吐出させた後、造形途中の未硬化状態の最上層の樹脂層に対して、ローラ部25による余剰樹脂の掻き取りを行った後、硬化手段24によって少なくとも最上層の樹脂層に対する硬化のためのUV光を照射する方法を採用した。
【0071】
ただ、この構成以外にも、上述の通り硬化手段を多段で構成することもできる。例えばヘッド部20から新たな最上層となるための樹脂を吐出させた後、余剰樹脂層を含む最上層に対して、硬化手段24によって一旦光を照射した後、造形途中の未硬化状態の最上層の樹脂層に対して、ローラ部25による余剰樹脂の掻き取りを行い、その後再度硬化手段24によって少なくとも最上層の樹脂層に対する硬化のためUV光を照射する方法もある。この場合、硬化手段24は、ヘッド部20において、X方向、つまりヘッド部20の主走査方向で、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21を挟む前後方向に一対の硬化手段を設けることにより、上述のような二度の照射を行うことができる。また、この場合、一度目の照射と二度目の照射を合わせて、最終的に所望する樹脂の硬化の程度を達成するようになるため、一度目の照射後の樹脂は硬化状態ではなく、まだその後のローラ部25による掻き取り動作を可能とするために、流動可能な、半硬化状態である。このため本明細書においては、ローラ部25による樹脂の掻き取り前の最上層の状態は、未硬化または流動可能な状態と表現する。
(ローラ部25の幅)
【0072】
ここでローラ部25の幅は、造形材吐出手段に設けられたモデル材吐出ノズル21の幅、及びサポート材吐出ノズル22の幅よりも狭く形成している。なお、各ノズルには、ヘッド部20の主走査方向に直交する副走査方向と略平行となるように形成された複数の樹脂吐出用のオリフィスが所定の間隔を持って配列されている。そして、上述した各ノズルの幅とは、各ノズルにおける副走査方向における両端部に位置するオリフィス間の距離を意味している。つまり、ローラ部25の幅が、各ノズルにおける副走査方向における両端部に位置するオリフィス間の距離より狭いことを意味する。
【0073】
なお、ここでのオリフィス間の距離とは、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22の各々に設けられる各々のオリフィスが、ヘッド部20に対して、X方向、つまりヘッド部20の主走査方向において、一直線状に配置されるようになっていることを前提とした定義である。言い換えると、モデル材吐出ノズル21の一つ一つのオリフィスから吐出される主走査方向における位置と、サポート材吐出ノズル22の一つ一つのオリフィスから吐出される主走査方向の位置が全て重なるように、ヘッド部20に対して、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22が位置決めされ、配置されていることを前提としている。
【0074】
また、図6に示すヘッド部20の底面図のように、複数のモデル材吐出ノズル21、図では二つと複数のサポート材吐出ノズル22を用いると共に、一つのモデル材吐出ノズル21やサポート材吐出ノズル22に対して、他方のモデル材吐出ノズル21やサポート材吐出ノズル22を副走査方向にオフセットし、ヘッド部20に対して、位置決めして用いられる場合がある。
【0075】
元々、このような複数のモデル材吐出ノズル21、図では二つと複数のサポート材吐出ノズル22を用いる場合の基本的な狙いは、一方のモデル材吐出ノズル21やサポート材吐出ノズル22に設けられるオリフィスの副走査方向の位置を、他方のモデル材吐出ノズル21やサポート材吐出ノズル22に設けられるオリフィスの副走査方向の位置に対してオフセットさせることにより、モデル材やサポート材のY方向における解像度を向上させることである。つまり、一方のモデル材吐出ノズル21やサポート材吐出ノズル22に設けられる二つの隣接するオリフィスの間に、他方のモデル材吐出ノズル21やサポート材吐出ノズル22に設けられるオリフィスを副走査方向において配置するような位置決めを行うことである。このような場合、本件発明でのローラ部25の幅を造形材吐出手段に設けられたモデル材吐出ノズル21の幅、及びサポート材吐出ノズル22の幅よりも狭く形成するという意味合いは以下のようになる。
【0076】
複数のモデル材吐出ノズル21を副走査方向にオフセットして配置した場合におけるモデル材吐出ノズル21の幅とは、複数のモデル材吐出ノズル21の中で、副走査方向の一端部において最も外側に配置されるオリフィスの位置から、副走査方向の他端部において最も外側に配置されるオリフィスの位置までの距離より、ローラ部25の幅を狭くするという意味である。これは、同じシステムに採用される複数のサポート材吐出ノズル22においても同様である。また、上述した基本システムと同様に、このシステムにおいても、モデル材吐出ノズル21の一つ一つのオリフィスから吐出される主走査方向における位置と、サポート材吐出ノズル22の一つ一つのオリフィスから吐出される主走査方向の位置が全て重なるように、ヘッド部20に対して、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22が位置決めされ、配置されていることを前提としている。
【0077】
また、上述したローラ部25の幅とは、ローラ部25における軸方向、つまり副走査方向においてローラ部25が持つローラ表面において、余剰樹脂を掻き取る際に用いられる実質的な幅を意味しており、見かけ上の幅がモデル材吐出ノズル21の幅、及びサポート材吐出ノズル22の幅よりも大きくても、実質的にローラ部本来の機能である、掻き取り機能を果たすローラの幅がモデル材吐出ノズル21の幅、及びサポート材吐出ノズル22の幅より狭ければよい。
【0078】
更に、その際ローラの端部に形成される実質的に余剰樹脂を掻き取る機能のないローラ部から実質的に余剰樹脂を掻き取るローラ部へは、段部をつけることによりローラの径を変化させてもよく、またローラの端部に形成される実質的に余剰樹脂を掻き取る機能のないローラ部から実質的に余剰樹脂を掻き取るローラ部に向けて徐々にローラ部の径を連続的に変化させたものであってもよい。
【0079】
図6に、ヘッド部20の底面図の一例を示す。この図に示す例では、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22は、それぞれ吐出ノズルを2列並べてオフセット配置している。各モデル材吐出ノズル21の幅D1とサポート材吐出ノズル22の幅D2は、ほぼ等しくしており、またオフセット量もほぼ等しくしているため、吐出ノズル全体の吐出幅DNもモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22とでほぼ等しくなる。そしてローラ部25の幅DRは、吐出ノズルの吐出幅DNよりも狭くしている。このようにローラ部25の幅を吐出幅DNよりも短くすることにより、図7に示すように同一層(スライス)を複数の領域に分けて造形した場合でも(図7の例では領域R1、R2)、ローラ部25が右側の領域R2を押圧する際に、既に造形した部分(図7において左側の領域R1)に接触せず、精度良く大面積の造形を可能とする。また硬化後の樹脂を誤って回収することがないので、吸引パイプを詰まらせてしまう事態も回避できる。またローラ部の振れ、傾きの調整量は1スライス分の厚み以下で良いことになり、ローラ部の作成、取り付け時の調整の難度を低減させることができる。ここで、ローラ部25の幅はモデル材吐出ノズル及びサポート材吐出ノズルの両端部に位置するオリフィスよりも内側にオリフィス間の間隔の半ピッチ分だけ短く形成される(0.5mm)。例えば、オリフィス間の間隔が1mmである場合は、ローラ部25の幅はモデル材吐出ノズル及びサポート材吐出ノズルの両端部に位置するオリフィスから各0.5mm分ずつ短く形成される。
【0080】
なお、ローラ部25を吐出幅よりも短くすることにより、図7で示す破線で囲んだ部分のように、ローラ部25で樹脂を回収できない部分が存在することになる。ただ、ローラ部25が樹脂の余剰分を回収した直後では、樹脂は液体状であることから、図8(a)に示すような状態には維持されず、自重によって形状を保てない結果、図8(b)に示すようにたれる。この結果、ローラ部25ですべて回収したときとほぼ変わらない造形となり、実用上の問題は殆ど生じない。実際の例においては、造形物の最上表面から掻き取る余剰樹脂の厚みは、例えば数十μm未満の厚み、より好ましくは50μm以下であり、掻き取り残した部分の樹脂の高さもそれと同様の高さとなることからも、実用上の問題がないことが言える。
【0081】
また、造形材吐出手段で任意の厚みを有するスライスデータに基づいた樹脂の吐出を行う際、前回の副走査方向における樹脂吐出位置から副走査方向にオフセットさせて印字させることもできる。このように、各スライス層毎にローラ部25が印加されない部位を変化させて、未回収の樹脂が残る影響を累積させず、均一にして抑制できる。より詳細には、最初のスライス層を所定の副走査位置にて主走査方向に移動を行いながら樹脂の吐出を行い、その副走査位置を維持してローラ部25による余剰樹脂の掻き取りを行った後、次のスライス層を上述した所定位置から副走査方向に一定距離移動した後、その副走査位置において、主走査方向に移動を行いながら樹脂の吐出を行い、その副走査位置を維持してローラ部25による余剰樹脂の掻き取りを行うこととなる。
【0082】
さらに、図6に示すように、モデル材吐出ノズル21を、複数列、オフセット状に配置した状態では、ローラ部25の幅を、モデル材吐出ノズル21の複数列の和集合の幅よりも狭く形成することが好ましい。これにより、モデル材吐出ノズル21をオフセット配置することで解像度を向上させると共に、オフセット配置されたモデル材吐出ノズル21に対してローラ部25の幅を短くして、同一スライスを複数の領域に分けて造形した場合でも、ローラ部25を造形物に接触させず、精度の良い造形が可能となる。
【0083】
さらに、ローラ部が印加されない部位をスライスによって変化させることにより、未回収の樹脂が残る影響を累積させないようにすることもできる。すなわち、スライス毎に領域の境目の位置を変化させることで、境界部分のみが高くなる事態を抑制できる。例えば、図9の例では、前段で吐出した領域同士の境界P1の中間に、次段の境界P2が位置するよう、制御手段10で樹脂の吐出位置をオフセットさせている。これにより、前回のスライスの結果、若干高く造形されたとしても、次のスライスでは未硬化の樹脂が盛り上がった分をローラ部25で回収されるため、高さ方向への影響は累積せず、未回収の樹脂が残る問題を回避、抑制できる。
【0084】
このように、上記実施例によれば造形物の吐出に際して同一スライスを複数の領域に分けて造形した場合でも、ローラ部を硬化後の樹脂に衝突させることを回避して、造形物の品質を向上させることができる。
(ローラ回転速度制御手段12)
【0085】
図1及び図2に示す三次元造形装置は、制御手段10がローラ回転速度制御手段12を備えている。ローラ回転速度制御手段12は、ローラ本体26がモデル材MA又はサポート材SAを個別に回収する際に、各吐出ノズルから吐出されるモデル材MA又はサポート材SAの物理的特性に応じて、ローラ本体26の回転速度を変化させる。特に本実施例では、モデル材MA、サポート材SA各樹脂を同時ではなく、個別に吐出し、個別に回収して、個別に硬化させている。そのため、ローラ本体26の回転速度を、それぞれの樹脂を回収する際に、各樹脂の物理的特性に応じて変化させることができる。
【0086】
ここでの各樹脂の物理的特性の主なものとしては、ローラ本体26によって掻き取られる前の、造形物の最上表面ならび近傍の樹脂の粘性ならびに表面張力が挙げられる。ただ、実際の最適なローラ部の回転速度は、造形に用いる実際のモデル材とサポート材毎に、実際の実験に基づき、造形物の最上表面及び近傍の樹脂の粘性ならびに表面張力による基本的な最適な回転速度の検証に基づく設定に加え、ヘッド部のX方向への移動速度、ヘッド部からの単位時間当たりの樹脂吐出量などの造形条件パラメータを考慮した上で決定され、これに基づいたローラ部の回転速度決定用テーブルが作成され、記憶される。この場合、このローラ部の回転速度決定用テーブルは、設定データ作成装置1または三次元造形装置2のいずれに記憶されてもよい。
【0087】
実際は、オペレータが選択した造形条件により、上述した種々のパラメータが算出され、その結果に基づいて上記テーブルからオペレータが選択した条件に基づき、ローラ部のモデル材除去とサポート材除去の各々に対する最適回転速度を決定することができる。
【0088】
また、このようなテーブルとしてローラ本体26の回転速度をモデル材回収用、サポート材回収用に、別個の値(2値)を持つことにより、それぞれの樹脂に適した回転速度で樹脂を回収し、モデル材MAとサポート材SAの界面の混入を軽減できる。
【0089】
なお図1、図2の例では、ローラ回転速度制御手段12を制御手段10と統合している。このような制御手段10は、MPUなどで構成できる。ただ、ローラ回転速度制御手段と制御手段とを別部材としてもよいことは言うまでもない。
【0090】
以下、この手順を図10(a)〜(d)の模式図及び図11のフローチャートに基づいて説明する。まずステップS1101で、図10(a)に示すように、サポート材SAを吐出する。次にステップS1102で、図10(b)に示すようにサポート材SAに適した回転速度aでローラ本体26を回転させて押圧する。その後、サポート材SAを硬化させる。さらにステップS1103で、図10(c)に示すようにモデル材MAを吐出する。そしてステップS1104で、図10(d)に示すようにモデル材MAに適した回転速度bでローラ部25を回転させながら押圧する。このように、サポート材SA、モデル材MAとして利用する各樹脂の物理的特性に応じて、それぞれの樹脂を回収する際のローラ部25の回転速度を変えることで、造形物のモデル材MAとサポート材SAとの界面の混ざりを軽減することができる。ここで樹脂の物理的特性としては、樹脂の粘度や表面張力が利用できる。ただし、ローラ部25の回転速度を変化させる別の要因としては、上述したように樹脂の物理的特性の他に、ヘッドの移動速度、単位時間当たりの樹脂の吐出量、つまり1スライスの厚みが挙げられる。たとえば、本発明ではモデル材とサポート材の各層の成形を別々の工程で行うことを前提としている。このような工程で造形を行う場合は、単位時間当たりの吐出量を造形速度及び造形精度の観点から適切に定めることができる。たとえば、サポート材は後工程において除去されるものであるため、モデル材ほど造形精度が求められない。したがって、モデル材に対して、サポート材の単位時間当たりの吐出量を増やして造形を行うことにより造形速度を高めることができる。ローラ部25の回転速度は、これら造形速度及び造形精度の観点から、モデル材およびサポート材を掻き取る際に適切に設定されることが好ましい。
(評価試験)
【0091】
ここで、本実施例の有効性を確認するための評価試験として、図12に示す造形物をローラ本体26の回転速度(回転数)を変化させて作成し、サポート材除去後の造形物を比較した。この結果を表1、表2に示す。表1は、モデル材MAの回収を主眼として回転数を469〜1125ppsに変化させた状態を、また表2は、サポート材SAの回収を主眼として回転数を375〜1125ppsに変化させた状態を、それぞれ示している。ここで用いたモデル材MAの粘度は45mPa・s、表面張力は30mN/mであり、またサポート材SAの粘度は80mPa・s、表面張力は34mN/mである。また造形した造形物は、図12に示すように厚さが数百μmの薄壁を離間させて4枚直立させており、周囲にはサポート材SAを配置している。このような薄壁を、ローラ本体26の回転数を変化させて造形した結果を表1、表2に示しており、これらの表において、薄壁が直立できているものは○、薄壁がやや曲がっているものは△、薄壁が大きく変形している、もしくは造形できていないものは×を示している。この結果から、モデル材、サポート材で最適な回転数はそれぞれ異なっており、樹脂の特性に応じて回転速度を変化させることが有効であることが確認された。
【表1】

【表2】

【0092】
このように、モデル材とサポート材という2種類の樹脂を、異なる時期に回収すると共に、回収の際のローラ本体の回転速度をそれぞれの樹脂に合わせて最適化することで、造形物のモデル材とサポート材との界面の混ざりを軽減できる。特にモデル材とサポート材とを個別に硬化させることで、これらモデル材、サポート材の回収時に、ローラ本体の回転数を変化させることが可能となり、各樹脂の物理的特性に応じて樹脂余剰分を回収することで、樹脂界面の混合を抑制して高品質な造形物を得ることが可能となる。
(吐出制御手段13)
【0093】
図1、図2に示す制御手段10は、吐出制御手段13を備えている。吐出制御手段13は、垂直駆動手段による移動後に、造形材吐出手段から吐出される造形材の種類が、モデル材MA又はサポート材SAの一方から他方に変化する際に、該変化後の造形材を所定数のスライス分吐出しないよう造形材吐出手段を制御する。またこの吐出制御手段13は、後述する造形物データから吐出データを作成する際に、造形物の垂直方向において、造形材吐出手段から吐出される造形材の種類が変化する部位に、変化後の造形材を所定数のスライス分除去した中空部ESを生成する中空部生成手段としても機能する。このように、モデル材MAとサポート材SAという異なる造形材同士の界面において、直後に積層されるスライスを所定数分抜くことで、抜かれたスライス分の中空部分を高さ方向に生じさせて、ローラ部が造形材の表面に接触しないようにでき、硬化した造形材をローラ部で回収してしまうことを回避できる。
【0094】
従来、ローラ部25を用いた回収機構によって、図32に示すように樹脂の余剰分を回収しながら造形を行っているところ、ローラ部25など機械部品の精度や、駆動部分の振動等により、本来であれば接触しないはずの硬化済みの樹脂にも、図33に示すようにローラ部25が接触することがある。ローラ部25が硬化済みの樹脂に接触しても、同種の硬化済みの樹脂と一体化して厚くなっていれば、剥離は生じない。しかしながら、異なる樹脂同士の接合界面のように、樹脂が薄い場合には、接触した部分がローラ部25に巻き取られて廃液経路を詰まらせたり、層ごと剥離されたり、表面に皺が生じる等の問題があった。このような剥離を防止するには、サポート材とモデル材の接合界面における接合力を強くすることが考えられるが、この構成では、造形後に最終造形物からサポート材を除去する作業が困難になってしまう。逆に、異なる樹脂間で接合を弱くすれば、ローラ部25に接触して剥離され易くなる。このように、ローラ部が接触して容易に剥離される問題と、造形後のサポート材を除去する作業性とは、互いに相反しており、両立させることは困難であった。
【0095】
これに対して本実施例では、樹脂同士の接合を弱くしてサポート材の除去作業の作業性を高めつつも、異なる樹脂同士の接合部付近、すなわち同種類の層が薄い場合は、ローラ部25をかけないような構成とすることで、上記の相反する問題を解決している。具体的には、樹脂層の薄い間はローラ部が接触しないように、樹脂に高低差を設けている。このため、図1、図2のブロック図に示す吐出制御手段13が、造形物データに誤回収防止処理を行って吐出データを生成している。この方法によれば、モデル材MAを吐出しない層が生じるものの、最終的な造形物の精度には影響を与えず、品質は維持される(詳細は後述)。なお造形物は、積層時の高さ方向においてモデル材MA又はサポート材SAが一方の造形材から他方の造形材に変化する異種界面に対応させて、この一方の造形材又は他方の造形材のいずれかを、造形材吐出手段から吐出しない又は吐出量を減少させた中空部ESを、該当するスライス中に設けている。制御手段10は、造形物のスライス中に中空部ESを含むことを検知し、この中空部ESに対応する位置に造形材吐出手段から造形材を吐出しない、又は吐出量を減少するように制御する。また制御手段10は、造形物のスライス中に中空部ESが含まれ、この中空部ESに対応する位置に造形材吐出手段から造形材を吐出しない、又は吐出量を減少するように制御して該スライスの造形を終えた後、垂直駆動手段によりヘッド部20と造形プレート40との高さ方向の相対位置を移動させ、次層のスライスの造形時において、中空部ESに対応する位置に吐出された該他方の造形材の最上面と、ローラ部25とを離間させる。さらに次層以降のスライスの造形時において、中空部ESに対応する位置に吐出された他方の造形材の最上面と、ローラ部25とを接触させて、この位置に吐出された該他方の造形材の余剰分がローラ部25により掻き取られるように、制御手段10は造形材吐出手段及び垂直駆動手段を制御する。
(中空部ESの形成)
【0096】
ここで図13(a)に示すような造形物を造形することを考える。この造形物から、上述した複数層分のスライスを抜いて中空部ESを仮想的に形成した状態を、図13(b)に示す。この例では、サポート材SAからモデル材MAに切り替わる界面でモデル材2層分を抜き取って、中空部ESを形成している。中空部ESが形成されると、以降に積層される層は、中空部ESの上から樹脂が埋められていくこととなる。以下、中空部ESを設けた図13(b)の造形物を造形する手順を、図14〜図17の模式断面図に基づいて説明する。
(実施例1:MS同時造形の場合)
【0097】
まず実施例1として、モデル材MAとサポート材SAを、同時に造形する同時造形の例について説明する。同時造形の場合は、ヘッド部の一回の走査で、モデル材MAとサポート材SAとが吐出される。ここでは、図14(a)に示すような造形物データに対して、データ処理を行い、図14(b)に示す順序で各層(スライスS1〜6)を造形していく。この例では、各層はヘッド部を一往復させて一スライス分が造形されるものと仮定している。
【0098】
従来の同時造形では、図14(a)に示すような順序で、各スライス毎にモデル材MA、サポート材SAが順次積層される。具体的に説明すると、スライスS1にて、ブロックB1のサポート材SAを吐出及び硬化させて、サポート材層(ブロックB1)を造形した後、スライスS2にてサポート材層(ブロックB2)をサポート材層(ブロックB1)の上面に造形する。続いて、スライスS3にてサポート材層B2の上面にモデル材層MA(ブロックB3)とサポート材層SA(ブロックB3’)とを、それぞれ吐出して硬化させる。さらに続いて、モデル材層MA(ブロックB3)の上面にモデル材層(ブロックB4)を、またブロックB3’のサポート材層SAの上面にブロックB4’のサポート材層SAを、それぞれ吐出して硬化させる。以後同様の動作を繰り返し、モデル材層をブロックB6まで、サポート材層をブロックB6’まで、それぞれ同じスライスで造形する。この方法では、ブロックB3のモデル材MAを吐出後に、そのモデル材MAの余剰分の樹脂を回収する際、サポート材SAからモデル材MAに切り替わった直後であるためブロックB3のモデル材層が未だ薄く、ブロックB3のモデル材全体がローラ本体によって剥ぎ取られたり皺が生じる可能性がある。
【0099】
そこで、図13(b)に示すように、サポート材SAからモデル材MAに切り替わる界面において、モデル材MAを2層分抜くように造形している。図14(b)の例では、スライス1、2を図14(a)と同様に造形した後、スライスS3、S4において、モデル材MAを吐出せず、サポート材SAのみを吐出、造形する(ブロックB3、B4)。この状態では、図14に示すようサポート材SAのみが造形される。
【0100】
このようにしてモデル材MAの造形を2スライス分おいた後、スライスS5の造形の段になって初めてモデル材MAが吐出される(ブロックB5)。また同じスライス5においてサポート材SA(ブロックB5’)も吐出される。ここでローラ部により余剰樹脂分を回収する際、スライスS5の造形時のローラ本体の高さは、図15においてブロックB5’の上面の位置となる。この位置は、ブロックB5の上面よりも高いため、この高さにてローラ本体26が回転しても、ブロックB5の表面とは接触しない。すなわち、ブロックB5’の高さにあるローラ本体26はブロックB5の位置にあるモデル材MAを回収しない。この結果、余剰分の樹脂が回収されないブロックB5は、他のブロックよりも若干厚く造形される。その後、ヘッド部が垂直駆動手段でスライスS6の高さに移動されて、モデル材MA(ブロックB6)及びサポート材SA(ブロックB6’)が吐出される。このときも、ローラ本体26の高さは、図16において破線で示すようにブロックB6’の上面の位置となるため、ローラ本体26はモデル材MAの表面に届かず、モデル材MAは回収されない。
【0101】
以下、同様にしてモデル材MAとサポート材SAを順次造形する。そして図17に示すように、スライスS8においてモデル材MA(ブロックB8)及びサポート材SA(ブロックB8’)を吐出した状態では、ローラ本体26の高さが、図17においてブロックB8’の上面の位置となるため、ローラ本体26にモデル材MA(ブロックB8)が接触して、余剰樹脂分が回収される。このように、吐出されるモデル材MAの樹脂が余剰分を含むため、その厚さは積層されるサポート材SAのスライスの厚さよりも厚くなり、スライスが積層されるにしたがって徐々にモデル材MAとサポート材SAの差が少なくなっていく。そしてモデル材MAが十分厚くなった時点で、ローラ本体26がモデル材MAに接触して、余剰樹脂分の回収が始まる。図17の例では、サポート材SAをスライスS3〜S8の6スライス分積層することで、モデル材MAを2層分抜き取った高低差が解消される。この状態では、既にモデル材MAは4層分(ブロックB5〜B8)が積層されており、十分な厚さを得ているため、ローラ本体26に接触しても、上層部分のみが剥ぎ取られることがない。すなわち、モデル材MA同士の界面は、同種の樹脂であるため十分な接合強度が得られており、またモデル材MAとサポート材SAとの界面では、既に4層分のモデル材MAが積層され相応の重量を有しているため、ローラ本体26でモデル材MA4層分を纏めて剥ぎ取ることができず、異なる樹脂間の界面における樹脂の剥離が効果的に阻止される。このように、モデル材MAを吐出する開始時期を遅らせることで、中空部ESを形成して樹脂の上面とローラ本体との間に高低差を設け、樹脂が薄い状態でローラ本体に接触することで生じる剥離や誤回収を効果的に回避できる。
【0102】
このようにモデル材MAとサポート材SAとの同時造形に際して、異種の樹脂同士の接触界面においていずれかの樹脂を数回分除去することで、ローラ部による誤回収や剥離を回避できる。また同時造形によれば、モデル材MAとサポート材SAを同じ走査で同時に造形できるため、造形時間の短縮化が図られる。
(実施例2:MS別造形)
【0103】
以上は、モデル材とサポート材とを同時に造形する同時造形の例について説明したが、本発明はこれに限定されるものでなく、モデル材とサポート材とをそれぞれ個別に造形する個別造形にも適用できる。以下、実施例2として個別造形を採用し、該個別造形における造形材の積層順を、図18〜図21に基づいて説明する。ここでは、モデル材MAとサポート材SAを、個別造形で造形するため、図21(a)に示すような造形物データに対して、データ処理を行い、図21(b)に示す順序で各層(スライスS1〜6)を造形していく。またこの例では、各層はヘッド部を一往復させて一スライス分が造形されるものと仮定している。
【0104】
通常の個別造形では、図21(a)に示すような順序で、各スライス毎にモデル材MA、サポート材SAが順次積層される。具体的に説明すると、スライスS1にて、サポート材SAを吐出及び硬化させて、サポート材層(ブロックB1)を造形した後、スライスS2にて新たなサポート材層(ブロックB2)をブロックB1の上面に造形する。続いてスライスS3において、モデル材MAのみをサポート材層のブロックB2の上面に吐出して硬化させ(ブロックB3)、続いてサポート材SAのみをサポート材層B2の上面に吐出して硬化させる(ブロックB4)。同様の動作を繰り返し、モデル材層をブロックB9まで、サポート材層をブロックB10まで、それぞれ造形する。この方法では、上述した同時造形と同様、ブロックB3のモデル材MAを吐出後に、そのモデル材MAの余剰分の樹脂を回収する際、サポート材SAからモデル材MAに切り替わった直後であるためブロックB3のモデル材層が未だ薄く、ブロックB3全体がローラ本体によって剥ぎ取られたり皺が生じる可能性がある。
【0105】
そこで、図21(b)に示すように、サポート材SAからモデル材MAに切り替わる界面において、モデル材MAを2層分抜くように造形している。図21(b)の例では、スライス1、2を図21(a)と同様に造形した後、スライス3、4において、モデル材MAを吐出せず、サポート材SAのみを吐出、造形する(ブロックB3、B4)。この状態では、図18に示すようサポート材SAのみが造形される。
【0106】
このようにしてモデル材MAの造形を2スライス分おいた後、スライスS5の造形の段になって初めてモデル材MAが吐出され硬化される(ブロックB5)。ここでローラ部により余剰樹脂分を回収する際、スライスS5の造形時のローラ本体の高さは、図21(b)においてブロックB6の上面の位置となる。この位置は、ブロックB5の上面よりも高いため、この高さにてローラ本体が回転しても、ブロックB5の表面とは接触しない。すなわち、ローラ本体はブロックB5の位置にあるモデル材MAを回収しない。この結果、余剰分の樹脂が回収されないブロックB5は、他のブロックよりも若干厚く造形される。続いて同じ高さ(スライスS5)でサポート材SA(ブロックB6)が造形される。その後、ヘッド部が垂直駆動手段でスライスS6の高さに移動されて、モデル材MA(ブロックB7)が吐出される。このときも、ローラ本体の高さは、図19において破線で示すようにブロックB8の上面の位置となるため、ローラ本体はモデル材MAの表面に届かず、モデル材MAは回収されない。さらに同じ高さ(スライスS6)でサポート材SA(ブロックB8)が造形される。
【0107】
以下、同様にしてモデル材MAとサポート材SAを順次造形する。そして図20に示すように、スライスS8においてモデル材MA(ブロックB11)を吐出した状態では、ローラ本体の高さが、図20においてブロックB12の上面の位置となるため、ローラ本体にモデル材MAが接触して、余剰樹脂分が回収される。このように、吐出されるモデル材MAの樹脂が余剰分を含むため、その厚さは積層されるスライスの厚さよりも厚くなり、スライスが積層されるにしたがって徐々にモデル材MAとサポート材SAの差が少なくなっていく。そしてモデル材MAが十分厚くなった時点で、ローラ本体がモデル材MAに接触して、余剰樹脂分の回収が始まる。図20の例では、サポート材SAをスライスS3〜S8の6スライス分積層することで、モデル材MAを2層分抜き取った高低差が解消される。この状態では、既にモデル材MAは4層分が積層されており、十分な厚さを得ているため、ローラ本体に接触しても、上層部分のみが剥ぎ取られることがない。すなわち、モデル材MA同士の界面は、同種の樹脂であるため十分な接合強度が得られており、またモデル材MAとサポート材SAとの界面では、既に4層分のモデル材MAが積層され相応の重量を有しているため、ローラ本体でモデル材MA4層分をまとめて剥ぎ取ることができず、異なる樹脂間の界面における樹脂の剥離が効果的に阻止される。このように、モデル材MAを吐出する開始時期を遅らせることで、中空部ESを形成して樹脂の上面とローラ本体との間に高低差を設け、樹脂が薄い状態でローラ本体に接触することで生じる剥離や誤回収を効果的に回避できる。
【0108】
このようにモデル材MAとサポート材SAとの個別造形においても、異種の樹脂同士の接触界面においていずれかの樹脂を数回分除去することで、ローラ部による誤回収や剥離を回避できる。また個別造形によれば、モデル材MAとサポート材SAとが同一スライスにおいて隣接する垂直方向の界面において、未硬化又は流動性のある樹脂同士が混ざり合って表面状態が悪くなる事態を回避できる利点も得られる。
(実施例3:吐出量制限)
【0109】
上述した同時造形、個別造形の実施の形態では、中空部を設けることにより、高さ方向において樹脂の種類が変化する界面に対して、最初に吐出された少なくとも一層の造形材に対して、ローラが接触しないようにする構成とした。ただ、樹脂の吐出量を制御することができる吐出ノズルを用いれば、樹脂の種類が変化した界面に吐出される造形材の量を制御することにより、該界面に吐出された直後に造形された層の造形材にローラが当たらないようにすることも可能である。
【0110】
樹脂の吐出量の制御は、例えば吐出ノズルが圧電素子に印加される電圧により制御される場合は、当該圧電素子に印加される電圧の電圧値、パルス幅、周波数等を変化することにより、単位時間当たりに吐出される樹脂量を調整することができる。この制御は、例えば吐出制御手段13により実行される。
【0111】
ここで、このような吐出制限を行いながら同時造形する方法を実施例3として図22(a)〜図22(d)に示す。ここでは、図22(a)に示すように、スライスS1〜S7の計7層の積層において、スライスS4中におけるモデル材MAの吐出量を制限して中空部ES’を形成している。換言すると、中空部ES’を完全に造形材を吐出しないブロックとするのでなく、造形材の吐出量を少なくし、中空部ES’の容積を上記の中空部ESの例よりも若干小さくしている。
【0112】
まずスライスS1〜S3までの3層については、サポート材SAを順次吐出、硬化させる。そして図22(b)に示すようにスライスS4の吐出において、ブロックB3上に吐出されるモデル材MAの量が、通常のスライスよりも少なくなるように制限する(ブロックB4’)。一方、ブロックB3上に吐出されるサポート材SAについては、通常のスライスと同様とする。この状態でローラ本体26を印加すると、サポート材SAのブロックB4については余剰分の樹脂が回収される一方、モデル材MAについてはローラ本体26がブロックB4’に接触しない結果、ブロックB4’全体が剥離されてしまう事態を回避できる。
【0113】
次にスライスS5の積層において、図22(c)に示すように、ブロックB4’上にモデル材MAが、通常の量だけ吐出され(ブロックB5’)、またブロックB4上には同様にサポート材SAが吐出される(ブロックB5)。その後ローラ本体26がブロックB5に印加されるが、この状態でも未硬化のブロックB5’にローラ本体26は接触せず、ブロックB4’、B5’を合わせたモデル材層全体が巻き取られる事態を回避できる。ただ、ブロックB5’のモデル材MAの余剰分が掻き取られない結果、ブロックB5’は通常のスライスよりも厚く積層されて、サポート材SAのブロックB5との高低差は小さくなる。
【0114】
さらにスライスS6の積層においては、図22(d)に示すように、ブロックB5’上にはモデル材MAが、ブロックB5上にはサポート材SAが、それぞれ通常の量吐出されて、ブロックB6’、B6が積層される。ここでは、ローラ本体26の掻き取り位置がブロックB6の上面位置となり、サポート材SAでは余剰樹脂が掻き取られる。一方モデル材MAを吐出したブロックB6’の上面は、ブロックB6の上面位置とほぼ一致する。この例では、ブロックB6’の余剰分を含めた状態での高さをブロックB6の上面と一致させているため、ローラ本体26による掻き取りは生じないが、仮にローラ本体26と接触しても、モデル材層はブロックB4’、B5’、B6’が積層されて相当厚くなっているため、このモデル材層全体がローラ本体26によって剥離されることを防止できる。
【0115】
このように、中空部ES’は、一スライスにおいて吐出を完全に停止したものに限定されず、吐出量を制限することでも形成できる。換言すると、吐出量を少なくして形成される中空部ES’であっても、未硬化又は流動性のある状態の樹脂をローラ本体と接触させないように離間させることができれば足りる。したがって本発明においては、このような吐出量を少なくしたブロックも中空部に包含する。
【0116】
なお、上述した図22(a)〜図22(d)の例では同時造形を行う例を説明したが、個別造形でも同様の効果が得られることはいうまでもない。
(実施例4:サポート材側の除去)
【0117】
以上の例では、いずれもモデル材MAを除去する例を説明したが、これに限らず、サポート材側を除去することでも同様の効果が得られることは言うまでも無い。すなわち、モデル材を吐出しない制御に限らず、モデル材の吐出を維持して、サポート材側の吐出を制限することでも、同様の効果を得ることができる。例えば図23(a)に示すような造形物を造形する場合、積層方向においてサポート材SAとモデル材MAが切り替わる界面において、図23(b)に示すように、下側のサポート材SAを一層分吐出しないように制御する。この場合は、モデル材MAのスライス数が変更されない一方で、サポート材SA側を抜き取ることで、その上面に積層されるモデル材が本来の位置よりも硬化する結果、少なくとも高さ方向に一層分の造形精度の低下を生じる。ただ、実際の一スライス分の厚みは極めて薄いため、このような造形精度の低下は無視できる程に小さく、また仮に中空部を複数層設けたとしても造形精度の低下は殆ど生じない。
【0118】
以下、サポート材側に中空部を設ける例を実施例4として図24(a)〜(e)に示す。ここでは図24(a)に示すように、サポート材からモデル材に切り替わる界面に接した造形材の内、スライスS3に位置するサポート材を一層分除去して中空部ESを形成している。またこの例では、サポート材とモデル材とを同時造形で吐出、硬化させている。
【0119】
まず図24(b)に示すように、スライスS1及びS2において、サポート材を積層させる(ブロックB1、B2)。次にスライスS3において、サポート材SAを吐出するものの(ブロックB3)、上面に積層されるモデル材MAと接触する位置においては、本来吐出されるべきサポート材を吐出せず、中空部ESを設ける。この状態で、ローラ本体26を印加し、ブロックB3の上面(図において破線で示す位置)のみで樹脂の余剰分が掻き取られる。
【0120】
次にスライスS4においては、図24(c)に示すようにモデル材MAとサポート材SAが吐出され、ブロックB4”及びB4がそれぞれ積層される。ここでローラ本体26が印加されると、図において破線で示すブロックB4の上面位置において樹脂の余剰分が掻き取られる。この状態では、モデル材MAを吐出したブロックB4”の上面は、ローラ本体26の掻き取り位置から低い位置にあるため、モデル材MAはローラ本体26と接触せず、掻き取られない。この結果、ブロックB4”は厚く積層され、モデル材MAとサポート材SAの最上面の高低差が縮まる。
【0121】
さらに続いてスライスS5において、図24(d)に示すように同様にモデル材MAとサポート材SAが吐出されると、ブロックB5”及びB5がそれぞれ積層される。ここでもローラ本体26が印加されると、図において破線で示すブロックB5の上面位置において樹脂の余剰分が掻き取られるものの、同じくモデル材MAを吐出したブロックB5”の上面は未だローラ本体26の掻き取り位置から低い位置にあるため、モデル材MAはローラ本体26に掻き取られない。この結果、ブロックB5”は厚く積層された状態のままとなり、高低差はさらに縮まる。
【0122】
そしてスライスS6において、図24(e)に示すようにモデル材MAとサポート材SAが吐出されると、ブロックB6”及びB6がそれぞれ積層される。ここでは、ローラ本体26の掻き取り位置がブロックB6の上面位置となり、サポート材SAでは余剰樹脂が掻き取られる。一方モデル材MAを吐出したブロックB6”の上面は、ブロックB6の上面位置とほぼ一致する。この例では、ブロックB6”の余剰分を含めた状態での高さをブロックB6の上面と一致させているため、ローラ本体26による掻き取りは生じないが、仮にローラ本体26と接触しても、モデル材MA同士が3層分、厚く積層されているため、その全体がローラ本体26によって剥離される事態を回避できる。
【0123】
この例では、余剰分を含めたモデル材MAの3層分を、余剰分除去後のサポート材SA4層分とほぼ一致させている。これによって、サポート材SAを一層分抜き取った中空部ESを形成しても、スライス4層分で高低差を解消できる。中空部ESの厚さをスライス何層分とするかは、使用するローラ本体で何層分の造形材が剥離されるか、造形材の種類や粘度、モデル材とサポート材の界面における結合力などに応じて設定される。
【0124】
なお、上述した図24(a)〜図24(e)の例では同時造形を行う例を説明したが、個別造形でも同様の効果が得られることはいうまでもない。また以上の例では、中空部を設ける例を説明したが、樹脂の吐出量の制限も同様に適用可能である。さらに、以上の例ではモデル材又はサポート材のいずれか一方に中空部を設ける構成を説明したが、モデル材とサポート材の両方において中空部を設けてもよい。また、中空部の形成に吐出量の制限を組み合わせてもよく、例えばモデル材とサポート材の両方において吐出量を制限する他、一方では中空部を設け、他方では吐出量を制限することも可能である。
(実施例5:中空部ESを異種界面の下方に離間させる例)
【0125】
以上の例では、モデル材とサポート材の界面、すなわち一方の樹脂から他方の樹脂に変化する異種界面において、いずれかの造形材を除去した中空部を設ける構成を説明した。ただ、中空部は必ずしもこのような異種界面に面した位置に設ける必要は無く、異種界面から下方に数層分離間させて設けることもできる。この場合、中空部ESをスライス何層分、異種界面から離間させるか、及び中空部ESを何層設けるかによって、異種界面に対して、最初に他方の樹脂が吐出された層にローラ本体が接触するか否かが左右される。したがって、少なくとも、異種界面に最初に吐出された最初のスライス層にローラ本体が接触しないように、好ましくは、上述した実施例のように異種界面の後に吐出された複数のスライス層にローラ本体が接触しないように、十分な中空部ESを設ける必要がある。以下、このような中空部を異種界面から離間させた例を実施例5として、図25(a)〜(e)に示す。ここでは図25(a)に示すように、サポート材からモデル材に切り替わる異種界面から一層分下方に離間させた位置に、サポート材を一層分除去した中空部ESを形成している。またこの例では、サポート材とモデル材とを同時造形で吐出、硬化させている。
【0126】
まず図25(b)に示すように、スライスS1において、サポート材を積層させる(ブロックB1)。次にスライスS2において、サポート材SAを吐出するものの(ブロックB2)、異種界面から1スライス分下方に離れた位置においては、サポート材を吐出せず、中空部ESとする。この状態で、ローラ本体26を印加して、ブロックB2の上面(図において破線で示す位置)で樹脂の余剰分が掻き取られる。
【0127】
次にスライスS3において、図25(c)に示すようにサポート材SAが吐出され、ブロックB3’及びB3がそれぞれ積層される。ここでローラ本体26が印加されると、図において破線で示すブロックB3の上面位置においてサポート材SAの余剰分が掻き取られる。一方でブロックB3’の上面においては、ローラ本体26の掻き取り位置から低い位置にあるため、ブロックB3’のサポート材SAはローラ本体26と接触せず、掻き取られない。この結果、ブロックB3’は厚く積層され、ブロックB3’とB3との最上面の高低差が縮まる。
【0128】
さらにスライスS4において、図25(d)に示すようにモデル材MAとサポート材SAが吐出されると、ブロックB4’及びB4がそれぞれ積層される。ここでもローラ本体26が印加されると、図において破線で示すブロックB4の上面位置において樹脂の余剰分が掻き取られるものの、モデル材MAを吐出したブロックB4’の上面は未だローラ本体26の掻き取り位置から低い位置にあるため、モデル材MAはローラ本体26に掻き取られない。この結果、ブロックB4’は厚く積層された状態のままとなり、高低差はさらに縮まる。
【0129】
そしてスライスS5において、図25(e)に示すようにモデル材MAとサポート材SAが吐出されると、ブロックB5’及びB5がそれぞれ積層される。ここでは、ローラ本体26の掻き取り位置がブロックB5の上面位置となり、サポート材SAでは余剰樹脂が掻き取られる。その一方でモデル材MAを吐出したブロックB5’の上面は、ブロックB5の上面位置とほぼ一致する。この例では、ブロックB5’の余剰分を含めた状態での高さをブロックB5の上面と一致させているため、ローラ本体26による掻き取りは生じないが、仮にローラ本体26と接触しても、モデル材MA同士がブロックB4’、B5’の2層分で、しかも厚く積層されているため、その全体がローラ本体26によって剥離される事態を回避できる。
【0130】
このようにして、中空部ESを異種界面から離間させても、誤回収による品質低下や樹脂回収のトラブルを回避するという同様の効果を得ることができる。その一方で、この実施例5によれば、一方の樹脂から他方の樹脂に変化した異種界面においてもローラ本体26を接触させない状態とできる。これにより、造形材の表面仕上げを綺麗にできる利点が得られる。すなわち、ローラ本体の表面には凹凸が設けられているため、ローラ本体を押し当てて余分な樹脂を掻き取ると、ローラ表面の凹凸に起因する波模様や、ローラ表面の筋が造形材に転写されてしまう問題があった。これに対して実施例5では、樹脂の切り替わる異種界面において、ローラ本体を接触させないように、異種界面の下方において中空部ESを設けることで、異種界面においては樹脂表面にローラ本体26が接触しないようにしている。樹脂表面は、ローラ本体26を接触させる前は平滑であることから、切り替わり界面ではローラ本体26と離間させることで、余剰樹脂の回収を行わせずに造形の精度を維持し、造形物の表面状態を改善する表面状態改善機能を実現する。
【0131】
なお、この例では異種界面の下方にサポート材が位置するため、サポート材側に中空部を設ける例を説明した。ただ、異種界面の下方にモデル材でなくサポート材が位置する例、すなわち図25のようにサポート材からモデル材に切り替わる異種界面でなく、逆にモデル材からサポート材に切り替わる界面においては、モデル材側に中空部を設ける構成として、同様の効果が得られることはいうまでもない。さらに、この例では同時造形の例について説明したが、個別造形においても同様の効果が得られることも同様である。
【0132】
以上の実施の形態では、同一のスライス層において、樹脂の積層方向において樹脂の種類が変化する部位と同一の樹脂が継続する部位が混在する例を示した。具体的には、図13の例では、積層方向にサポート材からモデル材に変化する部位とサポート材が継続する部位の両方を含むスライス層を有している。いうまでもないが、造形物の形状によっては、モデル材が継続する部位とモデル材からサポート材に変化する部位を同一のスライス層に含むことも有りうる。換言すると、モデル材とサポート材の一方の樹脂を積層方向に連続的に吐出する部位と、一方の樹脂から他方の樹脂、或いは他方の樹脂から一方の樹脂に変化する部位を同一のスライス層に有することになる(図のスライス層は一部のみを示しており、実際のスライス層は水平方向に拡大され、水平面に広がる各部位において様々なパターンにて積層されている)。このような場合は、同一のスライス層において、一部分のみに中空部ESが形成され、同一の樹脂の積層が継続する部位については、中空部ESは形成されずに、同一の樹脂の積層が継続されることになる。
【0133】
また、同一のスライス層において、樹脂の積層方向において一方の樹脂から他方の樹脂に変化する部位のみを有し、同一の樹脂の積層が継続する部位を有さないケースも考えられる。例えば、一般的に造形開始直後は、造形プレート40から造形物を容易に取り外すことができるように、まずは造形プレート上に少なくとも1スライス層に対応するサポート材の層を形成し、そのサポート材の層の上に、モデル材を含むスライス層を形成していく。このとき、サポート材の層の上にサポート材を吐出する部位が存在しない場合は、サポート材からモデル材に変化する部位のみを含むスライス層を造形することとなる。このような場合は、該当するスライス層は中空部ESのみで構成され、造形材が全く吐出されることなく、造形プレート40と吐出ノズルとの高さ方向の相対距離のみが少なくとも1回変化し、少なくとも最初にモデル材が吐出されたスライス層にはローラ本体が接触しないように制御される。このようなケースは、1つの造形物の上に別の造形物を造形する場合にもありうる。
【0134】
また、モデル材とサポート材との界面は、積層方向において1面に限らず、複数面存在することも考えられる。例えば、複数の造形物を縦方向に並べて造形する場合は、第一の造形物にあたるモデル材の上方に、さらに第二造形物に当たるモデル材を造形する前に、これらを分離しやすくするためにサポート材を介在させることが考えられる。このように、モデル材の上に更にサポート材が形成される場合には、再度モデル材に中空部ESを設けることとなり、積層方向において複数の中空部が存在することもあり得る。
【0135】
なお、図13に示すようにサポート材が2層分抜き取られていても、図17等に示すように余剰樹脂が回収されない層が厚く形成されるため、最終的に得られる造形物の厚さは変化しておらず、最終造形物の精度は維持される。
【0136】
また、サポート材を抜き取る層数は、一スライス分の厚さと、想定されるローラ本体の振動量や製造公差、サポート材とモデル材との接合強度等に応じて設定される。例えば1〜4層、好ましくは1〜3層、より好ましくは2〜3層とする。
(造形物データの変形)
【0137】
このような造形は、指定される造形物のデータを変形させて処理することができる。すなわち、図13(a)、(b)に示すように、下段に積層される造形材と樹脂が切り替わるスライスから、切り替わった造形材の該当部分のブロックを一層分以上抜き取るように、吐出制御手段13等で造形物データを加工して、吐出データを生成する。
【0138】
ここで、吐出制御手段13が吐出データを生成する手順の一例を、図26のフローチャートに示す。まずステップS2601において、造形物データを取得する。造形物データは、例えばSTLファイル等で入力される。次にステップS2602において、造形物を造形するために必要なサポート材の領域を演算する。さらにステップS2603において、必要な補正処理等を行う。そしてステップS2604において、誤回収防止のための処理を行う。ここで吐出制御手段13は、上述の通りスライス間において造形材がサポート材SA、モデル材MAのいずれかに切り替わる界面を抽出し、これらの界面において上面に積層される造形材を、所定の層数だけ排除する。最後にステップS2605において、最終的な吐出データを生成する。このようにして生成された吐出データに従って、制御部はヘッド部の造形物吐出手段を制御する。これによって、樹脂の変わり目において異なる樹脂が1層以上吐出しないように、造形物の吐出が制御される。
(吐出データを生成する詳細手順)
【0139】
ここで、造形物データに中空部ESを設けて吐出データを生成する誤回収防止処理の詳細を、図27〜図29に基づいて説明する。ここでは、図13(a)に示す造形物の造形物データから、図13(b)に示すように、モデル材MAに2層からなる中空部ESを設けた吐出データを生成することを考える。このように2層にわたって吐出を行わない場合は、造形する層と、その1層下、及び2層下の、計3層のモデルデータで論理積を取る。
【0140】
まずスライスS3のデータの作成について着目すると、図27(a)に示すように、スライスS3を含めた3層分(図中の枠内)のデータから、論理積を取って吐出領域を求める。論理積の計算は、モデル材MAを吐出するドットを1、それ以外のドットを0として行う。この結果、演算後のスライスS’3は、図27(b)に示すように、ドット0、すなわちモデル材MAを吐出しないスライスとなる。
【0141】
次にスライスS4のデータは、図28(a)に示すように、スライスS4を含めた3層分(図中の枠内)のデータで論理積を取りことで、演算後のスライスS’4は、図28(b)に示すように、ドット0、すなわちモデル材MAを吐出しないスライスとなる。
【0142】
さらにスライスS5のデータは、図29(a)に示すように、スライスS5を含めた3層分(図中の枠内)のデータで論理積を取りことで、演算後のスライスS’5は、図28(b)に示すように、ドット1、すなわちモデル材MAを吐出するスライスとなる。
【0143】
なお、いずれのスライスSにおいても、サポート材SAについてはデータを変更しない。この結果、生成されたスライスS3〜5の各データが合成されて、図13(b)の吐出データが作成される。このように、サポート材に中空部ESを形成する誤回収防止処理では、スライス毎の吐出データを作成する際に、注目する層から2層下までのデータと論理積を取ることで、吐出領域を演算できる。
【0144】
このように、造形物のデータから積層方向において一方の種類の造形材から他方の種類の造形材に変化する界面を抽出し、該抽出した界面に接するか、所定層離間した位置に少なくともいずれか一方の樹脂を吐出しない、あるいは吐出量を制限した層を所定層設けた吐出データを生成することにより、樹脂種別が変化する界面にローラーが当たらないように造形を制御できる。この吐出データの生成は、設定データ作成装置1上で実行される。すなわち、設定データ作成装置1は造形物データに基づいて、中空部ESを含む吐出データを生成し、三次元造形装置100に送信する。なお、この吐出データの生成を、設定データ作成装置1から受信した造形物データに基づいて、三次元造形装置100で実行する構成とすることも可能である。いずれの場合も、造形物を構成するスライス毎の吐出パターンを記録した吐出データを記憶するための吐出データ記憶手段を備える。吐出データ記憶手段は、一時メモリや不揮発性メモリ等の記憶素子が利用できる。
(三次元造形装置用の設定データ作成装置)
【0145】
次に、このような三次元造形装置に造形物のデータを指示する設定データ作成装置について、図38のブロック図に基づいて説明する。この図に示す三次元造形装置用の設定データ作成装置1は、CADデータ等の三次元データを取得するための入力手段61と、取得された三次元データを、例えばSTL(Stereo Lithography Data)データに変換した三次元データにて規定される造形物を示すオブジェクトを三次元的に表示するための表示手段62と、造形パラメータを設定するためのパラメータ設定手段63と、設定された造形パラメータに従ってオブジェクトの最適な姿勢と配置位置を演算する演算手段64と、演算手段64で演算された最適姿勢及び最適位置をユーザが微調整したり、あるいは所望の位置、姿勢を手動で調整するための調整手段65と、決定された姿勢及び位置に従って三次元造形装置を駆動する設定データを、三次元造形装置が読み込めるデータ形式に変換して、三次元造形装置側に出力するための出力手段66とを備える。
【0146】
また上述の通り、三次元造形装置の一例として、インクジェット方式の三次元造形装置に対して、三次元状の造形物の設定データを送出する設定データ作成装置を説明するが、この設定データ作成装置は、利用する三次元造形装置をインクジェット方式に特定するものでなく、他の方式でもUV硬化型樹脂や熱可塑性樹脂を用いる三次元造形装置であれば有効な手法である。
(吐出制御手順)
【0147】
以上は、造形物データから吐出データを生成する手順を説明した。ただ、造形物のデータそのものは変更することなく、実際に造形を行う造形材吐出手段で造形材を吐出する際に、吐出の可否を判別して部分的に造形材の吐出を禁止するよう制御することで、実質上、部分的なブロックの抜き取りを実現してもよい。この場合は、吐出制御手段13等の制御手段において、造形材吐出手段の吐出動作を制限する。このような、樹脂の切り替わりから所定の層数(n層)分、樹脂を吐出しない吐出制御の手順を、図30のフローチャートに基づいて説明する。ここでは、各座標、すなわち吐出位置で、樹脂を吐出するかどうかを判断する手順を示している。まずステップS3001において、一層下で異なる樹脂を吐出するかどうかを判定し、Yesの場合はステップS3003−2に進み、吐出しないで制御を終了する。ステップS3001においてNoの場合は、ステップS3002に進み、二層下で異なる樹脂を吐出するか否かを判定する。ここでYesの場合はステップS3003−2に進み、吐出しないで制御を終了する。以下同様の手順を繰り返し、ステップS300nにおいてn層下で異なる樹脂を吐出するかどうかを判定し、Yesの場合はステップS3003−2に進み、吐出しないで制御を終了する。またNoの場合はステップS3003−1に進み、樹脂を吐出して制御を終了する。このようにして、吐出データを別途加工することなく、造形材吐出手段で直接吐出制御を行うことでも、造形材である樹脂の切り替わりからn層分の樹脂を吐出しないようにして、樹脂の誤回収を回避できる。
(スライスの所定数)
【0148】
中空部ESは、スライスを所定数分除去することで形成される。ここで除去するスライスの所定数は、ローラ部による硬化済みの樹脂の誤回収や、樹脂が層ごと剥離されることを阻止できる程度に、樹脂が厚く積層されるまでの間は、樹脂がローラ本体に接触しないように、十分な高低差が得られるように設定される。すなわち樹脂の種類が切り替わった界面では、樹脂が新たに造形、積層されていくため、初期の段階では層厚が薄く、剥離などが生じ易い。そこで、所定数のスライス分を抜き取ることで、新たに造形される樹脂の上面とローラ本体との間に高低差すなわち隙間を設けるように、中空部ESが設定される。例えば、余剰分を回収しない状態で、すなわち通常よりも厚く積層された樹脂が、少なくとも2層分以上積層されるまでは、ローラ本体と接触しないように、抜き取るスライス数が設定されている。図20の例では、モデル材MAが4層積層されて初めて、ローラ本体と接触、回収されている。このモデル材4層の膜厚は、通常のサポート材の6層分に該当する。すなわち、モデル材MAを2層分を抜いた分の高低差が、サポート材SAの6層分の造形によって回復されたこととなる。高低差を大きく取ると、すなわちスライスの所定数を厚くすると、よりモデル材が厚くなることから、誤回収等の問題を回避できる一方で、高低差の回復までに層数を要するために、ある程度の厚さが必須となる。すなわち、薄い造形が困難となる。そこで、求められる造形物の精度などにも応じて、スライスの所定数が決定される。
【0149】
以上のように、本発明においては、与えられた造形物データを加工して中空部を形成するデータ処理に限られず、未加工の造形物データを利用しつつ、実際の造形の際に中空部が存在するのと同様の制御を行う方法も利用できる。すなわち、データ設定装置側で生成される、中空部を含まない造形物データに基づいて、三次元造形装置側で実際に造形する際、三次元造形装置が、所定の条件に従って、仮想的に中空部を形成したのと同様な造形材の吐出制限を行う。例えば、樹脂の種別が切り替わる異種界面において、いずれかの樹脂の吐出を止める、または吐出量を制限する。この場合は、造形物データの加工は不要であり、既存の造形物データに従って造形を行いつつも、実際の造形時においては仮想的に中空部を形成したのと同様のパターンで樹脂を吐出することによって、樹脂種別が切り替わる際に薄い樹脂層がローラ部によって誤回収される事態を回避できる。このように、本発明は中空部の形成を必ずしも造形物データ中に含める必要は無く、最終的に三次元造形装置で造形する際に、造形材の種別の切り替わる異種界面又はその近傍で樹脂の吐出を止める又は吐出量を少なくするように制御できれば足りる。よって本発明は、データ上で中空部を生成するソフトウェア的な制御に加え、ハードウェア的に樹脂の吐出量を制限する制御をも包含する。このように、造形物データから吐出データを作成する際のデータ処理によって中空部ESを形成する方法、又は造形物データを変更することなく、造形材吐出手段等のハードウェアの動作を直接操作する方法のいずれにおいても、所定数のスライスを除去した造形が可能となり、最終造形物として残るモデル材を維持しつつ、誤回収による品質低下や樹脂回収のトラブルを回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明の三次元造形装置、三次元造形方法、三次元造形装置用の設定データ作成装置、三次元造形装置用の設定データ作成プログラム並びにコンピュータで読み取り可能な記録媒体は、インクジェット方式で紫外線硬化樹脂を積層した三次元造形に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0151】
100…三次元造形システム
1…設定データ作成装置
2、2’…三次元造形装置
10…制御手段
12…ローラ回転速度制御手段
13…吐出制御手段
20…ヘッド部;20A…吐出ヘッドユニット;20B…回収硬化ヘッドユニット
21…モデル材吐出ノズル
22…サポート材吐出ノズル
23…ノズル列
24…硬化手段
25…ローラ部
26…ローラ本体
27…ブレード
28…バス
29…吸引パイプ
30…ヘッド移動手段
31…XY方向駆動部
32、32’…Z方向駆動部
40…造形プレート
43…X方向移動レール
44…Y方向移動レール
45…レールガイド
61…入力手段
62…表示手段
63…パラメータ設定手段
64…演算手段
65…調整手段
66…出力手段
MA…モデル材
SA…サポート材
SB…オーバーハング支持部
ES、ES’…中空部
D1…モデル材吐出ノズルの幅
D2…サポート材吐出ノズルの幅
DR…ローラ部の幅
DN…吐出ノズル全体の吐出幅
P1…前段の境界;P2…次段の境界
PC…コンピュータ
R1、R2…領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形プレート(40)上に、造形材として、
最終的な造形物となるモデル材(MA)と、
前記モデル材(MA)が張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材(SA)と、
を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを層状に生成し、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形装置であって、
造形物を載置するための前記造形プレート(40)と、
前記モデル材(MA)を吐出するためのモデル材吐出ノズル(21)、及び前記サポート材(SA)を吐出するためのサポート材吐出ノズル(22)を、それぞれ一方向に複数個配列させた造形材吐出手段と、
回転自在に支承され、前記モデル材(MA)又はサポート材(SA)が流動可能な状態でこれを上面から回転しながら押圧して、該モデル材(MA)又はサポート材(SA)の余剰分を掻き取るためのローラ部(25)と、
前記造形材吐出手段及びローラ部(25)を備えるヘッド部(20)と、
前記ヘッド部(20)を水平方向に往復走査させるための水平駆動手段と、
前記ヘッド部(20)と造形プレート(40)との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段と、
前記水平駆動手段を駆動させて、一スライス分の造形材を前記造形材吐出手段で吐出させ硬化させた上で、前記垂直駆動手段を制御させて吐出位置を該硬化後のスライス上に移動させ、さらに次層のスライス分の造形材を吐出、硬化させてスライスを順次積層するよう制御する制御手段(10)と、
を備え、
前記制御手段(10)は、造形物が積層時の高さ方向において前記モデル材(MA)又はサポート材(SA)が一方の造形材から他方の造形材に変化する異種界面を含む場合に、該異種界面に対応するスライス又はその近傍のスライスに、該一方の造形材又は他方の造形材のいずれかの造形材を吐出しない又は吐出量を減少させた中空部が形成されるように、前記造形材吐出手段を制御するよう構成してなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載される三次元造形装置であって、
前記制御手段(10)は、前記造形物のスライス中に前記中空部(ES)が含まれ、該中空部(ES)に対応する位置に前記造形材吐出手段から造形材を吐出しない、又は吐出量を減少するように制御して該スライスの造形を終えた後、
次層のスライスの造形時において、前記中空部(ES)に対応する位置に吐出された該他方の造形材の最上面と前記ローラ部(25)とが接触しないように、前記垂直駆動手段により前記ヘッド部(20)と造形プレート(40)との高さ方向の相対位置を移動させ、
さらに次層以降のスライスの造形時において、前記中空部(ES)に対応する位置に吐出された該他方の造形材の最上面と、前記ローラ部(25)とを接触させて、該位置に吐出された該他方の造形材の余剰分が前記ローラ部(25)により掻き取られるように、前記造形材吐出手段及び前記垂直駆動手段を制御してなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載される三次元造形装置であって、
前記造形物中の中空部(ES)が、前記モデル材(MA)又はサポート材(SA)の内、他方の造形材に設けられる場合、異種界面に接した直上のスライスに設けられてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載される三次元造形装置であって、
前記造形物中の中空部(ES)が、前記モデル材(MA)又はサポート材(SA)の内、一方の造形材に設けられる場合、異種界面に接した直下、又は該位置からさらに所定のスライス分だけ下方に離間したスライスに設けられてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項5】
造形プレート(40)上に、造形材として、
最終的な造形物となるモデル材(MA)と、
前記モデル材(MA)が張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材(SA)と、
を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを層状に生成し、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形装置であって、
造形物を載置するための前記造形プレート(40)と、
前記モデル材(MA)を吐出するためのモデル材吐出ノズル(21)、及び前記サポート材(SA)を吐出するためのサポート材吐出ノズル(22)を、それぞれ一方向に複数個配列させた造形材吐出手段と、
回転自在に支承され、前記モデル材(MA)又はサポート材(SA)が流動可能な状態でこれを上面から回転しながら押圧して、該モデル材(MA)又はサポート材(SA)の余剰分を掻き取るためのローラ部(25)と、
前記造形材吐出手段及びローラ部(25)を備えるヘッド部(20)と、
前記ヘッド部(20)を水平方向に往復走査させるための水平駆動手段と、
前記ヘッド部(20)と造形プレート(40)との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段と、
前記水平駆動手段を駆動させて、一スライス分の造形材を前記造形材吐出手段で吐出させ硬化させた上で、前記垂直駆動手段を制御させて吐出位置を該硬化後のスライス上に移動させ、さらに次層のスライス分の造形材を吐出、硬化させてスライスを順次積層するよう制御する制御手段(10)と、
前記垂直駆動手段による垂直方向への移動後に、前記造形材吐出手段から吐出される造形材の種類が、モデル材(MA)又はサポート材(SA)の一方から他方に変化する際に、いずれかの造形材を所定数のスライス分吐出しないよう前記造形材吐出手段を制御する吐出制御手段(13)と、
を備えてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、
前記吐出制御手段(13)が、前記垂直駆動手段による垂直方向への移動後に、前記造形材吐出手段から吐出される造形材の種類が、モデル材(MA)又はサポート材(SA)の一方から他方に変化する際に、該変化後の造形材を所定数のスライス分吐出しないよう前記造形材吐出手段を制御することを特徴とする三次元造形装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、さらに、
前記モデル材(MA)及びサポート材(SA)を硬化させるための硬化手段(24)を備え、
前記制御手段(10)が、前記水平駆動手段で前記ヘッド部(20)を一方向に往復走査させて、
該往復走査の往路又は復路の少なくともいずれか一方で、前記造形材吐出手段により前記モデル材(MA)又はサポート材(SA)の一方を前記造形プレート(40)上に吐出させ、
該往復走査の復路又は往路の少なくともいずれか一方で、流動可能な状態にあるモデル材(MA)又はサポート材(SA)の一方の余剰分を、前記ローラ部(25)により回収し、
該往復走査の往路又は復路の少なくともいずれか一方で、前記硬化手段(24)により前記モデル材(MA)又はサポート材(SA)の一方を硬化させることにより、
さらに該往復走査の復路又は往路の少なくともいずれか一方で、前記造形材吐出手段により前記モデル材(MA)又はサポート材(SA)の他方を前記造形プレート(40)上に吐出させ、
該往復走査の往路又は復路の少なくともいずれか一方で、流動可能な状態にあるのモデル材(MA)又はサポート材(SA)の他方の余剰分を、前記ローラ部(25)により回収し、
該往復走査の復路又は往路の少なくともいずれか一方で、前記硬化手段(24)により前記モデル材(MA)又はサポート材(SA)の他方を硬化させることにより、
前記スライスを生成し、前記垂直駆動手段で高さ方向に前記造形プレート(40)とヘッド部(20)の相対位置を移動させて、前記スライスの積層を繰り返すことにより造形を実行するよう制御してなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、
造形物の走査方向における前記モデル材(MA)とサポート材(SA)とが位置するラインにおいて、同一の往復走査で、前記モデル材(MA)とサポート材(SA)を同時に吐出させず、いずれか一方の造形材のみを吐出、硬化させてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、
造形物の走査方向における前記モデル材(MA)とサポート材(SA)とが位置するラインにおいて、同一の往復走査で、前記モデル材(MA)とサポート材(SA)とを吐出させ、又は硬化させてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、
前記モデル材(MA)とサポート材(SA)との界面における接合力が、前記モデル材(MA)同士又は前記サポート材(SA)同士の接合力よりも弱いことを特徴とする三次元造形装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、
異なる種類の造形材が接合する界面において、該界面の上側に位置する造形材が吐出、硬化された層の厚さが、他の層の厚さよりも厚く形成されてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、
該いずれかの造形材を所定数のスライス分除去した中空部(ES)に、余剰分を回収しないで該いずれかの造形材が少なくとも2層分以上積層されるまで、該いずれかの造形材が前記ローラ部(25)に接触しないように、前記スライスの所定数が前記吐出制御手段(13)によって設定されてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、
前記吐出制御手段(13)が、前記造形材吐出手段から吐出される造形材がサポート材(SA)からモデル材(MA)に切り替わった後の、モデル材(MA)を少なくとも1層分又は2層分吐出しないよう、前記造形材吐出手段を制御してなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、
前記吐出制御手段(13)が、前記造形材吐出手段から吐出される造形材がモデル材(MA)からサポート材(SA)に切り替わった後の、サポート材(SA)を少なくとも1層分又は2層分吐出しないよう、前記造形材吐出手段を制御してなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、
前記吐出制御手段(13)が、造形材を吐出しないスライスを決定するため、各スライスにおける吐出の有無の論理積を取って演算することを特徴とする三次元造形装置。
【請求項16】
造形物を載置するための造形プレート(40)上に、造形材として、
最終的な造形物となるモデル材(MA)と、
前記モデル材(MA)が張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材(SA)と、
を水平駆動手段で造形材吐出手段を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させ、垂直駆動手段で吐出位置を高さ方向に相対的に移動させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを生成しながら、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形方法であって、
前記モデル材(MA)又はサポート材(SA)のいずれか一方の造形材を、該造形材を吐出するための造形材吐出手段により前記造形プレート(40)上に吐出させる工程と、
該吐出された一方の造形材を、流動可能な状態で該造形材の余剰分を回収するため回転自在に支承されたローラ部(25)で所定速度にて回転させながら回収する工程と、
該余剰分を回収された流動可能な状態にある造形材を硬化させる工程と、
前記垂直駆動手段で前記造形材吐出手段と造形プレート(40)との高さ方向の相対位置を移動させる工程と、
前記造形材吐出手段による造形材の吐出、前記ローラ部(25)による造形材の余剰分の回収、造形材の硬化、及び前記垂直駆動手段による高さ方向への移動を繰り返しつつ、
前記垂直駆動手段による移動後に、前記造形材吐出手段から吐出される造形材の種類が、モデル材(MA)又はサポート材(SA)の一方から他方に変化する場合に、いずれかの造形材を一以上のスライス分吐出しない、又は造形材の吐出量を減少するよう前記造形材吐出手段を制御する工程と、
を含むことを特徴とする三次元造形方法。
【請求項17】
請求項16に記載される三次元造形方法であって、さらに、
積層時の高さ方向において、前記モデル材(MA)又はサポート材(SA)が一方の造形材から他方の造形材に変化する異種界面にて、前記造形材吐出手段から造形材を吐出しない、又は吐出量を減少するように制御して該スライスの造形を終えた後、
前記垂直駆動手段により吐出位置を相対位置を、次層のスライスの造形位置に移動させ、該異種界面と対応する位置に該他方の造形材を吐出させ、
該吐出された造形材の最上面と、前記ローラ部(25)とを離間させる工程と、
さらに次層以降のスライスの造形時において、前記異種界面と対応する位置に該他方の造形材を吐出させ、
該吐出された造形材の最上面と、前記ローラ部(25)とを接触させて、該吐出された該他方の造形材の余剰分を、前記ローラ部(25)により掻き取る工程と、
を含むことを特徴とする三次元造形方法。
【請求項18】
請求項17に記載される三次元造形方法であって、
前記造形材吐出手段により、いずれかの造形材の吐出をしない又は吐出量を制限する位置が、前記モデル材(MA)又はサポート材(SA)の内、他方の造形材の吐出位置であって、前記異種界面に接した直上のスライスに設けられてなることを特徴とする三次元造形方法。
【請求項19】
請求項17に記載される三次元造形方法であって、
前記造形材吐出手段により、いずれかの造形材の吐出をしない又は吐出量を制限する位置が、前記モデル材(MA)又はサポート材(SA)の内、一方の造形材の吐出位置であって、異種界面に接した直下、又は該位置からさらに所定のスライス分だけ下方に離間したスライスに設けられてなることを特徴とする三次元造形方法。
【請求項20】
請求項19に記載される三次元造形方法であって、
前記垂直駆動手段による垂直方向への移動後に、前記造形材吐出手段から吐出される造形材の種類が、モデル材(MA)又はサポート材(SA)の一方から他方に変化する際に、該変化後の造形材を所定数のスライス分を吐出しないよう前記造形材吐出手段を制御することを特徴とする三次元造形方法。
【請求項21】
造形物を載置するための造形プレート(40)上に、造形材として、
最終的な造形物となるモデル材(MA)と、
前記モデル材(MA)が張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材(SA)と、
を水平駆動手段で造形材吐出手段を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させ、垂直駆動手段で吐出位置を高さ方向に相対的に移動させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを生成しながら、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形装置用の設定データ作成装置であって、
造形物の三次元データを取得するための入力手段と、
造形物の垂直方向で、前記造形材吐出手段から吐出される造形材の種類が、モデル材(MA)又はサポート材(SA)の一方から他方に変化する部位において、いずれかの造形材を所定数のスライス分除去した、又は造形材の吐出量を減少させた中空部(ES)を生成する中空部生成手段と、
を備えることを特徴とする三次元造形装置用の設定データ作成装置。
【請求項22】
請求項21に記載される三次元造形装置用の設定データ作成装置であって、
前記中空部(ES)を生成する位置が、前記モデル材(MA)又はサポート材(SA)が一方の造形材から他方の造形材に変化する異種界面に接した直上のスライスに設けられてなることを特徴とする三次元造形装置用の設定データ作成装置。
【請求項23】
請求項21に記載される三次元造形装置用の設定データ作成装置であって、
前記中空部(ES)を生成する位置が、前記モデル材(MA)又はサポート材(SA)が一方の造形材から他方の造形材に変化する異種界面に接した直下、又は該位置からさらに所定のスライス分だけ下方に離間したスライスに設けられてなることを特徴とする三次元造形装置用の設定データ作成装置。
【請求項24】
造形物を載置するための造形プレート(40)上に、造形材として、
最終的な造形物となるモデル材(MA)と、
前記モデル材(MA)が張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材(SA)と、
を水平駆動手段で造形材吐出手段を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させ、垂直駆動手段で吐出位置を高さ方向に相対的に移動させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを生成しながら、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形装置用の設定データ作成プログラムであって、
造形物の三次元データを取得するための入力機能と、
造形物の垂直方向で、前記造形材吐出手段から吐出される造形材の種類が、モデル材(MA)又はサポート材(SA)の一方から他方に変化する部位において、いずれかの造形材を所定数のスライス分除去した、又は造形材の吐出量を減少させた中空部(ES)を生成する中空部生成機能と、
をコンピュータに実現させることを特徴とする三次元造形装置用の設定データ作成プログラム。
【請求項25】
請求項24に記載される三次元造形装置用の設定データ作成プログラムであって、
前記中空部生成機能が、造形物の垂直方向で、前記造形材吐出手段から吐出される造形材の種類が、モデル材(MA)又はサポート材(SA)の一方から他方に変化する際に、該変化後の造形材を所定数のスライス分除去した中空部(ES)を生成してなることを特徴とする三次元造形装置用の設定データ作成プログラム。
【請求項26】
請求項24に記載される三次元造形装置用の設定データ作成プログラムであって、
前記中空部(ES)を生成する位置が、前記モデル材(MA)又はサポート材(SA)が一方の造形材から他方の造形材に変化する異種界面に接した直上のスライスに設けられてなることを特徴とする三次元造形装置用の設定データ作成プログラム。
【請求項27】
請求項24に記載される三次元造形装置用の設定データ作成プログラムであって、
前記中空部(ES)を生成する位置が、前記モデル材(MA)又はサポート材(SA)が一方の造形材から他方の造形材に変化する異種界面に接した直下、又は該位置からさらに所定のスライス分だけ下方に離間したスライスに設けられてなることを特徴とする三次元造形装置用の設定データ作成プログラム。
【請求項28】
請求項24から27のいずれか一に記載されるプログラムを格納したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2013−67120(P2013−67120A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208222(P2011−208222)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】