説明

三相交流電源に対する複数の直流電源の接続方法

【課題】三相交流電源から複数の直流電源変換用に二相を取り出し接続する場合に、三相交流電源の位相バランスを崩すことなく接続することができる交流電源ケーブル及び三相交流電源に対する複数の直流電源の接続方法を得る。
【解決手段】三極構造の二つのコネクタ12A、12B間に三相分の配線11のうち二相分をクロスして配線11Aを施し、さらに、クロスした配線11Aの一方とクロスしなかった残りの一つの配線11Bに引き出し線13を接続する。これにより、直流電源2を複数個使用した場合に、各直流電源2が三相交流電源1の異なる二相に交互に接続されることになり、各直流電源2が三相交流電源1にバランス良く接続される。この結果、三相交流電源1の交流波形の位相がずれ難くなり、特に直流電源2を二つ以上の偶数個を使用した場合には完全にバランスがとれるので、三相交流電源1の交流波形の位相ずれが略皆無となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電源から複数のモータ駆動コンベヤ等の直流電源変換用に二相を取り出し接続する用途に好適な三相交流電源に対する複数の直流電源の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交流電源を直流に変換する直流電源を搭載した電子機器が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
ところで、複数のモータ駆動コンベヤ等の直流電源を接続する場合、三相交流電源を直流電源に変換するには、三相分の配線のうち、任意の二相分の配線から単相交流を取り出して直流に変換する接続方法が採られている。図4は、そのような接続方法を採った従来例を示す図である。この図に示すように、各直流電源2−1、2−2…が三相交流電源1の任意の二相分の配線に接続されている。すなわち、この図では、直流電源2−1、2−2及び2−4がS,T相の配線間に接続されており、直流電源2−3がR,S相の配線間に接続されている。なお、各直流電源2−1、2−2…には負荷3が接続されている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−49661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の三相交流電源に対する複数の直流電源の接続方法においては、三相交流電源の各相の位相バランスを考慮せずに、各直流電源を三相交流電源に接続した場合、各相の同期がとれなったりして不安定な交流出力となってしまう問題がある。すなわち、位相バランスを考慮した接続を行うと、図5の(a)の交流波形に示すように、T,S,Rの各相が120度の位相差を保って同期がとれた状態になるが、位相バランスを無視した接続を行うと、図5の(b)の交流波形に示すように各相間で位相差が生じ、同期がとれなくなる状態になる。図5の(b)はT相がずれた場合であり、T相とS相が60度の位相差、T相とR相が180度の位相差、S相とR相が120度の位相差となっている。
【0005】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、三相交流電源から複数の直流電源変換用に2相を取り出し接続する場合に、三相交流電源の位相バランスを崩すことなく接続することができる三相交流電源に対する複数の直流電源の接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、下記方法により達成される。
【0007】
(1) 三相交流電源に対する複数の直流電源の接続方法であって、三極構造の二つのコネクタ間に三相分の配線のうち二相分をクロスして配線を施し、さらに、クロスした二相分の配線の一方とクロスしなかった残りの一相分の配線に直流電源接続用の配線を接続することを特徴とする。
【0008】
(2) 三相交流電源に代わって単相交流電源を使用する場合に、クロスした前記二相分の配線間を短絡し、この短絡した配線とクロスしなかった前記残りの一相分の配線とを前記単相交流電源に接続することを特徴とする。
【0009】
(3) 三相交流電源に対する複数の直流電源の接続方法であって、三極構造の二つのコネクタ間に一方のコネクタの配線割付に対して他方のコネクタの配線割付を一つずらした三相分の配線を接続し、さらに、該三相分の配線のうち、任意の二相分に直流電源接続用の配線を接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記(1)に記載の三相交流電源に対する複数の直流電源の接続方法によれば、二つのコネクタ間の配線を三相分のうち二相分をクロスさせるので、この方法による交流電源ケーブルを直流電源の数分だけ用意して連結することで、各直流電源が三相交流電源の異なる二相に交互に接続されることになり、各直流電源が三相交流電源にバランス良く接続されることになる。これにより、三相交流電源の交流波形の位相がずれ難くなり、特に直流電源を二つ以上の偶数個を使用した場合には、完全にバランスがとれるので、三相交流電源の交流波形の位相ずれが略皆無となる。また、この方法による交流電源ケーブルを直流電源の数分だけ用意して、それらをコネクタ接続するだけで済むので、現場の作業が容易になり、作業コストの削減が可能となる。
【0011】
上記(2)に記載の三相交流電源に対する複数の直流電源の接続方法によれば、二つのコネクタ間の三相分の配線のうち、クロスさせた二相分の配線を短絡することで、交流電源ケーブルを単相電源用としても使用することができる。
【0012】
上記(3)に記載の三相交流電源に対する複数の直流電源の接続方法によれば、二つのコネクタ間の配線を、一方のコネクタの配線割付に対して他方を一つずらして配線するので、この方法による交流電源ケーブルを直流電源の数分だけ用意して連結することで、各直流電源が三相交流電源の異なる二相に交互に接続されることになり、各直流電源が三相交流電源にバランス良く接続されることになる。これにより、三相交流電源の交流波形の位相がずれ難くなり、特に直流電源を3の倍数個分使用した場合には、完全にバランスがとれるので、三相交流電源の交流波形の位相ずれが略皆無となる。また、この方法による交流電源ケーブルを直流電源の数分だけ用意して、それらをコネクタ接続するだけで済むので、現場の作業が容易になり、作業コストの削減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の三相交流電源に対する複数の直流電源の接続方法による実施の形態1に係る交流電源ケーブルの概略構成を示す図である。この図において、本実施の形態の交流電源ケーブル10は、三相交流電源1に接続する一つの直流電源毎に用意されるものであり、三相分の配線11と、この配線11の両端夫々に接続される三極構造のコネクタ12A、12Bと、コネクタ12Aの二相分の配線に接続される引き出し線13とを有して構成されている。
【0015】
二つのコネクタ12A、12B間の配線11においては、図に示すように三相分のうち二相分の配線11Aをクロスさせている。また、コネクタ12Aに接続する引き出し線13の配線においては、クロスした二相分の配線11Aのうち一つとクロスさせなかった残りの一つの配線11Bとに接続している。この引き出し線13には交流を直流に変換する直流電源2が接続される。なお、直流電源2の直流出力端には負荷3が接続される。また、コネクタ12Aにはオスピンが装着され、コネクタ12Bにはメスピンが装着されており、複数の交流電源ケーブル10の連結が可能となっている。
【0016】
本実施の形態の交流電源ケーブル10は、上述したように一つの直流電源2に対して一つ使用される。例えば図1に示すように三つの直流電源2を使用する場合は、その数に相当する三つの交流電源ケーブル10を用意し、それらを連結する。また、交流電源ケーブル10は、三相交流電源1に接続するためのコネクタ15を備えている。このコネクタ15には、交流電源ケーブル10のコネクタ12Aと接続するためにメスピンが装着されている。
【0017】
このような構成の交流電源ケーブル10において、使用する直流電源2の数だけ接続する場合、まず一つ目の交流電源ケーブル10のコネクタ12Aとコネクタ15とを接続する。この場合、コネクタ15に接続された配線の他方の端が三相交流電源1に接続さている。
【0018】
一つ目の交流電源ケーブル10のコネクタ12Aとコネクタ15とを接続した後、該交流電源ケーブル10のコネクタ12Aの引き出し線13に一つ目の直流電源2を接続する。次いで、一つ目の交流電源ケーブル10のコネクタ12Bと二つ目の交流電源ケーブル10のコネクタ12Aとを接続する。そして、二つ目の交流電源ケーブル10のコネクタ12Aの引き出し線13に二つ目の直流電源2を接続する。次いで、二つ目の交流電源ケーブル10のコネクタ12Bと三つ目の交流電源ケーブル10のコネクタ12Aとを接続する。その後、三つ目の交流電源ケーブル10のコネクタ12Aの引き出し線13に三つ目の直流電源2を接続する。
【0019】
このように、本実施の形態の交流電源ケーブル10によれば、二つのコネクタ12A、12B間の配線11を三相分のうち二相分の配線11Aをクロスし、またコネクタ12Aに接続する引き出し線13をクロスした二相分の配線11Aのうち一つとクロスさせなかった残りの一つの配線11Bとに接続しているので、直流電源2を複数個使用した場合に、各直流電源2が三相交流電源1の異なる二相に交互に接続されることになり、各直流電源2が三相交流電源1にバランス良く接続されることになる。これにより、三相交流電源1の交流波形の位相がずれ難くなり、特に直流電源2を二つ以上の偶数個を使用した場合には完全にバランスがとれるので、三相交流電源1の交流波形の位相ずれが略皆無となる。また、この交流電源ケーブルを直流電源の数分だけ用意して、それらをコネクタ接続するだけで済むので、現場の作業が容易になり、作業コストの削減が可能となる。
【0020】
なお、上記実施の形態では、三相交流電源1を使用する場合であったが、単相交流電源でもその一相を二相に分配することで、交流電源ケーブル10をそのまま用いることが可能となる。具体的には、図2に示すように、交流電源ケーブル10のクロスさせた二相分の配線11Aを短絡させる短絡用の配線16を設けたコネクタ15Aを追加して、単相交流電源20の一相を二相に分配する。これにより、単相交流電源20でも使用可能となる。因みに、コネクタ15内で、交流電源ケーブル10のクロスさせた二相分の配線11Aを短絡させる以外に、交流電源ケーブル10のコネクタ12A又は12Bのいずれか一方で、クロスさせた二相分の配線11Aを短絡させるようにしても構わない。但し、この場合、単相交流電源専用の交流電源ケーブルが必要となり、その分、交流電源ケーブルを2種類用意する必要が出てくる。
【0021】
(実施の形態2)
図3は、本発明の三相交流電源に対する複数の直流電源の接続方法による実施の形態2に係る交流電源ケーブルの概略構成を示す図である。なお、この図において、上述した実施の形態1に係る交流電源ケーブル10と共通する部分には同じ符号を付けている。本実施の形態の交流電源ケーブル30は、三極構造の二つのコネクタ12A、12B間に、一方のコネクタ12Aの配線割付に対して他方のコネクタ12Bの配線割付を一つずらした三相分の配線11が接続される。また、三相分の配線11のうち、任意の二相分に直流電源接続用の引き出し線13が接続される。
【0022】
二つのコネクタ12A、12B間の配線11を、一方のコネクタ12Aの配線割付に対して他方のコネクタ12Bを一つずらして配線することで、各直流電源2が三相交流電源1の異なる二相に交互に接続されることになり、各直流電源2が三相交流電源1にバランス良く接続されることになる。
【0023】
このように、本実施の形態の交流電源ケーブル30によれば、二つのコネクタ12A、12B間の配線11を、一方のコネクタ12Aの配線割付に対して他方のコネクタ12Bを一つずらして配線するようにしたので、この交流電源ケーブル30を直流電源2の数分だけ用意して連結することで、各直流電源2が三相交流電源1の異なる二相に交互に接続されることになり、各直流電源2が三相交流電源1にバランス良く接続されることになる。これにより、三相交流電源1の交流波形の位相がずれ難くなり、特に直流電源2を3の倍数個分使用した場合には完全にバランスがとれるので、三相交流電源1の交流波形の位相ずれが略皆無となる。また、この交流電源ケーブル30を直流電源2の数分だけ用意して、それらをコネクタ接続するだけで済むので、現場の作業が容易になり、作業コストの削減が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、三相交流電源から複数の直流電源変換用に二相を取り出し接続する場合に、三相交流電源の位相バランスを崩すことなく接続することができるといった効果を有し、交流電源を直流に変換する直流電源を搭載した電子機器などへの適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の三相交流電源に対する複数の直流電源の接続方法による実施の形態1に係る交流電源ケーブルの概略構成を示す図である。
【図2】図1の交流電源ケーブルを単相交流電源での使用を可能したコネクタを備えた交流電源ケーブルの概略構成を示す図である。
【図3】本発明の三相交流電源に対する複数の直流電源の接続方法による実施の形態2に係る交流電源ケーブルの概略構成を示す図である。
【図4】従来の三相交流電源に対する複数の直流電源の接続状態を示す図である。
【図5】従来の接続方法による問題点を説明するための図である。
【符号の説明】
【0026】
1 三相交流電源
2 直流電源
3 負荷
10、30 交流電源ケーブルユニット
11、13 配線
12A、12B、15、15A コネクタ
20 単相交流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電源(1)に対する複数の直流電源(2)の接続方法であって、
三極構造の二つのコネクタ(12A、12B)間に三相分の配線(11)のうち二相分をクロスして配線を施し、さらに、クロスした二相分の配線(11A)の一方とクロスしなかった残りの一相分の配線(11B)に直流電源接続用の配線(13)を接続することを特徴とする三相交流電源(1)に対する複数の直流電源(2)の接続方法。
【請求項2】
三相交流電源(1)に代わって単相交流電源(20)を使用する場合に、クロスした前記二相分の配線(11A)間を短絡し、この短絡した配線(11A)とクロスしなかった前記残りの一相分の配線(11B)とを前記単相交流電源(20)に接続することを特徴とする請求項1に記載の三相交流電源(1)に対する複数の直流電源(2)の接続方法。
【請求項3】
三相交流電源(1)に対する複数の直流電源(2)の接続方法であって、
三極構造の二つのコネクタ(12A、12B)間に一方のコネクタの配線割付に対して他方のコネクタの配線割付を1つずらした三相分の配線(11)を接続し、さらに、該三相分の配線(11)のうち、任意の二相分に直流電源接続用の配線(13)を接続したことを特徴とする三相交流電源(1)に対する複数の直流電源(2)の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−228100(P2006−228100A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−43829(P2005−43829)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(502380361)トーヨーカネツソリューションズ株式会社 (50)
【Fターム(参考)】